説明

ダブルトーショナルダンパ

【課題】ダブルトーショナルダンパの抑止線が重錘の落下防止機構を有し、抑止線の破断による重錘の落下の発生が無く、且つ、定期点検時に破断が発見し易いダブルトーショナルダンパを提供する。
【解決手段】抑止線10は、心線部11と心線部11の外周に撚り合わされて形成される複数の外周線12とから成り、心線部11は、パイプ13と、パイプ13内を貫通するワイヤー15と、ワイヤー15の両端に取り付けられたワイヤー止め17とを有し、重錘20は、固着部25を有し、固着部25は、外周線、パイプ圧縮穴27を有し、外周線12とパイプ13とは、外周線、パイプ圧縮穴27を貫通して圧縮固着され、ワイヤー15は、パイプ13内に挿入され、パイプ13の両端からそれぞれ所定の長さを有してワイヤー止め17により固定され、パイプ13の両端は、気密封じ18により封じられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空電線の振動防止装置に係り、より詳しくは、ダブルトーショナルダンパの抑止線が重錘の落下防止機構を有するダブルトーショナルダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
架空電線に風が吹き付けることにより、電線の風下側には交播渦流であるカルマン渦が発生し、振幅が1〜数十ミリメートルの振動が生じる。この振動は、架空電線の固定点となる懸垂支持点や耐張クランプなどの振動の反射点で電線に繰返し応力を与え、架空電線に経時的な金属疲労劣化や破断をもたらす。これを防止するため、架空電線の支持点の近傍には振動防止装置が取付けられる。
【0003】
図4は、従来の振動防止装置であるダブルトーショナルダンパの構成を示すダンパ構成図である。図4において、ダブルトーショナルダンパ110は、抑止線50、重錘20、及び電線把持用クランプ30を有する。重錘20は、抑止線50に固着される固着部28を具備し、抑止線50の両端に固着されている。電線把持用クランプ30は、架空電線40を把持するクランプ部35と、抑止線50に固着される抑止線圧縮穴37とを具備し、抑止線50の中央部において抑止線圧縮穴37が圧縮され、抑止線50と固着し、クランプ部35により架空電線40に取付け設置されている。
【0004】
図4のダブルトーショナルダンパ110において、風により生じたカルマン渦の振動が、クランプ部35を介して抑止線50及び両端の重錘20に伝わる。これにより、抑止線50には、新たな振動が発生する。この新たな振動は、カルマン渦による振動とは位相や周期が異なり、カルマン渦による振動を打ち消すように作用し、架空電線40の経時的な疲労劣化や破断を防止している。
【0005】
ところで、従来の抑止線50は、同一の心線と複数の外周線とから成り、複数の外周線が心線の周囲に撚り合わされて形成されている。ところが、カルマン渦による振動を打ち消すように作用する新たな振動が長期間に渡り繰り返し抑止線50に発生すると、抑止線50の同一の心線と複数の外周線とが互いに摩擦し合うことにより金属疲労劣化を生じて抑止線50の一部が破断し、重錘20が垂れ下がり、最悪の場合、重錘20が落下するという事故が発生していた。
【0006】
図5は、従来の抑止線破断時の重錘の状態を示す抑止線破断図である。図5において、ダブルトーショナルダンパ110の抑止線50の一部が金属疲労劣化により破断を生じ、重錘20が垂れ下がった状態を示している。ところが、破断の初期においては抑止線50の一部だけが破断するため、重錘20の垂れ下り角度θが小さく、重錘20の垂れ下りを定期点検時に発見して、直ちに交換するということが困難であった。また、定期点検時に発見し易い角度、例えば角度θが45°を越えた場合、抑止線50は重錘20の揺れにより短期間で破断するため、発見前に落下する可能性が高かった。
【0007】
特許文献1には、クランプ本体のキャップに取付けた落下防止板の左右に設けた挿通穴に所定の長さのワイヤーロープを挿通して折り返し、重錘が2次共振したときの振動の節近傍にアリ溝スリーブによりワイヤーロープの端部を重錘に一括して圧縮固定し、ワイヤーロープは抑止線が共振して過大に振れた場合でもワイヤーロープに張力が作用しないように、少なくとも抑止線の長さより10〜20%以上の長さとする、旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−230172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ダブルトーショナルダンパの抑止線が重錘の落下防止機構を有し、抑止線の破断による重錘の落下の発生が無く、且つ、定期点検時に破断が発見し易いダブルトーショナルダンパを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のダブルトーショナルダンパは、抑止線と抑止線の両端に固着された重錘と抑止線の中央部に固着された電線把持クランプからなるダブルトーショナルダンパにおいて、抑止線は、心線部と心線部の外周に撚り合わされて形成される複数の外周線とから成り、心線部は、パイプと、パイプ内を貫通するワイヤーと、ワイヤーの両端に取り付けられたワイヤー止めとを有し、重錘は、固着部を有し、固着部は、外周線、パイプ圧縮穴を有し、外周線とパイプとは、外周線、パイプ圧縮穴を貫通して圧縮固着され、ワイヤーは、パイプ内に挿入され、パイプの両端からそれぞれ所定の長さを有してワイヤー止めにより固定され、パイプの両端は、気密封じされることを特徴とする。
