タンパク質の誘導体化及び結合のための活性化シアル酸誘導体
【課題】天然のPSAを利用して薬物動態特性が改善したタンパク質治療剤の提供。
【解決手段】還元性末端及び/又は非還元性末端のシアル酸ユニットをN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基に変換させて、PSAの誘導体を合成する。この誘導体を、治療に有用な薬物、ペプチド若しくはタンパク質、又はドラッグデリバリーシステムアミン基又はヒドラジン基を含有する基質、と反応させて形成した、非架橋/架橋ポリシアル酸化化合物。
【解決手段】還元性末端及び/又は非還元性末端のシアル酸ユニットをN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基に変換させて、PSAの誘導体を合成する。この誘導体を、治療に有用な薬物、ペプチド若しくはタンパク質、又はドラッグデリバリーシステムアミン基又はヒドラジン基を含有する基質、と反応させて形成した、非架橋/架橋ポリシアル酸化化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元性末端又は非還元性末端において基質と反応するためのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を有する末端シアル酸ユニットを有し、且つ好ましくは主にシアル酸ユニットのみから成るポリシアル酸等の化合物誘導体、及びこれらを製造する方法に関する。これらの誘導体は、ペプチド、タンパク質、薬物、ドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム)、ウイルス、細胞(例えば、動物細胞)、微生物、合成ポリマー又はコポリマー等のような、アミン基を含有する基質との結合(conjugation)に有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリシアル酸(PSA)は、或る特定の菌株により、及び、哺乳動物において所定の細胞で製造される、天然に存在するシアル酸の非分枝ポリマーである(Roth他、1993)。それらは、ノイラミニダーゼによる消化である制限された酸加水分解、又は、天然の細菌又は細胞由来のポリマー形態の分別のいずれかにより、n=約80以上のシアル酸残基から、下はn=2までの様々な重合度で製造することができる。ホモポリマー形態、すなわち、E.coli K1株及びB群髄膜炎菌のカプセル状ポリサッカライドを含む、アルファ−2,8結合したPSA(神経細胞接着分子(N−CAM)の胚形態においても見出される)が存在するように、種々のPSAの組成も変化する。E.coli K92株及びN.meningitidisのC群ポリサッカライドの、アルファ−2,8、アルファ−2,9が交互に結合したPSAのようなヘテロポリマー形態も存在する。さらに、シアル酸は、N.meningitidisのW135群又はY群のようなシアル酸以外のモノマーとの交互コポリマーにおいても見出され得る。哺乳動物において、PSAについてのレセプターは知られていないが、PSAは、病原菌による免疫系及び補体系の回避、及び胎児成長期における幼若な神経のグリアの接着(glial adhesiveness)の調節(ここで、このポリマーは抗接着機能を有する)を含む、重要な生物学的機能を有する(Muhlenhoff他、1998;Rutishauser、1989;Troy、1990及び1992;Cho及びTroy、1994)。E.coli K1株のアルファ−2,8結合したPSAは、「コロミン酸」としても知られており、本発明を例示するために(様々な長さで)用いられる。
【0003】
細菌性ポリサッカライド中のPSAのアルファ−2,8結合形態は、免疫原性キャリアタンパク質に結合した場合でさえも(哺乳類の被験体において、T−細胞又は抗体の反応のいずれも誘発しない)固有に非免疫原性であり、これは哺乳類(同様に細菌の)ポリマーとしてのその存在を反映するものであり得る。ポリマーのより短い形態(最大n=4)は、体内に広く分布しており、PSAに対する免疫寛容を効果的に課し、且つ維持すると考えられている、細胞表面ガングリオシドにおいて見出される。近年、PSA、特にアルファ−2,8結合したホモポリマーPSAの生物学的特性は、タンパク質及び低分子量の薬物分子の薬物動態特性を改良するために活用されてきた(Gregoriadis、2001;Jain他、2003;米国特許第5846,951号(A);国際公開特許第0187922号)。カタラーゼ及びアスパラギナーゼを含む多くの治療タンパク質のPSA誘導体化(Fernandes及びGregoriadis、1996及び1997)は、循環半減期及びそれらの安定性において劇的な向上をもたらし、また、そのようなタンパク質は、治療タンパク質への事前曝露の望ましくない(及び、時には避けられない)結果として生じる既存の抗体に直面して、用いルことを可能にする(Fernandes及びGregoriadis、2001)。多くの点で、ポリシアル酸化されたタンパク質の改良された特性は、ポリエチレングリコール(PEG)を用いて誘導体化されたタンパク質に匹敵する。例えば、それぞれの場合において、半減期は増大し、タンパク質及びペプチドは、タンパク質消化に対してより安定であるが、生物学的活性の維持は、PEGを用いた場合よりも、PSAを用いた場合のほうが大きいと思われる(Hreczuk−Hirst他、2002)。また、PEGは、非常にゆっくりとしか生分解せず(Beranova他、2000)、高分子量及び低分子量の両方の形態が組織中に蓄積する傾向にある(Bendele他、1998;Convers他、1997)ため、慢性的に投与しなければならない治療剤とのPEGの使用については疑問がある。PEG化されたタンパク質は、血液循環中における複合体の滞留時間にも影響を与える可能性のある抗PEG抗体を生じることが見出された(Cheng他、1990)。治療剤と結合する非経口投与ポリマーとしてのPEGの確立した歴史にもかかわらず、その免疫毒性学、薬理学及び代謝についてのより良い理解が求められる(Hunter及びMoghimi、2002;Brocchini、2003)。同様に、PEGの蓄積は毒性につながる可能性があるため、高投与量を必要とする治療剤(したがって最終的には高投与量のPEG)におけるPEGの有用性についての懸念が存在する。したがって、アルファ−2,8結合したPSAは、本来人体の一部である、免疫学的に「見えない」(immunologically ’invisible’)生分解性ポリマーであり、組織のノイラミニダーゼにより、非毒性サッカライドであるシアル酸に分解することができる、PEGの有力な代替物を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等のグループは、以前の学術論文及び登録特許において、タンパク質治療剤の薬物動態特性の改善における、天然のPSAの有用性について記載している(Gregoriadis、2001;Fernandes及びGregoriadis、1996、1997、2001;Gregoriadis他、1993、1998、2000;Hreczuk−Hirst他、2002;Mital、2004;Jain他、2003、2004;米国特許第05846,951号(A);国際公開特許第0187922号)。今回、本発明者等は、PSA誘導体化タンパク質(及び治療剤の他の形態)を製造する新規の組成物、及び新規の方法をもたらす、新規なPSAの誘導体を記載する。これらの新規の物質及び方法は、医療倫理及び監督機関(例えば、FDA、EMEA)の安全要求事項のため、薬物(drug entities)の化学的及び分子的定義が非常に重要であるので、ヒト及び動物における使用が意図されるPSA誘導体化治療剤の製造に対して特に有用である。
【0005】
タンパク質のような治療剤へのポリサッカライドの結合のための方法は、以前に記載されている(Jennings及びLugowski、1981;米国特許第5846,951号(A);国際公開特許第0187922号)。これらの方法のうちのいくつかは、ポリマーの「非還元性」末端の化学的誘導体化に依存し、これによってタンパク質反応性アルデヒド部分を生じる(図1)。PSA(及び他のポリサッカライド)の還元性末端は、タンパク質の構造及び結合の間のPSAの化学的結合性(integrity)を保存するために必要な穏和な条件下で、タンパク質に対して弱反応性しか示さない。ビシナルジオールを含むシアル酸末端ユニットの非還元性末端は、過ヨウ素酸塩を用いて容易に(且つ選択的に)酸化され、これによりモノアルデヒド誘導体を生じ得る。この誘導体はタンパク質に対してより反応性があり、還元アミノ化及び他の化学反応によるタンパク質の結合に好適な反応性エレメントを含む。本発明者等は、このことについて、米国特許第5846,951号(A);国際公開特許第0187922号に記載している。この反応は、図1中に例示され、ここで、
a)は、末端のシアル酸の非還元性末端においてタンパク質反応性アルデヒドを形成するための、過ヨウ素酸ナトリウムを用いたCA(E.coli由来のアルファ−2,8結合したPSA)の酸化後の、アルデヒドとタンパク質の第1級アミン基との反応を示し、
b)は、タンパク質のアミノ基との安定で不可逆性の共有結合を形成するための、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)を用いた、シッフ塩基の選択的還元を示す。
【0006】
国際公開特許第2005/016973号において、本発明者等は、末端シアル酸ユニットを介して導入されるスルフヒドリル反応性基を有するポリサッカライド誘導体を記載している。このユニットは通常、ポリサッカライドの非還元性末端におけるシアル酸ユニットの誘導体化によって導入される。スルフヒドリル反応性基は好ましくはマレイミド基である。この基を導入する反応は、一方の末端にスルフヒドリル反応性基、及び他方の末端にヒドラジド又はエステル等の特性基を有するヘテロ二官能性試薬と、ポリサッカライドのシアル酸誘導体化末端ユニット上のアルデヒド基又はアミン基とを反応させることを伴い得る。この生成物は、例えばCysユニット又は導入されるスルフヒドリル基において、タンパク質の部位特異的誘導体化に有用である。
【0007】
PSAを治療剤と結合させることを記載している種々の方法(米国特許第5846,951号(A);国際公開特許第0187922号)は理論的に有用であるが、タンパク質とPSAの非還元末端(アルデヒド形態)との反応を介した複合体の許容可能な収量の達成には、高温でのタンパク質安定性につながらない反応時間を必要とする(例えば、インターフェロンアルファ−2b)。次に、達成することができないか又は非経済的となるおそれのある反応物濃度(すなわち、過剰量のポリマー)を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明者等は、還元性末端及び/又は非還元性末端にNHS−シアル酸基を有するポリシアル酸と、タンパク質とを結合させる新規の方法の開発により、この問題を解決した。還元性末端の弱い反応性を(非還元性末端を破壊し、この還元性末端をキャッピングし、且つ二官能性架橋剤により誘導体化することによって)有益な効果のために活用することにより、過ヨウ素酸塩で酸化されたCAによるタンパク質の還元アミノ化の確立された方法(図1)を用いた、図2及び図3に記載される生成物の複雑さを回避することができる。
【0009】
米国特許第4,356,170号においてJennings及びLugowskiは、予備還元工程後に酸化工程を伴う、活性化された還元性末端ユニットを介したタンパク質による細菌性ポリサッカライドの誘導体化を記載している。Jennings他によりこのアプローチが用いられた例としては、還元性末端ユニットが、N−アセチルマンノサミン、グルコース、グルコサミン、ラムノース及びリボースであるポリサッカライドが挙げられる。
【0010】
欧州公開特許第0454898号において、タンパク質のアミノ基は、グリコサミノグリカンの還元性末端の糖部分の還元及び部分的酸化により合成されたアルデヒド基と結合する。この方法で扱われるグリコサミノグリカンとしては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸が挙げられる。これらの化合物のいずれも、還元性末端にシアル酸ユニットを有さない。
【0011】
本発明において、シアル酸ユニット由来の少なくとも1つの末端ユニットを有するポリシアル酸基質を含む新規の化合物が提供される。当該化合物は、必要に応じてリンカーを介して2位又は7位炭素のいずれかで末端ユニットと結合するN−ヒドロキシスクシンイミドのエステルを含む。N−スクシンイミジルオキシ基は以後、NHS基と表される。本発明において、スクシンイミジル部分は、非置換であっても、スルホニル基又は有用な溶解特性を与える他の基のような基で置換されていてもよい。誘導体化された末端ユニットは、非還元性末端シアル酸基又は還元性末端シアル酸基に由来し得る。PSA分子1つ当たり、2つのこのようなNHS基、例えば、非還元性末端シアル酸基由来の末端ユニットに1つのNHS基、及び還元性末端シアル酸基由来の末端ユニットに残りのNHS基が存在し得る。
【0012】
本発明の化合物はまた、一般式の観点から定義されてもよい。新規の化合物は好ましくは一般式I、II又はIII
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、R1はH又はスルホニルであり、
R2は連結基であり、
Aは、NR5、NR5NR6、O又はSRであり(式中、R5及びR6は独立して、H、C1〜4アルキル及びアリールから選択される)、
SylOはシアリル基であり、
nは1〜100であり、mは0〜100であり、
R3は、水素又はモノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリシアル酸基、タンパク質、ペプチド、脂質、薬物、細胞膜若しくは細胞壁成分、又はドラッグデリバリーシステムであり、
R4は、水素又はモノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリシアル酸基、アルキル基、アシル基、薬物、又はドラッグデリバリーシステムである)
を有する。
【0015】
化合物I〜III中に存在するNHS基及びエステル結合と共に連結基、すなわちR2は、一般的に、化合物を合成するのに用いられる二官能性NHS試薬に由来する構造を形成する。好適な二官能性試薬を本願の後半で挙げる。合成中、PSA出発物質に由来するAで表示される基は、(反応しないNHS基と反対の末端における)NHS試薬からの対応する脱離基の欠失、又は代替的に試薬の構造的再配置を伴って、それ自体を二官能性試薬の適切な末端に結合させる。通常、連結基R2は、式I〜式IIIの化合物中でAと結合するカルボニルと共に、アルカン−ジイル基を含む。好ましくは、R2はCpH2pCO(式中、pは2〜12である)である。代替的に、連結基は、アルカン炭素原子の1つがA基と結合しているアルカンジイル基を含み得る。R2としては、例えば、PSA試薬又はNHS試薬の予備誘導体化反応に由来する、中鎖エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合及び/又は1−チオ−N−スクシンイミジルアミン結合が挙げられ得る。R2は、アルキレンオキシアルキレン基又はアルキレンオリゴオキシアルキレン基であってもよい。
【0016】
Aは好ましくは、第1級アミンPSA出発試薬に由来するNR5(式中、R5は水素である)である。このようなアミンPSA誘導体、及びそれらを製造する方法の例を以下に示す。
【0017】
1つの実施の形態において、末端シアル酸ユニットは、マレイミド基を含有する試薬と結合し得る有用な官能基を生成する予備化学反応に供される。
【0018】
1つの実施の形態において、NHS基を連結し得る官能基を生成する予備工程として、アルデヒド基を生成する、本文献で前に開示した化学反応を使用することが便利であることを見出した。
【0019】
本発明は、新規の化合物を製造するプロセスを含む。必要に応じて末端シアル酸ユニット(複数可)の予備誘導体化工程(複数可)の後で、官能基の一方がNHSエステルであり、且つ官能基の他方がシアル酸ユニット(複数可)又はその誘導体(複数可)と反応性である二官能性試薬と、場合によっては、試薬と末端シアル酸基(複数可)又はその誘導体の2位又は7位炭素とを共有結合させると共に、NHS基が変化しないような条件下で、PSA基質を反応させる、上記新規の化合物を合成する新規のプロセスも提供する。
【0020】
好ましい実施の形態において、基質中のシアル酸ユニットは、アミン基を生成する予備工程に供される。
【0021】
誘導化されるシアル酸ユニットが、還元性末端ユニットである場合、予備工程は、アノマー炭素におけるアミン化、又は好ましくは一連の
a)ビシナルジオール基を形成するために、前記還元性末端シアル酸ユニットを開環する還元工程と、
b)アルデヒド基を形成するための、工程a)で形成された前記ビシナルジオール基の選択的酸化工程と、
c)例えばシアノ水素化ホウ素(cyano borohydrate)を用いたアンモニウム化合物との還元アミノ化による工程b)のアルデヒドのアミノ基への変換工程と、
d)工程c)による前記アミノ基を、過剰量のホモ二官能性NHS試薬と反応させる工程と
を含み得る。
【0022】
このプロセスに用いられる還元性末端シアル酸基を有する出発基質物質は好ましくは、8位炭素原子を介して隣接ユニットと結合するシアル酸ユニットを還元性末端に有する。工程b)において、末端シアル酸の還元的開環の後、還元性末端の6,7−ジオール基を酸化して、7位炭素原子にアルデヒド基を形成し、続いてアミノ基の導入(工程c)及びNHS基の導入(工程d)を行う。
【0023】
代替的な実施の形態において、還元性末端におけるシアル酸ユニットは、9位炭素原子を介して隣接するユニットと結合し、工程b)において、工程a)中に形成された還元性末端のC−7及びC−8のジオール基を酸化して、8位炭素原子にアルデヒド基を形成した後、アミノ基を形成し(工程c)、その後NHS基を形成する(工程d)。
【0024】
1つの好ましい実施の形態によれば、出発物質は、還元性末端にシアル酸、また非還元性末端にビシナルジオール基を有する末端シアル酸ユニットを有するPSAである。このプロセスの第1の工程(工程a)において、還元反応をポリサッカライドの還元性末端において行い、ビシナルジオールを提供するように開環する。還元工程中、非還元性末端におけるビシナルジオール官能基は修飾されることなく、原型を保っている。第2の工程は酸化(工程b)であり、このプロセス中、非還元性末端及び還元性末端におけるビシナルジオールは酸化されて、アルデヒド基を形成する。工程cにおいて、アルデヒドがアミン化され、工程dにおいて、NHS基が結合する。結果として、生成物は、2つのNHS基を有する二官能性となり、また、還元性末端及び非還元性末端において両方のNHS基を含む適切に官能化された基質による反応により基質を架橋することができる能力に由来する、有用な治療活性を有し得る。
【0025】
還元性末端シアル酸がアミン化するプロセスの別の好ましい実施の形態によれば、非還元性末端に末端シアル酸も有するシアル酸出発基質物質は、以下の:
e)非還元性末端シアル酸ユニットをC−7及びC−8のビシナルジオール基において酸化し、C−7にアルデヒドを形成するための選択的酸化工程と、
f)C−7のアルデヒド基を対応するアルコールへと還元するための還元工程と
に供される。この工程はまた同時に、還元性末端のシアル酸環を還元的に開環する、すなわち、工程a)と同時に行われる。本発明のこの態様は、「不動態化された」シアル酸非還元性末端を有するシアル酸誘導体を提供し、過ヨウ素酸塩による酸化(工程b)及び還元アミノ化(工程c)を介して還元性末端を活性化させる。
【0026】
本発明のさらなる実施の形態によれば、非還元性末端に末端シアル酸を有するシアル酸出発物質が、以下の:工程e)非還元性末端シアル酸ユニットをC−7及びC−8のビシナルジオール基において酸化し、7位炭素原子上にアルデヒドを形成するための選択的酸化工程と;工程c)アンモニウム化合物との還元アミノ化による、工程e)のアルデヒド基のアミノ基への変換工程と、そして;工程d)得られるアミノ基の修飾工程とに供される、新規のプロセスを提供する。
【0027】
本発明のこの実施の形態において用いられる出発物質は好ましくは、隣接するユニットの8位炭素原子を介して隣接するユニットと結合する非還元性末端にシアル酸ユニットを有するべきである。工程e)において、C−7及びC−8のジオール基は酸化されて、後にアミノ基(工程c)及びNHS基(工程d)に変換されるアルデヒド基を7位炭素原子に形成する。
【0028】
代替的な実施の形態において、非還元性末端のシアル酸ユニットが、隣接するユニットの9位炭素原子を介して隣接するユニットと結合する場合、工程b)において、この隣接する基のC−7及びC−8のジオールは酸化され、アミノ基(工程c)及びNHS基(工程d)で置換されるアルデヒド基を8位炭素原子上に形成する。
【0029】
上記酸化工程(b及びe)は好ましくは、実質的な長鎖高分子骨格の出発物質の中鎖開裂も、その後の実質的な分子量減少も生じない条件下で行われるべきである。この酸化工程を実施し得る酵素を用いてもよい。より便宜的には、酸化は化学酸化である。反応は、高分子系過ルテニウム酸塩等の固定化試薬を用いて、又は試薬溶液を用いたより直接的な方法によって行うことができる。酸化剤は好適には、過ルテニウム酸塩、又は好ましくは過ヨウ素酸塩である。酸化は、1mM〜1Mの濃度範囲の過ヨウ素酸塩を用いて、5〜10のpH範囲、0〜60℃の温度範囲、1分〜48時間の範囲の時間で行い得る。
【0030】
工程a)及び工程f)の好適な還元条件は、触媒と共に水素、すなわち好ましくは水素化ホウ素等の水素化物を利用し得る。これらは、Amberliteにより支持される水素化ホウ素のように固定化されていてもよい。好ましくは、水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化物は、1μM〜0.1Mの濃度範囲、6.5〜10のpH範囲、0〜60℃の温度範囲、1分〜48時間の期間で還元剤として用いられる。反応条件は、PSA出発物質のペンダント型カルボキシル基が還元されないように選択される。予備酸化工程を(すなわち、非還元性末端において)行う場合、生成されるアルデヒド基が、ビシナルジオール基の一部ではないアルコール基に還元される。他の好適な還元剤は、酸性条件下でシアノ水素化ホウ素、例えば、高分子により支持されるシアノ水素化ホウ素、又はアルカリ金属シアノ水素化ホウ素、L−アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、L−selectride(商標)、トリアセトキシ水素化ホウ素等である。
【0031】
反応の様々な工程(例えば、還元及び酸化)中、各中間体は、次の工程にかけられる前に、酸化剤及び還元剤、架橋剤、並びにNaCNBH3、シスタミン等の他の試薬から単離する必要がある。工程が溶液相中で行われる場合、単離は、エチレングリコールを用いた酸化剤の過剰量の消費、エタノール沈殿、ポリサッカライドの透析、サイズ排除クロマトグラフィ、及び水溶液を濃縮するための限外ろ過等の、従来の技術によるものであり得る。還元工程による混合生成物を再度、透析及び限外ろ過によって分離してもよい。生成物の単離を容易にする固定化された酸化試薬及び還元試薬により実行される反応を考案することができる。
【0032】
中間体アミン化合物を生成し、その後二官能性NHS試薬と反応させる本発明のプロセスにおいて、NHS基はアミン基と反応性であるため、ホモ二官能性NHS試薬を用いることが便利である。このような試薬の2つのNHS基が等しく反応性である場合、架橋度を最小にするためにかなり過剰な量の試薬を用いる必要があり、この架橋は、アミン中間体の2つの分子とジ−NHS試薬の1つの分子との反応を含む。反応はまた、第2のNHS基が変わらず残るような条件下で行う必要がある。反応生成物は、過剰量の未反応のNHS試薬から分離可能でなければならない。
【0033】
NHS基は水中でかなり不安定である。そのため、反応条件は、NHS試薬と、水又は他のプロトン性溶媒との接触を最小限にしなければならない。好ましくは、反応は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で行われる。基質を溶解するために、少量の水、又は他のプロトン性溶媒及び極性溶媒を含む必要がある場合がある。この量は、最小、例えば、全溶媒の10%未満に維持されるべきである。試薬の可溶化を最適なものとし、且つ反応を促進させるため、温度を上げることが望ましい場合があるが、但し、これによって、望ましくない基質の酸化又は開裂等の化学修飾が為されることはない。
【0034】
さらなる実施の形態において、工程a)及び工程b)、並びに/又は工程c)によって生成されるアルデヒド末端化中間体はヒドラジンと反応し、ヒドラゾン中間体を形成する。ヒドラゾン基は、NHS基と反応性である。二官能性NHS試薬が反応する本発明のプロセスの必須工程において、このNHS試薬は便利にはジ−NHS化合物である。上記のアミン中間体における反応と同じ注意を守らなければならない。反応スキームはスキーム8a)として示される。
【0035】
好適なジ−NHS試薬は、
ビス[2−スクシンイミジルオキシカルボニル−オキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)及びそのスルホ類似体、
ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)(BS3)、
ジスクシンイミジルグルタレート(DSG)、
ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、
ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、
ジスクシンイミジルタートレート(DST)又はそのスルホ類似体、
3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、並びに
エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)及びそのスルホ類似体である。
【0036】
該プロセスの代替的な実施の形態によれば、基質におけるアミン基の形成を含む予備工程の代わりに、チオール基が好ましくは1つの末端シアル酸ユニットに、代替的には、末端シアル酸ユニット及び反対末端の末端ユニットに提供され、シアル酸又は別の糖残基になり得る予備工程が提供される。
【0037】
チオール基は、例えば、シスタミンとアルデヒド基とを反応させた後、還元することによって形成される。アルデヒド基は、それぞれの末端基を有する出発物質において工程a)及び工程b)、並びに/又は工程e)を行うことによって、1つ又は両方の末端ユニットに導入することができる。出発物質は付加的に、シスタミンとの反応のためにアルデヒドに変換され得るビシナルジオール基を有する非還元性末端の糖を有し得る。代替的には、このような末端基は後の酸化工程、それから還元工程によって不活性化され、二官能性チオール中間体の形成を阻害し得る。チオール化は、Pawlowski他によって記載されている一般的な手法を用いて行われる。
【0038】
チオール基は、代替的に、工程a〜工程cにおいて上記で生成されるアミン中間体上で行われる一連の工程において導入され得る。チオール基は、アミン基と、チオール化シアル酸ユニットを含む2−イミノチオラン(2−IT)(Pawlowski,A.他(前掲))との反応によって導入される。
【0039】
チオール基を含有する中間体は新規の化合物であり、本発明のさらなる態様を示す。当該化合物は、以下の一般式IV、V、VI又はVII
【0040】
【化2】
【0041】
(式中、
R7は連結基であり、
A1はNR12(式中、R12はH、C1〜4アルキル又はアリールである)であり、
GlyOはグリコシル基であり、kは0〜100であり、
Gly1Oは、ペンダント型カルボン酸基上で必要に応じて誘導体化されるグリコシル基であり、R8は、モノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリサッカライド基、タンパク質、ペプチド、脂質、薬物、ドラッグデリバリーシステム、又は細胞膜若しくは細胞壁の成分であり、
R8及びR9はそれぞれ、水素、又はモノ−、ジ−、オリゴサッカライド基、アルキル基、アシル基、薬物、脂質又はドラッグデリバリーシステムであり、
R10は、モノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリサッカライド基、タンパク質、ペプチド、脂質、薬物、ドラッグデリバリーシステム、又は細胞膜若しくは細胞壁の成分、
又は基
【0042】
【化3】
であり、
【0043】
【化4】
【0044】
(式中、R13及びR14の一方は水素であり、他方はモノ−、ジ−若しくはオリゴサッカライド基、アルキル基、アシル基、薬物、脂質又はドラッグデリバリーシステムである)である)
で表され得る。
【0045】
連結基R7は、上記に列挙されるR2と同じ基から選択される。
【0046】
R8及びR9の定義は好ましくは、それぞれR3基及びR4基の好ましい定義として上記されたのと同じである。GlyOは好ましくはSylOである。
【0047】
GlyOがSylOであるチオール中間体は、本発明の第1の態様のプロセスの必須工程において、チオール反応性官能基並びにNHS基を有するヘテロ二官能性リンカーと反応する。このようなチオール反応性基は、例えば、N−マレイミド基、又はチオピリジルジチオ基、ビニルスルホン基若しくはN−ヨードアセトアミン基である。好適な二官能性試薬の例は、
N−(α−マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル(AMAS)、
N−(β−マレイミドプロピルオキシ)スクシンイミドエステル(BMPS)、
N−(ξ−マレイミドカプリルオキシ)スクシンイミドエステル(EMCS)、又はそのスルホ類似体、
N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート)(LC−SMCC)、
m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート)(SHCC)又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート(SMPB)又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−6−(β−マレイミド−プロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、
N−(k−マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ−KMUS)、
スクシンイミジル−6−[3−2(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート(LC−SPDP)又はそのスルホ類似体、
4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)又はそのスルホ−LC類似体、
N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、
N−スクシンイミジル[4−ビニルスルホニル)ベンゾエート(SVSB)、
スクシンイミジル−3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)、及び
N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)及び
N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)又はそのスルホ類似体である。
【0048】
一般的に用いられる反応の反応条件はまた、例えばHermanson(1995)を参照して、本明細書で用いられるものであり得る。
【0049】
上記NHSヘテロ二官能性試薬は、その水溶性、及び、複合体が開裂性か又は非開裂性かに応じて選択され得る。好ましくは、短く且つ非免疫原性であるリンカーを有する試薬である。
【0050】
NHS試薬との反応は通常、0〜100%DMSO溶液中(好ましくは最少量の水、例えば10%を用いて)0〜150℃、好ましくは20℃の温度で行われる。中間体上のシアル酸基質は、加熱、例えば、音波処理又はマイクロウェーブによって、好ましくは不活性環境下で溶解され得る。生成物の続く使用における有機溶媒の存在に耐性がない場合には、水溶性NHS試薬を用いることができる。また、生成物から除去されていない未反応の試薬がいずれも細胞膜を透過しない可能性があるため、生成物の使用が細胞表面結合に関する場合には、水溶性NHS試薬が好ましいであろう。
【0051】
本発明において、出発物質はポリシアル酸(PSA)である。このような化合物は、分子中にシアル酸以外のユニットを含んでいてもよい。例えば、シアル酸ユニットが他のサッカライドユニットと交互に配列されていてもよい。しかしながら、好ましくは、ポリサッカライドは実質的に、アルファ−2,8及び/又はアルファ−2,9結合しているシアル酸のユニットのみから成ることが好ましい(ポリシアル酸(以後、PSA))。
【0052】
出発物質は、少なくとも2、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、例えば少なくとも50のシアル酸ユニットを有する。PSAは、いずれの供給源、好ましくは、細菌(例えばE.coli K1又はK92、B群髄膜炎菌)、又は牛乳若しくはN−CAM等の自然源に由来するものであってもよい。シアル酸ポリマーは、N.meningitidisの135群又はV群等のヘテロ多量体ポリマーであってもよく、又は化学合成されていてもよい。PSAは、塩又は遊離酸の形態であってもよい。それは、分子量が減少された後、細菌源により回収されるような加水分解形態であってもよい。PSAは、1.01、実際は2以上と同程度もの多分散性を有するような狭いか又は広範な分子量を有する物質であってもよい。好ましくは、使用されるPSAの分子量の多分散性は、1.2未満である。
【0053】
天然型の、上記の種類の中間体としての、又は広い分子量分布を有する最終生成物であるいずれかのPSA群は、より低い多分散性を有する画分、すなわち、様々な平均分子量を有する画分に分画され得る。分画は好ましくは、溶出のために好適な塩基バッファーを用いたアニオン交換クロマトグラフィによって行われる。好適なアニオン交換媒体、すなわち、第4級アンモニウムイオンペンダント基(すなわち、強塩基)を有する、活性化されたアガロースに基づく強イオン交換物質等の分離用媒体を見出した。溶出バッファーは非反応性であり、所望の生成物を各画分の塩基から蒸発によって回収し得るように、好ましくは揮発性である。好適な例は、トリエタノールアミン等のアミンである。回収は、例えば、凍結乾燥によるものであってもよい。分画方法は、他のPSA誘導体に対するのと同様に、PSA出発物質についても好適である。このため、この技術は、本発明の必須のプロセス工程の前後いずれでも適用することができる。
【0054】
