説明

ダイバーシチ受信回路及び無線装置

【課題】複数のアンテナを備える端末から構成される協調伝送環境において、高速伝送、かつ、高品質な無線伝送を可能にするダイバーシチ受信回路を提供する。
【解決手段】データストリームが多重化された信号を受信して各ストリームの信号を分離検出する信号検出手段と、データストリームからチャネルの尤度情報を抽出する尤度抽出手段と、分離した複数のデータストリームのそれぞれに対して尤度抽出手段によって検出された重み付け量を乗算する乗算手段と、乗算手段から出力される重み付け信号を受信信号の属性に応じて出力先を切り替える切替手段と、切替手段の出力信号を記憶する記憶手段と、切替手段から別途出力される受信信号の属性と異なる出力信号と記憶手段に記憶された信号の累積加算演算を行った信号を出力する累積加算手段と、累積加算手段から出力される信号を復調して出力信号を得る信号復調手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル無線通信システムにおいて無線信号の受信を行う復調回路に関し、特に、複数の信号間でのダイバーシチ受信を可能にするダイバーシチ受信回路とこのダイバーシチ受信回路を備えた無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の端末がお互いにパートナーとして協力をして通信を行なう協調伝送が知られている。図8にL−1個の中継局を用いて協調伝送を行う動作を示す。図8に示すように、ある送信局が他局からのデータを転送したり、あるいはこの逆経路の通信が行なわれる。また、自局からの送信を行なわずに中継だけを行なう場合もある。図9に、L−1個の中継局が協調伝送を行う場合に適用されるリソース活用の一例を示す。図9は、図8に示すNW構成おいて、適用する時間と周波数を用いて棲み分けを行なう場合を示している。送信局から送信されたデータは中継局を経由して目的の端末に送信が行われる。一度、送信されたパケットは、衝突を回避しながら、時間と周波数のリソースを利用して、順次、中継局から目的局に送信される。この協調伝送においてはL個の送信区間を用いてパケットが割り当てられて、順次送信が行われる。このような協調伝送においては、柔軟に通信経路を設定可能であり、従来の協調伝送は、シングルアンテナを用いるような特に簡易な端末を用いた検討がなされている。
【0003】
一方、復調器の受信特性を向上させる手法にダイバーシチ技術がある。ダイバーシチ受信は、異なる局から到来する複数の信号を合成する、あるいは1つの局から送信された信号を複数の局で受信することで受信レベルの向上を実現して無線伝送品質の改善を図る技術である。端末がシングルアンテナを用いる場合の協調伝送に適用されるダイバーシチ技術を図10に示す。また、この従来技術による受信回路の構成を図11に示す。この図10及び図11では、図8に示された協調伝送の形態の中で、中継局が1個の協調伝送に適用した構成例を示している。図10に示すように、従来技術では、順次、各局のシングルアンテナ端末から送信されてくる無線信号を、目的局で時間的に記憶して、前後のパケットをダイバーシチ受信手法である最大比合成を用いて特性を向上させている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ここで、図11に示す受信回路の動作を説明する。アンテナで受信した受信信号S101は出力切替回路101へ入力される。最初に到来した受信信号S102は信号記憶回路102に入力が行われる。一方、次に到来した受信信号S103は、出力切替回路101から出力されて、信号記憶回路102から出力される記憶回路出力信号S104と共に最大比合成回路103へ入力される。最大比合成回路103は、2つの信号をダイバーシチ合成後に信号S105として出力し、この信号S105は復調回路104へ入力される。復調回路104は、信号復調が行われ、出力信号S106が出力される。このように、図11に示す従来のダイバーシチ合成受信回路は、シングルアンテナの複数の送信端末から受信した信号を最大比合成して復調を行う。
【非特許文献1】福山他、”協力通信における誤り検出符合の結果に基づき軟判定シンボルを送信する中継方法”、信学技報Vol.106、No.119、RCS2006−45、p59−64
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、現在の無線システムにおいては、伝送速度の向上及び誤り率特性の向上のために複数のアンテナから送信される複数のデータストリームを用いて送受信が行なわれている。協調伝送においても、伝送速度の高速化のために、複数のデータストリームを用いて信号のやり取りが行われる場合がある。このとき、受信機には複数のデータストリームが空間上で重ね合わされて受信が行われるため、従来の協調伝送に対応した1つの送信アンテナから送信される1つのデータストリームの信号をやり取りする協調伝送に適用する、従来の最大比合成を行うダイバーシチ合成受信回路では信号の復調が出来ないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複数のアンテナを備える端末から構成される協調伝送環境において、高速伝送、かつ、高品質な無線伝送を可能にするダイバーシチ受信回路及び無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、データストリームが多重化された信号を受信して各ストリームの信号を分離検出する信号検出手段と、前記データストリームからチャネルの尤度情報を抽出する尤度抽出手段と、分離した複数の前記データストリームのそれぞれに対して前記尤度抽出手段によって検出された重み付け量を乗算する乗算手段と、前記乗算手段から出力される重み付け信号を受信信号の属性に応じて出力先を切り替える切替手段と、前記切替手段の出力信号を記憶する記憶手段と、前記切替手段から別途出力される前記受信信号の属性と異なる出力信号と前記記憶手段に記憶された信号の累積加算演算を行った信号を出力する累積加算手段と、前記累積加算手段から出力される信号を復調して出力信号を得る信号復調手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明は、データストリームが多重化された信号を受信して各ストリームの信号を分離検出する信号検出手段と、分離した複数の前記データストリームのそれぞれから検出されたシンボルからビット情報に変換を行なう変換手段と、前記データストリームからチャネルの尤度情報を抽出する尤度抽出手段と、前記変換手段から出力される各ビット情報に対して前記尤度抽出手段によって検出された重み付け量を乗算する乗算手段と、前記乗算手段から出力される重み付け信号を受信信号の属性に応じて出力先を切り替える切替手段と、前記切替手段の出力信号を記憶する記憶手段と、前記切替手段から別途出力される前記受信信号の属性と異なる出力信号と前記記憶手段に記憶された信号の累積加算演算を行った信号を出力する累積加算手段と、前記累積加算手段から出力される信号を復調して出力信号を得る信号復調手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記累積加算手段から出力される信号を軟判定して、前記信号復調手段へ出力する軟判定手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記乗算手段から出力される重み付け信号を軟判定して、前記切替手段へ出力する軟判定手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記のダイバーシチ受信回路を備えた無線装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるダイバーシチ受信回路を用いることで、複数のアンテナを備える端末から構成される協調伝送環境において、高速伝送、かつ、高品質な無線伝送を可能にすることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態によるダイバーシチ受信回路及び無線装置を図面を参照して説明する。本発明によるダイバーシチ受信回路を備えた無線装置は、従来方式と異なり、複数のアンテナを備える端末から構成される協調伝送においても、無線回線の高速伝送を実現し、高品質な無線回線を実現するために複数のデータストリームの適用を可能にし、かつ、高品質なダイバーシチ合成受信が可能なことを特徴とする。本発明が適用可能な協調伝送としては、図8のモデルも可能である。従来のダイバーシチ合成受信回路で検討されていた場合では、送信局、中継局、目的局とも、単一のアンテナを備える場合について検討されていた。本発明では、これら全ての端末が複数のアンテナを備えて、複数のデータストリームを送信する場合においても適用が可能であり、高速な伝送速度と高品質なデータ伝送を実現する。
【0014】
本発明によるダイバーシチ受信回路は、まず、複数データストリームの信号分離を行なう。この信号検出で得られた判定信号ベクトルに対して、各データストリームから得られた尤度情報である重み付け量を乗算する。この各データストリームは、各送信区間で異なる送信局(中継局)からの信号となる。各中継局は図8に示したように異なる位置に配置されているため、各送信局から目的局に到来する無線回線のMIMOチャネル行列の独立性が高まる可能性が高い。本発明では、この独立性が高まったMIMOチャネル行列からダイバーシチ効果を抽出している。
【0015】
この重み付け量を導出する尤度を抽出する検出方法には、MIMOチャネルの伝達関数を推定するチャネル推定回路からの情報を活用することが考えられる。また、最尤推定検出(以下、MLDと称する)を用いた場合には、MLDの演算自体の情報から尤度を抽出する検出方法も適用が可能である。
【0016】
各ストリーム毎にMIMOチャネル行列から得られた重み付けを乗算された信号は、次の信号を受信するまで復調器で記憶し、保持される。次の受信信号は、異なる送信局から送信されており、異なるMIMOチャネル行列の影響を受けているために、この信号に対しても同様に重み付け操作を行う。そして、記憶されている重み付け後の信号と、現時点で受信した重み付け後の信号の加算を行なうことで、各送信局からのMIMOチャネル行列の影響を反映した重み付けダイバーシチ合成が可能となる。この加算結果は累積され、復調器での受信が終了するまで加算が繰り返され、ダイバーシチ効果が高められる。合成された信号に対しては、信号復調が行なわれ各ストリームの復調信号が得られる。
【0017】
また、本発明に適用する重み付け量には、以下の尤度も適用可能である。SNRに比例した重み付け量、あるいは、信号検出にMLDを用いた場合には、このMLDでの各判定信号ベクトルの検出の際に、第二推定候補と判定信号ベクトルの差分ベクトルAと、第一推定候補と判定信号ベクトルの差分ベクトルBの両者の差であるA−Bを重み付けに適用することも可能である。さらに、両者の重み付け量の乗算結果を用いることも可能であり、上述した各重み付け量のルート値等を用いて重み付けを行なうこと、及びその組み合わせを用いて重み付けを行なうことも可能である。
【0018】
さらに、送信信号に誤り訂正符号化を用いて、復調側で誤り訂正復号を用いる場合には、軟判定との組み合わせも効果的である。この場合には、MLDで検出された判定信号ベクトルからビット信号に変換し、このビット変換信号に対して重み付けを行なう。重み付けがなされたビット信号は、各送信信号、あるいは、1つの信号区間、または、パケット毎に記憶がなされる。次の送信区間から、送信されてくるパケット信号から得られたビット信号と加算合成がなされ、この加算された合成信号に対して信号復調の演算がなされる。また、合成信号に対して、軟判定を行うことも当然可能である。
【0019】
また、本発明では、無線LAN等で一般的に適用されているパケット毎の通信にも適用可能である。後述する実施の形態の動作をパケット毎に運用することで実現が可能となる。さらには、ビット信号記憶回路がパケット長毎に対応することで、パケット毎でのダイバーシチ合成も可能となる。
【0020】
また、後述する実施の形態に示される情報累積加算回路において、複数のL送信区間で送信されるパケット信号の加算を行なうことで、パケット信号に対するダイバーシチ合成を実現することが可能である。また、上記の信号復調には、軟判定処理を行なって、誤り訂正復号を行なう場合も考えられる。また、上記の信号合成を軟判定後のビット信号に対して行なう場合も可能である。また、合成信号に対して、軟判定を行うことも当然可能である。
【0021】
また、信号検出回路には、上記のMLDの他に、ZF(Zero-forcing)法、MMSE(Minimum mean square estimation)法等の線形信号検出方式も適用が可能である。また、BLAST方式等の非線形信号検出も適用が可能である。MLDに適用する場合には、最尤信号検出の演算量を抑える演算量削減手法が適用が可能である。また、信号検出回路には、MLDを適用した場合には、各端末のアンテナ数が1の場合である、各データストリームが1つの場合の信号も復調可能であり、協調伝送でやり取りされるストリーム数に依存しないダイバーシチ合成受信が可能である。
【0022】
また、本発明が適用可能な信号送信の形態としては、図1に示す様に各局が複数アンテナを備える送受信システムにおいて、受信局を複数の位置に配置して受信を行なう場合にも適用が可能である。この場合には、重み付け信号を時間的に蓄積する必要は無く、協調伝送用の回路の信号記憶回路の動作を停止させ、各ブランチで重み付けした後に、ダイバーシチ合成を実現することが可能である。このように本発明は協調伝送のみならず、他の形態の送受信方法にも適用が可能である。
【0023】
また、前述の説明では、各受信信号の送信方法がシングルキャリアの場合について説明したが、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を用いた場合への適用も可能である。OFDMでは受信機のFFT演算後では、信号処理は、サブキャリア毎に行なうことが可能であるため、このサブキャリア毎の演算に本発明を適用することが可能である。
【0024】
また、シングルキャリア方式の送信側でGIを付加して送信を行ない、受信側で周波数等化処理を行なう送信方法に関しても、受信側での処理はOFDMと同様にFFT演算後に行なわれるために、本発明の適用が可能である。あるいは、変調方式ではなく、符号化の1手法としてSTBC符号化が上記の送信方法と併用して適用される場合もあるが、本発明の適用が可能である。
【0025】
また、上記の軟判定回路を適用する場合においては、誤り訂正符号化/復号の方法には、畳み込み符号化/ビタビ復号、あるいは、ターボ符号化/復号化等が考えられ、軟判定回路から得られる情報を用いる方式であれば適用が可能である。軟判定情報には、ビット信号の尤度を判定する軟判定方法の適用も可能である。また、軟判定回路には、LLR情報を検出する軟判定方法の適用も可能である。
【0026】
また、協調伝送の一例として示した図9では、時間と周波数で信号の衝突を回避する手法を示したが、この他にも、同一周波数を用いた場合で、時間的に送信タイミングをずらして直交性を用いる、拡散符号の直交性を用いる、空間的な直交性を用いる、その他、時空間ブロック符号化(STBC)等の送信符号の直交性を用いる場合など、様々に属性を変えた形態が想定されるが、これらは全てダイバーシチのブランチと考えることが可能であり、本発明の適用が可能である。
【0027】
また、本発明の高速伝送や、高品質伝送を実現する特長を生かして、本発明を用いた協調伝送では、目的局までに複数のルートを用いて無線回線における遮蔽物や端末局の移動に伴って発生する、無線回線断や伝搬環境の劣化の程度を大幅に抑えることが可能となる。また、1対1の無線回線では無いために各端末の柔軟な配置が可能となり、本発明の高品質な特長を生かした無線ネットワークの信頼性の向上も期待できる。また、高速伝送の特長を生かした各局で中継を実現できることから、高い受信レベルでの通信を継続することが可能になり、高速な伝送速度のエリアを拡大することが可能になるという効果も得られる。
【0028】
<第1の実施形態>
次に、図2を参照して、具体的な回路構成を挙げて本発明によるダイバーシチ受信回路の動作を説明する。図2は第1の実施形態の回路構成を示すブロック図である。
【0029】
受信信号S601は信号検出回路601に入力され、信号検出回路601は、多重化された信号から信号の分離検出を行ない、分離後のデータストリーム信号S602を得る。一方、受信信号S601は尤度抽出回路603にも入力され、尤度抽出回路603は、入力された受信信号の受信品質を反映した尤度情報S604を検出する。乗算回路604は、データストリーム信号S602に対して、尤度情報S604を用いた重み付け処理を行い受信した信号に受信状態を反映させる。
【0030】
重み付け信号S607は、出力切替回路606に入力され、出力切替回路606は、受信順番、あるいは、周波数等の受信信号の属性状態に応じて出力先を切り替える。例えば、時間的に早い信号は、後で合成するために出力信号S605として信号記憶回路607に入力される。一方、属性が時間の場合には、遅く到来した信号は出力信号S609として出力される。また、属性が周波数の場合には、ある周波数で到来した信号と異なる周波数で到来した信号のダイバーシチ合成が可能なように出力を切り替える操作を行なう。さらに、属性が場所である場合でも同様であり、ある場所で到来した信号と異なる場所で到来した信号のダイバーシチ合成が可能なように出力を切り替える操作を行なう。
【0031】
情報加算累積回路608は、記憶回路出力信号S608と出力信号S609の加算によるダイバーシチ合成を行なう。この加算結果は、2つの信号の合成の場合には、すぐに出力信号S610として信号復調回路609に入力される。一方、さらに複数の信号を合成する場合には、情報加算累積回路608で、累積加算処理を行い、ダイバーシチ合成を行なうべき信号数に応じて、信号復調回路609に入力される。最後に信号復調回路609は、信号の復調を行い、各ストリームの出力信号S611を得る。この信号復調回路609は、送信側の変調方式、符号化に応じた信号復調が行なわれる。具体的には、信号判定法、あるいは、ビタビアルゴリズム等の復号法、ターボ復号に代表される復調方法が適用可能である。
【0032】
このように、データストリームが多重化された信号に対して、時間や周波数等のリソースに応じた受信信号の属性と、異なる位置から送信された受信信号に対してダイバーシチ合成を行なうことで、高速な伝送速度と高品質な信号復調が可能となる。
【0033】
<第2の実施形態>
次に、図3を参照して、図2に示す回路構成の変形例の動作を説明する。図3は第2の実施形態の回路構成を示すブロック図である。図3に示す回路構成が、図2に示す回路構成と異なる点は、信号検出回路701と乗算回路704の間にシンボル/ビット変換回路702を新たに設けた点である。
【0034】
受信信号S701は信号検出回路701に入力され、信号検出回路701は、多重化された信号から信号の分離検出を行ない、分離後のデータストリーム信号S702を得る。シンボル/ビット変換回路702は、信号分離したデータストリーム信号S702のシンボル信号をビット信号に変換する。具体的には、1つのシンボル信号から複数のビット信号S703を出力する。一方、受信信号S701は尤度抽出回路703にも入力され、尤度抽出回路703は、入力された受信信号の受信品質を反映した尤度情報S704を検出する。乗算回路704はビット信号S703に対して、尤度情報S704を用いた重み付け処理を行い、受信した信号に受信状態を反映させる。
【0035】
重み付け信号S707は、出力切替回路706に入力され、出力切替回路706は、受信順番、あるいは、周波数等の受信信号の属性状態に応じて出力先を切り替える。例えば、時間的に早い信号は、後で合成するために出力信号S705として信号記憶回路707に入力される。一方、属性が時間の場合には、遅く到来した信号は出力信号S709として出力される。また、属性が周波数の場合には、ある周波数で到来した信号と異なる周波数で到来した信号のダイバーシチ合成が可能なように出力を切り替える操作を行なう。さらに、属性が場所である場合でも同様であり、ある場所で到来した信号と異なる場所で到来した信号のダイバーシチ合成が可能なように出力を切り替える操作を行なう。
【0036】
情報加算累積回路708は、記憶回路出力信号S708と出力信号S709の加算によるダイバーシチ合成を行う。この加算結果は、2つの信号の合成の場合には、すぐに出力信号S710として信号復調回路709に入力される。一方、さらに複数の信号を合成する場合には、情報加算累積回路708で、累積加算処理を行い、ダイバーシチ合成を行なうべき信号数に応じて、信号復調回路709に入力される。最後に信号復調回路709は、信号の復調を行い、各ストリームの出力信号S711を得る。この信号復調回路709は、送信側の変調方式、符号化に応じた信号復調、復号化が行なわれる。具体的には、信号判定法、あるいは、畳み込み符号化に適したビット信号に対するビタビアルゴリズム等の復号方法が適用可能である。あるいは、ターボ符号化が送信側で適用された場合には、繰り返し信号処理を適用したターボ復号等も適用可能である。
