説明

ダンパー装置およびダンパー装置の製造方法

【課題】カバーとケーシングの溶着と、回転軸とカバーの間のシールを確実なものとしながら、軸線方向における装置の短縮化を図ることができるダンパー装置を提案すること。
【解決手段】ダンパー装置10は、ケーシング11とケーシング11に挿入された回転軸12と、回転軸12を貫通させた状態でケーシング11の開口部11aに超音波溶着されている環状のカバー14と、カバー14の前端14aに当接しているワッシャー40と、回転軸12の装着溝45内に装着されて、カバー14と回転軸12をシールするOリング46を有する。ワッシャー40と装着溝45の間の第1幅寸法Aおよびカバー14の後端面と装着溝45の間の第2幅寸法Bは変形前のOリング46の直径D以下であり、ケーシング11とカバー14の溶着部分の溶着幅寸法Cは第1幅寸法Aよりも長い。従って、装置を短縮化しながらカバー14とケーシング11の溶着を確実なものにできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシングに挿入されている回転軸がケーシングに対して相対回転する際に、ケーシング内に封入された粘性流体によって回転軸に回転負荷が付与されるダンパー装置およびダンパー装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかるダンパー装置は特許文献1に記載されている。同文献のダンパー装置は、オイル(粘性流体)を保持している有底筒状のケーシングと、ケーシング内に挿入されている回転軸と、貫通孔に回転軸を貫通させた状態でケーシングの開口部に挿入され、この開口部の内周面に溶着されている円環状のカバーと、貫通孔内に位置している回転軸の外周面部分に装着されて、回転軸が回転可能な状態で当該回転軸とカバーの間をシールしているOリングを備えている。カバーは、ケーシング内でカバーの挿入方向の前端に当接する当接部によって軸線方向で位置決めされている。Oリングは回転軸の外周面部分に形成された円環状の装着溝内に装着され、装着溝によって軸線方向の移動が規制された状態で、軸線方向と直交する方向に潰されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−318319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カバーとケーシングを超音波溶着する場合には、カバーの挿入方向の後側の後端面にホーンを当接させて超音波を発振し、軸線方向から見たときに重なっているカバーの外周面部分とケーシングの内周面部分を溶融させながら、カバーの前端が当接部に当接するまでカバーをケーシング内に向って移動させる。ここで、ダンパー装置には軸線方向における短縮化が求められているが、短縮化を図るためにカバーを位置決めする当接部とOリングの装着溝との間の軸線方向の寸法を短くすると、当接部に向って移動するカバーが、当該カバーと当接部との間にOリングを挟み込んでしまい、Oリングを損傷する可能性がある。また、ダンパー装置の短縮化を図るために、カバーとケーシングの溶着部分の軸線方向の溶着幅寸法を著しく短縮してしまうと、カバーとケーシングの溶着が不十分になることがある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、カバーとケーシングの溶着および回転軸とカバーの間のシールを確実なものとしながら、軸線方向における装置の短縮化を図ることができるダンパー装置、および、その製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、筒状のケーシングと、前記ケーシング内に挿入されている回転軸と、内径寸法が一定の貫通孔に前記回転軸を貫通させた状態で前記ケーシングの開口部に挿入され、当該開口部の内周面に超音波溶着されている円環状のカバーと、前記貫通孔内に位置している前記回転軸の円形の外周面部分に装着されて、前記カバーと前記回転軸との間を当該回転軸が回転可能な状態でシールしているOリングとを有し、前記ケーシング内に封入された粘性流体によって前記回転軸に回転負荷が付与されるダンパー装置において、
前記カバーの挿入方向の前端に当接して当該カバーを軸線方向で位置決めする当接部を有し、
前記回転軸の前記外周面部分には、前記Oリングが装着される円環状の装着溝が形成されており、
前記当接部と前記装着溝との間の前記軸線方向の第1幅寸法は、変形前の前記Oリングの直径以下、かつ、当該直径の1/2以上であり、
前記装着溝と前記カバーの挿入方向の後側の後端面との間の前記軸線方向の第2幅寸法は、変形前の前記Oリングの前記直径以下、かつ、当該直径の1/2以上であり、
前記カバーの外周面における前記ケーシングの前記開口部の内周面と溶着されている溶着部分の前記軸線方向の溶着幅寸法は、前記第1幅寸法よりも長いことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、装着溝の前方に位置する当接部と当該装着溝の間の軸線方向の第1幅寸法、および、装着溝の後方に位置するカバーの後端面と当該装着溝の間の軸線方向の第2幅寸法のそれぞれを、変形前のOリングの直径以下としてある。この結果、当接部とカバーの後端面の間の軸線方向の寸法、すなわち、カバーの軸線方向の寸法が抑制されるので、ダンパー装置の短縮化が図られる。また、当接部と装着溝との間の軸線方向の第1幅寸法を、変形前のOリングの直径の1/2以上としてあるので、超音波溶着に際して当接部に向って移動するカバーが、当該カバーと当接部との間にOリングを挟み込んで損傷させてしまうことを防止できる。さらに、装着溝とカバーの後端面の間の軸線方向の第2幅寸法を、変形前のOリングの直径の1/2以上としてあるので、ケーシング内の粘性流体に圧力が加わることによってケーシング内が高圧となって装着溝に装着されているOリングを外側に押し出す力が働いた場合に、Oリングがカバーと回転部材との間から外側(軸線方向の他方の側)にはみ出すことを防止できる。従って、回転軸とカバーの間のシールを確実なものとすることができる。また、ケーシングとカバーとが溶着されている溶着部分の溶着幅寸法が第1幅寸法よりも長いので、カバーとケーシングの溶着を確実なものとすることができる。