好ましくは、分画のプロセスは、イオン交換クロマトグラフィ(IEC)を用いて、また溶出バッファーとして好ましくは揮発性である塩基又は酸を用いて、好ましくは5kDaより大きい分子量(Mw)を有するイオン性の群に関して実施される。好ましくは、PSAはカルボン酸基を有し、イオン交換はアニオン交換である。好ましくは、溶出バッファーはトリエタノールアミン等のアミンを含み、PSAの回収は好ましくは溶出画分を凍結乾燥することによるものである。
【0055】
本発明のPSA−NHS化合物は、例えば、生物学的に有用な化合物であるアミンを誘導体化するための続くプロセスにおいて使用することができる。このような反応は、好ましくはリン酸、炭酸水素/炭酸、HEPES又はホウ酸バッファー中で、好ましくは5〜200mMの濃度で行われ得る。第1級アミンを含有していなければ、他のバッファーを使用してもよい。例えば、第3級アミンのみを含有しているため、HEPESを使用することができる。中性pHから塩基性pHまでの大過剰量のトリス/グリシンを、クエンチする反応の終わりに添加してもよい。反応は好ましくは、pH7〜9、4℃〜20℃で30分〜2時間行われ得る。PSA−NHS化合物は、アミンの濃度に応じて、タンパク質(又は他の誘導性化合物)に対して2〜50倍過剰モルで用いられ得る。通常、PSA−NHS化合物の濃度は好ましくは、0.1〜10mMで変動し得る。より希薄なタンパク質溶液が、PSA−NHS化合物のNHS基を過剰に加水分解することから、アミン、例えば、タンパク質の濃度が好ましくは、約10〜100μMに維持され得る。
【0056】
生成物であるNHS化合物は、アミン基が好適にリジンのイプシロンアミン基又はN末端アミノ基である、アミン基を含有するタンパク質を誘導体化するため特に価値がある。この生成物は、タンパク質又はペプチドの治療活性剤、例えばサイトカイン、成長ホルモン、酵素、ホルモン及び抗体又はそれらのフラグメント等を誘導体化するために特に価値がある。代替的に、このプロセスは、例えば、NHS基をリポソーム形成成分のアミン基と反応させることによって、リポソーム等のドラッグデリバリーシステムを誘導体化するのに用いることができる。他のドラッグデリバリーシステムは、米国特許第5846951号(A)に記載されている。誘導体化され得る他の物質としては、ウイルス、微生物、細胞(例えば、動物細胞)、合成ポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0057】
本発明はまた、新規の化合物が、NHS基とアミン基との反応に好適な条件下で、誘導性アミン基を有する生物学的関連化合物と反応して、共有結合体を形成する方法を提供する。生物学的関連分子は好ましくはペプチド又はタンパク質であり、アミン基はLysユニットの側鎖上にあるか、又はペプチド若しくはタンパク質のN末端に存在する。誘導体化度は1.0未満であってもよいが、好ましくは少なくとも1.0、例えば少なくとも1.5であり、このことはすなわち、生物学的に活性な化合物の各分子が少なくとも1つのPSA基質部分と結合することを示す。
【0058】
新規のPSA化合物との反応によるタンパク質及びドラッグデリバリーシステムの誘導体化は、半減期を増大させ、安定性を高め、免疫原性若しくは抗原性を低減し、且つ/又は溶解性及びそれゆえ生物学的利用能及び薬物動態特性を制御し得るか、又は活性剤の溶解性、若しくは誘導体化された活性剤を含有する溶液の粘度を改良し得る。
【0059】
新規の好ましい単官能性PSA−NHSは反応性が高く、修飾されていない還元性末端を有するPSA形態の使用により生成され得るかなりの複雑さ(図2)を回避することから、薬学的に許容可能な生成物の合成及び製造をより促進させる。ポリマーの新規な形態の生成(図5)は、好ましくは過ヨウ素酸塩による選択的酸化(工程e)を伴い(前述のセクションを参照のこと)、アルデヒド官能基を非還元性末端に導入した後、還元アミノ化し(工程c)、縮合してNHS官能性を形成する(工程d)。しかしながら、図1に例示された従来技術とは異なり、このアルデヒド部分は、例えば水素化ホウ素による還元によって破壊される場合がある(工程a)。ポリマーの他の末端において、水素化ホウ素による還元工程はまた、ヘミケタールを還元することによって同時に還元性末端の環構造の開環を固定する。ケトンのこのヒドロキシル部分への同時還元は、第2の酸化工程における選択的酸化に適する新たなジオール官能性を還元性末端に導入する。天然ポリマーを(首尾良く)過ヨウ素酸塩で酸化し、水素化ホウ素で還元し、過ヨウ素酸塩で2回目の酸化を行い、NHS化合物を形成するようにアミノ化及び結合させる場合、厳密に単官能性であり、先に還元される末端にのみ1つの反応性基(すなわち、NHS基)を有する新規なポリマー形態が生成される(図5)。
【0060】
様々な誘導体の縮合によるタンパク質反応性のスキームを図9及び図10に記載する。単官能性PSAは、最も外側の非還元性末端を用いて、タンパク質と、単一方向にしか結合を引き起こすことなく、また意図せずにタンパク質を架橋することはない。この新規の反応(図5)方法のスキームは、(図2に記載されるように)意図される生成物を様々な意図されるものではない生成物から精製する必要性を回避する。この意図されるものではない生成物はこの新規の反応スキームにおいて完全に回避される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1a】非還元性シアル酸末端ユニットの従来技術による活性化を示す反応スキームである。
【図1b】タンパク質−アミン部分を用いた、反応スキーム1aの生成物のアルデヒド部分の従来技術による還元アミノ化を示す反応スキームである。
【図2】副次反応による、可能性のある副生成物を概略的に示す。
【図3】ケタールとPSAの還元性末端シアル酸ユニットの閉環形態との間の互変異性を示す反応スキームである。
【図4】(非還元性末端がビシナルジオールを有さない場合に)還元性末端誘導体化NHSコロミン酸の調製を示す。
【図5】還元性末端誘導体化NH2−CAコロミン酸(ビシナルジオールは非還元性末端において除去される)の調製を示す。
【図6】CA−NHS−タンパク質複合体の調製の一般的なスキームを示す。
【図7a】誘導体化チオールコロミン酸(非還元性末端にCA−SH)の調製を示す。
【図7b】NHS−マレイミドを用いたCA−SHを介するCA−タンパク質結合の概略図を示す。
【図7c】NHS−マレイミド(AMAS)を用いたCA−SHを介するCA−タンパク質複合体の調製を示す。
【図8a】還元性末端上のNHSを介するCA−タンパク質複合体の調製を示す。
【図8b】ポリシアル酸の還元性末端のキャッピングを示す。
【図8c】非還元性末端誘導体化CAの調製を示す。
【図9】非還元性末端上のビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)を用いたCA−タンパク質複合体の調製を示す。
【図10】架橋剤であるDSGを用いたCA−タンパク質複合体の概略図を示す。
【図11】実施例5にあるように分離されたCAについてのゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)のクロマトグラムを示す。
【図12】CA−NHS−成長ホルモン(GH)タンパク質結合反応(CA 35kDa)に関するサイズ排除HPLCを示す。
【図13】CA−NHS−GH複合体(CA 35kDa)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を示す。
【図14】未反応のCA及び反応したCAのネイティブPAGEを示す。
【図15】実施例10にあるようなCAH−NHS反応のSDS−PAGE分析を示す。
【図16】図15の画分6のHPLCクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0062】
実施例
材料
メタ過ヨウ素酸ナトリウム及び分子量マーカーは、Sigma Chemical Laboratory(英国)から入手した。使用されるCA、鎖状アルファ−(2,8)結合したE.coli K1 PSA(平均22.7kDa、多分散性(p.d.)1.34;39kDa、p.d. 1.4;11kDa、p.d. 1.27)はCamida(アイルランド)から入手した。他の物質は、2,4ジニトロフェニルヒドラジン(Aldrich Chemical Company、英国);透析チューブ(3.5kDa及び10kDaのカットオフ限界(Medicell International Limited、英国));Sepharose SP HiTrap、PD−10カラム(Pharmacia、英国);XK50カラム及びSepharose Q FF(Amersham Biosciences、英国);トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(4〜20%及び16%)、トリス−グリシンドデシル硫酸ナトリウムランニングバッファー及びローディングバッファー(Novex、英国)を含む。脱イオン水は、Elgastat Option 4水精製ユニット(Elga Limited、英国)から得た。使用される全ての試薬は、分析用グレードである。プレートリーダー(Dynex Technologies、英国)を、タンパク質又はCAアッセイにおける分光学的測定のために用いた。
方法
タンパク質及びCA測定
シアル酸であるCAの定量評価は、別記されるように(Gregoriadis他、1993;Fernandes及びGregoriadis、1996及び1997)、レゾルシノール法(Svennerholm、1957)によって行った。GHはビシンコニン酸(BCA)比色法によって測定した。
【0063】
実施例1−IECによるCAの分画(CA、22.7kDa、p.d. 1.34)(参照例)
XK50カラムに900mlのSepharose Q FFを充填し、3カラム体積の洗浄バッファー(20mMトリエタノールアミン;pH7.4)を用いて、50ml/分の流量で平衡とした。CA(200mlの洗浄バッファー中に25グラム)をシリンジポートを介して50ml/分でカラムに供給した。その後、1.5カラム体積(1350ml)の洗浄バッファーでカラムを洗浄した。
【0064】
結合したCAを、1.5カラム体積の種々の溶出バッファー(0mM〜475mM NaClを25mMのNaCl刻みで含むトリエタノールアミンバッファー(20mM、pH7.4))、及び最終的に1000mMのNaClを含む同様のバッファーを用いて溶出し、全ての残余CA及び他の残余物(もしあれば)を除去した。
【0065】
試料を、5kDaの膜(Vivascience、英国)による高圧限外濾過によって20mlまで濃縮した。これらの試料を、4℃での限外濾過を繰り返すことにより、バッファーを脱イオン水に交換した。試料を、(実施例5で報告されるように)GPC及び(アルシアンブルーで染色される(実施例8))ネイティブPAGEによって、平均分子量及び他のパラメーターについて分析した。上記の手順を用いて生成したCAの狭い画分を、過ヨウ素酸ナトリウムで酸化し、GPC及びネイティブPAGEにより、ポリマーへの総変化について分析した。
【0066】
実施例2:CAの活性化(参照例)
新たに調製した0.02Mメタ過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4;CAに対して6倍過剰モル)溶液を20℃でCAと混合し、この反応混合物を暗所で15分間、磁気攪拌させた。酸化させたCAを、70%(最終濃度)エタノールを用いて、混合物を3000gで20分間遠心分離することによって沈殿させた。上清を除去し、ペレットを最小量の脱イオン水に溶解した。CAを再度70%エタノールで沈殿させた後、12,000gで遠心分離した。ペレットを最小量(quantitiy)の水に溶解し、凍結乾燥して、次に使用するまで−20℃で保存した。
【0067】
実施例3:CA及び誘導体の酸化状態の測定(参照例)
CAの酸化度の定量評価は、カルボニル化合物との相互作用において、難溶性の2,4ジニトロフェニルヒドラゾンを生じる2,4ジニトロフェニルヒドラジン(2,4−DNPH)を用いて行った。非酸化CA及び酸化CA(CAO)(各5mg)を、2,4−DNPH試薬(1.0ml)に添加し、この溶液を振盪し、その後、結晶性沈殿が観察されるまで37℃で放置した(Shriner他、1980)。CAの酸化度(定量的)は、アルカリ性溶液中のフェリシアニドイオンのフェロシアン化第二鉄(ペルシアンブルー)への還元に基づく方法(Park及びJohnson、1949)を用いて測定した(後で630nmで測定する)。この例では、グルコースを標準液(standard)として用いた。
【0068】
実施例4a:アミノコロミン酸(CA−NH2)の調製(参照例)
10〜100mg/mlのCAOを、50mlのチューブ内で300倍過剰モルのNH4Clを含む2mlの脱イオン水に溶解した後、NaCNBH4(1N NaOH水溶液中に5Mのストック)を最終濃度が5mg/mlとなるように添加した。この混合物を室温で5日間インキュベートした。CAOの代わりにコロミン酸を用いて対照反応物も準備した。生成物であるコロミン酸アミン誘導体を、5mlの氷冷エタノールを添加することにより沈殿させた。沈殿物を4000rpmで30分間、室温で、卓上遠心機で遠心分離することにより回収した。ペレットはそのままにしておき、2mlの脱イオン水で再懸濁した後、10mlの超遠心チューブ内で5mlの氷冷エタノールを用いて再度沈殿させた。沈殿物を30,000rpmで30分間、室温で遠心分離することにより回収した。ペレットを2mlの脱イオン水で再懸濁し、凍結乾燥させた。
【0069】
実施例4b:アミン含有量の分析
TNBS(ピクリルスルホン酸、すなわち2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸)分析を用いて、生成物中に存在するアミノ基の量を測定した(Satake他、1960)。
【0070】
マイクロタイタープレートのウェル内で、TNBS(0.5μlの15mM TNBS)を90μlの0.1Mホウ酸バッファー(pH9.5)に添加した。これに、10μlの50mg/mlのCA−アミン溶液を添加した。このプレートを20分間室温で放置した後、405nmにおける吸光度を読み取った。0.1〜1mMの濃度範囲のグリシンを標準として用いた。TNBSは第1級アミン基をトリニトロフェニル化する。アミンのTNP付加物が検出される。
【0071】
冷エタノール二重沈殿(double cold−ethanol precipitation)により精製された生成物をTNBS分析を用いて試験すると、85%に近い変換が示された。
【0072】
実施例4c:コロミン酸−SHの調製
NH4Clの代わりに100倍過剰モルのシスタミンを用いること以外は、実施例4aに記載したのと同様に、酸化させたCAを還元アミノ化によってシスタミンで誘導体化した。この生成物を精製する前に、これを37℃で1時間、50mM DTTで処理した。還元された生成物を、エタノール二重沈殿及びsepharose G25によるサイズ排除クロマトグラフィによって精製した。
【0073】
別の実施例において、実施例4aのように調製されたCANH2を、1mM EDTA(pH8.0)を有する10mM PBSに溶解する。50倍過剰モルの2−イミノチオランを添加し、反応を25℃で1時間続ける。未反応の2−イミノチオラートを、反応バッファーを用いて平衡にしたsephadex G25カラムによるゲルろ過によって除去する。
【0074】
チオール含有量をエルマン分析を用いて評価する。15μlの試料を150μlの0.1Mホスフェート、0.08mg/mlの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を含有する1mM EDTA(pH8)と混合し、30分間室温で反応させ、405nmで読み取る。この生成物は図7b及び図7cのスキームによる反応に好適である。
【0075】
さらに、ポリマーのチオール含有量が60%であることが分かった。
【0076】
実施例4d:CA−NHSの調製
上記の参照例4aで合成したCA−NH2(35kDa)(15〜20mg)を0.15M PBS(350μL、pH7.2)に溶解し、次に、PBS(150μL、PH7.2)に溶解した50又は75モル当量のBS3を添加した。この混合物を5秒間ボルテックスにかけた後、30分間20℃で反応させた。CA−NHS生成物を、溶離液としてPBS(pH7.2)を用いてPD−10カラムにより精製し、直ちにタンパク質及びペプチドのNH2基との部位特異的結合に用いた。PD10画分からのCA濃度の測定を、レゾルシノール分析を用いてシアル酸含有量を分析することによって行った。CAとNHSとの反応溶液を260nmで分析することによる紫外分光法によって、また254nmでの可視化を伴う薄層クロマトグラフィによって、CAポリマーにおけるNHS含有量を測定した。
【0077】
上記の実施例4aで合成したCA−NH2(35kDa)(15〜20mg)を、加熱(100〜125℃)しながら、DMSO(300〜285μL)を添加した最小量の水(50〜65μL)に溶解するか、又は95%を超えるDMSO(350μL)に溶解した。DMSO(150L)に溶解した75モル当量のDSGをCA−NH2溶液に添加し、5秒間ボルテックスにかけた後、30分間20℃で反応させた。CA−NHS生成物を、ジオキサンによる沈殿(×2)によって、又は溶離液としてPBS(pH7.2)を用いたPD−10カラムによって精製し、直ちにタンパク質及びペプチドのNH2基との部位特異的結合に用いた。前述のように、PD10画分からのCA濃度の測定を、レゾルシノール分析を用いて行った。紫外分光法(260nm)によって、また薄層クロマトグラフィ(254nm)によって、CAポリマーにおけるNHS含有量を測定した。
【0078】
実施例5:CA試料のゲル浸透クロマトグラフィ(参照例)