【0037】
このように、信号検出後にシンボルからビット信号に変換した後でも、このビット信号に対して尤度による重み付けが可能であり、よりきめ細かなダイバーシチ合成が実現できるため、高速な伝送速度と高品質な信号復調が可能となる。
【0038】
<第3の実施形態>
次に、図4を参照して、図3に示す回路構成の変形例の動作を説明する。図4は第3の実施形態の回路構成を示すブロック図である。図4に示す回路構成が、図3に示す回路構成と異なる点は、情報累積加算回路808と信号復調回路809の間に軟判定回路805を新たに設けた点である。
【0039】
受信信号S801は信号検出回路801に入力され、信号検出回路801は、多重化された信号から信号の分離検出を行ない、分離後のデータストリーム信号S802を得る。シンボル/ビット変換回路802は、信号分離したデータストリーム信号S802のシンボル信号をビット信号に変換する。具体的には、1つのシンボル信号から複数のビット信号S803を出力する。一方、受信信号S801は尤度抽出回路803にも入力され、尤度抽出回路803は、入力された受信信号の受信品質を反映した尤度情報S804を検出する。乗算回路804はビット信号S803に対して、尤度情報S804を用いた重み付け処理を行い受信した信号に受信状態を反映させる。
【0040】
重み付け信号S807は、出力切替回路806に入力され、出力切替回路806は、受信順番、あるいは、周波数等の受信信号の属性状態に応じて出力先を切り替える。例えば、時間的に早い信号は、後で合成するために出力信号S805として信号記憶回路807に入力される。一方、属性が時間の場合には、遅く到来した信号は出力信号S809として出力する。また、属性が周波数の場合には、ある周波数で到来した信号と異なる周波数で到来した信号のダイバーシチ合成が可能なように出力を切り替える操作を行なう。さらに、属性が場所である場合でも同様であり、ある場所で到来した信号と異なる場所で到来した信号のダイバーシチ合成が可能なように出力を切り替える操作を行なう。
【0041】
情報加算累積回路808は、記憶回路出力信号S808と出力信号S809の加算によるダイバーシチ合成を行なう。この加算結果は、2つの信号の合成の場合には、すぐに出力信号S810として軟判定回路805に入力される。一方、さらに複数の信号を合成する場合には、情報加算累積回路808で、累積加算処理を行い、ダイバーシチ合成を行なうべき信号数に応じて、軟判定回路805に入力される。軟判定回路805は、入力された合成ビット信号に対する軟判定処理を行なう。最後に信号復調回路809は、信号の復調を行い、各ストリームの出力信号S811を得る。この信号復調回路809は、送信側の変調方式、符号化に応じた信号復調、復号化を行なう。具体的には、信号判定法、あるいは、畳み込み符号化に適したビット信号に対するビタビアルゴリズム等の復号方法が適用可能である。あるいは、ターボ符号化が送信側で適用された場合には、繰り返し信号処理を適用したターボ復号等も適用可能である。図4に示す構成では、軟判定前のビット信号に対してダイバーシチ合成が行なわれる。量子化される前の連続値であるビット信号に対するダイバーシチ合成するために量子化の影響を受けない高精度なダイバーチシ合成が可能である。
【0042】
このように、軟判定処理が有効な誤り訂正復号等を行なう場合において、適切に尤度情報を反映することが可能になるため、さらに、高品質な信号復調が可能となる。
【0043】
<第4の実施形態>
次に、図5を参照して、図3に示す回路構成の変形例の動作を説明する。図5は第4の実施形態の回路構成を示すブロック図である。図5に示す回路構成が、図3に示す回路構成と異なる点は、乗算回路904と出力切替回路906の間に軟判定回路905を新たに設けた点である。
【0044】
受信信号S901は信号検出回路901に入力され、信号検出回路901は、多重化された信号から信号の分離検出を行ない、分離後のデータストリーム信号S902を得る。シンボル/ビット変換回路902は、信号分離したデータストリーム信号S902のシンボル信号をビット信号に変換する。具体的には、1つのシンボル信号から複数のビット信号S903を出力する。一方、受信信号S901は尤度抽出回路903にも入力され、尤度抽出回路903は、入力された受信信号の受信品質を反映した尤度情報S904を検出する。
【0045】
乗算回路904はビット信号S903に対して、尤度情報S904を用いた重み付け処理を行い、受信した信号に受信状態を反映させる。重み付け信号S905は軟判定回路905に入力され、軟判定回路905は、各重み付けされたビット信号に対する軟判定処理を行なう。軟判定処理がなされた重み付け信号S906は、出力切替回路906に入力され、出力切替回路906は、受信順番、あるいは、周波数等の受信信号の属性状態に応じて出力先を切り替える。例えば、時間的に早い信号は、後で合成するために出力信号S907として信号記憶回路907に入力される。一方、属性が時間の場合には、遅く到来した信号は出力信号S909として出力される。また、属性が周波数の場合には、ある周波数で到来した信号と異なる周波数で到来した信号のダイバーシチ合成が可能なように出力を切り替える操作を行なう。さらに、属性が場所である場合でも同様であり、ある場所で到来した信号と異なる場所で到来した信号のダイバーシチ合成が可能なように出力を切り替える操作を行なう。
【0046】
情報加算累積回路908は、記憶回路出力信号S908と出力信号S909の加算によるダイバーシチ合成を行なう。この加算結果は、2つの信号の合成の場合には、すぐに出力信号S910として出力がなされ信号復調回路909に入力される。一方、さらに複数の信号を合成する場合には、情報加算累積回路908で、累積加算処理を行い、ダイバーシチ合成を行なうべき信号数に応じて、信号復調回路909に入力される。信号復調回路909は、信号の復調を行い、各ストリームの出力信号S911を得る。この信号復調回路909は、送信側の変調方式、符号化に応じた信号復調、復号化を行なう。具体的には、信号判定法、あるいは、畳み込み符号化に適したビット信号に対するビタビアルゴリズム等の復号方法が適用可能である。あるいは、ターボ符号化が送信側で適用された場合には、繰り返し信号処理を適用したターボ復号等も適用可能である。図5に示す構成では、軟判定後の合成信号に対してダイバーシチ合成が行なわれる。従って、量子化されたビット情報のダイバーシチ合成であるため演算量、回路規模の削減も可能である。
【0047】
このように、軟判定処理が有効な誤り訂正復号等を行なう場合において、適切に尤度情報を反映することが可能になり、さらに、軟判定処理後に、ダイバーシチ合成を行なうことから、必要な演算ビット数の削減が可能になるため、さらに高品質な信号復調、また、これと併せて演算量、回路規模の削減も可能となる。
【0048】
次に、本発明について、計算機シミュレーションを用いて特性評価を行った結果について説明する。図6に、計算機シミュレーションの条件を示す。MIMO−OFDMの各ストリームの基本パラメータはIEEE802.11a無線LAN規格に従った。中継局が1つのL=2の場合について評価を行なった。基礎検討のため協調基地局での復調は理想的に行われるものと仮定している。この計算機シミュレーションでは、目的局にてダイバーシチ合成受信を行い、合成後のパケット信号に用いる信号分離にはMLDを用いた。本発明の計算機シミュレーション結果によるPER(Packet error rate)特性を図7に示す。比較として、協調伝送を用いない1対1通信において、信号分離には同様にMLDを用いた場合の特性も示した。図7に示すように、PER=0.01において所要E/Nが約5.1dB改善している。本発明の複数のアンテナから送信された複数のデータストリームを用いたMIMO−OFDM協調伝送における本発明の十分な高速な伝送速度と高品質の有効性が確認できる。
【0049】
以上説明したように、本発明は、複数ルートを経由した無線伝送を行う場合おいて、複数のデータストリームが送信された場合でもパケットの復調が可能であり、従来の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明が適用可能な信号送信の形態を示す説明図である。
【図2】第1の実施形態の回路構成を示すブロック図である。
【図3】第2の実施形態の回路構成を示すブロック図である。
【図4】第3の実施形態の回路構成を示すブロック図である。
【図5】第4の実施形態の回路構成を示すブロック図である。
【図6】計算機シミュレーションの条件を示す説明図である。
【図7】計算機シミュレーション結果を示す図である。
【図8】複数の中継局を用いて協調伝送を行う動作を示す説明図である。
【図9】図8に示すNW構成おいて、適用する時間と周波数を用いて棲み分けを示す説明図である。
【図10】端末がシングルアンテナを用いる場合の協調伝送に適用されるダイバーシチ技術を示す説明図である。従来技術による受信回路の構成を図11に示す。
【図11】従来技術による受信回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0051】
601、701、801、901・・・信号検出回路、702、802、902・・・シンボル/ビット変換回路、603、703、803、903・・・尤度抽出回路、604、704、804904・・・乗算回路、805、905・・・軟判定回路、606、706、806、906・・・出力切替回路、607、707、807、907・・・信号記憶回路、608、708、808、908・・・情報累積加算回路、609、709、809、909・・・信号復調回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データストリームが多重化された信号を受信して各ストリームの信号を分離検出する信号検出手段と、
前記データストリームからチャネルの尤度情報を抽出する尤度抽出手段と、
分離した複数の前記データストリームのそれぞれに対して前記尤度抽出手段によって検出された重み付け量を乗算する乗算手段と、
前記乗算手段から出力される重み付け信号を受信信号の属性に応じて出力先を切り替える切替手段と、
前記切替手段の出力信号を記憶する記憶手段と、
前記切替手段から別途出力される前記受信信号の属性と異なる出力信号と前記記憶手段に記憶された信号の累積加算演算を行った信号を出力する累積加算手段と、
前記累積加算手段から出力される信号を復調して出力信号を得る信号復調手段と
を備えることを特徴とするダイバーシチ受信回路。
【請求項2】
データストリームが多重化された信号を受信して各ストリームの信号を分離検出する信号検出手段と、
分離した複数の前記データストリームのそれぞれから検出されたシンボルからビット情報に変換を行なう変換手段と、
前記データストリームからチャネルの尤度情報を抽出する尤度抽出手段と、
前記変換手段から出力される各ビット情報に対して前記尤度抽出手段によって検出された重み付け量を乗算する乗算手段と、
前記乗算手段から出力される重み付け信号を受信信号の属性に応じて出力先を切り替える切替手段と、
前記切替手段の出力信号を記憶する記憶手段と、
前記切替手段から別途出力される前記受信信号の属性と異なる出力信号と前記記憶手段に記憶された信号の累積加算演算を行った信号を出力する累積加算手段と、
前記累積加算手段から出力される信号を復調して出力信号を得る信号復調手段と
を備えることを特徴とするダイバーシチ受信回路。
【請求項3】
前記累積加算手段から出力される信号を軟判定して、前記信号復調手段へ出力する軟判定手段を
さらに備えたことを特徴とする請求項2に記載のダイバーシチ受信回路。
【請求項4】
前記乗算手段から出力される重み付け信号を軟判定して、前記切替手段へ出力する軟判定手段を
さらに備えたことを特徴とする請求項2に記載のダイバーシチ受信回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のダイバーシチ受信回路を備えたことを特徴とする無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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