説明

ダスト測定システム及びその汚れ防止機構

【課題】安価に構築可能で、且つ信頼性をもって動作させることができるダスト測定システム、及びその汚れ防止機構を提供する。
【解決手段】ダクト39に設けられた光学測定系と、ダクト39中を輸送される排ガスから光学測定系の光学素子の汚れを防止するために、光学測定系にパージエアを導入するエアパージユニット12と、光学測定系のパージエアの導入部の位置よりもダクト39側に設けられたフェールセーフシャッタ3a,3bと、エアパージユニット12の電源電流を監視し、電源電流の異常を検知した場合、フェールセーフシャッタ3a,3bを駆動して光学素子を排ガスから遮断するフェールセーフシャッタコントローラ11とを備え、光学素子により排ガス中の粒子状物質の濃度を透過測定法により測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所や高熱プラント等のダクト等を通して排出される排ガス中のダスト濃度を連続的に測定するダスト測定システム、及びこのダスト測定システムの光学測定系に用いる光学素子の汚れ防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、ダクト39により流路を定義された煙道30中のダスト量を連続的に測定するダスト計として、従来、光源431と光検出器432を備えてなる投受光部1と、反射鏡441を有してなる反射鏡部2とを煙道30を挟んで対向配置し、光源431からの光が煙道30を通って反射鏡441により反射し、再び煙道30を通って光検出器432に入射するまでの間に、その光が煙道30中のガス内に存在するダストにより減衰することを利用して、光検出器432の出力から煙道30中の排ガスに含まれるダスト量(濃度)を計測する技術が知られている(非特許文献1)。
【0003】
投受光部1の光源431からは発射された光はビームスプリッタ433に照射され、このビームスプリッタ433を通過した光はコリメートレンズ434により平行光束とされて測定光となり、ダクト39内の煙道30を経て反射鏡441によって反射され、再び煙道30を経てビームスプリッタ433によって光検出器432に導かれる。一方、光源431からの光のうち、ビームスプリッタ433により反射された光は、参照光としてダストの存在しない投受光部1内の空間を介して光検出器432に導かれる。光検出器432に入射する両光束(測定光と参照光)は、互いに位相をずらして光検出器432に導かれるようになっている。
【0004】
ダクト39内のダスト量に応じて減衰した測定光の光量と、参照光の光量との差を求めることによって、ダクト39内の光経路内のダスト量(濃度)を計測することができる。
【0005】
ゼロリフレクタ435及びスパンフィルタ436は、光源431の劣化、光検出器432の劣化、またコリメートレンズ434の汚れ等により発生するドリフトを補正するための機構である。定期的にゼロリフレクタ435を光軸上に移動して、ゼロ点を補正し、その後スパンフィルタ436を光軸上に移動して、スパン点の補正を行うようになっている。
【0006】
フェールセーフシャッタ機構は、パージエアの圧力を圧力センサ等によって検出するか、又は、パージエアの流量を流量センサ等によって検出して、その検出圧力が所定の圧力以下に低下したとき、又は、検出流量が所定の流量以下に低下したとき、自動的にモータ等を駆動してダクト39と投受光部1又は反射鏡部2との間をシャッタにより機械的に遮断するようになっている。
【0007】
図5のダクト39内には排ガスが流れており、ダクト39内が正圧の場合、ダストや水分を含んだ排ガスがダスト計に装着されたコリメータレンズ434、ゼロリフレクタ435、反射鏡441を汚すため、測定が正常にできなくなる。コリメータレンズ434で投光部側は仕切られているため、コリメータレンズ434より奥(図5において左側)に位置する光源431、ビームスプリッタ433、光検出器432、スパンフィルタ436等は基本的に結露やダストで汚れにくいが、細かいダストはコリメータレンズ434仕切りの隙間から入る可能性があるので、光源431、ビームスプリッタ433、光検出器432、スパンフィルタ436等も若干汚れる。光学素子(434,435,441)が汚れると、保守要員がダスト計の設置場所に行って、装置を開けて光学素子(434,435,441)を清掃しなければならなくなるが、ダスト計がダクト39としての煙突に取り付けられている場合には数十m登らな
ければいけないことがある。
【0008】
通常は、排ガスが光学素子(434,435,441)に当らないように、パージエアの導入口45a,45bを通じてパージエアが吹きつけられる。何らかの原因でパージエアの圧力が低下したり、あるいはエアの供給が停止すると光学素子(434,435,441)が汚れてしまうため、何らかの方法でパージエアの圧力又は流量を監視し、圧力又は流量が低下したときには、ダクト39内の排ガスが投受光部1及び反射鏡部2側に流れてその光学素子(434,435,441)にダストが付着することを防止すべく、各取り付けフランジ41a,41bの近傍に、それぞれフェールセーフシャッタ機構がオプション部品として装着されることが常用されている。
