説明

タンポンの製造方法、及び、タンポンの製造装置

【課題】膣腔内に挿入された際に製剤の効果が適切に発揮されるタンポンの製造方法等を提供する。
【解決手段】液体を吸収する吸収体を有するタンポン20の製造方法であって、吸収体材料60を圧縮成型102することにより前記吸収体を得るステップと、溶融した製剤を、該製剤の主成分の凝固点以下の温度である前記吸収体の外表面に塗工するステップ110と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンポンの製造方法、及び、タンポンの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
経血等の液体を吸収する吸収体を有するタンポンは、既によく知られている。また、かかるタンポンの中には、吸収体の外表面に製剤が塗工されているものがある。
そして、このようなタンポンを製造する際には、吸収体材料から吸収体を得る工程と製剤が吸収体の外表面に付着するように製剤を塗工する工程が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−536237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記工程を有する製造方法により製造されたタンポンを膣腔内に挿入した際に製剤の効果が適切に発揮されない場合があった。したがって、製剤の効果が適切に発揮されるタンポンの製造方法が要請されていた。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、膣腔内に挿入された際に製剤の効果が適切に発揮されるタンポンの製造方法等を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための主たる発明は、
液体を吸収する吸収体を有するタンポンの製造方法であって、
吸収体材料を圧縮成型することにより前記吸収体を得るステップと、
溶融した製剤を、該製剤の主成分の凝固点以下の温度である前記吸収体の外表面に塗工するステップと、
を有することを特徴とする製造方法である。
【0006】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、膣腔内に挿入された際に製剤の効果が適切に発揮されるタンポンの製造方法等が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】タンポン10の構成要素を示す断面図である。
【図2】タンポン10の構成要素を示す断面図である。
【図3】タンポン本体20の外観図である。
【図4】外筒40の外観図である。
【図5】図4に示す外筒40を先端側から見た図である。
【図6】図1又は図2のA−A断面図である。
【図7】図2の部分拡大図である。
【図8】タンポン本体20の製造フローを示した図である。
【図9】図9A乃至図9Dは、タンポン本体20が製造されるまでの変遷を示した模式図である。
【図10】タンポン10の製造装置100のうちのタンポン本体20の製造部分を示した模式図である。
【図11】図10に示す製造装置100を上方から見たときの模式図である。
【図12】他の実施形態に係るタンポン10の製造装置100のうちのタンポン本体20の製造部分を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0010】
液体を吸収する吸収体を有するタンポンの製造方法であって、
吸収体材料を圧縮成型することにより前記吸収体を得るステップと、
溶融した製剤を、該製剤の主成分の凝固点以下の温度である前記吸収体の外表面に塗工するステップと、
を有することを特徴とする製造方法。
かかる場合には、膣腔内に挿入された際に製剤の効果が適切に発揮されるタンポンの製造方法が実現されることとなる。
【0011】
かかる製造方法であって、
前記外表面に塗工された前記製剤に、前記凝固点以下の温度に冷却された冷却体を接触させるステップを有することが望ましい。
かかる場合には、膣腔内に挿入された際に製剤の効果がより適切に発揮されるタンポンの製造方法が実現されることとなる。
【0012】
かかる製造方法であって、
前記吸収体材料を圧縮成型することにより得られた前記吸収体を加熱することにより該吸収体の形状を固定するステップと、
形状が固定された前記吸収体を、その外表面の温度が前記凝固点以下となるように冷却するステップと、を有し、
前記製剤を塗工するステップにおいては、溶融した前記製剤を、前記凝固点以下の温度に冷却された前記吸収体の外表面に塗工することが望ましい。
かかる場合には、製造工程の短縮化を実現することが可能となる。
【0013】
液体を吸収する吸収体を有するタンポンの製造装置であって、
吸収体材料を圧縮成型することにより前記吸収体を得る圧縮成型ユニットと、
溶融した製剤を、該製剤の主成分の凝固点以下の温度である前記吸収体の外表面に塗工する塗工ユニットと、
を有することを特徴とする製造装置。
かかる場合には、膣腔内に挿入された際に製剤の効果が適切に発揮されるタンポンの製造装置が実現されることとなる。
【0014】
かかる製造装置であって、
前記塗工ユニットにより前記外表面に塗工された前記製剤に、前記凝固点以下の温度に冷却された冷却体を接触させる冷却体接触ユニットを有することが望ましい。
かかる場合には、膣腔内に挿入された際に製剤の効果がより適切に発揮されるタンポンの製造装置が実現されることとなる。
【0015】
かかる製造装置であって、
前記圧縮成型ユニットが前記吸収体材料を圧縮成型することにより得られた前記吸収体を加熱することにより該吸収体の形状を固定する加熱ユニットと、
該加熱ユニットにより形状が固定された前記吸収体を、その外表面の温度が前記凝固点以下となるように冷却する冷却ユニットと、を有し、
前記塗工ユニットは、溶融した前記製剤を、前記冷却ユニットにより前記凝固点以下の温度に冷却された前記吸収体の外表面に塗工することが望ましい。
かかる場合には、製造工程の短縮化を実現することが可能となる。
【0016】
かかる製造装置であって、
前記塗工ユニットにより前記外表面に塗工された前記製剤に、前記凝固点以下の温度に冷却された冷却体を接触させる冷却体接触ユニットを有し、
前記塗工ユニットは、溶融した前記製剤を、冷却された搬送ベルトにより搬送される前記吸収体の外表面に塗工し、
前記冷却ユニット及び前記冷却体の双方は、前記搬送ベルトであることが望ましい。