CA(35kDa)試料をNaNO3(0.2M)及びCH3CN(10%;5mg/ml)に溶解し、2×GMPWXLカラム上で、屈折率を検出しながらクロマトグラフィを行った(GPCシステム:VE1121 GPC溶媒ポンプ、VE3580 RI検出器及びTrisec3ソフトウェア(Viscotek Europe Ltd)による照合)。試料(5mg/ml)を、0.45μmナイロン膜で濾過し、移動相として0.2M NaNO3及びCH3CN(10%)を用いて0.7cm/分で流した(図11)。
【0079】
実施例6:(BS3及びDSGを用いた)CA−NHS−タンパク質複合体の調製
炭酸水素ナトリウムに溶解したGH(23mg/ml、pH7.4)を、過剰量のBS3を用いて実施例4bからのCA−NHS(35kDa)と共有結合させた。25:1又は50:1のCA−NHS:GHのモル比を用いて0.15M PBS(pH7.2、1.5ml)中で30分間、20℃で反応を行った。ポリシアリル化させたGHを、SDS−PAGE及びHPLC−サイズ排除クロマトグラフィにより測定された結合収量を用いて特徴付けた。対照は、天然のタンパク質を、CA−NHSの非存在下でBS3を用いた結合手順にかけることを含むものであった。CA−NH2をまた、天然のGHの非存在下でBS3を用いた結合手順にかけた。
【0080】
炭酸水素ナトリウム(pH7.4)に溶解したGHをCA−NHS(35kDa)に共有結合させ、これを、実施例4bに記載したように過剰量のDSGを用いて調製した。50:1のCA−NHS:GHのモル比を用いて0.15M PBS(pH7.2、1.5ml)中で30分間、20℃で反応を行った。ポリシアリル化させたGHを、SDS−PAGE及びHPLC−サイズ排除クロマトグラフィにより測定された結合収量を用いて特徴付けた。対照は、天然のタンパク質を、CA−NHSの非存在下でDSGを用いた結合手順にかけることを含むものであった。
【0081】
実施例7.CA−NHS−GH複合体のHPLC−SEC
CA−GH複合体を炭酸水素アンモニウムバッファー(0.2M、pH7)に溶解し、superose 6カラム上で、紫外線指数により検出しながら(Agilent、10/50システム(英国))クロマトグラフィを行った。試料(1mg/ml)を0.45μmナイロン膜で濾過し、175μlを注入し、移動相として炭酸水素アンモニウムバッファーを用いて0.25cm/分で流した(図12)。
【0082】
実施例8.CA及びCA−GH複合体のSDS及びネイティブPAGE
SDS−PAGE(MiniGel、Vertical Gel Unit、型式 VGT 1、電源型式 Consort E132(VWR、英国))を、ポリシアリル化におけるGHの分子サイズの変化を検出するために使用した。反応混合物からの0分(対照)及び30分の試料におけるGH及びその(CA−NHSとの)複合体、並びにプロセスの対照(非酸化CA)のSDS−PAGEを、4〜20%ポリアクリルアミドゲルを用いて行った。この試料を幅広い分子量マーカーに対して較正した(図13及び図14)。
結果
CA(22.7kDa)及びその誘導体を、1.1未満の多分散性、46kDaまでの平均分子量、及び種々の%割合を有する様々な狭い種(narrow species)に、首尾よく分画した。表2は22.7kDaの物質を分離した結果を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
このプロセスは、各スケールでほとんど同一の分画プロフィールを有する、1mlから900mlまでのマトリックスに拡大縮小可能である(全ての結果は示していない)。
【0085】
より大きなポリマー(CA、39kDa、p.d. 1.4)の分画は、90kDaまでの種を生じる。このプロセスは、大きなバッチのポリマーの分画にさえ、首尾よく用いることができる。この結果は、イオン交換画分が狭く分散することを示す。これは、GPCのデータと一致する。
【0086】
全ての狭い画分は、20mM過ヨウ素酸塩を用いて首尾よく酸化され、製造プロセスの種々の段階から採取され且つGPC及びネイティブPAGEにより分析された試料は、分子量及び多分散性における変化を示さなかった。
【0087】
CA、すなわちPSAは、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)残基の鎖状アルファ−2,8結合したホモポリマーである(図1a)。
【0088】
CAの酸化状態の定量測定は、グルコースを標準として用い、アルカリ性溶液中でフェリシアニドイオンをフェロシアン化物(プルシアンブルー)に還元する(Park及びJohnson、1949)ことにより行われた。酸化されたCAは、天然のポリマーと比較して100mol%近い見かけのアルデヒド含有量を有することが見出された。フェリシアニドを用いた酸化プロセスにおけるCA中間生成物の定量分析の結果は、天然のCAと共に淡黄色の沈殿物を生じ、ポリマーのアルデヒド含有形態と共に濃橙色を生じ、且つ室温での10分間の反応後に濃橙色沈殿を生じる、2,4−DNPHを用いて行われる定性試験の結果と一致する。
【0089】
過ヨウ素酸塩及びボロヒドリド処理後の内部のアルファ−2,8結合したNeu5Ac残基の完全性(integrity)をGPCによって分析し、酸化した(CAO)、アミノCA(CA−NH2)、CA−NHS物質について得られたクロマトグラフを、天然のCAのものと比較した。CAは全て、ほとんど同一の溶出プロフィールを示すことが見出され(図12)、種々の工程が、ポリマー鎖の顕著なフラグメント化又は(CA−NHSの場合には)架橋を引き起こす証拠は何もない。小さなピークは緩衝塩を示す。
【0090】
CA−GH複合体の形成をSEC−HPLC及びSDS−PAGEによって分析した。DSGとのこの結合反応に関して、SDS−PAGEにより、遊離GHが残存しないこと、及びこの結合反応が完了したことが示された。これはSEC−HPLCにより確認されたため、遊離GHの予測溶出時間前にCA−GH複合体を溶出した(遊離GHのピークは観測されなかった)。一方、BS3を用いたGHへのCA−NH2の結合反応のSDS−PAGEによる分析は遊離GHの存在を示し、これは、70分付近で遊離タンパク質の溶出ピークを示したSEC−HPLCによって確認された。
【0091】
結果(図13)により、複合体レーンでは、GHに比べてポリシアリル化されたGHを示す質量の増大を典型的に示すバンドシフトが存在することが示される。さらに、SEC−HPLCによってGH複合体を様々な種に分離した。
【0092】
実施例9:コロミン酸ヒドラジド(CAH)の調製(参照例)
400μlの20mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)中で2時間、25℃で、50mgの酸化されたコロミン酸(19kDa)を2.6mgのヒドラジン(液体)と反応させた。次に、このコロミン酸を70%エタノールで沈殿させた。この沈殿物を350μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に再溶解し、NaCNBH3を5mg/mlまで添加した。この混合物を4時間、25℃で反応させた後、一晩凍結させた。移動相として0.15M NH4HCO3を用いて、Sephadex G25を充填したPD10カラム上のゲル浸透クロマトグラフィによって、NaCNBH3及び反応副生成物を除去した。画分(各0.5ml)を(アミノ基に対して特異的であり、既述の)TNBS分析によって分析した。画分6、7、8及び9(ボイドボリューム画分)は、バックグラウンドよりもかなり強いシグナル(singal)を有し、バックグラウンドはNH4+イオンの存在により高い値を示した。また、画分6、7、8及び9はコロミン酸を含有していた。これらの4つの画分を凍結乾燥し、CA−ヒドラジド(CAH)を回収した。
【0093】
実施例10:コロミン酸NHS(CA−NHS)及びコロミン酸−タンパク質複合体の調製
10mgの19kDaであるCA−ヒドラジドを9mgのBS3と、400μlのPBS(pH7.4)中で30分間、室温で反応させた。この反応混合物をSephadex G25を充填したPD10カラムに入れて、0.5ml画分を回収した。0.1mgのBSAを5〜9の各画分に加えた。室温で2時間後、画分をBSAと反応させた。これらの試料をSDS−PAGE及びSEC HPLCで分析した。
【0094】
これらの画分は、コロミン酸をわずかしか有していなかった。コロミン酸を多く含む画分(6及び7)は、他の試料及びBSAにおいて存在するバンドに加えてタンパク質によるストリーク(streak)を有し、これは結合の明らかな証拠である(図15)。
【0095】
画分6のHPLCクロマトグラムは、遊離タンパク質と比較して複合体の保持時間に大きなシフトが存在することを示し、これにより結合が裏付けられる(図16a及び図16b)。
【0096】
用いられるBSAは不純物を含有する。BSAのピークは、56分である(図16a)。
【0097】
56分のピークに加えて、複合体であるより大きい種が存在する。80分に大きいピークが存在し、このピークは、タンパク質と反応したためにCA−NHSから放出されたNHSである。遊離BS3を除去するゲル浸透クロマトグラフィカラムにCAHを通したことから、このピークが遊離BS3である可能性はない。これは、CA分子上にNHSエステル基が生成されたことを強く示唆している(図16b)。
参考文献
【0098】
【表2】
【0099】
【表2】
【0100】
【表2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元性末端又は非還元性末端において基質と反応するためのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を有する末端シアル酸ユニットを有し、且つ好ましくは主にシアル酸ユニットのみから成るポリシアル酸等の化合物誘導体、及びこれらを製造する方法に関する。これらの誘導体は、ペプチド、タンパク質、薬物、ドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム)、ウイルス、細胞(例えば、動物細胞)、微生物、合成ポリマー又はコポリマー等のような、アミン基を含有する基質との結合(conjugation)に有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリシアル酸(PSA)は、或る特定の菌株により、及び、哺乳動物において所定の細胞で製造される、天然に存在するシアル酸の非分枝ポリマーである(Roth他、1993)。それらは、ノイラミニダーゼによる消化である制限された酸加水分解、又は、天然の細菌又は細胞由来のポリマー形態の分別のいずれかにより、n=約80以上のシアル酸残基から、下はn=2までの様々な重合度で製造することができる。ホモポリマー形態、すなわち、E.coli K1株及びB群髄膜炎菌のカプセル状ポリサッカライドを含む、アルファ−2,8結合したPSA(神経細胞接着分子(N−CAM)の胚形態においても見出される)が存在するように、種々のPSAの組成も変化する。E.coli K92株及びN.meningitidisのC群ポリサッカライドの、アルファ−2,8、アルファ−2,9が交互に結合したPSAのようなヘテロポリマー形態も存在する。さらに、シアル酸は、N.meningitidisのW135群又はY群のようなシアル酸以外のモノマーとの交互コポリマーにおいても見出され得る。哺乳動物において、PSAについてのレセプターは知られていないが、PSAは、病原菌による免疫系及び補体系の回避、及び胎児成長期における幼若な神経のグリアの接着(glial adhesiveness)の調節(ここで、このポリマーは抗接着機能を有する)を含む、重要な生物学的機能を有する(Muhlenhoff他、1998;Rutishauser、1989;Troy、1990及び1992;Cho及びTroy、1994)。E.coli K1株のアルファ−2,8結合したPSAは、「コロミン酸」としても知られており、本発明を例示するために(様々な長さで)用いられる。
【0003】
細菌性ポリサッカライド中のPSAのアルファ−2,8結合形態は、免疫原性キャリアタンパク質に結合した場合でさえも(哺乳類の被験体において、T−細胞又は抗体の反応のいずれも誘発しない)固有に非免疫原性であり、これは哺乳類(同様に細菌の)ポリマーとしてのその存在を反映するものであり得る。ポリマーのより短い形態(最大n=4)は、体内に広く分布しており、PSAに対する免疫寛容を効果的に課し、且つ維持すると考えられている、細胞表面ガングリオシドにおいて見出される。近年、PSA、特にアルファ−2,8結合したホモポリマーPSAの生物学的特性は、タンパク質及び低分子量の薬物分子の薬物動態特性を改良するために活用されてきた(Gregoriadis、2001;Jain他、2003;米国特許第5846,951号(A);国際公開特許第0187922号)。カタラーゼ及びアスパラギナーゼを含む多くの治療タンパク質のPSA誘導体化(Fernandes及びGregoriadis、1996及び1997)は、循環半減期及びそれらの安定性において劇的な向上をもたらし、また、そのようなタンパク質は、治療タンパク質への事前曝露の望ましくない(及び、時には避けられない)結果として生じる既存の抗体に直面して、用いルことを可能にする(Fernandes及びGregoriadis、2001)。多くの点で、ポリシアル酸化されたタンパク質の改良された特性は、ポリエチレングリコール(PEG)を用いて誘導体化されたタンパク質に匹敵する。例えば、それぞれの場合において、半減期は増大し、タンパク質及びペプチドは、タンパク質消化に対してより安定であるが、生物学的活性の維持は、PEGを用いた場合よりも、PSAを用いた場合のほうが大きいと思われる(Hreczuk−Hirst他、2002)。また、PEGは、非常にゆっくりとしか生分解せず(Beranova他、2000)、高分子量及び低分子量の両方の形態が組織中に蓄積する傾向にある(Bendele他、1998;Convers他、1997)ため、慢性的に投与しなければならない治療剤とのPEGの使用については疑問がある。PEG化されたタンパク質は、血液循環中における複合体の滞留時間にも影響を与える可能性のある抗PEG抗体を生じることが見出された(Cheng他、1990)。治療剤と結合する非経口投与ポリマーとしてのPEGの確立した歴史にもかかわらず、その免疫毒性学、薬理学及び代謝についてのより良い理解が求められる(Hunter及びMoghimi、2002;Brocchini、2003)。同様に、PEGの蓄積は毒性につながる可能性があるため、高投与量を必要とする治療剤(したがって最終的には高投与量のPEG)におけるPEGの有用性についての懸念が存在する。したがって、アルファ−2,8結合したPSAは、本来人体の一部である、免疫学的に「見えない」(immunologically ’invisible’)生分解性ポリマーであり、組織のノイラミニダーゼにより、非毒性サッカライドであるシアル酸に分解することができる、PEGの有力な代替物を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等のグループは、以前の学術論文及び登録特許において、タンパク質治療剤の薬物動態特性の改善における、天然のPSAの有用性について記載している(Gregoriadis、2001;Fernandes及びGregoriadis、1996、1997、2001;Gregoriadis他、1993、1998、2000;Hreczuk−Hirst他、2002;Mital、2004;Jain他、2003、2004;米国特許第05846,951号(A);国際公開特許第0187922号)。今回、本発明者等は、PSA誘導体化タンパク質(及び治療剤の他の形態)を製造する新規の組成物、及び新規の方法をもたらす、新規なPSAの誘導体を記載する。これらの新規の物質及び方法は、医療倫理及び監督機関(例えば、FDA、EMEA)の安全要求事項のため、薬物(drug entities)の化学的及び分子的定義が非常に重要であるので、ヒト及び動物における使用が意図されるPSA誘導体化治療剤の製造に対して特に有用である。
【0005】
タンパク質のような治療剤へのポリサッカライドの結合のための方法は、以前に記載されている(Jennings及びLugowski、1981;米国特許第5846,951号(A);国際公開特許第0187922号)。これらの方法のうちのいくつかは、ポリマーの「非還元性」末端の化学的誘導体化に依存し、これによってタンパク質反応性アルデヒド部分を生じる(図1)。PSA(及び他のポリサッカライド)の還元性末端は、タンパク質の構造及び結合の間のPSAの化学的結合性(integrity)を保存するために必要な穏和な条件下で、タンパク質に対して弱反応性しか示さない。ビシナルジオールを含むシアル酸末端ユニットの非還元性末端は、過ヨウ素酸塩を用いて容易に(且つ選択的に)酸化され、これによりモノアルデヒド誘導体を生じ得る。この誘導体はタンパク質に対してより反応性があり、還元アミノ化及び他の化学反応によるタンパク質の結合に好適な反応性エレメントを含む。本発明者等は、このことについて、米国特許第5846,951号(A);国際公開特許第0187922号に記載している。この反応は、図1中に例示され、ここで、
a)は、末端のシアル酸の非還元性末端においてタンパク質反応性アルデヒドを形成するための、過ヨウ素酸ナトリウムを用いたCA(E.coli由来のアルファ−2,8結合したPSA)の酸化後の、アルデヒドとタンパク質の第1級アミン基との反応を示し、
b)は、タンパク質のアミノ基との安定で不可逆性の共有結合を形成するための、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH3)を用いた、シッフ塩基の選択的還元を示す。
