説明

ダクト本体用プレス金型

【課題】 幅寸法が異なる複数種類のダクト本体の製造に用いることができ、ダクト本体のコストダウンを図る。
【解決手段】 略樋状に形成された配線ダクトのダクト本体100の側面部120に開口121を形成するダクト本体用プレス金型であって、ダクト本体100の内側に配置されるダイ400と、ダイ400を固定するダイガイド500と、ダクト本体100の外側に配置されるパンチ800とを備えており、ダイ400は、2つの分割ダイ410A、410Bを有し、2つの分割ダイ410A、410Bは、製造すべきダクト本体100のうち最小幅のダクト本体100に対応しており、2つの分割ダイ410A、410Bの間にスペーサー600を介在させることで最小幅のダクト本体100より幅広のダクト本体100に対応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、配電盤等において数多くの配線を収納する配線ダクトを構成するダクト本体を製造するダクト本体用プレス金型に関する。
【背景技術】
【0002】
最も一般的な配線ダクトは、図6に示すように、深い略樋状のダクト本体100と、このダクト本体100に取り付けられるダクトカバー200とから構成されている。
前記ダクト本体100は、壁等に密着する底面部110と、この底面部110から立ち上がり対向する一対の側面部120とが一体に形成されたものである。底面部110には、ダクト本体100を壁等に取り付けるビスのための複数のビス穴(図示省略)が一定の間隔で開設されている。また、側面部120には、収納した配線を外部に導出するための開口部121が一定間隔で開設されている。なお、この側面部120の上端部には、ダクトカバー200の取り付けのための本体側嵌合部122が形成されている。
なお、このダクト本体100は、合成樹脂や金属で構成されている。
【0003】
一方、ダクトカバー200は、浅い略樋状に形成されており、ダクト本体100の本体側嵌合部122に嵌合するカバー側嵌合部210が形成されている。
【0004】
側面部120の開口部121は、図7に示すように、ダクト本体100のなかにダイ300を挿入した状態で、外側からパンチ350を押し当てて開設している。なお、ダイ300は、ベース部310と、ダクト本体100の内側形状にフィットするように形成されているダイ部320とが組み合わさって側面視略T字形状になっている。
【0005】
このように構成されたダイ300をダクト本体100の内側に挿入し、外側からパンチ350を押し当てて開口部121を開設している。ここで、開口部121から打ち抜かれた被打抜片は、ダイ300のダイ部320からベース部310に掛けて貫通される抜き穴330を通して外部に排出される。
【0006】
【特許文献1】特開2008−312388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ダクト本体100の幅寸法(側面部120の間の幅寸法)は複数種類あり、ダイ300はその各種寸法に対応したものを複数種類準備する必要がある。
ダイ300は、抜き穴330があるため、金属塊を放電加工等の時間のかかる加工方法で加工する必要がある。
ダイ300は複数種類を準備しなければならないので、ダクト本体のコストアップの要因になっている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、幅寸法が異なる複数種類のダクト本体の製造に用いることができ、しかも全体としてダクト本体のコストダウンに資することができるダクト本体用プレス金型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るダクト本体用プレス金型は、略樋状に形成された配線ダクトのダクト本体の側面部に開口を形成するダクト本体用プレス金型において、ダクト本体の内側に配置されるダイと、このダイを固定するダイガイドと、ダクト本体の外側に配置されるパンチとを備えており、前記ダイは、2つの分割ダイを有しており、この2つの分割ダイは、製造すべきダクト本体のうち最小幅のダクト本体に対応しており、2つの分割ダイの間にスペーサーを介在させることで前記最小幅のダクト本体より幅広のダクト本体に対応することができるようになっている。
【0010】
前記2つの分割ダイは、ダクト本体の開口に対応した打抜用開口と、この打抜用開口に連通したダイ側凹部とが形成されており、前記打抜用開口は分割ダイの外側側面に、ダイ側凹部は分割ダイの内側側面にそれぞれ形成されている。
【0011】
前記スペーサーは、2つの分割ダイのダイ側凹部に連通するスペーサー側凹部が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るダクト本体用プレス金型は、ダイを2つの分割ダイとこの間に介在されるスペーサーとに分けたため、スペーサーを交換するだけで、幅寸法の異なる複数種類のダクト本体の製造に用いることができる。
