説明

ダイヤフラム及びその製造方法並びにそのダイヤフラムを有するコンデンサマイクロホン及びその製造方法

【課題】屈曲部を有する強度が高いダイヤフラム及びその製造方法、並びに感度が高くダイヤフラムの強度が高いコンデンサマイクロホン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第一の膜のパターニングによりダイヤフラムの中央部を形成し、前記第一の膜の近端部上に第二の膜を堆積により形成し、前記第二の膜上に第三の膜を堆積により形成し、前記第三の膜を、前記第二の膜上から前記第一の膜の外側に伸びる形状にパターニングすることにより、前記第一の膜と前記第二の膜と前記第三の膜とを含む複層膜からなり前記中央部から前記中央部の外側に屈曲しながら伸びる、前記ダイヤフラムの屈曲部を形成する、ことを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤフラム及びその製造方法並びにそのダイヤフラムを有するコンデンサマイクロホン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスを応用して製造可能なコンデンサマイクロホンや加速度センサが知られている。コンデンサマイクロホンは、音波によって振動するダイヤフラムとプレートとのそれぞれに電極を有し、プレートとダイヤフラムとは支持部によって互いに離間した状態で支持されている。コンデンサマイクロホンは、ダイヤフラムの変位による容量変化を電気信号に変換して出力する。
【0003】
特許文献1には、ダイヤフラムの中央部と端部との間に屈曲部を有するコンデンサマイクロホンが開示されている。特許文献1に記載されたコンデンサマイクロホンでは、ダイヤフラムの残留応力を屈曲部の変形で緩和することにより、ダイヤフラムの振幅を増大させて感度を高めようとしている。しかしながら、特許文献1に記載されたダイヤフラムの屈曲部は単一の薄膜で構成されている。一般に、このようなダイヤフラムの屈曲部は犠牲層に形成した段部の表面上に堆積により形成されるため、その膜厚は段部の底面に近づくほど薄くなり、犠牲層の段部の側面上に成長する部分と段部の底面上に成長する部分との間に結晶粒界が形成される。すなわち、このダイヤフラムの強度は屈曲部の段差を大きくするほど低下する。したがって、特許文献1に記載されたコンデンサマイクロホンでは、ダイヤフラムの強度を保ちながら、屈曲部の段差を大きくすることにより感度を高めることができない。
【0004】
【特許文献1】特開2001−231099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の問題を解決するためになされたものであって、屈曲部を有する強度が高いダイヤフラム及びその製造方法、並びに感度が高くダイヤフラムの強度が高いコンデンサマイクロホン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するためのダイヤフラムの製造方法は、第一の膜のパターニングによりダイヤフラムの中央部を形成し、前記第一の膜の近端部上に第二の膜を堆積により形成し、前記第二の膜上に第三の膜を堆積により形成し、前記第三の膜を、前記第二の膜上から前記第一の膜の外側に伸びる形状にパターニングすることにより、前記第一の膜と前記第二の膜と前記第三の膜とを含む複層膜からなり前記中央部から前記中央部の外側に屈曲しながら伸びる、前記ダイヤフラムの屈曲部を形成する、ことを含む。
ダイヤフラム中央部を構成する第一の膜の近端部上に第二の膜を形成し、第二の膜上から第一の膜の外側に伸びる第三の膜を形成することにより、第一の膜から第三の膜を屈曲させることなく、ダイヤフラム中央部の外側に屈曲部を形成することができる。したがって、ダイヤフラムの屈曲部に結晶粒界が形成されることはない。また、第一の膜から第三の膜を含む複層膜からなる屈曲部の段差は、例えば第二の膜の膜厚で制御することができる。すなわち、ダイヤフラムの強度を保ちながら、ダイヤフラム中央部の外側に要求される段差の屈曲部を形成することができる。ここで強度とは、構造物の破壊に対する耐性を示し、強度が高いとは外力により破壊されにくいことを意味し、強度が低いとは外力により破壊されやすいことを意味する。また近端部とは端に近い部分を意味する。
