説明

タービンにおけるブレード変形量を測定するための方法及びシステム

【課題】ガスタービン(2)におけるブレード(4、9)の半径方向変形量を決定する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、1)ブレード(4、9)段の円周部の周りに配置された1以上の近接センサ(22)を用いてブレード(4、9)の初期測定値を取得する段階と、2)初期測定値を取得した後に、1以上の近接センサ(22)を用いてブレード(4、9)の第2の測定値を取得する段階と、3)初期測定値を第2の測定値と比較することによってブレード(4、9)の半径方向変形量の決定を行う段階とを含む。初期測定値及び第2の測定値は、タービンが作動している間に取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、総括的にはタービンブレードの変形量を決定するための方法及びシステムに関する。より具体的には、それに限定されないが、本出願は、タービンが作動している間にタービンブレードの変形量を測定するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ガスタービン及び航空機エンジンのタービンブレードは、その温度が常時600℃〜1500℃の範囲に達する高温度環境内で作動する。さらに、一般的な傾向として、タービン作動温度を上昇させて出力及びエンジン効率を増大させている。このような状態に関連してタービンブレード上にかかる熱応力は厳しいものとなる。
【0003】
一般的に、タービンブレードは、タービンの回転速度によって加わる力のために高レベルの機械的応力を受ける。これらの応力は、作動の間により高い出力トルクを生じるより大きな環状空間面積を備えたタービンブレード設計に適合させるために、さらにより高いレベルに押し進められてきている。さらに、より大きな表面積のタービンブレード先端シュラウドを設計する要望により、タービンブレードの端部に付加的重量が加わるようになってきており、このことが、作動の間にブレードに加わる機械的応力を一層増大させている。これらの機械的応力が、厳しい熱応力と組合さると、結果的に、タービンブレードは、材料の設計限界値において又はその近くで作動することになる。このような条件下では、タービンブレードは一般的に、「金属クリープ」と呼ばれることも多い緩慢な変形を生じる。金属クリープは、金属部分が応力及び高温度に長時間曝されたことによりその形状が緩慢に変化する状態のことである。タービンブレードは、半径方向及び軸方向に変形する可能性がある。
【0004】
同様に、圧縮機ブレードは、圧縮機の回転速度によって加わる力のために高レベルの機械的応力を受ける。その結果、圧縮機ブレードもまた、金属クリープと関連する緩慢な変形を生じる可能性がある。
【0005】
その結果、タービンにおける主要関心事であるタービンブレード及び圧縮機ブレード損傷モードは、金属クリープ、特に半径方向金属クリープ(すなわち、タービン又は圧縮機ブレードの伸長)である。無関心の状態で放置した場合、金属クリープは結局、タービン又は圧縮機ブレードを破壊させる可能性があり、このことは、タービン装置に極めて大きな損傷を引き起こしかつ大きな補修停止時間を招く可能性がある。一般的に、金属クリープをモニタする従来の方法には、(1)等温クリープテストバーに対して実験室内で行ったクリープ歪み試験に基づいたアルゴリズムによりクリープ歪みを算出する有限要素解析プログラムのような解析ツールを使用することによって、時間の関数としてブレードの累積クリープ伸長を予測しようとする方法、又は(2)装置の停止時間の間に目視検査及び/又は人手での測定を行う方法のいずれかを含む。しかしながら、予測解析ツールは、多くの場合に不正確である。また、目視検査法及び/又は人手での測定は、労働集約的であり、費用がかかり、また多くの場合に不正確な結果をもたらす。
【0006】
ともかく、解析ツールを使用することによる、目視検査よる又は人手での測定によるかのいずれによって行うにせよ、タービン又は圧縮機ブレードの健全性についての不正確な予測は、高価なものとなるおそれがある。一方では、不正確な予測は、ブレードがその有効作動寿命を超えて実動使用されることを許し、ブレード損傷を招く可能性があり、それによって、タービン装置に対する重大な損傷及び補修停止時間を発生させる可能性がある。他方では、不正確な予測は、タービン又は圧縮機ブレードを早期に(すなわち、その有効作動寿命が終了する前に)実動使用から外させることになり、そのことは、効率の悪いものとなる可能性がある。従って、タービン及び/又は圧縮機ブレードの金属クリープ変形を正確にモニタすることができることにより、タービンエンジン装置の全体効率を高めることができる。そのようにモニタすることにより、ブレード損傷の危険性を回避しながら、ブレードの有効寿命を最大にすることができる。