説明

タービン中間段シールリングに関する方法および装置

【課題】第1のディスク(202)と、第2のディスク(204)とを備えるガスタービンエンジン(100)のシールアセンブリ(215)を提供すること。
【解決手段】シールアセンブリ(215)は、シール部材(201)と、第1のディスクの第1の半径方向内側の面(230)に結合される軸方向前方部材(201)、および第2のディスクの第2の半径方向内側の面(231)に結合される軸方向後方部材を備える中間段シールリング(205)とを備え、上流アームおよび下流アームがそれぞれ第1のディスクおよび第2のディスクに結合されたままで、シールリングが、軸方向に移動するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般に、ガスタービンエンジンに関し、より具体的にはガスタービンエンジンのロータアセンブリに使用するシールアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくともある種の周知のガスタービンエンジンは、エンジンに入る空気流を圧縮するファンアセンブリおよび高圧コンプレッサを連続流配置で有するコアエンジンを備える。燃焼器は燃料/空気混合気に着火し、次いでその混合気が高圧タービンおよび低圧タービンに導かれ、それらタービンはそれぞれ、燃焼器から出て来る空気流から回転エネルギーを取り出す複数のロータ翼を備える。高圧コンプレッサは、シャフトによって高圧タービンに結合されている。
【0003】
一般に、高圧タービンは、ボルト結合によって第2段ディスクに結合されている第1のディスクを備える。より具体的には、ロータシャフトが、多段コンプレッサの最終段と第1段タービンディスクのウェブ部との間に延在する。第1段および第2段タービンディスクは、第1段ディスクの前面に結合された前方面板、および第2段タービンディスクのウェブの後面に結合された後部シールによって画定されている。中間段シールアセンブリが、第2段タービンノズル周りの流れの封止を容易にするために、第1段ディスクおよび第2段ディスクとの間に延在する。
【0004】
通常、中間段シールアセンブリは、中間段シールと、独立した動翼リテーナとを備える。中間段シールは、複数のボルトによって第1段ディスクおよび第2段ディスクに結合されている。動翼リテーナは、タービン段ディスクから延出する軸対称フックアセンブリに結合されるスプリットリングを備える。しかし、シールアセンブリは複雑なので、そのような中間段シールアセンブリは組み立てるのが困難であり得る。そのようなシールアセンブリの組立て時間およびコストの低減を図るために、他の周知の中間段シールアセンブリでは、一体に形成された中間段シールと動翼リテーナを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7001145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらのシールアセンブリは、組み立てるのに低コストであり容易である一方、組立て後および中間段シールの最終配置前にロータサブアセンブリの検査をすることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、ガスタービンエンジンのシールアセンブリが、シール部材と、第1のディスクの第1の半径方向内側の面に結合される軸方向前方部材、および第2のディスクの第2の半径方向内側の面に結合される軸方向後方部材を備える中間段シールリングとを備え、上流アームおよび下流アームがそれぞれ第1のディスクおよび第2のディスクに結合されたままで、シールリングが、軸方向に移動するように構成されている。
【0008】
別の態様では、ガスタービンエンジンのロータアセンブリのシールアセンブリを組み立てる方法が、シールリングの上流アームが第1のディスクの第1の半径方向内側の面に係合するように、シールリングを第1のディスクに結合するステップと、シールリングの下流アームが第2のディスクの第2の半径方向内側の面に係合するように、シールリングを第2のディスクに結合するステップとを含み、上流アームおよび下流アームがそれぞれ第1のディスクおよび第2のディスクに結合されたままで、シールリングが、軸方向に移動するように構成されている。
【0009】
別の態様では、ガスタービンエンジンが、連続的流体連通状態のファンおよび燃焼器と、第1のディスク、第2のディスク、および第1のディスクと第2のディスクとの間に延在するシールアセンブリを備えるロータアセンブリとを備える。シールアセンブリが、シール部材と、中間段シールリングとを備え、中間段シールリングが、第1のディスクの半径方向内側の面に結合される前方部材と、第2のディスクの半径方向内側の面に結合される後方部材とを備え、上流アームおよび下流アームがそれぞれ第1のディスクおよび第2のディスクに結合されたままで、シールリングが、軸方向に移動するように構成されている。
【0010】
図1〜4は、上記の方法および装置の例示的実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ガスタービンエンジンの概略図である。
【図2】図1に示したガスタービンエンジンの一部分の部分拡大断面図である。