かかる場合には、効率的な製造装置が実現される。
【0017】
かかる製造装置であって、
前記冷却体接触ユニットは、前記冷却体としての冷風を前記製剤に吹き付ける冷風吹き付けユニットであることが望ましい。
【0018】
かかる場合には、簡易に製剤を冷却させることが可能となる。
【0019】
かかる製造装置であって、
前記塗工ユニットは、
前記吸収体の外表面に接触した状態で、該外表面に、溶融した前記製剤を転写して塗工する転写ベルトと、
前記転写ベルトに溶融した前記製剤を供給する供給ユニットと、
を有することが望ましい。
かかる場合には、製造プロセスを簡易化できる。
【0020】
かかる製造装置であって、
前記塗工ユニットは、
凝固した前記製剤が一方面に付着している凝固製剤付着シートを、該一方面が前記吸収体の外表面に接触した状態で移動させる移動ユニットと、
前記凝固製剤付着シートの他方面に接触して該凝固製剤付着シートを加熱することにより、凝固した前記製剤を溶融しつつ溶融した該製剤を前記外表面に転写する加熱転写ユニットと、
を有することが望ましい。
かかる場合には、製剤で汚れる可能性の低い製造装置を構築することができる。
【0021】
===タンポンの構成について===
先ず、タンポン10の構成について、図1乃至図7を参照しながら説明する。
図1及び図2は、タンポン10の構成要素を示す断面図である。図1は、内筒50を収縮させた状態のタンポン10を、図2は、内筒50を伸張させた状態のタンポン10を、それぞれ示している。図3は、タンポン本体20の外観図である。図4は、外筒40の外観図である。図5は、図4に示す外筒40を先端側から見た図である。図6は、図1又は図2のA−A断面図である。図7は、図2の部分拡大図である。なお、以降の説明において、タンポン10の長手方向において、膣腔内に挿入される側を先端と呼び、反対側を後端と呼ぶ。
【0022】
本実施形態のタンポン10は、図1、図2に示すように、吸収体の一例としてのタンポン本体20と、収納筒の一例としての外筒40及び押出部材の一例としての内筒50を備えるアプリケータ30と、を有する。
【0023】
タンポン本体20は、膣腔を閉塞して経血等の液体を吸収するものである。このタンポン本体20は、レーヨン繊維からなる吸収体本体(綿体)をポリエステルスパンボンド不織布からなるカバー体で覆ったものであり、略弾丸状の形状を有している。
【0024】
また、タンポン本体20の外表面21には、製剤Mが付着している。この製剤Mは、薄茶色の着色性物質(色が付いた物質)であり、膣腔内に投与されて、抗酸化作用、抗炎症作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗アレルギー作用、脱臭作用、血管拡張作用、脂質過酸化抑制作用などを発揮する薬効成分の一例としての松樹皮抽出物(東洋新薬社製フラバンジェノール)と当該松樹皮抽出物を担持する水溶性担持体の一例としてのポリエチレングリコールとの混合物である。
【0025】
より具体的には、本実施の形態に係る製剤Mは、水溶性担持体(ポリエチレングリコール)として、互いに融点(換言すると、凝固点)が異なる二つの水溶性担持体を有している。すなわち、第一水溶性担持体の一例としての分子量が1540のポリエチレングリコール(以下、第一ポリエチレングリコールと呼ぶ)と第二水溶性担持体の一例としての分子量が1000のポリエチレングリコール(以下、第二ポリエチレングリコールと呼ぶ)とを有している。第一ポリエチレングリコールの融点(凝固点)は、約45度であり、体温(37度とする)を超えた温度となっている。その一方で、第二ポリエチレングリコールの融点(凝固点)は、約37度であり、第一ポリエチレングリコールの融点よりも小さな温度であり、かつ、体温以下の温度となっている。このように、製剤Mは、松樹皮抽出物と第一ポリエチレングリコールと第二ポリエチレングリコールとが混合された混合物となっている。
【0026】
なお、本実施の形態において、松樹皮抽出物と第一ポリエチレングリコールと第二ポリエチレングリコールとの混合比は1:3:1である(すなわち、松樹皮抽出物が20重量パーセントに対し、第一ポリエチレングリコールが60重量パーセント、第二ポリエチレングリコールが20重量パーセント)。すなわち、第一ポリエチレングリコールが製剤Mにおける主成分となっている。
【0027】
また、本実施の形態に係るタンポン本体20は、図3に示すように、外表面21に図柄を有している。すなわち、タンポン本体20は、外表面21に、製剤Mが塗工された塗工部23と塗工されていない非塗工部25とを備えており、当該塗工部23及び非塗工部25により(すなわち、塗工部23と非塗工部25との色の相違により)、外表面21に図柄が描かれている。本実施の形態に係る図柄は、塗工部23と非塗工部25とが交互に規則的に配置されることにより描かれた図柄である。具体的には、当該図柄は、図3に示すように、リング(幅4mm)がタンポン本体20の長手方向において並んだような模様である。
【0028】
また、本実施の形態に係るタンポン本体20には、紐の一例としての取り出し紐22が(縫い)付けられている。この取り出し紐22は、綿製の撚糸である。取り出し紐22は、タンポン本体20の後端側から伸びており、膣腔内にあるタンポン本体20を膣腔外に引き出す際にタンポンの使用者等によって持たれる。また、取り出し紐22は、図1、図2に示すように、アプリケータ30内を通り該アプリケータ30(内筒50)の後端から幾分引き出されている。すなわち、取り出し紐22においては、その一部がアプリケータ30(内筒50)の後端から外部に露出している。
【0029】
なお、本実施の形態においては、タンポン本体20に製剤Mが塗工されている(塗工部23を有する)一方で、外部に露出した前記取り出し紐22の露出部分22aには製剤Mが塗工されていない(塗工部23を有さない)。さらには、取り出し紐22は塗工部23を有さない(取り出し紐22のどこにも塗工部23は存在しない)。
【0030】
アプリケータ30は、タンポン本体20を膣腔内に導き入れ易くするための補助具である。アプリケータ30は、図1、図2に示すように、外筒40と内筒50とを備えている。
【0031】
外筒40は、タンポン本体20を収納するためのものである。この外筒40は、熱可塑性樹脂(本実施の形態においては、ポリエチレン樹脂)を用いて射出成形された円筒体であり、適宜な可撓性を有する。外筒40は、外筒に収納されたタンポン本体20(換言すれば、タンポン本体20に描かれた前記図柄)を外部から視認可能な透明度(例えば、ヘイズ値で90%以下。本実施の形態においては、47%)を有している。なお、外筒40は、着色されていても着色されていなくてもよいが、本実施の形態においては、外筒40の全面が薄いピンク色で着色されている。
【0032】
また、外筒40は、先端側(換言すれば、外筒40の長手方向における一端側)に位置する大径部41と、当該大径部41の内径よりも小さな内径を有し、前記先端側とは反対側の後端側(換言すれば、外筒40の長手方向における他端側)に位置する小径部42とを備えている(なお、外径についても、大径部41の方が小径部42より大きい)。つまり、外筒40の先端部の外径(内径)は後端部の外径(内径)よりも大きいこととなる。そして、このことにより、大径部41及び小径部42との間には環状の段差47が形成されている。
【0033】
大径部41は、外筒40の中で、主として、内部にタンポン本体20を収納する役割を果たす部分である。すなわち、本実施の形態に係るタンポン10においては、大径部41及び小径部42のうちの大径部41のみにタンポン本体20が収納されている(したがって、外筒40の長手方向における大径部41の長さは、当該長手方向におけるタンポン本体20の長さよりも長くなっている)。また、当該大径部41は、タンポン10の使用時にタンポン本体20を収納した状態で膣腔内に挿入される部分である。
【0034】
また、大径部41(外筒40)は、先端に開口(以下、先端開口43と呼ぶ)を備えており、さらに、該先端開口43を囲む複数(本実施形態では、6つ)の花弁状部分44を有している。複数の花弁状部分44の各々は、図4に示すように外筒40の径方向において内側に弧状に屈曲している。このため、外筒40を膣腔内に挿入する時点では、該外筒40の先端部が図1や図2に示すように略半球状をなしており、先端開口43が図5に示すように略閉じた状態にある。そして、タンポン本体20が後述する内筒50により先端開口43から押し出される際に、当該先端開口43が開くこととなる。
【0035】
小径部42は、外筒40の中で、主として、後述する内筒50が移動する空間を提供する役割を果たす部分である(ただし、当然のことながら、内筒50は、小径部42内だけでなく、大径部41内においても移動する)。また、当該小径部42は、タンポン10の使用時に使用者によって持たれる部分である。
【0036】
また、小径部42(外筒40)は、図4に示すように、後端に開口(以下、後端開口45と呼ぶ)を備えており、さらに、該後端開口45よりもやや先端側に形成された環状リブ46を備えている。
【0037】
また、外筒40は、図1、図2、図6、図7に示すように、その(外筒40の)内面40aに外筒40の長手方向に沿うリブ(以下、長手方向リブ54と呼ぶ)を備えている。本実施の形態に係る外筒40は、少なくとも該外筒40の前記長手方向における中央C(図1参照)よりも先端側に、長手方向リブ54を備えている。また、本実施の形態においては、外筒40が、大径部41及び小径部42のうちの大径部41のみに長手方向リブ54を備えている。
【0038】
長手方向リブ54は、図6に示すように、内面40aの内周方向において等間隔に並ぶように32個配置されている。すなわち、外筒40(大径部41)は、内面40aの内周方向において等間隔に並ぶように配置された3つ以上の長手方向リブ54を備えている。なお、本実施の形態においては、互いに隣り合う長手方向リブ54は、接していない(隣接していない)。
【0039】
そして、各々の長手方向リブ54は、図1、図2に示すように、大径部41の先端側から後端側まで直線状に形成されている。より具体的に説明すると、本実施の形態に係る長手方向リブ54は、大径部41の最後端E2まで設けられている一方で、大径部41の最先端までは設けられていない。すなわち、前記花弁状部分44には長手方向リブ54が備えられておらず、大径部41の花弁状部分を除いた部分の最先端E1まで設けられている。
【0040】
また、本実施の形態に係る長手方向リブ54は、図6に示すように、大径部41の径方向に突出したリブであり、当該リブの幅は、径方向中心に近づくほど狭まっている。そして、大径部41の径方向における長手方向リブ54の突出高さhは、図7に示すように、大径部41と小径部42の内径差(大径部41の内半径R−小径部の内半径r=R−r)よりも小さくなっている(h<R−r)。換言すれば、長手方向リブ54を考慮したときの大径部41の内径R−h(以下、便宜上、リブ考慮内径と呼ぶ)は、小径部の内径rよりも大きくなっている(r<R−h)。
【0041】
そして、タンポン本体20は、リブ考慮内径と略同様の外径を有しており、タンポン本体20は、図6に示すように、内面40a及び長手方向リブ54のうちの長手方向リブ54のみに接触した状態で、外筒40の大径部41に収納されている。すなわち、タンポン本体20の外表面21は、内面40aとは接触せずに、長手方向リブ54の径方向における突出先端部のみと接触している。
【0042】
内筒50は、外筒40内において移動して、タンポン本体20を先端開口43から外筒40の外に押し出すためのものである。この内筒50は、外筒40内に挿入されており、外筒40内においてタンポン本体20よりも後端側に位置している。そして、外筒40の長手方向に沿って移動して該タンポン本体20を先端開口43に向けて後方から押し進める。これにより、タンポン本体20が、複数の花弁状部分44の各々を外筒40の径方向において外側に押し退けながら(換言すると、前記先端開口43を開きながら)、外筒40の外に押し出される。このように、内筒50は、外筒40内を移動してタンポン本体20を外筒40の外に押し出す機能を備えている。
【0043】
また、本実施形態に係る内筒50は、タンポン10の全長をよりコンパクトにするために伸縮可能な構造になっている。具体的に説明すると、図1に示すように、内筒50が収縮したとき、該内筒50の長さは外筒40の長さよりも短くなりタンポン10を携帯するのに適した長さとなる。一方、図2に示すように、内筒50が伸張すると、該内筒50の長さはタンポン本体20を外筒40の外に押し出すのに十分な長さとなる。以上のように内筒50を伸縮可能とするために、本実施形態では、内筒50が二段構造になっている。具体的に説明すると、本実施形態の内筒50は、図1、図2に示すように、第一内筒51と、該第一内筒51に摺動可能に挿入された第二内筒52とを有する。
【0044】