【0007】
(2)上記目的を達成するためのコンデンサマイクロホンの製造方法は、固定電極を有するプレートと、可動電極を有する中央部と前記中央部から屈曲しながら外側に伸びる屈曲部とを有し、音波によって振動するダイヤフラムと、前記固定電極と前記可動電極との間に空隙を形成しながら、前記プレートと前記ダイヤフラムの前記屈曲部より外側とを支持している支持部と、を備えるコンデンサマイクロホンの製造方法であって、第一の膜のパターニングにより前記ダイヤフラムの前記中央部を形成し、前記第一の膜の近端部上に第二の膜を堆積により形成し、前記第二の膜上に第三の膜を堆積により形成し、前記第三の膜を、前記第二の膜上から前記第一の膜の外側に伸びる形状にパターニングすることにより、前記第一の膜と前記第二の膜と前記第三の膜とを含む複層膜からなる、前記ダイヤフラムの前記屈曲部を形成する、ことを含む。
ダイヤフラム中央部を構成する第一の膜の近端部上に第二の膜を形成し、第二の膜上から第一の膜の外側に伸びる第三の膜を形成することにより、要求される段差の屈曲部を有する強度の高いダイヤフラムを形成することができる。このようにしてダイヤフラムの支持部に固定されている端部と中央部との間に形成された屈曲部は、ダイヤフラム中央部の残留応力によって変形することでダイヤフラム中央部の残留応力を緩和したり、音波によって大きく変形することにより、中央部の音波による振動の振幅を増大させる。すなわち、感度が高くダイヤフラムの強度が高いコンデンサマイクロホンを製造することができる。
【0008】
(3)上記目的を達成するためのコンデンサマイクロホンの製造方法は、前記第三の膜のパターニングにより前記プレートを形成する、ことを含んでもよい。
プレートを構成する第三の膜とダイヤフラムの屈曲部を構成する第三の膜とを同一の工程で形成することができるため、コンデンサマイクロホンの製造工程を簡素化することができる。
【0009】
(4)上記目的を達成するためのダイヤフラムは、中央部と、前記中央部を構成する第一の膜と、前記第一の膜の近端部上に形成されている第二の膜と、前記第二の膜上から前記第一の膜の外側に伸びる第三の膜とを含む複層膜からなり、前記中央部から前記中央部の外側に屈曲しながら伸びる屈曲部と、を備える。
【0010】
(5)上記目的を達成するためのコンデンサマイクロホンは、固定電極を有するプレートと、可動電極を有する中央部と、前記中央部を構成する第一の膜と前記第一の膜の近端部上に形成されている第二の膜と前記第二の膜上から前記第一の膜の外側に伸びる第三の膜とを含む複層膜からなり前記中央部から屈曲しながら外側に伸びる屈曲部とを有し、音波によって振動するダイヤフラムと、前記固定電極と前記可動電極との間に空隙を形成しながら、前記プレートと前記ダイヤフラムの前記屈曲部より外側とを支持している支持部と、を備える。
ダイヤフラムは屈曲部を有し、屈曲部より外側で支持部に支持されている。このような構造を有するコンデンサマイクロホンでは、ダイヤフラムの屈曲部が中央部の残留応力によって変形することでダイヤフラム中央部の残留応力を緩和したり、ダイヤフラムの屈曲部が音波によって大きく変形することでダイヤフラム中央部の音波による振幅を増大させることができる。また、ダイヤフラムの屈曲部は複層膜で構成されているため、屈曲部に結晶粒界が形成されることはなく、屈曲部の強度は高い。すわなち、本発明によるコンデンサマイクロホンは感度が高く、ダイヤフラムの強度も高い。
【0011】
尚、本明細書において、「・・・上に形成する」とは、技術上の阻害要因がない限りにおいて、「・・・上に直に形成する」と、「・・・上に中間物を介して形成する」の両方を含む意味とする。
また、請求項に記載された製造方法の各工程の順序は、技術上の阻害要因がない限り、記載順に限定されるものではなく、どのような順番で行われてもよく、また同時に行われてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、複数の実施例に基づいて本発明の実施の形態を説明する。各実施例において同一の符号が付された構成要素は、その符号が付された他の実施例の構成要素と対応する。
