説明

ダクトへの保温材取付用具、及びそれを用いるダクトへの保温材の取付方法

【課題】 本発明は、ダクトへのナットの溶接を避けることによって、ダクトの軽量化と、現場での溶接による黒皮の発生を皆無として工程遅れの原因の一つをなくし、かつ、安全確実に保温材を取り付け、支持できる保温材のダクトへの保温材装着用具及びそれを用いたダクトへの保温材取付方法を提供する。
【解決方法】 外周に装着される保温材の厚みが150mm以上必要となる高温又は超低温の気体を流す角型ダクトに使用される保温材取付用具で、前記角形ダクトの上面と一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具が取り付けられる上部金具と、前記角形ダクトの下面ともう一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具が取り付けられる下部金具とからなり、前記上部金具と前記下部金具が、前記角形ダクトを囲んで固定されるための固定部を備えてなるダクトへの保温材取付用具による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ダクトの外周に装着される保温材の厚みが150mm以上必要とされる高温または超低温の気体を流すダクトにおいて、前記保温材を安全確実に取り付け、支持するためのダクトへの保温材取付用具及びそれを用いるダクトへの保温材の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
角形ダクトの外周にロックウールやグラスウールの保温板を取付ける一般的な工法として、たとえば、建築設備施工マニュアル(空調篇)第2版〔日本建築設備士協会発行〕のP290〜294に保温板取付鋲を使用する場合の取付方法が記載されている。
これによれば、角ダクトに保温板を取り付ける場合には、その準備として、保温板を取り付けるための鋲を、ダクト側面、下面、及び上面に相互に等間隔となるよう、かつ千鳥に植付ける。この鋲の植付けには、接着剤による接着、はんだ付け、あるいは電気溶接などの方法が採用されている。
そして保温材は、前記準備段階でダクトに植え付けられた鋲が保温板を直角に貫くようにしてダクト表面に装着され、貫通した前記鋲の頭部にワッシャーを介入させて直角に折り曲げて固定する。
またその後、必要に応じてメタルラスを巻き付ける等配置場所の状況に合わせて外装を施すとしている。
【0003】
空調等一般的な角形ダクトの保温においては、上記工法による保温板の取り付けが行われているが、たとえば、高温の気体や超低温の気体を流すダクト等その用途によっては、取り付けなければならない保温材の厚さが150mmを超える場合がある。
このような場合、通常150mmを超える長さの鋲がないことや、あっても細い鋲では保温材の荷重に耐えられず、またダクトと鋲の溶接部分が経年劣化することから、前記鋲に換えて、全ねじボルト又はスタッドボルトが、ダクトの側面と下面の保温材を保持するために用いられる。
前記全ねじボルト又はスタッドボルトを保温材の保持に用いる場合には、予め工場でダクト側面、及び下面に前記全ねじボルト又はスタッドボルトを螺着するためのナットが溶接されて現場に持ち込まれる。ダクトが高温の気体用の場合など、接着剤による接着では経時的な接着剤の劣化により前記ナットが脱落するおそれがあり、それを防ぐためにナットを溶着することになる。
【0004】
しかし、上記の方法においては、ナットを溶接する熱によって前記ダクトが壁の内側まで溶融して穴があかないよう板厚のダクトを使用しなければならない。そのため、軽量化が困難で架設経費も嵩むという問題が内在している。
また、工場から現場に納品されたダクトへのナット溶接数に不足があった場合や、現場においてダクトへのナット溶接数に追加が必要となった場合には、現場でナットの溶接を行うことになるが、溶接によってダクト内面に黒皮が生じる。黒皮とは、鉄鋼が575℃以上に加熱されたときに生じる黒く堅い酸化鉄の皮膜であり、ダクト内で不均一に発生し除去が必要となる。このため該当個所のダクトを黒皮除去のための酸洗浄が可能な工場へ返送することとなり、工期遅れの原因ともなっていた。特に、小口径ダクトでは内部の視認が困難であるため、酸洗浄後のダクト内面に黒皮が残存しているか否かの確認が難しく、ダクトの品質保証上の問題となる。
なお、上記の問題は現場でダクトにナットを溶接する場合のみならず、ダクトに全ねじボルトやスタッドボルトを直接溶接する場合においても同様に起こる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】建築設備施工マニュアル(空調篇)第2版、日本建築設備士協会 発行、p290〜294
