説明

ダンパ装置

【課題】ピストンロッドの強度耐久性を向上させると共に、組み付け工程を簡素化すること。
【解決手段】磁気粘性流体26が充填されたシリンダチューブ16内に変位自在に収装されるピストン18と、前記ピストン18に連結されて一体的に変位するピストンロッド20と、前記ピストンロッド20が最伸張したときにピストンロッド支持部材14に当接して衝撃を吸収する弾性部材50と、前記弾性部材50と前記ピストン18との間に設けられる支持部材52とを備え、前記支持部材52は、前記ピストンロッド20の軸方向に沿った両端部にそれぞれ径方向に延在する第1壁部56及び第2壁部58と、前記ピストンロッド20の外周面に加締められた加締め部60とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置に関し、一層詳細には、磁性流体等を用いたダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の足回りには、路面からの衝撃を緩衝して乗り心地を良くするために、所謂、サスペンション装置が設けられている。このサスペンション装置には、路面からの衝撃を吸収するスプリングや、前記スプリングの振動を減衰させるためのダンパ装置や、車輪を回転自在に支持する各種アーム等が設けられている。
【0003】
この種のダンパ装置に関し、例えば、特許文献1には、ピストンが連結されるピストンロッドの一端部側に環状段差部を介して縮径部分を設け、前記ピストンロッドの縮径部分に対して一方のストッパプレート、ピストン及び他方のストッパプレートを順次積層し、前記ピストンロッドの縮径部分の端部に締結されるナットによってピストン等を固定するダンパ構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ピストンロッド上でピストンから軸方向に離間した部位にリバウンドストッパを係止すると共に、前記リバウンドストッパにバックアップされるリバウンドラバーを設け、ダンパの最伸張時において、前記リバウンドラバーがダンパチューブの一端部に保持されたガイド部材に当接することにより、ピストンロッドの最伸張ストロークを規制するダンパ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−225023号公報
【特許文献2】特開2001−200878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、ピストンの受圧面に作用する荷重によって、外径寸法がそれぞれ異なるピストンロッドの拡径部分と縮径部分との境界部位に設けられた環状段差部に応力が集中し、ピストンロッドの強度耐久性が低下することが懸念される。
【0007】
また、ピストンロッドに対してピストンを組み付ける際、ピストンロッドに対してリバウンドストッパを係止する組み付け作業と、ピストンロッドの環状段差部に対してピストンを所定位置に位置決めして組み付ける作業とがそれぞれ必要となり、組み付け工程が煩雑となる。
【0008】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、ピストンロッドの強度耐久性を向上させると共に、組み付け工程を簡素化することが可能なダンパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、作動流体が封入されたシリンダチューブと、前記シリンダチューブ内に変位自在に収装されるピストンと、一端部が前記ピストンに連結されて前記ピストンと一体的に変位するピストンロッドと、前記シリンダチューブに設けられ、前記ピストンロッドの他端部側を支持するピストンロッド支持部材と、前記ピストンロッドの外周面を囲繞し、前記ピストンロッドが最伸張したときに前記ピストンロッド支持部材に当接して衝撃を吸収する弾性部材と、前記弾性部材と前記ピストンとの間に設けられる支持部材とを備え、
前記支持部材は、前記ピストンロッドの軸方向に沿った両端部にそれぞれ径方向に延在する前記弾性部材側の第1壁部及び前記ピストン側の第2壁部と、前記第1壁部と前記第2壁部との間に設けられて前記ピストンロッドの外周面に加締められた加締め部とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、加締め部を介してピストンロッドの所定部位に強固に保持される支持部材を設け、前記支持部材の第1壁部によって弾性部材を支持すると共に、前記支持部材の第2壁部でピストンロッドの軸方向に沿って圧入されるピストンを押し当てして、前記ピストンを所定位置に位置決めすることができる。
【0011】
従って、本発明では、単一の部材からなる支持部材によって弾性部材の支持作用とピストンの位置決め作用の両作用を併有することにより、部品点数を削減して組み付け工数を簡素化することができる。
【0012】