【0008】
ここで、カバーの挿入方向の後側の後端面にホーンを当接させて超音波を発振し、軸線方向から見たときに重なっているカバーの外周面部分とケーシングの開口部の内周面を溶融させながら、カバーの前端が当接部に当接するまでカバーをケーシング内に向って移動させる超音波溶着では、カバーに付与される超音波に起因して、カバーに接触するOリングに溶融や損傷が発生しやすいという問題がある。これに対して、本発明者は、実験、検討を重ねた結果、カバーをケーシングの開口部の内周面に固定する超音波溶着に際して、カバーの挿入方向の前端をOリングの円弧外周面部分の頂上を越える溶着開始位置までケーシング内に挿入した後に、カバーの後端面にホーンを当接させて超音波を発振し、カバーの前端が当接部に当接するまでカバーをケーシング内に向って移動させれば、カバーとケーシングを超音波溶着する際にカバーに接触するOリングに発生する溶融や損傷を低減あるいは回避できるという新たな知見を得ている。このような知見に基づいて、カバーの前端を挿入する溶着開始位置をOリングの円弧外周面部分の頂上を越え、かつ、装着溝を越えない位置に規定した状態から超音波溶着を行えば、Oリングに発生する溶融や損傷を低減あるいは回避したうえで、超音波溶着に際してカバーの挿入距離が第1幅寸法よりも長くなるので、ケーシングとカバーの溶着部分の溶着幅寸法が第1幅寸法よりも長い構成が得られ、カバーとケーシングの溶着を確実なものとすることができる。また、このような新たな知見に基づく超音波溶着を行う際に、当接部と装着溝との間の軸線方向の第1幅寸法を、変形前のOリングの直径以下に規定しておけば、軸線方向におけるカバーの挿入距離が規定されるので、ケーシングとカバーの溶着部分の溶着幅寸法が必要以上に長くなることがなく、ダンパー装置の短縮化が図られる。
【0009】
本発明において、前記溶着幅寸法は、前記第1幅寸法と変形前の前記Oリングの前記直径の1/2との合計幅寸法以下であることが望ましい。このように溶着幅寸法が規定されれば、装置の軸線方向の短縮化を図ることが更に容易となる。また、発明者の新たな知見に基づいて、カバーの前端を挿入する溶着開始位置をリングの円弧外周面部分の頂上を越え、かつ、装着溝を越えない位置とした超音波溶着を行えば、溶着幅寸法は、第1幅寸法と、変形前のOリングの直径の1/2との合計幅寸法以下となる。
【0010】
本発明において、前記カバーは、外径寸法が前記ケーシングの内径寸法よりも小さい小径部と、外径寸法が前記ケーシングの内径寸法よりも大きい大径部とを前記前端の側から軸線方向に沿ってこの順番で備えており、前記大径部の外周面部分が、前記ケーシングの前記開口部の内周面との前記溶着部分となっていることが望ましい。このようにすれば、超音波溶着に際してケーシングの開口部の内周面およびカバーの大径部の外周面部分が溶融したときに、溶融した部分が小径部とケーシングの内周面との間に流れ込んで保持される。従って、溶融した部分が回転軸の側に垂れて付着し、回転軸の回転を阻害してしまうことを防止できる。
【0011】
本発明において、中心孔に前記回転軸を貫通させているワッシャーを有し、前記回転軸は、当該回転軸の前記ケーシング内に挿入されている前記前端と前記装着溝との間に前記ケーシングの円筒内周面と対峙する円環状外周面を備える円環状突部を備え、当該円環状突部が前記ケーシングの内側空間のうち当該円環状突部よりも前側の空間を前記粘性流体の封入部として区画しており、前記ワッシャーは、前記円環状突部の後側円環状端面に当接しており、前記ワッシャーの後端面が前記当接部となっていることが望ましい。このようにすれば、円環状突部の後側円環状端面を被うワッシャーがカバーの挿入方向の前方に位置するので、超音波溶着の際の振動エネルギーを、ワッシャーによって遮断して、回転軸の円環状突部へ伝達されることが阻止することができる。この結果、超音波溶着によって、回転軸の円環状突の外周面とケーシングが固定されてしまい、回転軸の回転が阻害されることを防止できる。また、カバーと回転軸の円環状突部の後側円環状端面が一体に固定されてしまい、回転軸の回転が阻害されることを防止できる。
【0012】
次に、本発明は、上記のダンパー装置の製造方法であって、
前記Oリングを前記装着溝に装着するOリング装着工程と、
前記回転軸を前記ケーシングに挿入する回転軸挿入工程と、
前記カバーの前記貫通孔に前記回転軸を貫通させ、しかる後に、前記カバーの前記前端を、前記Oリングの円弧外周面部分の頂上を越え、かつ、前記装着溝を越えない前記ケーシング内の溶着開始位置まで挿入するカバー挿入工程と、
前記カバーの前記後端面にホーンを当接させて、前記前端が前記当接部に当接するまで前記カバーを前方に移動させながら当該カバーの外周面部分と前記ケーシングの前記開口部の内周面とを超音波溶着する超音波溶着工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明者は、カバーの外周面部分をケーシングの開口端部の内周面に固定する超音波溶着の開始時点において、回転部材に装着されているOリングに対するカバーの先端位置を規定することによって、カバーに接触するOリングに発生する溶融や損傷を低減あるいは回避できることを見出した。本発明は、このような新たな知見に基づくものであり、超音波溶着の開始時点においてカバーの前端をOリングの円弧外周面部分の頂上を越える位置までケーシング内に挿入した時点から超音波溶着を開始することによって、カバーに接触するOリングに発生する溶融や損傷を低減あるいは回避している。また、本発明では、超音波溶着開始時点の開始カバーの前端の溶着開始位置を装着溝を越えない位置としているので、当接部と装着溝との間の軸線方向の第1幅寸法を変形前のOリングの直径以下としてダンパー装置の短縮化を図った場合でも、超音波溶着時におけるカバーの挿入距離を第1幅寸法よりも長くすることができる。すなわち、溶着部分の溶着幅寸法を第1幅寸法より長くして、カバーとケーシングとの溶着を確実なものとすることができる。さらに、本発明では、当接部と装着溝との間の軸線方向の第1幅寸法を、変形前のOリングの直径以下に規定することにより、超音波溶着時におけるカバーの挿入距離が規定されているので、ケーシングとカバーの溶着部分の溶着幅寸法が必要以上に長くなることがなく、ダンパー装置の短縮化を図ることができる。
