説明

タービン排気構造及びガスタービン

【課題】タービン排気構造及びガスタービンにおいて、排気ディフューザの性能を向上可能とする。
【解決手段】円筒形状をなすタービン車室26により燃焼ガス通路Aが構成され、このタービン車室26の後部の内側に、円筒形状をなす排気ディフューザ31の前部が所定隙間をもって侵入し、この排気ディフューザ31により構成される排気ガス通路Bの前部が燃焼ガス通路Aに連通するように構成し、タービン車室26の内側から後方に延出する延出部61を設け、この延出部61の後部に排気ディフューザ31の前部を相対移動可能で、且つ、シール部材62を介して連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、圧縮した高温・高圧の空気に対して燃料を供給して燃焼し、発生した燃焼ガスをタービンに供給して回転動力を得るガスタービンにおいて、タービンの後部に配設されるタービン排気構造、並びに、このタービン排気構造が適用されるガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、圧縮機と燃焼器とタービンにより構成されており、空気取入口から取り込まれた空気が圧縮機によって圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、燃焼器にて、この圧縮空気に対して燃料を供給して燃焼させ、高温・高圧の燃焼ガスがタービンを駆動し、このタービンに連結された発電機を駆動する。この場合、タービンは、車室内に複数の静翼及び動翼が交互に配設されて構成されており、燃焼ガスにより動翼を駆動することで発電機の連結される出力軸を回転駆動している。そして、タービンを駆動した燃焼ガス(排気ガス)のエネルギは、排気ディフューザにより損失を発生しないように徐々に圧力に変換されて大気に放出される。
【0003】
このように構成されたガスタービンにおけるタービンは、タービン車室を構成するケーシング本体の内側に翼環が固定され、この翼環の内側における前後方向の所定の複数位置に遮熱環を介して分割環が支持されている。そして、この各分割環の間に静翼がそれぞれ固定されると共に、各分割環に対応して、つまり、各静翼の間に動翼が配置されて構成されている。即ち、タービンでは、タービン車室内に形成された燃焼ガス通路に、複数の静翼と複数の動翼が燃焼ガスの流れ方向に沿って交互に配置されている。そして、このタービン車室の後部には、排気車室及び排気室が連結されている。この排気車室には、ロータの軸受を支持するストラットが設けられ、排気室には、排気ガスのエネルギを圧力に変換する排気ディフューザが設けられており、排気ディフューザにより構成される排気ガス通路が、タービン車室内の燃焼ガス通路に連通している。
【0004】
従来のタービンでは、タービン車室の後部、つまり、分割環に排気ディフューザの前部が連結されている。この場合、燃焼ガスがタービン車室内に形成された燃焼ガス通路を通り、排気ディフューザにより形成された排気ガス通路に流れることから、タービン車室の構成部材や排気ディフューザに熱伸びが発生する。また、ガスタービンでは、燃焼ガスが非常に高温であることから、タービン車室や排気ディフューザ内部を冷却するなどして、部材温度に差を生ずることで、熱伸び差が発生する。部材のメタル温度がそれぞれ異なる結果となり、また、加工精度や製造コストを考慮して、一般的に、タービン車室を構成するケーシング本体や翼環、遮熱環、分割環などの構成部材や排気車室は鋳物により製造され、排気室を構成する排気ディフューザは板金により製造され、材質もそれぞれ異なっている。
【0005】
このように、ガスタービンでは、タービン車室の構成部材と排気ディフューザとの間に熱伸び差が発生することから、従来、タービン車室を構成する分割環の後端部近傍に排気ディフューザの前端部を両者間の熱伸び差を吸収できる程度に流れ方向(軸方向)の所定隙間をもって配置し、この分割環と排気ディフューザとを相対移動可能となるようにシール部材をもって連結している。
【0006】
このようなガスタービンとしては、例えば、下記特許文献1、2、3に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−031871号公報
【特許文献2】特開平04−219420号公報
【特許文献3】特開平01−244118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来のガスタービンにあっては、タービン車室を構成する分割環と排気ディフューザとを相対移動可能となるようにシール部材により連結してはいるものの、加工精度にばらつきがあったり、分割環と排気ディフューザとの間に熱伸び差が発生すると、この分割環と排気ディフューザとの間に、換言すると、燃焼ガス通路と排気ガス通路との間に径方向の段差が発生して境界層が発達してしまう。そのため、排気ディフューザ本来の性能を発揮させることができず、性能の低下を招いてしまう。
【0009】
また、タービンにおける燃焼ガス通路から続く排気ガス通路は、一般的に、その流路面積が漸次増加する広がり通路となっており、排気ガスの流速が低下すると共に、圧力が上昇する。前述のように、分割環と排気ディフューザとの間に発生する段差で発生する境界層を薄くコントロールするために、排気ガス通路の入口部では流路面積を漸次増加する広がり通路とはせず、通路面積を減少させたり、所定区間だけ一定としたりすることがある。しかし、この流路面積が減少、または一定の区間とその下流側の流路面積が漸次増加する区間の接続部は、滑らかに接続したとしても、流路面の流れ方向(子午面形状)の曲率部が発生することから、この曲がり部の下流で境界層が厚くなり排気ディフューザの性能が低下する場合がある。
【0010】
本発明は上述した課題を解決するものであり、排気ディフューザの性能向上を可能とするタービン排気構造及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明のタービン排気構造は、円筒形状をなすケーシングにより燃焼ガス通路が構成され、該ケーシングの後部の内側に、円筒形状をなす排気ディフューザの前部が所定隙間をもって侵入し、該排気ディフューザにより構成される排気ガス通路の前部が前記燃焼ガス通路に連通するタービン排気構造において、前記ケーシングは、内側から後方に延出する延出部が設けられ、該延出部の後部に前記排気ディフューザの前部が相対移動可能で、且つ、シール部材を介して連結される、ことを特徴とするものである。
【0012】
本発明のタービン排気構造では、前記延出部と前記排気ディフューザとの連結部は、前記燃焼ガス通路に配設される最終段動翼より後方で、且つ、ストラットまたはストラットシールドより前方に配置されることを特徴としている。
【0013】
本発明のタービン排気構造では、前記延出部と前記排気ディフューザとの連結部は、ストラットまたはストラットシールドの前方近傍に配置されることを特徴としている。
【0014】
本発明のタービン排気構造では、前記燃焼ガス通路及び前記排気ガス通路は、最終段動翼が配置される位置より後方で流路面積が減少した後に増加するように構成され、前記延出部と前記排気ディフューザとの連結部は、流路面積の増加率が正で一定の領域に配置されることを特徴としている。
【0015】
本発明のタービン排気構造では、前記延出部は、前記ケーシングと同じ材料で一体または別体に形成されることを特徴としている。
【0016】
本発明のタービン排気構造では、前記延出部は、前記ケーシングと異なる材料で別体に形成され、熱膨張差吸収手段を介して連結される一方、前記排気ディフューザは、前記延出部と同じ材料で形成されることを特徴としている。
【0017】
本発明のタービン排気構造では、前記ケーシングは、円筒形状をなすケーシング本体と、該ケーシング本体の内側に設けられて円筒形状をなす翼環と、最終段動翼の外方に配置されて円筒形状をなす分割環と、前記翼環と前記分割環とを連結する遮熱環とを有し、前記延出部は、前記翼環、前記分割環、前記遮熱環のいずれか一つから後方に延出されることを特徴としている。
【0018】
また、本発明のガスタービンは、圧縮機で圧縮した圧縮空気に燃焼器で燃料を供給して燃焼し、発生した燃焼ガスをタービンに供給することで回転動力を得るガスタービンにおいて、前記タービンは、円筒形状をなすタービン車室の内側に静翼と動翼が前後方向に交互に配置される燃焼ガス通路が設けられ、前記タービン車室の後部の内側に円筒形状をなす排気ディフューザの前部が所定隙間をもって侵入し、前記排気ディフューザにより構成される排気ガス通路の前部が前記燃焼ガス通路に連通して構成され、前記タービン車室は、内側から後方に延出する延出部が設けられ、該延出部の後部に前記排気ディフューザの前部が相対移動可能で、且つ、シール部材を介して連結される、ことを特徴とするものである。
【0019】
本発明のガスタービンでは、前記タービンは、前記タービン車室と排気車室と排気室が前後方向に沿って連結され、前記タービン車室は、円筒形状をなすタービン車室本体と、該タービン車室本体の内側に設けられて円筒形状をなす翼環と、最終段動翼の外方に配置されて円筒形状をなす分割環と、前記翼環と前記分割環とを連結する遮熱環とを有し、前記延出部は、前記翼環、前記分割環、前記遮熱環のいずれか一つから後方に延出されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明のタービン排気構造によれば、ケーシングの後部の内側に排気ディフューザの前部を所定隙間をもって侵入させ、排気ディフューザにより構成される排気ガス通路の前部をケーシングの燃焼ガス通路に連通して構成し、ケーシングの内側から後方に延出する延出部を設け、この延出部の後部に排気ディフューザの前部を相対移動可能にシール部材を介して連結している。従って、延出部と排気ディフューザとの連結部が排気ガスの流速の小さい流れ方向後方側に位置することから、ケーシングと排気ディフューザとの間の熱伸び差によって発生する段差が、流速の大きい流れ方向前方側に生じることを防ぐことができるので、境界層の発達が抑制されると共に、排気ガスのスムースな流れが阻害されず、排気ディフューザの性能を向上することができる。
【0021】
本発明のタービン排気構造によれば、延出部と排気ディフューザとの連結部を、燃焼ガス通路に配設される最終段動翼より後方で、且つ、ストラットまたはストラットシールドより前方に配置するので、ケーシング本体や排気ディフューザ、ストラットなどの構成や強度に影響を与えることなく、延出部と排気ディフューザとの連結部を流速の小さい流れ方向後方側に位置させることができる。
【0022】
本発明のタービン排気構造によれば、延出部と排気ディフューザとの連結部を、ストラットまたはストラットシールドの前方近傍に配置するので、最終段動翼とストラットまたはストラットシールドとの間において最も流速の小さい領域に、延出部と排気ディフューザとの連結部を配置することで、境界層の発達や流れの乱れを更に抑制することができる。また、延出部と排気ディフューザとの連結部からストラットシールドと排気ディフューザとの連結部までの距離を短縮することで、排気ディフューザの支持剛性を確保することができる。
【0023】
本発明のタービン排気構造によれば、燃焼ガス通路及び排気ガス通路を、最終段動翼が配置される位置より後方で流路面積が減少した後に増加するように構成し、延出部と排気ディフューザとの連結部を、流路面積の増加率が正で一定の領域に配置するので、流れが減速しており、かつ、流路面の流れ方向(子午面形状)の曲率が0のため、流速が小さい領域に延出部と排気ディフューザとの連結部を配置することで、段差による流れへの影響を最小化できる。
【0024】
本発明のタービン排気構造によれば、延出部をケーシングと同じ材料で一体または別体に形成するので、ケーシング及び延出部を高精度に製造することができると共に、熱伸び差の影響を抑制することができる。
【0025】
本発明のタービン排気構造によれば、延出部をケーシングと異なる材料で別体に形成し、熱膨張差吸収手段を介して連結する一方、排気ディフューザを延出部と同じ材料で形成するので、熱膨張差吸収手段を介して連結することで、異なる材料の延出部とケーシングとの間に生じる熱膨張差を吸収することができる。また、延出部を排気ディフューザと同じ材料とすることで、連結部に生じる熱膨張差による段差を小さくすると共に、低コスト化を可能とすることができる。
【0026】
本発明のタービン排気構造によれば、ケーシングを、円筒形状をなすケーシング本体と、ケーシング本体の内側に設けられて円筒形状をなす翼環と、最終段動翼の外方に配置されて円筒形状をなす分割環と、翼環と分割環とを連結する遮熱環とで構成し、延出部を、翼環、分割環、遮熱環のいずれか一つから後方に延出するので、ケーシングをケーシング本体と翼環と分割環と遮熱環とから構成し、延出部をこの翼環と分割環と遮熱環のいずれかから延出して構成することで、製造を簡素化して製造コストを低減することができる。
【0027】
また、本発明のガスタービンによれば、圧縮機と燃焼器とタービンとにより構成し、タービンをタービン車室の後部の内側に排気ディフューザの前部を所定隙間をもって侵入させ、排気ディフューザにより構成される排気ガス通路の前部をタービン車室の燃焼ガス通路に連通して構成し、タービン車室の内側から後方に延出する延出部を設け、この延出部の後部に排気ディフューザの前部を相対移動可能にシール部材を介して連結している。従って、延出部と排気ディフューザとの連結部が排気ガスの流速の小さい流れ方向後方側に位置することから、ケーシングと排気ディフューザとの間の熱伸び差によって発生する段差が、流速の大きい流れ方向前方側に生じることを防ぐことができるので、境界層の発達が抑制されると共に、排気ガスのスムースな流れが阻害されず、排気ディフューザの性能を向上することができる。
【0028】
本発明のガスタービンによれば、タービンを、タービン車室と排気車室と排気室を前後方向に沿って連結し、タービン車室を、円筒形状をなすタービン車室本体と、タービン車室本体の内側に設けられて円筒形状をなす翼環と、最終段動翼の外方に配置されて円筒形状をなす分割環と、翼環と分割環とを連結する遮熱環とで構成し、延出部を、翼環、分割環、遮熱環のいずれか一つから後方に延出するので、タービン車室をタービン車室本体と翼環と分割環と遮熱環とから構成し、延出部をこの翼環と分割環と遮熱環のいずれかから延出して構成することで、製造を簡素化して製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るガスタービンにおけるタービン排気構造を表すタービンの要部断面図である。
【図2】図2は、実施例1のガスタービンの概略構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施例2に係るガスタービンにおけるタービン排気構造を表すタービンの要部断面図である。
【図4−1】図4−1は、実施例2に係る熱膨張差吸収手段を表す図3のIV−IV断面図である。
【図4−2】図4−2は、実施例2に係る熱膨張差吸収手段の変形例を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るタービン排気構造及びガスタービンの好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
図1は、本発明の実施例1に係るガスタービンにおけるタービン排気構造を表すタービンの要部断面図、図2は、実施例1のガスタービンの概略構成図である。
【0032】
実施例1のガスタービンは、図2に示すように、圧縮機11と燃焼器12とタービン13により構成されている。このガスタービンには、図示しない発電機が連結されており、発電可能となっている。
【0033】
圧縮機11は、空気を取り込む空気取入口21を有し、圧縮機車室22内に複数の静翼23と動翼24が前後方向(後述するロータ32の軸方向)に交互に配設されてなり、その外側に抽気室25が設けられている。燃焼器12は、圧縮機11で圧縮された圧縮空気に対して燃料を供給し、点火することで燃焼可能となっている。タービン13は、タービン車室26内に複数の静翼27と動翼28が前後方向(後述するロータ32の軸方向)に交互に配設されている。このタービン車室26の下流側には、排気車室29を介して排気室30が配設されており、排気室30は、タービン13に連続する排気ディフューザ31を有している。
【0034】
また、圧縮機11、燃焼器12、タービン13、排気室30の中心部を貫通するようにロータ(タービン軸)32が位置している。ロータ32は、圧縮機11側の端部が軸受部33により回転自在に支持される一方、排気室30側の端部が軸受部34により回転自在に支持されている。そして、このロータ32は、圧縮機11にて、各動翼24が装着されたディスクが複数重ねられて固定され、タービン13にて、各動翼28が装着されたディスクが複数重ねられて固定されており、排気室30側の端部に図示しない発電機の駆動軸が連結されている。
【0035】
そして、このガスタービンは、圧縮機11の圧縮機車室22が脚部35に支持され、タービン13のタービン車室26が脚部36により支持され、排気室30が脚部37により支持されている。
【0036】
従って、圧縮機11の空気取入口21から取り込まれた空気が、複数の静翼23と動翼24を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。燃焼器12にて、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給され、燃焼する。そして、この燃焼器12で生成された作動流体である高温・高圧の燃焼ガスが、タービン13を構成する複数の静翼27と動翼28を通過することでロータ32を駆動回転し、このロータ32に連結された発電機を駆動する。一方、排気ガス(燃焼ガス)のエネルギは、排気室30の排気ディフューザ31により圧力に変換され減速されてから大気に放出される。
【0037】
上述したタービン13において、図1に示すように、円筒形状をなすタービン車室26には、複数の静翼27と動翼28が交互に配設されている。このタービン車室26は、排気ガスの流動方向の下流側に円筒形状をなす排気車室29が配設されている。この排気車室29は、排気ガスの流動方向の下流側に円筒形状をなす排気室30が配設されている。この排気室30は、排気ガスの流動方向の下流側に排気ダクト(図示略)が配設されている。この場合、タービン車室26、排気車室29、排気室30、排気ダクトは、それぞれ上下2分割に形成され、タービン車室26と排気車室29は、鋳造により製作され、排気室30と排気ダクトは、ブレス加工(板金)により製作される。
【0038】
そして、タービン車室26と排気車室29とは、複数の連結ボルト41により連結され、排気車室29と排気室30とは、熱伸びを吸収可能な複数の排気室サポート42,43により連結されている。この排気室サポート42,43は、短冊形状をなし、タービン13の軸方向に沿って延設されると共に、周方向に所定の間隔で複数並設されている。この排気室サポート42,43は、排気車室29と排気室30との間で温度差により熱伸びが発生したとき、変形することでその熱伸びを吸収可能となっている。この熱伸びは、タービン13の始動時などの過渡期や高負荷時に発生しやすい。また、排気車室29と排気室30との間には、各排気室サポート42,43の間に位置してガスシール44が設けられている。
【0039】
排気車室29は、その内側に排気室30を構成する円筒形状をなす排気ディフューザ31が配置されている。この排気ディフューザ31は、円筒形状をなす外側ディフューザ45と内側ディフューザ46が複数のストラットシールド47により連結されて構成されている。このストラットシールド47は、円筒形状や楕円筒状などの中空構造をなし、排気ディフューザ31の周方向に均等間隔で複数設けられている。なお、上述した排気室サポート42,43及びガスシール44は、端部が排気室30を構成する排気ディフューザ31における外側ディフューザ45に連結されている。
【0040】
ストラットシールド47内には、ストラット48が配設されている。このストラット48は、一端側が内側ディフューザ46を貫通して軸受部34を収容する軸受箱49に連結され、この軸受34によりロータ32が回転自在に支持されている。また、ストラット48は、他端側が外側ディフューザ45を貫通して排気車室29に固定されている。なお、ストラットシールド47内部の空間は、排気ディフューザ31(内側ディフューザ46)の内側の空間や、排気車室29と排気ディフューザ31との間の空間に連通し、外部からこれらの空間に冷却空気を供給可能となっている。
【0041】
ところで、タービン車室(ケーシング)26内には、複数の静翼27と動翼28が交互に配設されており、各段の翼環構造はほぼ同様の構成となっている。即ち、最終段翼環構造にて、最終段静翼27aの下流側に最終段動翼28aが配置されている。タービン車室26における最終段翼環構造は、円筒形状をなすタービン車室本体(ケーシング本体)51と、タービン車室本体51の内側に設けられて円筒形状をなす翼環52と、最終段動翼28aの外方に配置されて円筒形状をなす分割環53と、翼環52と分割環53とを連結する遮熱環54,55とから構成されている。
【0042】
タービン車室本体51は、鋳造で円筒形状をなすように形成され、燃焼器12と排気車室29とを連結している。翼環52は、鋳造で円筒形状をなすように形成されており、周方向上下に2分割されており、図示しないシール部材を介してボルト連結されている。そして、この翼環52は、タービン13の軸方向における前後方向にずれた位置に、周方向に沿う係止溝52a,52bが形成されている。
【0043】
分割環53は、高温強度に優れた耐熱合金で形成される環状部品であり、周方向に複数の分割体に分割されており、各分割体の間には図示しないシール部材が介装され、燃焼ガス及び空気の漏洩を防止している。この分割環53は、タービン13の軸方向における前後にずれた位置に、周方向に沿うと共に、外側に突出するフランジ部53a,53bが形成されている。図1に示すこの分割環53は、最終段動翼28aの外方に位置している。
【0044】
遮熱環54,55は、環状部品であり、周方向に複数に分割されており、相互の間には図示しないシール部材が介装され、燃焼ガス及び空気の漏洩を防止している。この遮熱環54,55は、最終段静翼27aや最終段動翼28aに作用する高温の熱が、特別な耐熱材料を用いていない翼環52に伝達するのを防止する機能を有する。そして、遮熱環54,55は、外周側の係止部54a,55aが翼環52の係止溝52a,52bに係合している。また、遮熱環54,55は、内周側の係止部54b,55bに分割環53のフランジ部53a,53bが係止している。
【0045】
また、最終段静翼27aは、外側端部が円筒形状をなすシュラウド56に支持されており、このシュラウド56は、フランジ部56aが遮熱環54の係止部54bに係止している。
【0046】
タービン13では、このように各段の翼環構造が構成されることから、タービン車室26を構成するシュラウド56、分割環53などにより燃焼ガス通路Aが構成され、タービン車室26及び排気車室29の後部の内側に、排気ディフューザ31の前部が径方向に所定隙間をもって侵入し、この排気ディフューザ31により構成される排気ガス通路Bの前部が燃焼ガス通路Aに連通する構成となっている。
【0047】
なお、タービン車室26、排気車室29、排気室30(排気ディフューザ31)の外周面や内周面には、図示しない断熱材が装着されている。
【0048】
このように構成された本実施例のタービン13の排気構造にて、翼環52は、内側から後方に延出する延出部61が設けられ、この延出部61に排気ディフューザ31の前部が相対移動可能で、且つ、シール部材62を介して連結部65にて連結されている。即ち、本実施例では、タービン車室26の後部と排気ディフューザ31の前部との連結部65を、境界層が安定しているタービン13の後方側(排気ガスの流れ方向の下流側)に配置している。
【0049】
この場合、延出部61と排気ディフューザ31との連結部65は、燃焼ガス通路Aに配設される最終段動翼28aより後方で、且つ、ストラット48またはストラットシールド47より前方に配置されている。具体的に、延出部61と排気ディフューザ31との連結部65は、ストラット48またはストラットシールド47の前方近傍に配置されており、更には、ストラットシールド47と排気ディフューザ31との連結部66より所定距離前方に配置されている。
【0050】
即ち、翼環52は、タービン13の軸方向における後端部から、ロータ32の中心側に燃焼ガス通路Aの通路面まで延びるフランジ部61aが一体に形成され、このフランジ部61aにおける内周側端部からタービン13の後方に連結部65まで延出する円筒部61bが一体に形成されている。延出部61は、このフランジ部61aと円筒部61bにより構成されており、その円筒部61bの内面により燃焼ガス通路Aまたは排気ガス通路Bを形成している。
【0051】
この場合、延出部61(円筒部61b)は、内径が分割環53の内周径とほぼ同径に設定され、分割環53から延出部61(円筒部61b)にかけて段差なく連続する。そして、燃焼ガス通路Aから連通する排気ガス通路Bは、最終段動翼28aが配置される位置より後方で流路面積が減少する絞り部B1と、この絞り部B1から後方で流路面積が増加する拡大部B2を有しており、この絞り部B1と拡大部B2は、延出部61の円筒部61bにより構成されている。また、絞り部B1と拡大部B2とは極力滑らかに接続されているが、その接続部の子午面形状にはある程度の曲率が存在することとなり、この曲率が大きい場合はその近傍を流れる速度も大きくなる。
【0052】
一方、排気ディフューザ31における外側ディフューザ45は、円筒形状をなすものの、排気ガス通路Bが燃焼ガス通路Aに連通する前方側、つまり、翼環52の延出部61に連結される側の流路面積が増加する形状となっており、この外側ディフューザ45の前端部と延出部61の後端部がほぼ同径となることで、延出部61(円筒部61b)における拡大部B2から外側ディフューザ45に至る排気ガス通路Bの子午面形状が直線的に広がる形状となっている。つまり、延出部61と排気ディフューザ31の外側ディフューザ45との連結部65は、流路面積の増加率が正の値で、且つ、一定の領域に配置されることとなる。
【0053】
そして、延出部61が一体に鋳造された翼環52と、排気ディフューザ31の外側ディフューザ45は、異なる材料で形成されることから、熱伸び量が相違する。そのため、本実施例では、延出部61の後端部と外側ディフューザ45の前端部との間に、両者の熱伸び差を吸収できる程度の所定隙間を軸方向に確保し、両者の間にシール部材62を設けている。この場合、例えば、翼環52は、Ni基合金を鋳造して形成され、排気ディフューザ31(外側ディフューザ45、内側ディフューザ46)は、ステンレス鋼をプレス加工(板金)して形成される。
【0054】
即ち、外側ディフューザ45の前端部には、延出部61側に突出する取付ブラケット63が溶接などにより固定されており、この取付ブラケット63にシール部材62が装着されている。このシール部材62は、先端部の環状シール62aが図示しない付勢ばねにより延出部61における先端部外周面に押圧する構成となっている。なお、翼環52の延出部61には、排気ガス通路Bを流れる排気ガスの温度を計測する温度センサ64が設けられている。
【0055】
従って、タービン車室26における翼環52から延出部61が一体に形成され、この延出部61の後端部が、ストラット48またはストラットシールド47の前方近傍で排気ディフューザ31の外側ディフューザ45とシール部材62を介して連結部65において連結されることで、ガスタービンの始動時などの過渡期や高負荷時に、タービン車室26の延出部61と排気室30の排気ディフューザ31との間で熱伸び差が発生したとしても、延出部61と外側ディフューザ45との連結部65が、排気ガスの流れが十分減速される拡大部B2の後方側に配設されたストラット48またはストラットシールド47の前方近傍に位置することから、燃焼ガス通路Aと排気ガス通路Bとの連通部近傍で生じる段差によって影響を受ける流れの乱れや境界層の発達を低減することができる。また、通路面の流れ方向(子午面形状)に曲率を有する絞り部B1と拡大部B2との接続部からも流れ方向後方側に離間することで、通路面の曲率が流速に与える影響を抑制することができる。
【0056】
そのため、燃焼ガス通路Aから排気ガス通路Bに至るガス流れは、絞り部B1で増速されることで、壁面に沿う流速の小さい排気ガスの境界層が発生することが抑制され、この絞り部B1から拡大部B2に向けて適正に流れることとなり、この排気ディフューザ31により排気ガスのエネルギを効率的に圧力に変換してから大気に放出することができる。
【0057】
このように実施例1のタービン排気構造にあっては、円筒形状をなすタービン車室26により燃焼ガス通路Aが構成され、このタービン車室26の後部の内側に、円筒形状をなす排気ディフューザ31の前部が所定隙間をもって侵入し、この排気ディフューザ31により構成される排気ガス通路Bの前部が燃焼ガス通路Aに連通するように構成し、タービン車室26の内側から後方に延出する延出部61を設け、この延出部61の後部に排気ディフューザ31の前部を相対移動可能で、且つ、シール部材62を介して連結している。
【0058】
従って、延出部61と排気ディフューザ31との連結部65が排気ガスの流速の小さい流れ方向後方側に位置することから、タービン車室26と排気ディフューザ31との間の熱伸び差によって発生する段差が、流速の大きい流れ方向前方側に生じることを防ぐことができるので、境界層の発達が抑制されると共に、排気ガスのスムースな流れが阻害されず、排気ディフューザ31の性能を向上することができる。
【0059】
また、実施例1のタービン排気構造では、延出部61と排気ディフューザ31との連結部を、燃焼ガス通路Aに配設される最終段動翼28aより後方で、且つ、ストラット48またはストラットシールド47より前方に配置している。従って、タービン車室26や排気ディフューザ31、ストラット48などの構成や強度に影響を与えることなく、延出部61と排気ディフューザ31との連結部を流速の小さい流れ方向後方側に位置させることができる。
【0060】
また、実施例1のタービン排気構造では、延出部61と排気ディフューザ31との連結部を、ストラット48またはストラットシールド47の前方近傍に配置している。従って、最終段動翼28aとストラット48またはストラットシールド47との間において最も流速の小さい領域に、延出部61と排気ディフューザ31との連結部65を配置することで、境界層の発達や流れの乱れを更に抑制することができる。また、延出部61と排気ディフューザ31との連結部からストラットシールド47と排気ディフューザ31との連結部までの距離を短縮することで、排気ディフューザ31の支持剛性を確保することができる。
【0061】
また、実施例1のタービン排気構造では、燃焼ガス通路A及び排気ガス通路Bを、最終段動翼28aが配置される位置より後方で流路面積が減少した後に増加するように構成し、延出部61と排気ディフューザ31との連結部を、流路面積の増加率が正で一定の領域に配置している。従って、流れが減速しており、かつ、流路面の流れ方向(子午面形状)の曲率が0のため、流速が小さい領域に延出部61と排気ディフューザ31との連結部65を配置することで、段差による流れへの影響を最小化できる。
【0062】
また、実施例1のタービン排気構造では、延出部61をタービン車室26と同じ材料で一体に形成している。従って、タービン車室26及び延出部61を高精度に製造することができると共に、熱伸び差の影響を抑制することができる。
【0063】
また、実施例1のタービン排気構造によれば、タービン車室26を、円筒形状をなすタービン車室本体51と、タービン車室本体51の内側に設けられて円筒形状をなす翼環52と、最終段動翼28aの外方に配置されて円筒形状をなす分割環53と、翼環52と分割環53とを連結する遮熱環54,55とで構成し、延出部61を翼環52から後方に延出して設けている。従って、延出部61を翼環52から延出して構成することで、製造を簡素化して製造コストを低減することができる。
【0064】
また、実施例1のガスタービンによれば、圧縮機11と燃焼器12とタービン13とにより構成し、このタービン13にて、タービン車室26の内側から後方に延出する延出部61を設け、この延出部61の後部に排気ディフューザ31の前部を相対移動可能で、且つ、シール部材62を介して連結している。
【0065】
従って、延出部61と排気ディフューザ31との連結部65が排気ガスの流速の小さい流れ方向後方側に位置することから、タービン車室26と排気ディフューザ31との間の熱伸び差によって発生する段差が、流速の大きい流れ方向前方側に生じることを防ぐことができるので、境界層の発達が抑制されると共に、排気ガスのスムースな流れが阻害されず、排気ディフューザ31の性能を向上することができる。その結果、ガスタービンにより発電効率を向上することができる。
【0066】
なお、この実施例1では、翼環52に対して延出部61を同じ材料で一体に形成したが、翼環52に対して延出部61を別体に形成し、溶接またはボルト締結などの連結方法により一体に固定してもよい。この場合、翼環52に対して延出部61を同じ材料で形成することが好ましい。
【実施例2】
【0067】
図3は、本発明の実施例2に係るガスタービンにおけるタービン排気構造を表すタービンの要部断面図、図4−1は、実施例2に係る熱膨張差吸収手段を表す図3のIV−IV断面図、図4−2は、実施例2に係る熱膨張差吸収手段の変形例を表す断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0068】
実施例2のガスタービンにおけるタービン排気構造において、図3に示すように、タービン車室26には、複数の静翼27と動翼28が交互に配設されており、最終段翼環構造にて、最終段静翼27aの下流側に最終段動翼28aが配置されている。タービン車室26における最終段翼環構造は、タービン車室本体51と、翼環52と、分割環53と、遮熱環54,55とから構成されている。
【0069】
そして、本実施例のタービン13の排気構造にて、翼環52は、内側から後方に延出する延出部71が設けられ、この延出部71の後部に排気ディフューザ31の前部が相対移動可能で、且つ、シール部材62を介して連結されている。
【0070】
即ち、延出部71は、リング形状をなすフランジ部71aと、このフランジ部71aにおける内周側端部からタービン13の後方に延出する円筒部71bとが一体に形成されて構成されている。そして、この延出部71は、フランジ部71aが翼環52におけるタービン13の軸方向における後端部に密着し、複数の締結ボルト72により一体に固定されている。
【0071】
本実施例では、この延出部71は、翼環52と異なる材料で別体に形成され、熱膨張差吸収手段73を介して連結されている。この場合、例えば、翼環52は、Ni基合金を鋳造して形成され、延出部71は、ステンレス鋼をプレス加工(板金)して形成される。そして、図4−1に示すように、延出部71のフランジ部71aには、熱膨張差吸収手段73として、締結ボルト72のネジ部72aの直径より大きく、締結ボルト72の頭部72bの直径よりも小さな孔を形成しており、延出部71が翼環52に固定される締結ボルト72に対して、この孔を介して径方向及び周方向に相対移動可能に連結する。
【0072】
なお、本実施例にて、熱膨張差吸収手段73は、この構成に限るものではない。例えば、図4−2に示すように、熱膨張差吸収手段73として、締結ボルト72のネジ部72aの直径に対して径方向にのみ大きな長孔を放射状に設けて、この長孔を介して延出部71が径方向に相対移動可能に連結してもよい。
【0073】
なお、熱膨張差吸収手段73は、これらの孔に限るものではなく、延出部71を翼環52と異なる材料で別体に形成するものの、熱膨張係数が近似する材料を選択することとしてもよい。
【0074】
一方、排気ディフューザ31における外側ディフューザ45は、円筒形状をなすものの、排気ガス通路Bが燃焼ガス通路Aに連通する前方側、つまり、翼環52の延出部71に連結される側の流路面積が増加する形状となっており、この外側ディフューザ45の前端部と延出部71の後端部がほぼ同径となることで、延出部71(円筒部71b)における拡大部B2から外側ディフューザ45に至る排気ガス通路Bの子午面形状が直線的に広がる形状となっている。つまり、延出部71と排気ディフューザ31の外側ディフューザ45との連結部75は、流路面積の増加率が正の値で且つ一定の領域に配置されることとなる。この場合、排気ディフューザ31(外側ディフューザ45、内側ディフューザ46)は、延出部71と同じ材料で形成されている。そして、延出部71の後端部と外側ディフューザ45の前端部との間に両者の熱伸び差を吸収できる程度の所定隙間を軸方向に確保し、両者の間にシール部材62を設けている。
【0075】
従って、タービン車室26における翼環52から延出部71が形成され、この延出部71の後端部が、ストラット48またはストラットシールド47の前方近傍で排気ディフューザ31の外側ディフューザ45とシール部材62を介して連結部75において連結されることで、ガスタービンの始動時などの過渡期や高負荷時に、タービン車室26の延出部71と排気室30の排気ディフューザ31との間で熱伸び差が発生したとしても、延出部71と外側ディフューザ45との連結部75が、排気ガスの流れが十分減速される拡大部B2の後方側に配設されたストラット48またはストラットシールド47の前方近傍に位置することから、燃焼ガス通路Aと排気ガス通路Bとの連通部近傍で生じる段差によって影響を受ける流れの乱れや境界層の発達を低減することができる。また、通路面の流れ方向(子午面形状)に曲率を有する絞り部B1と拡大部B2との接続部からも流れ方向後方側に離間することで、通路面の曲率が流速に与える影響を抑制することができる。
【0076】
そのため、燃焼ガス通路Aから排気ガス通路Bに至るガス流れは、絞り部B1で増速されることで、壁面に沿う流速の小さい排気ガスの境界層が発生することが抑制され、この絞り部B1から拡大部B2に向けて適正に流れることとなり、この排気ディフューザ31により排気ガスのエネルギを効率的に圧力に変換してから大気に放出することができる。
【0077】
このように実施例2のタービン排気構造にあっては、円筒形状をなすタービン車室26により燃焼ガス通路Aが構成され、このタービン車室26の後部の内側に、円筒形状をなす排気ディフューザ31の前部が所定隙間をもって侵入し、この排気ディフューザ31により構成される排気ガス通路Bの前部が燃焼ガス通路Aに連通するように構成し、タービン車室26の内側から後方に延出する延出部71を設け、この延出部71の後部に排気ディフューザ31の前部を相対移動可能で、且つ、シール部材62を介して連結している。
【0078】
従って、延出部71と排気ディフューザ31との連結部75が排気ガスの流速の小さい流れ方向後方側に位置することから、タービン車室26と排気ディフューザ31との間の熱伸び差によって発生する段差が、流速の大きい流れ方向前方側に生じることを防ぐことができるので、境界層の発達が抑制されると共に、排気ガスのスムースな流れが阻害されず、排気ディフューザ31の性能を向上することができる。
【0079】
また、実施例2のタービン排気構造では、延出部71を翼環52と異なる材料で別体に形成し、熱膨張差吸収手段73を介して連結する一方、排気ディフューザ31を延出部71と同じ材料で形成している。従って、異なる材料の延出部71と翼環52との間に生じる熱膨張差を吸収することができる。また、延出部71を排気ディフューザ31と同じ材料とすることで、連結部75に生じる熱伸び差による段差を小さくするとともに、低コスト化を可能とすることができる。
【0080】
なお、上述した各実施例では、延出部61,71を翼環52から後方に延出したが、この構成に限るものではない。例えば、延出部を分割環53や遮熱環55から後方に延出してもよく、この場合、延出部を分割環53や遮熱環55と一体に形成してもよく、別体に形成してもよい。
【0081】