また、スペーサーを交換するだけで、幅寸法の異なる複数種類のダクト本体の製造に用いることができるので、ダクト本体のコストダウンに資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るダクト本体用プレス金型のうち、スペーサーを使用した状態の概略的分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るダクト本体用プレス金型のうち、スペーサーを使用していない状態の概略的分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るダクト本体用プレス金型のうち、スペーサーを使用しているものの組み立てられた概略的斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るダクト本体用プレス金型のダイガイドが取り付けられるガイド固定部の概略的斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るダクト本体用プレス金型のうち、スペーサーを使用しているものがガイド固定部に取り付けられた状態の概略的断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るダクト本体用プレス金型によって製造されるべきダクト本体の図面であって、同図(A)は概略的側面図、同図(B)は概略的正面図である。
【図7】従来のダクト本体の製造に用いられるダクト本体用プレス金型を説明する概略的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係るダクト本体用プレス金型は、略樋状に形成された配線ダクトのダクト本体100の側面部120に開口121を形成するダクト本体用プレス金型であって、ダクト本体100の内側に配置されるダイ400と、このダイ400を固定するダイガイド500と、ダクト本体100の外側に配置されるパンチ800とを備えており、前記ダイ400は、2つの分割ダイ410A、410Bを有しており、この2つの分割ダイ410A、410Bは、製造すべきダクト本体100のうち最小幅のダクト本体100に対応しており、2つの分割ダイ410A、410Bの間にスペーサー600を介在させることで前記最小幅のダクト本体100より幅広のダクト本体100に対応することができるようになっている。
【0015】
前記ダイ400は、2つの分割ダイ410A、410Bから構成されている。この分割ダイ410A、410Bは、外側側面411A、411Bら内側側面412A、412Bに貫通した打抜用開口413A、413Bが形成されている。この打抜用開口413A、413Bは、ダクト本体100の側面部120の開口121に対応して開設されている。
【0016】
また、この分割ダイ410A、410Bの内側側面412A、412B、すなわち打抜用開口413A、413Bの終端部はダイ側凹部414A、414Bに連通している。このダイ側凹部414A、414Bは、ダクト本体100から開口部121を形成する際に打ち抜かれた被打抜片(図示省略)を外部に排出するために形成されている。従って、このダイ側凹部414A、414Bは、分割ダイ410A、410Bの下方に開放されている。
さらに、この分割ダイ410A、410Bの下端面には、後述するダイガイド500への固定のための複数の雌ネジ部(図示省略)が形成されている。
【0017】
この2つの分割ダイ410A、410Bは、図2に示すように、内側側面412A、412Bを向かい合わせにして組み合わせると、製造すべきダクト本体100のうち、最小幅のダクト本体100に対応するようになっている。そして、この2つの分割ダイ410A、410Bは、組み合わせられた状態でダイガイド500によって固定される。
【0018】
前記ダイガイド500は、図1等に示すように、分割ダイ410A、410B(スペーサー600を用いる場合にはスペーサー600も含めたもの)を組み合わせたものが嵌まり込むダイ用固定口510が開設された若干厚めの蒲鉾板状に形成されている。このダイ用固定口510の内側には、分割ダイ410A、410B(スペーサー600を用いる場合にはスペーサー600も含めたもの)の下端部が載っかる段差部520が形成されている。なお、この段差部520は、分割ダイ410A、410B(スペーサー600を用いる場合にはスペーサー600も含めたもの)が載っかってもダイ側凹部414A、414Bを塞がないようになっている。なお、この段差部520には、前記雌ネジ部に対応した貫通孔521が開設されている。すなわち、この貫通孔521を介して雄ネジ(図示省略)を前記雌ネジ部に螺合することによって、分割ダイ410A、410B(スペーサー600を用いる場合にはスペーサー600も含めたもの)をダイガイド500に固定するのである。
なお、前記ダイ用固定口510は、被打抜片を外部に排出するために下方に向かって貫通している(図5等参照)。
また、このダイガイド500は、製造すべきダクト本体100の幅寸法(側面部120の間の幅寸法)に応じて複数種類が準備される。ただし、ダイガイド500の幅寸法は、製造すべきダクト本体100の幅寸法にかかわらず同一になっている。
【0019】
また、このダイガイド500は、図5等に示すように、ガイド固定部700の取付溝部710に取り付けられるようになっている。前記取付溝部710の幅寸法は、ダイガイド500の幅寸法に対応しているので、ガイド固定部700は、複数種類のダイガイド500を固定することができるようになっている。
【0020】
このガイド固定部700には、取り付けられたダイガイド500のダイ用固定口510と対応する固定部開口711が取付溝部710に開設されている。この固定部開口711は、ダイ用固定口510から排出された被打抜片を外部に排出するためのものである。
【0021】