さらに、時間がかかりかつ労働集約的な目視検査又は人手での測定の代償なしでそのようなモニタ動作を行うことができる場合には、さらに高い効率が実現されることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、タービン及び圧縮機ブレードの金属クリープ変形をモニタする又は測定するための改良型のシステムに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本出願は、ガスタービンにおけるブレードの半径方向変形量を決定する方法について記述しており、本方法は、1)ブレード段の円周部の周りに配置された1以上の近接センサを用いてブレードの初期測定値を取得する段階と、2)初期測定値を取得した後に、1以上の近接センサを用いてブレードの第2の測定値を取得する段階と、3)初期測定値を第2の測定値と比較することによってブレードの半径方向変形量の決定を行う段階とを含む。初期測定値及び第2の測定値は各々、ブレードの先端から1以上の近接センサまでの距離を表すことができる。初期測定値及び第2の測定値は、タービンが作動している間に取得することができる。
【0009】
幾つかの実施形態では、本方法はさらに、所定のレベルの半径方向変形量を決定した時にタービンオペレータに対して警報を送信する段階を含むことができる。他の実施形態では、本方法はさらに、1)ブレードの半径方向温度プロフィールを測定する段階と、2)半径方向温度プロフィールから、どの程度まで半径方向変形量が一様であるか又は集中的であるかを判定する段階とを含むことができる。
【0010】
幾つかの実施形態では、近接センサの数は、2以上とすることができ、本方法はさらに、1)2以上の近接センサによって取得した測定値からロータ変位量を決定する段階と、2)ブレードの半径方向変形量の決定を行う時にロータ変位量を考慮する段階とを含む。他の実施形態では、近接センサの数は、1つとすることができ、本方法はさらに、1)1以上のロータプローブを用いてロータ変位量を測定する段階と、2)ブレードの半径方向変形量の決定を行う時にロータ変位量を考慮する段階とを含むことができる。
【0011】
本出願はさらに、ガスタービンにおけるブレードの半径方向変形量を決定するためのシステムについて記述することができ、本システムは、1)ブレード段の円周部の周りに配置された1以上の近接センサと、2)近接センサから測定データを受信する制御システムとを含む。制御システムは、1以上の近接センサによって取得したブレードの初期測定値を第2の測定値と比較することによって該ブレードの半径方向変形量を決定するように構成することができる。初期測定値及び第2の測定値は各々、ブレードの先端から1以上の近接センサまでの距離を表すことができる。初期測定値及び第2の測定値は、タービンが作動している間に取得することができる。
【0012】
幾つかの実施形態では、本システムは、赤外線高温計を含むことができる。そのような実施形態では、赤外線高温計は、ブレードの半径方向温度プロフィールを測定しかつ該半径方向温度プロフィールのデータを制御システムに送信することができる。制御システムは次に、半径方向温度プロフィールデータからどの程度まで半径方向変形量が一様であるか又は集中的であるかを判定することができる。幾つかの実施形態では、制御システムは、所定のレベルの半径方向変形量を決定した時にタービンオペレータに対して警報を生成しかつ送信するように構成することができる。
【0013】
幾つかの実施形態では、近接センサの数は、2以上とすることができる。そのような実施形態では、制御システムは、2以上の近接センサによって取得した測定値からロータ変位量を決定することができる。制御システムはさらに、ブレードの半径方向変形量の決定を行う時にロータ変位量を考慮することができる。
【0014】
他の実施形態では、近接センサの数は、1つとすることができる。そのような実施形態では、制御システムは、1以上のロータプローブを用いてロータ変位量を測定することができる。制御システムはさらに、ブレードの半径方向変形量の決定を行う時にロータ変位量を考慮することができる。
【0015】
本出願はさらに、ガスタービンにおけるブレードの軸方向変形量を決定する方法について記述説明することができ、本方法は、1)ブレード段の円周部の周りに配置された1以上の近接センサを用いて、該ブレード段の軸方向位置の上流、該ブレード段の軸方向位置の下流並びに該ブレード段の軸方向位置の上流及び下流の両方のうちの1つであるタービンケーシング上の一定位置からブレードまでの距離の初期測定値を取得する段階と、2)初期測定値を取得した後に、1以上の近接センサを用いて距離の第2の測定値を取得する段階と、3)初期測定値を第2の測定値と比較することによってブレードの軸方向変形量の決定を行う段階とを含む。初期測定値及び第2の測定値は各々、ブレードの側面から1以上の近接センサまでの距離を表すことができる。初期測定値及び第2の測定値は、タービンが作動している間に取得することができる。
【0016】
幾つかの実施形態では、本方法はさらに、1)ブレードの半径方向温度プロフィールを測定する段階と、2)半径方向温度プロフィールから、どの程度まで軸方向変形量が一様であるか又は集中的であるかを判定する段階とを含むことができる。
