説明

ダイレクトコンバージョン受信機及びその受信方法

【課題】 DCオフセット補償を行った場合の過渡応答特性による信号の不確定さを軽減するダイレクトコンバージョン受信機を提供する。
【解決手段】 受信した無線周波数信号を帯域制限し増幅し周波数変換するアナログ信号処理部2,3,4と、このアナログ信号処理部の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換部11−1,11−2と、このデジタル信号を処理するデジタル信号処理部19を有するダイレクトコンバージョン受信機において、デジタル信号処理部19に、デジタル信号のDCオフセット分を検出して補正する手段22,20を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムで使用可能な基地局,車載局,携帯局に組み込まれる、ダイレクトコンバージョン方式を用いた受信機において、DCオフセット量を検出し補正するための機能を備えるダイレクトコンバージョン方式受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信システムの高度化と複雑化により1つの受信装置において複数の無線通信システムに対応可能なハードウエアが求められている。その中でダイレクトコンバージョン受信方式は、小型化,低価格化の効果もあり注目を浴びている。(例えば、特許文献1参照)
以下図2を用いて従来の構成と動作原理を説明する。図2は従来のダイレクトコンバージョン受信機のブロック構成図である。
【0003】
アンテナ1から入力される受信信号はバンドパスフィルタ(BPF)2に入力され、所望の周波数帯域の信号を通過させる。妨害波を除去した信号はRF増幅器3に入力され、直交復調器4で、同相(I),直交(Q)成分に分離される。直交復調器4は分配器5,ミキサ6−1,6−2,90度移相器8で構成される。直交復調器4に入力された信号は、分配器5により電力を2分配される。PLL周波数シンセサイザ13より入力された搬送波信号の一方がミキサ6−1へ、もう一方が90度移相器8を経てミキサ6−2に入力される。90度位相が異なる搬送波信号のミキシングにより、同相成分I/直交成分Q信号が得られる。
【0004】
I,Q信号はそれぞれ、ローパスフィルタ9−1,9−2(LPF)で不要成分が除去され、AGCアンプ10−1,10−2に入力される。AGCアンプ10−1,10−2は入力信号レベルが大きい場合ゲインを小さく、入力信号レベルが小さい場合はゲインを大きくするように働き、A/Dコンバータ11−1,11−2に入力され、信号レベルが最適なレベルとなるように動作する。
【0005】
A/Dコンバータ11−1,11−2でデジタル信号に変換された信号は、デジタル処理部14に入力され、ベースバンド処理部15で符号再生等の処理がなされる。
【0006】
ダイレクトコンバージョン方式では入力信号と搬送波周波数(LO)が一致しているため、LOリーク信号はミキシングによりそのままDC成分となり復調処理において性能劣化をもたらす。このためDCオフセット補正処理が必要となる。図2ではI/Q信号からDC検出補正部16を用いてオフセットを検出し、このオフセット分をキャンセルするようなDC電圧をD/Aコンバータ12−3,12−4で発生させ、加算器7−1,7−2に加算することによりDCオフセットを補正する。
【0007】
また、AGC処理部17は、入力信号のレベルによりAGCアンプ10−1,10−2の制御を行う。受信レベルより所望のゲインが得られるよう、ベースバンド処理部15からの信号で制御電圧を出力し、D/Aコンバータ18でアナログ信号に変換し、AGCアンプ10−1,10−2のゲインを調整して、入力レベル一定となるように制御を行う。
【0008】
これにより受信性能の劣化を防ぐことが可能となる。
【0009】
【特許文献1】特開平10−93647号公報(第4頁、図53)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記、従来の技術で述べたように、ダイレクトコンバージョン方式では入力信号と搬送波周波数(LO)が一致しているため、LOリーク信号はミキシングによりそのままDC成分となり復調処理において性能劣化をもたらす。また、ベースバンド帯内部で発生したDCオフセットも、そのままゲイン倍されA/Dコンバータ11−1,11−2の入力に加算される。そのため、従来の技術で述べたような方法でオフセットを除去する必要があるが、アナログ部でオフセットを補償した場合、図3の様に過渡応答特性でオフセット値が収束するまで時間がかかり、また収束する間はオフセットを含んだ信号となるため受信特性の劣化となる。
【0011】
他に、ベースバンド帯でのゲインが大きいため高精度のオフセット補償能力を必要とする。
【0012】
本発明の目的は、DCオフセット補償を行った場合の過渡応答特性による信号の不確定さを軽減するダイレクトコンバージョン受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、受信した無線周波数信号を帯域制限し増幅し周波数変換するアナログ信号処理部と、このアナログ信号処理部の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、このデジタル信号を処理するデジタル信号処理部を有するダイレクトコンバージョン受信機において、前記デジタル信号処理部に、前記デジタル信号のDCオフセット分を検出して補正する手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、DCオフセット補償を行った場合の過渡応答特性による信号の不確定さを軽減するダイレクトコンバージョン受信機を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明によるダイレクトコンバージョン受信機のブロック構成図である。
【0016】
アンテナ1から入力される受信信号はバンドパスフィルタ(BPF)2に入力され、所望の周波数帯域の信号を通過させる。妨害波を除去した信号はRF増幅器3に入力され、直交復調器5で同相(I),直交(Q)成分に分離される。直交復調器4は分配器5,ミキサ6−1,6−2,90度移相器8で構成される。直交復調器5に入力された信号は、分配器5により電力を2分配される。PLL周波数シンセサイザ18より入力された搬送波信号の一方はミキサ6−1へ、もう一方は90度移相器8を経てミキサ6−2に入力される。90度位相が異なる搬送波信号のミキシングにより、同相成分I/直交成分Q信号が得られる。
【0017】
I/Q信号はそれぞれ、ローパスフィルタ(LPF)9−1,9−2で不要成分が除去され、AGCアンプ10−1,10−2に入力される。AGCアンプ10−1,10−2は入力信号レベルが大きい場合ゲインを小さく、入力信号レベルが小さい場合はゲインを大きくするように働き、A/Dコンバータ11−1,11−2に入力される信号レベルが最適なレベルとなるように動作することで、ダイナミックレンジが確保できる。
【0018】
A/Dコンバータ11−1,11−2でデジタル信号に変換された信号は、デジタル部19に入力され、A/Dコンバータ11−1,11−2の出力に接続されたベースバンド処理部20で符号再生等の処理がなされる。
【0019】
次に、DCオフセット補償動作について説明する。
【0020】
まず、電源投入直後やリセット時など受信動作を開始する前に、A/Dコンバータ11−1,11−2の出力に接続されたDC検出補正部21で、入力電圧値を例えば、1フレーム分積分しDCオフセットを検出する。検出したDCオフセットがあらかじめ設定した規定レベル範囲内であれば、そのまま受信動作に移行する。ここでDCオフセットが規定範囲内を超えていたらDC検出補正部21から補正データを出力し、D/Aコンバータ12−1,12−2より補正電圧を出力し、加算器7−1,7−2に加算することにより、DCオフセットが規定範囲内に入るよう調整を行う。この時、DCオフセット値は正確に検出し補正できなくてもよく、A/Dコンバータ11−1,11−2の動作ダイナミックレンジの範囲内であればかまわない。
【0021】
本実施の形態において、受信動作時は、図4(a)に示すように、先頭にプリアンブル信号を有する送信信号を受信する。この送信信号のプリアンブル信号は0を中心として正負対称(±v)となる信号である。
【0022】
図1において、A/Dコンバータ11−1,11−2の出力に接続されたピークレベル検出器22は、このプリアンブル信号のピーク値に相当する信号(ここではx1,x2)を検出する。I,Q信号にDCオフセットが含まれている場合、図4(b)に示すようにDCオフセット分が加算された信号となる。そこで、ピークレベル検出器22は、このプリアンブル信号のピーク値x1,及びx2を検出し、ベースバンド処理部20に送る。ベースバンド処理部20は、補正値(x1+x2)/2を算出すると共に、以降の復調処理において、受信して信号処理し変換したデジタル信号から補正値を減算し、演算処理に用いることでDCオフセット補正による過渡応答の影響を無くすことができる。
【0023】
本実施の形態によれば、ダイレクトコンバージョン受信機において、プリアンブル信号にゼロクロスする正負対称の信号を用いた送信信号を受信し、デジタル信号処理部における信号の復調の前に、プリアンブル信号のピークレベルを検出し、DCオフセット補正値を以降の信号処理部においてデジタル的に処理することで、アナログ信号でDCオフセット補償を行った場合の過渡応答特性による信号の不確定さを最小にすることができ、受信特性の安定化をより図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるダイレクトコンバージョン受信機の実施の形態のブロック構成図である。
【図2】従来のダイレクトコンバージョン受信機のブロック構成図である。
【図3】従来の課題を説明する補助図である。
【図4】本発明の動作説明の補助図である。
【符号の説明】
【0025】
1:アンテナ、2:バンドパスフィルタ(BPF)、3:RF増幅器、4:直交復調器、5:分配器、6−1,6−2:ミキサ、7−1,7−2:加算器、8:90度移相器、9−1,9−2:ローパスフィルタ(LPF)、10−1,10−2:AGCアンプ、11−1,11−2:A/Dコンバータ、12−1,12−2,12−3,12−4:D/Aコンバータ、13:PLL周波数シンセサイザ、14,19:デジタル処理部、15,20:ベースバンド処理部、16,21:DC検出補正部、17:AGC処理部、18:D/Aコンバータ、22:ピークレベル検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した無線周波数信号を帯域制限し増幅し周波数変換するアナログ信号処理部と、このアナログ信号処理部の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、このデジタル信号を処理するデジタル信号処理部を有するダイレクトコンバージョン受信機において、
前記受信した無線周波数信号は、先頭に、ゼロクロスする信号からなるプリアンブル信号を有し、
前記デジタル信号処理部に、前記プリアンブル信号のピークレベルを検出してDCオフセット分を算出し、前記プリアンブル信号に続く前記デジタル信号に変換された前記無線周波数信号を補正する手段を備えたことを特徴とするダイレクトコンバージョン受信機。
【請求項2】
受信した無線周波数信号を帯域制限し増幅し周波数変換するアナログ信号処理部と、このアナログ信号処理部の出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、このデジタル信号を処理するデジタル信号処理部を有するダイレクトコンバージョン受信機の受信方法において、
受信動作の開始前には、入力電圧値に対して所定のフレーム分積分してDCオフセットを検出し、該検出したDCオフセットがあらかじめ設定した規定レベル範囲の場合、そのまま受信動作に移行し、前記検出したDCオフセットが前記あらかじめ設定した規定レベル範囲でない場合、DCオフセット補正データを出力することでDCオフセットが前記あらかじめ設定した規定レベル範囲に入る補正を行い、
受信動作時には、先頭に、ゼロクロスする信号からなるプリアンブル信号を有する送信信号を受信し、前記デジタル信号処理部で、前記プリアンブル信号のピークレベルを検出してDCオフセット分を算出し、前記プリアンブル信号に続く前記デジタル信号に変換された前記無線周波数信号を補正することを特徴とするダイレクトコンバージョン受信機の受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−25454(P2006−25454A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254471(P2005−254471)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【分割の表示】特願2002−356442(P2002−356442)の分割
【原出願日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】