説明

タービンエンジンおよび該タービンエンジン内の軸受荷重を調節する方法

【課題】タービンエンジンにおける軸受荷重を能動的に管理する装置および方法が必要とされている。
【解決手段】エンジン10は、ノズル出口面積を効果的に変えるために使用される流れ制御装置41を有する。流れ制御装置41は、エンジン10の上流ファン20によって圧縮されたバイパス流Bを軸方向に吐出させるファンノズル出口面積40を変化させる。バイパス比が高いことにより、バイパス流Bによって相当な大きさの推力がもたらされる。一例において、流れ制御装置41は、ファンノズル出口面積40に約20%の変化をもたらす。ファンナセル34は、該ファンナセル34の後方部の周りに周方向に配置された複数のヒンジ式のフラップ42などの部材を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジンの軸受に関し、詳しくは、例えば、ターボファンエンジンにおける軸受荷重の管理に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なターボファンエンジンは、高圧スプールおよび低圧スプールを含む。例えば、ファンが低圧スプールに結合されており、この低圧スプールが低圧圧縮機および低圧タービンを支持する。一例においては、高圧スプールに、高圧圧縮機および高圧タービンが結合されている。低圧スプールおよび高圧スプールは、エンジンコアのハウジング内に、軸受を使って支持されている。一例においては、エンジンコアは、コアナセルに覆われている。
【0003】
いくつかのターボファンエンジンでは、スラスト軸受と通信する軸受荷重センサを含む。スラスト軸受における軸方向の荷重は、例えば、メンテナンスの目的で記録される。この軸受荷重は、測定された軸受荷重に応答して能動的に管理されていない。
【0004】
いくつかのターボファンエンジンは、低圧タービンを支持する低圧スプールの一部分と、ファンを支持する低圧スプールの他の部分と、の間に配置された歯車列を含む。このような歯車式のターボファンエンジンにおいては、非歯車式のターボファンエンジンよりも実質的に大きな軸受スラスト荷重が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タービンエンジンにおける軸受荷重を能動的に管理する装置および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
タービンエンジンにタービンを支持するスプールが設けられる。このスプールは、エンジンコア内に配置され、スラスト軸受を含む複数の軸受に支持される。エンジンコアは、コアナセルに覆われる。コアナセルの上流にファンが配置され、スプールに結合される。ファンナセルがファンおよびコアナセルを取り囲み、ファンノズル出口面積を含むバイパス流路を構成する。ファンノズル出口面積を効果的に変えるために、流れ制御装置が構成される。スラスト軸受を監視するようにプログラムされたコントローラが、スラスト軸受に作用する望ましくない荷重に応答して、流れ制御装置に命令する。流れ制御装置でファンノズル出口面積を効果的に変えることにより、軸受スラスト荷重を所望のレベルにするように能動的に管理する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に、歯車式のターボファンエンジン10を示す。このエンジン10は航空機にパイロン38によって支持される。エンジン10は、軸Aを中心に回転可能な低圧スプール14および高圧スプール24を収容するコアナセル12を含む。低圧スプール14は、低圧圧縮機16および低圧タービン18を支持する。例えば、低圧スプール14は、歯車列22を介してファン20を駆動する。高圧スプール24は、高圧圧縮機26および高圧タービン28を支持する。高圧圧縮機26と高圧タービン28との間に燃焼器30が配置されている。圧縮機16,26からの圧縮空気が燃焼器30からの燃料と混合され、その燃焼ガスがタービン18,28において膨張する。
【0008】
図示した例においては、エンジン10は、高バイパス比のターボファンの配置である。一例において、バイパス比は10:1より大きく、ファンの直径は低圧圧縮機16の直径より実質的に大きい。低圧タービン18は、一例において、5:1より大きな圧縮比を有する。歯車列22は、遊星歯車列であり、一例において、2.5:1より大きな歯車減速比を与える星形歯車列である。上記のパラメータは、想定される歯車式のターボファンエンジンについての一例に過ぎない。すなわち、本発明は、直接駆動ファンを含む他のエンジンにも適用可能である。
【0009】
空気流は、コアナセル12およびファン20を取り囲むファンナセル34に流入する。ファン20は、コアナセル12に覆われたエンジンコア17の中へ空気を導く。この空気は、当技術分野において周知のように、タービン18,28を駆動するために使用される。タービン18,28において膨張した後、排気Eは、コアナセル12とテールコーン32との間に設けられた通路を通して、エンジンコア17およびコアナセル12から排出される。