(第一実施例)
図1と図2は、本発明の第一実施例によるコンデンサマイクロホンの構成を示す模式図である。図2は本発明の第一実施例によるコンデンサマイクロホンの平面図であり、図1(A)は図2のA1−A1線による断面図であり、図1(B)は図2のB1−B1線による断面図である。本発明の第一実施例によるコンデンサマイクロホン1は、半導体製造プロセスを用いて製造される所謂シリコンマイクロホンである。コンデンサマイクロホン1は、図1(A)、(B)に断面図として描かれた感音部と、図1(A)に回路図として描かれた検出部とを備えている。以下、感音部の構成、検出部の構成、コンデンサマイクロホン1の製造方法の順に説明する。
【0013】
(感音部の構成)
図1に示すように、コンデンサマイクロホン1の感音部は、ダイヤフラム10、バックプレート30、支持部40等を有している。
ダイヤフラム10は両持ち梁状に支持部40に支持されている(図2参照)。ダイヤフラム10の中央部12は導電膜121の絶縁膜131に固着していない部分で構成され、その外側の屈曲部14は導電膜121の絶縁膜131に固着している部分と、導電膜122の絶縁膜111に固着していない部分と、絶縁膜131と絶縁膜132と導電膜142との複層膜で構成されている(図1(B)参照)。ダイヤフラム10の中央部12を構成する導電膜121は可動電極として機能する。導電膜121と導電膜122と導電膜142は、例えば多結晶シリコン(以下、ポリシリコンという。)等の半導体膜である。絶縁膜131と絶縁膜132は例えばSiO2等の酸化膜である。導電膜121及び導電膜122が請求項に記載の「第一の膜」に相当し、絶縁膜131及び絶縁膜132が「第二の膜」に相当し、導電膜142が「第三の膜」に相当する。
【0014】
尚、第一の膜から第三の膜はそれぞれ単層膜からなるものと説明したが、第一の膜から第三の膜はそれぞれ複層膜でもよい。また、ダイヤフラム10の中央部12は、絶縁膜と少なくともその中央部に形成された可動電極としての導電膜とで構成してもよい。また、絶縁膜131によって形成される段部と絶縁膜132によって形成される段部とを有する屈曲部14を例示したが、屈曲部は少なくとも一カ所以上の段部を有していればよい。また、絶縁膜は導電膜と同形状でなくてもよい。
【0015】
プレートとしてのバックプレート30は、導電膜141の絶縁膜133に固着していない部分で構成されている(図1(A)参照)。導電膜141は例えばポリシリコン等の半導体膜である。バックプレート30は、両持ち梁状に支持部40に支持されてダイヤフラム10の中央部12と立体交差している。このようにバックプレート30をダイヤフラム10の音波によって大きく変位する中央部12とのみ対向させることにより、ダイヤフラム10とバックプレート30とにより形成されるコンデンサ(以下、マイクコンデンサという。)の音波によって変化しない容量成分を低減することができる。バックプレート30には複数の通孔32が形成されている(図2参照)。この結果、音源からの音波は通孔32を通過してダイヤフラム10に伝搬される。導電性のバックプレート30は固定電極として機能する。
【0016】
支持部40は、導電膜141の絶縁膜133に固着している部分と、導電膜122の絶縁膜111及び絶縁膜133に固着している部分と、絶縁膜133と導電膜123と絶縁膜111と基板100とで構成されている。絶縁膜111と絶縁膜133は例えばSiO2等の酸化膜であり、導電膜123は例えばポリシリコン等の半導体膜であり、基板100は例えば単結晶シリコン基板である。支持部40には、基板100と絶縁膜111とを貫通する開口部42が形成されている。開口部42は、コンデンサマイクロホン1のバックキャビティを構成している。
【0017】
図2に示す電極60は、ダイヤフラム10と検出部とを接続するための電極である。電極60は導電膜122と同一層に形成され、電極60から導電膜122まで伸びる導線125と、導電膜122と、導電膜122から導電膜121まで伸びる導線124とを介して導電膜121に接続されている(図4(A2)参照)。電極61は、バックプレート30と検出部とを接続するための電極である。電極61は、電極61から導電膜141まで伸びる導線143を介して導電膜141に接続されている。
【0018】
電極62は、電極62から導電膜123に伸びる導線126を介して導電膜123に接続されている(図4(A2)参照)。導電膜123は他の導電膜と電気的に絶縁されて、バックプレート30を構成する導電膜141と基板100との間に形成されている。電極62に検出部の出力電圧と同一電圧を印加することにより、導電膜123をガード電極として用いることができる。詳細は後述する。
【0019】
尚、コンデンサマイクロホン1は、ダイヤフラム10がバックプレート30よりも音源側に位置し、ダイヤフラム10に直接音波が伝搬するように構成してもよい。この場合、バックプレート30の通孔32は、ダイヤフラム10とバックプレート30の間に形成されている空隙50と、バックキャビティとを連通させる通路として機能する。
【0020】
(検出部の構成)
図1(A)に示すように、ダイヤフラム10はバイアス電源回路1000に接続され、バックプレート30は抵抗1002を介してグランドに接続されている。そしてバックプレート30はプリアンプ1010にも接続されている。コンデンサマイクロホン1の検出部はバックプレート30とグランドとの間の電圧に相関する信号をプリアンプ1010から出力する。
【0021】
具体的には例えば、バイアス電源回路1000の出力端に接続されているリード線1004が電極60と基板100とに接続され、抵抗1002の一端に接続されているリード線1006が電極61に接続され、抵抗1002の他端に接続されているリード線1008がコンデンサマイクロホン1の実装基板のグランドに接続されている。抵抗1002としては抵抗値が大きなものを使用する。具体的には抵抗1002はGルオーダーの電気抵抗を有するものが望ましい。バックプレート30と抵抗1002とを接続しているリード線1006はプリアンプ1010の入力端にも接続されている。プリアンプ1010としては入力インピーダンスの高いものを使用することが望ましい。
【0022】
尚、上述したように電極62に検出部の出力電圧と同一電圧を印加することにより、導電膜123をガード電極として用いることができる。ガード電極とは、バックプレート30を構成する導電膜141と基板100との間に生じる寄生容量を低減するための電極のことである。具体的には例えば、導電膜123をガード電極として用いる場合、図1(A)に示すプリアンプ1010でボルテージフォロア回路を構成し、プリアンプ1010の出力端を電極62に接続すればよい。バックプレート30を構成する導電膜141と導電膜123とを同電位にすることにより、導電膜141と導電膜123との間に生じる寄生容量を除去することができ、導電膜141と基板100との間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0023】
(コンデンサマイクロホンの作動)
音波がバックプレート30の通孔32を通過してダイヤフラム10に伝搬すると、ダイヤフラム10は音波によって振動する。ダイヤフラム10が振動すると、その振動によりバックプレート30とダイヤフラム10との間の距離が変化し、ダイヤフラム10とバックプレート30とにより形成されるマイクコンデンサの静電容量が変化する。
【0024】
バックプレート30は上述したように抵抗値が大きい抵抗1002に接続されているため、マイクコンデンサの静電容量がダイヤフラム10の振動により変化したとしても、マイクコンデンサに蓄積されている電荷が抵抗1002を流れることは殆どない。すなわち、マイクコンデンサに蓄積されている電荷は変化しないものとみなすことができる。したがって、マイクコンデンサの静電容量の変化をバックプレート30とグランドの間の電圧の変化として取り出すことができる。
【0025】
