説明

ターボチャージャーピストンエンジンを作動する方法

本発明は、ターボチャージャーピストンエンジンを作動させる方法であって、ある期間、前記エンジンを稼働するステップと、前記エンジンを停止するステップと、前記エンジンを再始動させるステップと、を有する方法に関する。前記エンジンを停止するステップから第1の時間インターバル後、前記ターボチャージャーのタービンおよび圧縮機が回転している間、エンジンが再始動する前の第2の時間インターバルにおいて、前記タービンの上流のフローチャネルに流れる空気ストリームに、クリーニング剤が導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャーピストンエンジンに関する。より詳しくは、本発明は、ある期間エンジンを稼働するステップと、エンジンを停止するステップと、エンジン再始動するステップとを有する、ターボチャージャーピストンエンジンを作動する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジン技術では、エンジン動作の効率を高めるため、排ガスのエネルギーを圧縮機の稼働のパワーとして提供する、ターボチャージャー技術が広く使用されている。ターボ圧縮機は、圧縮器区画を有し、これにより加圧燃焼空気がエンジンに導入される。また、ターボ圧縮機は、圧縮機を駆動するタービン区画を有する。エンジンからの排ガスは、タービンに供給され、タービンは、排ガスのエネルギーを圧縮機の駆動力に変換する。炭素析出物のようなクラスト(crust)の形成は、ターボ圧縮機のタービン部分に関連する問題として知られている。クラストの形成は、特に、ターボチャージャーピストンエンジンにおける燃料として重油燃料が使用される場合、実質的にタービンのブレードにおいて問題を引き起こし、タービンのブレードとタービンハウジングの間のクリアランスに問題が生じる。ガスを抑制する表面の表面温度は、高レベルに上昇し、表面に形成するクラストは、特に硬質化する。クラストの特性は、燃料組成によって変化し、バナジウムおよびナトリウム含有重油燃料を使用した場合、問題が顕著となる。
【0003】
欧州特許第1577520A2号には、ピストンエンジンに関連したターボ圧縮機配置が示されており、この配置は、相互に接続された圧縮機ユニットおよびタービンユニットを有し、タービンユニットは、ブレードを有するタービンホイールと、タービンホイールおよびブレードを一定の距離で取り囲むタービンハウジングと、を有する。タービンブレードの先端と実質的に隣接するようにして、冷却媒体用の冷却スペースが配置され、タービンハウジングが冷却され、クラストの形成が回避される。この配置は、クラストの形成を回避するため、タービンハウジングの限定された領域に冷却機能を提供する。しかしながら、この文献は、既に汚れたタービンのクリーニング法については記載されていない。
【0004】
タービンを作動させたまま、タービン表面から炭素析出物を除去する、いくつかの解決策が開発されている。米国特許第5944483号には、いわゆる熱衝撃法を用いて、排ガスターボチャージャータービンのノズルリングを湿式クリーニングする機器が示されている。この排ガスターボチャージャータービンのノズルリングを湿式クリーニングする方法は、汚染物質に熱衝撃を加えることに基づいており、ノズルリングのすぐ上流の排気ダクトに、比較的少量の水を繰り返し噴射するステップを含む。噴射同士の間の遅延により、ノズルリングは作動温度まで再加熱され、各水噴射によって、熱衝撃が発生する。この方法を実施する機器は、制御システムおよび水噴射ノズルを有し、このノズルは、排ガスケーシングに導入される。この方法では、クリーニングの実施中、エンジンが稼働している必要がある。また、クラストの剥離に熱衝撃を使用するため、ターボチャージャーの構造に、過剰な応力および負荷が発生する。
【0005】
タービン表面から炭素析出物を除去する他の方法は、エンジンが低負荷の状態で、連続的に水を噴射するものである。この方法では、好ましくない条件が生じ、すなわち、この条件そのものによって、汚染物の大部分が生じてしまう。また、硬質粒子を用いた乾燥クリーニング法も知られている。
【0006】
米国特許出願第2008236150号には、ターボ圧縮機を備えるピストンエンジンが示されており、この圧縮機は、タービンのクリーニングの間、高出力(アウトプット)で作動する。これは、圧縮機およびこの圧縮機を駆動するため結合された排ガスタービンを備えるターボ圧縮機を有するピストンエンジンを作動する方法によって行われ、この方法では、排ガスは、クリーニング剤がタービンに供給された状態で、タービンの上流の排ガスに、空気および/または水を添加することにより冷却される。
【0007】
国際公開第WO2005/049972A1号には、ターボ圧縮機の軸タービンの回転ブレードおよびノズルリング用のクリーニング装置が開示されている。このクリーニング装置は、タービンの上流のフローチャネルに突出するロッド状ノズルを有する。クリーニング媒体は、ノズルの噴射開口を介して、ガス流に噴射される。また、ノズルは、追加の排気ゲートフランジに取り付けられることが有意であることが提案されている。フローチャネルの一方の側への排気ゲートの導入を容易にするため、フローチャネルには、しばしば、2つの対向する排気ゲート開口が提供されるが、ゲートフランジは、通常、このために存在する。
【0008】
エンジン作動の間、タービンの上流の排ガスストリームに、例えば水を噴射することにより、タービンをクリーニングした場合、剥離したクラストは、ガスによって容易に排ガスダクトまで搬送され、好ましくないことに大気雰囲気に至る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願第2008236150号公報
【特許文献2】国際公開第WO2005/049972号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ピストンエンジンに関連するターボ圧縮機配置を製造することであり、これにより従来の問題が最小限に抑制される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、ターボチャージャーピストンエンジンを作動させる方法であって、
ある期間、前記エンジンを稼働するステップと、
前記エンジンを停止するステップと、
前記エンジンを再始動させるステップと、
を有し、
前記エンジンを停止するステップから第1の時間インターバル後、前記ターボチャージャーのタービンおよび圧縮機の回転が継続している間の、前記エンジンが再始動する前の第2の時間インターバルにおいて、前記タービン部分の上流のフローチャネルに流れる空気ストリームに、クリーニング剤を導入するステップを有する方法によって解決される。この方法では、クリーニング剤は、タービン部分の表面に効率的に広がり、表面のクラストを剥離する。従って、タービン部分のクリーニングが効率的となり、サービスワークが直接的となり、実質的に短いエンジンの停止期間で、クリーニングを実施することができる。
【0012】
エンジンの始動は、実質的に、クリーニング剤の導入の直後に実施されることが好ましい。これにより、剥離クラストが乾燥せず、表面に再付着することが生じにくくなる。
【0013】
エンジンを停止した後、周囲空気のフローチャネルへのフロー経路が増加し、タービン部分に追加の空気が誘導される。これにより、タービンホイールの回転が維持され、または第2の時間インターバルの間、少なくとも回転が支援される。第2の時間インターバルは、クリーニング段階とも称される。
【0014】
本発明の実施例では、周囲空気のフローチャネルへのフロー経路は、バイパスチャネルを開くことにより増加しても良く、このバイパスチャネルは、ターボチャージャーの圧縮機部分の圧力側を、タービン部分の圧力側に接続する。
【0015】
本発明の別の実施例では、周囲空気のフローチャネルへのフロー経路は、バルブを開くことにより増加しても良く、このバルブは、ターボチャージャーのタービン部分の圧力側を、直接周囲空気に接続する。
【0016】
クリーニング剤は、水分ミストであることが有意である。水分ミストは、タービン部分の表面を有効に濡らし、クラストを剥離させる。水は、1000μm未満の液滴サイズで、ガスストリームにスプレーしても良い。水は、100μm未満の液滴サイズで、ガスストリームにスプレーされることが有意である。水の温度は、約20℃であることが好ましい。
【0017】
本発明の実施例では、水は、再循環されても良く、この場合、水の温度は、クリーニング工程の間の温暖化により、上昇する。
【0018】
水分ミストの供給によりタービン部分の表面が湿った状態に維持される、第2の時間インターバルは、少なくとも1時間であることが好ましい。
【0019】
本発明の実施例では、ターボチャージャーのタービンおよび圧縮機部分の回転は、エンジンの空気始動システムによって開始されても良い。これは、始動空気をエンジンのシリンダに収容することより行われ、ここから空気がタービン部分を介して流れ、その回転が支援される。
【0020】
タービン部分の下流のフローチャネルに、ドレインが配置されても良く、これは、クリーニング段階の間、開にされる。空気によって搬送されない水は、ドレインを介して収集される。
【0021】
本発明の別の実施例は、ターボチャージャーピストンエンジンを作動する方法である。この方法は、エンジンを稼働させるステップ、エンジンを停止するステップ、およびエンジンを再始動させるステップを有し、エンジンの停止から第1の時間インターバル後、ターボチャージャーのタービンおよび圧縮機が回転した状態のまま、第2のインターバルにおいて、タービンの上流のフローチャネルに流れる空気ストリームに、クリーニング剤を導入するステップを有する。ある態様では、当該方法は、例えばエンジンの停止後に、さらに、フローチャネルに、周囲空気の流れを導入するステップを有しても良い。例えば、フローチャネルに周囲空気の流れを導入するステップは、ターボチャージャーのタービンの圧力側に周囲空気を接続するチャネルを開にするステップを有しても良い。ある態様では、フローチャネルに周囲空気の流れを導入するステップは、バイパスチャネルを開にすることにより、実施されても良い。このバイパスチャネルは、ターボチャージャーのタービンの圧力側に、圧縮機の圧力側を接続する。
【0022】
別の態様では、クリーニング剤は水を含み、この水は、ガスストリームにスプレーされても良い。水の液滴サイズは、実質的に1000ミクロン(μm)よりも小さく、あるいは100μmよりも小さい。
【0023】
当該方法は、船舶のターボチャージャーピストンエンジンに適用されることが有意である。ガスストリームは、船舶の煙突を介して雰囲気に搬送され、ターボチャージャーのタービン部分および圧縮機部分の回転を支援する。
【0024】
別の実施例では、ターボチャージャーピストンエンジンは、船舶のターボチャージャーピストンエンジンであっても良く、当該方法は、さらに、船舶の煙突を介して、タービンからのガスストリームを雰囲気に放出するステップを有しても良い。ある態様では、当該方法は、さらに、船舶の煙突によるドラフト効果を提供することにより、ターボチャージャーのタービンおよび圧縮機の回転を支援するステップを有しても良い。
【0025】
本発明は、いくつかの利点を有する。まず、本発明は、エンジンが停止しているため、ターボ圧縮機をクリーニングする安全な方法を提供する。本発明の態様では、タービン部材において最小限の熱応力しか発生しない。エンジンは、クリーニング段階の前に、通常、1〜2時間の間に徐々に冷却される。本発明の態様では、ターボチャージャーの特性は、クリーニングの間の全期間にわたり、最適に維持される。本発明の態様を適用することにより、ノズルリング、拡散器、およびタービンホイールを含むタービン部分部材は、規定の全製造寿命にわたって、最適な状態に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例を示した図である。
【図2】本発明の別の実施例を示した図である。
【図3】本発明のさらに別の実施例を示した図である。
【図4】本発明のさらに別の実施例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、一例としての概略的な添付図面を参照して、本発明について説明する。
【0028】
図1には、ターボ圧縮機2を備えるピストンエンジン1を示す。ターボ圧縮機2は、圧縮機または圧縮機部分3と、タービンまたはタービン部分4を有し、これらの部分は、ドライブシャフト5により、相互に接続されている。ドライブシャフト5は、ベアリングシステム(図示されていない)を介してターボ圧縮機2のハウジングに取り付けられる。圧縮機3の役割は、加圧空気をエンジン1に供給することであり、エンジン1における燃料の燃焼のため、加圧燃焼空気が提供される。圧縮機部分3は、回転可能なロータまたはブレードを備えるホイールを有し、エンジン1に搬送される燃焼空気が加圧される。フロースペース、チャネル、または通路6は、例えば、圧縮機3とエンジン1のエンジンシリンダ10の燃焼空間の間の、圧縮機3の高圧側に配置されるように適合される。フロースペース6は、加圧空気、すなわち取り込み空気または燃焼空気を、シリンダ10に搬送するように適合される。フロースペース6は、熱交換器7を有し、燃焼空気を冷却または加熱しても良い。また、フロースペース6は、1または2以上のチャージ空気だめ8を含み、これは、燃焼空気の流れ方向において、熱交換器7の後段に配置される。フロースペース6は、各シリンダ10と空気だめ8の間に配置された入口チャネル9を有し、燃焼空気は、空気だめ8からシリンダ10に供給される。
【0029】
シリンダ10とタービン部分4の高圧側の間には、排ガスダクト11が配置され、エンジンの排ガスがタービン部分4に供給される。排ガスダクト11の第1の端部11a、すなわちタービン4に最近接のダクト11の端部は、タービン部分4の入口に接続される。排ガスダクト11は、通常、シリンダ10の列と実質的に平行に配置される。排ガスダクト11の第2の端部11b、すなわちタービン4から最も遠いダクト11の端部は、タービン部分4から最も遠いシリンダの近傍に延在する。シリンダ10の少なくともいくつか、ただし、通常、シリンダ10の各々は、出口チャネルまたは通路17を介して排ガスダクト11に接続される。ターボ圧縮機2のタービンまたはタービン部分4は、ブレードを備えるロータまたはホイールを有し、これらは、エンジン1から来る排ガスによって回転する。また、エンジン1は、シリンダ10に燃料を供給する燃料供給装置(図示されていない)を有しても良い。
【0030】
従来技術では、エンジン1の稼働の間、燃焼空気は、例えば、周囲空気から圧縮機部分3に供給され、空気圧力は、例えば、周囲空気圧力よりも高いレベルまで上昇する。加圧空気は、圧縮機3の高圧側のフロースペース6に供給される。フロースペース6において、燃焼空気は、熱交換器7に供給され、熱交換器7によって、通常40〜100℃まで冷却される。冷却後、燃焼空気は、チャージ空気だめ8に供給される。空気だめ8から、燃焼空気は、入口チャネル9を介して、シリンダ10に供給される。シリンダ10には、例えば燃料重油のような燃料が供給され、シリンダ10の燃焼空間において、圧縮点火のような従来の点火源により、燃焼空気の存在下で燃焼する。燃焼により生じた排ガスは、出口チャネル17を介して、シリンダ10から排ガスダクト11に搬送され、排ガスダクト11を介して、タービン部分4まで供給される。タービン4を介した流通の間、ガスの流れは、タービン4のホイールを回転させ、この回転の動きは、シャフト5により、圧縮機部分3のロータに伝達される。
【0031】
本発明のある態様では、タービン部分4には、供給装置16が提供され、タービン部分4つながるフローチャネルまたは通路18、例えば、タービン部分4の高圧入口に、クリーニング剤が供給される。実際には、フローチャネル18は、エンジン1の排ガスダクト11の一部であっても良く、従って、「フローチャネル18」および「排ガスダクト11」という両方の記載は、本発明の以下の記載の態様に使用されても良い。クリーニング剤により、炭素析出物および/またはタービン4の表面に集積された他の汚染物質は、後述するように除去される。ある態様では、炭素析出物は、特に、タービン部分4のノズルリング(図示されていない)の表面、およびロータブレードの周囲のタービンハウジングの表面から除去される。ノズルリングには、ブレードが提供され、これは、タービンホイールに流れる前に、排ガスの流れ方向を変化させ、これにより、排ガスの流れは、ロータブレードに適したものとなり、排ガスの流速が向上する。
【0032】
クリーニング剤の供給装置16は、1もしくは2以上のノズルまたは開口を有しても良く、これらを介して、クリーニング剤は、タービン部分4のノズルリングの上流の位置で、フローチャネル18に導入される。
【0033】
本発明の実施例では、供給装置16は、加圧水源24に接続されても良く、この場合、クリーニング剤は、水であることが好ましい。加圧水源24は、供給装置16に水を供給する高圧ポンプ(図示されていない)と組み合わされた、低圧の水源を含むことが好ましい。
【0034】
ターボチャージャーピストンエンジン1には、さらに、バイパスチャネル、溝、または通路20が提供されても良い。バイパスチャネル20は、ターボチャージャー2の圧縮機部分3の圧力側から、タービン部分4の圧力側まで誘導され、後述するように、チャネル20を開閉するため、1または2以上のバルブ22が設けられても良い。
【0035】
ここで、本発明の実施例では、ターボチャージャーピストンエンジン1は、まず、必要に応じ、ある期間の間、エンジン1が稼働するように作動する。エンジン1は、通常、重油燃料を燃料とし、このため、エンジン1からタービン4への排ガスは、特に汚れる傾向にある。稼働の間、タービン4は、タービン表面に、クラストとして炭素析出物を蓄積する。タービン部分4で適切なレベルでの作動を維持するため、このクラストは、除去する必要がある。エンジン1の運転期間は、必要な限りおよび/または計画に従って、十分に長くされる。運転期間の後、エンジン1は、停止される。本発明の態様では、停止期間は、第1の時間インターバルの開始点となり、その間、タービン部分4は、冷却される。従って、第1の時間インターバルは、冷却期間とも呼ばれる。冷却期間の経過後、タービン部分4の上流のフローチャネル18に流れるガスストリームに、クリーニング剤が導入される。クリーニング剤は、水であることが好ましい。ある態様では、水の導入は、水が、水分ミストとしてガスストリームに導入されることにより、実現される。第1の時間インターバルは、少なくとも水分ミストがタービン4の表面から実質的に瞬時に気化しなくなる温度まで、タービン部分4が冷却されるように選定される。実際には、ある程度の水分が気化しても良く、この影響は、熱衝撃法に比べて顕著ではない。これは、表面温度は、約150℃以下まで既に低下しているためである。また、これにより、水分ミストが作動状態でスプレーされた場合などに生じ得る、過度の熱応力が回避される。第1の時間インターバルは、少なくとも1時間であっても良い。通常、第1の時間インターバルは、約1時間と約2時間の間であっても良い。水分ミストの導入は、第2の時間インターバルの間、継続されても良い。この第2の時間インターバルの間、タービン部分4、特にある態様では、ノズルリングおよびタービンホイールは、タービン部分4を介したガスストリームへの水分ミストの連続的なまたは断続的な導入により、湿った状態に維持される。第2の時間インターバルは、少なくとも約1.5時間であることが好ましい。ただし、ある場合には、クリーニング段階は、約2時間以上であっても良い。クリーニング段階の後、エンジン1は再始動し、本発明の態様により、タービン4の表面から除去され剥離したクラストが、ター分部分4の表面から除去される。実際には、本発明の態様によるクリーニング段階の効果は、主として、クラストを柔らかくし、タービン4の表面から分離することであり、クラストは、必ずしもクリーニング段階の間に、表面から剥がれ、あるいは実質的に除去される必要はなく、エンジン1の再始動の後までに、実質的に除去されていれば良い。
【0036】
本発明のある実施例では、タービン部分4を介して流れるガスストリームの流速を維持しおよび/または高めることを支援するため、フローチャネル18への周囲空気のフロー経路は、タービン部分4に追加の空気が導入されるように提供されても良い。例えば、ある態様では、これは重要である。なぜなら、この場合、水分ミストの導入の間、タービンホイールは、回転が維持され、上昇した流速がこの回転を容易にする点で有意であるからである。実際には、タービン4への上昇した水分および/または空気の流れは、バイパスチャネル20におけるバルブ22を開にすることにより行われることが好ましい。バイパスチャネルは、ターボチャージャー2の圧縮機部分3の高圧側と、タービン部分4の高圧側とを接続する。バルブ22の開放により、圧縮機部分3からタービン部分4への実質的に直接的なフロー経路が開となり、エンジン1のシリンダ10がバイパスされる。
【0037】
本発明のある態様では、図1に示すように、エンジン1と関連する制御ユニット30が提供される。制御ユニット30は、少なくとも、供給装置16およびバイパスバルブ22の動作を制御するように配置され、一旦エンジンが停止されると、制御ユニット30は、バイパスチャネル20のバルブ22を開くように制御し、タービン部分4に追加の空気が提供され、タービン部分4の冷却が容易になる。第1の時間インターバル(冷却)の経過後、制御ユニット30は、供給装置16を制御し、例えば水分ミストのようなクリーニング剤の、フローチャネル18に流れるガスストリームへの導入を開始する。第1の時間インターバルの期間は、制御ユニット30に記憶され、制御ユニットは、第2の時間インターバルが経過するまで、供給装置16の作動を継続する。その後、制御ユニット30は、例えばバルブ22を閉止することにより、供給装置16を不活性にする。
【0038】
ある態様では、水は、液滴サイズが1000μm未満となるように、ガスストリームにスプレーされても良い。しかしながら、別の態様では、水は、液滴サイズが100μm未満となるように、ガスストリームにスプレーされることが有意である。
【0039】
本発明の実施例では、ターボチャージャー2は、エンジンの空気始動システムにより、回転が維持されても良い。この場合、空気始動システムに保管された加圧空気は、好ましくは断続的に、排ガスダクトに搬送され、これにより、ターボチャージャー2のタービン部分4および圧縮機部分3の回転が維持される。ターボ圧縮機2のタービン部分4には、ドレイン25が提供されても良く、この場合、空気とともに搬送されなかった水分ミスト分は、ドレインを介して収集される。
【0040】
図2には、本発明の別の実施例を示す。この方法は、手動で実施される。エンジン1が停止されると、タービン部分4に接続されたフローチャネル18は、開にされる。ある態様では、これは、通常、大きなエンジン、例えば船舶の推進の原動力および予備エンジンとして使用されるようなエンジンに存在する、排気ゲートブランチ出口の使用に好適である。これらのシリンダ直径は、200mm以上であり、および/または発生パワーは、150kW/シリンダである。供給装置16は、脱着可能に取り付けられ、例えば、排気ゲートブランチ出口のフランジに取り付けられる。そのノズルまたはスプレー開口は、タービン部分4のノズルリングの方に誘導される。供給装置は、例えば、図2に示すように、ホース26により、加圧水源24と結合されても良い。第1の時間インターバルの間にエンジン1が冷却された後、供給装置16のバルブ28は、開にされ、水源24から、フローチャネル18に流れるガスストリームに、例えばミストのような水が導入される。これは、前述のように、エンジンが再始動する前の、第2の時間インターバルの間に実施される。
【0041】
また、図2には、本発明の別の実施例が示されており、エンジン1と接続されたクリーニング剤リサイクルシステム200が提供される。ドレイン25により収集された、例えば水のようなクリーニング剤は、クリーニング剤リサイクルシステム200に供給され、このシステムは、使用可能な割合で、加圧水源24に収集水を戻す。この方法では、使用される水の量を減らすことができる。廃棄材料、例えば、タービン部分からの剥離クラストは、ドレイン25で水と分離され、水の少なくとも一部はリサイクルされる。
【0042】
図3には、本発明の別の実施例を示すが、この方法は、船舶100に配置されたピストンエンジンで実施される。ここでは、船舶100は、概略的に示されており、船舶100は、例えば、クルーズ船、フェリー、または貨物船であっても良い。エンジン1は、船舶100のエンジン室110に配置され、ここから、排ガスダクト120が船舶100の煙突125まで誘導される。エンジン1は、図1で示したような態様で作動されても良いが、第2の時間インターバルの間、すなわちクリーニング段階の間、ガスストリームは、ターボチャージャーのタービン4および圧縮機3の回転を支援した後、船舶100の煙突125を介して、雰囲気中に搬送されても良い。クリーニング段階の間のタービンホイールの回転は、極めて有益である。回転を加速するため、エンジン室の空気圧力は、100〜200パスカル(Pa)に維持され、および/または制御される。また、ある態様では、ターボチャージャー潤滑ポンプの動作を開始および/または維持するステップが存在し、潤滑油の循環が向上する。
【0043】
また、図3の実施例では、タービン部分4を介して流れる空気ストリームの流速の維持および/または向上は、タービン部分4に追加空気を誘導するフローチャネル18への周囲空気の流れを増加させることにより行われる。ここで、煙突125の高さにより、フローチャネル18のドラフト効果を高めることで、空気の流れが容易になる。
【0044】
ある態様では、空気流の増大は、水分ミストの添加の間、タービンホイールの回転が維持され、増加した流速によりこの動作が容易になるという利点を有するため、重要である。
【0045】
図4には、本発明のさらに別の実施例が示されている。図4に示す実施例は、以下の例外を除き、図1の実施例に対応する。供給装置16は、低圧水源24’および高圧空気源24”に接続される。この場合も、クリーニング剤は、水であっても良い。加圧空気源24”および低圧水源24’は、供給装置16に接続され、供給装置16を介して導入される水は、加圧空気によって噴霧化される。これは、恒久的な導入において有意な実施例である。なぜなら、加圧ガスで水を噴霧化する場合、供給装置16のスプレー開口は、大きくても良く、例えば、水が非加圧ガスによって噴霧化される場合に比べて大きくても良いからである。この態様では、供給装置16に、目詰まりが生じにくくなる。
【0046】
図3に示すように、ターボチャージャーピストンエンジン1には、さらに、ブランチチャネル20’が提供されても良い。ブランチチャネル20’は、周囲空気をターボチャージャー2のタービン部分4の圧力側に誘導し、ブランチチャネル20’には、チャネル20’を開閉するためのバルブ22が提供される。
【0047】
また、図4には、クリーニング段階の間、ターボチャージャー2の回転を維持する追加方法または代替方法を示す。クリーニング段階を開始する前に、ターボチャージャーに接続された電気モータ32が始動し、クリーニング段階の間、この動作が維持される。モータ32は、ターボチャージャーに恒久的に接続されても良く、すなわち、モータ32は、いわゆるパワーテイクイン(PTI)および/またはパワーテイクオフ(PTO)モータであっても良い。また、モータ32は、制御ユニット30に接続され。ユニットにより制御されても良い。あるいは、モータ32は、一時的に接続されても良い。
【0048】
一例として、本発明の態様が、460mmボアの16のシリンダを有するVエンジンにおいて評価されたところ、良好な結果が得られた。タービン部分のクリーニングは、エンジンが停止し、適切に冷却されている間に実施された。使用加圧水源は、高圧水システムである(最大9MPa)。バイパスバルブ22を開け、洗浄段階の間、タービン部分4は、連続的に回転した。クリーニング段階の間、約600〜700リットル(l)の水が、タービン部分から排出された(5〜6リットル/分の速度)。
【0049】
現時点で最も好適な実施例であると思われる一例により、本発明について説明したが、本発明は、開示の実施例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に示すような本発明の範囲に含まれる、各種特徴の組み合わせまたは変更、およびいくつかの他の用途を網羅することが理解される。前述のいかなる実施例に関連して示された詳細も、そのような組み合わせが技術的に可能な場合、別の実施例に組み合わせて使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャーピストンエンジンを作動させる方法であって、
前記エンジンを稼働するステップと、
前記エンジンを停止するステップと、
前記エンジンを再始動させるステップと、
を有し、
前記エンジンを停止するステップから第1の時間インターバル後、前記ターボチャージャーのタービンおよび圧縮機が回転している間、第2の時間インターバルにおいて、前記タービンの上流のフローチャネルに流れる空気ストリームに、クリーニング剤を導入するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
当該方法は、さらに、前記エンジンの停止後、前記フローチャネルに周囲空気の流れを導入するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フローチャネルに前記周囲空気の流れを導入するステップは、前記ターボチャージャーのタービンの圧力側を周囲空気に接続するチャネルを開くステップを有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
当該方法は、さらに、電気モータにより、前記ターボチャージャーのタービンおよび圧縮機の回転を維持するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フローチャネルに前記周囲空気の流れを導入するステップは、前記ターボチャージャーの前記圧縮機の圧力側と前記タービンの圧力側とを接続するバイパスチャネルを開くステップを有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記クリーニング剤は、水であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水は、前記ガスストリームにスプレーされ、前記水滴のサイズは、実質的に100ミクロン未満であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水を導入するステップは、水滴サイズが実質的に1000μm未満となるように、前記ガスストリームに前記水をスプレーするステップを有することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の時間インターバルは、少なくとも1時間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
当該方法は、さらに、前記エンジンの空気始動システムにより、前記ターボチャージャーの前記タービンおよび圧縮機の回転を開始するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
当該方法は、さらに、
前記タービンの下流のフローチャネルのドレイン排出を行うステップ、および
前記タービンからドレイン排出されたクリーニング剤の少なくとも一部を収集するステップ、
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
当該方法は、さらに、前記収集されたクリーニング剤の少なくとも一部を再循環するステップを有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ターボチャージャーピストンエンジンは、船舶におけるターボチャージャーピストンエンジンを有し、
当該方法は、さらに、
前記タービンから前記船舶の煙突を介して、大気雰囲気にガスストリームを放出するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
当該方法は、さらに、前記船舶の煙突によるドラフト効果を提供することにより、前記ターボチャージャーの前記タービンおよび前記圧縮機の回転を支援するステップを有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記クリーニング剤は、水であることを特徴とする請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−513057(P2013−513057A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541545(P2012−541545)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050978
【国際公開番号】WO2011/067464
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(503129903)ワルトシラ フィンランド オサケユキチュア (73)
【Fターム(参考)】