説明

ダイヤパー等のための湿分モニタシステム

本発明は、ダイヤパー等の衛生製品の湿潤のような多重の漏れ事象を監視するのに適したシステムに関する。このシステムは、互いに間隔をあけた関係の中で各々支持されている2つ又は3つ以上の電極、及び、電極と電極の間にあって、液を保つか蓄えるかする容量が十分でない、又は小さい透液性基体を有している。液漏れの場合、電極同士をつなぐ電気ブリッジが液により形成でき、製品が飽和状態になる前に、液は透液性基体から自由に出ていくことができ、これにより電極間の電気接続を断つことができる。更なる液漏れがある時、電極間の電気接続が再形成でき、これで多重の液漏れ事象を知らせる。衛生製品が飽和状態になり、液が前記透液性基体から出ていくのを阻まれる状況において、電気接続は続くことになり、衛生製品が交換を要求していることを知らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服、ダイヤパー、おむつ及び失禁パッド等の衛生製品の湿潤を監視するために使用できる湿分モニタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に言えば、最近の使い捨てのダイヤパーやおむつは、着用者の皮膚に面する又は接する疎水性のライニングと、液を蓄える親水性の芯又は溜めを有するように設計されている。使用中、大量の液は疎水性のライニングを通して親水性の芯に引き寄せられるので、着用者は乾いていて快適と感じる。親水性の芯の容量を超えると、液は親水性のライニングから逃がされるのを止め、着用者は必然的に湿っていて不快と感じ始めることになる。
【0003】
失禁はしばしば、比較的少量の尿の周期的な漏れを表し、最近の使い捨てのダイヤパーやパッドの溜めは、その交換を必要とする前の一続きの漏れを吸収できるようになっている。
【0004】
老人ホームなどの介護施設に入所させられた高齢の又は身体障害のある失禁患者の場合は、ダイヤパー又はパッドの交換が何時必要であるか見極めることが、介護施設のスタッフにとって大きな仕事である。これについては、スタッフが日課としてダイヤパーやパッドの湿潤を手で点検することによって遂行するのが標準的やり方である。しかしながら、この種の事務的な患者管理は労働集約的であり、患者をいささか困惑させるかもしれない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、介護施設のスタッフが今日の標準的やり方である手での点検を行うことなくダイヤパーの湿潤を監視できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明に従い、ダイヤパー、おむつ及び失禁パッド等の衛生製品の着用者の液漏れを監視するのに適した、また、その湿潤を監視するのに適した湿分モニタシステムにより解決される。本システムは、
a)互いに間隔をあけた関係の中で各々支持されている2つ又は3つ以上の電極と、
b)電極と電極の間にあって、液を保つか蓄えるかする容量が十分でない、又は小さい透液性基体とを有し、これにより、初期液漏れの場合、電極同士をつなぐ電気ブリッジが少なくとも部分的に、その表面又は中にある液により透液性基体を通って延び、続いて、液が透液性基体から出ていくことで電極間の電気接続は断たれ、そして、更なる液漏れがある時、電極間の電気接続が再形成できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の利点は、電極間の電気接続を形成する液がその電気接続を一時的にだけ、又は、液漏れの量に見合う時間だけ保つように自由に出ていくのを透液性基体が可能にすることである。加えて、更なる液漏れの場合、電気接続は再形成できる。これにより、介護施設では、衛生製品を手で点検することなく、多重的に起こる液漏れの頻度を監視することが可能になる。
【0008】
透液性基体は、電極の間を1つの電極から別の電極へと連続的に延びていてよい。あるいは代わりに、基体は、電極の間を不連続的に延びるように電極の間に1つ以上の間欠ギャップを有してよい。ギャップは空のままであっても、疎水性ポリプロピレン材料などの他の材料で少なくとも部分的に満たされていてもよい。
【0009】
本発明の一実施例によれば、透液性基体は少なくとも1つ、できれば両方の電極と直接接触していることが好ましい。
【0010】
透液層は、液体を自由に通流させる通路又は開口を有し、この通路又は開口の直径又は横断面幅が0.05〜10.0mm、好適には0.5〜10.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0011】
透液層は1.0〜5.0mmの範囲内の大きさの通路又は開口を有することが好ましい。
【0012】
通路又は開口は大きさが1.0〜3.0mmの範囲内であることがはるかに好ましい。
【0013】
透液層は厚さが2.0〜10.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0014】
透液層は疎水性であることが好ましい。
【0015】
透液層は、疎水性剤であるフルオロカーボン、ハイドロカーボン、シリコーン及びワックスのいずれか1つ又は組み合わせにより疎水性にすることができる。市販の疎水性剤の例には、Rudolf Chemie製のRucostar EEE、Dow Corning/Toray製のSM8709、及び、Clariant製のNuca TTCが含まれる。
【0016】
透液層は低密度のポリマー材料であることが好ましい。例えば、透液層は、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンのいずれか1つ又は組み合わせから作られてよいが、これだけに限るものではない。プラズマ放電又はコロナ放電などの物理的処理又は表面処理も、ポリエステルなどの材料を疎水性にするために使用してよい。
【0017】
システムは更に、液を保つか蓄えるかする容量が透液性基体より大きい液吸収基体を有し、ここで、透液性基体の中の液は液吸収基体の中に入っていくことができ、液漏れの場合、電極同士をつなぐ電気ブリッジは、単に透液性基体の中にある液、又は、透液性基体と液吸収基体の中にある液により形成される。換言すれば、液が透液性基体から出ていく広がりに応じて、電気ブリッジ、すなわち、電気抵抗の最も小さいパスが、透液性基体の中に全部含まれた液から作られることも、透液性基体と液吸収基体の中の液の連続的通流により作られることもあり得る。
【0018】
吸収基体は透液性基体と直接接触していることが好ましい。
【0019】
吸収基体の蓄える液が容量いっぱいに達した場合、液は吸収基体に入り込むのを止め、電極は、透液性基体の中に留まった液により電気接続状態に留まることになる。換言すれば、吸収基体の蓄える液が容量いっぱいに達した時、又は、液を吸収し続けることができなくなった時、透液層からの液の流出が阻まれ、これにより、電極間の電気接続が維持されることが好ましい。システムがダイヤパー等の衛生製品の湿潤を監視するために使用されていて、液を出させるのに妥当な時間が経過した後に電極間の電気接続が続いている状況では、おそらく、ダイヤパー等の衛生製品の着用者は湿っていて不快と感じ始めるであろう。
【0020】
吸収基体は綿スクリム又は綿ティッシュであることがはるかに好ましい。
【0021】
吸収基体は親水性であることが好ましい。吸収基体は、何らかの好適な吸収性材料から作られてよく、繊維材料に加えて吸収性のゲル、結晶及び乳濁液を含んでよい。
【0022】
電極は吸収基体から空間的に分離していることが好ましい。
【0023】
各電極は、間に透液層を入れたテキスタイル基体により支持されている、又はこれと直接接触していることが好ましい。好ましくは、該基体の1つは液を逃がすことができる。
【0024】
テキスタイル基体は様々な種類の繊維を含有してよく、どんな形であってもよいが、テキスタイル基体はセルロース繊維を有していることが好ましい。テキスタイル基体は、繊維をランダムに配した薄いティッシュ構成を有することも好ましい。
【0025】
好ましい一実施例では、テキスタイル基体は疎水性であり、別の好ましい実施例では、テキスタイル基体は親水性である。
【0026】
テキスタイル基体は、ポリエチレンの不織布繊維又はスクリムの1つ又は2つ以上の層を有していることが好ましい。
【0027】
電極と接触するテキスタイル基体は、様々な材料層により互いに間隔をあけて空間的に分離されてよいが、透液層はテキスタイル基体間の唯一の層であることが好ましい。
【0028】
電極はシート、パネル又は何らかの形の網状構造又は格子構造を有する何らかの物理的構成であってよいが、電極は細長い構造を有することが好ましい。
【0029】
電極はリボン状、糸状又は縄状であることが好ましい。
【0030】
システムの電極は、以下に詳述する2つの代替形態に従って設けてあってよい。1つの好ましい形態では、電極は異なる材料で作られ、液漏れが生じると、液と酸素は、レドックス型反応により電流を発生させるのに利用できる酸化環境を作り出す。この状況において、電極は、一方の電極が犠牲金属含有陽極で、他方の電極が不活性陰極であって、液漏れにさらされると、液が電極間の電解ブリッジを形成し、酸素の還元が陰極で生じ、金属の酸化が陽極で生じるレドックス型反応を起こさせるような電解槽の一部をなすことが好ましい。レドックス反応が電極間に発生させる電流は、適当な装置を使って測定できる。