【0006】
国際公開特許第2005/016973号において、本発明者等は、末端シアル酸ユニットを介して導入されるスルフヒドリル反応性基を有するポリサッカライド誘導体を記載している。このユニットは通常、ポリサッカライドの非還元性末端におけるシアル酸ユニットの誘導体化によって導入される。スルフヒドリル反応性基は好ましくはマレイミド基である。この基を導入する反応は、一方の末端にスルフヒドリル反応性基、及び他方の末端にヒドラジド又はエステル等の特性基を有するヘテロ二官能性試薬と、ポリサッカライドのシアル酸誘導体化末端ユニット上のアルデヒド基又はアミン基とを反応させることを伴い得る。この生成物は、例えばCysユニット又は導入されるスルフヒドリル基において、タンパク質の部位特異的誘導体化に有用である。
【0007】
PSAを治療剤と結合させることを記載している種々の方法(米国特許第5846,951号(A);国際公開特許第0187922号)は理論的に有用であるが、タンパク質とPSAの非還元末端(アルデヒド形態)との反応を介した複合体の許容可能な収量の達成には、高温でのタンパク質安定性につながらない反応時間を必要とする(例えば、インターフェロンアルファ−2b)。次に、達成することができないか又は非経済的となるおそれのある反応物濃度(すなわち、過剰量のポリマー)を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明者等は、還元性末端及び/又は非還元性末端にNHS−シアル酸基を有するポリシアル酸と、タンパク質とを結合させる新規の方法の開発により、この問題を解決した。還元性末端の弱い反応性を(非還元性末端を破壊し、この還元性末端をキャッピングし、且つ二官能性架橋剤により誘導体化することによって)有益な効果のために活用することにより、過ヨウ素酸塩で酸化されたCAによるタンパク質の還元アミノ化の確立された方法(図1)を用いた、図2及び図3に記載される生成物の複雑さを回避することができる。
【0009】
米国特許第4,356,170号においてJennings及びLugowskiは、予備還元工程後に酸化工程を伴う、活性化された還元性末端ユニットを介したタンパク質による細菌性ポリサッカライドの誘導体化を記載している。Jennings他によりこのアプローチが用いられた例としては、還元性末端ユニットが、N−アセチルマンノサミン、グルコース、グルコサミン、ラムノース及びリボースであるポリサッカライドが挙げられる。
【0010】
欧州公開特許第0454898号において、タンパク質のアミノ基は、グリコサミノグリカンの還元性末端の糖部分の還元及び部分的酸化により合成されたアルデヒド基と結合する。この方法で扱われるグリコサミノグリカンとしては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸及びデルマタン硫酸が挙げられる。これらの化合物のいずれも、還元性末端にシアル酸ユニットを有さない。
【0011】
本発明において、シアル酸ユニット由来の少なくとも1つの末端ユニットを有するポリシアル酸基質を含む新規の化合物が提供される。当該化合物は、必要に応じてリンカーを介して2位又は7位炭素のいずれかで末端ユニットと結合するN−ヒドロキシスクシンイミドのエステルを含む。N−スクシンイミジルオキシ基は以後、NHS基と表される。本発明において、スクシンイミジル部分は、非置換であっても、スルホニル基又は有用な溶解特性を与える他の基のような基で置換されていてもよい。誘導体化された末端ユニットは、非還元性末端シアル酸基又は還元性末端シアル酸基に由来し得る。PSA分子1つ当たり、2つのこのようなNHS基、例えば、非還元性末端シアル酸基由来の末端ユニットに1つのNHS基、及び還元性末端シアル酸基由来の末端ユニットに残りのNHS基が存在し得る。
【0012】
本発明の化合物はまた、一般式の観点から定義されてもよい。新規の化合物は好ましくは一般式I、II又はIII
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、R1はH又はスルホニルであり、
R2は連結基であり、
Aは、NR5、NR5NR6、O又はSRであり(式中、R5及びR6は独立して、H、C1〜4アルキル及びアリールから選択される)、
SylOはシアリル基であり、
nは1〜100であり、mは0〜100であり、
R3は、水素又はモノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリシアル酸基、タンパク質、ペプチド、脂質、薬物、細胞膜若しくは細胞壁成分、又はドラッグデリバリーシステムであり、
R4は、水素又はモノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリシアル酸基、アルキル基、アシル基、薬物、又はドラッグデリバリーシステムである)
を有する。
【0015】
化合物I〜III中に存在するNHS基及びエステル結合と共に連結基、すなわちR2は、一般的に、化合物を合成するのに用いられる二官能性NHS試薬に由来する構造を形成する。好適な二官能性試薬を本願の後半で挙げる。合成中、PSA出発物質に由来するAで表示される基は、(反応しないNHS基と反対の末端における)NHS試薬からの対応する脱離基の欠失、又は代替的に試薬の構造的再配置を伴って、それ自体を二官能性試薬の適切な末端に結合させる。通常、連結基R2は、式I〜式IIIの化合物中でAと結合するカルボニルと共に、アルカン−ジイル基を含む。好ましくは、R2はCpH2pCO(式中、pは2〜12である)である。代替的に、連結基は、アルカン炭素原子の1つがA基と結合しているアルカンジイル基を含み得る。R2としては、例えば、PSA試薬又はNHS試薬の予備誘導体化反応に由来する、中鎖エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合及び/又は1−チオ−N−スクシンイミジルアミン結合が挙げられ得る。R2は、アルキレンオキシアルキレン基又はアルキレンオリゴオキシアルキレン基であってもよい。
【0016】
Aは好ましくは、第1級アミンPSA出発試薬に由来するNR5(式中、R5は水素である)である。このようなアミンPSA誘導体、及びそれらを製造する方法の例を以下に示す。
【0017】
1つの実施の形態において、末端シアル酸ユニットは、マレイミド基を含有する試薬と結合し得る有用な官能基を生成する予備化学反応に供される。
【0018】
1つの実施の形態において、NHS基を連結し得る官能基を生成する予備工程として、アルデヒド基を生成する、本文献で前に開示した化学反応を使用することが便利であることを見出した。
【0019】
本発明は、新規の化合物を製造するプロセスを含む。必要に応じて末端シアル酸ユニット(複数可)の予備誘導体化工程(複数可)の後で、官能基の一方がNHSエステルであり、且つ官能基の他方がシアル酸ユニット(複数可)又はその誘導体(複数可)と反応性である二官能性試薬と、場合によっては、試薬と末端シアル酸基(複数可)又はその誘導体の2位又は7位炭素とを共有結合させると共に、NHS基が変化しないような条件下で、PSA基質を反応させる、上記新規の化合物を合成する新規のプロセスも提供する。
【0020】
好ましい実施の形態において、基質中のシアル酸ユニットは、アミン基を生成する予備工程に供される。
【0021】
誘導化されるシアル酸ユニットが、還元性末端ユニットである場合、予備工程は、アノマー炭素におけるアミン化、又は好ましくは一連の
a)ビシナルジオール基を形成するために、前記還元性末端シアル酸ユニットを開環する還元工程と、
b)アルデヒド基を形成するための、工程a)で形成された前記ビシナルジオール基の選択的酸化工程と、
c)例えばシアノ水素化ホウ素(cyano borohydrate)を用いたアンモニウム化合物との還元アミノ化による工程b)のアルデヒドのアミノ基への変換工程と、
d)工程c)による前記アミノ基を、過剰量のホモ二官能性NHS試薬と反応させる工程と
を含み得る。
【0022】
このプロセスに用いられる還元性末端シアル酸基を有する出発基質物質は好ましくは、8位炭素原子を介して隣接ユニットと結合するシアル酸ユニットを還元性末端に有する。工程b)において、末端シアル酸の還元的開環の後、還元性末端の6,7−ジオール基を酸化して、7位炭素原子にアルデヒド基を形成し、続いてアミノ基の導入(工程c)及びNHS基の導入(工程d)を行う。
【0023】
代替的な実施の形態において、還元性末端におけるシアル酸ユニットは、9位炭素原子を介して隣接するユニットと結合し、工程b)において、工程a)中に形成された還元性末端のC−7及びC−8のジオール基を酸化して、8位炭素原子にアルデヒド基を形成した後、アミノ基を形成し(工程c)、その後NHS基を形成する(工程d)。
【0024】
1つの好ましい実施の形態によれば、出発物質は、還元性末端にシアル酸、また非還元性末端にビシナルジオール基を有する末端シアル酸ユニットを有するPSAである。このプロセスの第1の工程(工程a)において、還元反応をポリサッカライドの還元性末端において行い、ビシナルジオールを提供するように開環する。還元工程中、非還元性末端におけるビシナルジオール官能基は修飾されることなく、原型を保っている。第2の工程は酸化(工程b)であり、このプロセス中、非還元性末端及び還元性末端におけるビシナルジオールは酸化されて、アルデヒド基を形成する。工程cにおいて、アルデヒドがアミン化され、工程dにおいて、NHS基が結合する。結果として、生成物は、2つのNHS基を有する二官能性となり、また、還元性末端及び非還元性末端において両方のNHS基を含む適切に官能化された基質による反応により基質を架橋することができる能力に由来する、有用な治療活性を有し得る。
【0025】
還元性末端シアル酸がアミン化するプロセスの別の好ましい実施の形態によれば、非還元性末端に末端シアル酸も有するシアル酸出発基質物質は、以下の:
e)非還元性末端シアル酸ユニットをC−7及びC−8のビシナルジオール基において酸化し、C−7にアルデヒドを形成するための選択的酸化工程と、
f)C−7のアルデヒド基を対応するアルコールへと還元するための還元工程と
に供される。この工程はまた同時に、還元性末端のシアル酸環を還元的に開環する、すなわち、工程a)と同時に行われる。本発明のこの態様は、「不動態化された」シアル酸非還元性末端を有するシアル酸誘導体を提供し、過ヨウ素酸塩による酸化(工程b)及び還元アミノ化(工程c)を介して還元性末端を活性化させる。
【0026】
本発明のさらなる実施の形態によれば、非還元性末端に末端シアル酸を有するシアル酸出発物質が、以下の:工程e)非還元性末端シアル酸ユニットをC−7及びC−8のビシナルジオール基において酸化し、7位炭素原子上にアルデヒドを形成するための選択的酸化工程と;工程c)アンモニウム化合物との還元アミノ化による、工程e)のアルデヒド基のアミノ基への変換工程と、そして;工程d)得られるアミノ基の修飾工程とに供される、新規のプロセスを提供する。
【0027】
本発明のこの実施の形態において用いられる出発物質は好ましくは、隣接するユニットの8位炭素原子を介して隣接するユニットと結合する非還元性末端にシアル酸ユニットを有するべきである。工程e)において、C−7及びC−8のジオール基は酸化されて、後にアミノ基(工程c)及びNHS基(工程d)に変換されるアルデヒド基を7位炭素原子に形成する。
【0028】
代替的な実施の形態において、非還元性末端のシアル酸ユニットが、隣接するユニットの9位炭素原子を介して隣接するユニットと結合する場合、工程b)において、この隣接する基のC−7及びC−8のジオールは酸化され、アミノ基(工程c)及びNHS基(工程d)で置換されるアルデヒド基を8位炭素原子上に形成する。
【0029】
上記酸化工程(b及びe)は好ましくは、実質的な長鎖高分子骨格の出発物質の中鎖開裂も、その後の実質的な分子量減少も生じない条件下で行われるべきである。この酸化工程を実施し得る酵素を用いてもよい。より便宜的には、酸化は化学酸化である。反応は、高分子系過ルテニウム酸塩等の固定化試薬を用いて、又は試薬溶液を用いたより直接的な方法によって行うことができる。酸化剤は好適には、過ルテニウム酸塩、又は好ましくは過ヨウ素酸塩である。酸化は、1mM〜1Mの濃度範囲の過ヨウ素酸塩を用いて、5〜10のpH範囲、0〜60℃の温度範囲、1分〜48時間の範囲の時間で行い得る。
【0030】
工程a)及び工程f)の好適な還元条件は、触媒と共に水素、すなわち好ましくは水素化ホウ素等の水素化物を利用し得る。これらは、Amberliteにより支持される水素化ホウ素のように固定化されていてもよい。好ましくは、水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化物は、1μM〜0.1Mの濃度範囲、6.5〜10のpH範囲、0〜60℃の温度範囲、1分〜48時間の期間で還元剤として用いられる。反応条件は、PSA出発物質のペンダント型カルボキシル基が還元されないように選択される。予備酸化工程を(すなわち、非還元性末端において)行う場合、生成されるアルデヒド基が、ビシナルジオール基の一部ではないアルコール基に還元される。他の好適な還元剤は、酸性条件下でシアノ水素化ホウ素、例えば、高分子により支持されるシアノ水素化ホウ素、又はアルカリ金属シアノ水素化ホウ素、L−アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、L−selectride(商標)、トリアセトキシ水素化ホウ素等である。
【0031】
反応の様々な工程(例えば、還元及び酸化)中、各中間体は、次の工程にかけられる前に、酸化剤及び還元剤、架橋剤、並びにNaCNBH3、シスタミン等の他の試薬から単離する必要がある。工程が溶液相中で行われる場合、単離は、エチレングリコールを用いた酸化剤の過剰量の消費、エタノール沈殿、ポリサッカライドの透析、サイズ排除クロマトグラフィ、及び水溶液を濃縮するための限外ろ過等の、従来の技術によるものであり得る。還元工程による混合生成物を再度、透析及び限外ろ過によって分離してもよい。生成物の単離を容易にする固定化された酸化試薬及び還元試薬により実行される反応を考案することができる。
【0032】
中間体アミン化合物を生成し、その後二官能性NHS試薬と反応させる本発明のプロセスにおいて、NHS基はアミン基と反応性であるため、ホモ二官能性NHS試薬を用いることが便利である。このような試薬の2つのNHS基が等しく反応性である場合、架橋度を最小にするためにかなり過剰な量の試薬を用いる必要があり、この架橋は、アミン中間体の2つの分子とジ−NHS試薬の1つの分子との反応を含む。反応はまた、第2のNHS基が変わらず残るような条件下で行う必要がある。反応生成物は、過剰量の未反応のNHS試薬から分離可能でなければならない。
【0033】
NHS基は水中でかなり不安定である。そのため、反応条件は、NHS試薬と、水又は他のプロトン性溶媒との接触を最小限にしなければならない。好ましくは、反応は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で行われる。基質を溶解するために、少量の水、又は他のプロトン性溶媒及び極性溶媒を含む必要がある場合がある。この量は、最小、例えば、全溶媒の10%未満に維持されるべきである。試薬の可溶化を最適なものとし、且つ反応を促進させるため、温度を上げることが望ましい場合があるが、但し、これによって、望ましくない基質の酸化又は開裂等の化学修飾が為されることはない。
【0034】
さらなる実施の形態において、工程a)及び工程b)、並びに/又は工程c)によって生成されるアルデヒド末端化中間体はヒドラジンと反応し、ヒドラゾン中間体を形成する。ヒドラゾン基は、NHS基と反応性である。二官能性NHS試薬が反応する本発明のプロセスの必須工程において、このNHS試薬は便利にはジ−NHS化合物である。上記のアミン中間体における反応と同じ注意を守らなければならない。反応スキームはスキーム8a)として示される。
【0035】
好適なジ−NHS試薬は、
ビス[2−スクシンイミジルオキシカルボニル−オキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)及びそのスルホ類似体、
ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)(BS3)、
ジスクシンイミジルグルタレート(DSG)、
ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、
ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、
ジスクシンイミジルタートレート(DST)又はそのスルホ類似体、
3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、並びに
エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)及びそのスルホ類似体である。
【0036】
該プロセスの代替的な実施の形態によれば、基質におけるアミン基の形成を含む予備工程の代わりに、チオール基が好ましくは1つの末端シアル酸ユニットに、代替的には、末端シアル酸ユニット及び反対末端の末端ユニットに提供され、シアル酸又は別の糖残基になり得る予備工程が提供される。
【0037】
チオール基は、例えば、シスタミンとアルデヒド基とを反応させた後、還元することによって形成される。アルデヒド基は、それぞれの末端基を有する出発物質において工程a)及び工程b)、並びに/又は工程e)を行うことによって、1つ又は両方の末端ユニットに導入することができる。出発物質は付加的に、シスタミンとの反応のためにアルデヒドに変換され得るビシナルジオール基を有する非還元性末端の糖を有し得る。代替的には、このような末端基は後の酸化工程、それから還元工程によって不活性化され、二官能性チオール中間体の形成を阻害し得る。チオール化は、Pawlowski他によって記載されている一般的な手法を用いて行われる。