【図3】組み立てられ、前方に摺動したシールリングを示す、図1に示したガスタービンエンジンの一部分の部分拡大断面図である。
【図4】組み立てられたシールリングおよびリテーナ切欠きを示す、図2に示したガスタービンエンジンの一部分の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、例示的ガスタービンエンジン100の概略図である。エンジン100は、コンプレッサアセンブリ102と、燃焼器アセンブリ104とを備える。エンジン100は、タービン108と、共通のコンプレッサ/タービンシャフト110(ロータ110と呼ばれることもある)とを備える。
【0013】
作動に際し、空気が、コンプレッサアセンブリ102を通って流れ、それによって、圧縮空気が燃焼器アセンブリ104に供給される。燃料が、燃焼器アセンブリ104内に画成された燃焼部位および/または領域(図示せず)に導かれ、そこで燃料は空気と混合され、着火される。発生した燃焼ガスは、ガス流の熱エネルギーを機械的回転エネルギーに変換するタービン108に導かれる。タービン108は回転可能にシャフト110に結合されている。また、本明細書で使用される用語「流体」は、それに限定されないが、ガスおよび空気を含む、流動するあらゆる媒体または物質を含むことを理解されたい。
【0014】
図2は、ガスタービンエンジン100の一部分の部分拡大断面図である。具体的には、図2は、タービン108の部分拡大断面図を示す。タービン108は、第1段ディスク202と、第2段ディスク204とを備える。
【0015】
中間段シールアセンブリ215が、タービン第1段ディスク202と第2段ディスク204との間に軸方向に延在する。より具体的には、シールアセンブリ215は、シール部材201と、シールリング205と、リテーナ203とを備える。一実施形態では、シールリング205は、全体に円筒形であり、中間部分227と、第1のシールアセンブリ面228と、第2のシールアセンブリ面229とを備える。ただし、別の実施形態では、シールリング205は、それぞれの部分が一体に結合されたアセンブリであり得る。さらに、例示的実施形態では、シールリング205は円筒形断面を備えるが、シールリング205は、円筒断面には限定されず、たとえば懸垂線状の断面を有し得る。シールアセンブリ面228および229はそれぞれ、中間部分227から軸方向前方および後方に延出して、シールリング205と、第1段ディスク202および第2段ディスク204との間に接触面を形成する。シールアセンブリ面228および229は、第1段ディスク面230および第2のディスク面231との間に締まり嵌めまたはラベット嵌めを形成するように構成されている。様々な他の実施形態では、他の固定または取付け手段を使用することもできる。例示的実施形態では、シールリング205は、第1のディスク202および第2のディスク204の少なくとも1つの雌型ラベットに係合するように構成された雄型ラベット嵌合部を備える。中間部分227は、シール部材201に係合する複数のシール歯213を備える。
【0016】
図3は、図1に示したガスタービンエンジンの一部分の部分拡大図である。より具体的には、図3は、組立て中にシールリング205を配置しているところを示す。組立てに際し、スペーサ209を、第1段ディスク202の後方縁部232に結合する。次いで、シールリング205を、第1段ディスク202より実質的に低い温度に冷却する。この温度差によって、アセンブリ面228を、第1段ディスク202の半径方向内側の面230に摺動的に係合することが可能になる。さらに冷却しながら、シールリテーナ205を前方に摺動させる。それによって、スペーサ209を第2段ディスク204のアセンブリ面233に結合することが可能になる。次に、シールリング205を、第1段ディスク202および第2段ディスク204の両方より実質的に低い温度に再び冷却し、後方に摺動させ、その結果、アセンブリ面231がシールのアセンブリ面229に係合し、シールリング205は、第2段ディスク202の面211によってそれ以上後方に移動しないように軸方向に拘束される。最後に、リテーナ203を切欠き240で第2段ディスク204に結合して、シールリング205が軸方向前方に移動するのを拘束することができる。例示的実施形態では、リテーナ203はピンである。他の実施形態では、リテーナ203には、それに限定されないが、ボルト、ワイヤ保持機構、バケット保持機構などの他のいかなる取付け手段も使用することができる。
【0017】
図4は、装着後のシールリング205を示す図2の部分拡大図である。装着後、シールリング205は、面232および233の検査を可能にするために、容易に移動させることができる。別の実施形態では、シールリング205は、シールリング205が装着位置にあるときにはアクセスできない部分の組立て分解を可能にするように、移動させることができる。まず、使用されていれば、リテーナ203を取外す。次いで、シールリング205を、第1段ディスク202および第2段ディスク204より実質的に低い温度に冷却する。冷却後、シールリング205を前方に摺動させて、面232および233の検査を可能にすることができる。
【0018】
