説明

ダストコントロール製品用の液状吸着剤、およびこの液状吸着剤を払拭部に含浸したダストコントロール製品、およびこの液状吸着剤の原液

【課題】環境にやさしく、洗濯のコストを抑えられ、不快な臭いがなく、天然石材等にも用いることが可能で、しかも衛生的なダストコントロール製品用の液状吸着剤を提供する。
【解決手段】ダストコントロール製品用の液状吸着剤を、水溶性ポリウレタンと、乳化した植物性油脂または動物性油脂との混合物が2〜15重量%となるように、水で希釈することで構成した。ポリウレタンの粘着性と油脂のフロアの汚れ落とし性能のため、この吸着剤は良好な塵埃の除去性能と粘着性とを発揮する。また水溶性であり洗濯水に容易に溶解するため、洗濯コストを抑えることができる。水とポリウレタンと油脂からなるため、そのまま海中に流しても環境に対する負荷が小さく、ほとんど無臭でもある。石材等に用いても、鉱物油と異なり、色調に変容をきたすことはない。手に付いても、簡単に洗い流すことができ衛生的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダストコントロール製品の払拭部に含浸して用いる、塵埃を吸着するための液状の吸着剤、およびこの吸着剤を払拭部に含浸したダストコントロール製品、およびこの吸着剤の原液に関する。
【背景技術】
【0002】
モップ、マット、クロス等のダストコントロール製品の払拭部に含浸して用いる、液状の塵埃吸着剤として、ベース油に界面活性剤等を添加したものが知られている(特許文献1参照)。
ダストコントロール製品の払拭部は繊維の集合体であって、それ自体は塵埃の吸着性能はあまり高くないものであるから、このような吸着剤のベース油で払拭部を湿らせ、かつ粘着性を与えることで、塵埃吸着性能を向上させている。
【0003】
ところで、清掃作業後のダストコントロール製品は、再使用のために洗濯して、塵埃や吸着剤を払拭部から洗い落とされる。
この洗濯時には、砂利等の比較的比重の大きな塵埃は水中に沈むので処理が比較的容易であるが、比重が小さく水に溶けないベース油を主成分とする吸着剤は水面に浮くため、処分が困難であった。
そのため、洗い落とされた吸着剤は、そのまま河川や海に垂れ流されているのが現状であり、吸着剤のベース油には、通常は鉱物油が用いられているため、このような垂れ流しは環境に非常な悪影響を及ぼしていた。
【0004】
また、ベース油を主成分とする吸着剤をダストコントロール製品から洗い落とす際には、そのままでは水にほとんど溶けないため、洗剤やアルカリ剤を多量に必要とし、また洗濯温度も高温にしなければならない。
そのため、洗濯のコストが高く付き、また、高温化における洗濯はダストコントロール製品の傷みを早める問題があった。
【0005】
さらに、ベース油に鉱物油を用いた場合には、鉱物油の臭気が不快であり、このような臭気を消すために香料を用いるとなると、余分なコストがかかる問題があった。
【0006】
また、天然石材(大理石等)や白木類、畳、藤などの清掃時に油が移ると、その色調が変化して著しくその価値が低下してしまう。
そのため、油を用いた吸着剤は、これらの清掃には不適であった。
【0007】
また、吸着剤の主成分である油が、清掃作業時に手に付着すると、べたついて不快であり、水で洗い流しにくいため不衛生でもあった。
【特許文献1】特開2002−121544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、環境にやさしく、洗濯のコストを抑えられ、不快な臭いがなく、天然石材等にも用いることが可能で、しかも衛生的なダストコントロール製品用の液状吸着剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意研究の結果、水溶性ポリウレタンの水溶液の粘着性が、従来の油を主成分とした吸着剤の粘着性に劣らないことに着目し、この水溶性ポリウレタンの水溶液をダストコントロール製品用の液状吸着剤として用いると、上記した課題をすべて解決できることを突き止めたのである。
【0010】
すなわち、この吸着剤は、主成分が、水と水溶性のポリウレタンであるので、洗濯水に容易に溶解し、その結果洗剤等が少量で済み、また洗濯温度もさほど高温にする必要がないため、洗濯のコストを低く抑えることができる。
また、このように洗濯温度が比較的低温であるため、ダストコントロール製品があまり傷まず、長持ちする。
【0011】
そして、洗濯時に吸着剤が洗濯水中に溶解するため、水に浮く油と異なり処理が容易である。
また、吸着剤は水とポリウレタンが主成分であるため、洗濯水をそのまま海中に流しても環境に対する負荷が小さい。
【0012】
さらに、水およびポリウレタンは無臭であるため、吸着剤の使用時に不快感を催すことはなく、また香料を加えて臭気を消す必要がないため、余分なコストがかからない。
【0013】
また、天然石材や白木類、畳、藤などの清掃にこの吸着剤を用い、これら天然石材等に吸着剤が多少残存したとしても、油と異なりその色調等に影響を及ぼすことが少ない。
そのため、これらの材質にも問題なく使用することができ、用途の幅が広がる。
【0014】
さらに、この吸着剤が手に付いても、水やポリウレタンからなるため、ほとんどべとつかず、また水洗いにより簡単に洗い流すことができ衛生的でもある。
【0015】
なお、水溶性ポリウレタンとは、たとえばグリコールなどのポリオール(HO-R-OH)と、ジイソシアネート(OCN-R´-NCO)を化学反応させてできる、水に溶ける性質を有するポリウレタンのことをいう。
【0016】
この吸着剤をなす水溶液中の水溶性ポリウレタンは、2〜15重量%であるのが好ましく、3〜8重量%とするのがなお好ましい。
2重量%未満であると、吸着剤の粘性が低くなりすぎて塵埃の吸着性能が不十分となり、15重量%を超えると吸着剤の粘性が高くなりすぎて、ダストコントロール製品の払拭部が清掃対象に粘り付き、スムーズに清掃作業が行えなくなるからである。
【0017】
吸着剤として、水溶性ポリウレタンと、乳化した動物性油脂(牛脂など)または植物性油脂の混合物の水溶液を用いても上記した効果を発揮することが可能である。
この場合、油脂の粘性および汚れを浮き上がらせる性能により、さらなる塵埃の吸着性能の向上および払拭性能の向上が図られる。
また、これら動物性または植物性の油脂は、鉱物油と異なり、海中に流しても環境に対する負荷が小さい。
【0018】
この吸着剤をなす水溶液中の水溶性ポリウレタンと乳化した油脂の混合物は、2〜15重量%であるのが好ましく、3〜8重量%とするのがなお好ましい。
2重量%未満であると、吸着剤の粘性が低くなりすぎて塵埃の吸着性能が不十分となり、15重量%を超えると吸着剤の粘性が高くなりすぎて、ダストコントロール製品の払拭部が清掃対象に粘り付き、スムーズに清掃作業が行えなくなるからである。
【0019】
この吸着剤は、吸着剤単体で市場に流通させ、ダストコントロール製品再生洗浄工場および各家庭、ハウスクリーニング店でダストコントロール製品の払拭部に含浸させてもよいが、払拭部に吸着剤を含浸させたダストコントロール製品を市場に流通させてもよい。
【0020】
吸着剤単体で市場に流通させる場合には、水溶性ポリウレタンの20〜30重量%の水溶液から原液を形成し、これを水で希釈(通常は2〜5倍程度に希釈)することでダストコントロール製品用の液状吸着剤として用いるようとするとよい。
このようにすると、吸着剤の原液は缶等に詰めた際に比較的嵩が低く軽量となるため、持ち運びが容易となり、保管時の省スペース化が図られる。
また、各ダストコントロール製品再生洗浄工場等で、原液の希釈濃度を用途に応じて自由に選択することができ、便利である。
【0021】
このような吸着剤の原液としては、水溶性ポリウレタンが10〜15重量%、乳化した動物性油脂または植物性油脂が10〜15重量%の水溶液から形成したものでもよい。
この場合、各ダストコントロール製品再生洗浄工場等で、水溶性ポリウレタンと油脂とを混合させる必要がないため、手間がかからない。
【発明の効果】
【0022】