【0038】
チオール基は、代替的に、工程a〜工程cにおいて上記で生成されるアミン中間体上で行われる一連の工程において導入され得る。チオール基は、アミン基と、チオール化シアル酸ユニットを含む2−イミノチオラン(2−IT)(Pawlowski,A.他(前掲))との反応によって導入される。
【0039】
チオール基を含有する中間体は新規の化合物であり、本発明のさらなる態様を示す。当該化合物は、以下の一般式IV、V、VI又はVII
【0040】
【化2】
【0041】
(式中、
R7は連結基であり、
A1はNR12(式中、R12はH、C1〜4アルキル又はアリールである)であり、
GlyOはグリコシル基であり、kは0〜100であり、
Gly1Oは、ペンダント型カルボン酸基上で必要に応じて誘導体化されるグリコシル基であり、R8は、モノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリサッカライド基、タンパク質、ペプチド、脂質、薬物、ドラッグデリバリーシステム、又は細胞膜若しくは細胞壁の成分であり、
R8及びR9はそれぞれ、水素、又はモノ−、ジ−、オリゴサッカライド基、アルキル基、アシル基、薬物、脂質又はドラッグデリバリーシステムであり、
R10は、モノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリサッカライド基、タンパク質、ペプチド、脂質、薬物、ドラッグデリバリーシステム、又は細胞膜若しくは細胞壁の成分、
又は基
【0042】
【化3】
であり、
【0043】
【化4】
【0044】
(式中、R13及びR14の一方は水素であり、他方はモノ−、ジ−若しくはオリゴサッカライド基、アルキル基、アシル基、薬物、脂質又はドラッグデリバリーシステムである)である)
で表され得る。
【0045】
連結基R7は、上記に列挙されるR2と同じ基から選択される。
【0046】
R8及びR9の定義は好ましくは、それぞれR3基及びR4基の好ましい定義として上記されたのと同じである。GlyOは好ましくはSylOである。
【0047】
GlyOがSylOであるチオール中間体は、本発明の第1の態様のプロセスの必須工程において、チオール反応性官能基並びにNHS基を有するヘテロ二官能性リンカーと反応する。このようなチオール反応性基は、例えば、N−マレイミド基、又はチオピリジルジチオ基、ビニルスルホン基若しくはN−ヨードアセトアミン基である。好適な二官能性試薬の例は、
N−(α−マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル(AMAS)、
N−(β−マレイミドプロピルオキシ)スクシンイミドエステル(BMPS)、
N−(ξ−マレイミドカプリルオキシ)スクシンイミドエステル(EMCS)、又はそのスルホ類似体、
N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート)(LC−SMCC)、
m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート)(SHCC)又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート(SMPB)又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−6−(β−マレイミド−プロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、
N−(k−マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ−KMUS)、
スクシンイミジル−6−[3−2(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート(LC−SPDP)又はそのスルホ類似体、
4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)又はそのスルホ−LC類似体、
N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、
N−スクシンイミジル[4−ビニルスルホニル)ベンゾエート(SVSB)、
スクシンイミジル−3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)、及び
N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)及び
N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)又はそのスルホ類似体である。
【0048】
一般的に用いられる反応の反応条件はまた、例えばHermanson(1995)を参照して、本明細書で用いられるものであり得る。
【0049】
上記NHSヘテロ二官能性試薬は、その水溶性、及び、複合体が開裂性か又は非開裂性かに応じて選択され得る。好ましくは、短く且つ非免疫原性であるリンカーを有する試薬である。
【0050】
NHS試薬との反応は通常、0〜100%DMSO溶液中(好ましくは最少量の水、例えば10%を用いて)0〜150℃、好ましくは20℃の温度で行われる。中間体上のシアル酸基質は、加熱、例えば、音波処理又はマイクロウェーブによって、好ましくは不活性環境下で溶解され得る。生成物の続く使用における有機溶媒の存在に耐性がない場合には、水溶性NHS試薬を用いることができる。また、生成物から除去されていない未反応の試薬がいずれも細胞膜を透過しない可能性があるため、生成物の使用が細胞表面結合に関する場合には、水溶性NHS試薬が好ましいであろう。
【0051】
本発明において、出発物質はポリシアル酸(PSA)である。このような化合物は、分子中にシアル酸以外のユニットを含んでいてもよい。例えば、シアル酸ユニットが他のサッカライドユニットと交互に配列されていてもよい。しかしながら、好ましくは、ポリサッカライドは実質的に、アルファ−2,8及び/又はアルファ−2,9結合しているシアル酸のユニットのみから成ることが好ましい(ポリシアル酸(以後、PSA))。
【0052】
出発物質は、少なくとも2、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、例えば少なくとも50のシアル酸ユニットを有する。PSAは、いずれの供給源、好ましくは、細菌(例えばE.coli K1又はK92、B群髄膜炎菌)、又は牛乳若しくはN−CAM等の自然源に由来するものであってもよい。シアル酸ポリマーは、N.meningitidisの135群又はV群等のヘテロ多量体ポリマーであってもよく、又は化学合成されていてもよい。PSAは、塩又は遊離酸の形態であってもよい。それは、分子量が減少された後、細菌源により回収されるような加水分解形態であってもよい。PSAは、1.01、実際は2以上と同程度もの多分散性を有するような狭いか又は広範な分子量を有する物質であってもよい。好ましくは、使用されるPSAの分子量の多分散性は、1.2未満である。
【0053】
天然型の、上記の種類の中間体としての、又は広い分子量分布を有する最終生成物であるいずれかのPSA群は、より低い多分散性を有する画分、すなわち、様々な平均分子量を有する画分に分画され得る。分画は好ましくは、溶出のために好適な塩基バッファーを用いたアニオン交換クロマトグラフィによって行われる。好適なアニオン交換媒体、すなわち、第4級アンモニウムイオンペンダント基(すなわち、強塩基)を有する、活性化されたアガロースに基づく強イオン交換物質等の分離用媒体を見出した。溶出バッファーは非反応性であり、所望の生成物を各画分の塩基から蒸発によって回収し得るように、好ましくは揮発性である。好適な例は、トリエタノールアミン等のアミンである。回収は、例えば、凍結乾燥によるものであってもよい。分画方法は、他のPSA誘導体に対するのと同様に、PSA出発物質についても好適である。このため、この技術は、本発明の必須のプロセス工程の前後いずれでも適用することができる。
【0054】
好ましくは、分画のプロセスは、イオン交換クロマトグラフィ(IEC)を用いて、また溶出バッファーとして好ましくは揮発性である塩基又は酸を用いて、好ましくは5kDaより大きい分子量(Mw)を有するイオン性の群に関して実施される。好ましくは、PSAはカルボン酸基を有し、イオン交換はアニオン交換である。好ましくは、溶出バッファーはトリエタノールアミン等のアミンを含み、PSAの回収は好ましくは溶出画分を凍結乾燥することによるものである。
【0055】
本発明のPSA−NHS化合物は、例えば、生物学的に有用な化合物であるアミンを誘導体化するための続くプロセスにおいて使用することができる。このような反応は、好ましくはリン酸、炭酸水素/炭酸、HEPES又はホウ酸バッファー中で、好ましくは5〜200mMの濃度で行われ得る。第1級アミンを含有していなければ、他のバッファーを使用してもよい。例えば、第3級アミンのみを含有しているため、HEPESを使用することができる。中性pHから塩基性pHまでの大過剰量のトリス/グリシンを、クエンチする反応の終わりに添加してもよい。反応は好ましくは、pH7〜9、4℃〜20℃で30分〜2時間行われ得る。PSA−NHS化合物は、アミンの濃度に応じて、タンパク質(又は他の誘導性化合物)に対して2〜50倍過剰モルで用いられ得る。通常、PSA−NHS化合物の濃度は好ましくは、0.1〜10mMで変動し得る。より希薄なタンパク質溶液が、PSA−NHS化合物のNHS基を過剰に加水分解することから、アミン、例えば、タンパク質の濃度が好ましくは、約10〜100μMに維持され得る。
【0056】
生成物であるNHS化合物は、アミン基が好適にリジンのイプシロンアミン基又はN末端アミノ基である、アミン基を含有するタンパク質を誘導体化するため特に価値がある。この生成物は、タンパク質又はペプチドの治療活性剤、例えばサイトカイン、成長ホルモン、酵素、ホルモン及び抗体又はそれらのフラグメント等を誘導体化するために特に価値がある。代替的に、このプロセスは、例えば、NHS基をリポソーム形成成分のアミン基と反応させることによって、リポソーム等のドラッグデリバリーシステムを誘導体化するのに用いることができる。他のドラッグデリバリーシステムは、米国特許第5846951号(A)に記載されている。誘導体化され得る他の物質としては、ウイルス、微生物、細胞(例えば、動物細胞)、合成ポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0057】
本発明はまた、新規の化合物が、NHS基とアミン基との反応に好適な条件下で、誘導性アミン基を有する生物学的関連化合物と反応して、共有結合体を形成する方法を提供する。生物学的関連分子は好ましくはペプチド又はタンパク質であり、アミン基はLysユニットの側鎖上にあるか、又はペプチド若しくはタンパク質のN末端に存在する。誘導体化度は1.0未満であってもよいが、好ましくは少なくとも1.0、例えば少なくとも1.5であり、このことはすなわち、生物学的に活性な化合物の各分子が少なくとも1つのPSA基質部分と結合することを示す。
【0058】
新規のPSA化合物との反応によるタンパク質及びドラッグデリバリーシステムの誘導体化は、半減期を増大させ、安定性を高め、免疫原性若しくは抗原性を低減し、且つ/又は溶解性及びそれゆえ生物学的利用能及び薬物動態特性を制御し得るか、又は活性剤の溶解性、若しくは誘導体化された活性剤を含有する溶液の粘度を改良し得る。
【0059】
新規の好ましい単官能性PSA−NHSは反応性が高く、修飾されていない還元性末端を有するPSA形態の使用により生成され得るかなりの複雑さ(図2)を回避することから、薬学的に許容可能な生成物の合成及び製造をより促進させる。ポリマーの新規な形態の生成(図5)は、好ましくは過ヨウ素酸塩による選択的酸化(工程e)を伴い(前述のセクションを参照のこと)、アルデヒド官能基を非還元性末端に導入した後、還元アミノ化し(工程c)、縮合してNHS官能性を形成する(工程d)。しかしながら、図1に例示された従来技術とは異なり、このアルデヒド部分は、例えば水素化ホウ素による還元によって破壊される場合がある(工程a)。ポリマーの他の末端において、水素化ホウ素による還元工程はまた、ヘミケタールを還元することによって同時に還元性末端の環構造の開環を固定する。ケトンのこのヒドロキシル部分への同時還元は、第2の酸化工程における選択的酸化に適する新たなジオール官能性を還元性末端に導入する。天然ポリマーを(首尾良く)過ヨウ素酸塩で酸化し、水素化ホウ素で還元し、過ヨウ素酸塩で2回目の酸化を行い、NHS化合物を形成するようにアミノ化及び結合させる場合、厳密に単官能性であり、先に還元される末端にのみ1つの反応性基(すなわち、NHS基)を有する新規なポリマー形態が生成される(図5)。
【0060】
様々な誘導体の縮合によるタンパク質反応性のスキームを図9及び図10に記載する。単官能性PSAは、最も外側の非還元性末端を用いて、タンパク質と、単一方向にしか結合を引き起こすことなく、また意図せずにタンパク質を架橋することはない。この新規の反応(図5)方法のスキームは、(図2に記載されるように)意図される生成物を様々な意図されるものではない生成物から精製する必要性を回避する。この意図されるものではない生成物はこの新規の反応スキームにおいて完全に回避される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1a】非還元性シアル酸末端ユニットの従来技術による活性化を示す反応スキームである。
【図1b】タンパク質−アミン部分を用いた、反応スキーム1aの生成物のアルデヒド部分の従来技術による還元アミノ化を示す反応スキームである。
【図2】副次反応による、可能性のある副生成物を概略的に示す。
【図3】ケタールとPSAの還元性末端シアル酸ユニットの閉環形態との間の互変異性を示す反応スキームである。
【図4】(非還元性末端がビシナルジオールを有さない場合に)還元性末端誘導体化NHSコロミン酸の調製を示す。
【図5】還元性末端誘導体化NH2−CAコロミン酸(ビシナルジオールは非還元性末端において除去される)の調製を示す。
【図6】CA−NHS−タンパク質複合体の調製の一般的なスキームを示す。
【図7a】誘導体化チオールコロミン酸(非還元性末端にCA−SH)の調製を示す。
【図7b】NHS−マレイミドを用いたCA−SHを介するCA−タンパク質結合の概略図を示す。
【図7c】NHS−マレイミド(AMAS)を用いたCA−SHを介するCA−タンパク質複合体の調製を示す。
【図8a】還元性末端上のNHSを介するCA−タンパク質複合体の調製を示す。
【図8b】ポリシアル酸の還元性末端のキャッピングを示す。
【図8c】非還元性末端誘導体化CAの調製を示す。
【図9】非還元性末端上のビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)を用いたCA−タンパク質複合体の調製を示す。
【図10】架橋剤であるDSGを用いたCA−タンパク質複合体の概略図を示す。
【図11】実施例5にあるように分離されたCAについてのゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)のクロマトグラムを示す。
【図12】CA−NHS−成長ホルモン(GH)タンパク質結合反応(CA 35kDa)に関するサイズ排除HPLCを示す。
【図13】CA−NHS−GH複合体(CA 35kDa)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を示す。
【図14】未反応のCA及び反応したCAのネイティブPAGEを示す。
【図15】実施例10にあるようなCAH−NHS反応のSDS−PAGE分析を示す。
【図16】図15の画分6のHPLCクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0062】
実施例
材料
メタ過ヨウ素酸ナトリウム及び分子量マーカーは、Sigma Chemical Laboratory(英国)から入手した。使用されるCA、鎖状アルファ−(2,8)結合したE.coli K1 PSA(平均22.7kDa、多分散性(p.d.)1.34;39kDa、p.d. 1.4;11kDa、p.d. 1.27)はCamida(アイルランド)から入手した。他の物質は、2,4ジニトロフェニルヒドラジン(Aldrich Chemical Company、英国);透析チューブ(3.5kDa及び10kDaのカットオフ限界(Medicell International Limited、英国));Sepharose SP HiTrap、PD−10カラム(Pharmacia、英国);XK50カラム及びSepharose Q FF(Amersham Biosciences、英国);トリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(4〜20%及び16%)、トリス−グリシンドデシル硫酸ナトリウムランニングバッファー及びローディングバッファー(Novex、英国)を含む。脱イオン水は、Elgastat Option 4水精製ユニット(Elga Limited、英国)から得た。使用される全ての試薬は、分析用グレードである。プレートリーダー(Dynex Technologies、英国)を、タンパク質又はCAアッセイにおける分光学的測定のために用いた。
方法
タンパク質及びCA測定