また、本発明では、例えば、従来技術のような環状段差部をピストンロッドに形成することが不要となるため、前記環状段差部における応力集中を回避してピストンロッドの強度耐久性を向上させることができる。
【0013】
さらに、本発明では、弾性部材から第1壁部を介して伝達される荷重が支持部材の加締め部で吸収されると共に、ピストンから第2壁部を介して伝達されるピストンの圧入時における位置決め荷重が支持部材の加締め部で吸収されることにより、それぞれの荷重が他の部位に伝達されることを好適に回避することができる。
【0014】
また、本発明は、前記作動流体が、磁気粘性流体又は磁性流体からなり、前記ピストンには、前記磁気粘性流体又は磁性流体を励磁するコイルが設けられ、前記コイルに対して電流を流す導線が前記ピストンロッドの中空部に沿って設けられることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、コイルに電流を流して前記コイルを励磁することによって磁気粘性流体の粘性を変化させる可変減衰力を有するダンパ装置とし、前記コイルに通電する導線をピストンロッドの中空部に沿って配線した場合であっても、ピストンロッドの外径を拡径することがなく強度耐久性を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ピストンロッドの強度耐久性を向上させると共に、組み付け工程を簡素化することが可能なダンパ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るダンパ装置の軸方向に沿った縦断面図である。
【図2】図1に示すピストンを含んだ要部拡大縦断面図である。
【図3】本出願人が案出した比較例に係るダンパ装置の要部拡大縦断面図である。
【図4】(a)は、本実施形態において、コイルを励磁することによって発生した磁束を示す一部省略説明図、(b)は、比較例において、コイルを励磁することによって発生した磁束を示す一部省略説明図である。
【図5】(a)は、図1に示すダンパ装置を構成する支持部材の第1変形例を示す部分拡大縦断面図、(b)は、前記支持部材の第2変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るダンパ装置の軸方向に沿った縦断面図である。
【0019】
本発明の実施形態に係るダンパ装置は、例えば、自動車等の車両の車輪を懸架する図示しないサスペンションシステムに組み込まれる。このサスペンションシステムは、例えば、車体に対してナックルアームを上下動自在に支持するサスペンションアームと、前記サスペンションアームと車体とを連結するダンパ装置と、サスペンションアームと車体とを接続するスプリングとによって構成される。
【0020】
以下、本実施形態では、車両用のサスペンションシステムに組み込まれたダンパ装置を例示して説明するが、これに限定されるものではなく、他の用途に用いることができることは勿論である。また、本実施形態では、後記する磁気粘性流体を用いた可変減衰力を備えたダンパ装置を例にして以下説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係るダンパ装置10は、有底円筒体からなり、軸方向に沿った一端部(下端部)がゴムブッシュ12を介して図示しないサスペンションアームに接続され、開口する他端部がピストンロッド支持部材14によって閉塞されるシリンダチューブ16と、前記シリンダチューブ16内に形成されたシリンダ室に沿って摺動自在(変位自在)に収装されたピストン18とを含む。
【0022】
さらに、ダンパ装置10は、一端部が前記ピストン18に連結され他端部がシリンダチューブ16から外部に露呈して図示しない車体(例えば、ストラットタワー)に連結される中空のピストンロッド20と、前記シリンダチューブ16の一端部側(下端部側)に摺動自在に設けられるフリーピストン22とを備える。
【0023】
ピストンロッド支持部材14は、ピストンロッド20の他端部側を摺動自在に支持するようにシリンダチューブ16の他端部に固定され、ピストンロッド20が最伸張したときに後記する弾性部材50と当接する当接板23を有する。ピストンロッド支持部材14と当接板23との間には、ピストンロッド20の外周面を囲繞するシール部材25が設けられる。なお、本実施形態では、ピストンロッド20が最伸張したとき、後記する弾性部材50が当接板23と当接するように構成しているが、前記当接板23を省略して実質的にピストンロッド支持部材14と当接するようにしてもよい。
【0024】
シリンダチューブ16の内部に形成されたシリンダ室は、ピストン18によって一方(上側)の第1流体室24aと他方(下側)の第2流体室24bとに分割され、前記第1流体室24a及び第2流体室24bには、磁気粘性流体(MRF:Magneto-Rheological Fluids)26が充填される。
【0025】
この磁気粘性流体26は、例えば、マイクロスケールの鉄粒子をオイル等に混入させて構成される磁性流体からなり、磁気が作用すると粘性が変化する性質を有する。また、フリーピストン22で閉塞されたシリンダチューブ16の一端部側(下端部側)には、高圧ガスが封入されたガス室28が設けられる。なお、前記第1流体室24aと前記第2流体室24bとは、ピストン18に設けられた流体通路30を介して連通するように設けられる。
【0026】
図2は、図1に示すピストンを含んだ要部拡大縦断面図である。
図2に示されるように、ピストン18は、径方向に沿って、ピストンロッド20の一端部に外嵌されると共に、Cリング32を介して係止されるピストン本体34と、前記ピストン本体34に外嵌されてシリンダチューブ16の内周面に摺接するピストンリング36とを有する。
【0027】
前記ピストン本体34には、非導電性の樹脂製材料でモールドされたコイル38を含む樹脂封止体40が一体的に設けられ、前記コイル38は、ピストンロッド20の貫通孔(中空部)42に沿って配線されたハーネス(導線)44と電気的に接続される。この場合、ピストンロッド20の貫通孔42を通して配線されたハーネス44を介してコイル38に通電し前記コイル38を励磁することにより、磁気粘性流体26の粘度を調節することができる。なお、ピストンロッド20の一端部と樹脂封止体40との連結部位には、例えば、Oリング等のシール部材45が設けられる。
【0028】
また、ピストン18は、軸方向に沿って、前記ピストン本体34及びピストンリング36と嵌め合い結合されて第1流体室24a側に臨む略円板状の第1エンドプレート46aと、前記第1エンドプレート46aと反対側で、前記ピストン本体34及びピストンリング36と嵌め合い結合されて第2流体室24b側に臨む略円板状の第2エンドプレート46bとを有し、第1エンドプレート46a、ピストン本体34及び第2エンドプレート46bが複数のボルト48によって一体的に結合される。
【0029】
第1エンドプレート46aに隣接するピストンロッド20上には、図2に示されるように、ピストンロッド20の外周面を囲繞するリング体からなり、例えば、ゴム等で形成された弾性部材50と、前記弾性部材50をピストンロッド20の軸方向の片側で支持する支持部材52とが設けられる。
【0030】
前記支持部材52は、ピストンロッド20の外周面に沿って軸方向に延在する円筒状の胴部54と、前記胴部54の軸方向に沿った両端部に設けられ径方向に沿って延在する第1壁部56及び第2壁部58とによって構成される。
【0031】
この場合、前記胴部54、第1壁部56及び第2壁部58は、後記するように、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム又はアルミニウム合金等の非磁性材料によって一体的に形成されるとよい。第1壁部56及び第2壁部58は、略同一径の円板状にそれぞれ形成されると共に、弾性部材50側の第1壁部56の肉厚に対して、第1エンドプレート46a側の第2壁部58の肉厚が若干厚肉に形成される。
【0032】
第1壁部56と第2壁部58との間の胴部54の略中央部には、図示しない加締め手段によって径方向内側に略均一に加圧されて塑性変形した加締め部60が設けられる。前記加締め部60は、前記加圧されて塑性変形したピストンロッド20の環状溝部62内に充填されて前記環状溝部62を緊締することにより、支持部材52がピストンロッド20の所定位置に強固に保持される。
【0033】
弾性部材50は、ピストンロッド20の最伸張時において、ピストンロッド支持部材14の当接板23と当接した際の衝撃を吸収する機能を有する。
【0034】
この場合、支持部材52の第1壁部56は、弾性部材50と接触して弾性部材側として機能し、一方、支持部材52の第2壁部58は、ピストン18の第1エンドプレート46aと接触してピストン側として機能するように設けられる。
【0035】
本実施形態に係るダンパ装置10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果を、比較例との関係で説明する。
【0036】
図3は、本出願人が案出した比較例に係るダンパ装置の要部拡大縦断面図である。なお、図2に示す本実施形態に係るダンパ装置10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0037】
比較例に係るダンパ装置100では、弾性部材50を支持する径方向のフランジ部102と、ピストンロッド104に対して加締められた円筒部106とを有する支持要素108と、ピストンロッド104に形成された環状段差部110に当接しピストン18を所定位置に位置決めする環状のガイドプレート112とがそれぞれ別体(2つの部材)で設けられている点で、図2に示すダンパ装置10と異なっている。
【0038】
次に、例えば、ピストンロッド20,104の軸線と略直交する方向の横力が各ダンパ装置10、100に付与された場合を想定して、以下、比較例と本実施形態と対比して説明する。
【0039】
比較例に係るダンパ装置100では、ピストンロッド104をピストン18の中心孔に対して圧入するために必要な剛性を確保した上で、前記ピストン18と前記ピストンロッドとをお互いに位置決めするために必要な環状段差部110を設けると、前記環状段差部110によって拡径された拡径部分は、従来のピストンロッド(図示せず)の外径よりも太くなってしまい、特別のピストンロッドを製造する必要がある。
【0040】
すなわち、比較例に係るダンパ装置100では、環状段差部110を有するピストンロッド104において、縮径部分と比較して拡径して形成された拡径部分を有する特別のピストンロッド104を製造する必要があり、他の量産可能な汎用のピストンロッドを流用することができないために製造コストが高騰するという問題がある。
【0041】
これに対して、本実施形態では、ピストン18が組み付けられるピストンロッド20の部位に環状段差部110を設けることが不要となり、他の量産可能な汎用のピストンロッドを流用することができるため、製造コストを低減することができると共に、在庫管理が容易となる。
【0042】
次に、ピストンロッド20、104に対してピストン18を位置決めして組み付ける場合を想定する。
比較例に係るダンパ装置100では、ピストン18をピストンロッド104に沿って軸方向から圧入する際、環状段差部110に当接した環状のガイドプレート112にピストン18を押し当てることにより、前記ピストン18を所定位置に位置決めする必要がある。この結果、比較例に係るダンパ装置100では、ピストン18の押し当て荷重に耐えることが可能な高強度を有する硬質材料でガイドプレート112を形成する必要がある。
【0043】
従って、比較例に係るダンパ装置100では、硬質材料で形成された高強度部材、すなわち、鋼製のガイドプレート112を環状段差部110における荷重受け部材として別途設ける必要がある。この結果、比較例に係るダンパ装置100では、部品点数が増大して製造コストが高騰すると共に、組み付け工数も多くなるという問題がある。
【0044】
さらに、比較例に係るダンパ装置100では、ピストンロッド104の最伸張時に弾性部材50によって衝撃を緩衝し、且つストローク量を規制する支持要素108がピストンロッド104に対して加締められて保持されている。このため、前記支持要素108は、加締め加工するときの加圧によって容易に塑性変形可能な材料(変形能が高い材料)で形成される必要がある。
【0045】
これに対して、本実施形態では、加締め部60を介してピストンロッド20の所定部位に強固に保持される支持部材52を設け、前記支持部材52の第1壁部56によって弾性部材50を支持すると共に、前記支持部材52の第2壁部58でピストンロッド20の軸方向に沿って圧入されるピストン18を押し当てして、前記ピストン18を所定位置に位置決めすることができる。
【0046】
このように本実施形態では、単一の部材からなる支持部材52によって弾性部材50の支持作用とピストン18の位置決め作用の両作用を併有することにより、部品点数を削減して組み付け工数を簡素化することができる。
【0047】
また、本実施形態では、比較例に係るダンパ装置100のピストンロッド104に形成された環状段差部110が不要となるため、前記環状段差部110における応力集中を回避してピストンロッド20の強度耐久性を向上させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、弾性部材50から第1壁部56を介して伝達される荷重が支持部材52の加締め部60で吸収されると共に、ピストン18から第2壁部58を介して伝達されるピストン18の圧入時における位置決め荷重が支持部材52の加締め部60で吸収されることにより、それぞれの荷重が他の部位に伝達されることを好適に回避することができる。
【0049】
ここで、当業者であれば、比較例に係るダンパ装置100における支持要素108とガイドプレート112とを一体化して、本実施形態に係るダンパ装置10における支持部材52を構成することが容易に想到されるように思われるが、本実施形態では、以下のような技術的困難性を克服してなされたものである。
【0050】
すなわち、比較例に係る支持要素108は、加締め加工するときの加圧によって容易に塑性変形可能な材料(変形能が高い材料)で形成される必要があり、一方、比較例に係るガイドプレート112は、ピストン18の押し当て荷重に耐えることが可能な高強度を有する硬質材料で形成される必要があり、比較例において相反する方向の性質を有するものを一体化させることが技術的に困難である。
【0051】
例えば、比較例において、比較的軟質な材料で支持要素108とガイドプレート112とを一体化した場合、ピストンロッド104が最伸張したときに、弾性部材50と当接板23とが当接した際の衝撃がガイドプレート112及びピストンロッド104を介してピストン18に伝達されるおそれがあり、振動の減衰機能が低下するおそれがある。
【0052】
これに対して本実施形態では、ピストンロッド20の最伸張時における弾性部材50側の荷重を受容する第1壁部56と、圧入組み付け時におけるピストン18側の荷重を受容する第2壁部58と、前記第1壁部56と前記第2壁部58との中間部位をピストンロッド20に対して一定の加圧力で周方向に沿って略均一に加締めた加締め部60(胴部54)とを一体的に構成した支持部材52を設けることにより、前記技術的困難性を克服している。
【0053】
この場合、本実施形態では、図3の比較例と比較して、図2に示される破線S1と破線S2の離間距離Sだけ寸法を短縮することが可能となり、ダンパ装置10全体を小型・軽量化してばね下重量を軽減することができる。
【0054】
図4(a)は、本実施形態において、コイルを励磁することによって発生した磁束を示す一部省略説明図、図4(b)は、比較例において、コイルを励磁することによって発生した磁束を示す一部省略説明図である。
【0055】
比較例では、鉄鋼製のガイドプレート112を用いることにより、磁束漏れ(図4(b)のB部参照)が発生しているのに対し、本実施形態では、支持部材52として、例えば、非磁性材料からなるステンレス鋼やアルミニウム合金等を用いることにより、前記支持部材52を通る磁束が減少して磁束漏れを低減させることができる(図4(a)のA部参照)。この結果、本実施形態では、ギャップ流路の磁束密度を増大させて磁気粘性流体26の粘性を好適に制御することができる。
【0056】
次に、図5(a)は、図1に示すダンパ装置を構成する支持部材の第1変形例を示す部分拡大縦断面図、図5(b)は、前記支持部材の第2変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【0057】
図5(a)に示される第1変形例に係る支持部材52aでは、互いに反対方向に刻設された逆ねじからなる第1ねじ部70aと第2ねじ部70bとを有する2つの部材72a、72bをピストンロッド20の雄ねじ部に一体的に螺合して支持部材52aを構成している点で図2に示す支持部材52と異なっている。
【0058】
図5(b)に示される第2変形例に係る支持部材52bでは、第1壁部56と第2壁部58との間ではなく、第1壁部58からピストンロッド支持部材14側に向かって軸方向に所定長だけ突出した環状部74を形成し、前記環状部74に加締め部60を設けている点で図2に示す支持部材52と異なっている。なお、その他の作用効果は、図1に示す支持部材52と同一であるため、その詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0059】
10 ダンパ装置
14 ピストンロッド支持部材
16 シリンダチューブ
18 ピストン
20 ピストンロッド
26 磁気粘性流体(作動流体)
38 コイル
42 貫通孔(中空部)
44 ハーネス(導線)
50 弾性部材
52、52a、52b 支持部材
56 第1壁部
58 第2壁部
60 加締め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されたシリンダチューブと、
前記シリンダチューブ内に変位自在に収装されるピストンと、
一端部が前記ピストンに連結されて前記ピストンと一体的に変位するピストンロッドと、
前記シリンダチューブに設けられ、前記ピストンロッドの他端部側を支持するピストンロッド支持部材と、
前記ピストンロッドの外周面を囲繞し、前記ピストンロッドが最伸張したときに前記ピストンロッド支持部材に当接して衝撃を吸収する弾性部材と、
前記弾性部材と前記ピストンとの間に設けられる支持部材と、
を備え、
前記支持部材は、前記ピストンロッドの軸方向に沿った両端部にそれぞれ径方向に延在する前記弾性部材側の第1壁部及び前記ピストン側の第2壁部と、前記第1壁部と前記第2壁部との間に設けられて前記ピストンロッドの外周面に加締められた加締め部とを有することを特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
請求項1記載のダンパ装置において、
前記作動流体は、磁気粘性流体又は磁性流体からなり、
前記ピストンには、前記磁気粘性流体又は磁性流体を励磁するコイルが設けられ、
前記コイルに対して電流を流す導線が前記ピストンロッドの中空部に沿って設けられることを特徴とするダンパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−255672(P2010−255672A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103510(P2009−103510)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】