【0031】
理想的には、陽極と陰極の両方は、仮出願第2006900483号から優先権を請求する当方の同時係属中の国際出願第PCT/AU2006/001793号(表題“A WATER ACTIVATED SYSTEM INCLUDING A FLEXIBLE SUBSTRATE”)の中で述べられた陽極と陰極の性質を有する。この仮出願と国際出願の特許明細書をここに明確に言及することにより本明細書に組み入れる。
【0032】
一般的に言えば、犠牲陽極はアルミニウム、銅、錫、鉄、亜鉛及び銀のいずれか1つ以上の金属を含有することが好ましく、陰極が陽極に直接的又は間接的に結合していることが好ましい。
【0033】
陰極は、導電性プラスチックなど何らかの好適な不活性材料、又は銀ワイヤなどの不活性金属基体で作られてよい。同様に、陰極は、フィラメント繊維又はステープル繊維を含有してよく、繊維の表面は不活性導電性材料を含有してよい。陰極に含まれた繊維は、羊毛、髪毛、獣毛などの蛋白質繊維、木綿、亜麻、麻などのセルロース繊維、及び、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドなどの合成繊維を含む何らかの天然繊維又は合成繊維であってよい。陰極に含まれた不活性導電性材料は、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマー、又は、カーボンインク、シルバーインクなどの導電性インクのいずれか1つ又は組み合わせを含有する何らかの好適な材料であってよい。
【0034】
陽極は、表面に金属を施したフォイル、ワイヤ、ファイバ又は可撓性基体を有する何らかの好適な形であってよいが、これだけに限るものではない。例えば、基体は、従来のスプレー、直接接触、印刷、又は化学蒸着又は他の蒸着の技術により金属で被覆してあってよい。理想的には、陽極はアルミニウム又はアルミニウム含有合金を含有する。
【0035】
電極の第2の代替形態によれば、電極はほぼ不活性の導電性材料から作られること、及び、電極間の電気接続が電極間の電気抵抗又は伝導度の変化を監視することにより測定されることが好ましい。
【0036】
電極は同じ電位を有する材料から作られることが好ましい。
【0037】
電極は、全体的に、又は少なくとも部分的に、撚り線、糸、縄、フィラメント、繊維、フィルム及びフォイルを有しているテキスタイル導電性材料から作られることが好ましいが、これだけに限るものではない。
【0038】
電極は、全体的に、又は少なくとも部分的に、金属被覆を施した合成フィラメント、導電性カーボンモノフィラメントなどのモノフィラメント、及び、PEDOT、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーのいずれか1つ又は組み合わせから作られることが好ましい。
【0039】
電極は銀被覆を施したナイロン糸であることがはるかに好ましい。
【0040】
吸収基体の蓄える液が容量いっぱいに達した場合、透液層からの液の流出が阻まれ、これにより、電極間の電気接続が維持される。システムがダイヤパー等の衛生製品の湿潤を監視するために使用されていて、妥当な時間が経過した後に電極間の電気接続が断たれない状況では、おそらく、ダイヤパー等の衛生製品の着用者は湿っていて不快と感じ始めるであろう。
【0041】
電極が可撓性の導電性テキスタイルの形である状況では、電極は、ラミネーション、縫い込み、編み込み、織り込みを含む何らかの適用な手段により、又は、製造中のテキスタイル基体への電極挿入により、テキスタイル基体に組み入れてよい。
【0042】
テキスタイル基体が複数の層を有する状況では、電極は層と層の間に位置決めされることが好ましい。
【0043】
テキスタイル基体は湿潤時に導電性も有することが好ましい。この特徴によりもたらされる利点は、基体湿潤時に電極のセンサ作用面積がテキスタイル基体の面積に等しいことである。
【0044】
システムは、電極間の電気接続又はその切断に応答して、換言すれば、電極間の導電度の変化に応答して出力を生じさせる手段も有していることが好ましい。出力は、可聴信号、可視信号又は電磁信号であってよい。例えば、出力手段は、電磁信号により交信する送信器と受信器を含んでよい。その上、出力手段は、USBキーや他の書き込み可能/再書き込み可能メモリデバイスなどのメモリデバイスに保存される適当な論理を有してよい。