第一内筒51は、プラスチックにより射出成形された円筒体である。この第一内筒51は、外筒40の小径部42の内径よりも僅かに小さい外径を有する。また、第一内筒51は、図1に示すように前記小径部42に摺動自在に挿入されている。第一内筒51の先端部の外周面上には、環状の鍔部51aが形成されている。この鍔部51aは、外筒40の大径部41の前記リブ考慮内径よりも僅かに小さい外径を有し、前記段差47の内壁面に係止されることにより内筒50が外筒40の後端開口45から抜け落ちるのを阻止している。そして、内筒50がタンポン本体20を外筒40の外に押し出す際、該内筒50は、前記鍔部51aの外周面が大径部41の長手方向リブ54と接するように移動する。さらに、第一内筒51の内周面の後端部には、図1や図2に示すように、該第一内筒51の径方向において内側に突出した環状突起51bが形成されている。
【0045】
第二内筒52は、熱可塑性樹脂により射出成形された円筒体である。この第二内筒52は、第一内筒51の内径よりもやや小さい外径を有する。また、第二内筒52は、内筒50が収縮した状態では図1に示すように第一内筒51内に挿入されており、内筒50が伸張した状態では図2に示すように該第二内筒52の先端部にて第一内筒51の後端部と連結している。第二内筒52の先端部の外周面上には、円弧状の鍔部52aと、該鍔部52aよりも後端側に位置する凸部52bが形成されている。この凸部52bの高さは、図2に示すように、後端に向かうにつれて低くなっている。なお、第二内筒52の鍔部52aと凸部52bとの間隔は、第一内筒51の環状突起51bの厚みよりもやや長くなっている。
【0046】
そして、第二内筒52が後端側に引っ張られると、第一内筒51の環状突起51bが第二内筒52の鍔部52aと凸部52bとの間に位置するようになる。かかる状態になると、図2に示すように、前記環状突起51bが前記鍔部52a及び凸部52bに係止され、第一内筒51と第二内筒52が連結する。
【0047】
さらに、図1や図2に示すように、第二内筒52の後端部にはフレア状部分52cが形成されている。当該フレア状部分52cの外径は、少なくとも第一内筒51の内径よりも大きく、外筒40の小径部42の内径以上であることが望ましい。
【0048】
===タンポン10の製造方法について===
次に、上述したタンポン10を製造する製造方法について、図8乃至図11を用いて説明する。図8は、タンポン本体20の製造フローを示した図である。図9A乃至図9Dは、タンポン本体20が製造されるまでの変遷を示した模式図である。図10は、タンポン10の製造装置100のうちのタンポン本体20の製造部分を示した模式図である。図11は、図10に示す製造装置100を上方から見たときの模式図である。
【0049】
なお、タンポン10の製造プロセスは、タンポン10を構成する各部品(すなわち、タンポン本体20、外筒40、第一内筒51、及び、第二内筒52)を製造するプロセスとこれらの部品を組み立てるプロセスとに分かれる。ここでは、タンポン本体20(より正確には、取り出し紐22付きタンポン本体20)を製造するプロセスについて説明する。
【0050】
図8の製造フローは、吸収体材料形成ステップ(ステップS1)から始まる。当該ステップにおいては、先ず、前記吸収体本体62(綿体)を前記カバー体64で覆う(前記カバー体64で巻く)。その後、カバー体64で覆われた吸収体本体62を、所定の形状及び大きさに裁断する。そして、このことにより、吸収体材料60(すなわち、タンポン本体20の基材)が形成される。なお、当該ステップにおいては、吸収体材料60に取り出し紐22を縫い付ける工程も実施される(当該ステップ終了後の吸収体材料60の様子を図9Aに示す)。
【0051】
次に、当該吸収体材料60を圧縮成型することにより前記タンポン本体20を得る(ステップS3の圧縮成型ステップ)。
【0052】
図10及び図11には、圧縮成型ユニットの一例としての圧縮成型ドラム102が示されており、当該圧縮成型ドラム102が吸収体材料60を圧縮成型する(さらに、このことにより、タンポン本体20を得る)役割を果たす。すなわち、圧縮成型ドラム102は、回転可能なドラム型のユニットであり、複数(本実施の形態においては、8つ)の保持部102aを放射状に備えている。そして、吸収体材料60が、次々と、第一位置P1(図10)において、前記保持部102aに挿入され、保持部102aに挿入された吸収体材料60は、圧縮成型ドラム102の回転に伴って、第二位置P2(図10)まで回転移動する。そして、当該回転移動中に、保持部102a内において、吸収体材料60はその両側方から圧縮される(吸収体材料60が圧縮される様子を図9Bに示す)。
【0053】
次に、圧縮成型ドラム102が吸収体材料60を圧縮成型することにより得られたタンポン本体20を加熱することにより、タンポン本体20の形状を固定する(ステップS5の加熱ステップ)。
【0054】
図10及び図11には、加熱ユニットの一例としての加熱ドラム104が示されており、当該加熱ドラム104が、圧縮成型ドラム102が吸収体材料60を圧縮成型することにより得られたタンポン本体20を加熱する(さらに、このことにより、タンポン本体20の形状を固定する)役割を果たす。すなわち、加熱ドラム104は、例えば110度(100度〜180度の温度が好ましい)に温度がコントロールされた回転可能なドラム型のユニットであり、多数の保持部104aを放射状に備えている。そして、タンポン本体20が、次々と、第二位置P2(図10)において、プッシャー(不図示)の押し込みにより圧縮成型ドラム102の保持部102aから加熱ドラム104の保持部104aへ引き渡される(プッシャーの押し込み方向を、図11において、矢印A1で示す)。そして、保持部104aへ引き渡されたタンポン本体20は、加熱ドラム104の回転に伴って、第三位置P3(図10)まで回転移動する。そして、当該回転移動中に、保持部104a内において、タンポン本体20は加熱され、当該タンポン本体20の形状が固定される。なお、保持部104aはタンポン本体20の形状にマッチした形状を備える穴部となっており(タンポン本体20が当該穴部に丁度入るようになっている)、タンポン本体20に加熱ドラム104の熱が効果的に伝わるようになっている。また、タンポン本体20の圧縮成型ドラム102から加熱ドラム104への引渡しの際に、タンポン本体20の先端を弾丸型に成型する工程が合わせて実施される。なお、加熱ステップが終了した際のタンポン本体20の様子を図9Cに示す。
【0055】