ロータアセンブリの例示的実施形態が、上記で詳細に説明された。ロータアセンブリは、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されることなく、むしろ、各アセンブリの要素は、本明細書に記載された他の要素とは独立して個別に使用することができる。たとえば、各中間段シールアセンブリ要素は、他の中間段シールアセンブリ要素と組み合わせ、また他のロータアセンブリと組み合わせて使用することもできる。
【0019】
ここに記載された説明は、最良の形態を含む本発明を開示し、かつ、当業者にとって、あらゆる装置またはシステムを製作し使用し、組み込まれたあらゆる方法を実施することを含めて本発明を実施することを可能にする例を使用している。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が発想する他の例も含み得る。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言から逸脱しない構造要素を有し、または特許請求の範囲の文言から実質的に逸脱しない同等な構造要素を有する場合、特許請求の範囲に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0020】
100 ガスタービンエンジン
102 コンプレッサアセンブリ
104 燃焼器アセンブリ
108 タービン
110 コンプレッサ/タービンシャフトまたはロータ
201 シール部材
202 第1のディスク
203 リテーナ
204 第2のディスク
205 シールリング
209 スペーサ
211 面
213 シール歯
215 シールアセンブリ
227 中間部分
228 第1のシールアセンブリ面
229 第2のシールアセンブリ面
230 第1段ディスク面または半径方向内側の面
231 第2のディスク面
232 検査面または後方縁部
233 検査面
240 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のディスク(202)と、第2のディスク(204)とを備えるガスタービンエンジン(100)のシールアセンブリ(215)であって、
シール部材(201)と、
前記第1のディスクの第1の半径方向内側の面(230)に結合される軸方向前方部材(238)、および前記第2のディスクの第2の半径方向内側の面(231)に結合される軸方向後方部材を備える中間段シールリング(205)と
を備えるシールアセンブリ(215)であり、
前記上流アームおよび下流アームがそれぞれ前記第1のディスクおよび第2のディスクに結合されたままで、前記シールリングが、軸方向に移動するように構成されているシールアセンブリ(215)。
【請求項2】
前記軸方向前方部材(238)および前記軸方向後方部材の少なくとも1つが干渉嵌めによって結合されている、請求項1記載のシールアセンブリ(215)。
【請求項3】
前記第2のディスク(204)に結合されるリテーナ(203)であって、前記中間段シールリング(205)の軸方向移動を制約するように構成されたリテーナ(203)をさらに備える、請求項1記載のシールアセンブリ(215)。
【請求項4】
前記リテーナ(203)が、ピン、ワイヤ、およびボルトの少なくとも1つを備える、請求項3記載のシールアセンブリ(215)。
【請求項5】
前記シールリング(205)が、分離可能なアセンブリをさらに備える、請求項1記載のシールアセンブリ(215)。
【請求項6】
連続的流体連通状態に結合されたファンおよび燃焼器(104)と、
第1のディスク(202)、
第2のディスク(204)、および
前記第1のディスクと前記第2のディスクとの間に延在するシールアセンブリ(215)
を備えるロータアセンブリ(110)と
を備えるガスタービンエンジン(100)であって、
前記シールアセンブリが、
中間段シールリング(205)
を備え、
前記中間段シールリングが、前記第1のディスクの半径方向内側の面(230)に結合される前方部材(238)と、前記第2のディスクの半径方向内側の面(231)に結合される後方部材とを備え、前記上流アームおよび下流アームがそれぞれ前記第1のディスクおよび第2のディスクに結合されたままで、前記シールリングが、軸方向に移動するように構成されている、ガスタービンエンジン(100)。
【請求項7】
前記シールアセンブリ(215)が、前記第2のディスク(204)に結合されるリテーナ(203)であって、前記中間段シールリング(205)の軸方向移動を拘束するように構成されたリテーナ(203)をさらに備える、請求項6記載のガスタービンエンジン(100)。
【請求項8】
前記リテーナ(203)が、ピン、ワイヤ、およびボルトの少なくとも1つを備える、請求項7記載のガスタービンエンジン(100)。
【請求項9】
前記中間段シールリング(205)が、分離可能なアセンブリをさらに備える、請求項6記載のガスタービンエンジン(100)。
【請求項10】
前記前方部材(238)が、締まり嵌めを用いて前記第1のディスク(202)に結合されている、請求項6記載のガスタービンエンジン(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−223225(P2010−223225A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60066(P2010−60066)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】