水溶性ポリウレタンの水溶液を主成分とするダストコントロール製品用の液状吸着剤を発明したため、環境にやさしく、洗濯のコストを抑えられ、不快な臭いがなく、天然石材等にも用いることが可能で、しかも衛生的であるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施形態のダストコントロール製品用の液状吸着剤は、水溶性ポリウレタンと、乳化した植物性油脂または動物性油脂との混合物の、2〜15重量%(好ましくは3〜8重量%)の水溶液として構成される。
【0024】
このような吸着剤は、水溶性ポリウレタンが10〜15重量%、乳化した動物性油脂または植物性油脂が10〜15重量%の水溶液から形成される吸着剤原液を、さらに水で適宜希釈することで作製されている。
吸着剤を原液の状態で市場に流通させると、缶等に詰めた際に比較的軽量で持ち運びが容易であり、また保管時にもスペースをとらない。
また、原液の希釈濃度を用途に応じて自由に選択することができて、便利である。
【0025】
水溶性ポリウレタンは、例えばポリオールとジイソシアネートとを化学反応させる公知の製法により製造され、水中に投与されて攪拌されると、親水基を有するため水中に溶解した状態で安定する。
【0026】
植物性油脂としては、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、ヒマシ油などが用いられ、動物性油脂としては、牛脂などが用いられる。
これら油脂は、硫酸エステル塩などの公知の乳化剤により乳化されているため、水中に分散した状態で安定している。
【0027】
水溶性ポリウレタンは、粘着性を有するため、この液状吸着剤を、モップ、マット、クロス等のダストコントロール製品の払拭部に噴霧等して含浸させると、良好な粘着性を発揮する。
また、油脂は、粘着性および汚れを浮き上がらせる性能を有するため、液状吸着剤を、ダストコントロール製品の払拭部に含浸させると、良好な汚れ払拭性能および粘着性を発揮する。
【0028】
また、この吸着剤は、水が80重量%以上をなすうえに、ポリウレタンは水溶性であり、乳化した油脂は水中で安定状態にあるため、洗濯水に容易に溶解可能であり、その結果洗濯時における洗剤等が少量で済む。
また洗濯水に溶けやすいため、洗濯温度もさほど高温にする必要がなく、洗濯のコストを低く抑えることができるとともに、ダストコントロール製品の劣化を抑えることができる。
この吸着剤が溶解した洗濯水は、水と水溶性ポリウレタンと植物性または動物性の乳化油脂からなるため、そのまま海中に流しても環境に対する負荷が小さい。
【0029】
さらに、水および水溶性ポリウレタンは無臭であり、植物性または動物性油脂もほとんど無臭であるため、鉱物油を主成分とする従来の吸着剤のように、香料を加えて臭気を消す必要がない。
天然石材や、畳、藤などの清掃にこの吸着剤を用いた場合に、これら材質に吸着剤が多少残存したとしても、鉱物油と異なり、材質の色調等が変化することはないため(植物または動物油脂は極微量であり、さらに乳化されているため石材等に浸み込みにくい。)、多用途に用いることが可能である。
この吸着剤が手に付いても、水、水溶性ポリウレタン、極微量の乳化した動物または植物油脂からなるため、ほとんどべとつかず、また水洗いにより簡単に洗い流すことができ衛生的でもある。
【0030】
この実施形態では、乳化した植物または動物油脂を吸着剤に添加しているが、水と水溶性ポリウレタンのみから吸着剤を構成してもよい。
その場合、水溶性ポリウレタンは、水溶液中の濃度を2〜15重量%、さらには3〜8重量%とするのが好ましい。
かかる場合においても、水溶性ポリウレタンは良好な粘着性を有するため、良好な清掃性能を得られる。
【0031】
この吸着剤には、さらに、平滑剤としてシリコーン樹脂の乳化物を添加したり、粘着性を高めるためにアクリル樹脂の乳化物を添加したり、粘度調整剤としてアルギン酸ソーダを添加してもよい。
【実施例】
【0032】
以下、さらに詳細な実施例および比較例を挙げて、この発明を一層明確にする。
【0033】