次に、加熱ドラム104により形状が固定されたタンポン本体20を冷却する(ステップS7の冷却ステップ)。
【0056】
図10及び図11には、冷却ユニットの一例としての冷却ドラム106が示されており、当該冷却ドラム106が、加熱ドラム104により形状が固定されたタンポン本体20を冷却する役割を果たす。すなわち、冷却ドラム106は、例えば25度に温度がコントロールされた回転可能なドラム型のユニットであり、多数の保持部106aを放射状に備えている。そして、タンポン本体20が、次々と、第三位置P3(図10)において、プッシャー(不図示)の押し込みにより加熱ドラム104の保持部104aから冷却ドラム106の保持部106aへ引き渡される(プッシャーの押し込み方向を、図11において、矢印A2で示す)。そして、保持部106aへ引き渡されたタンポン本体20は、冷却ドラム106の回転に伴って、第四位置P4(図10)まで回転移動する。そして、当該回転移動中に、保持部106a内において、タンポン本体20は冷却される。なお、保持部106aも、保持部104aと同様、タンポン本体20の形状にマッチした形状を備える穴部となっており(タンポン本体20が当該穴部に丁度入るようになっている)、タンポン本体20が冷却ドラム106により効果的に冷却されるようになっている。
【0057】
また、第四位置P4(図10)まで回転移動したタンポン本体20は、当該第四位置P4において、次々と、プッシャー(不図示)の押し込みにより冷却ドラム106の保持部106aから搬送ユニット108(具体的には、搬送ユニット108に備えられた搬送ベルト108a)へ引き渡される(プッシャーの押し込み方向を、図11において、矢印A3で示す)。搬送ベルト108aは、無端のタンポン本体コンベアベルトであり、タンポン本体20の長手方向が当該搬送ベルト108aの幅方向に沿う状態でタンポン本体20を保持して、回転移動することにより該タンポン本体20を搬送する。そして、当該搬送ベルト108aの温度も例えば25度にコントロールされており、当該搬送ベルト108aもタンポン本体20を冷却する冷却ユニットとしての役割を果たす。すなわち、加熱ドラム104により形状が固定されたタンポン本体20は、冷却ドラム106、搬送ベルト108aの順に、冷却ユニットにより冷却される。
【0058】
次に、溶融した製剤Mをタンポン本体20の外表面21に塗工する(ステップS9の塗工ステップ)。
【0059】
図10及び図11には、塗工ユニット110が示されており、当該塗工ユニット110が、溶融した製剤Mをタンポン本体20の外表面21に塗工する役割を果たす。塗工ユニット110は、供給ユニット110aと転写ベルト110bとを備えている。
【0060】
供給ユニット110aは、転写ベルト110bに溶融した製剤Mを供給するためのものである。本実施の形態において、この供給ユニット110aは、製剤Mを溶融し、溶融した製剤Mを転写ベルト110bに塗り付ける。
【0061】
転写ベルト110bは、タンポン本体20の外表面21に接触した状態で、当該外表面21に、溶融した製剤Mを転写して塗工するためのものである。本実施の形態において、この転写ベルト110bは、無端の製剤コンベアベルトであり、供給ユニット110aにより塗り付けられた製剤Mを保持して、回転移動することにより該製剤Mを搬送する。そして、搬送された製剤Mは、やがて、前記搬送ベルト108aにより搬送されるタンポン本体20の外表面21に転写ベルト110bが接触する接触位置に至り、製剤Mが当該外表面21に転写されて塗工される。
【0062】
なお、図10に示すように、製剤Mが前記外表面21に塗工される際には、タンポン本体20は、転写ベルト110bと搬送ベルト108aとの間に挟まった状態となるが、本実施の形態においては、図10の左から右へ向かう方向(以下、単に、左右方向と呼ぶ)における転写ベルト110bの移動速度が搬送ベルト108aの当該左右方向における移動速度よりも速くなるように移動速度がコントロールされている。したがって、タンポン本体20が、転写ベルト110bと搬送ベルト108aとの間に挟まった状態で、搬送ベルト108a上で回転しながら左右方向に移動することとなる。そのため(回転するため)、タンポン本体20の外表面21には、周方向において満遍なく、製剤Mが塗工されることとなる。
【0063】
ところで、前述したとおり、タンポン本体20は、25度に温度がコントロールされた冷却ユニットにより、冷却ドラム106、搬送ベルト108aの順に冷却される。したがって、塗工ユニット110は、冷却ユニットにより約25度に冷却されたタンポン本体20の外表面21に、溶融した製剤Mを塗工することとなる。また、前述したとおり、製剤Mの主成分(つまり、第一ポリエチレングリコール)の融点(凝固点)は約45度であるから、溶融した製剤Mがタンポン本体20の外表面21に塗工される際には、急速に(即座に)製剤Mが凝固することとなる。このように、ステップS7の冷却ステップにおいては、冷却ユニットが、加熱ドラム104により形状が固定されたタンポン本体20を、その外表面21の温度が製剤Mの主成分の凝固点以下となるように冷却し、ステップS9の塗工ステップにおいては、塗工ユニット110が、溶融した製剤Mを、前記凝固点以下の温度である(つまり、前記凝固点以下の温度に冷却された)タンポン本体20の外表面21に塗工する。
【0064】
次に、外表面21に塗工された製剤Mに、製剤Mの主成分の凝固点(本実施の形態においては、約45度)以下の温度に冷却された冷却体を接触させる(ステップS11の冷却体接触ステップ)。
【0065】
図10及び図11には、冷却体を接触させる冷却体接触ユニットの一例としての冷風吹き付けユニット112が示されており、当該冷風吹き付けユニット112が、塗工ユニット110により外表面21に塗工された製剤Mに、当該製剤Mの主成分の凝固点以下の温度に冷却された冷却体としての冷風を接触させる役割を果たす。すなわち、冷風吹き付けユニット112は、45度以下の温度(本実施の形態においては、25度)に冷却された冷風を製剤Mに吹き付けることにより、冷却体を製剤Mに接触させる。
【0066】
また、前述したとおり、搬送ベルト108aの温度は25度にコントロールされ、該搬送ベルト108aは冷却されており、さらに、タンポン本体20が、転写ベルト110bと搬送ベルト108aとの間に挟まった状態で、搬送ベルト108a上で回転するため、外表面21に塗工された製剤Mは、即座に、搬送ベルト108aに接触する。したがって、搬送ベルト108aも、前記凝固点以下の温度に冷却された冷却体としての役割を果たす。すなわち、換言すれば、搬送ユニット108は、外表面21に塗工された製剤Mに、前記凝固点以下の温度に冷却された冷却体としての搬送ベルト108aを接触させる冷却体接触ユニットとしての役割を果たす。
【0067】
このように、本実施の形態においては、溶融した製剤Mが、前記凝固点以下の温度に冷却されたタンポン本体20の外表面21に塗工されるようにするのみならず、該外表面21に塗工された製剤Mに前記凝固点以下の温度に冷却された冷却体が接触するようにしたため、溶融した製剤Mがタンポン本体20の外表面21に塗工される際には、より一層急速に製剤Mが凝固することとなる。そして、当該冷却体接触ステップが実行されて、タンポン本体20の製造プロセスは終了する。冷却体接触ステップが終了した際のタンポン本体20の様子を図9Dに示す。
【0068】
===本実施の形態に係るタンポン10の製造方法及び製造装置の有効性について===
以上の通り、本実施の形態に係るタンポン10の製造方法(製造装置100)は、吸収体材料60を圧縮成型することによりタンポン本体20を得る圧縮成型ステップ(圧縮成型ドラム102)と、溶融した製剤Mを、該製剤Mの主成分の凝固点以下の温度であるタンポン本体20の外表面21に塗工する塗工ステップ(塗工ユニット110)とを有している。そして、このことにより、膣腔内に挿入された際に製剤Mの効果が適切に発揮されるタンポン10の製造方法(製造装置100)が実現されることとなる。
【0069】
上記につき、本実施の形態(本件例)に係るタンポン10の製造方法(製造装置100)と2種類の比較例に係るタンポンの製造方法(製造装置)とを比較しながら説明する。
【0070】
第一の比較例は、吸収体材料を圧縮成型する前に製剤をタンポン本体の外表面に塗工する製造方法(製造装置)である。例えば、当該比較例においては、カバー体に製剤を塗工してから、当該カバー体で吸収体本体を覆って吸収体材料を形成する。その後、形成された吸収体材料を圧縮成型することによりタンポン本体を得る。
【0071】
しかしながら、かかる製造方法(製造装置)は、以下の問題点を内包している。すなわち、圧縮成型前の吸収体材料に製剤が塗工されているため、吸収体材料が圧縮成型される際に製剤が脱落する恐れがある。そして、このような脱落が生じたタンポンを使用した場合(つまり、膣腔内に挿入した場合)には、外表面に付着している製剤の量が少なくなっているため、膣粘膜に製剤が適切に転写されなくなる。すなわち、タンポンが膣腔内に挿入された際に製剤の効果が適切に発揮されないこととなる。また、前記脱落の発生により製造装置が製剤で汚れてしまう問題も発生し得る。
【0072】
また、かかる問題を回避させるために、第二の比較例として、吸収体材料を圧縮成型することによりタンポン本体を得てから、当該タンポン本体を製剤に浸す製造方法(製造装置)がある。しかしながら、かかる製造方法(製造装置)には、タンポン本体を製剤に浸した場合に、タンポン本体の内部に製剤が吸収されてしまう恐れがある。そして、このような吸収が生じたタンポンを使用した場合(つまり、膣腔内に挿入した場合)には、外表面に付着している製剤の量が少なくなっているため、膣粘膜に製剤が適切に転写されなくなる。すなわち、タンポンが膣腔内に挿入された際に製剤の効果が適切に発揮されないこととなる。また、前記吸収の発生によりタンポン本体の大きさが過大となる問題も発生し得る。
【0073】
このように、比較例に係るタンポンの製造方法(製造装置)においては、いずれにおいても、製造されたタンポンが膣腔内に挿入された際に製剤の効果が適切に発揮されないという問題が生じ得る。
【0074】
これに対し、本実施の形態に係るタンポン10の製造方法(製造装置100)においては、吸収体材料60を圧縮成型することによりタンポン本体20を得てから、製剤Mをタンポン本体20の外表面21に塗工するため、前記脱落の問題が生じない。また、溶融した製剤Mを、該製剤Mの主成分の凝固点以下の温度であるタンポン本体20の外表面21に塗工するため、溶融した製剤Mがタンポン本体20の外表面21に塗工される際には、急速に(即座に)製剤Mが外表面21において凝固することとなる。そのため、製剤Mが外表面21よりも中へ(すなわち、タンポン本体の内部に)吸収されることはない。
【0075】
このように、本実施の形態においては、前記脱落や吸収が抑止されるため、外表面21に付着している製剤Mの量が少なくなっていることにより膣粘膜に製剤Mが適切に転写されなくなる前述した問題は適切に回避されることとなる。すなわち、膣腔内に挿入された際に製剤Mの効果が適切に発揮されるタンポン10の製造方法(製造装置100)が実現されることとなる。また、本実施の形態においては、脱落の発生により製造装置が製剤で汚れてしまう問題や吸収の発生によりタンポン本体の大きさが過大となる問題も適切に回避される。さらに、本実施の形態においては、前記脱落や吸収が抑止されるため、外表面21に図柄を綺麗に描けるという効果も生じる。
【0076】
また、本実施の形態に係るタンポン10の製造方法(製造装置100)は、外表面21に塗工された製剤Mに、前記凝固点以下の温度に冷却された冷却体の一例としての冷風及び搬送ベルト108aを接触させる冷却体接触ステップ(冷却体接触ユニットの一例としての冷風吹き付けユニット112及び搬送ユニット108)を有することとした。すなわち、前述したように、溶融した製剤Mが、前記凝固点以下の温度であるタンポン本体20の外表面21に塗工されるようにするのみならず、該外表面21に塗工された製剤Mに前記凝固点以下の温度に冷却された冷却体が接触するようにしたため、溶融した製剤Mがタンポン本体20の外表面21に塗工される際には、より一層急速に製剤Mが外表面21において凝固することとなる。そのため、膣腔内に挿入された際に製剤Mの効果がより適切に発揮されるタンポン10の製造方法(製造装置100)が実現されることとなる。
【0077】
また、本実施の形態に係るタンポン10の製造方法(製造装置100)は、吸収体材料60を圧縮成型することにより得られたタンポン本体20を加熱することにより該タンポン本体20の形状を固定する加熱ステップ(加熱ドラム104)と、形状が固定されたタンポン本体20を、その外表面21の温度が前記凝固点以下となるように冷却する冷却ステップ(冷却ユニットの一例としての冷却ドラム106及び搬送ベルト108a)と、を有し、製剤Mを塗工するステップにおいては(塗工ユニット110は)、溶融した製剤Mを、前記凝固点以下の温度に冷却されたタンポン本体20の外表面21に塗工することとした。すなわち、本実施の形態においては、自然冷却を待つ(すなわち、外表面21の温度が自然に前記凝固点以下となるのを待つ)のではなく、冷却ステップ(冷却ユニット)を積極的に設けて、これにより前記凝固点以下の温度に冷却されたタンポン本体20の外表面21に溶融した製剤Mを塗工することとしたため、製造工程の短縮化を実現することが可能となる。
【0078】
また、本実施の形態においては、冷却ユニット及び冷却体の双方は、搬送ベルト108aであることとした。すなわち、搬送ベルト108aを冷却することにより、当該搬送ベルト108aに前記冷却ユニットの機能と前記冷却体の機能の双方を持たせることとした。そのため、一つの部材に複数の機能を発揮させることが可能となり、効率的な製造装置が実現されることとなる。
【0079】
また、本実施の形態において、前記冷却体接触ユニットは、冷却体としての冷風を製剤Mに吹き付ける冷風吹き付けユニット112であることとした。すなわち、外表面21に塗工された製剤Mに冷却体を接触させる方策として、冷風を製剤Mに吹き付ける方策を採ったため、簡易に製剤Mを冷却させることが可能となる。
【0080】
===その他の実施の形態===
以上、上記実施の形態に基づき本発明に係る製造方法及び製造装置を説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0081】
また、上記実施の形態においては、タンポンとしてアプリケータ30付きのタンポン10を例に挙げたが、これに限定されるものではなく、アプリケータの無いタンポンであってもよい。
【0082】
また、上記実施の形態においては、製剤Mの薬効成分として松樹皮抽出物を例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、レッドクローバー、タデ藍エキス、インジルビン等の植物抽出物であってもよい。また、松樹皮抽出物としてフラバンジェノールを例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、日本シイベルヘグナー社が取り扱うピクノジェノールやバレンタイン社が取り扱うエンゾジノールであってもよい。
【0083】
また、上記実施の形態においては、塗工ユニット110による製剤Mの塗工は一度のみであったが、これに限定されるものではなく、塗工ユニット110が製剤Mの塗工を複数回に分けて行ってもよい。かかる場合には、例えば、供給ユニット110a及び転写ベルト110bの組が複数組準備され、製剤Mの塗工が複数回に分けて行われる。
【0084】
また、上記実施の形態においては、塗工ユニットとして、供給ユニット110a及び転写ベルト110bを備える塗工ユニット110を例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、後述する移動ユニット212及び加熱転写ユニット214を備える塗工ユニット210であってもよい。
【0085】
図12を参照して、さらに説明する。図12は、図10に対応した図であり、他の実施形態に係るタンポン10の製造装置100のうちのタンポン本体20の製造部分を示した模式図である。図12には、塗工ユニット210が示されており、当該塗工ユニット210が、溶融した製剤Mをタンポン本体20の外表面21に塗工する役割を果たし、移動ユニット212と加熱転写ユニット214とを備えている。
【0086】
移動ユニット212は、凝固した製剤Mが一方面300aに付着している凝固製剤付着シート300を、該一方面300aがタンポン本体20の外表面21に接触した状態で移動させるためのものである。この移動ユニット212は、凝固製剤付着シート300が巻かれた二つのロール(すなわち、シート捲き出しロール212a及びシート捲き取りロール212b)を有し、当該二つのロールが協働する(具体的には、共に回転する)ことにより、凝固製剤付着シート300が移動するようになっている。また、本実施の形態に係る凝固製剤付着シート300は、予め製剤Mが一方面300aに付着したポリプロピレン製やポリエステル製のフィルムであり、タンポン本体20の製造プロセスとは別のプロセスで製造されたものである。そして、当該凝固製剤付着シート300は、後述する加熱転写ユニット214により前記一方面300aがタンポン本体20の外表面21に押し付けられた状態で、移動する。
【0087】
加熱転写ユニット214は、凝固製剤付着シート300の他方面300bに接触して該凝固製剤付着シート300を加熱することにより、凝固した製剤Mを溶融しつつ溶融した製剤Mを外表面21に転写するためのものである。この加熱転写ユニット214は、加熱された無端のベルトであり、前記他方面300bに接触して前記一方面300aをタンポン本体20の外表面21に押し付けた状態で、回転移動しながら凝固製剤付着シート300を加熱する。そして、当該加熱により、移動する凝固製剤付着シート300の一方面300aに凝固した状態で付着していた製剤Mが溶融しつつ外表面21に転写される(外表面21に塗工される)。
【0088】
なお、図12に示すように、製剤Mが前記外表面21に塗工される際には、タンポン本体20は、凝固製剤付着シート300と搬送ベルト108aとの間に挟まった状態となるが、本実施の形態においては、図12の左から右へ向かう方向(以下、単に、左右方向と呼ぶ)における凝固製剤付着シート300の移動速度が搬送ベルト108aの当該左右方向における移動速度よりも速くなるように移動速度がコントロールされている。したがって、タンポン本体20が、凝固製剤付着シート300と搬送ベルト108aとの間に挟まった状態で、搬送ベルト108a上で回転しながら左右方向に移動することとなる。そのため(回転するため)、タンポン本体20の外表面21には、周方向において満遍なく、製剤Mが塗工されることとなる。
【0089】
このように、塗工ユニットは、タンポン本体20の外表面21に接触した状態で、該外表面21に、溶融した製剤Mを転写して塗工する転写ベルト110bと、転写ベルト110bに溶融した製剤Mを供給する供給ユニット110aと、を有するものでもよいし、凝固した製剤Mが一方面300aに付着している凝固製剤付着シート300を、該一方面300aがタンポン本体20の外表面21に接触した状態で移動させる移動ユニット212と、凝固製剤付着シート300の他方面300bに接触して該凝固製剤付着シート300を加熱することにより、凝固した製剤Mを溶融しつつ溶融した製剤Mを外表面21に転写する加熱転写ユニット214と、を有するものでもよい。そして、前者は、凝固製剤付着シートのようなものを予め用意するプロセスが不要なため、製造プロセスを簡易化できる点で、優位性を有し、後者は、製剤Mが外表面21に転写される直前まで、製剤Mが溶融していない(凝固している)ため、製剤Mで汚れる可能性の低い製造装置を構築することができる点で、優位性を有する。なお、当然のことながら、塗工ユニットは、この2つに限定されるものではなく、例えば、スタンプ方式のユニットや非接触のインクジェット方式のユニットであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
10 タンポン、20 タンポン本体(吸収体)、21 外表面、
22 取り出し紐、22a 露出部分、23 塗工部、25 非塗工部、
30 アプリケータ、40 外筒、40a 内面、41 大径部、
42 小径部、43 先端開口、44 花弁状部分、45 後端開口、
46 環状リブ、47 段差、50 内筒、51 第一内筒、
51a 鍔部、51b 環状突起、52 第二内筒、52a 鍔部、
52b 凸部、52c フレア状部分、54 長手方向リブ、
60 吸収体材料、62 吸収体本体、64 カバー体、
100 製造装置、102 圧縮成型ドラム(圧縮成型ユニット)、
102a 保持部、104 加熱ドラム(加熱ユニット)、104a 保持部、
106 冷却ドラム(冷却ユニット)、106a 保持部、
108 搬送ユニット(冷却体接触ユニット)、
108a 搬送ベルト(冷却ユニット、冷却体)、
110 塗工ユニット、110a 供給ユニット、110b 転写ベルト、
112 冷風吹き付けユニット(冷却体接触ユニット)、
210 塗工ユニット、212 移動ユニット、
212a シート捲き出しロール、212b シート捲き取りロール、
214 加熱転写ユニット、300 凝固製剤付着シート、
300a 一方面、300b 他方面、
C 中央、E1 最先端、E2 最後端、M 製剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸収する吸収体を有するタンポンの製造方法であって、
吸収体材料を圧縮成型することにより前記吸収体を得るステップと、
溶融した製剤を、該製剤の主成分の凝固点以下の温度である前記吸収体の外表面に塗工するステップと、
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記外表面に塗工された前記製剤に、前記凝固点以下の温度に冷却された冷却体を接触させるステップを有することを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法であって、
前記吸収体材料を圧縮成型することにより得られた前記吸収体を加熱することにより該吸収体の形状を固定するステップと、
形状が固定された前記吸収体を、その外表面の温度が前記凝固点以下となるように冷却するステップと、を有し、
前記製剤を塗工するステップにおいては、溶融した前記製剤を、前記凝固点以下の温度に冷却された前記吸収体の外表面に塗工することを特徴とする製造方法。
【請求項4】
液体を吸収する吸収体を有するタンポンの製造装置であって、
吸収体材料を圧縮成型することにより前記吸収体を得る圧縮成型ユニットと、
溶融した製剤を、該製剤の主成分の凝固点以下の温度である前記吸収体の外表面に塗工する塗工ユニットと、
を有することを特徴とする製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の製造装置であって、
前記塗工ユニットにより前記外表面に塗工された前記製剤に、前記凝固点以下の温度に冷却された冷却体を接触させる冷却体接触ユニットを有することを特徴とする製造装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の製造装置であって、
前記圧縮成型ユニットが前記吸収体材料を圧縮成型することにより得られた前記吸収体を加熱することにより該吸収体の形状を固定する加熱ユニットと、
該加熱ユニットにより形状が固定された前記吸収体を、その外表面の温度が前記凝固点以下となるように冷却する冷却ユニットと、を有し、
前記塗工ユニットは、溶融した前記製剤を、前記冷却ユニットにより前記凝固点以下の温度に冷却された前記吸収体の外表面に塗工することを特徴とする製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載の製造装置において、
前記塗工ユニットにより前記外表面に塗工された前記製剤に、前記凝固点以下の温度に冷却された冷却体を接触させる冷却体接触ユニットを有し、
前記塗工ユニットは、溶融した前記製剤を、冷却された搬送ベルトにより搬送される前記吸収体の外表面に塗工し、
前記冷却ユニット及び前記冷却体の双方は、前記搬送ベルトであることを特徴とする製造装置。
【請求項8】
請求項5に記載の製造装置であって、
前記冷却体接触ユニットは、前記冷却体としての冷風を前記製剤に吹き付ける冷風吹き付けユニットであることを特徴とする製造装置。
【請求項9】
請求項4乃至請求項8のいずれかに記載の製造装置であって、
前記塗工ユニットは、
前記吸収体の外表面に接触した状態で、該外表面に、溶融した前記製剤を転写して塗工する転写ベルトと、
前記転写ベルトに溶融した前記製剤を供給する供給ユニットと、
を有することを特徴とする製造装置。
【請求項10】
請求項4乃至請求項8のいずれかに記載の製造装置であって、
前記塗工ユニットは、
凝固した前記製剤が一方面に付着している凝固製剤付着シートを、該一方面が前記吸収体の外表面に接触した状態で移動させる移動ユニットと、
前記凝固製剤付着シートの他方面に接触して該凝固製剤付着シートを加熱することにより、凝固した前記製剤を溶融しつつ溶融した該製剤を前記外表面に転写する加熱転写ユニットと、
を有することを特徴とする製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−220767(P2010−220767A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70649(P2009−70649)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】