【0045】
システムがダイヤパー等の衛生製品の湿潤を監視するために使用されていて、液が透液性基体から出ていくのを阻まれる状況において、出力手段は、ダイヤパー又は衛生製品が交換を要求していることを知らせる出力信号を発生させる。
【0046】
システムは、電極間の電気接続、又は導電度、又はその変化を記録する手段を有していることが好ましい。記録手段は、漏れ事象の発生率を記録するのに使用してよく、その記録を利用して、ダイヤパーの湿潤を評価し、それが何時交換を要求するかを評価することができる。
【0047】
本発明で見込んだシステムは、
a)互いに間隔をあけた関係の中で各々、液を逃がすことのできるテキスタイル基体により支持されている2つ又は3つ以上の電極、及び、
b)テキスタイル基体とテキスタイル基体の間に位置決めしてあって、液を保つか蓄えるかする容量が十分でない、又は小さい透液性基体
を有し、これにより、初期液漏れの場合、テキスタイル基体の少なくとも1つと接触する液が該基体を通って出ていき、透液層を通過し、電極間の電気接続を形成し、引続き、液が透液層から出ていき、電気接続を断ち、そして、更なる液漏れがある時、電極間の電気接続が再形成できる。
【0048】
本発明で見込んだシステムはまた、
a)互いに間隔をあけた関係の中で各々支持されている2つ又は3つ以上の電極、
b)電極と電極の間にあって、液を保つか蓄えるかする容量が十分でない、又は小さい透液性基体、及び、この透液性基体と接触し、液を保つか蓄えるかする容量が比較的大きいシアン液吸収基体を有し、これにより、初期液漏れの場合、液が、透液性基体を通過して液吸収基体に向かうにつれて電極との電気接続をブリッジの形で形成でき、液が透液性基体から出て液吸収基体により吸収されると、電極間の電気ブリッジが断たれ、更なる液漏れがある時、電極間の液ブリッジと電気接続が再形成できる。
【0049】
先行の2つの項において述べた本発明の実施例は、下記特徴のいずれか1つ又は組み合わせを含んでもよい。
・電極に関する特徴、すなわち、電極が電解槽の一部をなし、その一方が陰極、他方が陽極、又は交互になっており、これら電極がほぼ不活性でなお導電性を有し、外部電源が電極に結合しており、これで、電極間の電気抵抗の変化が測定できるようになっている。
・透液性基体の特徴、及び、
・液を逃がすテキスタイル基体に関する特徴。
【0050】
本発明では、先行の項において述べた特徴のいずれか1つ又は組み合わせを持つ、又は持たないシステムを内蔵するダイヤパーやおむつ等の衛生製品も見込んでいる。
【0051】
本発明ではまた、先行の項において述べた特徴のいずれか1つ又は組み合わせを持つ、又は持たないシステムを内蔵する衣服又は下着も見込んでいる。本発明のこの実施例は、汗だけに限らないが、汗など尿漏れ以外の他の形の湿潤を監視するのに使用してよく、また、雨水など外部の源からの湿潤を監視するにも使用してよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の3つの好ましい実施例を添付図面に則して詳細に説明する。
【0053】
図面に示した本発明の実施例を以下、ダイヤパー又は他の衛生製品の湿潤を監視することと関連づけて説明する。但し、本発明が、発汗の頻度の監視、又は、雨水による湿潤の監視など他の様々な用途において使用できることは容易に察知されるであろう。
【0054】
図1に示した実施例について言えば、パネル10は、それぞれ、液を逃がすテキスタイル材料からなる上層11と下層12の2つの層を有している。パネル10の下に置かれているのは、ダイヤパーの液吸収芯14を表す親水性層である。芯14は、実際には多層構造であっても、何らかの従来型ダイヤパーの構造を有してもよい。好ましくは、層11及び12は、親水性の芯14に相対して疎水性で、ポリプロピレンスクリムから作られる。パネル10がダイヤパーに組み込まれている状況では、層11及び12は、親水性の芯14に直ぐ隣接して位置決めでき、それどころか、ダイヤパーの液溜めと一体で成形してよい。あるいは代わりに、パネル10は、ダイヤパーから分かれて独立した形であってよく、その場合、パネル10は、望み通りのどんなダイヤパー又はパッドでも、しゃがむ部位(crouch region)にあるセパレートパーツであってよい。
【0055】