【0017】
本出願はさらに、タービンにおけるブレードの軸方向変形量を決定するためのシステムについて記述しており、本システムは、1)ブレード段の軸方向位置の上流、該ブレード段の軸方向位置の下流並びに該ブレード段の軸方向位置の上流及び下流の両方のうちの1つである該ブレード段の円周部の周りの一定位置に配置された1以上の近接センサと、2)近接センサから測定データを受信する制御システムとを含む。制御システムは、1以上の近接センサによって取得したブレードの初期測定値を第2の測定値と比較することによって該ブレードの軸方向変形量を決定するように構成することができる。初期測定値及び第2の測定値は各々、ブレードの側面から1以上の近接センサまでの距離を表すことができる。初期測定値及び第2の測定値は、タービンが作動している間に取得することができる。
【0018】
幾つかの実施形態では、本システムはさらに、赤外線高温計を含むことができる。赤外線高温計は、ブレードの半径方向温度プロフィールを測定しかつ該半径方向温度プロフィールのデータを制御システムに送信することができる。制御システムは次に、半径方向温度プロフィールデータからどの程度まで軸方向変形量が一様であるか又は集中的であるかを判定することができる。
【0019】
本出願のこれらの及びその他の特徴は、図面及び特許請求の範囲と関連させて好ましい実施形態の以下の詳細な説明を精査することにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
タービンブレードの変形量を正確に、信頼性がありかつ比較的低価格で、リアルタイムにすなわちガスタービンが作動している間に測定する方法が開発されてきている。次に図1を参照すると、本発明の例示的な実施形態を使用することができる典型的なガスタービン2を図示している。図1はガスタービンを示しているが、本発明はまた、蒸気タービンにも使用することができることを理解されたい。図示するように、ガスタービン2は、圧縮機4を含むことができ、圧縮機4は、作動流体すなわち空気を加圧する幾つかの圧縮機ブレード5の段を含むことができる。ガスタービン2は、加圧空気を用いて燃料を燃焼させる燃焼器6を含むことができる。ガスタービン2はさらに、幾つかの翼形部又はタービンブレード9の段を備えたタービン8を含み、翼形部又はタービンブレード9の段は、膨脹する高温ガスのエネルギーを機械的回転エネルギーに変換することができ。本明細書で使用する場合、「ブレード」という用語は、圧縮機ブレード又はタービンブレードのいずれかを意味するために使用することになる。タービン8はまた、図2に示すように、高温ガスの流れをタービンブレード9上に向ける固定構成部品であるダイアフラム10を含むことができる。ガスタービン2は、その上に圧縮機ブレード5及びタービンブレード9を取付けたロータ11を含むことができる。タービンケーシング12は、ガスタービン2を囲むことができる。
【0021】
図2に示すように、本発明によるブレード半径方向変形モニタシステム20は、単一の圧縮機ブレード5又はタービンブレード9段の円周部の周りに間隔を置いて配置された1以上の近接センサ22を含むことができる。具体的には、近接センサ22は、該近接センサ22が半径方向外側位置から圧縮機ブレード5段又は図示するようにタービンブレード9段に対面するように、タービンケーシング10内に取付けることができる。このようにして、どのような場合であっても、近接センサ22は、該近接センサ22から圧縮機ブレード5又はタービンブレード9の先端までの距離を測定することができる。幾つかの実施形態では、近接センサ22は、渦電流センサ、容量性センサ、マイクロ波センサ、レーザセンサ、又はその他の同様な形式の装置とすることができる。
【0022】
従来通りの手段によって、センサは、制御システム(図示せず)に連結することができ、制御システムは、近接センサ22によって取得した近接データを受信し、記憶しかつ該近接データに基づいて計算を行うことができる。制御システムは、あらゆる適当な高出力半導体スイッチング装置を含むことができる。制御システムは、コンピュータとすることができるが、これは、本出願の技術的範囲内にある適当な高出力制御システムの単なる例示的なものに過ぎない。例えば、それに限定されないが、制御システムは、シリコン制御整流器(SCR)、サイリスタ、MOS制御サイリスタ(MCT)及び絶縁ゲートバイポーラトランジスタのうちの少なくとも1つを含むことができる。制御システムはまた、全体的システムレベル制御のための主又は中央プロセッサセクションと、該中央プロセッサセクションの制御下で様々な異なる特定の組合せ、機能及びその他の処理を実行する個別専用セクションとを有するASICのような単一の専用集積回路として実施することができる。制御システムはまた、個別素子回路或いはPLD、PAL、PLAなどのプログラム可能ロジック装置を備えたハードワイヤード電子又はロジック回路のような様々な個別専用又はプログラム可能集積又はその他の電子回路又は装置を使用して実施することができることは当業者には分かるであろう。制御システムはまた、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラのような適当にプログラムした汎用コンピュータ、或いはCPU又はMPUのようなその他のプロセッサ装置を単独で或いは1以上の周辺データ及び単一の処理装置と組合せてのいずれかで使用して実施することができる。
【0023】
使用中に、ブレード半径方向変形モニタシステム20は、以下の通りに作動することができる。この作動の実施例は、タービンブレード9の変形を測定することに関するものにするが、同じ一般的作動方法は圧縮機ブレード5に対しても適用することができることは当業者には分かるであろう。近接センサ22は、ガスタービン2の始動の間にタービンブレード9の各々の初期測定を取得することができる。当業者には分かるように、ブレードの各々の表面差異は、近接センサ22で測定したプロフィールによって制御システムに対して各個々のブレードを特定することができる。具体的には、ブレードの各々の微細な表面差異は、制御システムが個々のブレードを特定し、従って各個々のブレードの変形を追跡するのを可能にすることができる。初期測定値は、タービンブレード9の各々の初期長さを表すことができる。この初期長さは、ロータ11の既知の寸法及び位置並びに近接センサ22からタービンブレード9の各々の先端まで測定した距離によって決定する(求める)ことができる。つまり、この2つの値から、タービンブレード9の長さを算出することができる。初期測定値データは、制御システムによって記憶することができる。
【0024】
ガスタービン2が作動した時に、後の又は第2の測定値を取得することができる。これらの測定値は、定期的に取得することができ、例えばこれらの測定値は、毎秒又は毎分又は毎時又は幾分より長い時間ごとに取得することができる。第2の測定値は、測定の時点におけるタービンブレード9の各々の長さを表すことができる。ここでもまた、この長さは、ロータの既知の寸法及び位置並びに近接センサ22からタービンブレード9の先端まで測定した距離によって決定することができる。この2つの値から、タービンブレード9の長さを算出することができる。第2の測定値データは、制御システムによって記憶することができる。
【0025】
制御システムは、測定値データを処理して、タービンブレード9が半径方向に変形したかどうか、すなわちタービンブレードが使用中に「伸長した」か否かを判定することができる。具体的には、制御システムは、第2の測定値を初期測定値と比較して、発生した変形又はクリープ量を確定することができる。制御システムは、変形量が、一定のレベルに達すると、タービンオペレータに対して警報を与えるようにプログラムすることができる。例えば、制御システムは、特定のコンピュータ端子に点滅警報を発信し、タービンオペレータに対して電子メール又はページを送信し、或いはタービンオペレータに警報を与える幾つかのその他の方法を使用することができる。この警報は、タービンブレード9がその有効寿命の終わりに近づいている又はその終わりにあることを変形量のレベルが表した時に送信することができる。この時点で、タービンブレード9は、ガスタービン2から取り出しかつ補修又は交換することができる。
【0026】
上述のように、ブレード半径方向変形モニタシステム20は、1以上の近接センサ22を含むことができる。図3に示すように、ブレード半径方向変形モニタシステム20は、ブレードの円周部の周りに等しく間隔を置いて配置された3つの近接センサ22を含むことができるが、それよりも多くの又はそれよりも少ない近接センサ20を使用することができることは当業者には分かるであろう。複数のセンサを有する利点は、ケーシング12内におけるロータ11の相対的位置をブレードの実変形又はクリープを算出する際に決定しかつ考慮することができることである。タービンケーシング12に対するロータの相対的位置における変化は、ロータサグ、軸受移動、タービンケーシング真円度及びその他の問題点のために発生することは、当業者には分かるであろう。この変位は、幾つかの近接センサ22によって明らかにならない場合には、ブレードの変形と誤認される可能性がある。従って、ロータ移動(変位)に原因がある可能性があるブレードの変位は、実ブレード変形を決定するように考慮することができる。例えば、図3に示すような3つのセンサの場合には、測定データは、近接センサ22の1つにおいてブレードの1つが伸長しかつ他の2つの近接センサ22においてブレードが収縮したことを表す可能性がある。これらの結果は、伸長したことを示す近接センサ22に向かってロータがケーシング内部で変位したことを表している。従来の方法では、制御システムは、アルゴリズムを使用して3つの測定値を示したロータ変位量を決定することができる。その後、制御システムは、ロータ変位量を排除して、ブレードの各々の実半径方向変形量を決定することができる。
【0027】