【0010】
コアナセル12は、支持構造36によってファンナセル34の内部に支持されている。この支持構造36は、上部分岐部および下部分岐部と一般に呼ばれる。コアナセル12とファンナセル34との間に、概ね環状のバイパス流路39が設けられている。図1に示す例は、高バイパス流の構成であり、ファンナセル34に流入する空気流の約80%がコアナセル12をバイパスする。バイパス流路39内のバイパス流Bは、ファンノズル出口面積40を通してファンナセル34から排出される。
【0011】
図1に示すエンジン10においては、高バイパス比により、バイパス流Bによって相当な大きさの推力が与えられる。推力は、密度、速度および面積の関数である。バイパス流Bによってもたらされる推力の大きさおよび方向を変化させるように、1つまたは複数のこれらのパラメータを操作することができる。一例においては、エンジン10は、ファンノズル出口面積40に関連する構造を含み、バイパス流Bによってもたらされる推力を操作するために物理的面積および幾何学的形状を変化させる。しかし、ノズル出口面積は、構造上の変化以外によっても効果的に変えることができ、例えば、境界層を変えることにより流速を変化させられることを理解されたい。さらに、ノズル出口面積を効果的に変えるために使用される装置は、物理的にファンナセル34の出口付近の位置に制限されず、他の適当な位置においてバイパス流Bの流れを変えることを含むことを理解されたい。
【0012】
エンジン10は、ノズル出口面積を効果的に変えるために使用される流れ制御装置41を有する。一例において、流れ制御装置41は、エンジン10の上流ファン20によって圧縮されたバイパス流Bを軸方向に吐出させるファンノズル出口面積40を提供する。高バイパス比であることにより、バイパス流Bによって相当に大きな推力がもたらされる。エンジン10のファン20は、特定の飛行条件、例えば、マッハ0.8(0.8M)、高度35,000フィート(10,668m)における典型的な巡航に対して設計されている。一例において、流れ制御装置41は、ファンノズル出口面積40に約20%の変化をもたらす。
【0013】
一例において、ファンナセル34は、該ファンナセル34の後方部の周りに周方向に配置された複数のヒンジ式のフラップ42(1つ図示されている)などの部材を含む。
【0014】
図2に概略的に示すフラップ42は、ピボットPを中心として揺動することができる。フラップ42は、例えば、アクチュエータ46を利用して、単独で、および/またはグループとして、角度を変えるように動作させることができる。代替的に、ファンナセル上の部材が、ファンナセル34の後方部の周りに周方向に配置された複数の可動式カウリングとして設けられる。これらのカウリングは、ファンノズル出口面積40を変えるように、概ね軸方向に動くことができる。
【0015】
図2は、アクチュエータ46と通信するコントローラ50を示し、アクチュエータ46は、図示例では、開位置と閉位置との間でフラップ42を操作する。フラップの位置を調節することにより、コアナセル12および/またはファンナセル34を通流する流れ特性を変化させる。このようにして、流れ制御装置41は、低圧スプール14についての軸方向の推進荷重を能動的に管理することができる。
【0016】
一例においては、低圧スプール14は、低圧圧縮機16および低圧タービン18を支持する第1の部分14aを含む。歯車列22は、第1の部分14aと、ファン20を支持する第2の部分14bと、を相互接続する。概略的に示される第1の部分14aは、ジャーナル軸受48およびスラスト軸受49によって支持されている。エンジン10の運転中に、第1の低圧スプール部分14aによって軸Aに沿ってスラスト軸受49に働くスラスト荷重を測定するために、スラスト軸受49に付随してスラスト荷重センサ54が設けられている。
【0017】
スラスト荷重センサ54は、コントローラ50と通信する。コントローラ50は、スラスト軸受荷重を監視し、その値をメモリ56に記録する。コントローラ50は、運転中にファンノズル出口面積40を効果的に変えるようにアクチュエータ46に命令してフラップ42を操作し、スラスト軸受49に作用する軸方向の荷重が望ましくないスラスト荷重のレベルに届かないようにする。一例においては、速度センサ52もコントローラ50と通信し、低圧スプール14に関する回転速度の情報を与える。一例においては、ファンノズル出口面積40を増加させスラスト軸受49に作用するスラスト荷重を減少させることにより、磨耗を減らして寿命を長くする。しかし、いくつかの運転条件においては、スラスト荷重を減少させるためにファンノズル出口面積40を減少させることがあることを理解されたい。
【0018】