テキスタイル層11及び12の間に置かれているのは、有孔透液層15である。有孔層15は、液を保つ性質をまったく、又はごく僅かしか持たず、従って、液が容易に通過できる層である。理想的には、有孔層15は、液が通過できる開口又は通路を有する低密度のポリウレタンフォーム材料からなる。通路は、どんな幾何形状であってもよいが、液が自由に通過できるように少なくとも0.5mmの直径を有することが好ましい。
【0056】
液を逃がすテキスタイル層11及び12の各々の内面の上に置かれているのは、好ましくは銀被覆を施したナイロン糸の形の導電性撚り線16、又は、Shieldex(商標)125/17 (2プライ)などの撚り線である。撚り線16は、主に不活性の導電性撚り線であれば、どんな撚り線でもよい。
【0057】
図1における矢印は、上テキスタイル層11と接触している液がパネル10を通過する方向を示す。特に、パネルの上方にポイントAで排出された液は、上層11を通って逃げ、上層11の電極と接触することができる。同時に、液は、有孔層15を通過し、下テキスタイル層12を通って逃げ、下層12の電極16と接触し、それによって電極間の全部の電気接続を作ることができる。代表的に、電極間の点線は、液がポイントAから排出される時の電気抵抗最小のパスを表す。
【0058】
液が上テキスタイル層11から出ていくにつれて、有孔層15、そして、或る程度まで上テキスタイル層11と下テキスタイル層12は乾いていく。これが起こるにつれて、電気抵抗最小のパスは変っていき、電極間の導電度は消失していく。
【0059】
電極間の導電度については、少なくとも二通りの方法で測定することが可能である。第1の方法は、液漏れを電解質として利用するもので、電極が電解槽の陽極と陰極を形成するように電極を互いに電位の異なる材料から作ることを必要とする。
【0060】
第2の方法、かつ、より好ましい方法は、今、図2に示したテキスト結果に則して説明する。特に、電極は、銀被覆を施したナイロン糸Shieldex(商標)125/17のように同じ電位を持つことが好ましい。電極は、電位及び/又は電流を電極に供給する外部電源に結合させられる。液漏れは電極間の電気抵抗を減少させるが、これは、適当な電子電圧計、電子電流計及び論理デバイスを使って測定できる。
【0061】
図面に描かれていないが、電圧計、電流計又は論理デバイスは、導電性接着テープ、導電性クリップ、又は導電性Velcro(商標)など何らかの適当な手段を使って電極に直接接続してよい。
【0062】
図2は、図1に示した構造に従って吸水性の芯の上に置かれたパネルの表面に水100mlを撒いたテストの結果を示す。合計9つのケースでばらばらに撒水した。各ケースがグラフA〜Iで表してあり、撒水量はケースごとに5〜38mlの範囲内で変えた。図2は、電気抵抗を時間の関数としてキロオーム単位で示す。見て分かる通り、電極間の電気抵抗は、最初、撒水後急に減少し(導電度の増大を知らせる)、その後、水が有孔層から液吸収芯14の中へと出ていくにつれて、抵抗は増大する。9番目のケース(図2において文字Iで表示されている)での撒水の後、抵抗は低いままであり、従って、電極間で高い導電度が維持される。これが起こるのは、液が有孔層15から出ていくことが飽和状態の液吸収芯14によって阻まれ、有孔層15からそれ以上少しの液も吸収できない時である。
【0063】
パネル10を図2に示した仕方で使用する時、介護施設のスタッフは、患者からの液漏れの頻度を監視し、衛生製品の湿潤を監視し、これにより、交換が必要であるか否か判断し、液漏れの度ごと、又は或る時間にわたって漏れの量を監視することが可能となる。あるいは代わりに、電圧信号及び/又は電流信号及び/又は抵抗信号を、ダイヤパー又は衣服の上に局所的に置かれた論理回路により、及び/又は、中央監視ステーションにおいて遠隔で解釈することができる。解釈結果は、ダイヤパー又は衣服の電子ユニットで局所的に、及び/又は、中央監視ステーションにおいて遠隔で知らせることができる。
【0064】
考えるに、液漏れの量は、
i)電気接続又は導電度が測定される時間幅、及び
ii)透液層30にある液通路又は液開口の数とサイズ
の関数として監視してよい。換言すれば、液漏れの量は、液通路又は液開口を通過する液の流量をもって評価してよい。
【0065】
図3に示した本発明の実施例は、好ましくは0.5〜10.0mmの範囲内のサイズを有してよい液開口又は液通路により液を通す上疎水性層30、液を蓄える親水性芯31、及び、この親水性芯31から空間的に分離され、スペース33をあけて疎水層30の1セクションより上で支持される2つの電極32を包含する。図3に示した実施例は、液を蓄える親水性芯、及び、着用者の皮膚と接触する疎水性ライニングを有する最近の使い捨てダイヤパーの基本構造を代表例である。
【0066】