このようにしてコンデンサマイクロホン1は、マイクコンデンサの静電容量の極めてわずかな変化を電気信号として出力する。すなわちコンデンサマイクロホン1は、ダイヤフラム10に加わる音圧の変化をマイクコンデンサの静電容量の変化に変換し、マイクコンデンサの静電容量の変化を電圧の変化に変換することにより、音圧の変化に相関する電気信号を出力する。
【0026】
上述したようにダイヤフラム10の屈曲部14は中央部12から支持部40まで屈曲しながら伸びている。この結果、屈曲部14が中央部12の残留応力により変形することで中央部12の残留応力を緩和したり、屈曲部14が音波によって大きく変形することにより、中央部12の音波による振動の振幅を増大させることができる。
【0027】
ところが、ダイヤフラム10が音波によって振動すると屈曲部14にはダイヤフラム10の変形に伴う応力が集中する。したがって、ダイヤフラム10の屈曲部14の強度が不足していると、ダイヤフラム10は屈曲部14で破損するおそれがある。
【0028】
そこで、コンデンサマイクロホン1では、上述したようにダイヤフラム10の屈曲部14を複層膜で構成している。ダイヤフラム10の屈曲部14を複層膜で構成することにより、屈曲部14を構成する各薄膜を屈曲させることなく、ダイヤフラム10の中央部12の外側に屈曲部14を形成することができる。したがって、ダイヤフラム10の屈曲部14に結晶粒界が形成されることはない。また屈曲部14の段差(図3に示す矢印90参照)は、例えば第二の膜としての絶縁膜131及び絶縁膜132の膜厚によって制御することができる。すなわち、ダイヤフラム10の屈曲部14を複層膜で構成することにより、ダイヤフラム10の強度を保ちながら、要求される段差の屈曲部14を形成することができる。
【0029】
(コンデンサマイクロホンの製造方法)
図4から図6は、コンデンサマイクロホン1の製造方法を示す模式図である。(B)は(A)の図4(A1)に示すB4−B4線による断面図であり、(C)は図4(A1)に示すC4−C4線による断面図である。
【0030】
はじめに、図4(C1)に示すように、基板100上に絶縁膜110を形成する。基板100は、例えば単結晶シリコン基板等の半導体基板である。具体的には、基板100の表面に例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)等で絶縁材料を堆積させることにより、基板100上に絶縁膜110を形成する。
次に、絶縁膜110上に導電膜120をCVD等で形成する。導電膜120は、例えばポリシリコン膜である。尚、SOI基板を用いることにより、本工程は省略可能である。
【0031】
次に、図4(A2)に示すように、導電膜120をパターニングすることにより、導電膜121から導電膜123と導線124及び導線125と電極60及び電極62とを形成する。導電膜121と導電膜122は略矩形であり、ダイヤフラム10の中央部12を構成する導電膜121が屈曲部14を構成する2つの導電膜122の間に位置するように、ダイヤフラム10の長手方向に配列されている。導電膜123は、後述する工程で形成する導電膜141と対向させるために、導電膜141の形状及び配置に応じて形成されている。
【0032】
具体的には例えば、導電膜120のパターニングは以下のように行う。まず、導電膜120の不要な部分を露出させるレジスト膜を導電膜120上にリソグラフィを用いて形成する。より具体的には、導電膜120にレジストを塗布してレジスト膜を形成する。そして所定形状のマスクを配置してレジスト膜に対して露光現像処理を施し、不要なレジスト膜を除去する。これにより、導電膜120の不要な部分を露出させるレジスト膜が導電膜120上に形成される。レジスト膜の除去には、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)等のレジスト剥離液を用いる。次に、レジスト膜から露出する導電膜120をRIE(Reactive Ion Etching)等でエッチングすることにより、導電膜121から導電膜123と導線124と導線125と電極60から電極62とを形成する。そしてレジスト膜を除去する。