シアル酸であるCAの定量評価は、別記されるように(Gregoriadis他、1993;Fernandes及びGregoriadis、1996及び1997)、レゾルシノール法(Svennerholm、1957)によって行った。GHはビシンコニン酸(BCA)比色法によって測定した。
【0063】
実施例1−IECによるCAの分画(CA、22.7kDa、p.d. 1.34)(参照例)
XK50カラムに900mlのSepharose Q FFを充填し、3カラム体積の洗浄バッファー(20mMトリエタノールアミン;pH7.4)を用いて、50ml/分の流量で平衡とした。CA(200mlの洗浄バッファー中に25グラム)をシリンジポートを介して50ml/分でカラムに供給した。その後、1.5カラム体積(1350ml)の洗浄バッファーでカラムを洗浄した。
【0064】
結合したCAを、1.5カラム体積の種々の溶出バッファー(0mM〜475mM NaClを25mMのNaCl刻みで含むトリエタノールアミンバッファー(20mM、pH7.4))、及び最終的に1000mMのNaClを含む同様のバッファーを用いて溶出し、全ての残余CA及び他の残余物(もしあれば)を除去した。
【0065】
試料を、5kDaの膜(Vivascience、英国)による高圧限外濾過によって20mlまで濃縮した。これらの試料を、4℃での限外濾過を繰り返すことにより、バッファーを脱イオン水に交換した。試料を、(実施例5で報告されるように)GPC及び(アルシアンブルーで染色される(実施例8))ネイティブPAGEによって、平均分子量及び他のパラメーターについて分析した。上記の手順を用いて生成したCAの狭い画分を、過ヨウ素酸ナトリウムで酸化し、GPC及びネイティブPAGEにより、ポリマーへの総変化について分析した。
【0066】
実施例2:CAの活性化(参照例)
新たに調製した0.02Mメタ過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4;CAに対して6倍過剰モル)溶液を20℃でCAと混合し、この反応混合物を暗所で15分間、磁気攪拌させた。酸化させたCAを、70%(最終濃度)エタノールを用いて、混合物を3000gで20分間遠心分離することによって沈殿させた。上清を除去し、ペレットを最小量の脱イオン水に溶解した。CAを再度70%エタノールで沈殿させた後、12,000gで遠心分離した。ペレットを最小量(quantitiy)の水に溶解し、凍結乾燥して、次に使用するまで−20℃で保存した。
【0067】
実施例3:CA及び誘導体の酸化状態の測定(参照例)
CAの酸化度の定量評価は、カルボニル化合物との相互作用において、難溶性の2,4ジニトロフェニルヒドラゾンを生じる2,4ジニトロフェニルヒドラジン(2,4−DNPH)を用いて行った。非酸化CA及び酸化CA(CAO)(各5mg)を、2,4−DNPH試薬(1.0ml)に添加し、この溶液を振盪し、その後、結晶性沈殿が観察されるまで37℃で放置した(Shriner他、1980)。CAの酸化度(定量的)は、アルカリ性溶液中のフェリシアニドイオンのフェロシアン化第二鉄(ペルシアンブルー)への還元に基づく方法(Park及びJohnson、1949)を用いて測定した(後で630nmで測定する)。この例では、グルコースを標準液(standard)として用いた。
【0068】
実施例4a:アミノコロミン酸(CA−NH2)の調製(参照例)
10〜100mg/mlのCAOを、50mlのチューブ内で300倍過剰モルのNH4Clを含む2mlの脱イオン水に溶解した後、NaCNBH4(1N NaOH水溶液中に5Mのストック)を最終濃度が5mg/mlとなるように添加した。この混合物を室温で5日間インキュベートした。CAOの代わりにコロミン酸を用いて対照反応物も準備した。生成物であるコロミン酸アミン誘導体を、5mlの氷冷エタノールを添加することにより沈殿させた。沈殿物を4000rpmで30分間、室温で、卓上遠心機で遠心分離することにより回収した。ペレットはそのままにしておき、2mlの脱イオン水で再懸濁した後、10mlの超遠心チューブ内で5mlの氷冷エタノールを用いて再度沈殿させた。沈殿物を30,000rpmで30分間、室温で遠心分離することにより回収した。ペレットを2mlの脱イオン水で再懸濁し、凍結乾燥させた。
【0069】
実施例4b:アミン含有量の分析
TNBS(ピクリルスルホン酸、すなわち2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸)分析を用いて、生成物中に存在するアミノ基の量を測定した(Satake他、1960)。
【0070】
マイクロタイタープレートのウェル内で、TNBS(0.5μlの15mM TNBS)を90μlの0.1Mホウ酸バッファー(pH9.5)に添加した。これに、10μlの50mg/mlのCA−アミン溶液を添加した。このプレートを20分間室温で放置した後、405nmにおける吸光度を読み取った。0.1〜1mMの濃度範囲のグリシンを標準として用いた。TNBSは第1級アミン基をトリニトロフェニル化する。アミンのTNP付加物が検出される。
【0071】
冷エタノール二重沈殿(double cold−ethanol precipitation)により精製された生成物をTNBS分析を用いて試験すると、85%に近い変換が示された。
【0072】
実施例4c:コロミン酸−SHの調製
NH4Clの代わりに100倍過剰モルのシスタミンを用いること以外は、実施例4aに記載したのと同様に、酸化させたCAを還元アミノ化によってシスタミンで誘導体化した。この生成物を精製する前に、これを37℃で1時間、50mM DTTで処理した。還元された生成物を、エタノール二重沈殿及びsepharose G25によるサイズ排除クロマトグラフィによって精製した。
【0073】
別の実施例において、実施例4aのように調製されたCANH2を、1mM EDTA(pH8.0)を有する10mM PBSに溶解する。50倍過剰モルの2−イミノチオランを添加し、反応を25℃で1時間続ける。未反応の2−イミノチオラートを、反応バッファーを用いて平衡にしたsephadex G25カラムによるゲルろ過によって除去する。
【0074】
チオール含有量をエルマン分析を用いて評価する。15μlの試料を150μlの0.1Mホスフェート、0.08mg/mlの5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を含有する1mM EDTA(pH8)と混合し、30分間室温で反応させ、405nmで読み取る。この生成物は図7b及び図7cのスキームによる反応に好適である。
【0075】
さらに、ポリマーのチオール含有量が60%であることが分かった。
【0076】
実施例4d:CA−NHSの調製
上記の参照例4aで合成したCA−NH2(35kDa)(15〜20mg)を0.15M PBS(350μL、pH7.2)に溶解し、次に、PBS(150μL、PH7.2)に溶解した50又は75モル当量のBS3を添加した。この混合物を5秒間ボルテックスにかけた後、30分間20℃で反応させた。CA−NHS生成物を、溶離液としてPBS(pH7.2)を用いてPD−10カラムにより精製し、直ちにタンパク質及びペプチドのNH2基との部位特異的結合に用いた。PD10画分からのCA濃度の測定を、レゾルシノール分析を用いてシアル酸含有量を分析することによって行った。CAとNHSとの反応溶液を260nmで分析することによる紫外分光法によって、また254nmでの可視化を伴う薄層クロマトグラフィによって、CAポリマーにおけるNHS含有量を測定した。
【0077】
上記の実施例4aで合成したCA−NH2(35kDa)(15〜20mg)を、加熱(100〜125℃)しながら、DMSO(300〜285μL)を添加した最小量の水(50〜65μL)に溶解するか、又は95%を超えるDMSO(350μL)に溶解した。DMSO(150L)に溶解した75モル当量のDSGをCA−NH2溶液に添加し、5秒間ボルテックスにかけた後、30分間20℃で反応させた。CA−NHS生成物を、ジオキサンによる沈殿(×2)によって、又は溶離液としてPBS(pH7.2)を用いたPD−10カラムによって精製し、直ちにタンパク質及びペプチドのNH2基との部位特異的結合に用いた。前述のように、PD10画分からのCA濃度の測定を、レゾルシノール分析を用いて行った。紫外分光法(260nm)によって、また薄層クロマトグラフィ(254nm)によって、CAポリマーにおけるNHS含有量を測定した。
【0078】
実施例5:CA試料のゲル浸透クロマトグラフィ(参照例)
CA(35kDa)試料をNaNO3(0.2M)及びCH3CN(10%;5mg/ml)に溶解し、2×GMPWXLカラム上で、屈折率を検出しながらクロマトグラフィを行った(GPCシステム:VE1121 GPC溶媒ポンプ、VE3580 RI検出器及びTrisec3ソフトウェア(Viscotek Europe Ltd)による照合)。試料(5mg/ml)を、0.45μmナイロン膜で濾過し、移動相として0.2M NaNO3及びCH3CN(10%)を用いて0.7cm/分で流した(図11)。
【0079】
実施例6:(BS3及びDSGを用いた)CA−NHS−タンパク質複合体の調製
炭酸水素ナトリウムに溶解したGH(23mg/ml、pH7.4)を、過剰量のBS3を用いて実施例4bからのCA−NHS(35kDa)と共有結合させた。25:1又は50:1のCA−NHS:GHのモル比を用いて0.15M PBS(pH7.2、1.5ml)中で30分間、20℃で反応を行った。ポリシアリル化させたGHを、SDS−PAGE及びHPLC−サイズ排除クロマトグラフィにより測定された結合収量を用いて特徴付けた。対照は、天然のタンパク質を、CA−NHSの非存在下でBS3を用いた結合手順にかけることを含むものであった。CA−NH2をまた、天然のGHの非存在下でBS3を用いた結合手順にかけた。
【0080】
炭酸水素ナトリウム(pH7.4)に溶解したGHをCA−NHS(35kDa)に共有結合させ、これを、実施例4bに記載したように過剰量のDSGを用いて調製した。50:1のCA−NHS:GHのモル比を用いて0.15M PBS(pH7.2、1.5ml)中で30分間、20℃で反応を行った。ポリシアリル化させたGHを、SDS−PAGE及びHPLC−サイズ排除クロマトグラフィにより測定された結合収量を用いて特徴付けた。対照は、天然のタンパク質を、CA−NHSの非存在下でDSGを用いた結合手順にかけることを含むものであった。
【0081】
実施例7.CA−NHS−GH複合体のHPLC−SEC
CA−GH複合体を炭酸水素アンモニウムバッファー(0.2M、pH7)に溶解し、superose 6カラム上で、紫外線指数により検出しながら(Agilent、10/50システム(英国))クロマトグラフィを行った。試料(1mg/ml)を0.45μmナイロン膜で濾過し、175μlを注入し、移動相として炭酸水素アンモニウムバッファーを用いて0.25cm/分で流した(図12)。
【0082】
実施例8.CA及びCA−GH複合体のSDS及びネイティブPAGE
SDS−PAGE(MiniGel、Vertical Gel Unit、型式 VGT 1、電源型式 Consort E132(VWR、英国))を、ポリシアリル化におけるGHの分子サイズの変化を検出するために使用した。反応混合物からの0分(対照)及び30分の試料におけるGH及びその(CA−NHSとの)複合体、並びにプロセスの対照(非酸化CA)のSDS−PAGEを、4〜20%ポリアクリルアミドゲルを用いて行った。この試料を幅広い分子量マーカーに対して較正した(図13及び図14)。
結果
CA(22.7kDa)及びその誘導体を、1.1未満の多分散性、46kDaまでの平均分子量、及び種々の%割合を有する様々な狭い種(narrow species)に、首尾よく分画した。表2は22.7kDaの物質を分離した結果を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
このプロセスは、各スケールでほとんど同一の分画プロフィールを有する、1mlから900mlまでのマトリックスに拡大縮小可能である(全ての結果は示していない)。
【0085】
より大きなポリマー(CA、39kDa、p.d. 1.4)の分画は、90kDaまでの種を生じる。このプロセスは、大きなバッチのポリマーの分画にさえ、首尾よく用いることができる。この結果は、イオン交換画分が狭く分散することを示す。これは、GPCのデータと一致する。
【0086】
全ての狭い画分は、20mM過ヨウ素酸塩を用いて首尾よく酸化され、製造プロセスの種々の段階から採取され且つGPC及びネイティブPAGEにより分析された試料は、分子量及び多分散性における変化を示さなかった。
【0087】
CA、すなわちPSAは、N−アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)残基の鎖状アルファ−2,8結合したホモポリマーである(図1a)。
【0088】
CAの酸化状態の定量測定は、グルコースを標準として用い、アルカリ性溶液中でフェリシアニドイオンをフェロシアン化物(プルシアンブルー)に還元する(Park及びJohnson、1949)ことにより行われた。酸化されたCAは、天然のポリマーと比較して100mol%近い見かけのアルデヒド含有量を有することが見出された。フェリシアニドを用いた酸化プロセスにおけるCA中間生成物の定量分析の結果は、天然のCAと共に淡黄色の沈殿物を生じ、ポリマーのアルデヒド含有形態と共に濃橙色を生じ、且つ室温での10分間の反応後に濃橙色沈殿を生じる、2,4−DNPHを用いて行われる定性試験の結果と一致する。
【0089】
過ヨウ素酸塩及びボロヒドリド処理後の内部のアルファ−2,8結合したNeu5Ac残基の完全性(integrity)をGPCによって分析し、酸化した(CAO)、アミノCA(CA−NH2)、CA−NHS物質について得られたクロマトグラフを、天然のCAのものと比較した。CAは全て、ほとんど同一の溶出プロフィールを示すことが見出され(図12)、種々の工程が、ポリマー鎖の顕著なフラグメント化又は(CA−NHSの場合には)架橋を引き起こす証拠は何もない。小さなピークは緩衝塩を示す。
【0090】
CA−GH複合体の形成をSEC−HPLC及びSDS−PAGEによって分析した。DSGとのこの結合反応に関して、SDS−PAGEにより、遊離GHが残存しないこと、及びこの結合反応が完了したことが示された。これはSEC−HPLCにより確認されたため、遊離GHの予測溶出時間前にCA−GH複合体を溶出した(遊離GHのピークは観測されなかった)。一方、BS3を用いたGHへのCA−NH2の結合反応のSDS−PAGEによる分析は遊離GHの存在を示し、これは、70分付近で遊離タンパク質の溶出ピークを示したSEC−HPLCによって確認された。
【0091】
結果(図13)により、複合体レーンでは、GHに比べてポリシアリル化されたGHを示す質量の増大を典型的に示すバンドシフトが存在することが示される。さらに、SEC−HPLCによってGH複合体を様々な種に分離した。
【0092】
実施例9:コロミン酸ヒドラジド(CAH)の調製(参照例)
400μlの20mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)中で2時間、25℃で、50mgの酸化されたコロミン酸(19kDa)を2.6mgのヒドラジン(液体)と反応させた。次に、このコロミン酸を70%エタノールで沈殿させた。この沈殿物を350μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に再溶解し、NaCNBH3を5mg/mlまで添加した。この混合物を4時間、25℃で反応させた後、一晩凍結させた。移動相として0.15M NH4HCO3を用いて、Sephadex G25を充填したPD10カラム上のゲル浸透クロマトグラフィによって、NaCNBH3及び反応副生成物を除去した。画分(各0.5ml)を(アミノ基に対して特異的であり、既述の)TNBS分析によって分析した。画分6、7、8及び9(ボイドボリューム画分)は、バックグラウンドよりもかなり強いシグナル(singal)を有し、バックグラウンドはNH4+イオンの存在により高い値を示した。また、画分6、7、8及び9はコロミン酸を含有していた。これらの4つの画分を凍結乾燥し、CA−ヒドラジド(CAH)を回収した。
【0093】
実施例10:コロミン酸NHS(CA−NHS)及びコロミン酸−タンパク質複合体の調製
10mgの19kDaであるCA−ヒドラジドを9mgのBS3と、400μlのPBS(pH7.4)中で30分間、室温で反応させた。この反応混合物をSephadex G25を充填したPD10カラムに入れて、0.5ml画分を回収した。0.1mgのBSAを5〜9の各画分に加えた。室温で2時間後、画分をBSAと反応させた。これらの試料をSDS−PAGE及びSEC HPLCで分析した。
【0094】
これらの画分は、コロミン酸をわずかしか有していなかった。コロミン酸を多く含む画分(6及び7)は、他の試料及びBSAにおいて存在するバンドに加えてタンパク質によるストリーク(streak)を有し、これは結合の明らかな証拠である(図15)。
【0095】
画分6のHPLCクロマトグラムは、遊離タンパク質と比較して複合体の保持時間に大きなシフトが存在することを示し、これにより結合が裏付けられる(図16a及び図16b)。
【0096】
用いられるBSAは不純物を含有する。BSAのピークは、56分である(図16a)。
【0097】
56分のピークに加えて、複合体であるより大きい種が存在する。80分に大きいピークが存在し、このピークは、タンパク質と反応したためにCA−NHSから放出されたNHSである。遊離BS3を除去するゲル浸透クロマトグラフィカラムにCAHを通したことから、このピークが遊離BS3である可能性はない。これは、CA分子上にNHSエステル基が生成されたことを強く示唆している(図16b)。