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記周辺技術の現状に鑑みてなされたものであって、ダクトへのナットの溶接を避けることによって、ダクトの軽量化と、現場での溶接による黒皮の発生を皆無として工程遅れの原因の一つをなくし、かつ、保温材を安全確実に取り付け、支持できるダクトへの保温材装着用具及びそれを用いたダクトへの保温材取付方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
(1)角型ダクトに、前記保温材を安全、確実に取り付け、支持するために前記角形ダクトの外周に装着して使用される保温材取付用具であり、
前記角形ダクトの上面と一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具が取り付けられる上部金具と、前記角形ダクトの下面ともう一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具が取り付けられる下部金具とからなり、前記上部金具と前記下部金具が、前記角形ダクトを囲んで固定されるための固定部を備えてなることを特徴とするダクトへの保温材取付用具。
【0008】
(2)前記角形ダクトが、その外周に150mm以上の厚みを有する保温材の装着が必要となる高温又は超低温の気体を流すものであって、前記150mm以上の厚みを有する保温材を前記角形ダクトに安全、確実に取り付け,支持するのに使用されるものであることを特徴とする前項(1)に記載のダクトへの保温材取付用具。
【0009】
(3)外周に装着される保温材の厚みが150mm以上必要となる高温又は超低温の気体を流す角型ダクトに、前記保温材を安全、確実に取り付け、支持するために前記角形ダクトの外周に装着して使用される保温材用具であり、
前記角形ダクトの上面と一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具が取り付けられる上部金具と、前記角形ダクトの下面ともう一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具が取り付けられる下部金具とからなり、
前記上部金具と前記下部金具が、前記角形ダクトを囲んで固定するための固定部を備えてなり、
前記上部金具は、角形ダクトの上面に沿わせる上面フラットバーと、角形ダクトの側面に沿わせる側面フラットバーとからなり、前記上面フラットバーは、角形ダクトの幅寸法より長くとられ、角形ダクトから側方にはみ出した先端部分が下部金具との固定部を構成し、
側面フラットバーは、角形ダクトの高さ寸法より長くとられ、角形ダクトから下方にはみ出した先端部を外方に折り曲げてフランジ状の固定部を構成してなり、
前記下部金具は、角形ダクトの下面に沿わせる下面フラットバーと、角形ダクトの側面に沿わせる側面フラットバーとからなり、前記下面フラットバーは、角形ダクトの幅寸法より長くとられ、角形ダクトから側方にはみ出した先端部分が上部金具との固定部を構成し、
側面フラットバーは、角形ダクトの高さ寸法より長くとられ、角形ダクトから上方にはみ出した先端部を外方に折り曲げてフランジ状の固定部を構成してなることを特徴とする前項(1)又は(2)に記載のダクトへの保温材取付用具。
【0010】
(4)前記保温材保持具が、前記上部金具の上面フラットバー及び側面フラットバー、又は側面フラットバーのみに、並びに前記下部金具の下面フラットバー及び側面フラットバーに、保温材保持具が備えられてなることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれか1項に記載のダクトへの保温材取付用具。
【0011】
(5)前記上部金具の上面フラットバーと側面フラットバーがL型フラットバーで構成され、前記下部金具の下面フラットバーと側面フラットバーが、L型フラットバーで構成されていることを特徴とする前項(1)〜(4)のいずれか1項に記載のダクトへの保温材取付用具。
【0012】
(6)前記上部金具と下部金具の固定部とが、当接してタッピングビスで結合可能に構成されてなることを特徴とする前項(1)〜(5)のいずれか1項に記載のダクトへの保温材取付用具。
【0013】
(7)前記固定部の角形ダクトからのはみ出し幅が、前記ダクトの外周に密着させる板状の保温材の厚みに等しくとられてなることを特徴とする前項(1)〜(6)のいずれか1項に記載のダクトへの保温材取付用具。
【0014】
(8)前項(1)〜(7)に記載のダクトへの保温材取付用具を用いて行う角形ダクトへの保温材の取付けが、
a.前記上部金具の上面フラットバーの固定部と下部金具の側面フラットバーの固定部、下部金物の下面フラットバーの固定部と上部金物の側面フラットバーの固定部とが互いに当接するようにして角形ダクトの外周を囲い、当接し合った固定部をタッピングビスで接合して前記角形ダクトに固定する作業を、角形ダクトの延長方向に所定の間隔を開けて実施する第1工程と、
b.角形ダクトの延長方向に所定の間隔で固定されたダクトへの保温材装着用具の保温材保持具に板状の保温材を複数枚装着して角形ダクトの外周を前記板状の保温材で囲繞する第2工程と、
c.角形ダクトの外周を囲繞した板状の保温材の外周にフェルト状の保温材を巻き付け、前記板状の保温材及びフェルト状の保温材を貫通した保温材保持具の先端に保温材留具を装着してすべての保温材をダクトに固定する第3工程と、
d.前記固定されたフェルト状の保温材の外周に亀甲金網を巻き付け、前記板状の保温材及びフェルト状の保温材を前記角形ダクトに確実に密着、固定させる第4工程と
で行われてなるものであることを特徴とするダクトへの保温材の取付方法。
【0015】
(9)前記板状の保温材がロックウール、又はグラスウールであることを特徴とする前項(8)に記載のダクトへの保温材の取付方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のダクトへの保温材の取付用具及びそれを用いる保温材の取付方法によって下記の効果が発揮される。
〈1〉本発明のダクトへの保温材の取付用具が、角型ダクトに、前記保温材を安全、確実に取り付け、支持するために前記角形ダクトの外周に装着して使用されるものであり、前記角形ダクトの上面と一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具が取り付けられる上部金具と、前記角形ダクトの下面ともう一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具が取り付けられる下部金具とからなり、前記上部金具と前記下部金具が、前記角形ダクトを囲んで固定されるための固定部を備えているので、作業現場で前記上部金具と下部金具とをその固定部を合わせ接合させタッピングビス等の結合部材で結合することにより、現場の状況に応じて角形ダクトの必要な個所に随時容易に取り付けられ、保温材をより安全、確実に取り付け保持することできる。
特に、前記角形ダクトが、その外周に150mm以上の厚みを有する保温材の装着が必要となる高温又は超低温の気体を流すものにあっては、従来前記保温材保持具としての全ねじボルト又はスタッドボルト装着用のナットを予め前記角形ダクトに溶接しておく必要がなくなり、溶接に不向きであった板厚の薄いダクトの使用も可能となり、ダクトの軽量化が図れる。
そして上記効果によって、ダクトの取付作業の効率化が図れ、工期の短縮、経費の節減にも寄与する。
さらに現場における追加溶接に基づく黒皮の発生も皆無となり、施工ダクトの品質保証も確実となる。
【0017】
〈2〉前記上部金具が、角形ダクトの上面に沿わせる上面フラットバーと、角形ダクトの側面に沿わせる側面フラットバーとからなり、前記上面フラットバーは、角形ダクトの幅寸法より長くとられ、角形ダクトから側方にはみ出した先端部分が下部金具との固定部を構成し、前記側面フラットバーは角形ダクトの高さ寸法より長くとられ、角形ダクトから下方にはみ出した先端部を外方に折り曲げてフランジ状の固定部を構成してなり、
また、前記下部金具は、角形ダクトの下面に沿わせる下面フラットバーと、角形ダクトの側面に沿わせる側面フラットバーとからなり、前記下面フラットバーは、角形ダクトの幅寸法より長くとられ、角形ダクトから側方にはみ出した先端部分が上部金具との固定部を構成し、側方フラットバーは、角形ダクトの高さ寸法より長くとられ、角形ダクトから上方にはみ出した先端部を外方に折り曲げてフランジ状の固定部を構成しており、また前記上部金具の上面フラットバーと側面フラットバー、下部金具の下面フラットバーと側面フラットバーとがL型フラットバーで構成されていてもよいので、上部金具及び下部金具は1本のフラットバーを取り付けるダクトの寸法に合わせて折り曲げることによって容易に製造でき、外形寸法の異なるダクトへの保温材装着にも容易に適応できる。
【0018】
〈3〉前記上部金具の上面フラットバー及び側面フラットバー、又は側面フラットバーのみに、並びに前記下部金具の下面フラットバー及び側面フラットバーに、保温材保持具が備えられているので、従前のように予めダクトに溶接されたナットに保護材保持具としての全ねじボルト又はスタッドボルトを一つずつ取り付けていく必要がなく、現場作業が容易となり作業効率の向上がはかれる。
【0019】