水溶性ポリウレタンと乳化した牛脂とを、重量比が1:1になるように混合し、これが5重量%となるようにさらに水で希釈して、実施例の吸着剤を作製した。
また、鉱物系精製油が97重量%、界面活性剤が3%の比較例の吸着剤を作製した。
これら実施例および比較例の吸着剤100gを、300gの重みを有するモップにスプレーにて満遍なく塗布した。
【0034】
2m×2mの木製のフローリングの上に、平均粒径10μmの炭粉(木材の燃えがらを乳鉢でよくすり潰し、微粒化したもの)を、フローリング1平米あたりに約10g撒いて、床が汚れた状態のモデルを作出した。
そして、上記実施例および比較例の吸着剤を塗布含浸したモップ(以下、単に実施例および比較例のモップという。)に柄を取り付け、このフローリング上を満遍なく払拭し、炭粉を実施例および比較例のモップに吸着させた。
【0035】
この作業の後にモップを柄から取り外し、裏面からたたいて、これらモップの吸着剤に吸着していない、単に付着しているだけの炭粉を叩き落した。
この後に、実施例および比較例のモップに吸着した炭粉の量を目視にて観察した。
実施例の結果を図1に、比較例の結果を図2に示す。
【0036】
図から明らかなように、実施例のモップは、拭きむらが全くなく、吸着している炭粉の量が多いのに対し、比較例のモップは、拭きむらが多く、吸着している炭粉の量が少ない。
これにより、実施例のモップは吸着性能にすぐれていることがわかった。
なお、炭粉の平均粒径である10μmは、花粉の平均粒径である20μm前後の半分であり、実施例のモップは、花粉のような微細な塵埃をも良好に吸着できることが確認された。
【0037】
さらに、実施例および比較例のモップを家庭用洗濯機の標準モードにて水洗いし、洗濯後の状態を目視にて観察した。
【0038】
その結果、比較例のモップでは、吸着剤が油性であるため水洗いしても取れにくく、したがって吸着剤に吸着した炭粉がモップに多量に残存しているのに対し、実施例のモップでは、吸着剤が水性であるため水によく洗い流され、したがって吸着剤に吸着した炭粉もほとんど洗い流されていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】フローリング清掃後の実施例のモップの写真
【図2】フローリング清掃後の比較例のモップの写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ポリウレタンの水溶液からなるダストコントロール製品用の液状吸着剤。
【請求項2】
水溶性ポリウレタンと、乳化した動物性または植物性の油脂との混合物の水溶液からなるダストコントロール製品用の液状吸着剤。
【請求項3】
上記水溶液中の水溶性ポリウレタンは、2〜15重量%である請求項1に記載のダストコントロール製品用の液状吸着剤。
【請求項4】
上記水溶液中の水溶性ポリウレタンと乳化した動物性または植物性の油脂の混合物は、2〜15重量%である請求項2に記載のダストコントロール製品用の液状吸着剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の液状吸着剤を、払拭部に含浸したダストコントロール製品。
【請求項6】
水溶性ポリウレタンの20〜30重量%の水溶液からなり、さらに水に希釈することでダストコントロール製品用の液状吸着剤として用いる吸着剤原液。
【請求項7】
水溶性ポリウレタンが10〜15重量%、乳化した動物性または植物性油脂が10〜15重量%の水溶液からなり、さらに水で希釈することでダストコントロール製品用の液状吸着剤として用いる吸着剤原液。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−79133(P2009−79133A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249691(P2007−249691)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(504152270)株式会社ダイショウ (3)
【Fターム(参考)】