説明

ダイ塗布方法

【課題】テンション支持方式にて支持された支持体にスロットダイを使用して塗布液を塗布するダイ塗布方法において、容易且つ簡便に塗布幅を変更する。更に、塗布厚みが均一な塗布膜を安定して得る。
【解決手段】一対のサポートロール41,42間にテンション支持方式にて支持された連続走行する支持体1にスロットダイ10を用いて塗布液2を塗布する。スロットダイの塗布液が吐出されるスロット13の幅方向の両端に一対のシム板20a,20bが挿入され、更に、一対のシム板の少なくとも一部を覆うようにスロットダイの支持体に対向する面に一対のラップシート21a,21bが密着されている。ラップシートの厚みTは、(0.8×H3/VR)≦T<(2.1×H3/VR)を満足する。ここで、H3は支持体上に塗布された塗布液の乾燥後の厚み、VRは塗布液の体積濃度[vol%]/100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する支持体上にスロットダイを用いて塗布液を塗布するダイ塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続走行する支持体に塗布液を塗布する方式としては、例えば、バーコータ方式、リバースロールコータ方式、グラビアロールコータ方式、エクストルージョンコータなどのスロットダイコータ方式等が知られている。これらの中でもスロットダイコータ方式は、他の方式と比較して、高速で薄層の塗布が可能であることから多用されている。
【0003】
製品の多様化等に対応するために、塗布幅が異なる塗布物を効率良く得ることが要望されている。必要な塗布幅よりも広幅の塗布物を作成した後、スリットして不要部分を除去して所望する塗布幅の塗布物を得る方法は、塗布液や支持体をはじめとする材料の無駄を生じコスト高となる。また、スロットダイコータ方式におけるコータヘッドであるスロットダイを分解し、塗布液を吐出するスロット内に塗布幅を規制するための部材を配置固定することで、塗布液の吐出幅を調整する方法は、スロットダイの分解が必須であるので多大な時間と労力を要し作業性が悪く、また、スロットダイの分解によりスロットダイ内に残存する塗布液を損失してしまうという問題がある。
【0004】
特許文献1には、スロットダイのスロットの幅方向の両端に塗布幅を規制するためのディッケルを挿入し、更に、スロットダイの塗布液吐出側の先端面のうちディッケルの挿入部をラップシートで覆って、ディッケルとスロット内面との隙間をシールした塗布装置が記載されている。このような塗布装置によれば、塗布幅を容易に変更することが可能である。
【特許文献1】特開2007−69142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スロットダイコータ方式による塗布液の塗布方法において、支持体の支持方式としては、バックアップロール支持方式やテンション支持方式が知られている。
【0006】
バックアップロール支持方式では、支持体をバックアップロールで支持しながら連続走行させ、バックアップロールとの間に支持体を挟むように配置されたスロットダイから、塗布液を支持体上に吐出し塗布する。この方式では、スロットダイの塗布液を吐出するダイ先端と支持体表面との間に隙間(コーティングギャップ)を設け、ダイ先端と支持体表面との間に塗布液で所望するビードを形成することで、安定な塗布を実現している。
【0007】
一方、テンション支持方式では、平行に配置された一対のロール間に支持体を架け渡して連続走行させ、一対のロール間に且つ支持体に対向して配置されたスロットダイから、塗布液を支持体上に吐出し塗布する。この方式では、一対のロール間に所定の張力を付与して架け渡された支持体にスロットダイの塗布液を吐出するダイ先端を押し付けて支持体を撓ませた状態で、ダイ先端から塗布液が押し出される。ダイ先端から押し出される塗布液の押し出し圧と、ダイ先端が押し付けられて撓むことで支持体に生じた反発力とをバランスさせて、ダイ先端と支持体との間に所定厚の塗布液層を形成することで、安定な塗布を実現している。
【0008】
このように、バックアップロール支持方式とテンション支持方式とは、塗布液を塗布するメカニズムにおいて明確に異なる。上述した特許文献1に記載された塗布装置はバックアップロール支持方式を前提としているから、そこに記載された塗布幅の変更方法を、テンション支持方式にそのまま適用しても所望する高品位の塗布膜を安定して得ることはできない。
【0009】