好ましい実施の形態を開示したが、当業者であれば、本発明の特許請求の範囲を逸脱することなく、いくつかの変更がなされ得ることを理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一例としての歯車式のターボファンエンジンの断面図。
【図2】軸受荷重を管理するために使用される一例としての流れ制御装置の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受と、
ノズル出口面積を有するナセルと、
前記ノズル出口面積を効果的に変えるように構成された流れ制御装置と、
前記軸受を監視し、前記軸受に作用する望ましくない荷重に応答して前記流れ制御装置に命令するようにプログラムされたコントローラと、
を備えるタービンエンジン。
【請求項2】
前記軸受が、タービンを備えたスプールを支持し、前記ナセルが前記タービンを取り囲むコアナセルであり、前記コアナセルの上流に配置されたファンが前記スプールに結合され、前記ファンのナセルが前記ファンおよび前記コアナセルを取り囲んで、ファンノズル出口面積を有するバイパス流路を形成することを特徴とする請求項1に記載のタービンエンジン。
【請求項3】
前記スプールが低圧スプールであり、前記タービンが低圧タービンであることを特徴とする請求項2に記載のタービンエンジン。
【請求項4】
前記低圧スプールが、前記低圧タービンを支持する第1の部分と、前記ファンを支持する第2の部分と、を含み、前記低圧スプールの前記第1の部分と前記第2の部分とを相互接続する歯車列が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のタービンエンジン。
【請求項5】
前記低圧スプールが低圧圧縮機を支持し、前記低圧スプールと同軸状の高圧スプールが高圧タービンを支持することを特徴とする請求項3に記載のタービンエンジン。
【請求項6】
前記流れ制御装置が、前記ノズル出口面積を物理的に変えるように、開位置と閉位置との間で可動な部材を含むことを特徴とする請求項1に記載のタービンエンジン。
【請求項7】
前記流れ制御装置が、前記ノズル出口面積を効果的に変えるように部材を操作するアクチュエータを含むことを特徴とする請求項1に記載のタービンエンジン。
【請求項8】
前記軸受がスラスト軸受であり、前記望ましくない荷重は、前記スプールによってもたらされる軸方向の望ましくないスラスト荷重であることを特徴とする請求項2に記載のタービンエンジン。
【請求項9】
前記コントローラが荷重データを獲得するようにプログラムされ、前記荷重データを保存するのに適合したメモリを備えることを特徴とする請求項1に記載のタービンエンジン。
【請求項10】
タービンエンジンの内の軸受荷重を調節する方法であって、
軸受荷重を測定するステップと、
前記軸受荷重から望ましくない軸受荷重を検出するステップと、
所望の軸受荷重を維持するために、前記望ましくない軸受荷重に応答して有効ノズル出口面積を変えるステップと、
を含む方法。
【請求項11】
回転スプールを備え、前記軸受荷重が前記回転スプールに関連したスラスト軸受荷重であることを含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記回転スプールにタービンが支持されることを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
歯車列を介して前記回転スプールにファンが結合されることを含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ノズル出口面積を効果的に変えるようにアクチュエータに命令するステップを含む請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記アクチュエータに命令するステップが、ピボットを中心としてフラップを揺動させることを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アクチュエータに命令するステップが、軸方向に沿ってカウリングを動かすことを含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ノズル出口面積を変えるステップが、前記ノズル出口面積を物理的に変えることを含む請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記ノズル出口面積が、ファンとコアナセルとの間に配置されたバイパス流路の出口にあることを含む請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−2329(P2009−2329A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129001(P2008−129001)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION