説明

ダイカストマシン

【課題】射出シリンダの作動中に金型スリーブの中心軸と射出シリンダの中心軸との間でズレや角度が生じるのを回避して、金型スリーブ内でプランジャがこじられるなどの不具合が生じるおそれのない減肉・軽量化されたダイカストマシンを提供する。
【解決手段】固定ダイプレート14と、可動ダイプレートと、一対の横架材部38a、38bおよび縦ブロック材部38cとを有し、一対の横架材部38a、38bの他端がそれぞれ固定ダイプレート14の背面に取り付けられたフレーム38と、射出シリンダ34と、固定ダイプレート14に取り付けられた金型スリーブ32とを備えるダイカストマシンにおいて、一対の横架材部38a、38bの曲げ強度を互いに等しく形成することにより上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保圧・冷却時における射出シリンダと金型スリーブとの位置ずれを改善したダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシンは、アルミニウムおよびアルミニウム合金、あるいは、マグネシウムおよびマグネシウム合金など比較的低融点の物質を溶融状態、半凝固状態あるいは凝固状態で金型キャビティ内に射出し、所望の形状のダイカスト製品を得るための装置であり、このようなダイカストマシンは、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1のダイカストマシン1は、図4に示すように、大略、固定ダイプレート2と、可動ダイプレート3と、可動ダイプレート移動・型締装置4と、射出シリンダ5とで構成されており、固定ダイプレート2の表面に取り付けられた固定金型2aと、可動ダイプレート3の表面に取り付けられた可動金型3aとが組み合わされることにより、固定金型2aと可動金型3aとの間に空間、すなわち金型キャビティAが形成される。
【0004】
また、固定ダイプレート2には、射出シリンダ5におけるピストン5aの先端に取り付けられたプランジャ5bが直線往復移動して金型キャビティAに金属溶湯を充填するための内部空間Bを有する筒状の金型スリーブ6が取り付けられている。
【0005】
特許文献1のダイカストマシン1によれば、可動ダイプレート移動・型締装置4が作動して可動ダイプレート3を固定ダイプレート2に向けて前進させることにより、可動金型3aが固定金型2aに接して型閉が行われ、次いで、可動ダイプレート移動・型締装置4からの型締力が可動ダイプレート3を介して可動金型3aに加えられることによって型締めが行われる。
【0006】
続いて、金型スリーブ6に金属溶湯が供給された後、射出シリンダ5が高速・高圧でピストン5aを突き出すことにより、プランジャ5bが高速で金型スリーブ6内を前進して金型スリーブ6内の金属溶湯を金型キャビティA内に射出充填する。
【0007】
射出充填が完了した後、金型キャビティA内の充填金属が凝固するまでの所定時間、保圧・冷却が行われ、然る後、可動ダイプレート移動・型締装置4が先程とは逆向きに作動して型開きが行われ、凝固したダイカスト製品は可動金型3aに付着して移動する。最後に、エジェクト機構7が作動して可動金型3aから凝固したダイカスト製品が突き出される。
【特許文献1】特開2004−174502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した、従来のダイカストマシン1には、図5(a)に示すように、互いに対向して配設された一対の横架材部8a、8bと、当該一対の横架材部8a、8bの一端同士を接続する縦ブロック材部8cとを有するC字状のフレーム8(「Cフレーム」と呼ばれることもある)が固定ダイプレート2の背面(図中の右側面)に取り付けられており、射出シリンダ5は、このフレーム8の縦ブロック材部8cにおいて水平に貫通固定されている。ここで、後述するように、射出シリンダ5は、固定ダイプレート2の中心軸L2よりも下に設けられるため、縦ブロック材部8cが中心軸L2よりも下に偏心して設けられ、その構造上、上側の横架材部8aは、下側の横架材部8bよりも長くなる。
【0009】
一方、縦ブロック材部8cは、射出シリンダ5を確実に固定するためにブロック状に形成されており、縦ブロック材部8cの曲げ強度および引張り強度は、一対の横架材部8a、8bにおける曲げ強度および引張り強度よりも十分に大きくなっている。
【0010】