【0014】
本発明において、前記溶着開始位置は、前記ケーシングの前記開口端の側から前記装着溝の幅の2/3の位置であることが望ましい。本発明者は、このような位置までカバーを挿入すれば、カバーの前端をOリングの円弧外周面部分の頂上を越える位置に配置することが可能となることを見出している。
【0015】
本発明において、前記カバー挿入工程では、前記小径部と前記大径部との間の段部を前記ケーシングの前記開口端に当接させたときに、前記カバーの前記前端が前記溶着開始位置に達することが望ましい。このようにすれば、超音波溶着の開始時において、カバーの前端を溶着開始位置に配置することが容易となる。
【0016】
本発明において、前記Oリング装着工程と前記回転軸挿入工程との間に、前記Oリングの前記円弧外周面部分に潤滑材を塗布する潤滑材塗布工程を含んでいることが望ましい。このようにすれば、カバーをケーシング内に挿入する際に、カバーの前端がOリングの円弧外周面の頂点を乗り越えることが容易となるので、カバーの挿入時にカバーによってOリングを傷つけてしまうことを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のダンパー装置によれば、軸線方向における当接部と装着溝との間の第1幅寸法、および、装着溝とカバーの後端面の間の第2幅寸法を、変形前のOリングの直径よりも短く規定してあるので、ダンパー装置を軸線方向で短縮化することが容易である。また、第1幅寸法および第2幅寸法を変形前のOリングの直径の1/2以上としてあるので、Oリングの損傷やはみ出しを防止して回転軸とカバーの間のシールを確実なものとすることができる。さらに、ケーシングとカバーとが溶着されている溶着部分の溶着幅寸法を第1幅寸法よりも長くしているので、カバーとケーシングとの溶着を確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明のダンパー装置を搭載する洋式便器の説明図であり、(b)はダンパー装置の概観斜視図である。
【図2】本発明のダンパー装置の分解斜視図および断面図である。
【図3】ダンパー装置のオイル室の軸線と直交する方向の断面図である。
【図4】起立していた便座を倒す動作を行っているときのダンパー装置の動作を示す説明図である。
【図5】平伏している便座を起こす動作を行っているときのダンパー装置の動作を示す説明図である。
【図6】ダンパー装置の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(全体構成)
図1(a)は本発明を適用したダンパー装置を搭載する洋式便器の説明図であり、図1(b)は本発明を適用したダンパー装置の概観斜視図である。図1(a)に示す洋式便器1は、便器本体2、便蓋3、便座ユニット4から構成され、便座ユニット4は、便座5、本体カバー6を備えている。本体カバー6の内部には、ダンパー装置10が内蔵されている。
【0021】
図1(b)に示すように、ダンパー装置10は、有底筒状のケーシング11と、軸線L回りに回転可能な状態で軸線L方向の一部分がケーシング11内に挿入されている回転軸12と、内径寸法が一定の貫通孔13を備え、貫通孔13に回転軸12を貫通させた状態でケーシング11の開口部11aに固定されている環状のカバー14を備えている。回転軸12は便座5に連結されており、ダンパー装置10は、便座5が開閉される際に所定の回転負荷を発生させる。ケーシング11、回転軸12およびカバー14は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などの樹脂から形成されている。なお、以下の説明では、便宜上、軸線L方向の図面左側を前側、図面右側を後側として説明する。
【0022】
(ダンパー装置)
図2(a)はダンパー装置10の分解斜視図であり、図2(b)はダンパー装置10の軸線L方向に沿った断面図である。ケーシング11の円形底面20の中央には、図2(b)に示すように、軸線L方向に窪む円形凹部21が形成されている。また、円形底面20には、円形凹部21を挟んだ両側にオリフィス22が形成されている。円形凹部21と各オリフィス22の間は突出部分23となっている。ケーシング11の円筒内周面24からは、図2(a)に示すように、半径方向内側に一対の隔壁25が突出している。各隔壁25は180°離れた角度位置に形成されており、それらの先端面はケーシング11内に挿入された回転軸12の外周面部分と僅かな隙間を開けて対峙している(図3参照)。
【0023】
回転軸12は、ケーシング11内に挿入されている前端の側から、円形凹部21内に回転可能な状態で挿入されている第1軸部分30と、第1軸部分30よりも大径であり、その外周面にケーシング11の各隔壁25の先端面が対峙している第2軸部分31と、第2軸部分31よりも大径であり、後側部分がケーシング11の外側に露出している第3軸部分32を備えている。第2軸部分31と第3軸部分32との間には、ケーシング11の円筒内周面24と狭い隙間を開けて対峙する円環状外周面33aを備える円環状突部33が設けられている。円環状突部33はケーシング11内に位置しており、円環状突部33によってケーシング11内は前側空間と後側空間に区画されている。前側空間はオイル34が封入されたオイル室(封入部)35となっており、オイル室35内にはダンパー機構36が構成されている。ダンパー機構36の詳細は後述する。
【0024】
第2軸部分31の外周面には、半径方向外側に突出して軸線L方向に沿って伸びている一対の翼部37が形成されている。各翼部37は180°離れた角度位置に形成されている。各翼部37の軸線L方向の中央部分には、半径方向内側に窪む矩形のオリフィス38が形成されている。各翼部37には、オリフィス38を開閉する逆止弁39が装着されている。
【0025】
ここで、円環状突部33の後方に隣接する位置には、カバー14とは音響インピーダンスが異なる材質であるステンレス鋼、真鍮、アルミ等の各種金属から形成されたワッシャー(当接部)40が配置されている。ワッシャー40は、中心孔40aに回転軸12を貫通させた状態で円環状突部33の後側円環状端面33bを後方から被っており、ワッシャー40の円形外周面40bは、円環状突部33の円環状外周面33aよりも狭い間隔でケーシング11の円筒内周面24と対峙している。なお、ワッシャー40は金属製に限定されるものではなく、カバー14とは音響インピーダンスが異なる材質の各種の樹脂製、またはセラミック製でもよい。
【0026】
第3軸部分32において、カバー14の貫通孔13内に位置している円形の外周面部分32aには、円環状の装着溝45が形成されている。装着溝45はワッシャー40から第1幅寸法Aだけ離れた位置に形成されており、装着溝45にはOリング46が装着されている。第1幅寸法Aは、変形前のOリング46の直径D以下であり、かつ、直径Dの1/2以上である。装着溝45の軸線L方向の幅寸法は、変形前のOリング46の直径Dの1.3倍である。軸線Lと直交する方向から見たときに、装着溝45の後端はケーシング11の開口端11cから僅かに外側に露出しており、装着溝45は、その殆どの部分がケーシング11内に位置している。第3軸部分32においてケーシング11から露出している後端部分は、軸線L方向と直交する断面形状が小判形となるよう外周面部分がカットされたカット部47を備えている。
【0027】
Oリング46は、カバー14の内周面14bと回転軸12の外周面部分32a(装着溝45の円環状の底面)の間に挿入されており、回転軸12が回転可能な状態で、回転軸12とカバー14の間をシールしている。Oリング46はNBR(ニトリルゴム)などのゴムから形成されており、カバー14の内周面14bの内径寸法よりも小さな外径寸法を備えている。Oリング46が装着溝45に装着された状態では、Oリング46は第3軸部分32に締まり付いた状態となるとともに、装着溝45によって回転軸12上における軸線L方向の移動が規制された状態となる。
【0028】
カバー14は、ケーシング11内に挿入される挿入方向の前端14aの側から軸線L方向に沿って、外径寸法がケーシング11の開口部11aの内径寸法よりも小さい小径部50と、外径寸法がケーシング11の開口部11aの内径寸法よりも大きい大径部51と、外径寸法が大径部51よりも大きいホーン当接部52を備えている。ホーン当接部52の後端面は、カバー14をケーシング11に固定する際に、超音波溶着を行うためのホーンを当接させるホーン当接面52aとなっている。
【0029】
ここで、カバー14は、大径部51の外周面部分51aとケーシング11の開口部11aの内周面11bが超音波溶着されることにより、ケーシング11に固定されている。カバー14がケーシング11に固定された状態では、カバー14の前端14aはワッシャー40に当接した状態となっている。また、カバー14の大径部51は後端がケーシング11の外側に露出しており、ケーシング11の開口端11cとホーン当接部52との間には隙間G1が形成されている(図1参照)。装着溝45とカバー14の後端面との間は軸線L方向で第2幅寸法Bだけ離れている。第2幅寸法Bは、変形前のOリング46の直径D以下であり、かつ、直径Dの1/2以上である。
【0030】
カバー14がケーシング11に固定された状態では、回転軸12の装着溝45内に装着されているOリング46は、軸線Lと直交する方向で10%〜30%押し潰されている。回転軸12の装着溝45、Oリング46、および、カバー14とケーシング11の溶着部分55は、軸線L方向と直交する方向から見たときに重なり合う部分を備えている。カバー14とケーシング11の溶着部分55の軸線L方向における溶着幅寸法Cは、ワッシャー40から装着溝45までの第1幅寸法Aよりも長い。
【0031】
なお、従来、カバー14には、カバー14とケーシング11を超音波溶着する際にカバー14に付与される超音波によってカバー14の内周面14bに接触するOリング46が溶融したり損傷したりすることを防止するために、ホーン当接面52aから軸線L方向に沿って大径部51と同軸の円環状の凹部を形成して、カバー14の大径部51の外周面部分51aとカバー14の内周面14bの間に空間を形成していたが、本例では、後述するダンパー装置10の製造方法によって超音波溶着の際に発生するOリング46の溶融や損傷を低減或いは回避できるので、このような空間を形成していない。この結果、カバー14の半径方向の厚さ寸法を抑制することができるので、回転軸12の外径寸法を大きくすることができ、装着溝45の外径(装着溝45の円環状の底面の外径)を大きくすることができる。従って、回転軸12の強度を低下させることがない。また、装着溝45に径の大きなOリング46を装着することができるので、シール性能が高くなり、回転軸12とカバー14の間のシールを1つのOリング46によって行うことが可能となっている。
【0032】
また、本例では、後述するダンパー装置10の製造方法によって超音波溶着の際に発生するOリング46の溶融や損傷を低減或いは回避できるので、超音波溶着の際にケーシング11内に挿入されるカバー14が、回転軸12に装着されたOリング46をスムーズに押し潰すためのテーパー面を内周面14bの前端14aに備える必要がない。この結果、カバーの前端14aの端面の面積を大きくすることができるので、金型を用いてカバー14を樹脂成形する際に、イジェクトピンをカバーの前端14aの端面に当接させて、カバー14の軸線方向に沿ってカバー14を金型からを取り出すことが容易となる。
【0033】
(ダンパー機構)
ここで、図2、図3を参照してダンパー機構を説明する。図3はオイル室35の軸線Lと直交する方向の断面図である。オイル室35は、ケーシング11の円筒内周面24から回転軸12の第2軸部分31に向って延びている一対の隔壁25と、回転軸12の第2軸部分31からケーシング11の円筒内周面24に向って延びている一対の翼部37によって複数のオイル室に区画されている。すなわち、隔壁25によってオイル室35は2つの空間に区画されており、各空間のそれぞれは、翼部37によって、翼部37に対して時計回りCW方向の側に位置する第1オイル室61と、翼部37に対して反時計回りCCW方向の側に位置する第2オイル室62に区画されている。
【0034】
翼部37は、その軸線L方向の両端に矩形の切り欠き部を備えており、オリフィス38と各切り欠き部の間は、逆止弁39を固定するための第1、第2係合突部37a、37bとなっている。
【0035】
逆止弁39はPOM(ポリアセタール)などの樹脂からなる成形品である。図2、図3に示すように、逆止弁39は、翼部37の周方向に位置する2つの端面のうち、時計回りCW方向側の端面の側でオリフィス38を被う平板状の弁板部63と、弁板部63の軸線L方向の一方端から第1係合突部37aの外側を回って翼部37の反時計回りCCW方向側の端面まで屈曲して第1係合突部37aに係合する第1屈曲部64と、弁板部63の他方端から第2係合突部37bの外側を回って翼部37の反時計回りCCW方向側の端面まで屈曲して第2係合突部37bに係合する第2屈曲部65を備えている。第1、第2屈曲部64、65のそれぞれは、翼部37の反時計回りCCW方向側の端面で弁板部63と平行に延びる係合部67と、係号部と弁板部63とを連結している連結部68を備えており、連結部68は翼部37の周方向の厚さ寸法よりも長い寸法を備えている。
【0036】
逆止弁39は、図2(b)に示すように、第1屈曲部64の連結部68が第1係合突部37aとケーシング11の円形底面20との間の矩形空間に挿入され、第2屈曲部65の連結部68が第2係合突部37bと回転軸12の円環状突部33の間の矩形空間の間に挿入されることにより、周方向の所定の範囲内を移動可能な状態で翼部37に取り付けられる。逆止弁39が翼部37に取り付けられた状態では、弁板部63の外周側の端は翼部37の外周側の端よりも僅かに外周側に突出している。
【0037】
ここで、ケーシング11の円筒内周面24において隔壁25で挟まれた2つの円弧内周面部分のそれぞれは、周方向に沿って時計回りCW方向に、回転軸12の翼部37に取り付けられた逆止弁39の外周側の端との間に僅かな隙間が形成される内径寸法を備える大径内周面部分70と、大径内周面部分70よりも内径寸法が小さく、回転軸12の翼部37に取り付けられた逆止弁39が摺接可能な小径内周面部分71を備えている。小径内周面部分71と大径内周面部分70とは滑らかに連続している。一方の円弧内周面部分の小径内周面部分71と他方の円弧内周面部分の小径内周面部分71とは点対称の位置にあり、一方の円弧内周面部分の大径内周面部分70と他方の円弧内周面部分の大径内周面部分70とは点対称の位置にある。
【0038】
また、回転軸12の第2軸部分31の外周面において各翼部37で囲まれた2つの外周面部分は、周方向に沿って時計回りCW方向に、第1小径外周面部分72と、第1小径外周面部分72よりも外径寸法が大きい大径外周面部分73と、第1小径外周面部分72と同一の外径寸法を備える第2小径外周面部分74を備えている。第1小径外周面部分72および第2小径外周面部分74の外径寸法は、ケーシング11の各隔壁25の先端面の内径寸法よりも小さな寸法である。大径外周面部分73の外径寸法は、ケーシング11の各隔壁25の先端面が摺接可能な外径寸法である。
【0039】
(ダンパー装置の動作)
次に、回転軸12に便座5を連結した場合のダンパー装置10の動作を説明する。図4は起立していた便座を倒す動作を行っているときのダンパー装置の動作を示す説明図である。図5は平伏している便座を起こす動作を行っているときのダンパー装置の動作を示す説明図である。図4(a)、図4(b)、図5(a)および図5(b)はオイル室35の軸線と直交する方向の断面図であり、図4(c)および図5(c)はオイル室35の軸線方向の断面図である。
【0040】
図4(a)はダンパー装置10に連結された便座5が開かれた状態(=立ち上がった状態)を示している。この状態では、翼部37および逆止弁39は大径内周面部分70の内側に位置している。また、翼部37は、ケーシング11の円形底面20に形成されているオリフィス22と重なる位置にある。すなわち、オリフィス22は第1オイル室61と第2オイル室62の両方に開口している。従って、オイル34は、翼部37および逆止弁39とケーシング11の円筒内周面24の大径内周面部分70の間の隙間、および、オリフィス22を介して第1オイル室61と第2オイル室62の間で移動可能となっている。従って、起立していた便座5を倒そうとする動作を行うと、便座5は軽く動作される。
【0041】