上述のように、幾つかの実施形態では、1つの近接センサ22のみを使用することができる。そのようなシステムでは、Bentlyプローブのような従来型のロータプローブを使用してロータ位置を決定することにより、利点を得ることができる。ロータプローブは、ロータ上のあらゆる箇所に設置することができ、かつロータの実半径方向位置をリアルタイムに測定することができる。上述のように、作動の間にロータが半径方向に変位する可能性があることは当業者には分かるであろう。この変位は、実ロータ位置調整を考慮しない場合にはブレードの変形と見なされることになる。それに対して、実ロータ変位量をロータプローブによって算出する場合には、制御システムは、ブレードの実変形量を算出することができる。
【0028】
幾つかの実施形態では、近接センサ22は、該近接センサ22が軸方向変形を測定するように設置することができる。図4に示すように、それは、近接センサ22がブレードの軸方向位置の上流すなわち前方の位置から或いはブレードの軸方向位置の下流すなわち後方の位置からブレードを観察しているような所定の位置に該近接センサ22を配置する(すなわち、近接センサは、段を見下ろさないが、傾斜位置から見る)ことによって達成することができる。従って、ブレード軸方向変形モニタシステム30は、段の円周部の周りで1以上の位置において、上流近接センサ32、下流近接センサ34又はその両方を含むことができる。上流近接センサ32は、タービンケーシング12における一定の上流位置からブレードの側面までの距離を測定することができる。同様に、下流近接センサ34は、タービンケーシング12における一定の下流位置からブレードの側面までの距離を測定することができる。従って、ブレードの上流又は下流方向におけるあらゆる軸方向変形量は、上流近接センサ32、下流近接センサ34又はその両方によって取得された一連の測定値を検討することによって決定することができる。
【0029】
ブレード半径方向変形モニタシステム20と同様に、ブレード軸方向変形モニタシステム30が段の円周部の周りに間隔を置いて配置された複数の近接センサ22を有することにより、利点を得ることができる。複数のセンサを有する利点は、ロータの相対的位置をブレードの実軸方向クリープを決定する際に決定しかつ考慮することができることである。
【0030】
図5に示すように、幾つかの実施形態では、ブレード半径方向変形モニタシステム20及び/又はブレード軸方向変形モニタシステム30は、ブレードの各々の半径方向温度プロフィールをもたらす従来型の赤外線高温計40で性能強化することができる。そのような実施形態において使用する赤外線高温計は、あらゆる従来型の赤外線高温計又は同様な装置とすることができる。使用中に、赤外線高温計40は、作動の間におけるブレードの各々の半径方向温度プロフィールを測定することができる。制御システムは、近接センサ22によって測定される半径方向クリープ及び/又は上流近接センサ32によって測定される軸方向クリープ、並びにブレードの各々における半径方向温度プロフィールを追跡することができる。半径方向温度プロフィールは、作動の間にブレードのいずれが「ホットスポット」(すなわち、高温度の領域)を生じたかどうかを制御システムが判定することを可能にすることになる。この情報により、制御システムは、高温度の領域がより速い速度で変形又はクリープを生じるので、測定した軸方向又は半径方向クリープのいずれのより大きな割合が、ホットスポットと一致したブレードの領域に原因がある可能性があるかどうかを判定することができる。当業者には分かるように、クリープがブレード全体を通して一様であるか又は集中的であるかどうかは、部品の予測寿命に影響を与える。従って、測定したホットスポットにより、ブレードがおそらく集中クリープ又は変形を生じたらしいと判定した場合には、部品の予測寿命は短縮されることになる。他方、如何なるホットスポットも存在しないことにより、ブレードがおそらく一様なクリープを生じたらしいと判定した場合には、部品の予測寿命は、短縮されることはない。このようにして、集中クリープによる損傷を回避することができる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態の上記の説明から、当業者には、改良、変更及び修正が想起されるであろう。当技術分野の範囲内でのそのような改良、変更及び修正は、特許請求の範囲によって保護されることを意図している。さらに、以上の説明は、本出願の記述した実施形態のみに関するものであること、また本明細書において特許請求の範囲及びその均等物よって定まる本出願の技術思想及び技術的範囲から逸脱することなく数多くの変更及び修正を加えることができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】その中で本発明の実施形態を使用することができる例示的なタービンを示すガスタービンの破断斜視図。
【図2】本発明の例示的な実施形態を示す、図1のガスタービンの断面図。
【図3】本発明の例示的な実施形態による近接センサの円周方向配置を示す、図1のガスタービンの断面図。
