説明

タンパク質−リポソーム複合体を含有するイオントフォレーシス用組成物

【課題】イオントフォレーシスにおいて、巨大な分子量を有するタンパク質を効率的に皮内に送達し、効率的に免疫応答を誘導しうる組成物を提供すること。
【解決手段】負に帯電した、タンパク質−リポソーム複合体を含んでなる、イオントフォレーシス用組成物であって、タンパク質−リポソーム複合体が、負に帯電したタンパク質と、カチオン性リポソームとから形成されているイオントフォレーシス用組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオントフォレーシス(iontophoresis)によってタンパク質を経皮的に投与する技術に関し、特に、負に帯電した、タンパク質―リポソーム複合体を含有するイオントフォレーシス用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表皮層には、皮内免疫で重要な役割を担う抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞)が豊富に存在しており、経皮ワクチンは他の投与経路よりも効率よく抗原を標的細胞に送達できることから、新しいワクチン開発において注目されている。
【0003】
経皮ワクチンにおいて皮内に抗原を送達する方法としては、皮内注射が一般的であるが、近年、マイクロニードル、ジェットインジェクター、エレクトロポレーションなど、針や圧力、電気などの物理的な力によって皮膚に小孔を形成させて送達する方法が開発されている。しかしながら、現在までに開発されている投与方法は、皮内注射と同様に投与時に痛みを伴い、透過性向上のために角質層の剥離など皮膚の前処理が必要である。また、これら投与方法では、皮内注射に比べて十分な免疫応答が誘導することが困難である。このように、現在までに開発されている経皮ワクチンの投与方法は、安全性および効果のいずれについても問題を有している。
【0004】
一方、生体の所定部位の皮膚ないし粘膜(以下、単に「皮膚」という)の表面上に配置されたイオン性の薬物に対してこのイオン性薬物を駆動させる起電力を皮膚に与えて、薬物を皮膚を介して体内に導入(浸透)させる方法は、イオントフォレーシス(iontophoresis、イオントフォレーゼ、イオン導入法、イオン浸透療法)と呼ばれている(特開昭63−35266号:特許文献1参照)。イオントフォレーシスは、薬物の非侵襲的で安全な投与方法として近年期待されている。
【0005】
イオントフォレーシスにおいては、通常、正電荷をもつイオンは、陽極側において皮膚内に駆動(輸送)される。一方、負電荷をもつイオンは、陰極側において皮膚内に駆動(輸送)される。
【0006】
例えば、Marro D et al., Pharmaceutical Research, 2001 Dec;18(12):1701-1708.(非特許文献1)には、イオントフォレーシスにより陰極側から薬物と投与する場合、皮膚の内から外へのイオン浸透流(水の流れ)により薬物の投与効率は低くなり、陽極側から投与する場合には、電気的力とイオン浸透流により薬物は効率よく皮内へ送達されることが報告されている。
【0007】
また、本発明者らの一部は、PCT/JP2007/071368において、薬物を封入した、カチオン性リポソームを、イオントフォレーシス装置の陽極側から投与することにより、薬物が効率よく皮内に送達されることを報告している。しかしながら、本発明者らの実験から、巨大な抗原タンパク質を封入した、カチオン性リポソームを、陽極側からイオントフォレーシスにより投与しても、抗原タンパク質を効率的に皮内に送達することは困難であることが明らかとなった。
【0008】
【特許文献1】特開昭63−35266号
【非特許文献1】Marro D et al., Pharmaceutical Research, 2001 Dec;18(12):1701-1708.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、イオントフォレーシスにおいて、巨大な分子量を有するタンパク質を効率的に皮内に送達し、効率的に免疫応答を誘導することは重要な課題で課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、今般、抗原性を有するタンパク質と、カチオン性リポソームとから、負に帯電した複合体を形成し、該複合体をイオントフォレーシスにより生体に投与することにより、タンパク質の皮内への送達が飛躍的に促進され、効果的に免疫応答を誘導することができるとの知見を得た。本発明は、これら知見に基づくものである。
したがって、本発明は、タンパク質を効率的に皮内に送達し、効果的に免疫応答を誘導しうる、イオントフォレーシス用組成物を得ることをその目的としている。
【0011】
そして、本発明によるイオントフォレーシス用組成物は、負に帯電した、タンパク質−リポソーム複合体を含んでなり、該タンパク質−リポソーム複合体は、負に帯電したタンパク質と、カチオン性リポソームとから形成されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明による組成物によれば、抗原タンパク質のような比較的大きい分子量を有するタンパク質であっても、イオントフォレーシスによって効率的に皮内に送達し、効果的に免疫応答を誘導することが可能となる。さらに、本発明による組成物は、アジュバントとともに用いた場合、顕著に免疫応答を誘導しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書において、「カチオン性リポソーム」とは、生理学的pHなどの選択したpHにおいて、正味の正電荷を有するリポソームを意味する。