参考文献
【0098】
【表2】
【0099】
【表2】
【0100】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアル酸ユニット由来の少なくとも1つの末端ユニットを有するポリシアル酸(PSA)基質分子を含む化合物であって、必要に応じてリンカーを介して、シアル酸ユニットの2位又は7位炭素のいずれかで該ユニットと結合するN−ヒドロキシスクシンイミドのエステルを含む、化合物。
【請求項2】
各末端ユニットが、N−ヒドロキシスクシンイミドのエステルを含むシアル酸ユニットに由来する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式I、II又はIII
【化1】
(式中、R1はH又はスルホニルであり、
R2は連結基であり、
Aは、NR5、NR5NR6、O又はSであり(式中、R5及びR6は独立して、H、C1〜4アルキル及びアリールから選択される)、
SylOはシアリル基であり、
nは1〜100であり、mは0〜100であり、
R3は、水素又はモノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリシアル酸基、タンパク質、ペプチド、脂質、薬物、細胞膜若しくは細胞壁成分、又はドラッグデリバリーシステムであり、
および
R4は、水素又はモノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリシアル酸基、アルキル基、アシル基、薬物、又はドラッグデリバリーシステムである)
を有する、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
R2が、チオエステル結合、エステル結合、アミン結合又はアミド結合とみなされ得る任意のアルカンジイル、アリーレン、アルカリーレン、ヘテロアリーレン、アルキルヘテロアリーレンから選択され、Aが、NR5、すなわちNR5基を介して前記分子の残りの部分と結合する連結基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
必要に応じて予備末端シアル酸誘導体化工程(複数可)の後で、官能基の一方がNHSエステルであり、且つ官能基の他方が末端シアル酸ユニット(複数可)又はその誘導体(複数可)の2位又は7位炭素原子において反応性である、二官能性試薬と、場合によっては、該試薬と該シアル酸基(複数可)とを共有結合させると共に、該NHS基が変化しないような条件下で、PSA基質を反応させる方法。
【請求項6】
前記基質中の前記シアル酸ユニットが、アミン基を生成する予備工程に供される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シアル酸ユニットが還元性末端ユニットであり、前記予備工程が、一連の:
a)ビシナルジオール基を形成するために、前記還元性末端シアル酸ユニットを開環する還元工程と、
b)アルデヒド基を形成するための、工程a)で形成された前記ビシナルジオール基の選択的酸化工程と、
c)例えばシアノ水素化ホウ素(cyano borohydrate)を用いたアンモニウム化合物との還元アミノ化による工程b)のアルデヒドのアミノ基への変換工程と、
d)工程c)による前記アミノ基を、過剰量のホモ二官能性NHS試薬と反応させる工程と
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記非還元性末端に末端シアル酸を有するシアル酸出発物質が、工程e)該非還元性末端のシアル酸ユニットをC−7及びC−8のビシナルジオール基において酸化し、7位炭素原子上にアルデヒドを形成するための選択的酸化工程と、工程c)アンモニウム化合物との還元アミノ化による、工程e)のアルデヒド基のアミノ基への変換工程と、工程d)得られるアミノ基の修飾工程とに供される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記NHS試薬が、ビス[2−スクシンイミジルオキシカルボニル−オキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、
ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)(BS3)、
ジスクシンイミジルグルタレート(DSG)、
ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、
ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、
ジスクシンイミジルタートレート(DST)又はそのスルホ類似体、
3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、並びに
エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)及びそのスルホ類似体から選択される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項10】
前記NHS試薬との前記反応が、非プロトン性溶媒中で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基質中の前記シアル酸ユニットが、チオール基を生成する予備工程に供される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記NHS試薬が、
N−(α−マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル(AMAS)、
N−(β−マレイミドプロピルオキシ)スクシンイミドエステル(BMPS)、
N−(ξ−マレイミドカプリルオキシ)スクシンイミドエステル(EMCS)、又はそのスルホ類似体、
N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート)m(LC−SMCC)、
m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート)又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート(SMBP)又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−6−(β−マレイミド−プロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、
N−(k−マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ−KMUS)、
スクシンイミジル6−[3−2(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート(LC−SPDP)又はそのスルホ類似体、
4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、
N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、
N−スクシンイミジル[4−ビニルスルホニル)ベンゾエート(SVSB)、
スクシンイミジル3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)、及び
N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)及び
N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)又はそのスルホ類似体から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1級アミン基を有する生物学的に有用な化合物を、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物と、又は請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法の生成物と、前記N−スクシンイミジルオキシ基が置換された後に残るアシル基で前記アミンの活性水素を置換する条件下で反応させる、誘導体化方法。
【請求項14】
前記生物学的に有用な分子が、第1級アミン基がN末端であるか又はリジンユニットのγ−アミノ基である、タンパク質又はペプチドである、請求項13に記載の誘導体化方法。
【請求項1】
シアル酸ユニット由来の少なくとも1つの末端ユニットを有するポリシアル酸(PSA)基質分子を含む化合物であって、必要に応じてリンカーを介して、シアル酸ユニットの2位又は7位炭素のいずれかで該ユニットと結合するN−ヒドロキシスクシンイミドのエステルを含む、化合物。
【請求項2】
各末端ユニットが、N−ヒドロキシスクシンイミドのエステルを含むシアル酸ユニットに由来する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式I、II又はIII
【化1】
(式中、R1はH又はスルホニルであり、
R2は連結基であり、
Aは、NR5、NR5NR6、O又はSであり(式中、R5及びR6は独立して、H、C1〜4アルキル及びアリールから選択される)、
SylOはシアリル基であり、
nは1〜100であり、mは0〜100であり、
R3は、水素又はモノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリシアル酸基、タンパク質、ペプチド、脂質、薬物、細胞膜若しくは細胞壁成分、又はドラッグデリバリーシステムであり、
および
R4は、水素又はモノ−、ジ−、オリゴ−若しくはポリシアル酸基、アルキル基、アシル基、薬物、又はドラッグデリバリーシステムである)
を有する、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
R2が、チオエステル結合、エステル結合、アミン結合又はアミド結合とみなされ得る任意のアルカンジイル、アリーレン、アルカリーレン、ヘテロアリーレン、アルキルヘテロアリーレンから選択され、Aが、NR5、すなわちNR5基を介して前記分子の残りの部分と結合する連結基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
必要に応じて予備末端シアル酸誘導体化工程(複数可)の後で、官能基の一方がNHSエステルであり、且つ官能基の他方が末端シアル酸ユニット(複数可)又はその誘導体(複数可)の2位又は7位炭素原子において反応性である、二官能性試薬と、場合によっては、該試薬と該シアル酸基(複数可)とを共有結合させると共に、該NHS基が変化しないような条件下で、PSA基質を反応させる方法。
【請求項6】
前記基質中の前記シアル酸ユニットが、アミン基を生成する予備工程に供される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シアル酸ユニットが還元性末端ユニットであり、前記予備工程が、一連の:
a)ビシナルジオール基を形成するために、前記還元性末端シアル酸ユニットを開環する還元工程と、
b)アルデヒド基を形成するための、工程a)で形成された前記ビシナルジオール基の選択的酸化工程と、
c)例えばシアノ水素化ホウ素(cyano borohydrate)を用いたアンモニウム化合物との還元アミノ化による工程b)のアルデヒドのアミノ基への変換工程と、
d)工程c)による前記アミノ基を、過剰量のホモ二官能性NHS試薬と反応させる工程と
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記非還元性末端に末端シアル酸を有するシアル酸出発物質が、工程e)該非還元性末端のシアル酸ユニットをC−7及びC−8のビシナルジオール基において酸化し、7位炭素原子上にアルデヒドを形成するための選択的酸化工程と、工程c)アンモニウム化合物との還元アミノ化による、工程e)のアルデヒド基のアミノ基への変換工程と、工程d)得られるアミノ基の修飾工程とに供される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記NHS試薬が、ビス[2−スクシンイミジルオキシカルボニル−オキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、
ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート)(BS3)、
ジスクシンイミジルグルタレート(DSG)、
ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、
ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、
ジスクシンイミジルタートレート(DST)又はそのスルホ類似体、
3,3’−ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、並びに
エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)及びそのスルホ類似体から選択される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項10】
前記NHS試薬との前記反応が、非プロトン性溶媒中で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基質中の前記シアル酸ユニットが、チオール基を生成する予備工程に供される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記NHS試薬が、
N−(α−マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル(AMAS)、
N−(β−マレイミドプロピルオキシ)スクシンイミドエステル(BMPS)、
N−(ξ−マレイミドカプリルオキシ)スクシンイミドエステル(EMCS)、又はそのスルホ類似体、
N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート)m(LC−SMCC)、
m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート)又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート(SMBP)又はそのスルホ類似体、
スクシンイミジル−6−(β−マレイミド−プロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、
N−(k−マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ−KMUS)、
スクシンイミジル6−[3−2(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート(LC−SPDP)又はそのスルホ類似体、
4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、
N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、
N−スクシンイミジル[4−ビニルスルホニル)ベンゾエート(SVSB)、
スクシンイミジル3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)、及び
N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)及び
N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)又はそのスルホ類似体から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1級アミン基を有する生物学的に有用な化合物を、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物と、又は請求項5〜11のいずれか1項に記載の方法の生成物と、前記N−スクシンイミジルオキシ基が置換された後に残るアシル基で前記アミンの活性水素を置換する条件下で反応させる、誘導体化方法。
【請求項14】
前記生物学的に有用な分子が、第1級アミン基がN末端であるか又はリジンユニットのγ−アミノ基である、タンパク質又はペプチドである、請求項13に記載の誘導体化方法。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−49860(P2013−49860A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230320(P2012−230320)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2007−555696(P2007−555696)の分割
【原出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507042545)リポクセン テクノロジーズ リミテッド (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2007−555696(P2007−555696)の分割
【原出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507042545)リポクセン テクノロジーズ リミテッド (15)
【Fターム(参考)】
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