使用時、着用者から漏れた液は、疎水層30を通って液を蓄える芯31へと出ていく。液がこれを蓄える芯31の中に入っていくにつれて、疎水性層の中の液の連続流が電気抵抗最小のパスを提供する。しかしながら、液がこれを蓄える芯31の中に入っていき、疎水層30の中の液の量が減少するにつれて、電気抵抗最小のパスは、図3に点線で示した形になっていく。特に、親水性芯31に吸収された液は、逃がされることによって分散し、この親水性芯31の中の液と共に疎水層30の中に留まる液が電極間の電気接続を形成することになる。疎水層30からの残留液が更に吸収されると、電極間の電気接続は断たれることになる。このようにして起こった電極同士の切断が検出された時、介護施設のスタッフは、着用者が比較的乾いていて快適と感じていると想定できる。
【0067】
妥当な時間が経過した後に電気接続が維持される場合、親水性芯31の吸収量が容量いっぱいに達し、疎水層30から液が完全に出て行くのを阻んでいる可能性がある。この状況では、ダイヤパー着用者は湿っていて不快と感じ始め、介護施設のスタッフは、ダイヤパー又は衛生製品を交換すべく処置することができる。
【0068】
親水性芯31は綿スクリム又はティッシュスクリムから作られること、及び、疎水層30は、約3mmの開口を有するプラスター型テープ、直径0.5〜10.0mmの範囲内の開口を有する低密度フォーム、及び、Ladelle Australianから商品名“Grip It”で提供された材料のようなすべり防止型材料として通常使用される、不規則な形の開口を有する材料のいずれか1つ又は組み合わせを包含することが好ましい。
【0069】
図4に示した実施例は、パネル40がギャップ44により分離された別個のセクション40a及び40bを包含し、各セクションが電極42を有していることを除いて、図3に示した実施例と同様である。パネルの各セクション40a及び40bは疎水性で、液が通過できる通路又は開口を有している。パネル40の下に置かれているのは、従来型ダイヤパーの吸収芯に類似の比較的親水性の芯41である。見て分かる通り、電極42は、疎水性の芯41より上でスペース43により支持される。図4の実施例の利点は、疎水性有孔層の中の残留液により形成された電気接続が最小化されることである。この利点は、図5において電気抵抗の変化を表す結果により描かれている。特に、図5は、液が排出される時、電極間の液のブリッジ形成に応答して電気抵抗が急に減少し、その後、ギャップの中の液が芯41に吸収された時、間もなく電気抵抗がすべて回復させられることを示す。図5のポイントA及びBは、液がパネル上に排出された時点を示す。
【0070】
図4に示されていないが、ギャップ44については、ギャップ内部に限定的な孔を作るために間欠的にポリプロピレンなどの高疎水性材料で満たすことも可能である。
【0071】
本発明の当業者には、上で述べた好ましい実施例に、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく多くの改良及び変更を加えてよいことが容易に察知されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施例に係る3層パネルの横断面図で、パネルは、従来型ダイヤパーの吸収性の芯に隣接して位置決めされ、湿潤を監視するシステムを備えている。
【図2】水100mlの撒水を含む90分テストの間に図1に示したパネルの2つの電極の間で測定された導電度の変化を描いたグラフである。
【図3】本発明の第2実施例に係るパネルの横断面図で、パネルは、従来型ダイヤパーの吸収性の芯に隣接して位置決めされ、湿潤を監視するシステムを備えている。
【図4】本発明の第3実施例の横断面図で、この実施例は、吸収性の芯に隣接して位置決めされ、湿潤を監視するシステムを備えたパネルを包含する。
【図5】図4に示した実施例の2つの電極の間で測定された導電度の変化を描いたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤパー、おむつ及び失禁パッド等の衛生製品の着用者の液漏れを監視し、更には、その湿潤を監視するのに好適な湿分モニタシステムにおいて、
i)互いに間隔をあけた関係の中で各々支持されている2つ又は3つ以上の電極と、
ii)前記電極と電極の間にあって、液を保つか蓄えるかする容量が十分でない、又は小さい透液性基体とを有し、
これにより、初期液漏れの場合、前記電極同士をつなぐ電気ブリッジが少なくとも部分的に、その表面又は中にある液により前記透液性基体を通って延び、続いて、液が前記透液性基体から出ていくことで前記電極間の電気接続は断たれ、更なる液漏れがある時に前記電極間の電気接続が再形成できる湿分モニタシステム。
【請求項2】
前記透液層が、液体を自由に通流させる通路又は開口を有し、この通路又は開口の直径又は横断面幅が0.05〜10.0mmの範囲内である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記通路又は開口の直径又は横断面幅が0.5〜5.0mmの範囲内である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記通路又は開口の直径又は横断面幅が1.0〜3.0mmの範囲内である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記透液層の厚さが2〜10mmの範囲内である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記透液性基体が、1つの電極から別の電極へと連続的に延びているか、前記電極の間を不連続的に延びるように前記電極の間に1つ以上の間欠ギャップを有するかどちらかである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記透液性基体が少なくとも1つの電極と直接接触している、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記透液層が疎水性である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記透液層が、フルオロカーボン、ハイドロカーボン、シリコーン、ワックスのいずれか1つ又は組み合わせを使った化学処理により、又は、プラズマ放電又はコロナ放電の使用を含む表面処理により疎水性にされている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記透液層が、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンのいずれか1つ又はこれらの組み合わせなどの、但し、これだけに限るものでない低密度のポリマー材料からなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
液を保つか蓄えるかする容量が前記透液性基体より大きい液吸収基体をさらに有し、ここで、前記透液性基体の中の液が前記液吸収基体の中に入っていくことができ、液漏れの場合、前記電極同士をつなぐ電気ブリッジが、単に前記透液性基体の中にある液、又は、前記透液性基体と液吸収基体の中にある液により形成される、請求項1〜10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記吸収基体の蓄える液が容量いっぱいに達した時、又は、液を吸収し続けることができなくなった時、前記透液層からの液の流出が阻まれ、これにより、電極間の電気接続が維持される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記吸収基体が綿スクリム又は綿ティッシュである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記吸収基体が親水性である、請求項11〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
各電極がテキスタイル基体により支持されており、又は前記テキスタイル基体と直接接触しており、かつ、前記基体の少なくとも1つが液を逃がす基体である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記テキスタイル基体はセルロース繊維を含有する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記テキスタイル基体がポリエチレンの不織布繊維又はスクリムの1つ又は2つ以上の層を有している、請求項15又は16に記載のシステム。
【請求項18】
前記テキスタイル基体が疎水性である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記電極がリボン、糸又は縄などの細長い構造を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記電極の一方が犠牲金属含有陽極で、他方の電極が不活性陰極であって、液漏れにさらされると、液が前記電極間の電解ブリッジを形成し、酸素の還元が陰極で生じ、金属の酸化が陽極で生じるレドックス型反応を起こさせるようになっている、請求項1〜19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記犠牲陽極がアルミニウム、銅、錫、鉄、亜鉛及び銀のいずれか1つ以上の金属を含有し、前記陰極が前記陽極に直接的又は間接的に結合している、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記陰極がフィラメント繊維又はステープル繊維を含有し、該繊維の表面が不活性導電性材料を含有する、請求項1〜21のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
前記不活性伝導性材料がPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、又は、カーボンインク、シルバーインクなどの導電性インクのいずれか1つ又は組み合わせである、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記陽極が表面に金属を施したフォイル、ワイヤ、ファイバ又は可撓性基体である、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記電極が全体的に、又は少なくとも部分的にほぼ不活性の導電性材料から作られ、前記電極間の電気接続が前記電極間の電気抵抗又は伝導度の変化を監視することにより測定される、請求項1〜19いずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
前記電極が全体的に、又は少なくとも部分的に撚り線、糸、縄、フィラメント、繊維、フィルム又はフォイルを有している、但し、これだけに限るものでないテキスタイル導電性材料から作られる、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記電極が全体的に、又は少なくとも部分的に、金属被覆を施した合成フィラメント、導電性カーボンモノフィラメントなどのモノフィラメント、銀被覆ナイロン、又は、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマー、又は、カーボンインク、シルバーインクなどの導電性インクのいずれか1つ又は組み合わせから作られる、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記システムが、電位差及び/又は電流を前記電極に供給する外部電源、及び、電極間の電気抵抗又は導電度の変化を特定する手段を有している、請求項25〜27のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
更に、電極間の電気接続又はその切断に応答して出力を生じさせる手段を有している、請求項1〜28のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項30】
前記出力が可聴信号、可視信号又は電磁信号である、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記システムがダイヤパー等の衛生製品の湿潤を監視するために使用されていて、液が前記透液性基体から出ていくのを阻まれる時、前記出力手段がダイヤパー又は衛生製品が交換を要求していることを知らせる出力信号を発生させる、請求項29又は30に記載のシステム。
【請求項32】
前記システムが電極間の導電度、電気接続又はその変化を記録する手段を有している、請求項1〜31のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか1項に記載のシステムを内蔵するダイヤパーやおむつ等の衛生製品。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか1項に記載のシステムを内蔵する衣服又は下着。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−525080(P2009−525080A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552643(P2008−552643)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000086
【国際公開番号】WO2007/087674
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】