【0033】
次に、図4(A3)に示すように、絶縁膜110上に導電膜120より厚い絶縁膜130をCVD等で形成する。後述する工程において、導電膜121から導電膜123、導電膜141及び導電膜142(図2参照。以下、導電膜という。)に対して絶縁膜110及び絶縁膜130(以下、絶縁膜という。)を選択的に除去するため、絶縁膜は導電膜に対して選択比の高い材料で形成する。例えば導電膜をポリシリコンで形成する場合は、絶縁膜はSiO2で形成すればよい。また、絶縁膜を導電膜に対して選択的に除去する工程では、絶縁膜の一部を除去しコンデンサマイクロホン1を構成する絶縁膜を残存させるため、絶縁膜110と絶縁膜130は同一材料で形成することが望ましい。絶縁膜110と絶縁膜130を同一材料で形成することにより、両者のエッチングレートを等しくできる。この結果、絶縁膜のエッチング量を容易に制御することが可能となる。
【0034】
次に、絶縁膜130上に導電膜140をCVD等で形成する。例えば導電膜140はポリシリコン膜である。
次に、図5(B4)に示すように、導電膜140をパターニングすることにより、バックプレート30を構成する導電膜141と、ダイヤフラム10の屈曲部14を構成する導電膜142と、電極61と導線143とを形成する(図5(B4)参照)。導電膜141は略矩形であり、その長手方向は導電膜121及び導電膜122の配列方向と直交し、絶縁膜130を介して導電膜121と立体交差している。導電膜142は略矩形であり、導電膜121の導電膜122と隣り合う近端部121a上から、導電膜122の導電膜121と隣り合う近端部122a上まで伸びている。
【0035】
次に、図5(A5)に示すように、支持部40の開口部42を構成する開口部102を基板100に形成する。具体的には開口部102は、例えば以下に示すように形成する。まず、基板100の開口部102を形成する部位を露出させるレジスト膜をリソグラフィを用いて形成する。次に、基板100のレジスト膜から露出する部位を絶縁膜110に達するまでDeepRIE等で除去することにより、基板100に開口部102を形成する。そしてレジスト膜を除去する。
【0036】
次に、絶縁膜110及び絶縁膜130の一部を除去することにより、コンデンサマイクロホン1の各部を形成する(図6(B7)(C7)参照)。具体的には例えば、絶縁膜133の一部は以下のように除去する。まず、図6(A6)から(C6)に示すように、絶縁膜130上に支持部40として残存させる部位を覆うレジスト膜150を形成する。次に、絶縁膜をウェットエッチングで除去する。例えば絶縁膜110及び絶縁膜130をSiO2で形成した場合、エッチング液としてはフッ酸等を用いればよい。
【0037】
エッチング液は、通孔32、導電膜142に形成されている通孔144、導電膜141及び導電膜142とレジスト膜150との間の間隙、基板100の開口部102等から浸入して絶縁膜を溶解させる。例えば、エッチング液が導電膜121と導電膜141との間の絶縁膜130を溶解することによりダイヤフラム10とバックプレート30との間の空隙50が形成され、絶縁膜のレジスト膜150及び基板100に覆われた一部が残存することにより支持部40が形成される。
【0038】
このとき、エッチング液が導電膜121と導電膜122との間の間隙及び導電膜142の通孔144から浸入して絶縁膜130を溶解させ、絶縁膜130の導電膜142と導電膜121の間の部分及び絶縁膜130の導電膜142と導電膜122との間の部分が残存することにより、第二の膜としての絶縁膜131及び絶縁膜132が形成される。このように絶縁膜の一部を除去することでコンデンサマイクロホン1の各部を形成することができ、コンデンサマイクロホン1の感音部が得られる。
【0039】
(第二実施例)
第二実施例によるコンデンサマイクロホンの検出部は、第一実施例によるコンデンサマイクロホン1の検出部と実質的に同一である。以下、第二実施例によるコンデンサマイクロホンの感音部、コンデンサマイクロホンの製造方法の順に説明する。
【0040】
(感音部の構成)