【0011】
本発明のダブルトーショナルダンパのワイヤーの所定の長さは、パイプが破断した際、重錘が垂直に垂れ下がるに要する長さを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ダブルトーショナルダンパの抑止線が重錘の落下を防止する機構を有するため、抑止線の破断による重錘の落下を防止すると共に、定期点検時に抑止線の異常を容易に発見でき、取替え可能となる、ダブルトーショナルダンパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のダブルトーショナルダンパの構成を示すダンパ構成図。
【図2】本発明による抑止線の構成を示す抑止線の片側断面図。
【図3】本発明による抑止線破断時の重錘の状態を示す抑止線破断図。
【図4】従来のダブルトーショナルダンパの構成を示すダンパ構成図。
【図5】従来の抑止線破断時の重錘の状態を示す抑止線破断図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0014】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明のダブルトーショナルダンパの構成を示すダンパ構成図である。図1において、抑止線10と固着部25以外は、図4の場合と同じであるため説明を省略する。
【0015】
抑止線10は、心線部11と複数の外周線12とから成り、心線部11は、パイプ13とワイヤー15とワイヤー止め17とを有している。重錘20の固着部25は、外周線、パイプ圧縮穴27を有している。外周線12とパイプ13は、外周線、パイプ圧縮穴27を貫通して圧縮固着されている。ワイヤー15は、パイプ12内に挿入され、パイプ13の両端からそれぞれ所定の長さを有してワイヤー止め17により固定されている。パイプ12の両端は気密封じ18により封じられている。
【0016】
図2は、本発明による抑止線の構成を示す抑止線の片側断面図である。図2において、抑止線10の外周線12とパイプ13は、重錘20の固着部25の外周線、パイプ圧縮穴27を貫通して圧縮固着されている。パイプ13内に挿入されたワイヤー15は、パイプ13の両端においてそれぞれ所定の長さを有してワイヤー止め17により固定されている。パイプ13の両端は、気密封じされている。また、パイプ13とワイヤー15は、ステンレスであることが望ましい。
【0017】
図3は、本発明による抑止線破断時の重錘の状態を示す抑止線破断図である。図3において、カルマン渦による振動を打ち消すように作用する新たな振動が長期間に渡り繰り返し抑止線10に発生し、抑止線10の片側の外周線12とパイプ13とが破断した状態を示している。この場合、パイプ13が破断すると、重錘20による重さによりパイプ13の両端の所定の長さのワイヤーが送り込まれて、重錘20は垂直に垂れ下がるが、落下することはない。この異常状態は、定期点検時により容易に発見できるため、直ちに新しいダンパに交換することが可能となる。
【0018】
以上説明したように本発明によれば、ダブルトーショナルダンパの抑止線が重錘の落下を防止する機構を有するため、抑止線の破断による重錘の落下を防止すると共に、定期点検時に、より容易に抑止線の異常を発見し、交換することが可能なダブルトーショナルダンパを提供することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 抑止線
12 外周線
13 パイプ
15 ワイヤー
17 ワイヤー止め
18 気密封じ
20 重錘
25 固着部
27 外周線、パイプ圧縮穴
28 固着部
30 電線把持用クランプ
35 クランプ部
37 抑止線圧縮穴
40 架空電線
50 従来の抑止線
100 本発明によるダブルトーショナルダンパ
110 従来のダブルトーショナルダンパ
θ 折曲り角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抑止線と前記抑止線の両端に固着された重錘と前記抑止線の中央部に固着された電線把持クランプからなるダブルトーショナルダンパにおいて、
前記抑止線は、心線部と前記心線部の外周に撚り合わされて形成される複数の外周線とから成り、
前記心線部は、パイプと、前記パイプ内を貫通するワイヤーと、前記ワイヤーの両端に取り付けられたワイヤー止めとを有し、
前記重錘は、固着部を有し、前記固着部は、外周線、パイプ圧縮穴を有し、
前記外周線と前記パイプとは、前記外周線、パイプ圧縮穴を貫通して圧縮固着され、
前記ワイヤーは、前記パイプ内に挿入され、前記パイプの両端からそれぞれ所定の長さを有して前記ワイヤー止めにより固定され、
前記パイプの両端は、気密封じされることを特徴とするダブルトーショナルダンパ。
【請求項2】
前記ワイヤーの前記所定の長さは、前記パイプが破断した際、前記重錘が垂直に垂れ下がるに要する長さを有することを特徴とする請求項1に記載のダブルトーショナルダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−59180(P2013−59180A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195291(P2011−195291)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000117010)旭電機株式会社 (127)
【Fターム(参考)】