〈4〉前記上部金具と下部金具の固定部が、当接した固定部同士をタッピングビスで結合可能に構成されているので、作業現場において上部金具と下部金具を前記角形ダクトに密着させた後に前記当接固定部にねじ穴を穿ってタッピングビスで固定でき、本発明のダクトへの保温材の取付金具を緩みなく取り付けられ、保温材の安定、確実な支持と、良好な保温効果を実現することができる。
【0020】
〈5〉前記固定部の角形ダクトからのはみ出し幅が、前記ダクトの外周に密着させる板状の保温材の厚みに等しくとられているので、前記板状の保温材を重ねて装着する際、前記保温材を密着させることができ、良好な保温効果が維持できる。
【0021】
〈6〉本発明のダクトへの保温材取付用具を用いて行う角形ダクトへの保温材の取付方法が、
a.前記上部金具の上面フラットバーの固定部と下部金具の側面フラットバーの固定部、下部金物の下面フラットバーの固定部と上部金物の側面フラットバーの固定部とが互いに当接するようにして角形ダクトの外周を囲い、当接し合った固定部をタッピングビスで接合して前記角形ダクトに固定する作業を、角形ダクトの延長方向に所定の間隔を開けて実施する第1工程と、
b.角形ダクトの延長方向に所定の間隔で固定されたダクトへの保温材装着用具の保温材保持具に板状の保温材を複数枚装着して角形ダクトの外周を前記板状の保温材で囲繞する第2工程と、
c.角形ダクトの外周を囲繞した板状の保温材の外周にフェルト状の保温材を巻き付け、前記板状の保温材及びフェルト状の保温材を貫通した保温材保持具の先端に保温材留具を装着してすべての保温材をダクトに固定する第3工程と、
d.前記固定されたフェルト状の保温材の外周に亀甲金網を巻き付け、前記板状の保温材及びフェルト状の保温材を前記角形ダクトに確実に密着、固定させる第4工程と
でなるので、作業現場では上部金具と下部金具の接合した固定部にタッピングビス用のねじ穴を穿つ以外には特段に加工を施す必要はなく、手順に従って順次組み上げていくだけで、厚みが150mmを超える保温材を角形ダクトへ容易、かつ確実に取り付けられることから、作業効率の向上、作業期間の短縮、ひいては経費の節減が図れる。
また現場での状況によって保温材保持具としての全ねじボルトまたはスタッドボルトの本数増加が必要となった場合でも、本発明のダクトへの保温材取付用具の追加取付で処理でき、従来の行われてきたダクトへのナットの追加溶接によるのと比べ各段に容易で、かつ確実に作業が進められ、工期の延長が回避できる。
【0022】
〈7〉前記板状の保温材がロックウール、又はグラスウールであるので高温の気体を流すダクトへの安全な使用と良好な保温効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のダクトへの保温材取付用具の構成斜視図
【図2】本発明のダクトへの保温材取付用具を用いて保温材が取り付けられたダクト の構造を示す一部断面斜視図
【図3−1】ダクトへの保温材取付用具を用いたダクトへの保温材取付方法の第1工 程終了時の状態図
【図3−2】ダクトへの保温材取付用具を用いたダクトへの保温材取付方法の第2工 程でダクト側面に保温材を取り付け終えた時点の状態図
【図3−3】ダクトへの保温材取付用具を用いたダクトへの保温材取付方法の第2工 程終了時の状態図
【図3−4】ダクトへの保温材取付用具を用いたダクトへの保温材取付方法の第3工 程でダクト側面に保温材を取り付け終えた状態の時点の状態図
【図3−5】ダクトへの保温材取付用具を用いたダクトへの保温材取付方法の第4工 終了時の状態図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のダクトへの保温材取付用具及びそれを用いる保温材の取付方法を実施するための形態を、実施例の図面に基づいて説明する。
図1は本発明のダクトへの保温材取付用具の構成斜視図、図2は本発明のダクトへの保温材取付用具を用いて保温材が取り付けられたダクトの構造を示す一部断面斜視図であり、図3−1〜図3−5は本発明のダクトへの保温材取付用具を用いたダクトへの保温材取付方法の説明図であって、図3−1は第1工程終了時の時の状態、図3−2は第2工程でダクト側面に保温材を取り付け終えた時点の状態、図3−3は第2工程終了時の状態、図3−4は第3工程終了時の状態、図3−5は第4項工程終了時の状態を示す。
図において10はダクトへの保温材の取付用具、11は上部金具、12は下部金具、11a,11b上部金具の固定部、111は上面フラットバー、112は側面フラットバー、12a、12bは下部金具の固定部、121は下面フラットバー、122は側面フラットバー、13は保温材保持具、14はタッピングビス、15は保温材留具、20は角形ダクト、30は板状の保温材、40はフェルト状の保温材、50は亀甲金網を示す。
【0025】
本発明のダクトへの保温材取付用具10は、図1及び図2に示すように、前記角形ダクト20の上面と一方の側面に沿わせて配設され、その表面に保温材保持具13が取り付けられる上部金具11と、前記角形ダクト20の下面ともう一方の側面に沿わせて配設され、その表面に保温材保持具13が取り付けられる下部金具12とで構成されている。
そして、前記上部金具11は、前記角形ダクト20の上面に沿わせる上面フラットバー111と、角形ダクト20の側面に沿わせる側面フラットバー112とからなり、前記上面フラットバー111は、角形ダクト20の幅寸法より長くとられ、角形ダクトから側方にはみ出した先端部分が下部金具12との固定部11aを構成し、前記上部金具11の側面フラットバー112は、角形ダクト20の高さ寸法より長くとられ、角形ダクト20から下方にはみ出した先端部を外方に折り曲げてフランジ状の固定部11bを形成している。
また、前記下部金具12は、角形ダクト20の下面に沿わせる下面フラットバー121と、角形ダクト20の側面に沿わせる側面フラットバー122とからなり、前記下面フラットバー121は、角形ダクト20の幅寸法より長くとられ、角形ダクト20から側方にはみ出した先端部分が上部金具11との固定部12aを形成し、前記下部金具12の側面フラットバー112は、角形ダクト20の高さ寸法より長くとられ、角形ダクト20から上方にはみ出した先端部を外方に折り曲げてフランジ状の固定部12bを形成している。
そして前記上部金具11の側面フラットバー112と、前記下部金具12の下面フラットバー121及び側面フラットバー122には、前記保温材保持具13が備えられている。
なお、前記保温材保持具13を上部金具11の上面フラットバー111に備えられることがあってもよい。
なお各フラットバー111、112,121、122への保温材保持具13の装着は高温気体を扱うダクトに取り付けることに鑑みて溶接によって行われることが好ましい。
【0026】
また、前記上部金具11の上面フラットバー111と側面フラットバー112がL型に折り曲げられた1本のフラットバーで構成され、前記下部金具12の下面フラットバー121と側面フラットバー122が、L型に折り曲げられた1本のフラットバーで構成されてなることも好ましい。
さらに、前記固定部11a,12a、11b、12bの角形ダクト20からのはみ出し幅が、前記ダクト20の外周に密着させる板状の保温材30の厚みに等しくとられることが望ましい。
そして前記上部金具11の上面フラットバー111の固定部11aと、下部金具12の側面フラットバー122の固定部12b、前記上部金具11の側面フラットバー112の固定部11bと下部金具12の下面フラットバー121の固定部12aとが、当接してタッピングビス14(図3−1参照)で結合できるよう構成されている。
図1の実施例では保温材保持具13を全ねじボルトで示したが、前記保温材保持具13としてスタッドボルトなど保温材を取り付けて安全、確実に保持できる部材の使用を妨げるものではない。
【0027】
次ぎに、本発明のダクトへの保温材取付用具10を用いて行う角形ダクト20への保温材30,40の取付方法について図3−1〜図3−5に基づいて説明する。
本発明のダクトへの保温材取付用具10を用いて行う角形ダクト20への保温材30、40の取付は
a.前記上部金具11の上面フラットバー111の固定部11aと下部金具12の側面フラットバー122の固定部12b、下部金物12の下面フラットバー121の固定部12aと上部金具11の側面フラットバー112の固定部11bとが互いに当接するようにして角形ダクト20の外周を囲い、当接し合った固定部11aと12b、11bと12aとをタッピングビス14で接合して前記角形ダクト20に固定する作業を、角形ダクト20の延長方向に所定の間隔を開けて実施する(図3−1参照)第1工程と、
b.角形ダクト20の延長方向に所定の間隔で固定されたダクトへの保温材装着用具10の保温材保持具13に板状の保温材30を複数枚装着して角形ダクト20の外周を前記板状の保温材30で囲繞する(図3−3参照)第2工程と、
c.角形ダクト20の外周を囲繞した板状の保温材30の外周にフェルト状の保温材40を巻き付け、前記板状の保温材30及びフェルト状の保温材40を貫通した保温材保持具13の先端に保温材留具15(ワッシャ15a、ナット15b)を装着してすべての保温材30、40を前記角形ダクト20に固定する(図3−4参照)第3工程と、
d.前記固定されたフェルト状の保温材40の外周に亀甲金網50を巻き付ける(図3−5参照)第4工程と
で構成されている。
【0028】
なお第2工程においては、図3−2の示すようにまず側面フラットバー112、122(図1参照)に溶接された保温材保持具13である全ねじボルト又はスタッドボルトに板状の保温材30複数枚を取り付け、その後上部フラットバー111上に板状の保温材を複数枚載置、さらに下部フラットバー121に溶接された保温材保持具13である全ねじボルト又はスタッドボルトに板状の保温材30複数枚取り付け、この下面フラットバー121の保温材保持具13に取り付けた板状の保温材30の落下を防止する手段を施した後に第3工程に移ることが好ましい。
また、第3工程においてフェルト状の保温材40を巻き付ける際、前記フェルト状の保温材40の両端部をダクトの上面で合わせるようにして取り付け、前記下面フラットバー121に取り付けた保温材保持具13の先端に装着された保温材留具が万一脱落した場合でも、板状の保温材30の落下が防止できるようにしておくことも好ましい。
さらに、本実施例では保温材保持具13を全ねじボルト又はスタッドボルトとしたので保温材留具15をワッシャ15aとナット15bで構成したが、保温材をダクトに安全かつ確実に取り付けられ保持されるのであれば、どのような保温材保持具13と保温材留具15との組み合わせが選択され、使用されるのを妨げるものではない。
そして、前記ダクトへの保温材取付用具10の角形ダクト20への取付間隔が、直線部分では450mm〜550mmであることが好ましく、また、前記角形ダクトが水平方向に曲がる部分で使用する前記保温材取付用具10においては、上部金具11の上面フラットバー111、及び下部金具12の下面フラットバー121の寸法を直線部で使用する保温材取付用具10のそれらより10〜15mm長くして前記角形ダクト20と保温材取付用具10との間に余裕を持たせ、角形ダクト20に対する保温材取付用具10の取付角度に自由度を持たせることが好ましい。
【0029】
本実施例は、高温の気体や超低温の気体を流す角形ダクトの保温を図るため、厚さが150mm以上の保温材を取り付ける必要がある場合についてのものであるが、それ以外に保温材の厚みがさほど厚くない場合においても、本発明のダクトへの保温材取付用具10が採用できることは言うまでもない。
また、本発明のダクトへの保温材取付用具10は、ダクトの素材を問わずに使用できるものである。
【符号の説明】
【0030】
10:ダクトへの保温材取付用具
11:上部金具、
11a、11b:上部金具の固定部
12:下部金具
12a、12b:下部金具の固定部
111:上面フラットバー
121:下面フラットバー
112、122:側面フラットバー
13:保温材保持具
14:タッピングビス
15:保温材留具
15a:ワッシャ
15b:ナット
20:角形ダクト
30:板状の保温材
40:フェルト状の保温材
50:亀甲金網


【特許請求の範囲】
【請求項1】
角型ダクト(20)に、前記保温材を安全、確実に取り付け、支持するために前記角形ダクトの外周に装着して使用される保温材取付用具(10)であり、
前記角形ダクト(20)の上面と一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具(13)が取り付けられる上部金具(11)と、前記角形ダクト(20)の下面ともう一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具(13)が取り付けられる下部金具(12)とからなり、前記上部金具(11)と前記下部金具(12)が、前記角形ダクト(20)を囲んで固定されるための固定部(11a、11b、12a、12b)を備えてなることを特徴とするダクトへの保温材取付用具。
【請求項2】
前記角形ダクト(20)が、その外周に150mm以上の厚みを有する保温材の装着が必要となる高温又は超低温の気体を流すものであって、前記150mm以上の厚みを有する保温材を前記角形ダクト(20)に安全、確実に取り付け,支持するのに使用されるものであることを特徴とする請求項1に記載のダクトへの保温材取付用具。
【請求項3】
角型ダクト(20)に、前記保温材を安全、確実に取り付け、支持するために前記角形ダクトの外周に装着して使用される保温材用具(10)であり、
前記角形ダクト(20)の上面と一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具が取り付けられる上部金具(11)と、前記角形ダクト(20)の下面ともう一方の側面に沿わせて配設される表面に保温材保持具が取り付けられる下部金具(12)とからなり、
前記上部金具(11)と前記下部金具(12)が、前記角形ダクト(20)を囲んで固定するための固定部(11a、11b、12a、12b)を備えてなり、
前記上部金具(11)は、角形ダクト(20)の上面に沿わせる上面フラットバー(111)と、角形ダクト(20)の側面に沿わせる側面フラットバー(112)とからなり、前記上面フラットバー(111)は、角形ダクト(20)の幅寸法より長くとられ、角形ダクトから側方にはみ出した先端部分が下部金具(12)との固定部(11a)を構成し、