図7は本発明の第二実施例によるコンデンサマイクロホンの感音部の構成を示す模式図である。図7(A)は平面図、図7(B)は(A)のB7−B7線による断面図である。第二実施例によるコンデンサマイクロホン2の感音部は、ダイヤフラム210及びバックプレート230が第一実施例に係るダイヤフラム10及びバックプレート30と異なる。
【0041】
ダイヤフラム210は、その中央部212の外側に伸びる複数の屈曲部214を介して支持部40に支持されている。ダイヤフラム210の中央部212は円盤状であり、屈曲部214は中央部212の径方向に屈曲しながら支持部40まで伸びている。
【0042】
屈曲部214は、第一実施例に係る屈曲部14と同様に、導電膜121の絶縁膜131に固着している部分と、導線膜122の絶縁膜111に固着していない部分と、絶縁膜131と絶縁膜132と導電膜142との複層膜で構成されている。具体的には例えば、導電膜121は円盤状であり、導線膜122は導電膜121を囲む円環状であり、絶縁膜131及び絶縁膜132は柱状である。絶縁膜131は導電膜121の近端部上に位置し、絶縁膜132は導線膜122の内周側の近端部上に位置している。
【0043】
バックプレート230は、その二次元形状が第一実施例に係るバックプレート30と異なる。具体的には例えば、バックプレート230の中央部は円盤状であり、その近端部は中央部から支持部まで放射状に伸びている。バックプレート230の膜構成は、第一実施例に係るバックプレート30と実質的に同一である。
【0044】
(コンデンサマイクロホンの製造方法)
図8から図10は、コンデンサマイクロホン2の製造方法を示す模式図である。(B)は(A)の図8(A1)に示すB8−B8線による断面図であり、(C)は図8(A1)に示すC8−C8線による断面図である。
【0045】
はじめに、図8(C1)に示すように、第一実施例に係る製造方法と同様にして基板100上に絶縁膜110を形成し、絶縁膜110上に導電膜120を形成する。
次に、図8(A2)に示すように、導電膜120をパターニングすることにより、導電膜121と導電膜122と導線124と導線125と電極60とを形成する。導電膜121は円盤状であり、導線膜122は導電膜121を囲む円環状であり、導線124は導電膜121から導電膜122まで伸び、導線125は導電膜122から電極60まで伸びている。
【0046】
次に、図9(C3)に示すように、第一実施例に係る製造方法と同様にして絶縁膜110上に絶縁膜130を形成し、絶縁膜130上に導電膜140を形成する。
次に、図9(A4)に示すように、導電膜140をパターニングすることにより、バックプレート230を構成する導電膜141と、ダイヤフラム210の屈曲部214を構成する複数の導電膜142とを形成する。導電膜141は中央部が円盤状であって近端部が中央部から放射状に伸びている。導電膜142は導電膜121の近端部121a上から導電膜122の内周側の近端部122a上まで伸びている。
【0047】
次に、図10(A5)に示すように、第一実施例に係る製造方法と同様にして支持部40の開口部42を構成する開口部102を基板100に形成する。そして、図10(A6)に示すように、第一実施例に係る製造方法と同様にして絶縁膜110及び絶縁膜130の一部を除去することにより、コンデンサマイクロホン2の各部を形成する。
【0048】
以上、本発明のダイヤフラム及びその製造方法並びにそのダイヤフラムを有するコンデンサマイクロホン及びその製造方法の第実施形態について、コンデンサマイクロホン1及びコンデンサマイクロホン2を例示して説明した。しかし本発明は、技術上の阻害要因がない限りにおいて、屈曲部を有するダイヤフラム及びそのようなダイヤフラムを備えるコンデンサマイクロホンに適用することができる。また、本発明のダイヤフラム及びその製造方法は、音圧以外の圧力を検出するセンサのダイヤフラムに適用してもよい。
【0049】