前記スペーサー600は、製造すべきダクト本体100のうち、最小幅のもの以外に対応したものであって、2つの分割ダイ410A、410Bの内側側面412A、412Bの間に介在させることで、製造すべきダクト本体100の幅寸法に対応させるものである。従って、スペーサー600は、製造すべきダクト本体100の幅寸法に応じて複数種類が準備される。
【0022】
かかるスペーサー600の側面には、分割ダイ410A、410Bのダイ側凹部414A、414Bに連通するスペーサー側凹部610が形成されている。従って、スペーサー600を2つの分割ダイ410A、410Bの間に介在させた場合には、分割ダイ410A、410Bの打抜用開口413A、413Bと、ダイ側凹部414A、414Bと、スペーサー600のスペーサー側凹部610とが連なることになる。
もちろん、スペーサー側凹部610の下端はダイ側凹部414A、414Bと同様に開放されている。
なお、このスペーサー600は、2つの分割ダイ410A、410Bの間に挟まれるだけであるが、2つの分割ダイ410A、410Bがダイガイド500に強力に固定されているので、スペーサー600と2つの分割ダイ410A、410Bとをネジ等で連結する必要はない。
【0023】
前記パンチ800は、図5に示すように、ダイ400にセットされたダクト本体100の側面部120の外側に配置されるものであって、分割ダイ410A、410Bの打抜用開口413A、413Bに対応した打抜部(図示省略)が形成されている。
すなわち、ダイ400にセットされた状態のダクト本体100(開口121が打ち抜かれる前の状態)の側面部120に対してプレスすることで開口121を打ち抜くのである。側面120から打ち抜かれた被打抜片は、分割ダイ410A、410Bのダイ側凹部414A、414Bとスペーサー600のスペーサー側凹部610とを介してダイガイド500のダイ用固定口510とガイド固定部700の固定部開口711を介して外部に排出される。
【0024】
このように構成されたダクト本体用プレス金型は、スペーサー600を交換することで、同一高さ寸法で異なる幅寸法を有する複数種類のダクト本体100の側面部120の開口121の開設に対応することができる。
従って、幅寸法の異なる複数種類のスペーサー600を準備することで、分割ダイ410A、410Bは変更することなしに、異なる幅寸法を有する複数種類のダクト本体100に対応することができる。
スペーサー600の方が分割ダイ410A、410Bより製造が容易であるので、複数種類のスペーサー600を使い分ける本発明の実施の形態に係るダクト本体用プレス金型の方が全体としてのコストダウンに資することになる。
【0025】
ここで、ダイ400は、2つの分割ダイ410A、410Bに分割されているため、分割されていない従来のダイより製造が容易になるというメリットがある。
すなわち、従来のダイであると、打抜用開口413A、413Bに相当する部分とそれに続くダイ側凹部610に相当する部分とは、ダイの内部を貫通している。
これに対して、2つの分割ダイ410A、410Bやスペーサー600であると、ダイ側凹部414A、414Bは、分割ダイ410A、410Bの内側側面412A、412Bに、スペーサー側凹部610はスペーサー600の側面にそれぞれ露出しているため、放電加工等の時間のかかるものではなく、通常のフライス盤等で形成できるので、製造が容易になる。この結果、製造されるダクト本体100のコストダウンに資することができる。
【符号の説明】
【0026】
100 ダクト本体
120 側面部(ダクト本体の)
121 開口(ダクト本体の側面部の)
400 ダイ
410A、410B 分割ダイ
500 ダイガイド
600 スペーサー
800 パンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略樋状に形成された配線ダクトのダクト本体の側面部に開口を形成するダクト本体用プレス金型において、ダクト本体の内側に配置されるダイと、このダイを固定するダイガイドと、ダクト本体の外側に配置されるパンチとを具備しており、前記ダイは、2つの分割ダイを有しており、この2つの分割ダイは、製造すべきダクト本体のうち最小幅のダクト本体に対応しており、2つの分割ダイの間にスペーサーを介在させることで前記最小幅のダクト本体より幅広のダクト本体に対応することができることを特徴とするダクト本体用プレス金型。
【請求項2】
前記2つの分割ダイは、ダクト本体の開口に対応した打抜用開口と、この打抜用開口に連通したダイ側凹部とが形成されており、前記打抜用開口は分割ダイの外側側面に、ダイ側凹部は分割ダイの内側側面にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載のダクト本体用プレス金型。
【請求項3】
前記スペーサーは、2つの分割ダイのダイ側凹部に連通するスペーサー側凹部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のダクト本体用プレス金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−157896(P2012−157896A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20332(P2011−20332)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000195029)星和電機株式会社 (143)
【Fターム(参考)】