ここで、便座5が下方に回動すると、ケーシング11が固定されたまま、回転軸12が時計回りCW方向に回転する。これにより、図4(b)に示すように、翼部37および逆止弁39は小径内周面部分71の内側に移動し、時計回りCW方向に回転しながら第1オイル室61を狭め、隔壁25の先端が回転軸12の大径外周面部分73と対峙した状態となる。また、第1オイル室61が狭められる結果、第1オイル室61のオイル34が加圧されて第2オイル室62に移動しようとするが、その圧力で逆止弁39が反時計回りCCW方向に変位する。従って、図4(c)に示すように、逆止弁39は翼部37の時計回りCW方向の側に位置する端面に弁板部63を押し付け、翼部37のオリフィス38を塞いだ状態となる。また、オリフィス22は第2オイル室62のみに開口している。この結果、オイル34は、翼部37および逆止弁39と小径内周面部分71の間のごく僅かな隙間を介して、第2オイル室62に移動する。従って、ダンパー装置10は、このときのオイル34の流動抵抗によって高負荷状態となる。よって、便座5は緩やかに閉じられ、便座5が便器本体2に勢いよく衝突することを回避できる。
【0042】
次に、平伏していた便座5を起こそうとする動作を行うと、回転軸12が反時計回りCCW方向に回転する。これにより、翼部37および逆止弁39は反時計回りCCW方向に回転しながら第2オイル室62を狭める。また、第2オイル室62が狭められる結果、第2オイル室62のオイル34が加圧されて第1オイル室61に移動しようとするので、その圧力で逆止弁39が時計回りCW方向に変位する。従って、図5(a)、図5(c)に示すように、逆止弁39は翼部37の時計回りCW方向の側に位置する端面から弁板部63を離間させ、翼部37のオリフィス38が開放される。この結果、オイル34は翼部37のオリフィス38を介して第2オイル室62から第1オイル室61へ移動可能となる。
【0043】
また、図5(b)に示すように、翼部37および逆止弁39が大径内周面部分70の内側に移動して、オイル34が翼部37および逆止弁39とケーシング11の円筒内周面24の大径内周面部分70の間の隙間を介して第1オイル室61へ移動可能となる。この結果、第2オイル室62に存在していたオイルはそれほど加圧されないので、オイル34の流動抵抗が低い。従って、便座5を軽い力で開けることができる。
【0044】
(ダンパー装置の製造方法)
図6はダンパー装置10の製造方法の説明図である。ダンパー装置10を製造する際には、まず、図6(a)に示すように、ワッシャー40の中心孔40aに回転軸12を後端側から貫通させ、ワッシャー40を円環状突部33の後方に隣接配置して、ワッシャー40で円環状突部33の後側円環状端面33bを被った状態とする。次に、Oリング46を装着溝45に装着して、回転軸12に締め付けた状態とする(Oリング装着工程)。回転軸12の翼部37に逆止弁39を装着する。しかる後に、Oリング46の外周側の円弧外周面部分に潤滑材を塗布する(潤滑材塗布工程)。また、ケーシング11のオイル室35に所定量のオイル34を保持させた状態とする。
【0045】
次に、図6(b)に示すように、回転軸12をケーシング11に挿入して、第1軸部分30をケーシング11の円形底面20の円形凹部21に挿入し、第1軸部分30と第2軸部分31の間の円環状端面を円形底面20の突出部分23に当接させる(回転軸挿入工程)。これにより、軸線L方向における回転軸12の位置が位置決めされる。
【0046】
ここで、回転軸12が位置決めされると、オイル34が円環状突部33よりも前側に区画されたオイル室35に封入された状態となる。回転軸12が位置決めされた状態では、回転軸12の円環状突部33はケーシング11内に位置しており、装着溝45は、その大部分、軸線方向の9割以上がケーシング11内に挿入された状態となる。このとき、回転軸12の第2軸部分によって押し出された空気は、内周面11bと円環状突部33の隙間から排出される。
【0047】
次に、図6(c)に示すように、カバー14の貫通孔13に回転軸12を後端側から貫通させ、しかる後に、図6(d)に示すように、カバー14の小径部50とケーシング11内に挿入して、小径部50と大径部51との間の段部がケーシング11の開口端11cに当接するまでカバー14を前方に移動させる(カバー挿入工程)。
【0048】
これにより、カバー14の前端14aは、Oリング46の円弧外周面部分の頂上46aを越え、かつ、装着溝45を越えないケーシング11内の溶着開始位置14Aまで挿入される。本例では、カバー14の前端14aはケーシング11の開口端11cの側から装着溝45の幅の2/3の位置に到達する。カバー14の前端14aが溶着開始位置14Aに到達した状態では、Oリング46はカバー14の内周側に位置する部分が押し潰された状態となる。
【0049】
その後、カバー14のホーン当接面52aにホーンを当接させて軸線L方向に振動する超音波を発振し、カバー14を軸線L方向の前方に押し込みながらカバー14の外周面部分51aとケーシング11の開口部11aの内周面11bとを超音波溶着する(超音波溶着工程)。すなわち、軸線L方向から見たときに重なっているカバー14の外周面部分51aとケーシング11の開口部11aの内周面11bを溶融させながら、カバー14を軸線L方向の前方に移動させる。
【0050】
なお、本例では、カバー14は、内周面14bの前端14aにOリング46をスムーズに押し潰すためのテーパー面を備えていないが、このようなテーパー面を備えてなくても、超音波溶着の開始時点においてカバー14の前端14aがOリング46の円弧外周面部分の頂上46aを越えているので、カバー14の前端14aの端面と内周面14bにより形成されているエッジがOリング46を強く押し付けている状態で、超音波溶着が行なわれることを避けることができる。
【0051】
超音波溶着工程において、カバー14は、その前端14aがワッシャー40に当たるまで前方に移動させられる。そして、カバー14がワッシャー40に当接した時点で、超音波溶着は終了する。これにより、カバー14の第2軸部分31の外周面部分51aとケーシング11の開口部11aの内周面11bが溶着される。超音波溶着による溶着部分55の溶着幅寸法Cはワッシャー40と装着溝45との間の第1幅寸法Aよりも長く、第1幅寸法AにOリング46の直径Dの1/2を加えた合計幅寸法よりも短い。
【0052】
ここで、超音波溶着工程においてケーシング11の開口部11aの内周面11bおよびカバー14の大径部51の外周面部分51aが溶融したときに、溶融した部分が小径部50の外周側とケーシング11の内周面の間に流れ込む。従って、溶融した部分が回転軸12の側に垂れて付着した状態となり、回転軸12の回転を阻害することを防止できる。また、カバー14の前端14aがワッシャー40に当接して軸線L方向で位置決めされた状態では、ケーシング11の開口端11cとホーン当接部52との間には僅かな隙間G1が形成されているので、溶融した部分が軸線L方向の後方に流れた場合には、この隙間G1から外側に溢れ出る。従って、カバー14を、ワッシャー40に当接させるまで確実にケーシング11内に挿入することができる。
【0053】
(作用効果)
本例では、装着溝45の前方に位置するワッシャー40と当該装着溝45の間の軸線L方向の第1幅寸法A、および、装着溝45の後方に位置するカバー14の後端面(ホーン当接面52a)と当該装着溝45の間の軸線L方向の第2幅寸法Bを、変形前のOリング46の直径D以下としてある。この結果、ワッシャー40とカバー14の後端面の間の軸線L方向の寸法、すなわち、カバー14の軸線L方向の寸法が抑制されるので、ダンパー装置10の短縮化が図られる。
【0054】
また、ワッシャー40と装着溝45との間の軸線L方向の第1幅寸法Aを、変形前のOリング46の直径Dの1/2以上としてあるので、溶着に際して当接部に向って移動するカバー14が、当該カバー14とワッシャー40との間にOリング46を挟み込んで損傷させてしまうことを防止できる。さらに、装着溝45とカバー14の後端面の間の軸線L方向の第2幅寸法Bを、変形前のOリング46の直径Dの1/2以上としてあるので、ケーシング11内の粘性流体に圧力が加わることによってケーシング11内が高圧となって装着溝45に装着されているOリング46を外側に押し出す力が働いた場合に、Oリング46がカバー14と回転軸12との間から後側にはみ出すことを防止できる。従って、回転軸12とカバー14の間のシールを確実なものとすることができる。
【0055】
さらに、ケーシング11とカバー14とが溶着されている溶着部分55の溶着幅寸法Cが第1幅寸法Aよりも長いので、カバー14とケーシング11との溶着を確実なものとすることができる。また、溶着部分55の溶着幅寸法Cは、第1幅寸法Aよりも長く、第1幅寸法AにOリング46の直径Dの1/2を加えた寸法よりも短いので、ダンパー装置10が軸線L方向において短縮されている。
【0056】
また、本例によれば、装着溝45は、その大部分がケーシング11内に位置しており、Oリング46によるシール位置と、カバー14とケーシング11の溶着位置が軸線Lと直交する方向から見たときに重なり合う部分を備えている。従って、ダンパー装置10が軸線L方向において短縮されている。
【0057】
さらに、本例によれば、カバー14の外周面に形成されている小径部50と大径部51の間の段部をカバー14の開口端11cに当接させることにより、カバー14の前端14aをケーシング11内の溶着開始位置14Aに配置することができる。従って、超音波溶着の開始時点におけるカバー14の前端14aの位置を正確に規定できる。
【0058】
ここで、カバー14のホーン当接面52aにホーンを当接させて軸線L方向に振動する超音波を発振し、カバー14を軸線L方向の前方に押し込みながらカバー14の外周面部分51aとケーシング11の開口部11aの内周面11bとを超音波溶着する際には、カバー14に付与される超音波に起因して、カバー14に接触するOリング46に溶融や損傷が発生しやすいという問題がある。この問題に対して、本発明者は、超音波溶着の開始時点における回転軸12に装着されているOリング46に対するカバー14の前端14aの位置を規定することによって、Oリングに発生する溶融や損傷を低減あるいは回避できることを見出した。本例では、このような新たな知見に基づいて、超音波溶着の開始時点において、カバー14の前端14aをOリング46の円弧外周面部分の頂上46aを越えるケーシング11内の位置まで挿入した時点から超音波溶着を開始しているので、超音波溶着に際して、Oリング46の溶融や損傷を低減あるいは回避できる。
【0059】
また、このような新たな知見に基づいて、カバー14の前端14aを挿入する溶着開始位置14AをOリング46の円弧外周面部分の頂上46aを越え、かつ、装着溝45を越えない位置に規定した超音波溶着を行えば、超音波溶着に際してカバー14の移動距離が第1幅寸法Aよりも長くなり、ケーシング11とカバー14の溶着部分55の溶着幅寸法Cが第1幅寸法Aよりも長い構成が得られるので、カバー14とケーシング11との溶着を確実なものとすることができる。このような新たな知見に基づく超音波溶着を行う際に、ワッシャー40と装着溝45の間の第1幅寸法Aを、変形前のOリングの直径D以下に規定してあるので、軸線方向におけるカバーの挿入距離が規定される。この結果、ケーシング11とカバー14の溶着部分55の溶着幅寸法Cが必要以上に長くなることがなく、ダンパー装置10の短縮化が図られる。
【0060】
さらに、本例では、カバー14とは音響インピーダンスの異なるワッシャー40がカバー14の挿入方向の前方に位置しているので、超音波溶着の際の振動エネルギーが、ワッシャー40によって遮断される。この結果、超音波溶着の際にカバー14に付与される超音波が、カバー14からワッシャー40を介して回転軸12に伝達されることを低減できる。従って、超音波溶着によって回転軸12の円環状突部33とケーシング11が固定されてしまい、回転軸12の回転が阻害されることを防止できる。また、超音波溶着によって、カバー14と回転軸12の円環状突部33が一体に固定されてしまい、回転軸12の回転が阻害されることを防止できる。
【0061】