また、第一の膜としての導電膜121及び導電膜122と第三の膜としての導電膜142とを形成した後に、絶縁膜の一部を除去することにより第二の膜としての絶縁膜131及び絶縁膜132を形成すると説明したが、第一の膜から第三の膜はどのような順序で形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第一実施例によるコンデンサマイクロホンを示す模式図。
【図2】第一実施例によるコンデンサマイクロホンを示す平面図。
【図3】第一実施例に係るダイヤフラムの屈曲部を説明するための模式図。
【図4】第一実施例によるコンデンサマイクロホンの製造方法を示す模式図。
【図5】第一実施例によるコンデンサマイクロホンの製造方法を示す模式図。
【図6】第一実施例によるコンデンサマイクロホンの製造方法を示す模式図。
【図7】第二実施例によるコンデンサマイクロホンを示す模式図。
【図8】第二実施例によるコンデンサマイクロホンの製造方法を示す模式図。
【図9】第二実施例によるコンデンサマイクロホンの製造方法を示す模式図。
【図10】第二実施例によるコンデンサマイクロホンの製造方法を示す模式図。
【符号の説明】
【0051】
1、2:コンデンサマイクロホン、10、210:ダイヤフラム、12、212:中央部(ダイヤフラムの中央部)、14、214:屈曲部(ダイヤフラムの屈曲部)、30、230:バックプレート(プレート)、32:通孔、40:支持部、50:空隙、60:電極、121:導電膜(第一の膜)、122:導電膜(第一の膜)、131:絶縁膜(第二の膜)、132:絶縁膜(第二の膜)、142:導電膜(第三の膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の膜のパターニングによりダイヤフラムの中央部を形成し、
前記第一の膜の近端部上に第二の膜を堆積により形成し、
前記第二の膜上に第三の膜を堆積により形成し、
前記第三の膜を、前記第二の膜上から前記第一の膜の外側に伸びる形状にパターニングすることにより、前記第一の膜と前記第二の膜と前記第三の膜とを含む複層膜からなり前記中央部から前記中央部の外側に屈曲しながら伸びる、前記ダイヤフラムの屈曲部を形成する、
ことを含むダイヤフラムの製造方法。
【請求項2】
固定電極を有するプレートと、
可動電極を有する中央部と前記中央部から屈曲しながら外側に伸びる屈曲部とを有し、音波によって振動するダイヤフラムと、
前記固定電極と前記可動電極との間に空隙を形成しながら、前記プレートと前記ダイヤフラムの前記屈曲部より外側とを支持している支持部と、を備えるコンデンサマイクロホンの製造方法であって、
第一の膜のパターニングにより前記ダイヤフラムの前記中央部を形成し、
前記第一の膜の近端部上に第二の膜を堆積により形成し、
前記第二の膜上に第三の膜を堆積により形成し、
前記第三の膜を、前記第二の膜上から前記第一の膜の外側に伸びる形状にパターニングすることにより、前記第一の膜と前記第二の膜と前記第三の膜とを含む複層膜からなる、前記ダイヤフラムの前記屈曲部を形成する、
ことを含むコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項3】
前記第三の膜の一部で前記プレートを形成する、
ことを含む請求項2に記載のコンデンサマイクロホンの製造方法。
【請求項4】
中央部と、
前記中央部を構成する第一の膜と、前記第一の膜の近端部上に形成されている第二の膜と、前記第二の膜上から前記第一の膜の外側に伸びる第三の膜とを含む複層膜からなり、前記中央部から前記中央部の外側に屈曲しながら伸びる屈曲部と、
を備えるダイヤフラム。
【請求項5】
固定電極を有するプレートと、
可動電極を有する中央部と、前記中央部を構成する第一の膜と前記第一の膜の近端部上に形成されている第二の膜と前記第二の膜上から前記第一の膜の外側に伸びる第三の膜とを含む複層膜からなり前記中央部から屈曲しながら外側に伸びる屈曲部とを有し、音波によって振動するダイヤフラムと、
前記固定電極と前記可動電極との間に空隙を形成しながら、前記プレートと前記ダイヤフラムの前記屈曲部より外側とを支持している支持部と、
を備えるコンデンサマイクロホン。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate