説明

ダクト組立体および該ダクト組立体を用いる鋳造システム

【課題】軌道条件にかかわらず吸引に必要な断面積を確保することができ、かつダクトの寿命を向上させることができるとともに、高温ガスに耐え得ることができるダクト組立体を提供する。
【解決手段】粉塵混入ガスを含む煙を発生する相手装置と該相手装置に追随して移動する集塵機とを接続するダクト組立体。前記相手装置のフードの端部と集塵機のガス入口とにそれぞれ設けられ、上方に開口部を有する固定ダクトと、該固定ダクトの底部から開口部の上方に向けて立設される支柱と、前記固定ダクトの開口部に遊嵌されるとともに、該支柱の先端部に旋回自由に戴置される有底形状の旋回ダクトおよびそれぞれの旋回ダクトに連結される接続ダクトからなる旋回接続ダクトとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダクト組立体および該ダクト組立体を用いる鋳造システムに関する。さらに詳しくは、軌道レールに沿って移動する相手装置と集塵機とを接続するダクト組立体および該ダクト組立体を用いる鋳造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造設備では、集中溶解炉にて溶解された湯(溶銑)を建屋に配設される軌道レールに吊るされた鍋に一旦保持したのち、所定の注湯機に移動し、この鍋から湯を注湯機の溶湯容器内へ注ぐ自動配湯装置(トランカー)が用いられている。また、この装置においては、鍋や溶湯容器内から発生する煙(粉塵混入ガスを含む煙)を鍋の上方に配置したフードからダクトを経由して集塵機にて捕集するようにしている。
【0003】
この自動配湯装置と集塵機は、注湯機まで移動しているあいだに、工場内の天井に配設される軌道レールに沿って曲がったり、旋回を繰り返す。このため、従来、ダクトとして、伸縮および変位を吸収可能とする屈曲自由な素材により作製されたジャバラ形状のダクトを自動配湯装置のフードと集塵機のガス入口に接続している。また、このジャバラダクトは、所定の軌道条件の下、移動するフードと集塵機のガス入口に対して、取付け方向が一定の条件により固定支持されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記ジャバラダクトは、取り付け長さに余裕を持たせてフードと集塵機のガス入口に対して取り付けられているため、つぎのような問題点がある。
(1)フード旋回時、ジャバラダクトの取付け方向が一定であるため、ジャバラ部分が変形してダクト取付部の開口を塞ぎ、吸引に必要な断面積を確保できない。
(2)ジャバラダクトの長さに余裕を持たせて取り付けているため、ジャバラ部分が垂れて、該ジャバラ部分およびダクト取付部の開口を塞ぎ、吸引に必要な断面積を確保できない。
【0005】
また、ジャバラダクトは、屈曲自由な素材で作製されているため、吸引した煙内の粉塵でジャバラ部分の内面が摩耗し破損が早いとともに、高温ガス(煙)を吸引することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、叙上の事情に鑑み、軌道条件にかかわらず吸引に必要な断面積を確保することができ、かつダクトの寿命を向上させることができるとともに、高温ガスにも耐え得ることができるダクト組立体および該ダクト組立体を用いる鋳造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載のダクト組立体は、粉塵混入ガスを含む煙を発生する相手装置と該相手装置に追随して移動する集塵機とを接続するダクト組立体であって、前記相手装置のフードの端部と集塵機のガス入口とにそれぞれ設けられ、上方に開口部を有する固定ダクトと、該固定ダクトの底部から開口部の上方に向けて立設される支柱と、前記固定ダクトの開口部に遊嵌されるとともに、該支柱の先端部に旋回自由に戴置される有底円筒形状の旋回ダクトおよびそれぞれの旋回ダクトに連結される接続ダクトからなる旋回接続ダクトとを備えてなることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の鋳造システムは、建屋に配設される軌道レールに沿って移動する自動配湯装置と、該自動配湯装置に連結されるとともに、該軌道レールに沿って移動する集塵機とを具備する鋳造システムであって、前記自動配湯装置におけるフードの端部と前記集塵機のガス入口とが請求項1記載のダクト組立体により接続されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、伸縮する部分がない旋回接続ダクトを2つの固定ダクトの支柱に乗せ吊った状態にしているため、軌道レールに沿って移動するフードと連結された集塵機が旋回移動のとき、支柱の先端部を支点として旋回接続ダクトが自由に旋回する。これにより、旋回移動時においても吸引に必要な断面積を確保し安定した集塵を行なうことができる。また、旋回接続ダクトを鋼板で作製すると、粉塵による摩耗が低減し、寿命低下を防止することができ、メンテナンスの回数を削減することができる。また、鋼板製の旋回接続ダクトとすることにより、高温ガスを吸引することもできる。
【0010】
さらに、旋回接続ダクトは、支柱に乗せているだけなので、旋回接続ダクトを取り付けおよび取り外すときの脱着作業が短時間で可能となり、点検および交換を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明のダクト組立体および該ダクト組立体を用いる鋳造システムを説明する。図1〜4に示されるように、本発明の一実施の形態にかかわるダクト組立体Aは、相手装置としての鋳造システムにおける自動配湯装置Bと集塵機Cとの接続に用いられている。この自動配湯装置Bと集塵機Cは、それぞれトロリー1により建屋の天井に配設される軌道レール2に懸架されている。また、この集塵機Cは、自動配湯装置Bに追随して移動できるように、該自動配湯装置Bとは、たとえばピン結合などにより回動自在な構造の連結金具3により連結されている。
【0012】
本実施の形態では、前記自動配湯装置Bの鍋4内の溶湯を注湯機の溶湯容器(図示せず)に注ぎ込むときに発生する、粉塵混入ガスを含む煙を前記鍋4の上方に配置されるフード5から吸引したのち、この煙を前記ダクト組立体Aを経由して集塵機Cに吸引させ、脱臭および粉塵を捕集し、そして、清浄な空気として外部に排出するようにされている。なお、本発明において、前記自動配湯装置Bおよび集塵機Cは、とくに限定されるものではなく、通常用いられる装置を適宜選定して用いることができる。
【0013】
前記ダクト組立体Aは、フード5の端部6と集塵機Bのガス入口7とにそれぞれ設けられる固定ダクト11と、該固定ダクト11の底部11aから開口部12の上方に向けて立設される、たとえば軽量化のために円筒形の支柱13と、前記固定ダクト11の上方の開口部12に嵌着される旋回接続ダクト14とを備えている。該旋回接続ダクト14は、前記固定ダクト11の開口部12に遊嵌される有底形状の旋回ダクト15およびそれぞれの旋回ダクト15に連結される円筒形の接続ダクト16から構成されている。また、該旋回ダクト15は前記支柱13の先端、たとえば球面状のキャップを嵌着した先端部13aに戴置され、前記固定ダクト11に対して旋回自由にされている。なお、図1において、符号17aは自動配湯装置B側の固定ダクト11の支持部材であり、符号17bは集塵機C側の固定ダクト11の支持部材である。前記旋回ダクト15と接続ダクト16は、旋回ダクト15の円筒部15bの一部を開口し、この開口に接続ダクト16の開口を合わせて溶接により連結されている。また、本実施の形態では、図3に示されるように、自動配湯装置B側の固定ダクト11だけについて説明すると、この固定ダクト11の円筒部11bには、前記支柱13を支持するブラケット18が設けられている。
【0014】
前記固定ダクト11は、その上部にネック部19を成形して、前記開口部12の周りに周辺フランジ20が形成されているとともに、この周辺フランジ20にシール部21が配設されている。このシール部21は、リング状のパッキン22とパッキン押さえ板23とからなり、たとえばボルト24により前記周辺フランジ20に取り付けられている。また、前記パッキン22は、内端リップ部が前記旋回ダクト15の円筒部15bに接触して、支柱13に乗せ吊った状態にされる旋回ダクト15との摺動部をシールするとともに、該摺動部で支柱13の先端部13を支点とする旋回ダクト14の傾き(重心のずれなどによる傾き)を矯正し、該旋回ダクト15の旋回を容易にする機能を有する。また、パッキン22により、直接固定ダクト14と旋回ダクト15が接することがないため、旋回抵抗を低減させることができる。前記パッキン22の材質としては、耐摩耗性や、優れた摺動性、耐熱性などを有するものであれば、本発明において、とくに限定されるものではない。
【0015】
前記旋回ダクト15は、頂部15aに設けられるアジャスト機構31を介して支柱13に戴置されており、高さが調整できるようにされている。このアジャスト機構31としては、とくに限定されるものではないが、本実施の形態では、前記旋回ダクト15の頂部15aに形成される貫通孔(図示せず)の周りに溶接などにより固定されるナット32と、該ナット32に螺入されるボルト33と、該ボルト33に螺合し、該ボルト33の位置を固定するナット34とからなる構造が用いられている。また、本実施の形態では、前記ボルト33と支柱13とのあいだに、ナット35aと円板35bとからなる座部35を設けて、先端部13aとの滑らかな接触を図り、旋回ダクト15の旋回抵抗を低減している。さらに、前記旋回ダクト15は、その頂部15aに前記支柱13の先端部13aの外周を囲む円筒形状の支柱ガイド36を設け、該支柱13に対してずれ動かないようにされている。
【0016】
本実施の形態では、軌道レール2に沿って移動するフード5と連結された集塵機Cが旋回移動のときに、旋回接続ダクト14が2つの固定ダクト16の支柱13の回りで旋回するため、吸引に必要な断面積を確保し安定した集塵が可能となる。
【0017】
また、旋回接続ダクト14は伸縮する部分がなく鋼板で製作可能となり、粉塵に対する耐摩耗性が向上し、寿命低下を防止することができる。また、高温ガスを吸引することもできる。また、前記旋回ダクト15は鋼板製のため、メンテナンスの回数を削減することができる。
【0018】
さらに、前記旋回ダクト15は、支柱13に乗せているだけなので、旋回接続ダクト14を取り付けおよび取り外すときの脱着作業が短時間で可能となり、点検および交換を容易に行なうことができる。
【0019】
なお、本実施の形態では、軌道レールが建屋の天井に配設され、自動配湯装置と集塵機が共に該軌道レールに懸架されているが、本発明においては、これに限定されるものではなく、軌道レールが建屋の床に配設され、自動配湯装置と集塵機が共に該軌道レール上を移動するようにすることができる。
【0020】
また、本実施の形態では、鋳造システムにおける自動配湯装置と集塵機との接続に適用されているが、本発明においては、これに限定されるものではなく、集塵機と適宜連結する装置が用いられる設備(システム)にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態にかかわるダクト組立体の正面図である。
【図2】図1のダクト組立体の分解斜視図である。
【図3】図1のダクト組立体の要部断面図である。
【図4】図1のアジャスト機構の拡大図である。
【符号の説明】
【0022】
1 トロリー
2 軌道レール
3 連結金具
4 鍋
5 フード
6 端部
7 ガス入口
11 固定ダクト
11a 底部
11b、15b 円筒部
12 開口部
13 支柱
13a 先端部
14 旋回接続ダクト
15 旋回ダクト
15a 頂部
16 接続ダクト
17a、17b 支持部材
18 ブラケット
19 ネック部
20 周辺フランジ
21 シール部
22 パッキン
23 パッキン押さえ板
24、33、34 ボルト
31 アジャスト機構
32、35a ナット
35 座部
35b 円板
36 支柱ガイド
A ダクト組立体
B 自動配湯装置
C 集塵機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵混入ガスを含む煙を発生する相手装置と該相手装置に追随して移動する集塵機とを接続するダクト組立体であって、
前記相手装置のフードの端部と集塵機のガス入口とにそれぞれ設けられ、上方に開口部を有する固定ダクトと、
該固定ダクトの底部から開口部の上方に向けて立設される支柱と、
前記固定ダクトの開口部に遊嵌されるとともに、該支柱の先端部に旋回自由に戴置される有底円筒形状の旋回ダクトおよびそれぞれの旋回ダクトに連結される接続ダクトからなる旋回接続ダクト
とを備えてなるダクト組立体。
【請求項2】
前記旋回ダクトの頂部に前記支柱の外周を囲む円筒形状の支柱ガイドを設けてなる請求項1記載のダクト組立体。
【請求項3】
前記旋回ダクトの頂部に高さを調整するためのアジャスト機構を設けてなる請求項1または2記載のダクト組立体。
【請求項4】
前記アジャスト機構が、旋回ダクトの頂部に形成される貫通孔の周りに固定されるナットと、該ナットに螺入されるボルトと、該ボルトに螺合し、該ボルトの位置を固定するナットとを具備する請求項3記載のダクト組立体。
【請求項5】
前記固定ダクトの開口部の周辺に形成される周辺フランジにシール部が配設されてなる請求項1、2、3または4記載のダクト組立体。
【請求項6】
前記相手装置が自動配湯装置である請求項1、2、3、4または5記載のダクト組立体。
【請求項7】
建屋に配設される軌道レールに沿って移動する自動配湯装置と、該自動配湯装置に連結されるとともに、該軌道レールに沿って移動する集塵機とを具備する鋳造システムであって、
前記自動配湯装置におけるフードの端部と前記集塵機のガス入口とが請求項1、2、3、4または5記載のダクト組立体により接続されてなる鋳造システム。
【請求項8】
前記軌道レールが前記建屋の天井に配設されてなる請求項7記載の鋳造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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