また、本例では、Oリング46の円弧外周面部分に潤滑材を塗布してからカバー14をケーシング11内に挿入しているので、カバー14をケーシング11内に挿入する際に、カバー14の前端14aがOリング46の円弧外周面の頂点を乗り越えることが容易となり、カバー14の挿入時にカバー14によってOリング46を傷つけてしまうことを防止できる。
【符号の説明】
【0062】
10・・・・ダンパー装置
11・・・・ケーシング
11a・・・ケーシングの開口部
11c・・・ケーシングの開口端
11b・・・開口部の内周面
12・・・・回転軸
13・・・・貫通孔
14・・・・カバー
14a・・・カバーの前端
14A・・・溶着開始位置
24・・・・ケーシングの円筒内周面
32a・・・回転軸の外周面部分
33・・・・円環状突部
33a・・・円環状外周面
33b・・・後側円環状端面
34・・・・オイル(粘性流体)
35・・・・オイル室(封入部)
40・・・・ワッシャー(当接部)
45・・・・装着溝
46・・・・Oリング
46a・・・Oリングの円弧外周面部分の頂上
50・・・・カバーの小径部
51・・・・カバーの大径部
51a・・・カバーの外周面部分
52a・・・ホーン当接面(カバーの後端面)
55・・・・溶着部分
A・・・・・第1幅寸法
B・・・・・第2幅寸法
C・・・・・溶着幅寸法
D・・・・・変形前のOリングの直径
L・・・・・軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシングと、前記ケーシング内に挿入されている回転軸と、内径寸法が一定の貫通孔に前記回転軸を貫通させた状態で前記ケーシングの開口部に挿入され、当該開口部の内周面に超音波溶着されている円環状のカバーと、前記貫通孔内に位置している前記回転軸の円形の外周面部分に装着されて、前記カバーと前記回転軸との間を当該回転軸が回転可能な状態でシールしているOリングとを有し、前記ケーシング内に封入された粘性流体によって前記回転軸に回転負荷が付与されるダンパー装置において、
前記カバーの挿入方向の前端に当接して当該カバーを軸線方向で位置決めする当接部を有し、
前記回転軸の前記外周面部分には、前記Oリングが装着される円環状の装着溝が形成されており、
前記当接部と前記装着溝との間の前記軸線方向の第1幅寸法は、変形前の前記Oリングの直径以下、かつ、当該直径の1/2以上であり、
前記装着溝と前記カバーの挿入方向の後側の後端面との間の前記軸線方向の第2幅寸法は、変形前の前記Oリングの前記直径以下、かつ、当該直径の1/2以上であり、
前記カバーの外周面における前記ケーシングの前記開口部の内周面と溶着されている溶着部分の前記軸線方向の溶着幅寸法は、前記第1幅寸法よりも長いことを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記溶着幅寸法は、前記第1幅寸法と変形前の前記Oリングの前記直径の1/2との合計幅寸法以下であることを特徴とするダンパー装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記カバーは、外径寸法が前記ケーシングの内径寸法よりも小さい小径部と、外径寸法が前記ケーシングの内径寸法よりも大きい大径部とを前記前端の側から軸線方向に沿ってこの順番で備えており、
前記大径部の外周面部分が、前記ケーシングの前記開口部の内周面との前記溶着部分となっていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項4】
請求項3において、
中心孔に前記回転軸を貫通させているワッシャーを有し、
前記回転軸は、当該回転軸の前記ケーシング内に挿入されている前記前端と前記装着溝との間に前記ケーシングの円筒内周面と対峙する円環状外周面を備える円環状突部を備え、当該円環状突部が前記ケーシングの内側空間のうち当該円環状突部よりも前側の空間を前記粘性流体の封入部として区画しており、
前記ワッシャーは、前記円環状突部の後側円環状端面に当接しており、
前記ワッシャーの後端面が前記当接部となっていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項5】
請求項4に記載のダンパー装置の製造方法において、
前記Oリングを前記装着溝に装着するOリング装着工程と、
前記回転軸を前記ケーシングに挿入する回転軸挿入工程と、
前記カバーの前記貫通孔に前記回転軸を貫通させ、しかる後に、前記カバーの前記前端を、前記Oリングの円弧外周面部分の頂上を越え、かつ、前記装着溝を越えない前記ケーシング内の溶着開始位置まで挿入するカバー挿入工程と、
前記カバーの前記後端面にホーンを当接させて、前記前端が前記当接部に当接するまで前記カバーを前方に移動させながら当該カバーの外周面部分と前記ケーシングの前記開口部の内周面とを超音波溶着する超音波溶着工程とを含むことを特徴とするダンパー装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記溶着開始位置は、前記ケーシングの前記開口端の側から前記装着溝の幅の2/3の位置であることを特徴とするダンパー装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記カバー挿入工程では、前記小径部と前記大径部との間の段部を前記ケーシングの前記開口端に当接させたときに、前記カバーの前記前端が前記溶着開始位置に達することを特徴とするダンパー装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記Oリング装着工程と前記回転軸挿入工程との間に、前記Oリングの前記円弧外周面部分に潤滑材を塗布する潤滑材塗布工程を含んでいることを特徴とするダンパー装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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