説明

ターボ機械列における軸ズレを検出するための軸振動モニタリング

【課題】直列に連結された回転軸を有する複数の部品で構成されたターボ機械列における軸ズレを判定するためのシステムを提供する。
【解決手段】本システムは、ターボ機械列10の回転軸24、26、28に隣接する部品12、14、16に取り付けられたセンサ30A、30B、30Cを備えており、センサ30A、30B、30Cは、回転軸24、26、28の軸方向に沿った振動データを収集する。振動データから周波数領域データを生成するための周波数分析器と、回転軸24、26、28の回転数の1倍における周波数領域データの周波数成分12、14、16を分析して、回転軸24、26、28とそれに隣接して連結された回転軸24、26、28との間のズレを同定するための分析システムも設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する主題は、ターボ機械列のズレを同定するための軸振動の測定及びモニタリング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械列は、回転軸を直列に連結してなる一組の部品を備える。典型例はタービン発電機である。タービン発電機は、その最も単純な形態では、電力を発生させる発電機の回転軸にタービン(ロータ)の回転軸が直接接続している。発電分野で用いられるようなさらに複雑なタービン発電機列では、複数の大型部品の回転軸を直列に連結することが多い。典型的な構成として、例えば、高圧タービンの回転軸を低圧タービンの回転軸に連結し、次いで低圧タービンの回転軸を発電機の回転軸に連結したものがある。
【0003】
このような列の実施に際しては、ロータ又は軸受の損傷を避けるため、各部品の回転軸が正確に動くことが欠かせない。例えば、このような構成に共通した問題の一つとして、軸の1つが「ぐらつく」アンバランスな軸が挙げられる。この欠陥は、通常、圧電プローブなどを用いて半径方向(つまり外側方向)振動を測定することによって検出される。しかし、かかる振動は、軸ズレ(ミスアラインメント)に起因することもあり、これもロータ又は軸受の損傷を引き起こすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6092029号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する実施形態では、ターボ機械列の連結軸のズレを同定するための解決策について記載する。
【0006】
本発明の第1の態様では、直列に連結した回転軸を有する部品の列における軸ズレを判定するためのシステムであって、上記列の回転軸に隣接した部品に取り付けられたセンサであって、該回転軸の軸方向に沿った振動データを収集するセンサと、上記振動データから周波数領域データを生成するための周波数分析器と、上記回転軸の回転数の1倍の周波数領域データの周波数成分を分析して、上記回転軸とそれに隣接して連結された回転軸との間のズレを同定するための分析システムとを備えるシステムを提供する。
【0007】
本発明の第2の態様では、直列に連結した回転軸を有する複数の部品と、回転軸に隣接する少なくとも1つの部品に取り付けられたセンサであって、上記回転軸の軸方向に沿った振動データを収集するセンサと、上記振動データから周波数領域データを生成するための周波数分析器と、上記回転軸の回転数の1倍の周波数領域データの周波数成分を分析して、上記回転軸とそれに隣接して連結された回転軸との間のズレを同定するための分析システムとを備える列を提供する。
【0008】
本発明の第3の態様では、直列に連結した回転軸を有する部品の列における軸ズレを判定するためのシステムであって、上記列の回転軸に隣接した部品に取り付けられたセンサであって、上記回転軸の軸方向に沿った振動データを収集するセンサと、上記振動データから周波数領域データを生成するための周波数分析器と、周波数領域データを分析して、上記回転軸とそれに隣接して連結された回転軸とのアラインメント情報を生成するための分析システムとを備える装置を提供する。
【0009】
本発明の例示的な態様は、本明細書に記載した課題及び/又はその他の課題を解決すべく設計されたものである。
【0010】
本発明の上記その他の特徴については、本発明の様々な実施形態を例示した添付の図面と併せて本発明の様々な態様に関する以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができるであろう。なお、本発明の図面は原寸に比例したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】例示的な実施形態に係るターボ機械列を示す図。
【図2】例示的な実施形態に係る軸振動を測定するため軸受箱に設けられたセンサを示す等角投影図。
【図3】例示的な実施形態に係る軸振動データを処理するためのコンピュータシステムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面は、本発明の典型的な態様を例示するものにすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。図面では、類似の部品には同様の符号を付した。
【0013】
実施形態に関する開示では、ターボ機械列における連結された軸同士のズレを同定するための解決手段について説明する。図面を参照すると、図1には、3つの部品12、14及び16を備えるターボ機械列10を示し、それぞれの回転軸24、26、28が隣接部品に直列に接続されている。部品12、14及び16は、直列に連結された回転軸を有する任意のタイプの機械でよい。例えば、ターボ機械列10として、部品12が高圧タービンであり、部品14が低圧タービンであり、部品16が発電機であるタービン発電機が挙げられる。別の実施形態では、部品は、回転軸を有するクラッチ及び/又はその他任意の装置を含んでいてもよい。また、ターボ機械列10は、任意の数又は種類の部品(2以上)を備えていてもよく、連結された少なくとも2つの軸が存在する。
【0014】
回転軸に加えて、各部品12、14及び16はそれぞれ軸受箱18A/18B、20A/20B及び22A/22Bを備えていてもよい。軸受箱は、部品の軸を所定の位置に保持するとともに軸と部品との相対的回転運動を抑制することのできる軸受を備える。
【0015】
図1に示す例では、軸受箱20Bと22Aの間の連結部Nにおいて軸28が軸26に対してズレていることが分かる。上述の通り、かかるズレ(ミスアラインメント)は、軸受及び/又はロータに損傷を生じかねない。この欠陥は、影響される部品の1つが軸クラッチである場合に特に問題となるおそれがあり、クラッチは、軸間の結合を解くことができ、ズレの問題に極めて敏感である傾向がある。なお、部品12、14及び16は通常、シールされたユニット(例として点線で示す)に収容されており、かかる欠陥の修正のためのコストが高いので、軸ズレを適切に同定することができれば、状態モニタリングプロセスが大幅に改善できる。
【0016】
このニーズに対処すべく、軸振動センサ30A、30B及び30Cを、少なくとも1つの軸受箱18B、20B及び22Bの表面に取り付ける。この例では、隣接部品の軸同士を結合する各々の連結部に1個の軸振動センサが配置される。なお、冗長性などを与えるため、任意の数又は配置のセンサを用いることができる。以下で詳しく説明する通り、軸近傍の軸受箱の軸振動を分析することによって、連結された2つの軸間のズレを評価することができる。
【0017】
図2に、軸受箱20B、軸26及び軸振動センサ30の拡大図を示す。図に示すように、軸振動センサ30Bは、矢印32で示すように軸26の軸方向に沿った振動データを収集する。自明であろうが、軸振動センサの位置、数及びタイプは、個々の実施状況に応じて変更し得る。例示的な一実施形態では、軸振動センサ30Bには、軸振動データの定常流を受信するため軸受箱20Bに常設又は取り付けられた圧電プローブを利用する。別の実施形態では、軸振動センサ30Bは、軸受箱20B以外のいずれかの箇所、例えば部品の一部と一体化した基礎などに配置することができる。
【0018】
図3に、軸振動センサデータ50を処理してアラインメント情報56を出力するためのモニタリングシステム48を有するコンピュータシステム40を示す。軸振動センサデータ50は、軸振動センサ30A、30B及び30C(図1〜図2)から、有線又は無線、アナログ又はデジタルなど、どのように収集してもよい。モニタリングシステム48は、軸振動センサデータ50を連続的又は周期的時間領域データとして受信するが、一般に、(1)時間領域軸振動センサデータを周波数領域データに変換する周波数分析器52と、(2)周波数領域データを分析してアラインメント情報56を与えるアラインメント分析システム54とを備える。
【0019】
周波数分析器では、周波数領域データを得るための任意の技術、例えば、フーリエ変換、高速フーリエ変換(FFT)、ケプストラム解析のようなスペクトル解析、Z変換などを利用できる。ボックス60は、連結部N(図1、軸26と軸28)についての例示的な周波数解析を示し、様々な周波数成分の大きさをグラフとして示す。ズレ(ミスアラインメント)を同定するため、軸の運転周波数の1倍(1×)の周波数成分を、アラインメント分析システム54で評価する(図では矢印で示す)。連結部Nについて示す例のように、軸の運転周波数の1×の周波数成分が主要振幅ピークを含んでいれば、ミスアラインメントが同定される。
【0020】
ズレの同定に加えて、アラインメント分析システム54は、例えば警告の発生、将来のズレの予測などのための傾向分析、軸ズレに関するメンテナンススケジューリング、連続的リアルタイム分析などの補助的機能を実行してもよい。。
【0021】
なお、コンピュータシステム40は、任意のタイプのコンピューターデバイスを用いて実現できる。かかるコンピューターデバイスは、概して、プロセッサ42、入力/出力(I/O44)、メモリ46及びバスを備える。プロセッサ42は、単一の処理装置を備えたものでもよいし、1以上のロケーション(例えば、クライアント及びサーバ)にある1以上の処理装置に分散していてもよい。メモリ46は、磁気媒体、光媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、データキャッシュ、データオブジェクトなどを始めとする任意の公知のタイプのデータ記憶装置を含んでいてもよい。メモリは、1種以上のデータ記憶装置を備える単一の物理的ロケーションに存在していてもよいし、複数の物理的システムに様々な形態で分散していてもよい。
【0022】
I/O44は、外部資源との間で情報を交換するための任意のシステムを備えていてもよい。外部デバイス/資源として、例えば、センサ、モニタ/ディスプレイ、スピーカ、記憶装置、別のコンピュータシステム、ハンドヘルドデバイス、キーボード、マウス、音声認識システム、音声出力システム、プリンタ、ファクシミリ、ポケットベルを始めとする、あらゆる公知の外部デバイスが挙げられる。バスは、コンピューターデバイスでの各部品間の通信リンクを実現するものであり、電気的、光学的、無線を始めとするあらゆる公知の伝送リンクを含んでいてもよい。図示しないが、キャッシュメモリ、通信システム、システムソフトウェアなどの追加の部品を組み込んでもよい。
【0023】
アクセスは、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、仮想プライベートネットワーク(VPN)などのネットワーク上で実行し得る。通信は、直接配線接続(例えば、シリアルポート)を介して行ってもよいし、或いは有線及び/又は無線伝送方法の任意の組合せを利用し得るアドレス可能な接続を介して行うこともできる。また、従来のネットワーク接続技術、例えばトークンリング、イーサネット(登録商標)、WiFiその他の従来の通信標準を用いることができる。さらに、従来のTCP/IPソケット式プロトコルによって接続を実現することもできる。
【0024】
なお、システム及び方法としての実施だけでなく、本発明の特徴を、コンピュータ読取可能な記憶媒体に記憶された1以上のプログラム製品として提供することもでき、その実行によって、コンピュータシステム40がアラインメント情報を生成できるようになる。この点に関して、コンピュータ読取可能な記憶媒体は、本明細書に記載したプロセス及びシステムを実現するプログラムコードを含んでいてもよい。「コンピュータ読取可能な記憶媒体」という用語は、プログラムコードのあらゆるタイプの物理的実施形態の1以上を包含する。特に、コンピュータ読取可能な記憶媒体は、1以上の可搬記憶製品(例えば、コンパクトディスク、磁気ディスク、テープなど)上、又はコンピューターデバイスの1以上のデータ記憶部(例えばメモリ及び/又は記憶システム)上で具体化されプログラムコードを含んでいてもよい。
【0025】
本明細書で用いる「プログラムコード」及び「コンピュータプログラムコード」という用語は同義であり、情報処理能力を有するコンピューターデバイスで特定の機能を、直接或いは(a)別の言語、コード又は表記法への変換、(b)別の物質的形態での再生、及び/又は(c)解凍の任意の組合せの後に、実行させる1組の命令を、任意の言語、コード又は表記法で表現したものを意味する。この点に関して、プログラムコードは、アプリケーション/ソフトウェアプログラム、コンポーネントソフトウェア/機能のライブラリ、オペレーティングシステム、特定のコンピューティングに対する基本的なI/Oシステム/ドライバ及び/又はI/O装置などの、1種以上のプログラム製品として具体化することができる、さらに、本明細書で用いる「部品」、「サブシステム」及び「システム」などの用語は同義であり、なんらかの機能を実行できるハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の組合せを表す。
【0026】
図のブロック図は、本発明の様々な実施形態に係るシステム、方法及びコンピュータプログラム製品について可能な具体化のアーキテクチャ、機能及び動作を例示したものである。この点に関して、ブロック図における各ブロックは、モジュール、セグメント、又はコードの一部(特定の論理機能を実行するための1以上の実行可能命令を含む)を表すことがある。また、ブロックに示す機能は、図に示す順序とは異なる順序で実行してもよい。例えば、2つの連続したブロックは、実際には、実質的に同時に実行してもよいし、場合によっては、関与する機能に応じて逆の順序で実行してもよい。また、ブロック図の各ブロックは、特定の機能又は動作を実行する特殊なハードウェアシステム或いは特殊なハードウェアとコンピュータ命令との組合せによって実施することもできる。
【0027】