また、延出部61,71には拡大部B2と共に絞り部B1を設けたが、この構成に限るものではなく、絞り部B1ではなく流路面積が一定の領域を設けてもよい。また、ケーシング(タービン車室)26と排気ディフューザ31を形成する材料は同じでもよいし、異なってもよい。また、ケーシング(タービン車室)26は、ケーシング本体(タービン車室本体)51、翼環52、分割環53、遮熱環54,55によって構成されるとしたが、これに限るものではなく、例えば、翼環52、分割環53、遮熱環54,55は用いずに、ケーシング本体(タービン車室本体)51のみによりケーシング(タービン車室)26が構成されるものとしてもよい。また、ストラット48の周囲に冷却空気用の空間を介してストラットシールド47を配設した構成としたが、これに限るものではなく、ストラット48のみの構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係るタービン排気構造及びガスタービンは、ケーシングから後方に延出する延出部を設け、この延出部に排気ディフューザの前部を相対移動可能に連結することで、排気ディフューザの性能を向上可能とするものであり、いずれの種類のガスタービンにも適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
11 圧縮機
12 燃焼器
13 タービン
26 タービン車室(ケーシング)
27 静翼
27a 最終段静翼
28 動翼
28a 最終段動翼
29 排気車室
30 排気室
31 排気ディフューザ
32 ロータ
45 外側ディフューザ
46 内側ディフューザ
47 ストラットシールド
48 ストラット
51 タービン車室本体(ケーシング本体)
52 翼環
53 分割環
54,55 遮熱環
61,71 延出部
62 シール部材
65,75 連結部
73 熱膨張差吸収手段
A 燃焼ガス通路
B 排気ガス通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状をなすケーシングにより燃焼ガス通路が構成され、該ケーシングの後部の内側に、円筒形状をなす排気ディフューザの前部が所定隙間をもって侵入し、該排気ディフューザにより構成される排気ガス通路の前部が前記燃焼ガス通路に連通するタービン排気構造において、
前記ケーシングは、内側から後方に延出する延出部が設けられ、該延出部の後部に前記排気ディフューザの前部が相対移動可能で、且つ、シール部材を介して連結される、
ことを特徴とするタービン排気構造。
【請求項2】
前記延出部と前記排気ディフューザとの連結部は、前記燃焼ガス通路に配設される最終段動翼より後方で、且つ、ストラットまたはストラットシールドより前方に配置されることを特徴とする請求項1に記載のタービン排気構造。
【請求項3】
前記延出部と前記排気ディフューザとの連結部は、ストラットまたはストラットシールドと前記排気ディフューザとの連結部の前方近傍に配置されることを特徴とする請求項1に記載のタービン排気構造。
【請求項4】
前記燃焼ガス通路及び前記排気ガス通路は、最終段動翼が配置される位置より後方で流路面積が減少した後に増加するように構成され、前記延出部と前記排気ディフューザとの連結部は、流路面積の増加率が正で一定の領域に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のタービン排気構造。
【請求項5】
前記延出部は、前記ケーシングと同じ材料で一体または別体に形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のタービン排気構造。
【請求項6】
前記延出部は、前記ケーシングと異なる材料で別体に形成され、熱膨張差吸収手段を介して連結される一方、前記排気ディフューザは、前記延出部と同じ材料で形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のタービン排気構造。
【請求項7】
前記ケーシングは、円筒形状をなすケーシング本体と、該ケーシング本体の内側に設けられて円筒形状をなす翼環と、最終段動翼の外方に配置されて円筒形状をなす分割環と、前記翼環と前記分割環とを連結する遮熱環とを有し、前記延出部は、前記翼環、前記分割環、前記遮熱環のいずれか一つから後方に延出されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載のタービン排気構造。
【請求項8】
圧縮機で圧縮した圧縮空気に燃焼器で燃料を供給して燃焼し、発生した燃焼ガスをタービンに供給することで回転動力を得るガスタービンにおいて、
前記タービンは、円筒形状をなすタービン車室の内側に静翼と動翼が前後方向に交互に配置される燃焼ガス通路が設けられ、前記タービン車室の後部の内側に円筒形状をなす排気ディフューザの前部が所定隙間をもって侵入し、前記排気ディフューザにより構成される排気ガス通路の前部が前記燃焼ガス通路に連通して構成され、
前記タービン車室は、内側から後方に延出する延出部が設けられ、該延出部の後部に前記排気ディフューザの前部が相対移動可能で、且つ、シール部材を介して連結される、
ことを特徴とするガスタービン。
【請求項9】
前記タービンは、前記タービン車室と排気車室と排気室が前後方向に沿って連結され、前記タービン車室は、円筒形状をなすタービン車室本体と、該タービン車室本体の内側に設けられて円筒状をなす翼環と、最終段動翼の外方に配置されて円筒形状をなす分割環と、前記翼環と前記分割環とを連結する遮熱環とを有し、前記延出部は、前記翼環、前記分割環、前記遮熱環のいずれか一つから後方に延出されることを特徴とする請求項8に記載のガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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