本発明の目的は、テンション支持方式にて支持された支持体にスロットダイを使用して塗布液を塗布するダイ塗布方法において、容易且つ簡便に塗布幅を変更すること、さらには塗布厚みが均一な塗布膜を安定して得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のダイ塗布方法は、一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する支持体にスロットダイを用いて塗布液を塗布するダイ塗布方法であって、前記スロットダイは、前記スロットダイの前記塗布液が吐出されるスロットの幅方向の両端に一対のシム板を挿入し、更に前記スロットに挿入された前記一対のシム板の少なくとも一部を覆うように前記スロットダイの前記支持体に対向する面に下記式(1)を満足する厚みTを有する一対のラップシートを密着させたものであることを特徴とする。
【0011】
(0.8×H3/VR)≦T<(2.1×H3/VR) ・・・(1)
ここで、H3は前記支持体上に塗布された塗布液の乾燥後の厚み、VRは前記塗布液の体積濃度[vol%]/100である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗布液の吐出幅を一対のシム板及び/又は一対のラップシートにより規制するので、塗布幅を所望する通りに容易且つ簡便に変更することができる。
【0013】
また、一対のラップシートの厚みTが式(1)を満足するので、塗布厚みが幅方向において均一な塗布膜を安定して形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照しながら説明する。但し、以下に示す図は、各部材の構成や配置が理解しやすいように誇張して描かれており、各部材の相対的な大きさや距離は実際の装置と一致していない。
【0015】
図1は、本発明のダイ塗布方法を実施するための装置の一実施形態の概略構成を示した断面図である。支持体1の表面に塗布液2が塗布されて、塗布液による塗布膜3が形成される。支持体1は、可撓性を有する長尺のウエブ状物(フィルム、シート等)であって、互いに平行に且つ離間して配置された上流側サポートロール41と下流側サポートロール42との間に所定の張力が印加された状態で架け渡されて、矢印30の方向に走行する。図1は、支持体1の走行方向30と平行な面に沿った断面図である。
【0016】
サポートロール41,42の間に、支持体1に対向してスロットダイ10が配置されている。スロットダイ10は、支持体1に対して、サポートロール41,42が配置された側とは反対側に配置されている。
【0017】
スロットダイ10は、支持体1の走行方向30の上流側に配置された上流側リップ11と、下流側に配置された下流側リップ12とを有する。互いに対向した上流側リップ11と下流側リップ12との間に、相互に連通したスロット13及びマニホールド14が形成される。下流側リップ12には、マニホールド14に連通する流入口15が形成されている。塗布液2は、流入口15を通過してマニホールド14に圧送される。塗布液2は、マニホールド14内に一時的に滞留し支持体1の幅方向(支持体1の長手方向と直交する方向、即ち図1の紙面に垂直方向)に略均一に分配された後、矢印2aの方向にスロット13を通過して支持体1に向かって押し出される。
【0018】
図2は、スロットダイ13の分解斜視図である。スロットダイ13の幅方向の両端の構成は対称であるので、図2では、スロットダイ13の一方の端部のみを示し、他方の端部の図示を省略している。上流側リップ11及び下流側リップ12の両端には一対の側板16a,16b(図2では側板16bは図示されていない)がネジ(図示せず)などで固定されており、これによりスロット13及びマニホールド14の幅方向の両端が封止されている。
【0019】
図3は、スロット13を通過する図1のIII−III線に沿った矢視断面図である。図2及び図3に示すように、支持体1に対する塗布液2の塗布幅を規定するために、支持体1に対向する側からスロット13の幅方向の両端に一対のシム板20a,20bが挿入され、更にスロット13に挿入された一対のシム板20a,20bの少なくとも一部を覆うように一対のラップシート21a,21bがスロットダイ10の支持体1に対向する面に緊張し且つ密着して固定されている。
【0020】
一対のシム板20a,20bは、例えば薄板形状(または略直方体形状)を有している。シム板20a,20bの厚さ(図3の紙面に垂直な方向の寸法)は、スロット13の隙間(スロット13を挟む上流側リップ11及び下流側リップ12の間の間隔)とほぼ一致していることが好ましい。これにより、シム板20a,20bと上流側リップ11との間、及びシム板20a,20bと下流側リップ12との間がいずれもシールされ、これらの間から塗布液2が漏れ出すのを防ぐことができる。
【0021】
図3に示すように、一対のシム板20a,20bの幅方向の外側の端面を一対の側板16a,16bに当接させると、一対のシム板20a,20bをスロット13内に安定して固定することができるので好ましい。
【0022】
