説明

ダイカスト金型用離型剤スプレー装置

【課題】離型剤とエアとを均一に混合すると共に、十分な量の離型剤を安定して供給できるダイカスト金型用離型剤スプレー装置を提供する。
【解決手段】混合管路3の流路面積(直径D)を第1エア供給管路21の流路面積(直径D)よりも大きくし、且つ、第1離型剤供給管路11を、混合管路3の第1エア供給管路21との接続部付近(P部)に開口させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト用金型に離型剤を塗布するための離型剤スプレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストに使用される金型の表面には、成形品の離型を促すために成形に先立って離型剤が塗布される。このように離型剤を塗布するためのスプレー装置として、例えば特許文献1には、離型剤供給管路とエア供給管路とを合流させ、離型剤とエアとの混合気体をノズルから吐出するものが示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−294745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、単に離型剤供給管路とエア供給管路とを合流させるだけでは、離型剤とエアとを均一に混合することが困難である。特に、金型形状が複雑な場合、金型の奥まった所に離型剤を塗布するには高圧で離型剤を吐出する必要があるが、このように吐出圧力が高まると離型剤とエアとが不均一になる恐れが高い。また、離型剤は、ポンプ等の圧力により離型剤供給管路を介して供給されるが、ポンプの圧力が離型剤供給管路の先端部まで伝わらないと十分な量の離型剤が供給されない恐れがある。
【0005】
本発明の課題は、離型剤とエアとを均一に混合すると共に、十分な量の離型剤を安定して供給できるダイカスト金型用離型剤スプレー装置(以下、スプレー装置と言う。)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、第1離型剤供給管路と、第1エア供給管路と、第1離型剤供給管路及び第1エア供給管路と連通した混合管路とを有し、第1離型剤供給管路から供給された離型剤と第1エア供給管路から供給されたエアとを混合管路で混合して外部に吐出する離型剤スプレー装置であって、混合管路の流路面積が第1エア供給管路の流路面積よりも大きく、且つ、混合管路のうち、第1エア供給管路との接続部付近に第1離型剤供給管路を開口させたスプレー装置を提供する。
【0007】
本発明者らの試行錯誤により、上記のように、混合管路の流路面積を第1エア供給管路の流路面積よりも大きくし、且つ、混合管路のうち、第1エア供給管路との接続部付近に第1離型剤供給管路を開口させることで、離型剤とエアとを均一に混合できることが明らかとなった。このメカニズムははっきりと解明されてはいないが、およそ以下のように推定される。すなわち、第1エア供給管路から供給されたエアが混合管路に達すると、流路面積の拡大によりエアの圧力が急激に低下し、混合管路のうち第1エア供給管路との接続部付近ではエアが負圧の状態となる。この負圧領域に第1離型剤供給管路を開口させることで、第1離型剤供給管路から供給された離型剤が混合管路側に引き込まれ、十分な量の離型剤が混合管路内に供給されると共に、離型剤とエアとが均一に混合される。
【0008】
このスプレー装置に、第1離型剤供給管路に連通する第2離型剤供給管路及び第2エア供給管路を設け、第2離型剤供給管路から供給された離型剤と第2エア供給管路から供給されたエアとを混合して第1離型剤供給管路に供給してもよい。このように、第2エア供給管路及び第1エア供給管路のエアを離型剤に供給することで、離型剤とエアとが2段階に分けて混合されるため、これらをより均一に混合することができる。また、このように2段階に分けてエアを供給することにより、より多くのエアを離型剤に供給することができるため、離型剤の吐出圧力を高めることができ、これにより複雑な形状の金型の奥まった所にも確実に離型剤を塗布することができる。
【0009】
また、第1離型剤供給経路を開閉する開閉手段を設ければ、離型剤を塗布するための離型剤の噴射と、塗布した離型剤を広げたり乾かしたりするためのエアの噴射とを、同一装置で行うことができる。すなわち、第1離型剤供給経路を開放すれば、第1離型剤供給管路の離型剤を第1エア供給管路のエアと混合して噴射することができる。一方、第1離型剤供給経路を閉塞すれば、第1離型剤供給管路の離型剤の供給が停止され、第1エア供給管路のエアのみが混合管路を介して噴射される。この開閉手段を、第2エア供給経路から供給されたエアの圧力で開閉可能とすれば、別途の手段を要することなく開閉を行うことができるため、装置の簡略化及び低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明のスプレー装置によれば、離型剤とエアとを均一に混合することができると共に、十分な量の離型剤を安定して供給することができるため、複雑な形状の金型の奥まった場所にも離型剤を確実に塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1に示すスプレー装置1は、ダイカスト金型の表面に離型剤を塗布するために使用されるものであり、特に、車のエンジンのシリンダブロック等の複雑な形状の部品を成形するための金型に離型剤を塗布する場合に好適に用いられるものである。このスプレー装置1は、第1離型剤供給管路11と、第2離型剤供給管路12と、第1エア供給管路21と、第2エア供給管路22と、混合管路3と、開閉手段としての開閉弁機構4と、ノズル5とを有する。尚、以下の説明において、「上下方向」あるいは「左右方向」とは便宜上使用するものであり、装置の使用態様を限定する趣旨ではない。
【0013】
第1離型剤供給管路11及び第1エア供給管路21は、共に混合管路3に連通している。図示例では、第1エア供給管路21と混合管路3とが直線状に並べて配されている。詳しくは、混合管路3の端部のうち、上側に偏った位置に第1エア供給管路21が接続し、さらに詳しくは、混合管路3の端部の上端位置と第1エア供給管路21の端部の上端位置とを合わせた状態で接続される。図3に示すように、混合管路3の直径Dは第1エア供給管路21の直径Dよりも大きくなるように設定され(D>D)、すなわち、混合管路3の流路面積は第1エア供給管路21の流路面積よりも大きく設定される。
【0014】
第1離型剤供給管路11は、混合管路3のうち、第1エア供給管路21との接続部付近に開口する。図示例では、第1離型剤供給管路11は混合管路3と直交し、混合管路3の第1エア供給管路21側の端部に下方から接続している。
【0015】
第2離型剤供給管路12及び第2エア供給管路22は、共に中間空間6を介して第1離型剤供給管路11に連通している。中間空間6は円柱状の空間であり、その上面部に第1離型剤供給管路11の下端部が開口すると共に、側面部に第2離型剤供給管路12及び第2エア供給管路22が開口する。
【0016】
開閉弁機構4は、中間空間6の内部に配され、第1離型剤供給管路11の下端開口部を開閉可能なピン41と、ピン41が固定され、中間空間6内を上下方向にスライド可能なピストン42と、ピストン42に上向きの力を付与するスプリング43とを有する。ピン41は第1離型剤供給管路11の内径よりも大径に形成され、上端部に先細りのテーパ部41aを有する。このテーパ部41aを第1離型剤供給管路11の下端開口部に嵌合させることにより、第1離型剤供給管路11を閉塞することができる(図1参照)。具体的には、スプリング43の弾性力によりピストン42及びピン41を上方に押し上げ、ピン41を第1離型剤供給管路11の開口部に嵌合させることにより、開閉弁機構4を閉塞することができる。
【0017】
次に、図2を用いて、スプレー装置1による離型剤の吐出方法を説明する。まず、第2エア供給管路22から中間空間6に圧縮エアを供給する。この圧縮エアにより中間空間6内の圧力が高まり、開閉弁機構4のピストン42がスプリング43の弾性力に反して押し下げられる。これにより、ピン41が下降してテーパ部41aが第1離型剤供給管路11の下端開口部から離隔し、第1離型剤供給管路11が開放状態となる。これと同時に、第2離型剤供給管路12から中間空間6に離型剤を供給することにより、この離型剤と第2エア供給管路22から供給された圧縮エアとが混合され、この混合気体が第1離型剤供給管路11に供給される。
【0018】
本実施形態では、第2離型剤供給管路12に離型剤の供給圧が常時加えられている。開閉弁機構4で第1離型剤供給管路11を閉塞したとき、すなわち第2エア供給管路22による圧縮エアの供給を停止したとき(図1参照)は、中間空間6に第2離型剤供給管路12から供給された離型剤が満たされて中間空間6の圧力が高められ、この圧力が第2離型剤離型剤の離型剤供給圧と相殺し、これにより離型剤の供給が停止する。一方、開閉弁機構4を開放すると、すなわち第2エア供給管路22からエアを供給して第1離型剤供給管路11と中間空間6とを連通すると(図2参照)、第2離型剤供給管路12に加えられた供給圧により中間空間6に離型剤が供給される。こうして中間空間6に供給された離型剤と圧縮エアとが混合され、このエア混合離型剤が第1離型剤供給管路11を介して混合管路3に供給される。
【0019】
こうして開閉弁機構4を開放すると同時に、第1エア供給管路21から混合管路3へ圧縮エアを供給することにより、第1離型剤供給管路11から供給されたエア混合離型剤がさらにエアと混合され、ノズル5から吐出される。このとき、混合管路3の流路面積が第1エア供給管路21の流路面積よりも大きいため、第1エア供給管路21と混合管路3との接続部を通過する圧縮エアに流路面積の拡大に伴う負圧が発生する。この負圧発生箇所(すなわち、混合管路3の第1エア供給管路21側端部付近、図3の散点領域P参照)に第1離型剤供給管路11を開口させることにより、エアと離型剤をより均一に混合することができる。また、第1エア供給管路21と混合管路3とを直線状に並べ、この混合管路3に第1離型剤供給管路11を開口させることで、第1エア供給管路21から供給された圧縮エアが混合管路3を通過する際に、第1離型剤供給管路11の混合気体を混合管路3側に引き込むことができるため、十分な量の離型剤を混合管路3に供給することができる。また、上記のように2段階に分けて離型剤にエアを供給することにより、離型剤とエアとを均一に混合することができると共に、より多くのエアを離型剤に供給して離型剤の吐出圧力を高めることができるため、金型の奥まった所にも確実に離型剤を塗布することができる。
【0020】
次に、図3を用いて、上記のスプレー装置1で圧縮エアを吐出する方法を説明する。まず、第2エア供給管路22からの圧縮エアの供給を停止する。これにより、開閉弁機構4のピストン42及びピン41がスプリング43の弾性力で上方に持ち上げられ、ピン41のテーパ部41aで第1離型剤供給管路11の下端開口部を閉塞する。こうして混合管路3へ離型剤を供給するための経路が遮断した後、第1エア供給管路21から圧縮エアを供給し、混合管路3及びノズル5を介して外部に圧縮エアを吐出する。
【0021】
上記のスプレー装置1では、一つのノズル5から離型剤の噴射及びエアの噴射を行うことができるため、設備を簡略化することができる。また、上記のように第2離型剤供給管路12に常時供給圧を加える構成とすることにより、第1エア供給管路21及び第2エア供給管路22の圧縮エア供給操作だけで、容易に離型剤の噴射とエアの噴射とを切り替えることができる。尚、これに限らず、例えば離型剤の供給が必要なときのみに離型剤供給管路に供給圧を加える構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】スプレー装置の断面図である。
【図2】スプレー装置の断面図(離型剤吐出時)である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】スプレー装置の断面図(エア吐出時)である。
【符号の説明】
【0023】
1 ダイカスト金型用離型剤スプレー装置
11 第1離型剤供給管路
12 第2離型剤供給管路
21 第1エア供給管路
22 第2エア供給管路
3 混合管路
4 開閉弁機構
41 ピン
41a テーパ部
42 ピストン
43 スプリング
5 ノズル
6 中間空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1離型剤供給管路と、第1エア供給管路と、第1離型剤供給管路及び第1エア供給管路と連通した混合管路とを有し、第1離型剤供給管路から供給された離型剤と第1エア供給管路から供給されたエアとを混合管路で混合して外部に吐出するダイカスト金型用離型剤スプレー装置であって、
混合管路の流路面積を第1エア供給管路の流路面積よりも大きくし、且つ、混合管路のうち、第1エア供給管路との接続部付近に第1離型剤供給管路を開口させたダイカスト金型用離型剤スプレー装置。
【請求項2】
第1離型剤供給管路に連通する第2離型剤供給管路及び第2エア供給管路を設け、第2離型剤供給管路から供給された離型剤と第2エア供給管路から供給されたエアとを混合して第1離型剤供給管路に供給する請求項1記載のダイカスト金型用離型剤スプレー装置。
【請求項3】
第1離型剤供給管路を開閉する開閉手段を設け、この開閉手段を第2エア供給経路から供給されたエアの圧力で開閉可能とした請求項2記載のダイカスト金型用離型剤スプレー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−297733(P2009−297733A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152818(P2008−152818)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】