説明

ダイビング用浮力調整器

【課題】他の部材を介在させることなく、プルコードの引張力を直接に排気弁に作用させることができ、確実かつ反復して開閉弁操作をすることができる排気弁装置を備える浮力調整器を提供する。
【解決手段】前記排気弁装置7は、排気弁68と、弁座75と、排気弁68の上に位置するばね部材69と、弁座75においてプルコード20の第2端部を固定し、プルコード20の延在方向において離間対向する一対の案内手段74a,74bと、排気弁68に連結されており、プルコード20の案内手段74a,74b間に位置する部位を挟持する上下往復運動可能な弁軸71とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダイビングにおいて着用する浮力調整器、さらに詳しくは、浮力調整器の排気弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浮力調整器内のエアが過充填圧した際に、自動または手動で開弁して排気をすることのできるダイビング用の浮力調整器は公知である。例えば、特許文献1には、プルコードの一端を連結した作動機構を介して開弁することのできる浮力調整器、特許文献2には、プルコードの一端を弁軸に直接取り付けて開弁することのできる浮力調整器、特許文献3には、プルコードをカムを有するピストン部材の内部に挿入して引張することによって、開弁することのできる浮力調整器がそれぞれ開示されている。
【特許文献1】特公平02−49959号公報
【特許文献2】米国特許第5505559号公報
【特許文献3】欧州特許第1262400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示の発明では、インフレーターホースを伸長することにより、プルコードに、リンクレバーと挺子杆から構成された作動機構を作動するための引張力が伝達されて開弁し、調整器内のエアが排気される。しかし、プルコードの引張力が作動機構を介して排気弁に作用するので、必要以上の力を要し、また、外部衝撃等によりリンクレバーと挺子杆の位置がずれて作動機構が上手く作動しない場合には、排気をすることができなくなるおそれがある。
【0004】
特許文献2に開示の発明では、プルコードの一端が排気弁の弁軸に直接取り付けられており、開弁するためのプルコードの引張力を排気弁に直接作用させることができる。しかし、プルコードを引っ張ることにより、弁座に水平に載置された状態にある排気弁の片側を浮き上がらせて開弁するものであるから、開閉弁操作が不安定であり、排気弁と弁座との間に異物が挟み込まれた場合等には、上手く閉弁することができない。
【0005】
特許文献3に開示の発明では、プルコードを引っ張ることによって、カムをその表面を弁軸に摺接させながら引き寄せることによって、排気弁が上方へ持ち上がり排気をすることができる。しかし、カムの表面を弁軸に摺接させながら引き寄せるので、連続的な使用によってカム表面又は弁軸が劣化した場合や、ピストン部材内に異物が挟入した場合には、開閉機構を上手く作動させることができない。
【0006】
そこで、この発明は、他の部材を介在させることなく、プルコードの引張力を直接バルブに作用させることができ、確実にかつ繰り返して開閉弁操作が可能な排気弁装置を備える浮力調整器を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、ジャケット本体と、蛇腹状に形成された伸縮性を有するインフレーターホースと、前記インフレーターホースの端部に装着されたパワーインフレーターと、前記インフレーターホースの他端部に装着された排気弁装置と、前記インフレーターホースの内部を長手方向に延びるプルコードとを含むダイビング用浮力調整器である。
【0008】
この発明の特徴とするところは、前記プルコードは、第1端部が前記パワーインフレーターに取り付けられており、第2端部が前記排気弁装置に取り付けられており、閉弁時において弛緩された状態にあり、前記排気弁装置は、排気弁と、弁座と、前記排気弁の上に位置するばね部材と、前記弁座において前記プルコードの第2端部を固定し、前記プルコードの延在方向において離間対向する一対の案内手段と、前記排気弁に連結されており、前記プルコードの前記案内手段間に位置する部位を挟持する上下往復運動可能な弁軸とを有し、閉弁時には、前記ばね部材に付勢されて、前記排気弁が前記弁座に当接するとともに、前記弁軸が弛緩状態にある前記部位を下方へ押し下げており、開弁時には、前記プルコードが前記第1端部側へ引っ張られることによって緊張状態となり、前記部位が前記ばね部材の付勢に抗して前記弁軸を上方へ押し上げることによって、前記排気弁が前記弁座から離間することから、前記排気弁の開閉を反復して行うことができること、にある。
【0009】
この発明は、以下の好ましい実施形態を有する。(1)前記案内手段は、前記弁軸から挿抜可能な一対のピン部材から形成されている。(2)前記弁軸は、その先端を二股にする離間部を有しており、前記離間部に前記プルコードの前記案内手段間に位置する部位を挿通して該部位を挟持する。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る浮力調整器の排気弁装置によれば、プルコードの引張力を弁軸に直接作用させて、プルコードの引張力をそのまま弁軸を上方へ持ち上げる力に転換することができるので、必要以上の力を要さず、スムーズに開弁をすることができる。また、プルコードと弁との間に動力装置等の他の部品が介在されていないことから、部品の劣化や破損によるトラブルを回避することができ、確実に反復して排気弁の開閉操作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明を実施するための最良の形態について図示例を参照して説明すると、以下のとおりである。
【0012】
図1は、浮力調整器1の着用状態を示す正面図、図2は図1の背面図、図3は、インフレーターホース4に排気弁装置7、パワーインフレーター5が装着された連結部材3の一部破断平面図である。図1及び2では、説明の便宜上、浮力調整器1に通常装備されているファーストステージ及びセカンドステージを含むレギュレータ機器は省略されている。また、図3では、前後方向がX,上下方向がYで示されている。前後方向Xと上下方向Yとは、連結部材3を平置きした状態における説明の便宜上のものであって、使用状態の方向を示すものではない。
【0013】
浮力調整器1は、ジャケット2と、ジャケット2の肩部に係止されている連結部材3とを有する。連結部材3は、蛇腹状に形成された伸縮性を有するインフレーターホース4と、インフレーターホース4の一端部に装着されたパワーインフレーター5と、インフレーターホース4の他端部に装着されたマウント部材6を有する排気弁装置7と、取付カプラ9を介してインフレーターホース4に添設された中圧ホース8とを含む。ジャケット2の背面部には、仮想線で示されたエアタンクを固定するためのハーネス12が設けられており、エアタンクは固定ベルト13で締め付けられている。
【0014】
マウント部材6には、ジャケット2の肩後部に穿設された吸気口(図示せず)の外周に取り付けられた取付部材(図示せず)と締結される装着キャップ14が下方から被着されており、中圧ホース8を除く連結部材3とジャケット2の内部には、中圧ホース8内の中圧エアよりも低圧なエアが充填されている。
【0015】
パワーインフレーター5は、硬質プラスチック部材から形成された本体15と、本体15の上方に取り付けられたエギゾーストボタン16と、軟質プラスチックから形成され、エギゾーストボタン16の後方に装着されたマウスピース17と、本体15の後端に装着されたパージボタン18と、本体15の側面に取り付けられたインレットボタン19とを有する。
【0016】
インフレーターホース4の内部には、前後端部がそれぞれ排気弁装置7、パワーインフレーター5に取り付けられているプルコード20が前後方向Xに延在している。浮力調整器1は、弛緩状態にあるプルコード20を後方へ引っ張って緊張状態とすることによって開弁し、浮力調整器1内の充填エアが排気弁装置7の排気口10から水中へ排気される構造を有している。
【0017】
図4は、プルコード20が弛緩状態にあるときの図1のIV−IV線断面図、図5は、プルコード20が緊張状態にあるときの図4と同様の図である。図4及び5において、パワーインフレーター5は、インフレーターホース4を介してジャケット2につながる低圧室21と、中圧ホース8から中圧エアが供給されている中圧室22とを有する。
【0018】
本体15はその内部に、前後方向Xへ往復摺動運動するピストン23と、中空に形成され、ピストン23を収納するシリンダ24とから構成されたプルコード20の駆動機構25を有する。
【0019】
シリンダ24は、ピストン23が収容された中央部26と、中央部26よりも幅狭に形成され、前方へ開口した前方部27と、上下方向Yに延びる透孔28が形成された後方部29とを有する。中央部26の内部には、円筒状の内筒部30が形成されており、内筒部30の内底30aには透孔28に通じる第1給気路32が形成されており、第1給気路32の開口に対向する後方部29の内周壁には、低圧室21へ通じる排気路33の開口が形成されている。
【0020】
ピストン23は、中央部26において、後方へ延びる後端部34と、後端部34よりも外径の大きい前端部35とを有し、前端部35と後端部34との間には段差があり、受圧面36が形成されている。ピストン23は、第1ばね37に圧接されて前方へ付勢されており、付勢された状態において、後端部34は内筒部30の内部に挿入されている。後端部34には、前後方向Xに延びる第2給気路38が形成されており、また、前端部35には、受圧面36近傍の外周面に開口を有する、第2給気路38と直交し、第2給気路38と連通する第3給気路39が形成されている。
【0021】
前端部35は、前方へ向かって開口しており、その内部には、プルコード20が挿通された摺動部材41が固定されている。挿通されたプルコード20の後端部20bには、球状の頭部42bが取り付けられている。このように、後端部20bに頭部42bが取り付けられていることによって、プルコード20がピストン23とともに後方へ引っ張られても、プルコード20が摺動部材41から抜け外れることはない。また、前方部27の前端内部では、プルコード20を保護し、かつ、そのねじれを防止するためのステンレス製の鞘43が取付部材45に固定されている。
【0022】
後方部29の透孔28は、本体15の下側部にまで延びる通気路47を形成しており、通気路47の下側部分は、中圧室22につながっている。通気路47には、上下方向Yへ往復摺動運動可能なスライダ48が挿入されている。スライダ48の上端部48aは、本体15の外面から突出するエギゾーストボタン16の固定部50に嵌合されており、下端部48bと本体15との間には、第2ばね53が介在しており、スライダ48は上方へ付勢されている。また、スライダ48は、透孔28内に位置する拡径部51を有し、段差が形成されている。
【0023】
エギゾーストボタン16は、その操作が容易となるように補助ばね52によって上方へ付勢されており、エギゾーストボタン16をその付勢に抗して下方へ押圧すると、スライダ48は、第2ばね53の付勢に抗して下降し、エギゾーストボタン16がその押圧から解放されると、スライダ48は上昇して、押圧前の状態に復帰する。
【0024】
通気路47は、その内径を部分的に大きくした拡径部54と、拡径部54の直上に位置する第1O−リング55と、シリンダ24の排気路33の直上に位置する第2O−リング56とを有し、これら両O−リング55,56が通気路47の周面に通気不能に密着している。第1O−リング55と第2O−リング56との間には、スライダ48の段差により、クリアランス58が形成されている。このような状態において、通気路47では、中圧ホース8からの中圧エアが中圧室22に進入しているが、第1O−リング55が通気路47の周面に密着しているので、クリアランス58、すなわち、駆動機構25内へ中圧エアが進入することはない。
【0025】
図5に示すとおり、エギゾーストボタン16を押圧して排気をするときには、スライダ48は第2ばね53の付勢に抗して下降する。このとき、スライダ48では、第1O−リング55が通気路47の拡径部54に位置し、第2O−リング56が排気路33の下方に位置している。これによって、排気路33は遮断されるとともに、第1O−リング55による気密状態は解除され、中圧室22の中圧エアが通気路47を通ってシリンダ24内へ進入し、クリアランス58を通って、第1給気路32から内筒部30の内部へ流入する。内筒部30の内部に流入した中圧エアは、第2給気路38から第3給気路39を通って、ピストン23とシリンダ24との間に形成された空隙Pに出る。低圧室21と遮断されたシリンダ24内は中圧エアが充填されるので、シリンダ24内の圧力が第1ばね37の付勢力を超えたときに、受圧面36は押圧され、ピストン23は第1ばね37の付勢に抗して後方へ移動する。ピストン23の移動とともに、プルコード20は後方へ引っ張られて、排気弁装置7の排気弁68(図6参照)が開弁し、排気口10から低圧室21内に充填されたエアが水中へ排出される。
【0026】
エギゾーストボタン16の押圧を解除したときには、第2ばね53の付勢によってスライダが上昇し、駆動機構25内に残存した中圧エアは、排気時とは逆のルート、すなわち、空隙Pから第3給気路39、第2給気路38を通って、内筒部30の内部に流入し、第1給気路32から通気路47を通って排気路33から低圧室21へ排出される。排出された中圧エアは、低圧室21の充填エアとともに低圧となる。
【0027】
このようにエギゾーストボタン16を操作することによって手動で駆動機構25を作動させて低圧室21内の充填エアを排気することができるとともに、吸気操作によって吸気口60から過度のエアが低圧室21内に充填された場合にも、低圧室21内の空気圧が高くなることによって、ピストン23が自動的に後方へ移動し、排気が行われる。
【0028】
また、パージボタン18を操作することによっても低圧室21内の充填エアを排気することができる。すなわち、本体15の後端に取り付けられたパージボタン18を補助ばね61の付勢に抗して押圧すると、弁62が本体15の内周面から離れて前方へ移動し、低圧室21内の充填エアがマウスピース17の開口から外部へ排気される。この排気されるエア量は、弁62の限られた隙間を通る制限された量であるから、低圧室21内の充填圧の微調整のための排気操作として有効である。
【0029】
さらに、インフレーターホース4は蛇腹状で伸縮性を有するものであるから、排気弁装置7側を固定してパワーインフレーター5全体を把持して後方へ引っ張ることによって、インフレーターホース5は伸長し、その内部に固定されたプルコード20も後方へ引っ張られて、開弁することができる。なお、手動または自動による排気操作によって、弛緩状態にあるプルコード20が後方へ引っ張られる限りにおいては、駆動機構25は前記のような空気圧を利用したものでなくてもよく、本実施形態のほかに、公知の構成を有するパワーインフレーター5を用いることもできる。
【0030】
図6は、排気弁装置7の分解斜視図、図7は、図2のVII−VII線断面図である。図7では、排気装置7が中央分割線A−Aで分割されており、右側に閉弁状態の態様、左側に開弁状態の態様がそれぞれ示されている。
【0031】
図6に示すとおり、排気弁装置7は、ジャケット2の取付口(図示せず)に装着される装着キャップ14と、内部に鞘43のストッパー63を固定するための取付部材64が挿入され、インフレーターホース4と連結される突出筒部65を有し、その下端部が装着キャップ14の上端部と回転可能に係合されているマウント部材6と、外周に同心円状の隆起部66が形成された下端部を有する有孔キャップ67と、排気弁68を下方へ付勢するためのコイルスプリング69と、コイルスプリング69の内側面と当接する支持手段70aを有する固定部70と下方へ延出する上下往復運動可能な弁軸71とを有する円形の排気弁68と、シリコン等の軟質部材から形成され、円形かつ中心に穿設された中心孔72を有するダイヤフラム73と、2本のピン部材74a,74bが挿入される弁座75と、O−リング76とから構成されている。
【0032】
弁座75には、マウント部材6の内面のフランジ6aに形成された突起78に係合する凹部79が形成されており、下方へ延び、かつ、O−リング76よりも直径の小さい下方延出部81と、2本のピン部材74a,74bが挿入される内方へテーパー状に形成された一対のピン案内孔82を有し、下方延出部81から下方へ延び、かつ、下方延出部81よりも直径の小さい下方周壁部83とを有する。また、ピン案内孔82を分断し、下方延出部81と下方周壁部83とにおいて対向配置され、これらを貫通する、プルコード20を挿通するための案内部85が形成されている。
【0033】
これらの部材の組立手順を具体的に説明すると、まず、マウント部材6の底縁6bと弁座75との間に挟持されるようにO−リング76を底縁6bに当接させ、突出筒部65からマウント部材6の内部に進入させたプルコード20を案内部85に挿通させて、ピン案内孔82にピン部材74a,74bを挿入し、突起78と凹部79とが係合するように下方周壁部83をフランジ6aに当接させて、弁座75をマウント部材6の内部に固定する。このとき、プルコード20のピン部材74a,74b間に位置する部位に適度な撓みを持たせて固定することが好ましい。プルコード20の当該部位の長さが、排気時の摺動部材41の移動距離となるからである。
【0034】
また、プルコード20の前端部20aには、球状の頭部42aが取り付けられており、ピン部材74a,74bと案内部85を形成する下方延出部81との間に形成された空隙の幅寸法が頭部42aの直径よりも小さいので、排気時にプルコード20が後方へ強く引っ張られたとしても、頭部42aが下方延出部81とピン部材74aとに当接し、その後方への移動が規制されるので、プルコード20が弁座75から抜け落ちることはない。
【0035】
次に、断面六角形状に形成され、先端71aを二股にする挟持部88を有する弁軸71をダイヤフラム73の中心孔72に挿通し、ダイヤフラム73の柔軟性を利用して中心孔72の外周縁を弁軸71の上端に形成された鍔部90を乗り越えさせ、排気弁68の下面と鍔部90との間にダイヤフラム73を密に挟み込むように固定する。中心孔72に挿通した弁軸71をマウント部材6の内部に固定された弁座75の中心に位置する六角形状の軸受け孔91に挿通し、その下方にあるプルコード20が挟持部88を挿通するように、上方から弁軸71の先端71aをプルコード20に押し当てる。なお、挟持部88は、先端71aを二股にする離間部ではなく、前後方向Xへ貫通する透孔であってもよい。
【0036】
最後に、固定部70の支持手段70aにコイルスプリング69の内側面が当接するようにコイルスプリング69を排気弁68の上に配置し、コイルスプリング69の上端を有孔キャップ67の内面に形成された円形の凹部(図示せず)に当接させた状態で、有孔キャップ67の下端部の外周に形成された隆起部66と、隆起部66に対応するマウント部材6の内周壁に形成された溝部93とを螺合して締め付ける。このようにして組み立てられた排気弁装置7は、互いの部材が確実に固定されているので、外部衝撃等によって容易に結合状態が解かれることはない。
【0037】
図7の分割中心線A−Aの右側に示すとおり、閉弁状態では、排気弁68はコイルスプリング69の拡圧作用により下方へ付勢され、浮力調整器1内は気密にされており、弁軸71の挟持部88に挿入されたプルコード20は、ピン部材74a,74bを起点として押し下げられている。
【0038】
図7の分割中心線A−Aの左側に示した態様のように、自動若しくは手動により排気操作が行われたときには、プルコード20が後方へ引っ張られて排気弁68は開弁する。プルコード20の前端部20aに取り付けられた頭部42aは、ピン部材74aと下方延出部81とに当接して後方への移動が規制されるので、ピン部材74a,74b間の下方へ押し下げられた部位に引張力が作用する。プルコード20は緊張状態となり、プルコード20の引張力は上方へ向かう力に転換され、弁軸71はコイルスプリング69の付勢に抗して上方へかつ垂直に押し上げられる。これにより、排気弁68と排気弁68に当接するダイヤグラム73とが、弁座75から離間して開弁し、浮力調整器1内の充填エアが隙間Sから有孔キャップ67内へ流出され、有孔キャップ67に形成された排気口10から水中へ排気される。
【0039】
排気後は、プルコード20の引張状態が解除されるので、コイルスプリング69の付勢により排気弁68が下方へ押し下げられてダイヤフラム73を介して弁座75に当接して閉弁し、浮力調整器1内は再び気密状態となる。
【0040】
このように、プルコード20の引張力を直接に弁軸71に作用させることにより、その引張力をそのまま、弁軸71をコイルスプリング69の付勢に抗して上方へ押し上げる力に転換することができ、必要以上の力を要しない。また、プルコード20と排気弁68との間に他の部品が介在していないことから、部品の劣化や破損によるトラブルを回避することができ、確実かつ反復して開閉弁操作を行うことができる。
【0041】
浮力調整器1を構成する部品の材料には、この種の製品に慣用されている各種材料を制限なく用いることができる。また、浮力調整器1内を気密にするために、各部材の結合部や外気と接触する部位には、図中で示されたO−リングのほかに、必要箇所にO−リングを配置してもよい。さらに、製造上可能であれば、排気弁装置7やこの発明の他の構成要素を形成する各種部品を一体に成形してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】浮力調整器の正面図。
【図2】浮力調整器の背面図。
【図3】連結部材の一部破断平面図。
【図4】プルコードが弛緩状態にあるときの図1のIV−IV線断面図。
【図5】プルコードが緊張状態にあるときの図1のIV−IV線断面図。
【図6】排気弁装置の分解斜視図。
【図7】図2のVII−VII線断面図。
【符号の説明】
【0043】
1 浮力調整器
2 ジャケット
4 インフレーターホース
5 パワーインフレーター
7 排気弁装置
20 プルコード
20a 第1端部(後端部)
20b 第2端部(前端部)
68 排気弁
69 ばね部材(コイルスプリング)
71 弁軸
74a,74b 案内手段(ピン部材)
75 弁座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャケット本体と、蛇腹状に形成された伸縮性を有するインフレーターホースと、前記インフレーターホースの端部に装着されたパワーインフレーターと、前記インフレーターホースの他端部に装着された排気弁装置と、前記インフレーターホースの内部を長手方向に延びるプルコードとを含むダイビング用浮力調整器において、
前記プルコードは、第1端部が前記パワーインフレーターに取り付けられており、第2端部が前記排気弁装置に取り付けられており、閉弁時において弛緩された状態にあり、
前記排気弁装置は、排気弁と、弁座と、前記排気弁の上に位置するばね部材と、前記弁座において前記プルコードの第2端部を固定し、前記プルコードの延在方向において離間対向する一対の案内手段と、前記排気弁に連結されており、前記プルコードの前記案内手段間に位置する部位を挟持する上下往復運動可能な弁軸とを有し、
閉弁時には、前記ばね部材に付勢されて、前記排気弁が前記弁座に当接するとともに、前記弁軸が弛緩状態にある前記部位を下方へ押し下げており、
開弁時には、前記プルコードが前記第1端部側へ引っ張られることによって緊張状態となり、前記部位が前記ばね部材の付勢に抗して前記弁軸を上方へ押し上げることによって、前記排気弁が前記弁座から離間することから、前記排気弁の開閉を反復して行うことができることを特徴とする前記浮力調整器。
【請求項2】
前記案内手段は、前記弁軸から挿抜可能な一対のピン部材から形成されている請求項1記載の浮力調整器。
【請求項3】
前記弁軸は、その先端を二股にする離間部を有しており、前記離間部に前記プルコードの前記案内手段間に位置する部位を挿通して該部位を挟持する請求項1または2記載の浮力調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−227005(P2009−227005A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72480(P2008−72480)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000133191)株式会社タバタ (23)
【Fターム(参考)】