側面フラットバー(112)は、角形ダクト(20)の高さ寸法より長くとられ、角形ダクト(20)から下方にはみ出した先端部を外方に折り曲げてフランジ状の固定部(11b)を構成してなり、
前記下部金具(12)は、角形ダクト(20)の下面に沿わせる下面フラットバー(121)と、角形ダクト(20)の側面に沿わせる側面フラットバー(122)とからなり、前記下面フラットバー(121)は、角形ダクト(20)の幅寸法より長くとられ、角形ダクトから側方にはみ出した先端部分が上部金具(11)との固定部(12a)を構成し、
側面フラットバー(112)は、角形ダクト(20)の高さ寸法より長くとられ、角形ダクト(20)から上方にはみ出した先端部を外方に折り曲げてフランジ状の固定部(12b)を構成してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のダクトへの保温材取付用具。
【請求項4】
前記保温材保持具(13)が、前記上部金具(11)の上面フラットバー(111)及び側面フラットバー(112)又は、側面フラットバー(112)のみに、並びに前記下部金具(12)の下面フラットバー(121)及び側面フラットバー(122)のいずれにも備えられてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のダクトへの保温材取付用具。
【請求項5】
前記上部金具(11)の上面フラットバー(111)と側面フラットバー(112)がL型フラットバーで構成され、前記下部金具(12)の下面フラットバー(121)と側面フラットバー(122)が、L型フラットバーで構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のダクトへの保温材取付用具。
【請求項6】
前記上部金具(11)と下部金具(12)の固定部(11a、12b)、(11b、12a)とが、当接してタッピングビス(14)で結合可能に構成されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のダクトへの保温材取付用具。
【請求項7】
前記固定部(11a,12a)、(11b、12b)の角形ダクト(20)からのはみ出し幅が、前記ダクト(20)の外周に密着させる板状の保温材(30)の厚みに等しくとられてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のダクトへの保温材取付用具。
【請求項8】
請求項1〜7に記載のダクトへの保温材取付用具(10)を用いて行う角形ダクト(20)への保温材の取付けが、
a.前記上部金具(11)の上面フラットバー(111)の固定部(11a)と下部金具(12)の側面フラットバー(122)の固定部(12b)、下部金物(12)の下面フラットバー(121)の固定部(12a)と、上部金物(12)の側面フラットバー(111)の固定部(11b)とが互いに当接するようにして角形ダクト(20)の外周を囲い、当接し合った固定部(11a,12b)、(12b、11a)をタッピングビス(14)で接合して前記角形ダクト(20)に固定する作業を、角形ダクト(20)の延長方向に所定の間隔を開けて実施する第1工程と、
b.角形ダクト(20)の延長方向に所定の間隔で固定されたダクトへの保温材装着用具(10)の保温材保持具(13)に板状の保温材(30)を複数枚装着して角形ダクト(20)の外周を前記板状の保温材(30)で囲繞する第2工程と、
c.角形ダクト(20)の外周を囲繞した板状の保温材(30)の外周にフェルト状の保温材(40)を巻き付け、前記板状の保温材(30)及びフェルト状の保温材(40)を貫通した保温材保持具(13)の先端に保温材留具(14)を装着してすべての保温材をダクトに固定する第3工程と、
d.前記固定されたフェルト状の保温材(40)の外周に亀甲金網(50)を巻き付け、前記板状の保温材(30)及びフェルト状の保温材(40)を前記角形ダクト(20)に確実に密着、固定させる第4工程と
で行われてなるものであることを特徴とするダクトへの保温材の取付方法。
【請求項9】
前記板状の保温材(30)がロックウール、又はグラスウールであることを特徴とする請求項8に記載のダクトへの保温材の取付方法。


【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【公開番号】特開2012−177425(P2012−177425A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40543(P2011−40543)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【Fターム(参考)】