シム板20a,20bの材料は、シム板20a,20bが使用される環境(例えば塗布液の種類)等を考慮して適宜選択することができるが、例えば、上流側リップ11及び下流側リップ12と同種又は異種の金属、あるいは樹脂を用いることができる。
【0023】
一対のラップシート21a,21bは、一対のシム板20a,20bの支持体1に対向する側の端面の少なくとも一部を覆っている。これにより、シム板20a,20bとリップ11,12との間やシム板20a,20bと側板16a,16bとの間から漏れ出した塗布液2が支持体1に付着するのを防止するとともに、マニホールド14内において塗布液2に印加された圧力によってシム板20a,20bがスロット13から押し出されるのを防止する。スロットダイ10に対するシム板20a,20bの相対的位置を安定化させるために、シム板20a,20bの支持体1に対向する端面はスロットダイ10に固定されたラップシート21a,21bに接していることが好ましい。
【0024】
ラップシート21a,21bとしては特に制限はないが、例えば可撓性を有する樹脂シートを用いることができる。ラップシート21a,21bのスロットダイ10への固定方法も特に制限はなく、例えば粘着テープや治具を用いることができる。
【0025】
図4は、テンション支持方式にて支持された支持体1にスロットダイ10にて塗布液2を塗布した際の塗布膜の厚み変化を示した断面図である。
【0026】
上述したように、所定の張力が印加されて矢印30の向きに速度Vで走行する支持体1は、スロットダイ10が押し付けられて僅かに撓んでいる(図1参照)。この状態で、スロットダイ10のスロット13から塗布液2が支持体1に向かって吐出される。従って、スロット13に対して支持体1の走行方向30の下流側に位置する下流側リップ12の支持体1と対向する面(下流側リップ先端面)12aと支持体1との間は塗布液2で満たされる。塗布液2で満たされる下流側リップ先端面12aと支持体1との間の間隔H1は、スロットダイ10が支持体1を押し付けて撓ませることによって支持体1に発生した反発力と、スロットダイ10のスロット13から吐出される塗布液2の吐出圧(又は吐出量)とがバランスすることでほぼ一定に維持される。ここで、スロットダイ10の位置は不変であるのに対して、支持体1は走行方向30の向きに速度Vで走行している。塗布液2がニュートン流体であると考えると、下流側リップ先端面12aと支持体1との間の塗布液2には、塗布液2の厚み方向に略一定な速度勾配を有する速度分布31が形成される。速度分布31を示す支持体1近傍の塗布液2の移動速度は、支持体1の移動速度Vと一致する。
【0027】
支持体1の移動にともなって、支持体1上に吐出された塗布液2は、下流側リップ先端面12aよりも下流側に移動する。塗布液2が下流側リップ先端面12aから離れて形成された塗布膜3は下流側リップ先端面12aによる剪断力を受けなくなるから、塗布膜3は、塗布膜3の厚み方向に速度勾配を有さない、つまり、塗布膜3の厚み方向に略均一な速度分布32を有することになる。速度分布32を示す支持体1近傍の塗布膜3の移動速度は、支持体1の移動速度Vと一致する。速度分布31を示す三角形の面積と速度分布32を示す長方形の面積とは一致するから、速度分布32を有する塗布液2の厚みH2は、
H2=0.5×H1 ・・・(2)
を満足する。
【0028】
その後、支持体1上の塗布液2は乾燥工程にて溶剤が蒸発し硬化して硬化塗布膜4となる。乾燥後の硬化塗布膜4の厚みをH3、溶剤が蒸発する前の塗布液2の体積濃度[vol%]/100をVRとすると、
H2=H3/VR ・・・(3)
が成立する。式(2)及び式(3)より、
H1=2×H3/VR ・・・(4)
が成立する。
【0029】
図3に示すように、一般に、スロットダイコータ方式では、支持体1の幅よりも支持体1上に塗布される塗布液2の塗布幅は狭い。従って、スロットダイ10の支持体1に対向する面に密着するラップシート21a,21bの厚みTが、下流側リップ先端面12aと支持体1との間の間隔H1よりも大きいと、ラップシート21a,21bが走行する支持体1と接触し、支持体1の表面にすり傷が形成されたり、最悪の場合には支持体1やラップシート21a,21bが破断したりすることがある。支持体1がラップシート21a,21bと接触するのを防止するためには、
T<H1 ・・・(5)
を満足する必要がある。
【0030】
上述した式(4)は、下流側リップ先端面12aと支持体1との間で塗布液2が直角三角形状の速度分布31を有することを前提としているが、現実には速度分布31が、直角三角形の斜辺が直線ではなく湾曲した変形直角三角形状となる場合がある。また、テンション支持方式では、間隔H1は厳密に一定ではなく僅かに変動することもある。これらに対する許容誤差を加味すると、式(5)及び式(4)より、
T<2.1×H3/VR ・・・(6)
を満足する必要がある。更に、