【図4】本発明の例示的な実施形態を示す、図1のガスタービンの断面図。
【図5】本発明の例示的な実施形態を示す、図1のガスタービンの断面図。
【符号の説明】
【0033】
2 ガスタービン
4 圧縮機
5 圧縮機ブレード
6 燃焼器
8 タービン
9 タービンブレード
10 ダイアフラム
11 ロータ
12 タービンケーシング
20 ブレード半径方向変形モニタシステム
22 近接センサ
30 ブレード軸方向変形モニタシステム
32 上流近接センサ
34 下流近接センサ
40 赤外線高温計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(2)におけるブレード(4、9)の半径方向変形量を決定する方法であって、
ブレード(4、9)段の円周部の周りに配置された1以上の近接センサ(22)を用いてブレード(4、9)の初期測定値を取得する段階と、
初期測定値を取得した後に、1以上の近接センサ(22)を用いてブレード(4、9)の第2の測定値を取得する段階と、
初期測定値を第2の測定値と比較することによってブレード(4、9)の半径方向変形量の決定を行う段階と
を含む方法。
【請求項2】
初期測定値及び第2の測定値が各々、ブレード(4、9)の先端から1以上の近接センサ(22)までの距離を表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ブレードの半径方向温度プロフィールを測定する段階と、
半径方向温度プロフィールから、どの程度まで半径方向変形量が一様であるか又は集中的であるかを判定する段階と
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
近接センサ(22)の数が2以上を含み、
2以上の近接センサ(22)によって取得した測定値からロータ(22)変位量を決定する段階と、
ブレード(4、9)の半径方向変形量の決定を行う時にロータ変位量を考慮する段階と
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
近接センサ(22)の数が1つを含み、
1以上のロータプローブを用いてロータ変位量を測定する段階と、
ブレード(4、9)の半径方向変形量の決定を行う時にロータ変位量を考慮する段階と
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ガスタービン(2)におけるブレード(4、9)の半径方向変形量を決定するためのシステムであって、
ブレード(4、9)段の円周部の周りに配置されかつブレード(4、9)の少なくとも初期測定値及び第2の測定値を取得するようになった1以上の近接センサ(22)と、
近接センサ(22)から測定データを受信する制御システムと、を含み、
制御システムが、初期測定値を第2の測定値と比較することによってブレード(4、9)の半径方向変形量を決定するように構成される、
システム。
【請求項7】
赤外線高温計(40)をさらに含み、
赤外線高温計(40)が、ブレード(4、9)の半径方向温度プロフィールを測定しかつ該半径方向温度プロフィールのデータを制御システムに送信し、
制御システムが、半径方向温度プロフィールデータからどの程度まで半径方向変形量が一様であるか又は集中的であるかを判定する、
請求項6記載のシステム。
【請求項8】
ガスタービンにおけるブレードの軸方向変形量を決定する方法であって、
ブレード(4、9)段の円周部の周りに配置された1以上の近接センサ(22)を用いて、該ブレード(4、9)段の軸方向位置の上流、該ブレード(4、9)段の軸方向位置の下流並びに該ブレード(4、9)段の軸方向位置の上流及び下流の両方のうちの1つであるタービンケーシング(12)上の一定位置からブレード(4、9)までの距離の初期測定値を取得する段階と、
初期測定値を取得した後に、1以上の近接センサ(22)を用いて距離の第2の測定値を取得する段階と、
初期測定値を第2の測定値と比較することによってブレード(4、9)の軸方向変形量の決定を行う段階と
を含む方法。
【請求項9】
初期測定値及び第2の測定値が各々、ブレード(4、9)の側面から1以上の近接センサ(22)までの距離を表す、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ブレード(4、9)の半径方向温度プロフィールを測定する段階と、
半径方向温度プロフィールから、どの程度まで軸方向変形が一様であるか又は集中的であるかを判定する段階と
をさらに含む、請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−298073(P2008−298073A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137370(P2008−137370)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】