また、金型スリーブ6は、固定ダイプレート2を図中右側面(つまり、固定ダイプレート2の背面)から図中左側面にかけて、水平、かつ、射出シリンダ5の中心軸L1と同軸に貫設されている。
【0011】
なお、金型スリーブ6の上方に、金属溶湯を金型スリーブ6に供給するための溶湯供給装置9が配置される関係上、金型スリーブ6および射出シリンダ5の中心軸L1は、必ず固定ダイプレート2の中心軸L2よりも下側に設定される(図示例であれば、中心軸L1と中心軸L2との距離はH0に設定されている)ことになり、中心軸L1と中心軸L2とが同じ位置に設定されることは原則的にはない。
【0012】
上述のように、ダイカストマシン1では、射出シリンダ5におけるピストン5aの先端に取り付けられたプランジャ5bが金型スリーブ6内を前進して金属溶湯を高速・高圧で金型キャビティAに押し込む必要があることから、プランジャ5bの外表面と金型スリーブ6の内表面とのクリアランスは、出来る限り小さいことが望ましい。このため、射出シリンダ5の中心軸L1と金型スリーブ6の中心軸L3とは、高い精度で一致していなければならない。
【0013】
このような条件を満足させるためには、固定ダイプレート2やフレーム8の機械的強度を型締力や射出圧力に十分耐えるだけのものにすれば解決するのであるが、そのようにすれば装置重量が過大になり、これに合わせて装置強度や大きさも増大させねばならず、昨今の省資源・軽量化という流れに逆らうことになり、設計思想として採用することが出来ない。
【0014】
そこで、ダイカストマシン1の装置全体、特に固定ダイプレート2やフレーム8の肉を削ぎ落として機械的強度を低くすると、射出シリンダ5の作動中、とりわけプランジャ5bが高圧で溶湯を押し込んだ状態を保持する保圧・冷却時において、射出シリンダ5からの押圧力は、プランジャ5bを介し、固定ダイプレート2の中央部を中心とした図中右方向への応力Fとして固定ダイプレート2に作用し、固定ダイプレート2は、同時に働く型締力と相俟って、図5(b)に示すように、図中右方向へ弓なりに僅かではあるが反った状態になる。
【0015】
このとき、固定ダイプレート2の背面に取り付けられた一対の横架材部8a、8bは、固定ダイプレート2に取り付けられた側の端部とは反対側の端部が開いた「ハ」の字状になろうとするが、上述のように縦ブロック材部8cの曲げ強度および引張り強度は、一対の横架材部8a、8bにおける曲げ強度および引張り強度よりも十分に大きいことから、横架材部8a、8bの一端同士を接続する縦ブロック材部8cはほとんど無視できる程度で伸びるだけであり、逆に、一対の横架材部8a、8bは、肉を落とした関係上、縦ブロック材部8cからの反力による曲げ応力を受けて内向きに撓むことになる。
【0016】
このように、一対の横架材部8a、8bが内向きに撓んだとき、各横架材部8a、8bの長さが異なることから、各横架材部8a、8bの撓み量は互いに異なることになり、縦ブロック材部8cは、固定ダイプレート2側へ僅かに移動するとともに、撓み量が小さい方の横架材部(図示例では、下側の横架材部8b)方向に引っ張られることになる。このため、固定ダイプレート2の中心軸L2(応力Fを受けたときであってもその位置が変化しない)と金型スリーブ6の中心軸L3との距離H1よりも、当該中心軸L2と射出シリンダ5の中心軸L1との距離H2の方が大きくなって金型スリーブの中心軸L3と射出シリンダの中心軸L1とのズレが生じ、加えて、縦ブロック材部8cが傾くことにより、射出シリンダ5の中心軸L1が固定ダイプレート2の中心軸L2に対して平行でなくなり、射出シリンダ5の中心軸L1と金型スリーブ6の中心軸L3との間に角度が生じることになる。
【0017】
このようなズレおよび角度が生じると、金型スリーブ6内でプランジャ5bがこじられて該金型スリーブ6の内面やプランジャ5bの表面が損傷したり、射出シリンダ5のピストン5aが曲がるなどの不具合が生じるおそれがあった。
【0018】
本発明は、このような減肉・軽量化する上での問題に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、射出シリンダの作動中において金型スリーブの中心軸L3と射出シリンダの中心軸L1との間にズレや角度が生じるのを回避して、金型スリーブ内でプランジャがこじられて該金型スリーブの内面やプランジャの表面が損傷したり、射出シリンダのピストンが曲がるなどの不具合が生じるおそれのない減肉・軽量化されたダイカストマシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載した発明は、「固定金型22が取り付けられた固定ダイプレート14と、
可動金型24が取り付けられて、前記固定金型22に対して型開閉および型締めがされる可動ダイプレート16と、
並設された一対の横架材部38a、38b、および前記一対の横架材部38a、38bの一端同士を接続する射出シリンダ34取付用の縦ブロック材部38cを有し、前記一方の横架材部38aの縦ブロック材部38cに対する接続部位38a1が縦ブロック材部38c側に屈曲されていて前記一方の横架材部38aの全長が他方の横架材部38bの全長より長くかつ射出シリンダ34取付部位が他方の横架材部38b側に偏心しており、前記一対の横架材部38a、38bの他端がそれぞれ前記固定ダイプレート14の背面に取り付けられたフレーム38と、
ピストン46および前記ピストン46の先端に取り付けられたプランジャ44を有し、前記フレーム38の前記縦ブロック材部38cにおける前記固定ダイプレート14の中心軸L2から離間して前記偏心した位置において、前記中心軸L2と平行に取り付けられた射出シリンダ34と、
前記固定ダイプレート14に取り付けられ、前記射出シリンダ34の前記プランジャ44が直線往復移動して金型キャビティAに金属溶湯を充填するための内部空間Bを有する筒状の金型スリーブ32とを備えており、
前記一対の横架材部38a、38bの曲げ強度は互いに等しく、かつ、前記縦ブロック材部38cの曲げ強度および引張り強度は、前記一対の横架材部38a、38bの曲げ強度および引張り強度よりも十分に大きく形成されていることを特徴とするダイカストマシン10」である。
【0020】
本発明のダイカストマシン10では、一対の横架材部38a、38bの曲げ強度は互いに等しく形成されている。
【0021】
このため、射出シリンダ34の作動中、とりわけプランジャ44が高圧で溶湯を押し込んだ状態を保持する保圧・冷却時において、図3に示すように、射出シリンダ34の押圧力が固定ダイプレート14の中央部を中心とした図中右方向への応力Fとして固定ダイプレート14に作用して固定ダイプレート14が図中右方向へ弓なりに曲げられた状態になる。
【0022】
このとき、フレーム38を構成する一対の横架材部38a、38bは、ほとんど無視できる程度にしか伸びない縦ブロック材部38cからの反力による曲げ応力を受けて内向きに曲げられるが、一対の横架材部38a、38bの曲げ強度は互いに等しく形成されていることから一対の横架材部38a、38bの曲がり量は互いに等しくなり、縦ブロック材部38cは、一対の横架材部38a、38bのいずれの方向にもほとんど移動することなく、固定ダイプレート14側へ平行移動することになる。
【0023】
縦ブロック材部38cが固定ダイプレート14側へ平行移動すると、固定ダイプレート14の中心軸L2および金型スリーブ32の中心軸L3間の距離H1と、当該中心軸L2および射出シリンダ34の中心軸L1間の距離H2との差はほとんど生じることがなく、かつ、射出シリンダ34の中心軸L1と金型スリーブ32の中心軸L3とが互いに平行な状態を維持することになる。つまり、射出シリンダ34の中心軸L1と金型スリーブ32の中心軸L3との間にズレや角度がほとんど生じなくなる。
【0024】
なお、「一対の横架材部38a、38bの曲げ強度が互いに等しい」とは、一対の横架材部38a、38bの曲げ強度が完全に等しい場合のみならず、保圧・冷却時における縦ブロック材部38cの横架材部38a、38b方向への移動量が射出シリンダ34におけるプランジャ44の表面と金型スリーブ32の内面とのクリアランス程度になる曲げ強度の差が存在する場合までを包含する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、射出シリンダの作動中、とりわけプランジャが高圧で溶湯を押し込んだ状態を保持する保圧・冷却時において、金型スリーブの中心軸と射出シリンダの中心軸との間にズレや角度が生じるのを回避することにより、金型スリーブ内でプランジャがこじられて該金型スリーブの内面やプランジャの表面が損傷したり、射出シリンダのピストンが曲がるなどの不具合が生じるおそれのない減肉・軽量化されたダイカストマシンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係るダイカストマシン10の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、本発明に係るダイカストマシン10は、基台12上に設置された固定ダイプレート14と、固定ダイプレート14に対向して配設された可動ダイプレート16と、可動ダイプレートの型開閉および型締めを行う型締シリンダ18と、型締シリンダ18が取り付けられた型締シリンダ取付盤20と、固定ダイプレート14の表面(図中左側面)に取り付けられた固定金型22と、可動ダイプレート16の表面(図中右側面)に取り付けられ、固定金型22と組み合わされて金型キャビティAを形成する可動金型24と、固定ダイプレート14と型締シリンダ取付盤20との間に架設され、これに沿って可動ダイプレート16が可動金型24とともにスライドする4本のタイバー26と、可動ダイプレート16の背面(図中左側面)に取り付けられ、型開き時に可動金型24からダイカスト製品を突き出すエジェクト機構28と、固定ダイプレート14に装着され、金属溶湯を金型キャビティAに充填するための内部空間Bを有する金型スリーブ32と、射出シリンダ34と、油圧ポンプ36と、固定ダイプレート14の背面(図中右側面)に取り付けられたフレーム38とで構成されている。
【0027】
型締シリンダ18は、直線往復移動するシリンダロッド48を有しており、このシリンダロッド48の先端には、可動ダイプレート16が取り付けられている。型締シリンダ18が作動することにより、可動ダイプレート16は、タイバー26に沿ってスライドし、型開閉および型締めを行うようになっている。
【0028】
エジェクト機構28は、可動ダイプレート16に取り付けられており、エジェクトピン50が可動ダイプレート16を貫通して金型キャビティA内に突出・没入するようになっている。
【0029】
金型スリーブ32は、円筒状の部材であり、固定ダイプレート14の背面側におけるその上面には注湯口40が設けられており、金型スリーブ32の上方には、この注湯口40に金属溶湯を供給する注湯装置42が設置されている。また、金型スリーブ32は、図2に示すように、固定ダイプレート14において水平方向に設けられた金型スリーブ挿設孔64に嵌挿固定されており、この金型スリーブ挿設孔64は、その中心が固定ダイプレート14の中心軸L2から下方向にH0だけ離間した位置において、中心軸L2と平行に設けられている。このため、金型スリーブ挿設孔64に金型スリーブ32を挿設したとき、金型スリーブ32の中心軸L3は、固定ダイプレート14の中心軸L2から下方向にH0だけ離間し、かつ、中心軸L2と平行な状態で固定ダイプレート14に固定されている。
【0030】
射出シリンダ34は、ピストン46を有しており、該ピストン46の先端には、プランジャ44が取り付けられている。このプランジャ44が金型スリーブ32内を直線往復移動して、金型スリーブ32内の金属溶湯を金型キャビティA内に高速充填するようになっている。
【0031】
油圧ポンプ36は、射出シリンダ34のピストン46を駆動するための圧油を供給するための装置であり、油圧ポンプ36の一方端には、ピストン突出側圧油管路52の一端が接続されている。また、ピストン突出側圧油管路52の他端は、射出シリンダ34のピストン突出側圧油室54に接続されている。さらに、油圧ポンプ36の他方端には、ピストン没入側圧油管路56の一端が接続されており、また、ピストン没入側圧油管路56の他端は、射出シリンダ34のピストン没入側圧油室58に接続されている。
【0032】
油圧ポンプ36には、サーボ制御される駆動モータ(図示せず)が接続されており、シーケンスに応じて適当な量および圧力の圧油を射出シリンダ34のピストン突出側圧油室54あるいはピストン没入側圧油管路56に供給して、ピストン46を高速・高圧で突出させ、あるいは没入できるようになっている。
【0033】
フレーム38は、互いに対向して配設された一対の横架材部38a、38bと、一対の横架材部38a、38bの一端同士を接続する縦ブロック材部38cとを有しており、一方(図中上側)の横架材部38aにおける、縦ブロック材部38cに対する接続部位38a1が縦ブロック材部38c側(図中下向き)に屈曲されていて、一方の横架材部38aの全長が他方の横架材部38bの全長より長く、かつ、射出シリンダ34取付部位が他方の横架材部38b側に偏心しており、一対の横架材部38a、38bの他端がそれぞれ固定ダイプレート14の背面に取り付けられている。
【0034】
フレーム38の形状についてさらに詳述すると、フレーム38における一対の横架材部38a、38bは、その断面が略H字状に形成されており、固定ダイプレート14の背面に接続される他端には、それぞれ厚肉部60が形成されている。また、縦ブロック材部38cは、ブロック状に形成されている。つまり、一方の横架材部38a(図中上側の横架材部)は、図中右端において垂れ下がった部分まで(肉厚が急に大きくなる直前部分まで)をいい、他方の横架材部38bは、同様に、図中右端において肉厚が急に大きくなる直前部分までをいう。また、一対の横架材部38a、38bの曲げ強度は互いに等しく形成されており、さらに、上述のように縦ブロック材部38cはブロック状に形成されていることから、その曲げ強度および引張り強度は、一対の横架材部38a、38bの曲げ強度および引張り強度よりも十分に大きい。
【0035】
なお、一対の横架材部38a、38bの曲げ強度が完全に等しい場合に限られず、保圧・冷却時における縦ブロック材部38cの横架材部38a、38b方向への移動量が射出シリンダ34におけるプランジャ44の表面と金型スリーブ32の内面とのクリアランス程度になる曲げ強度の差が存在する場合まで許容される。
【0036】
また、「縦ブロック材部38cの曲げ強度および引張り強度が一対の横架材部38a、38bの曲げ強度および引張り強度よりも十分に大きい」とは、保圧・冷却時において、縦ブロック材部38cに曲げモーメントおよび引張り力が加えられたときに生じる縦ブロック材部38cの伸びや曲がり等の変位量が、上記一対の横架材部38a、38bの曲げ強度の差に基づく縦ブロック材部38cの移動量に影響を与えない程度に小さくなることを意味する。
【0037】
縦ブロック材部38cの略中央部には、射出シリンダ34を挿設するための射出シリンダ挿設孔62が水平方向に設けられており、当該射出シリンダ挿設孔62に射出シリンダ34を挿設したとき、射出シリンダ34は、射出シリンダ34の中心軸L1が固定ダイプレート14の中心軸L2から下方向に離間し(このときの中心軸L1と中心軸L2との距離をH0とする)、中心軸L2と平行な状態でフレーム38に確実に固定される。このため、射出シリンダ34の中心軸L1と金型スリーブ32の中心軸L3とが一致することになる。
【0038】
次に、本実施例に係るダイカストマシン10の動作について説明する。まず、型締シリンダ18を作動させ、可動金型24の表面が固定金型22の表面に当接するまで、可動ダイプレート16を固定ダイプレート14に向けて移動させて型閉を行い、さらに所定の圧力で可動金型24を固定金型22に押圧することにより型締めを行う。
【0039】
続いて、注湯装置42を用いて、金属溶湯を注湯口40から金型スリーブ32の内部空間Bに供給する。その後、油圧ポンプ36を作動させ、ピストン突出側圧油管路52を通じて射出シリンダ34のピストン突出側圧油室54に圧油を供給し、ピストン46を突出させる。
【0040】
圧油によってピストン46が高速・高圧で突出されると、該ピストン46の先端に取り付けられたプランジャ44は、高速で金型スリーブ32の内部空間Bを前進し、金型スリーブ32内の金属溶湯は金型キャビティA内に射出充填される。
【0041】
射出充填が完了した後、保圧・冷却工程が行われるが、このとき、ピストン46からの押圧力が、プランジャ44を介し、所定の時間継続して充填金属に加えられる。
【0042】
この保圧・冷却工程において、ピストン46のからの押圧力は、図3に示すように、固定ダイプレート14の中央部を中心とする図3中右方向への応力Fとして固定ダイプレート14に作用することから、固定ダイプレート14は、図中右方向へ弓なりに曲げられた状態に変形する。
【0043】
このとき、フレーム38を構成する一対の横架材部38a、38bは、ほとんど無視できる程度にしか伸びない縦ブロック材部38cからの反力による曲げ応力を受けて内向きに曲げられるが、一対の横架材部38a、38bの曲げ強度は互いに等しく形成されていることから一対の横架材部38a、38bの曲がり量は互いに等しくなり、縦ブロック材部38cは、一対の横架材部38a、38bのいずれの方向にも移動することなく、固定ダイプレート14側へ平行移動することになる。
【0044】
縦ブロック材部38cが固定ダイプレート14側へ平行移動する場合、固定ダイプレート14の中心軸L2および金型スリーブ32の中心軸L3間の距離H1と、当該中心軸L2および射出シリンダ34の中心軸L1間の距離H2との差はほとんど生じることがなく、かつ、射出シリンダ34の中心軸L1と金型スリーブ32の中心軸L3とが互いに平行な状態を維持することになる。つまり、射出シリンダ34の中心軸L1と金型スリーブ32の中心軸L3との間にズレや角度がほとんど生じなくなる。
【0045】
これにより、射出シリンダ34の作動中、とりわけプランジャ44が高圧で金属溶湯を押し込んだ状態を保持する保圧・冷却時において、金型スリーブ32の中心軸L3と射出シリンダの中心軸L1との間でズレや角度が生じるのを回避して、金型スリーブ32内でプランジャ44がこじられて該金型スリーブ32の内面やプランジャ44の表面が損傷したり、射出シリンダ34のピストン46が曲がるなどの不具合が生じるおそれのない減肉・軽量化されたダイカストマシン10を提供することができる。
【0046】
なお、上記実施例では、可動ダイプレート16が水平方向に往復移動し、射出シリンダ34および金型スリーブ32を水平方向に配設した横型のダイカストマシン10を例にして説明したが、本発明はこのようなダイカストマシンに限られず、可動ダイプレートが上下方向に往復移動し、射出シリンダおよび金型スリーブを垂直方向に配設した縦型のダイカストマシンにも当然に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本件発明にかかるダイカストマシンの概念図である。
【図2】本件発明にかかるダイカストマシンの固定ダイプレートおよびフレーム周辺を拡大した図である。
【図3】保圧・冷却時における、固定ダイプレートおよびフレーム周辺の変形状態を示す図である。
【図4】従来のダイカストマシンの概念図である。
【図5】従来のダイカストマシンにおける、非動作時(a)および保圧・冷却時(b)の固定ダイプレートおよびフレーム周辺の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10…ダイカストマシン
12…基台
14…固定ダイプレート
16…可動ダイプレート
18…型締シリンダ
20…型締シリンダ取付盤
22…固定金型
24…可動金型
26…タイバー
28…エジェクト機構
32…金型スリーブ
34…射出シリンダ
36…油圧ポンプ
38…フレーム
38a、38b…横架材部
38c…縦ブロック材部
40…注湯口
42…注湯装置
44…プランジャ
46…ピストン
48…シリンダロッド
50…エジェクトピン
52…ピストン突出側圧油管路
54…ピストン突出側圧油室
56…ピストン没入側圧油管路
58…ピストン没入側圧油室
60…厚肉部
62…射出シリンダ挿設孔
64…金型スリーブ挿設孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型が取り付けられた固定ダイプレートと、
可動金型が取り付けられて、前記固定金型に対して型開閉および型締めがされる可動ダイプレートと、
並設された一対の横架材部、および前記一対の横架材部の一端同士を接続する射出シリンダ取付用の縦ブロック材部を有し、前記一方の横架材部の縦ブロック材部に対する接続部位が縦ブロック材部側に屈曲されていて前記一方の横架材部の全長が他方の横架材部の全長より長くかつ射出シリンダ取付部位が他方の横架材部側に偏心しており、前記一対の横架材部の他端がそれぞれ前記固定ダイプレートの背面に取り付けられたフレームと、
ピストンおよび前記ピストンの先端に取り付けられたプランジャを有し、前記フレームの前記縦ブロック材部における前記固定ダイプレートの中心軸から離間して前記偏心した位置において、前記中心軸と平行に取り付けられた射出シリンダと、
前記固定ダイプレートに取り付けられ、前記射出シリンダの前記プランジャが直線往復移動して金型キャビティに金属溶湯を充填するための内部空間を有する筒状の金型スリーブとを備えており、
前記一対の横架材部の曲げ強度は互いに等しく形成されていることを特徴とするダイカストマシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−82629(P2010−82629A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251298(P2008−251298)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)