T<1.9×H3/VR ・・・(7)
を満足することが好ましい。
【0031】
図3に示すように、ラップシート21a,21bと支持体1との間には隙間25a,25bが形成され、支持体1と下流側リップ先端面12aとの間で加圧された塗布液2の一部はこの隙間25a,25b内に滲出する。隙間25a,25bの寸法Cが小さくなると、隙間25a,25b内に滲出する塗布液2の量が少なくなるので、幅方向の両端近傍における塗布液2の塗布厚みが中央部のそれに比べて厚くなりやすい。ラップシート21a,21bの厚みTが上記式(6)(好ましくは式(7))を満足すると、隙間25a,25b内に滲出する塗布液2の量が適正化されるため、塗布厚みが幅方向において均一な塗布膜が得られやすくなる。
【0032】
一方、ラップシート21a,21bの厚みTが薄すぎると、上記隙間25a,25bの寸法Cが大きくなるので、隙間25a,25b内に滲出する塗布液2の量が多くなる。従って、塗布液2の塗布幅が所望する幅よりも拡大し、また、幅方向の両端近傍における塗布液2の塗布厚みが中央部のそれに比べて薄くなってしまう。よって、ラップシート21a,21bの厚みTと下流側リップ先端面12aと支持体1との間の間隔H1とは、
T≧0.5×H1 ・・・(8)
を満足する必要がある。上述した許容誤差を加味すると、式(8)及び式(4)より、
T≧0.8×H3/VR ・・・(9)
を満足する必要がある。
【0033】
図3に示すように、一対のラップシート21a,21b間の間隔が一対のシム板20a,20b間の間隔よりも小さいこと、即ち、一対のラップシート21a,21bが一対のシム板20a,20bよりも幅方向の内側に突出していることが好ましい。理由は以下の通りである。
【0034】
上記とは逆に、一対のラップシート21a,21b間の間隔が一対のシム板20a,20b間の間隔よりも大きいと、一対のシム板20a,20bによって規制された塗布液2の幅方向の通過領域は、一対のラップシート21a,21bによって拡げられる。従って、幅方向の両端近傍を流れる塗布液2の矢印2a方向の流速は、塗布液2が一対のシム板20a,20b間を通過する際の流速よりも、一対のラップシート21a,21b間を通過する際の流速の方が遅くなる。更に、塗布液2が一対のラップシート21a,21b間を通り抜けると、塗布液2は隙間25a,25b内に滲出するので、幅方向の両端近傍を流れる塗布液2の矢印2a方向の流速は更に遅くなる。このように、幅方向の両端近傍を流れる塗布液2の流速が徐々に低下することにより、幅方向の両端近傍における塗布液2の塗布厚みが中央部におけるそれに比べて薄くなりやすい。
【0035】
これに対して、一対のラップシート21a,21b間の間隔が一対のシム板20a,20b間の間隔よりも小さいと、一対のシム板20a,20bによって規制された塗布液2の幅方向の通過領域は、一対のラップシート21a,21bによって更に狭められる。従って、幅方向の両端近傍を流れる塗布液2の矢印2a方向の流速は、塗布液2が一対のシム板20a,20b間を通過する際の流速よりも、一対のラップシート21a,21b間を通過する際の流速の方が早くなる。その後、塗布液2が一対のラップシート21a,21b間を通り抜けると、塗布液2は隙間25a,25b内に滲出するので、幅方向の両端近傍を流れる塗布液2の矢印2a方向の流速は低下する。しかしながら、この流速の低下は、その前段の、一対のラップシート21a,21b間を通過する際の流速の上昇と相殺される。従って、スロット13から吐出される塗布液2の吐出量は幅方向においてほぼ一定となるので、幅方向においてほぼ一定の塗布厚みで塗布液2を塗布することが容易になる。
【0036】
上記の説明から明らかなように、一対のラップシート21a,21b間の間隔を一対のシム板20a,20b間の間隔よりも小さくした場合、ラップシート21a,21bの厚みTが厚くなると寸法Cが小さくなるので、塗布液2が一対のラップシート21a,21b間を通り抜けた後に隙間25a,25b内に滲出する塗布液2の量が相対的に少なくなる。その結果、幅方向の両端近傍における塗布液2の塗布厚みが中央部におけるそれに比べて厚くなることがある。従って、一対のラップシート21a,21b間の間隔を一対のシム板20a,20b間の間隔よりも小さくした場合には、上記式(7)を満足することが特に好ましい。
【0037】
本発明では、幅方向の寸法が異なる複数種類のシム板を予め準備しておき、所望する塗布幅に応じて、スロット13に挿入するシム板20a,20bを選択すればよい。更に、スロット13に挿入したシム板20a,20bに応じて、一対のラップシート21a,21bのスロットダイ10に対する取付位置を適宜変更すればよい。これにより、容易且つ簡便に塗布幅を変更することができる。
【0038】