本明細書で用いた用語は、具体的な実施形態をせつめいするためのものにすぎず、本明細書の開示内容を限定するものではない。本明細書では、単数形で記載したものであっても、文脈から別途明らかでない限り、複数形も包含する。本明細書で用いる「含む」、「備える」及び「有する」という用語は、標記の特徴、数、工程、操作、構成要素及び/又は部品が存在することを意味するものであり、それ以外の特徴、数、工程、操作、構成要素、部品及び/又は群の存在を排除するものではない。
【0028】
以下の特許請求の範囲に機能的記載(means or step plus function)で特定された構成要素に対応する構造、材料、動作及び均等物は、その機能をその請求項に記載された他の構成要素との組合せで実施するためのあらゆる構造、材料、動作及び均等物を包含する。本明細書の記載は例示及び説明を目的としたものであり、開示した形態に限定されるものではない。本発明の技術的思想及び技術的範囲に属する様々な変更及び変形は当業者には明らかであろう。本明細書の実施形態は、本発明の原理及びその具体的用途を最もよく理解でき、かつ様々な実施形態に関する説明を当業者が具体的用途に応じて様々な変更を加えて実施できるように、選んで説明を加えたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に連結された回転軸(24、26、28)を有する部品(12、14、16)の列における軸ズレを判定するためのシステムであって、
上記列の回転軸(24、26、28)に隣接する部品(12、14、16)に取り付けられたセンサ(30A、30B、30C)であって、上記回転軸(24、26、28)の軸方向(32)に沿った振動データを収集するセンサ(30A、30B、30C)と、
上記振動データから周波数領域データを生成するための周波数分析器(52)と、
上記回転軸(24、26、28)の回転数の1倍の周波数領域データの周波数成分(12、14、16)を分析して、上記回転軸(24、26、28)とそれに隣接して連結された回転軸(24、26、28)との間のズレを同定するための分析システム(54)と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記センサ(30A、30B、30C)が、前記回転軸(24、26、28)に隣接する軸受箱(18A/18B、20A/20B、22A/22B)に取り付けられている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記回転軸(24、26、28)の回転数の約1倍の周波数におけるピーク値がズレを示す、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記部品(12、14、16)が、前記回転軸(24、26、28)とそれに隣接して連結された回転軸(24、26、28)との係合を解くことのできるクラッチを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記分析システム(54)が、ズレの可能性を予測するため前記周波数領域データの傾向を評価する、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記分析システム(54)がアラインメント情報(56)を連続的に出力する、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記分析システム(54)が、ズレを検出したときに警告を出力する、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記周波数分析器(52)が、フーリエ変換、高速フーリエ変換、ケプストラム解析及びZ変換からなる群から選択される計算を用いる、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記列の複数の箇所から軸振動データ(50)を収集するための複数のセンサ(30A、30B、30C)をさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
直列に連結された回転軸(24、26、28)を有する複数の部品(12、14、16)と、
回転軸(24、26、28)に隣接する少なくとも1つの部品(12、14、16)に取り付けられたセンサ(30A、30B、30C)であって、上記回転軸(24、26、28)の軸方向に沿った振動データ(50)を収集するセンサ(30A、30B、30C)と、
上記振動データから周波数領域データを生成するための周波数分析器(52)と、
上記回転軸(24、26、28)の回転数の1倍の周波数領域データの周波数成分(12、14、16)を分析して、上記回転軸(24、26、28)とそれに隣接して連結された回転軸(24、26、28)との間のズレを同定するための分析システム(54)と
を備える列。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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