【0009】
エア源としては、日本国内の工場では計装エアを利用できることが多いが、海外では、別途エアパージファンを用意してパージを行うことが多い。計装エアの場合、工場内共用設備であるため、設備の異常を監視することが困難であるために、図5の圧力センサ(又は流量センサ)450を用いるしか、パージエアの状態を監視する方法がなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ヴイディーアイ(VDI)規格(ドイツ) 2066,パート4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、このパージエアの状態を監視する圧力センサ(又は流量センサ)450はコストが高く、又、圧力センサ又は流量センサ450による圧力又は流量の読取値が正確度を欠くようになる結果、パージエアの圧力又は流量が低下しても、フェールセーフシャッタが閉まらない、あるいは勝手に閉まってしまうという誤動作が生じる問題があった。
【0012】
上記問題点を鑑み、本発明は、安価に構築可能で、且つ信頼性をもって動作させることができるダスト測定システム、及びその汚れ防止機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、(イ)ダクトの側壁の一部に設けられた光学測定系と、(ロ)ダクト中を輸送される排ガスから光学測定系の光学素子の汚れを防止するために、光学測定系にパージエアを導入するエアパージユニットと、(ハ)光学測定系のパージエアの導入部の位置よりもダクト側に設けられたフェールセーフシャッタと、(ニ)エアパージユニットの電源電流を監視し、電源電流の異常を検知した場合、フェールセーフシャッタを駆動して光学素子を排ガスから遮断するフェールセーフシャッタコントローラとを備え、光学素子により排ガス中の粒子状物質の濃度を透過測定法により測定するダスト測定システムであることを要旨とする。
【0014】
本発明の第2の態様は、ダクトの側壁の一部に光学測定系を設け、この光学測定系が有する光学素子によりダクト中を輸送される排ガス中の粒子状物質の濃度を透過測定法により測定するダスト測定システムにおいて、光学素子が排ガスから汚れることを防止する汚れ防止機構に関する。即ち、第2の態様に係る汚れ防止機構は、(イ)排ガスから光学素子が汚れるのを防止するために、光学測定系にパージエアを導入するエアパージユニットと、(ロ)光学測定系のパージエアの導入部の位置よりもダクト側に設けられたフェールセーフシャッタと、(ハ)エアパージユニットの電源電流を監視し、電源電流の異常を検知した場合、フェールセーフシャッタを駆動して光学素子を排ガスから遮断するフェールセーフシャッタコントローラ
とを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安価に構築可能で、且つ信頼性をもって動作させることができるダスト測定システム、及びその汚れ防止機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るダスト測定システム及びその汚れ防止機構の構成を説明する模式図である。
【図2】図1中に示したBのフェールセーフシャッタ部分の拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る汚れ防止機構として機能するフェールセーフシャッタコントローラの構造を説明するブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る汚れ防止機構としてのフェールセーフシャッタコントローラの動作を説明するフローチャートである。
【図5】従来のダスト計の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付した。但し、図面は模式的なものであり、構成部品・機器の寸法は、現実のものとは異なることに留意するべきである。従って、構成機器・部品の寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0018】
又、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品・機器の材質、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
(ダスト測定システム)
本発明の実施の形態に係るダスト測定システムは、図1に示すように、ダクト39の側壁の一部に設けられた光学測定系と、ダクト39中を輸送される排ガスから光学測定系の光学素子の汚れを防止するために、光学測定系にパージエアを導入するエアパージユニット12と、光学測定系のパージエアの導入部の位置よりもダクト39側に設けられたフェールセーフシャッタ3a,3bと、エアパージユニット12の電源電流を監視し、電源電流の異常を検知した場合、フェールセーフシャッタ3a,3bを駆動して光学素子を排ガスから遮断するフェールセーフシャッタコントローラ11とを備え、光学素子により排ガス中の粒子状物質の濃度を透過測定法により測定する。ここで、光学測定系は、排ガス中の粒子状物質の濃度を透過測定法により測定する光を投光する投受光部1と、投受光部1に接続された第1の光道パイプ40aと、第1の光道パイプ40aに光道パイプ接続フランジ50a,60aを介して一方の端部が接続され、他方の端部を排ガスが輸送されるダクト39の側壁の一部に挿入した第2の光道パイプ40bと、ダクト39の側壁の他の一部に一方の端部が挿入された第3の光道パイプ40cと、第3の光道パイプ40cに光道パイプ接続フランジ50b,60bを介して一方の端部が接続された第4の光道パイプ40dと、第4の光道パイプ40dの他方の端部に接続され、投受光部1からの光を反射し投受光部1に戻す反射鏡部2とを備えている。なお、ダクト39には煙突等の煙道30を形成し、排ガスが輸送される種々の配管やパイプ等が適用可能である。
【0020】
第1の光道パイプ40aと、光道パイプ接続フランジ50a,60aと、第2の光道パイプ40bとで投受光部側光道パイプ(40a,50a,60a,40b)を構成し、第3の光道パイプ40cと、光道パイプ接続フランジ50b,60bと、第4の光道パイプ40dとで反射鏡部側光道パイプ(40c,50b,60b,40d)を構成し、投受光部側光道パイプ(40a,50a,60a,40b)の光軸は、反射鏡部側光道パイプ(40c,50b,60b,40d)の光軸と共通になされている。
【0021】
投受光部1と反射鏡部2は、投受光部側光道パイプ(40a,50a,60a,40b)及び反射鏡部側光道パイプ(40c,50b,60b,40d)を介して、互いの光軸を一致させて、煙道30を挟むようにダクト39の外側に対向して取り付ける。図示を省略しているが、投受光部1の内部には、排ガス中の粒子状物質の濃度を透過測定法により測定するために、図5に示したのと同様な光源、ビームスプリッタ、光検出器等の光学素子が内蔵され、反射鏡部2の内部には、投受光部1からの光を反射し投受光部1に戻すために、図5に示したのと同様な反射鏡等の光学素子が内蔵されている
第1の光道パイプ40aには第1のエアダクトホース5aの一方の端部が接続され、第4の光道パイプ40dには第2のエアダクトホース5bの一方の端部が接続され、第1のエアダクトホース5a及び第2のエアダクトホース5bのそれぞれの他方の端部にはエアパージユニット12が接続されている。第1の光道パイプ40aの第1のエアダクトホース5aの接続箇所が、「第1のパージエア導入部」となり、第4の光道パイプ40dの第2のエアダクトホース5bの接続箇所が、「第2のパージエア導入部」となる。エアパージユニット12から、第1のエアダクトホース5a及び第2のエアダクトホース5bのそれぞれを介して第1の光道パイプ40a及び第4の光道パイプ40dにパージエアが送風される。即ち、エアパージユニット12から、第1のパージエア導入部及び第2のパージエア導入部のそれぞれを介して第1の光道パイプ40a及び第4の光道パイプ40dにパージエアが送風される。
【0022】
更に、第1の光道パイプ40aの第1のエアダクトホース5aの接続部(第1のパージエア導入部)よりもダクト39側には第1のフェールセーフシャッタ3aが設けられ、第4の光道パイプ40dには、第2エアダクトホース5bの接続部(第2のパージエア導入部)よりもダクト39側には第2のフェールセーフシャッタ3bが設けられている。第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bには、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bをそれぞれ駆動・制御するフェールセーフシャッタコントローラ11が接続されている。
【0023】
エアパージユニット12には、エアパージファン123と、エアパージファン123を駆動するモータ121と、エアパージファン123に接続された吸気側エアダクト125と、吸気側エアダクト125に接続され、エアパージファン123に吸気側エアダクト125を介して送られるパージエア中のダストを除外する吸気側フィルタ124等が内蔵されている。エアパージユニット12には、モータ121の交流電流を測定して、直流電圧に変換する電流・電圧変換器13が接続され、電流・電圧変換器13の出力端子は、フェールセーフシャッタコントローラ11に接続されている。フェールセーフシャッタコントローラ11は、エアパージユニット12の電源電流を監視し、電源電流の異常を検知した場合、第1のフェールセーフシャッタ3aを駆動して投受光部1を排ガスから遮断し、第2のフェールセーフシャッタ3bを駆動して反射鏡部2を排ガスから遮断する。
【0024】
このため、フェールセーフシャッタコントローラ11は、図3に示すように、電流・電圧変換器13の出力端子に第1の入力端子(+端子)を接続した第1の比較器14と、電流・電圧変換器13の出力端子に第1の入力端子(+端子)を接続した第2の比較器17と、第1の比較器14の第2の入力端子(−端子)に接続された基準電圧(上限)発生回路16と、第2の比較器17の第2の入力端子(−端子)に接続された基準電圧(下限)発生回路19と、第1の比較器14の出力端子に接続された第1の出力回路15と、第2の比較器17の出力端子に接続された第2の出力回路18とを備える。
【0025】
投受光部1には投受光部1の操作及び投受光部1からの出力を表示する操作・表示部10が接続されている。操作・表示部10には操作・表示部10を駆動する第1の電源20aが接続され、フェールセーフシャッタコントローラ11にはフェールセーフシャッタコントローラ11を駆動する第2の電源20bが接続され、エアパージユニット12には電流・電圧変換器13を介してエアパージユニット12を駆動する第3の電源20cが接続されている。
【0026】
ダクト39の内部の圧力が正圧の場合、排ガスが投受光部1と反射鏡部2の方に流れて、投受光部1及び反射鏡部2に内蔵された種々の光学素子を汚してしまうので、これを防止するために、エアパージユニット12内のエアパージファン123から清浄なパージエアを、第1のエアダクトホース5a及び第2のエアダクトホース5bのそれぞれを介して第1の光道パイプ40a及び第4の光道パイプ40dに送り、投受光部1及び反射鏡部2のパージを行う。このパージエアの圧力が低下したり、供給が停止したりしたときに、排ガスが投受光部1及び反射鏡部2に内蔵された種々の光学素子を汚すのを防ぐため、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bを動作させて、第1の光道パイプ40a及び第4の光道パイプ40dの光道を閉じ、投受光部1及び反射鏡部2を排ガスから遮断する。
【0027】
図2は、図1のBで示した第1のフェールセーフシャッタ3aの部分を拡大したものである。第1のフェールセーフシャッタ3aはクランクアーム33と一体となっている。モータシャフト32に連結されたクランクアーム33をシャッタ駆動用のモータ31によって駆動すると、第1のフェールセーフシャッタ3aを上方にスライドさせ、第1の光道パイプ40aの光道25を塞ぐことができる(第2のフェールセーフシャッタ3bの駆動部分についても、第1のフェールセーフシャッタ3aと実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。)。
【0028】
(汚れ防止機構)
本発明の実施の形態に係るダスト測定システムにおいては、排ガスから光学素子が汚れるのを防止するために、光学測定系にパージエアを導入するエアパージユニット12と、光学測定系のパージエアの導入部の位置よりもダクト39側に設けられたフェールセーフシャッタ3a,3bと、エアパージユニット12の電源電流を監視し、電源電流の異常を検知した場合、フェールセーフシャッタ3a,3bを駆動して光学素子を排ガスから遮断するフェールセーフシャッタコントローラ11とによって、光学素子が排ガスから汚れることを防止する汚れ防止機構を構成している。
【0029】
このため、本発明の実施の形態に係る汚れ防止機構は、図1の電流・電圧変換器13によって、エアパージユニット12を構成するエアパージファン123を駆動するモータ121の交流電流を直流電圧に変換し、フェールセーフシャッタコントローラ11において、この直流電圧に変換されたモータ121の交流電流が所定の許容変動範囲を外れた場合に、フェールセーフシャッタコントローラ11が第1のフェールセーフシャッタ3aのモータ31を動作させて、投受光部1を排ガスから遮断し、同時に、第2のフェールセーフシャッタ3bのモータを動作させて、反射鏡部2を排ガスから遮断する。
【0030】
(フェールセーフシャッタコントローラの動作)
図4のフローチャートを用いて、図3に示した本発明の実施の形態に係る汚れ防止機構を構成するフェールセーフシャッタコントローラ11の動作を説明する。
【0031】
(イ)先ず、ステップS1で、フェールセーフシャッタコントローラ11の第1の比較器14は、電流・電圧変換器13から第1の入力端子(+端子)に入力された直流電圧と第2の入力端子(−端子)に入力された基準電圧(上限)発生回路16の出力電圧を比較し、図1のモータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の上限を超えているか否かを判定する。ステップS1で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の上限を超えていると判定された場合は、ステップS2に進み、第1の出力回路15から第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bのそれぞれに同時に動作信号を出力させる。即ち、ステップS2において、フェールセーフシャッタコントローラ11の第1の出力回路15は、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bのモータを動作させる動作信号をそれぞれ出力し、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bは、それぞれのモータにより駆動され、投受光部1及び反射鏡部2を排ガスから遮断する。ステップS1で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の上限を超えていないと判定された場合は、第1の出力回路15は、動作信号を出力せず、ステップS3に進む。
【0032】
(ロ)ステップS3で、フェールセーフシャッタコントローラ11の第2の比較器17は、電流・電圧変換器13から第1の入力端子(+端子)に入力された直流電圧と第2の入力端子(−端子)に入力された基準電圧(下限)発生回路19の出力電圧を比較し、図1のモータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の下限を下回っているか否かを判定する。ステップS3で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の下限を下回っていると判定された場合は、ステップS2に進み、第2の出力回路18から第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bのそれぞれに同時に動作信号を出力させる。即ち、ステップS2において、フェールセーフシャッタコントローラ11の第2の出力回路18は、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bのモータを動作させる動作信号をそれぞれ出力し、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bは、それぞれのモータにより駆動され、投受光部1及び反射鏡部2を排ガスから遮断する。ステップS3で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の下限を下回っていないと判定された場合は、第2の出力回路18は、動作信号を出力せず、フェールセーフシャッタコントローラ11は、モータ121に供給されている交流電流の監視処理を終了し、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bは動作しない。
【0033】
なお、図4のフローチャートは、先ず、ステップS1で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の上限を超えているか否かを判定し、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の上限を超えていないと判定された場合は、ステップS3に進むという流れで記載しているが、この流れは説明の便宜上(論理上の)流れであり、現実の動作としては、図3に示したフェールセーフシャッタコントローラ11のブロック図から分かるように、ステップS1における第1の比較器14による判定と、ステップS3における第2の比較器17による判定とは電流・電圧変換器13の出力を第1の比較器14と第2の比較器17とが同時に入力し、第1の比較器14及び第2の比較器17において同時に比較処理をすることが可能である。
【0034】
(動作例)
以下に、本発明の実施の形態に係るダスト測定システムの汚れ防止機構として機能するフェールセーフシャッタコントローラ11の動作例を説明する。
【0035】
パージエアが第1のエアダクトホース5a及び第2のエアダクトホース5bから正常に供給されなくなる原因としては、主に次の5点が考えられる。
【0036】
(a)エアパージファン123のモータ121の巻線が断線した場合;
(b)停電が起った場合;
(c)エアパージファン123のモータ121のベアリングが焼付きを起した場合;
(d)エアパージファン123の吸気側フィルタ124が詰まりを起した場合;
(e)第1のエアダクトホース5a及び第2のエアダクトホース5bのいずれかが詰まりを起した場合。
【0037】
(a),(b)の場合は、モータ121が回転を停止し、エアパージファン123の電源電流はゼロとなる。一方、(c)〜(e)の場合は、モータ121に過負荷がかかり、エアパージファン123の電源電流は定格電流を大きく超えた過電流となる。
【0038】
本発明の実施の形態に係るダスト測定システムの汚れ防止機構の動作例の説明においては、フェールセーフシャッタコントローラ11は、図4に示した判断フローに従って動作するものとするが、以下の説明においては、モータ121としては、単相100V1Aの定格のものを用い、6Aの過電流が40秒間流れたときに動作する過負荷保護リレーがついているものと仮定する。又、電流・電圧変換器13及びフェールセーフシャッタコントローラ11には無停電電源(UPS)や内蔵電池等、停電時にも動作可能な対策がなされているものとする。
【0039】
エアパージファン123の電源をONにしてモータ121が定格運転状態になってから、電流・電圧変換器13をONにする。以下の説明では、モータ121に供給されている交流電流の閾値範囲の上限は1.25Aとし、下限は、0.9Aに設定する。
【0040】
モータ121の過負荷保護リレーは、過電流が6Aより小さくなるにつれて、40秒よりより長い時間で動作する。従って、モータ121に過負荷電流が流れても、過負荷保護リレーの所定の設定時間を超えるまでは、モータ121は回転を続け、パージエアが供給され続けることになる。これに対し、本発明においては、1.25Aを超える過負荷電流が流れると、電流・電圧変換器13を介してからフェールセーフシャッタコントローラ11がこれを検知して動作し、モータ121が停止する前に第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bのモータを動作させて第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bを閉じ、投受光部1及び反射鏡部2内の光学素子を排ガスから遮断する。
【0041】
本発明の実施の形態に係る汚れ防止機構によれば、排ガスが光学素子に接しないようにパージエアを供給するエアパージユニット12と、排ガスと光学素子を遮断する第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bとを備えたダスト測定システムにおいて、パージエアが止まったり、流量が低下したときの、ダスト測定システムの光学素子の汚れ防止のために、エアパージユニット12内のエアパージファン122を駆動するファンモータ121の電源電流を監視して、その電流が所定の上下限閾値の範囲を外れたときに第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bを動作させる機構が設けられているので、信頼性をもって、且つ、安価に、光学素子の汚れを防止することができる。又、ファンモータ121の電源電流値でエアパージファン122の異常を判断して、エアパージファン122の電源をOFFにするようにしているので、吸気側フィルタ124や排気側に詰まりがあっても、ファンモータ121の焼付きを防止することができる。
【0042】
−動作例1−
モータ121の巻線を断線させると、エアパージファン123の電源電流はゼロとなり、エアパージファン123の電源電流が閾値下限の0.9Aを下回ったことを、電流・電圧変換器13を介してからフェールセーフシャッタコントローラ11が検知する。即ち、図4のフローチャートにおいて、ステップS1で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の上限を超えていないと判定 → ステップS3で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の下限を下回っていると判定→ ステップS2と進み、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bが同時に動作する。
【0043】
−動作例2−
工場電源のブレーカをOFFにすると、ただちに無停電電源若しくは内蔵電源等が作動して電流・電圧変換器13及びフェールセーフシャッタコントローラ11が作動を続け、モータ121の電源電流が閾値下限の0.9Aを下回ったことを、電流・電圧変換器13を介してからフェールセーフシャッタコントローラ11が瞬時に検知する。即ち、図4のフローチャートにおいて、ステップS1で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の上限を超えていないと判定 → ステップS3で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の下限を下回っていると判定→ ステップS2と進み、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bが同時に動作する。
【0044】
−動作例3−
モータ121のベアリングに焼付きが起きた場合、モータシャフト122の回転にベアリングとの摩擦力が加わってモータ121に過負荷がかかり、エアパージファン123の電源電流が定格を大きく超えて流れる。このため、エアパージファン123の電源電流が閾値上限の1.25Aを超えたことを、電流・電圧変換器13を介してからフェールセーフシャッタコントローラ11が検知する。即ち、図4のフローチャートにおいて、ステップS1で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の上限を超えていると判定→ステップS2と進み、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bが同時に動作する。
【0045】
−動作例4−
エアパージファン123の吸気側フィルタ124の詰まりが生じ、例えば、吸気孔断面積の70%を塞がれた場合、パージエアの所定流量を確保するためにモータ121に過負荷がかかり、エアパージファン123の電源電流が定格を大きく超えて流れる。このため、エアパージファン123の電源電流が閾値上限の1.25Aを超えたことを、電流・電圧変換器13を介してからフェールセーフシャッタコントローラ11が瞬時に検知する。即ち、図4のフローチャートにおいて、ステップS1で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の上限を超えていると判定→ステップS2と進み、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bが同時に動作する。
【0046】
−動作例5−
第1のエアダクトホース5a及び第2のエアダクトホース5bの詰まり、例えば、第1のエアダクトホース5a及び第2のエアダクトホース5bの内側断面積の70%が局部的に塞がれたとすると、パージエアの所定流量を確保するためにモータ121に過負荷がかかり、エアパージファン123の電源電流が定格を大きく超えて流れる。このため、エアパージファン123の電源電流が閾値上限の1.25Aを超えたことを、電流・電圧変換器13を介してからフェールセーフシャッタコントローラ11が瞬時に検知する。即ち、図4のフローチャートにおいて、ステップS1で、モータ121に供給されている交流電流が所定の閾値範囲の上限を超えていると判定→ステップS2と進み、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bが同時に動作する。
【0047】
(その他の実施の形態)
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものではない。この開示から、当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0048】
本発明の実施の形態に係るダスト測定システムの汚れ防止機構の動作例1〜5はあくまでも例示であり、その他、例えば、何らかの原因でファンモータ電源の電圧降下が起った場合等においても、本発明の実施の形態に係るダスト測定システム及びその汚れ防止機構が適用できることは、上記説明から明らかであろう。
【0049】
例えば、(c)〜(e)の場合のような、エアパージファン123駆動用のモータ121の電源電流が定格電流を大きく超えた場合のみを対象とするのであれば、図3に示すような電子回路を用いず、単なるブレーカを用いて、第1のフェールセーフシャッタ3a及び第2のフェールセーフシャッタ3bを同時に動作させるようにしてもよい。この場合は、フェールセーフシャッタコントローラ11の構成がより簡素化されるのでより安価なダスト測定システム及びこれに用いる汚れ防止機構を構築できる。
【0050】
従って、本発明がここで記載していない様々な実施の形態や実施例等を含むことはもちろんである。従って、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のダスト測定システム及びその汚れ防止機構は、発電所、高熱プラント、及びその他大型の工業用ボイラ設備等の各種プラントにおいて、排ガス中のダスト濃度を連続的にモニタし、ダストの法規制に適合するようにプロセス制御することを可能にするものである。本発明のダスト測定システム及びその汚れ防止機構は、季節や天候の変化に対しても十分に再現性よく使用できる。
【符号の説明】
【0052】
D…ダクト
1…投受光部1
2…反射鏡部2
3…フェールセーフシャッタ
4…パート
5…エアダクトホース
10…操作・表示部
11…フェールセーフシャッタコントローラ
12…エアパージユニット
13…電流・電圧変換器
20…光道
20a,20b,20c,20d…電源
30…煙突
31…モータ
32…モータシャフト
33…クランクアーム
40a,40b…光道パイプ
41a,41b…フランジ
45a,45b…導入口
50a,50b,60a,60b…光道パイプ接続フランジ
121…モータ
121…駆動用モータ
122…モータシャフト
123…エアパージファン
124…吸気側フィルタ
125…吸気側エアダクト
431…光源
432…光検出器
433…ビームスプリッタ
434…コリメートレンズ
441…反射鏡
450…流量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトの側壁の一部に設けられた光学測定系と、
前記ダクト中を輸送される排ガスから前記光学測定系の光学素子の汚れを防止するために、前記光学測定系にパージエアを導入するエアパージユニットと、
前記光学測定系のパージエアの導入部の位置よりも前記ダクト側に設けられたフェールセーフシャッタと、
前記エアパージユニットの電源電流を監視し、前記電源電流の異常を検知した場合、前記フェールセーフシャッタを駆動して前記光学素子を前記排ガスから遮断するフェールセーフシャッタコントローラ
とを備え、前記光学素子により前記排ガス中の粒子状物質の濃度を透過測定法により測定することを特徴とするダスト測定システム。
【請求項2】
前記フェールセーフシャッタコントローラが、前記電源電流が閾値上限を超えた場合に前記フェールセーフシャッタを駆動させることを特徴とする請求項1に記載のダスト測定システム。
【請求項3】
前記フェールセーフシャッタコントローラが、前記電源電流が閾値下限を下回ったときに場合に前記フェールセーフシャッタを駆動させることを特徴とする請求項1又は2に記載のダスト測定システム。
【請求項4】
前記光学測定系が、
前記光学素子の一部を収納した投受光部と、
前記投受光部に一方の端部が接続され他方の端部が前記ダクトの側壁の一部に挿入された投受光部側光道パイプと、
前記ダクトの側壁の他の一部に一方の端部が挿入され、前記投受光部側光道パイプと光軸を共通にする反射鏡部側光道パイプと、
前記反射鏡部側光道パイプの他方の端部に接続され、前記光学素子の他の一部を収納して前記投受光部からの光を反射し、前記光を前記投受光部に戻す反射鏡部
とを備えることを特徴とする請求項1に記載のダスト測定システム。
【請求項5】
前記エアパージユニットが、前記投受光部側光道パイプに設けられた第1のパージエア導入部及び前記第2のパージエア導入部を介して、前記投受光部側光道パイプ及び前記反射鏡部側光道パイプに、それぞれパージエアを送風することを特徴とする請求項4に記載のダスト測定システム。
【請求項6】
前記フェールセーフシャッタが、
前記投受光部側光道パイプの前記第1のパージエア導入部の位置よりも前記ダクト側に設けられた第1のフェールセーフシャッタと、
前記反射鏡部側光道パイプの前記第2のパージエア導入部の位置よりも前記ダクト側に設けられた第2のフェールセーフシャッタ
とを備えることを特徴とする請求項5に記載のダスト測定システム。
【請求項7】
前記フェールセーフシャッタコントローラが、前記電源電流の異常を検知した場合、前記第1のフェールセーフシャッタを駆動して前記投受光部を前記排ガスから遮断し、前記第2のフェールセーフシャッタをそれぞれ駆動して前記反射鏡部を前記排ガスから遮断することを特徴とする請求項6に記載のダスト測定システム。
【請求項8】
ダクトの側壁の一部に光学測定系を設け、該光学測定系が有する光学素子により前記ダクト中を輸送される排ガス中の粒子状物質の濃度を透過測定法により測定するダスト測定システムにおいて、前記光学素子が前記排ガスから汚れることを防止する汚れ防止機構であって、
前記排ガスから前記光学素子が汚れるのを防止するために、前記光学測定系にパージエアを導入するエアパージユニットと、
前記光学測定系のパージエアの導入部の位置よりも前記ダクト側に設けられたフェールセーフシャッタと、
前記エアパージユニットの電源電流を監視し、前記電源電流の異常を検知した場合、前記フェールセーフシャッタを駆動して前記光学素子を前記排ガスから遮断するフェールセーフシャッタコントローラ
とを備えることを特徴とする汚れ防止機構。
【請求項9】
前記フェールセーフシャッタコントローラが、前記電源電流が閾値上限を超えた場合に前記フェールセーフシャッタを駆動させることを特徴とする請求項8に記載の汚れ防止機構。
【請求項10】
前記フェールセーフシャッタコントローラが、前記電源電流が閾値下限を下回ったときに場合に前記フェールセーフシャッタを駆動させることを特徴とする請求項8又は9に記載の汚れ防止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−249611(P2010−249611A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98310(P2009−98310)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】