【0014】
また、「カチオン性脂質」とは、生理学的pHなどの選択したpHにおいて、正味の正電荷を有する脂質を意味する。
【0015】
また、「脂肪酸」は、飽和または不飽和であってよく、直鎖状、分枝鎖状、または環状であってよい。
【0016】
イオントフォレーシス用組成物
本発明によるイオントフォレーシス用組成物は、上述したように、負に帯電した、タンパク質−リポソーム複合体を含んでなり、このタンパク質−リポソーム複合体が、負に帯電したタンパク質と、カチオン性リポソームとから形成されていることを一つの特徴とする。負に荷電した上記複合体をイオントフォレーシスにより皮膚に投与した場合、タンパク質自体よりも分子量が増加するにもかかわらず、複合体が皮膚のバリアを越えて皮内に効率的に浸透することは、当業者にとって意外な事実である。
【0017】
タンパク質−リポソーム複合体
本発明におけるタンパク質-リポソーム複合体は、負に帯電したタンパク質と、カチオン性リポソームとから形成され、その全体的な正味電荷は負であることを特徴とする。タンパク質−リポソーム複合体は、タンパク質およびリポソームを、電荷の相互作用が生じ得る系に置き、これらを凝集させることにより形成される。したがって、タンパク質−リポソーム複合体は、タンパク質およびリポソームが静電相互作用を主要な駆動力として結合して形成されるものである。
【0018】
負に帯電した、タンパク質−リポソーム複合体の有するゼータ電位は、好ましくは−50〜−5mVであり、より好ましくは−40〜−10mVである。
【0019】
また、負に帯電したタンパク質と、カチオン性リポソームの正電荷との−/+電荷比は、複合体の形成効率を勘案して適宜決定できるが、好ましくは2:1〜10:1であり、より好ましくは3:1〜8:1である。この電荷比は、リポソームが脂質二重膜として構成され、その内側の正電荷は静電相互作用に関与しないことを原則として、リポソーム中の電荷は1/2にして算出するものとする。例えば、リポソームが1価の正電荷を有するカチオン性脂質で構成されている場合には、以下の式によって、上記−/+電荷比を算出することができる。
[式1]
(−/+電荷比)=[(タンパク質量(mol))×(タンパク質における負電荷数の総計)]:[(カチオン性脂質量(mol))/2]
タンパク質量およびカチオン性脂質量は、仕込み量等を勘案して、容易に決定することができる。
【0020】
また、タンパク質−リポソーム複合体の平均粒径は、タンパク質を皮内に送達しうる限り特に限定されないが、好ましくは100〜10000nmであり、より好ましくは1000〜10000nmである。かかる平均粒径の決定方法は、例えば、動的光散乱法、静的光散乱法、電子顕微鏡観察法および原子間力顕微鏡観察法等が挙げられる。タンパク質−リポソーム複合体は、上述のようサイズを有していても、イオントフォレーシスによって皮内に移行することが可能であり、抗原タンパク質等の巨大タンパク質を経皮的に生体に投与する上で有利である。
【0021】
負に帯電したタンパク質
本発明におけるタンパク質は、電荷の相互作用が生じ得る系において、カチオン性リポソームと複合体を形成するものであり、負に帯電していることを特徴とする。
【0022】
また、上記タンパク質は、負に帯電して上記複合体を形成しうる限り特に限定されないが、好ましくはpH3〜10、より好ましくはpH4〜9において負に帯電しうるものである。
【0023】
上記タンパク質は、負電荷を有する同種のアミノ酸からなるタンパク質であってもよく、負電荷を有する2以上の異種アミノ酸からなるタンパク質であってもよい。また、上記タンパク質は、正味の負電荷を有する限り、正電荷を有するアミノ酸と、負電荷を有するアミノ酸とをいずれも含むものであってもよい。
【0024】
また、負に帯電したタンパク質における負電荷の総計は、好ましくは1〜100であり、より好ましくは5〜100である。この負電荷の総計は、タンパク質中の負電荷を有するアミノ酸数と、正電荷を有するアミノ酸数との差によって決定することができる。
【0025】
また、上記タンパク質の分子量としては、複合体により皮内に送達しうる限り特に限定されないが、その好ましくは3000〜100000であり、より好ましくは5000〜50000である。本発明におけるタンパク質-リポソーム複合体によれば、上記分子量を有するタンパク質であっても使用することができ、したがって、抗原性のような比較的大きい分子量を有するタンパク質を送達する上で有利に利用できる。
【0026】
また、上記タンパク質は、抗原として機能しうるものであることが好ましい。
かかるタンパク質としては、特に限定されないが、例えば、オボアルブミン(以下、「OVA」という)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のGAGタンパク質、ヒトインフルエンザウイルスのヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼ、B型肝炎ウイルスのHBs抗原タンパク質等が挙げられる。
【0027】
カチオン性リポソーム
カチオン性リポソームは、正味の正電荷を有し、負に帯電したタンパク質とともに、負に帯電した、タンパク質−ポリカチオン複合体を形成しうるものである。
上記リポソームの平均粒径は、タンパク質を皮内に送達しうる限り特に限定されないが、好ましくは50〜1000nmであり、より好ましくは100〜500nmである。この平均粒径の決定方法は、複合体における粒径の決定方法と同様である。
【0028】
また、正味電荷が正である上記リポソームは、構成成分としてカチオン性脂質を少なくとも含んでなる。上記カチオン性脂質としては、好ましくは1〜10価の正電荷を有するC12〜20脂質であり、より好ましくは1〜3価の正電荷を有するC14〜20脂質であり、さらに好ましくは1価の正電荷を有するC14〜18脂質である。より具体的には、カチオン性脂質としては、1,2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N,N,-トリメチルアンモニウム(DOTMA)、ジドデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2-ジミリストイルオキシプロピル1-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE)、2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(Sペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミウムトリフルオロアセテイト(DOSPA)等が挙げられるが、好ましくは、1,2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N,N,-トリメチルアンモニウム(DOTMA)、2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(Sペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミウムトリフルオロアセテイト(DOSPA)であり、より好ましくは、1,2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)である。
【0029】
また、上記リポソームは、カチオン性脂質の他の構成成分として、ステロール、リン脂質またはそれらの組み合わせをさらに含んでいることが好ましい。
【0030】
上記ステロールとしては、カチオン性リポソームの安定性や複合体の送達効率等を勘案して適宜選択できるが、好ましくは、コレステロール(Chol)、脂肪酸コレステリル、脂肪酸ジヒドロコレステリルまたはコレステリルエーテルであり、より好ましくはコレステロール(Chol)、C12〜C31脂肪酸コレステリルおよびC12〜C31脂肪酸ジヒドロコレステリルおよびポリオキシエチレンコレステリルエーテルおよびポリオキシエチレンジヒドロコレステリルエーテルであり、より好ましくはコレステロール(Chol)である。
【0031】
また、上記リン脂質としては、複合体の送達効率等を勘案して適宜選択できるが、好ましくはC12〜20リン脂質であり、さらに好ましくは、C14〜18リン脂質である。より具体的には、リン脂質としては、ホスファチジルコリン、卵黄フォスファチジルコリン(EPC)、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)、ホスファチジルエタノールアミン等が挙げられるが、好ましくはL-α-フォスファチジルコリンジステアロイル(DSPC)、卵黄フォスファチジルコリン(EPC)、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)またはそれらの組み合わせであり、より好ましくはL-α-フォスファチジルコリンジステアロイル(DSPC)である。
【0032】
また、本発明におけるリポソームにおいて、カチオン性脂質に加え、リン脂質、ステロールまたはその組み合わせが構成成分として含まれる場合、カチオン性脂質と、リン脂質およびステロールの和とのモル比は、複合体の皮内送達効率等を勘案して適宜決定できるが、好ましくは1:9〜9:1であり、より好ましくは2:8〜8:2である。さらに、リポソームが、リン脂質およびステロールをいずれも含む場合、リン脂質と、ステロールとのモル比は、好ましくは2:8〜8:2であり、より好ましくは3:7〜7:3である。また、一つの態様によれば、カチオン性脂質と、リン脂質と、ステロールとのモル比は、約2:5:3である。
【0033】
また、本発明によるイオントフォレーシス用組成物は、タンパク質−リポソーム複合体をそのまま用いてもよいが、イオントフォレーシスによる上記複合体の投与を妨げない限り他の成分を含んでいてもよい。
【0034】
上記他の成分としては、イオントフォレーシスによる複合体の投与を妨げない限り特に限定されないが、例えば、水や、HEPES等の緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤および着色剤等の薬学上許容可能な担体等が挙げられる。さらに、本発明による組成物は、イオントフォレーシスによるリポソームの投与を妨げない限り、所望により適当な剤型とすることができ、例えば、乾燥形態とすることができる。しかしながら、イオントフォレーシスによる効率的な複合体の投与を勘案すれば、水やHEPESバッファーとともに溶液または懸濁液とすることが好ましい。この際、イオントフォレーシス用組成物におけるpHとしては、例えば、pH7〜8である。また、イオン強度としては、例えば、5〜20mMである。
また、上記組成物中のタンパク質−リポソーム複合体の含有量は、必要に応じて適宜決定してよい。
【0035】
製造方法
本発明におけるタンパク質−リポソーム複合体は、タンパク質と、カチオン性リポソームとを混合し、これらを凝集させることにより、簡易に形成することができる。
【0036】
本発明による製造方法にあっては、まず、複合体を構成するリポソームを調製する。リポソームの調製は、例えば、以下の手法により行われる。
カチオン性脂質、リン脂質、ステロール等を所望の割合で、水等の液媒体中で混合し、混合溶液を得る。次に、この混合溶液を減圧留去し、脂質膜を得る。次に、脂質膜に、10〜50mMのHEPESバッファーを添加する。得られた混合液を室温で10分間程度放置して水和させ、ソニケーションを行う。ソニケーションの条件としては、例えば、85W、室温、1分間程度が挙げられるが、これに限定されない。さらに必要に応じて、混合液をメンブランフィルターやエクストリューダー等によって処理して粒径を調節し、本発明におけるリポソームを得る。
【0037】
次に、本発明による製造方法にあっては、タンパク質を含む第一の水性溶液と、リポソームを含む第二の水性溶液とを用意する。
【0038】
また、第一の水性溶液におけるタンパク質の濃度、および第二の水性溶液におけるリポソームの濃度は、タンパク質、リポソームの溶媒への溶解度、負に荷電したタンパク質-リポソーム複合体の形成効率などを勘案して適宜決定される。
【0039】
第一および第二の水性溶液におけるpH、イオン強度および温度は、タンパク質およびリポソームの耐電状態、最終的な複合体の形成効率を勘案して適宜調整してよい。
【0040】
また、第一および第二の水性溶液における溶媒は、好ましくは水、バッファーであり、より好ましくは水またはHEPESバッファー等が挙げられる。
【0041】
次に、本発明による製造方法にあっては、第一の水性溶液と、第二の水性溶液とを混合する。混合方法は特に限定されず、第一の水性溶液に第二の水性溶液を加えてもよく、第二の水性溶液に第一の水性溶液を加えてもよい。また、容器に第一の水性溶液と、第二の水性溶液とを同時に加えて混合してもよい。このようにして得られる、第一の水性溶液と、第二の水性溶液との混合液は適宜攪拌してもよい。
【0042】
第一および第二の水性溶液の混合比率は、混合液中のタンパク質およびカチオン性リポソームの−/+電荷比を勘案し、負電荷が超過して複合体が形成されるように適宜決定することができる。例えば、上記混合比率は、第一の水性溶液中の負電荷の総計が、第二の水性溶液中の正電荷の総計を超過するように、設定することができる。また、両溶液中の電荷数は、例えば、両溶液の調製に用いられたタンパク質またはカチオン性脂質のモル比、正味の電荷数を勘案して容易に設定することができる。
【0043】
また、混合液におけるpH、イオン強度および温度もまた、複合体の形成効率を勘案して適宜決定してよい。上記混合液におけるpHおよびイオン強度は、第一の水性溶液および第二の水性溶液の組成(濃度、量、pH、イオン強度)、混合比率を予め変更することにより調製することができる。具体的には、混合液におけるpHとしては、例えば、pH3〜10である。また、イオン強度としては、例えば、5〜20mMである。
また、混合液における温度としては、例えば、16〜40℃である。
【0044】
本発明にあっては、上記混合物をそのまま静置して、タンパク質−リポソーム複合体を混合液中に生成させ、混合液をイオントフォレーシス用組成物とすることもできるが、好ましくは、上記混合液をインキュベートする。
インキュベートは、インキュベートの条件としては、例えば、16〜40℃、15〜60分間である。
【0045】
次に、インキュベートされた混合液の遠心分離し、凝集体を得る。遠心分離の条件としては、例えば、3000〜10000xg、2〜6℃、5〜10分間である。
【0046】
次に、得られた凝集体に、水、バッファー等の水性溶媒等を添加し、負に帯電した複合体を含むイオントフォレーシス用組成物を得ることができる。イオントフォレーシス用組成物は、バッファー等により複合体が負に帯電するのに好適なpHおよびイオン強度に調製することができる。この際、複合体のゼータ電位等を勘案して、pHおよびイオン強度を調製することが好ましい。
また、上記水性溶媒の温度は、複合体の形成効率に応じて適宜決定してよく、例えば、16〜40℃である。
【0047】
用途
また、本発明による組成物は、イオントフォレーシスにより生体に適用されるものであり、好ましくは医薬として用いられる。さらに、本発明による組成物によれば抗原性タンパク質を効率的に皮内に送達し、効果的に免疫応答を誘導することができ、よって、好ましくは経皮ワクチン製剤として用いられる。
【0048】
電極構造体およびイオントフォレーシス装置
また、タンパク質−リポソーム複合体の生体への投与は、イオントフォレーシス用組成物を保持する電極構造体、およびこの電極構造体を備えたイオントフォレース装置を利用して好適に行うことができる。
【0049】
本発明の一つの態様によれば、電極と、電極の皮膚側に配置された、本発明による組成物を保持する、タンパク質-リポソーム複合体保持部とを備えたイオントフォレーシス用電極構造体であって、イオントフォレーシスによって、タンパク質-リポソーム複合体を生体皮膚に放出することができる電極構造体が提供される。また、イオントフォレーシスによるタンパク質-リポソーム複合体の投与を妨げない限り、電極と、タンパク質-リポソーム複合体保持部との間には、例えば、電解液保持部等をさらに配置してもよい。
【0050】
また、タンパク質-リポソーム複合体は負に帯電しているため、電気系統の陰極側において陰電流を印加することが好ましい。したがって、本発明による電極構造体において、電極は陰電極とされる。また、電極としては、例えば、炭素、白金のような導電性材料からなる電極が好ましく用いられ、この材料は、後述する対電極においても使用することができる。
【0051】
タンパク質-リポソーム複合体保持部は、本発明による組成物を含浸保持する満たされた、アクリル製等のセル(電極室)として構成してもよく、本発明による組成物を含浸保持する、不織布、脱脂綿または薄膜体で構成してもよい。薄膜体の構成部材としては、良好な含浸保持特性と良好なイオン伝達性の双方を具備する材料が好ましい。かかる材料としては、例えば、アクリル系樹脂のヒドロゲル体(アクリルヒドロゲル膜)、セグメント化ポリウレタン系ゲル膜等が挙げられる。上述のセルおよび薄膜体は、電解液保持部の構成においても利用することができる。
【0052】
また、本発明によるイオントフォレーシス装置の構成は、本発明による上記電極構造体を備え、タンパク質-リポソーム複合体を投与しうる限り適宜変更することができるが、電源装置と、電源装置の陰極に接続された、本発明による電極構造体と、電源装置の陽極に接続された、電極構造体とを少なくとも備えていることが好ましい。
【0053】
上記陽極に接続された電極構造体は、タンパク質-リポソーム複合体を保持する電極構造体の対電極として機能しうる限り、その構造は適宜変更することができる。例えば、対電極としての電極構造体は、タンパク質-リポソーム複合体保持部を電解液保持部に変更する以外、陽極に接続された電極構造体と同様の構成とすることができる。一つの態様によれば、対電極である上記電極構造体は、陽電極を少なくとも備えている。また、好ましい態様によれば、対電極である上記電極構造体は、陽電極の皮膚側に配置された、電解液を保持する電解液保持部をさらに備えている。
【0054】
免疫誘導方法
また、本発明による組成物は、上述するイオントフォレース装置等によって生体に投与することにより、タンパク質に対する生体の免疫応答を顕著に誘導しうる。したがって、本発明の別の態様によれば、タンパク質に対する生体の免疫応答を誘導する方法であって、タンパク質と、カチオン性リポソームとから形成された、負に帯電した、タンパク質−リポソーム複合体の有効量を、イオントフォレーシスによって生体に投与することを含んでなる方法が提供される。
【0055】
上記イオントフォレーシス工程において、通電条件は、タンパク質−リポソーム複合体の投与効率を勘案して適宜決定できるが、その電流値としては、好ましくは0.1〜0.45mA/cmであり、より好ましくは0.1〜0.2mA/cmである。
【0056】
また、上記免疫応答誘導方法において、タンパク質に対する免疫応答を向上させることを勘案すれば、有効量のアジュバントをさらに生体に投与することが好ましい。アジュバントは、イオントフォレーシスの前または後に、逐次的に生体に投与してもよく、タンパク質−リポソーム複合体と同時に投与してもよい。アジュバントの投与方法は、アジュバント効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、イオントフォレーシスの適用される皮膚に塗布する方法が挙げられる。
【0057】
また、アジュバントとしては、好ましくは経皮アジュバントであり、より好ましくはモノリン酸リピドA、オリゴ核酸配列(いわゆるCpG)、リポポリサッカライド(いわゆるLPS)、ムラミルダイペプチド(MDP)またはウシ結核菌細胞壁(BCG-CWS)等であり、さらに好ましくはモノリン酸リピドAである。
【0058】
また、タンパク質−リポソーム複合体またはアジュバントの有効量は、疾患の種類、生体の種、性別、年齢、体重および状態、投与計画等を勘案して、当業者により適宜決定される。
【0059】
また、本発明における生体としては、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒト、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、イヌまたはネコであり、より好ましくはヒトである。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
1.OVAの蛍光標識
ホウ酸緩衝液中10mg OVA(SIGMA Aldrich社)を含有する溶液と。100μl DMFに溶解した2.81mg NHS-Rhodamineとを混和し、室温で1時間反応させた。得られた混合液をSephdex-G100を用いてゲルろ過処理し、遊離NHS-Rhodamineを分離し、Rhodamin標識OVAを得た。
【0061】
2.OVA-リポソーム複合体の調製
DOTAP、DSPCおよびCholを、 DOTAP/DSPC/Chol=2/5/3の比率でCHCl等の有機溶媒中で混合し懸濁液(総脂質重量1.6mg)を得た。この懸濁液を減圧留去した後、有機溶媒の添加および減圧留去を繰り返し、脂質簿膜を調製した。次に、総脂質濃度が5mMとなるように10mM HEPESバッファー 0.5mlを上記脂質簿膜に添加し、室温で10分間水和させた。次に、バスタイプソニケーターによりソニケーションし、リポソーム(以下、「DSPCリポソーム」という)溶液を得た。
【0062】
Rhodamin標識OVA を用いて調製した100mg/ml OVA水溶液150μlを、上記DSPCリポソーム溶液500μl添加した。得られた混合液を室温で30分インキュベートした後、5000xg、4℃、5分の条件で遠心分離した。得られたペレットを10mM HEPESバッファー 150μlで懸濁し、OVA-リポソーム複合体溶液を得た。
【0063】
参考例:OVA封入リポソームの調製
DOTAP、卵黄フォスファチジルコリン(以下、「EPC」という)およびCholを、DOTAP/EPC/Chol=4/4/2の比率でCHCl等の有機溶媒中で混合し懸濁液(総脂質重量8.3mg)を得た。この懸濁液を減圧留去した後、有機溶媒の添加および減圧留去を繰り返し、脂質簿膜を調製した。次に、総脂質濃度が12.5mMとなるように、5mg/ml Alexa488標識OVA(Invitrogen社)を含む酢酸バッファー(pH4.5)1mlを上記脂質簿膜に添加し、室温で10分水和させた。次に、バスタイプソニケーターを用いてソニケーション後、凍結融解を6回繰り返した。得られた溶液を1000nmの膜を用いてエクストリュージョンした後、80000g、4℃、30分間の条件で超遠心分離を行い、遊離OVAを除いた。得られたペレットを300μl酢酸バッファーにより懸濁し、OVA封入リポソーム溶液を得た。
【0064】
試験例1
OVA-リポソーム複合体あるいはOVA封入リポソームの懸濁液を専用キュベットに充填し、ゼータサイザーを用いて粒子径およびゼータ電位を測定した。
【0065】
結果は、表1に示される通りであった。OVA-リポソーム複合体は負に荷電している一方、OVA封入リポソームは正に荷電していた。この際、OVA-リポソーム複合体において、OVAの負電荷とリポソームの正電荷との-/+電荷比は、(OVAモル数x負電荷数):(DOTAPモル数x1/2)=7:1と算出された。
【表1】

【0066】
試験例2:イオントフォレ−シス
以下の手順に従って、OVA-リポソーム複合体またはOVA封入リポソームをイオントフォレーシスによりSDラット(10週齢オス)に投与した。
【0067】
イオントフォレーシス装置
OVA-リポソーム複合体は負に荷電していることから、陰極側から投与することとした。OVA-リポソーム複合体の投与に用いたイオントフォレーシス装置は、図1に示される通りであった。
図1において、イオントフォレーシス装置1は、皮膚5上に配置されており、電源装置2と、上記複合体を保持する電極構造体3と、その対電極としての電極構造体4とから構成され、これらはコード6、7により接続されている。そして、電極構造体3は、陰電極31と、陰電極31の皮膚側に配置されたタンパク質−リポソーム複合体保持部32とから構成した。一方、上記電極構造体4は、陽電極41と、陽電極41の皮膚側に配置された、電解液200μlを保持する電解液保持部42とから構成した。また、タンパク質−リポソーム複合体保持部32および電解液保持部42は、それそれsiRNA−ポリカチオン複合体溶液または電解液を含浸した不織布または脱脂綿によって構成した。
【0068】
また、OVA封入リポソームを投与する場合、OVA封入リポソームは、正に荷電していることから、陽極側から投与することとした。
【0069】
OVA-リポソーム複合体の投与
イオントフォレシス装置の抗原保持部に、実施例1のOVA-リポソーム複合体溶液200μlを充填した。次に、ネンブタール麻酔下でバリカンで剃毛したSDラット(10週齢オス)の背部皮膚にイオントフォレーシス装置を装着し、0.45mA定電流(0.15mA/cm2)で60分間の条件でイオントフォレシスを行った。
【0070】
OVA封入リポソームの投与
イオントフォレシス装置の抗原保持部(陽極側)に、参考例のOVA封入リポソーム溶液200μlを充填した。次に、ネンブタール麻酔下でバリカンで剃毛したSDラット(10週齢オス)の背部皮膚にイオントフォレーシス装置を装着し、0.45mA定電流(0.15mA/cm2)で60分間の条件でイオントフォレシスを行った。
【0071】
皮膚切片の調製とCLSM観察
通電終了3時間後の皮膚を切り取り、OCT compoundに凍結包埋した。クライオスタットにより凍結皮膚サンプルから20μmの切片を調製し、倒立型共焦点レーザースキャン顕微鏡(LSM510 Carl Zeiss)を用いて観察した。
【0072】
その結果、図2Aにも示される通り、OVA封入リポソームを陽極側から投与した場合には、角質層以外の表皮層や真皮層ではほとんど蛍光が観察されなかった。一方、OVA-リポソーム複合体を陰極側から投与した場合には、図2Bにも示される通り、表皮層および真皮層においても蛍光が観察された。
【0073】
試験例3
OVA封入リポソームおよびOVA-リポソーム複合体の調製
蛍光標識されていないOVAを使用し、実施例1および参考例と同様の手順で、OVA封入リポソームおよびOVA-リポソーム複合体を調製した。
【0074】
イオントフォレシスによる経皮免疫
調製したOVA封入リポソームまたはOVA-リポソーム複合体を、試験例2と同様の手順でSDラットの背部皮膚にイオントフォレシスにより投与した。1回目の投与から1週間後に、再度、同様の手順でOVA封入リポソームまたはOVA-リポソーム複合体をイオントフォレシスにより投与した。2回目の投与から1週間後に血液を採取し、遠心分離により血清を回収した。
【0075】
ELISA法による抗OVA抗体量の評価
得られた血清中の抗OVA抗体産生量を、以下の手順に従ってELISA法により評価した。
96well microtiter プレート(nunc immunoplate maxisorp corting) に、炭酸buffer(pH9.5)に溶解した0.01mg/ml OVAを50μl/wellにて添加し、4℃で一晩インキュベーションした。次に、immunowash(BIO-RAD)によりプレートをwash buffer(-)(1L PBS +2.1g NaCl)で3回洗浄し、ブロッキング剤(1%カゼイン+1%ゼラチン+0.5% BSA炭酸buffer溶液)を150μl/wellにて添加し、37℃、1時間インキュベートした。その後、wash buffer(+)(wash buffer(-)+0.05% triton-X)で上記と同様にプレートを3回洗浄し、10倍から20000倍に段階的に希釈した血清サンプルを添加した。37℃で1時間インキュベート後、上記と同様にプレートをwash buffer(+)で3回洗浄し、HRP標識二次抗体を50μlずつ添加した。37℃、1時間インキュベート後、上記と同様にプレートをwash buffer(+)で3回洗浄し、TMBを50μlずつ添加することで発色させた。室温で10分インキュベート後、1N 硫酸を50μlずつ添加して発色を止め、マイクロプレートリーダー(BIO-RAD)により450nmの吸光度を測定した。
測定された吸光度の値から、未処理のラットの血清における吸光度の値を差し引いた値が、検出限界(吸光度0.08)以上となる血清サンプルの希釈倍率を指標として、抗OVA抗体産生量を評価した。
【0076】
結果は、図3に示される通りであった。OVA封入リポソームを陽極側から投与した場合には、血清中の抗OVA抗体は、すべての希釈倍率において全く検出できなかった(ND:not detect)。一方、OVA-リポソーム複合体を陰極側から投与した場合には約300倍の希釈倍率(平均値±標準偏差)においても抗OVA抗体が検出され、抗体産生が誘導されていることが確認された。
【0077】
試験例4
1.OVA-リポソーム複合体の調製
蛍光標識されていないOVAを使用し、実施例1と同様の手順で、OVA-リポソーム複合体を調製した。
【0078】
2.MPL(モノリン酸リピドA)を組み合わせたイオントフォレシスによる経皮免疫
市販のMPLアジュバント 100μlをバリカンで剃毛したラットの背部皮膚に塗布した後、試験例2と同様の手順でOVA-リポソーム複合体をイオントフォレシスにより投与した。対照として、MPLを塗布しないで同様の試験を行った。2回目のイオントフォレシスの1週間後に血液を採取し、遠心分離により血清を回収した。
【0079】
3.ELISA法による抗OVA抗体産生量の評価
試験例3と同様の手法により、抗体産生量をELISA法により測定・評価した。
【0080】
結果は、図4に示される通りであった。MPLをイオントフォレシスの直前に抗原投与部位に塗布した場合の抗体産生量(平均値)は、MPLを使用しない場合に比べて、約4倍以上であった。また、MPLを塗布した場合、血清を1000倍以上に希釈しても抗OVA抗体が有意に検出されていた。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】in vivo試験においてOVA-リポソーム複合体を投与するのに用いたイオントフォレーシス装置の概要を示す図である。
【図2】Aは、OVA-リポソーム複合体投与後のラット凍結皮膚サンプルについての、倒立型共焦点レーザースキャン顕微鏡による写真である。 Bは、OVA封入リポソーム投与後のラット凍結皮膚サンプルについての、倒立型共焦点レーザースキャン顕微鏡による写真である。
【図3】OVA-リポソーム複合体またはOVA封入リポソームを投与したラット血清中の抗OVA抗体産生量に関する、ELISAの結果を示す。
【図4】MPL(モノリン酸リピドA)およびOVA-リポソーム複合体を併用投与したラット血清中の抗OVA抗体産生量に関する、ELISAの結果を示す。
【符号の説明】
【0082】
1 イオントフォレーシス装置
2 電源装置
3, 4 電極構造体
5 皮膚
6,7 コード
31 陰電極
32 タンパク質−リポソーム複合体保持部
41 陽電極
42 電解液保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負に帯電した、タンパク質−リポソーム複合体を含んでなる、イオントフォレーシス用組成物であって、
前記タンパク質−リポソーム複合体が、負に帯電したタンパク質と、カチオン性リポソームとから形成されている、イオントフォレーシス用組成物。
【請求項2】
前記負に帯電したタンパク質と、前記カチオン性リポソームとが、静電相互作用により結合している、請求項1に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項3】
前記タンパク質−リポソーム複合体が、−50〜−5mVのゼータ電位を有する、請求項1に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項4】
前記負に帯電したタンパク質と、前記カチオン性リポソームとの−/+電荷比が、2:1〜10:1である、請求項1に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項5】
前記タンパク質−リポソーム複合体の平均粒径が、100〜10000nmである、請求項1に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項6】
前記負に帯電したタンパク質が、3000〜100000の分子量を有する、請求項1に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項7】
前記負に帯電したタンパク質の負電荷の総計が、1〜100である、請求項1に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項8】
前記タンパク質が、pH3〜10において負電荷を有するものである、請求項1に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項9】
前記負に帯電したタンパク質が、抗原性を有する、請求項1に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項10】
前記カチオン性リポソームの平均粒径が、50〜1000nmである、請求項1に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項11】
前記カチオン性リポソームが、カチオン性脂質を少なくとも含んでなる、請求項1に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項12】
前記カチオン性脂質が、1〜10価の正電荷を有するC12〜20脂質である、請求項7に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項13】
前記カチオン性脂質が、1,2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニウム)プロパン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N,N,-トリメチルアンモニウム、ジドデシルアンモニウムブロミド、1,2-ジミリストイルオキシプロピル1-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムまたは2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(Sペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミウムトリフルオロアセテイトである、請求項11に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項14】
前記カチオン性リポソームが、ステロール、リン脂質またはそれらの組み合わせをさらに含んでなる、請求項11に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項15】
前記ステロールが、コレステロール、脂肪酸コレステリル、脂肪酸ジヒドロコレステリルまたはコレステリルエーテルである、請求項11に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項16】
前記ステロールがコレステロールである、請求項15に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項17】
前記リン脂質が、C12〜20リン脂質である、請求項14に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項18】
前記リン脂質が、L-α-フォスファチジルコリンジステアロイル、卵黄フォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルコリンからなる群から選択されるものである、請求項14に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項19】
乾燥形態である、請求項1に記載のイオントフォレーシス用組成物。
【請求項20】
医薬として用いられる、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
請求項9に記載の組成物を含んでなる、ワクチン製剤。
【請求項22】
アジュバントとともに用いられる、請求項21に記載のワクチン製剤。
【請求項23】
前記アジュバントが、経皮アジュバントである、請求項22に記載のワクチン製剤。
【請求項24】
前記経皮アジュバントが、モノリン酸リピドA、オリゴ核酸配列、リポポリサッカライド、ムラミルダイペプチドおよびウシ結核菌細胞壁からなる群から選択されるものである、請求項23に記載のワクチン製剤。
【請求項25】
電極と、
該電極の皮膚側に配置された、請求項1に記載の組成物を保持する、タンパク質−リポソーム複合体保持部と
を備えた、イオントフォレーシス用電極構造体であって、
イオントフォレーシスによって、タンパク質−リポソーム複合体を生体皮膚に放出することができる、電極構造体。
【請求項26】
電源装置と、
該電源装置の陰極に接続された、請求項25に記載の電極構造体と、
前記電源装置の陽極に接続された、電極構造体と、
を備えている、イオントフォレーシス装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−203174(P2009−203174A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44839(P2008−44839)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(505046776)TTI・エルビュー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】