ここで、シム板20a,20bは、支持体1に対向する側からスロット13に挿入することが好ましい。これにより、スロットダイ10を分解することなく、塗布幅を変更することができる。
【0039】
本発明において、支持体1の材料は、特に制限はなく、塗布膜3が形成された支持体1の用途に応じて適宜選択することができるが、例えば樹脂、具体的には、セルロースエステル(例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ノルボルネン系樹脂、非晶質ポリオレフィンなどを用いることができる。このうち、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0040】
塗布液2も特に制限はなく、硬化塗布膜4が形成された支持体1の用途に応じて公知の塗布液の中から適宜選択することができる。例えば、光学フィルム用であれば公知の光学フィルム用塗布液、磁気記録媒体(例えば磁気テープ)用であれば磁性塗布液、電池の電極用であれば電極用スラリーを含む溶液を用いることができる。塗布液2には、公知のフィラーが分散されていても良い。塗布液2の溶質として、例えば光学フィルム用であれば紫外線硬化型樹脂を含んでいても良い。また、塗布液2の溶媒は、有機系溶媒、水系溶媒などを用いることができる。塗布液2の物性に関しても、上述したニュートン流体である必要はなく、擬塑性(チキソ性)流体などであっても良い。
【0041】
上記の実施形態は一例に過ぎず、本発明は上記の実施形態に限定されず、適宜変更することができる。例えば、スロットダイ10の構成は図1、図2に限定されず、本発明は公知のスロットダイに適用することができる。例えば、スロットダイ10の断面形状は、上記の実施形態では支持体1の幅方向において一定であったが(但し、流入口15を除く)、スロット13の吐出方向2aの長さが異なるなど、支持体1の幅方向において変化していても良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の利用分野は特に制限はないが、テンション支持方式にて支持された可撓性支持体上に塗布膜をスロットダイコータ方式にて塗布する場合に広く利用することができる。特に、塗布幅の変更頻度が高く、且つ、塗布膜の厚みの幅方向における均一性が要求される複合フィルム(例えば光学フィルム)を製造する場合に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明のダイ塗布方法を実施するための装置の一実施形態の概略構成を示した断面図である。
【図2】図2は、図1に示したスロットダイの一方の端部近傍の分解斜視図である。
【図3】図3は、図1のIII−III線に沿った矢視断面図である。
【図4】図4は、テンション支持方式にて支持された支持体にスロットダイコータ方式にて塗布液を塗布した際の塗布膜の厚み変化を示した断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 支持体
2 塗布液
2a 塗布液の吐出方向
3 塗布膜
4 硬化塗布膜
10 スロットダイ
11 上流側リップ
12 下流側リップ
12a 下流側リップ先端面
13 スロット
14 マニホールド
15 流入口
16a,16b 側板
20a,20b シム板
21a,21b ラップシート
25a,25b 支持体とラップシートとの隙間
30 走行方向
31,32 速度分布
41 上流側サポートロール
42 下流側サポートロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のサポートロール間にテンション支持方式にて支持された連続走行する支持体にスロットダイを用いて塗布液を塗布するダイ塗布方法であって、
前記スロットダイは、前記スロットダイの前記塗布液が吐出されるスロットの幅方向の両端に一対のシム板を挿入し、更に前記スロットに挿入された前記一対のシム板の少なくとも一部を覆うように前記スロットダイの前記支持体に対向する面に下記式(1)を満足する厚みTを有する一対のラップシートを密着させたものであることを特徴とするダイ塗布方法。
(0.8×H3/VR)≦T<(2.1×H3/VR) ・・・(1)
ここで、H3は前記支持体上に塗布された塗布液の乾燥後の厚み、VRは前記塗布液の体積濃度[vol%]/100である。
【請求項2】
前記一対のラップシート間の間隔が、前記一対のシム板間の間隔よりも小さい請求項1に記載のダイ塗布方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−291737(P2009−291737A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149403(P2008−149403)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】