説明

チアゾリンを含むゴム組成物

本発明は、天然ゴムおよび合成ポリイソプレンから選ばれる少なくとも1種のジエンエラストマーと、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマーおよびイソプレンコポリマーからなる群から選ばれる1種以上のジエンエラストマーとのブレンド、1種以上の補強用充填剤および加硫系をベースとし、上記加硫系が、下記の式を有する1種以上のチアゾリン化合物を含むことを特徴とするタイヤ製造用のゴム組成物に関する:
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にタイヤまたはタイヤ用の半製品(トレッドのような)の製造において使用することのできるゴム組成物に関し、この組成物は、特定のジエンエラストマーのブレンド、補強用充填剤および特定のチアゾリン化合物を含む加硫系をベースとする。
【0002】
ジエンエラストマーのイオウによる加硫は、ゴム工業において、特に、タイヤ工業において広く使用されている。加硫の原理は、これらジエンエラストマーの二重結合との反応による2個の高分子間のイオウブリッジの形成にある。
ジエンエラストマーを加硫するには、イオウ以外に、ベンゾチアゾール環系を含むスルフェンアミドのような一次加硫促進剤と、各種の二次加硫促進剤または加硫活性化剤、特に、単独でまたは脂肪酸と一緒に使用する酸化亜鉛(ZnO)のような亜鉛誘導体とを含む比較的複雑な加硫系を使用する。
【0003】
一次加硫促進剤として使用するベンゾチアゾール環系を含むスルフェンアミドは、例えば、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド (“CBS”と略記する)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド (“DCBS”と略記する)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド (“TBBS”と略記する)およびこれらの化合物の混合物である。
【0004】
しかしながら、イオウによる加硫は、得られた加硫物のその熱エージングによる限られた抵抗性をもたらすという既知の不利益を有する。特に、イオウから出発し架橋させたジエンエラストマーの加硫物は、初期硬化または加硫温度近くの値に達するときの温度に対する高感受性を示す。このことは、加硫中の初期に形成されたイオウブリッジの密度の低下をもたらし、加硫ネットワークの分布は、短縮する、即ち、ポリスルフィドブリッジが減少してモノスルフィド優位に至る方向で変化する。この現象は、戻り(reversion)の用語で知られており、加硫物の機械的性質の劣化を伴う。
【0005】
特にタイヤ(特にトレッド)の製造において使用することができ、戻りに対する改良された抵抗性を示す新規なゴム組成物を提供することが求められている。
また、これら組成物の他の流動度測定特性、レオロジー特性、動的特性、機械的性質および可塑度特性は、既知の組成物に対して、特に、転がり抵抗性/磨耗性の妥協点に関して、依然として匹敵しているままであるか、実際には改良さえされていなければならない。
【発明の概要】
【0006】
従って、本発明の主題は、天然ゴムおよび合成ポリイソプレンから選ばれる少なくとも1種のジエンエラストマーと、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマーおよびイソプレンコポリマーからなる群から選ばれる1種以上のジエンエラストマーとのブレンド、1種以上の補強用充填剤および加硫系をベースとし、上記加硫系が下記の式を有する1種以上のチアゾリン化合物を含むことを特徴とするタイヤ製造用のゴム組成物である:
【化1】

(式中、R1およびR2は、個々に、H、或いは線状、枝分れまたは環状のアルキル基およびアリール基から選ばれ、必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されたC1〜C25炭化水素基を示し、R1およびR2は、一緒になって環を形成し得;
R3は、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の環状C3〜C10アルキルまたはC6〜C12アリール基によって置換されている線状または枝分れのC1〜C25アルキル基;または、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の線状、枝分れまたは環状のC1〜C25アルキルまたはC6〜C12アリール基(これらの基は必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されている)によって置換されている環状のC3〜C10アルキル基;
を示す)。
【0007】
そのようなチアゾリン化合物は、文献US 2 700 659号から、天然ゴム組成物における加硫促進剤としては既知である。この文献は、天然ゴムと他のエラストマーとのブレンド、特に、天然ゴムおよび合成ポリイソプレンから選ばれる少なくとも1種のジエンエラストマーとポリブタジエン、ブタジエンコポリマーおよびイソプレンコポリマーからなる群から選ばれる1種以上のジエンエラストマーとのブレンドを含む組成物に関するものではない。
【0008】
本発明のもう1つの主題は、下記の段階を含む、上記で定義したようなタイヤ製造用のゴム組成物の製造方法である:
・1種以上の補強用充填剤を、天然ゴムおよび上記1種以上の合成ジエンエラストマー中に、第1の“非生産”段階において混入し、全てを、1回以上、130℃と200℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する段階;
・混ぜ合せた混合物を100℃未満の温度に冷却する段階;
・次いで、第2の“生産”段階において、加硫系を混入する段階;および、次いで、
・全てを120℃未満の最高温度まで混練する段階。
【0009】
本発明のもう1つの主題は、本発明に従う組成物の、タイヤ、内部タイヤ安全支持体、ホイール、ゴムスプリング、弾性接合部または他の懸架および振動防止要素のような自動車接地系を意図する最終物品または半製品の製造における使用である。特に、本発明に従う組成物は、トレッド、クラウン補強用プライ、側壁、カーカス補強用プライ、ビード、プロテクター、下地層、ゴムブロック並びにタイヤの上記領域間の結合および界面を構成することを意図する他の内部ゴム、特に、デカップリングゴムのような、タイヤを意図するゴム半製品の製造において使用し得る。
【0010】
本発明のさらなる主題は、本発明に従う組成物を含む、自動車の接地系を意図する最終物品または半製品、特に、タイヤおよびタイヤ用の半製品である。本発明に従うタイヤは、特に、乗用車;並びに、バン類、重量車両(即ち、地下鉄列車、バス、重量道路輸送車両(トラック、トラクターもしくはトレーラー)または道路外車両)、農業用車両または土木機械、航空機、または他の輸送もしくは操作車両から選ばれた産業用車両を意図する。
【0011】
本発明の最後の主題は、天然ゴムおよび合成ポリイソプレンから選ばれる少なくとも1種のジエンエラストマーのブレンド、並びに、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマーおよびイソプレンコポリマーからなる群から選ばれる1種以上のジエンエラストマー、1種以上の補強用充填剤および加硫系をベースとする組成物における、加硫促進剤としての、式(I)を有する1種以上のチアゾリン化合物の使用である。
【0012】
本発明およびその利点は、下記の説明および実施例に照らして容易に理解し得るであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
I. 使用する測定および試験法
チアゾリン加硫促進剤を試験する上記ゴム組成物は、以下で示すように、硬化の前後において、特性決定する。
【0014】
流動度測定:
測定は、規格DIN 53529:パート3 (1983年6月)従い、振動ディスクレオメーターによって150℃で実施する。時間の関数としての流動度測定トルクの変化(Δトルク)によって、加硫反応の結果として組成物の剛化の変化を説明する。測定値を規格DIN 53529:パート2 (1983年3月)従い処理する:t0は、誘導時間、即ち、加硫反応を開始するのに必要な時間であり;tα(例えば、t99)は、α%の転換率、即ち、最低トルクと最高トルクとの差のα%(例えば、99%)を達成するのに必要な時間である。また、加硫速度の評価を可能にする、第1順位であり、30%と80%の転換率の間で算出したK (分-1で表す)で示す転換速度定数も測定する。
【0015】
戻りの測定:
戻りは、種々の方法に従い分析することができ、その目的は、“最適” (最高トルクCmaxに相応する)での硬化と長時間硬化との間のイオウブリッジの密度の変化を間接的に測定することである。
1つの方法は、流動度測定トルクの変化(低下)を測定することからなる;パラメーターΔR120は、特定の硬化温度(例えば、150℃)におけるCmaxと120分間硬化させた後に測定したトルクとの間のトルクの%での変化を示す。パラメーターΔR120が大きいほど、戻りはより顕著である。
【0016】
II. 本発明の実施のための条件
上記で説明したように、本発明に従う組成物は、天然ゴムおよび合成ポリイソプレンから選ばれる少なくとも1種のジエンエラストマーと、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマーおよびイソプレンコポリマーからなる群から選ばれる1種以上のジエンエラストマーとのブレンド、1種以上の補強用充填剤および加硫系をベースとする。
【0017】
“ベースとする”組成物なる表現は、使用する各種構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきである;これらベース構成成分のある種のものは、上記組成物の種々の製造段階において、特に、その加硫中に、少なくとも部分的に互いに反応し得るか或いは反応するように意図する。
本説明においては、特に明確に断らない限り、パーセント(%)は、全て質量%である。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに及ぶ値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbまでに及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0018】
II‐1 ジエンエラストマー
上記で説明したように、本発明に従う組成物は、天然ゴムおよび合成ポリイソプレンから選ばれる少なくとも1種のジエンエラストマーと、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマーおよびイソプレンコポリマーからなる群から選ばれる1種以上のジエンエラストマーとをベースとする。
用語“ジエン”エラストマーまたはゴムは、知られている通り、ジエンモノマー(共役型であり得るまたはあり得ない2個の炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも一部由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきである。
【0019】
これらジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”または“本質的に飽和”に分類し得る。用語“本質的に不飽和”とは、一般に、15%(モル%)よりも多いジエン起源(共役ジエン類)の単位量を有する共役ジエンモノマー類に少なくとも一部由来するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい;従って、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエン類とα‐オレフィン類とのコポリマーのようなジエンエラストマーは、上記の定義には属さず、特に“本質的に飽和”のジエンエラストマー(常に15%未満である、低いまたは極めて低いジエン起原単位量)として説明される。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、用語“高不飽和”ジエンエラストマーとは、特に50%よりも多いジエン起源(共役ジエン)の単位量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0020】
これらの定義を考慮すると、本発明に従う組成物において使用することのできる用語ジエンエラストマーとは、さらに詳細には、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエンを他のジエンまたは好ましくは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
(c) 例えば、エチレンと、プロピレンと、特に1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンのような下記のタイプの非共役ジエンモノマーとから得られるエラストマーのような、エチレンと、3〜6個の炭素原子を有するα‐オレフィンとを、6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー、;および、
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
本発明は、任意のタイプのジエンエラストマーに当てはまるけれども、タイヤ技術における熟練者であれば、本発明は、好ましくは、特に上記のタイプ(a)または(b)の本質的に不飽和のジエンエラストマーと一緒に使用するものであることを理解されたい。
【0021】
以下は、特に、共役ジエンとして適している:1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C1〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;アリール‐1,3‐ブタジエン;1,3‐ペンタジエンまたは2,4‐ヘキサジエン。以下は、例えば、ビニル芳香族化合物として適している:スチレン;オルソ‐、メタ‐またはパラ‐メチルスチレン;“ビニルトルエン”市販混合物;パラ‐(tert‐ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。
【0022】
上記コポリマーは、99質量%と20質量%の間のジエン単位および1質量%と80質量%の間のビニル芳香族単位を含み得る。上記エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。これらのエラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液中、エマルション中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤(star‐branching agent)或いは官能化剤によってカップリングしおよび/または星型枝分れし或いは官能化し得る。カーボンブラックにカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基、または、例えばアミノベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができ;シリカのような補強用無機充填剤にカップリングさせるには、例えば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号、US 6 013 718号またはWO 2008/141702号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号、US 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号、US 6 503 973号、WO 2009/000750号またはWO 2009/000752号に記載されているような)を挙げることができる。また、他の官能化エラストマーの例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0023】
以下が、適している:ポリブタジエン、特に、4%と80%の間の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブジエン類または80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、0℃と−70℃の間、特に−10℃と−60℃の間のTg (ガラス転移温度、ASTM D3418に従って測定)、5質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のTgを有するコポリマー;または、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および5℃と−50℃の間のTgを有するコポリマー。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合は、5質量%と50質量%の間、特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分1,2‐単位含有量(モル%)、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)、5%と70%の間のイソプレン成分1,2‐+3,4‐単位含有量(モル%)および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するコポリマー、さらに一般的には、−5℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが、特に適している。
【0024】
要するに、本発明に従う組成物の1種以上のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(“BR”と略記する)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーからなる群から選ばれるエラストマーとブレンドした天然ゴムおよび/または合成ポリイソプレン(即ち、イソプレンホモポリマー)から選択する。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選択する。
【0025】
特定の実施態様によれば、本発明に従う組成物は、天然ゴムおよびまたは合成ポリイソプレンと、1種以上のポリブタジエンおよび1種以上のSBR(エマルジョン中で調製したSBR(“ESBR”)または溶液中で調製したSBR(“SSBR”)のいずれか)とのブレンドをベースとする。SBR(ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合、特に、例えば20質量%と35質量%の間の中度スチレン含有量または例えば35質量%〜45質量%の高スチレン含有量、15%と70%の間のブタジエン成分ビニル結合含有量、15%と75%の間のトランス‐1,4結合含有量(モル%)および−10℃と−55℃の間のTgを有するSBRを使用する。
【0026】
また、さらに詳細には、本発明に従う組成物は、天然ゴム、ブタジエン/スチレンコポリマーおよびポリブタジエン(NR/SBR/BR)のブレンドをベースとする。好ましくは、天然ゴムは30〜60phrを示し、1種以上のポリブタジエンは10〜30phrを示し、1種以上のブタジエン/スチレンコポリマーは30〜60phrを示す。
また、天然ゴムとブレンドした本発明に従う組成物中に存在する1種以上の合成ジエンエラストマーは、ジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマーと、実際にはエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーと組合わせて使用し得る。
【0027】
II‐2. 補強用充填剤
タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特にカーボンブラックとシリカとのブレンドを使用することができる。
【0028】
全てのカーボンブラック、特に、タイヤにおいて通常使用されるHAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、カーボンブラックとして適している。さらに詳細には、後者のうちでは、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)が、或いは、目標とする用途次第では、より高級シリーズのブラック類(例えば、N660、N683またはN722)も挙げられる。カーボンブラックは、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO‐A‐2006/069792号およびWO‐A‐2006/069793号に記載されているような官能化ポリビニル芳香族有機充填剤を挙げることができる。
【0029】
用語“補強用無機充填剤”とは、本特許出願においては、定義によれば、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”または“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強役割において置換わり得る、その色合およびその起源(天然または合成)の如何にかかわらない任意の無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られているとおり、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
補強用無機充填剤を供給する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な濃密化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、補強用無機充填剤なる用語は、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物を意味することも理解されたい。
【0030】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al2O3)が、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gであるBET表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降または焼成シリカであり得る。高分散性(“HDS”)沈降シリカとしては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0031】
本発明に従う組成物を、低転がり抵抗性を有するタイヤトレッド用に意図する場合、使用する補強用無機充填剤は、特にシリカである場合、好ましくは45m2/gと400m2/gの間、より好ましくは60m2/gと300m2/gの間のBET表面積を有する。
【0032】
好ましくは、補強用充填剤全体(カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の量は、20phrと200phrの間、より好ましくは30phrと150phrの間であり、最適量は、知られている通り、目標とする特定の用途によって異なる:例えば、自転車タイヤに関して期待される補強レベルは、継続的に高速走行し得るタイヤ、例えば、モーターサイクルタイヤ、乗用車用タイヤ、または重量車両のような実用車両用タイヤに関して要求される補強レベルよりも勿論低い。
【0033】
本発明の好ましい実施態様によれば、カーボンブラックを、補強用充填剤として使用する。
本発明のもう1つの実施態様によれば、30phrと150phrの間、より好ましくは50phrと120phrの間の無機充填剤、特にシリカと、任意構成成分としてのカーボンブラックを含む補強用充填剤を使用する;カーボンブラックは、存在する場合、好ましくは20phr未満、より好ましくは10phr未満(例えば、0.1phrと10phrの間)の量で使用する。
【0034】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、知られている通り、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学および/または物理的性質の満足し得る結合を与えることを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
特に、例えば出願 WO03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造によって“対称形”または“非対称形”と称するシランポリスルフィドを使用する。
【0035】
下記の一般式(III)に相応する“対称形”シランポリスルフィドは、以下の定義に限定されることなく、特に適している:
(III) Z ‐ A ‐ Sx ‐ A ‐ Z
[式中、xは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
Aは、2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C18アルキレン基またはC6〜C12アリーレン基、特にC1〜C10、特にC1〜C4アルキレン基、特にプロピレン)であり;
Zは、下記の式の1つに相応する:
【化2】

(式中、R1基は、置換されていないかまたは置換されており、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルキル、C5〜C18シクロアルキルまたはC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC1〜C4アルキル基、特にメチルおよび/またはエチル)を示し;
R2基は、置換されていないかまたは置換されており、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルコキシルまたはC5〜C18シクロアルコキシル基(好ましくは、C1〜C8アルコキシルおよびC5〜C8シクロアルコキシルから選ばれる基、さらにより好ましくはC1〜C4アルコキシルから選ばれる基、特にメトキシルおよびエトキシル)を示す)]。
【0036】
上記式(III)に相応するアルコキシシランポリスルフィド類の混合物、特に、商業的に入手可能な通常の混合物の場合、“x”指数の平均値は、好ましくは2と5の間、より好ましくは4に近い分数である。しかしながら、本発明は、例えば、アルコキシシランジスルフィド(x = 2)によっても有利に実施し得る。
【0037】
さらに詳細には、シランポリスルフィドの例としては、例えば、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドのような、ビス((C1〜C4)アルコキシル(C1〜C4)アルキルシリル(C1〜C4)アルキル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)が挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するTESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2を有するTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(または、US 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシルジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特にジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0038】
アルコキシシランポリスルフィド類以外のカップリング剤の例としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式(III)において、R2 = OH)、或いは、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、好ましくは4phrと12phrの間、より好ましくは3phrと8phrの間の量である。
【0039】
当業者であれば、もう1つの性質、特に、有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層で被覆されているか、或いは、その表面上に、充填剤とエラストマー間の結合を形成させるためにカップリング剤の使用を必要とする官能部位(特にヒドロキシル)を含むかを条件として、この項において説明した補強用無機充填剤と等価の充填剤として使用し得ることを理解されたい。
【0040】
II‐3. 加硫系
適切な加硫系は、イオウ(またはイオウ供与剤)と一次加硫促進剤をベースとする。この基本加硫系に、後述するような第1の非生産段階中および/または生産段階中に混入する各種既知の二次加硫促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸または等価の化合物、或いはグアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)を追加する。
イオウは、本発明の組成物を、本発明の好ましい形態に従い、タイヤトレッドを構成することを意図する場合、好ましくは0.5phrと10phrの間、より好ましくは0.5phrと5phrの間、特に0.5phrと3phrの間の量で使用する。
【0041】
一次加硫促進剤は、ゴム組成物の架橋を、工業的に許容し得る時間内で、ゴム組成物を早期の加硫(“スコーチ”)のリスクなしで成形することができる最低限の安全期間(“スコーチ時間”)を保持しながら可能にしなければならない。
【0042】
本発明によれば、上記加硫系は、一次加硫促進剤として、下記の式を有する1種以上のチアゾリン化合物を含む:
【化3】

(式中、R1およびR2は、個々に、H、或いは線状、枝分れまたは環状のアルキル基およびアリール基から選ばれ、必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されたC1〜C25炭化水素基を示し、R1およびR2は、一緒になって環を形成し得;
R3は、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の環状C3〜C10アルキルまたはC6〜C12アリール基によって置換されている線状または枝分れのC1〜C25アルキル基;または、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の線状、枝分れまたは環状のC1〜C25アルキルまたはC6〜C12アリール基(これらの基は必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されている)によって置換されている環状のC3〜C10アルキル基;
を示す)。
【0043】
式(I)を有する上記化合物は、通常使用するスルフェンアミド化合物と、全体的にまたは部分的に有利に置換わり得る。
用語環状アルキル基は、1個以上の環からなるアルキル基を意味するものと理解されたい。
上記1個以上のヘテロ原子は、窒素、イオウまたは酸素原子であり得る。
【0044】
有利には、R1およびR2は、個々に、Hまたはメチル基を示す。
特定の実施態様によれば、R1およびR2は、各々、水素を示す。
特定の実施態様によれば、R3は、tert‐ブチル基を示す。
【0045】
もう1つの特定の実施態様によれば、R3は、必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の線状、枝分れまたは環状のC1〜C25アルキルまたはC6〜C12アリール基(これらの基は必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されている)によって置換されている環状のC3〜C10アルキル基を示す。
有利には、R3は、シクロヘキシル基を示す。
【0046】
従って、式(I)を有する好ましい化合物は、R1およびR2がHを示し、R3がシクロヘキシルを示す化合物である。この場合、式(I)を有するチアゾリン化合物は、N‐シクロヘキシル‐4,5‐ジヒドロ‐2‐チアゾールスルフェンアミドである。
式(I)を有する1種以上の化合物は、一般に、0.1〜10phr、好ましくは0.5〜7phr、さらにより好ましくは0.5〜5phrを示す(エラストマーの100質量当りの質量部)。
【0047】
式(I)を有する化合物の合成は、周知であり、特に、下記の文献に記載されている:
・US 2 700 659号;
・Journal of Organic Chemistry (1949), 14, 921‐34。
【0048】
また、本発明に従う組成物の加硫系は、1種以上のさらなる一次促進剤、特に、チウラム群の化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛誘導体、またはチオホスフェートも含み得る。
【0049】
II‐4. 各種添加剤
また、本発明に従うゴム組成物は、例えば、可塑剤または増量剤オイル(後者は、性質的に芳香族系または非芳香族系のいずれかである);顔料;オゾン劣化防止ワックス(Cire Ozone C32 STのような)、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤(N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N'‐フェニル‐p‐フェニレンジアミン)のような保護剤;疲労防止剤;補強用樹脂;出願WO 02/10269号に記載されているような、メチレン受容体(例えば、ノボラックフェノール樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M)のような、タイヤ、特に、トレッドの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全部または1部も含み得る。
【0050】
好ましくは、本発明に従う組成物は、好ましい非芳香族系または極めて僅かに芳香族系の可塑剤として、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、MESオイル、TDAEオイル、グリセリンエステル (特にトリオレアート)、好ましくは30℃よりも高い高Tgを示す可塑化用炭化水素樹脂、およびそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
【0051】
また、本発明に従う組成物は、カップリング剤以外に、補強用無機充填剤に対するカップリング活性化剤;または、知られている通り、ゴムマトリックス中での無機充填剤の分散性を改良し組成物の粘度を低下させることによって、生状態における組成物の加工特性を改良することのできるより一般的な加工助剤も含有し得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシラン(特にアルキルトリエトキシシラン)のような加水分解性シラン;ポリオール;ポリエーテル (例えば、ポリエチレングリコール);第一級、第二級または第三級アミン類(例えば、トリアルカノールアミン類);ヒドロキシル化または加水分解性POS類、例えば、α,ω‐ジヒドロキシポリオルガノシロキサン類(特にα,ω‐ジヒドロキシポリジメチルシロキサン類);例えば、ステアリン酸のような脂肪酸である。
【0052】
II‐5. ゴム組成物の製造
本発明に従うゴム組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の一般手順に従う以下の2つの連続する製造段階を使用して製造する:130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階と称する);および、その後の典型的には120℃未満の、例えば、60℃と100℃の間の低めの温度で機械加工する第2の段階(“生産”段階と称する);この仕上げ段階において、架橋または加硫系を混入する。
【0053】
本発明の好ましい実施態様によれば、加硫系を除いた本発明の組成物の全てのベース構成成分、即ち、1種以上の補強用充填剤および適切な場合のカップリング剤を、混練により、天然ゴム中および1種以上のジエンエラストマー中に、上記第1の“非生産”段階において緊密に混入する、即ち、少なくともこれらの各種ベース構成成分を、ミキサー内に導入し、130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間の最高温度に達するまで、1回または数回の工程において熱機械的に混練する。
【0054】
例えば、第1の(非生産)段階は、1回の熱機械段階において実施し、その間に、必要とする構成成分の全て、任意成分としての付加的な加工助剤および加硫系を除いた各種他の添加剤を、標準の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入する。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは、1分と15分の間である。その後、第1の非生産段階においてそのようにして得られた混合物を冷却した後、加硫系を、一般的には開放ミルのような開放ミキサー内で、低温にて混入する;次いで、全てを、数分間、例えば、2分と15分の間の時間混合する(生産段階)。
【0055】
そのようにして得られた最終組成物は、その後、特に実験室での特性決定用の、例えばシートまたはプラークの形にカレンダー加工するか、或いは、例えば、乗用車用のタイヤトレッドとして使用することのできるゴム形状要素の形に押出加工する。
【0056】
III. 本発明の実施例
以下の実施例においては、本発明を、下記の式を有するN‐シクロヘキシル‐4,5‐ジヒドロ‐2‐チアゾールスルフェンアミド (化合物A)によって実施する:
【化4】

【0057】
III‐1. チアゾリン化合物Aの合成
この化合物は、下記の合成スキームに従い、4,5‐ジヒドロチアゾール‐2‐チオールとシクロヘキシルアミンから調製する:
【化5】


4,5‐ジヒドロチアゾール‐2‐チオール (CAS番号[96‐53‐7])は商業的に入手可能であり、例えば、Aldrich社によって販売されている。
【0058】
水(100ml)中のシクロヘキシルアミン(74.98g、0.756モル)の溶液を、水(700ml)中の4,5‐ジヒドロチアゾール‐2‐チオール(30.0g、0.252モル)と水酸化ナトリウム(30.24g、0.765モル)の溶液に添加する。混合物を+4℃に冷却する。その後、ヨウ素(63.96g、0.252モル)とヨウ化カリウム (83.66g、0.504モル)を脱塩水で構成した600mlのフラスコ内に溶解することによって調製したヨウ素溶液を、0.5〜3時間に亘って滴下により添加する。その後、反応媒を、0℃と+8℃の間の温度で1時間撹拌する。
その後、沈降物を濾別し、水(3.0 l)で洗浄する。淡黄色の粗生成物を、1:1容量比のペンタンとシクロヘキサンの混合物から結晶化する。
69.5℃の融点(文献:69〜70℃)を有する白色固形物(28.2g、0.130モル、収率52.5%)を得る。
モル純度は、98%よりも高い(1H NMR)。
【0059】
III‐2. 組成物の製造
以下の試験における手順は、次のとおりである:天然ゴムおよび1種以上の合成ジエンエラストマー、1種以上の補強用充填剤および必要に応じてのカップリング剤を、さらに、その後、1〜2分間混練した後、加硫系を除いた各種他の成分を、70%満たしおよそ90℃の出発容器温度を有する密閉ミキサー内に導入する。その後、熱機械的加工(非生産段階)を、1段階において(およそ5分に等しい総混練時間)、およそ165℃の最高“落下”温度に達するまで実施する。そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、加硫系 (イオウおよびチアゾリン化合物)を、70℃の開放ミキサー(ホモフィニッシャー)内に添加し、全てをおよそ5〜6分間混合する(生産段階)。
【0060】
その後、そのようにして得られた組成物を、その物理的または機械的性質の測定のためのゴムのプラーク(2〜3mm厚)または薄シートの形に、或いは、所望の寸法に切断および/または組立てた後、例えば、タイヤ用の半製品として、特に、タイヤトレッドとして直接使用することのできる形状要素の形にカレンダー加工する。
【0061】
III‐3. 特性決定試験 (結果)
本実施例の目的は、タイヤトレッドの製造において使用することができ、本発明に従うエラストマーブレンドをベースとし、N‐シクロヘキシル‐4,5‐ジヒドロ‐2‐チアゾールスルフェンアミド (“化合物A”)を加硫促進剤として含む本発明に従うゴム組成物 (組成物4)の性質を、本発明に従わない下記の数種の組成物の性質と比較することである:
・一次加硫促進剤としてN‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド (“CBS”)を、また、ジエンエラストマーとして単独の天然ゴムを含む第1の対照組成物 (組成物1);
・加硫促進剤として化合物Aを、また、ジエンエラストマーとして単独の天然ゴムを含む第2の対照組成物 (組成物2);
・加硫促進剤としてCBSを、また、ジエンエラストマーとして、天然ゴム、ポリブタジエンおよびスチレン/ブタジエンコポリマーのブレンド (即ち、本発明に従うブレンド)を含む第3の対照組成物。
【0062】
組成物の配合を、下記の表1に示している。量は、エラストマー100質量部当りの質量部(phr)で表している。

表1

* CBS (Flexsys社からの“Santocure CBS”)
** N‐シクロヘキシル‐4,5‐ジヒドロ‐2‐チアゾールスルフェンアミド
(1) 天然ゴム;
(2) 0.7%の1,2‐、1.7%のトランス‐1,4‐、98%のシス‐1,4‐を含むポリブタジエン (Tg = −105℃) (モル%);
(3) ブタジエン/スチレンコポリマー:25%のスチレン、59%の1,2‐ポリブタジエン単位および20%のトランス‐1,4‐ポリブタジエン単位を含むSSBR (溶液中で調製したSBR) (Tg = −24℃) (モル%);乾燥SBRとして表した量 (9質量%のMESオイルで増量したSBR、即ち、76phrに等しいSSBR+オイルの合計量);
(4) カーボンブラックN234;
(5) 酸化防止剤 6‐p‐フェニレンジアミン。
【0063】
N‐シクロヘキシル‐4,5‐ジヒドロ‐2‐チアゾールスルフェンアミドを含むゴム組成物2は、組成物1と同一であり、CBSを等モル量のN‐シクロヘキシル‐4,5‐ジヒドロ‐2‐チアゾールスルフェンアミドと置換えていることを理解されたい。
N‐シクロヘキシル‐4,5‐ジヒドロ‐2‐チアゾールスルフェンアミドを含むゴム組成物4は、組成物3と同一であり、CBSを等モル量のN‐シクロヘキシル‐4,5‐ジヒドロ‐2‐チアゾールスルフェンアミドと置換えていることを理解されたい。
【0064】
150℃での流動度測定特性および150℃での戻りを下記の表2に示す。

表2

【0065】
天然ゴムをベースとし、本発明に従わない組成物1および2は、双方とも、有意な戻りを示していること、特に、化合物Aを含む組成物2は、通常使用するCBSである促進剤を含む組成物1よりも幾分高い戻りを示していることに注目されたい。
【0066】
さらにまた、化合物Aを含む組成物2が推定させ得たことに反して、組成物が天然ゴム、ポリブタジエンおよびブタジエン/スチレンコポリマーのブレンドをベースとする場合、N‐シクロヘキシル‐4,5‐ジヒドロ‐2‐チアゾールスルフェンアミドの使用(組成物4)は0%の戻りを得ることを可能にしており、これは、CBSを含む組成物3対して極めて大きな改良であることに注目すべきである。
【0067】
さらにまた、化合物A、さらに、一般的には式(I)を有する化合物は、有利なことに、環境的影響に関して、メルカプトベンゾチアゾール環系を含むスルフェンアミドと、このスルフェンアミドとは対照的に、硬化中の分解時にメルカプトベンゾチアゾールを発生させないことによって取って代っていることに注目すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムおよび合成ポリイソプレンから選ばれる少なくとも1種のジエンエラストマーと、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマーおよびイソプレンコポリマーからなる群から選ばれる1種以上のジエンエラストマーとのブレンド、1種以上の補強用充填剤および加硫系をベースとする、タイヤの製造用のゴム組成物であって、前記加硫系が、下記の式を有する1種以上のチアゾリン化合物を含むことを特徴とするゴム組成物:
【化1】

(式中、R1およびR2は、個々に、H、或いは線状、枝分れまたは環状のアルキル基およびアリール基から選ばれ、必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されたC1〜C25炭化水素基を示し、R1およびR2は、一緒になって環を形成し得;
R3は、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の環状C3〜C10アルキルまたはC6〜C12アリール基によって置換されている線状または枝分れのC1〜C25アルキル基;または、
・必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断され、且つ必要に応じて1個以上の線状、枝分れまたは環状のC1〜C25アルキルまたはC6〜C12アリール基(これらの基は必要に応じて1個以上のヘテロ原子によって遮断されている)によって置換されている環状のC3〜C10アルキル基;
を示す)。
【請求項2】
R1およびR2が、個々に、Hまたはメチル基を示す、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
R1およびR2が、各々、Hを示す、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
R3が、シクロヘキシル基またはtert‐ブチル基を示す、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記チアゾリン化合物が、0.1〜10phr、好ましくは0.5〜7phr、さらにより好ましくは0.5〜5phr(ジエンエラストマー100質量部当りの質量部)を示す、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記ブレンドが、天然ゴムおよび合成ポリイソプレンから選ばれる少なくとも1種のジエンエラストマーと、1種以上のポリブタジエンおよび1種以上のブタジエン/スチレンコポリマーとのブレンドである、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
前記補強用充填剤が、シリカ、カーボンブラックまたはこれらの混合物から選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記補強用充填剤が、20phrと200phrの間、好ましくは30phrと150phrの間の量で存在する、請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
下記の段階を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に定義したとおりのタイヤ製造用のゴム組成物の製造方法:
・補強用充填剤を、前記ジエンエラストマー中に、第1の“非生産”段階において混入し、全てを、1回以上、130℃と200℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する段階;
・混ぜ合せた混合物を100℃未満の温度に冷却する段階;
・その後、第2の“生産”段階において、加硫系を混入する工程;および、その後の、
・全てを120℃未満の最高温度まで混練する段階。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物の使用であって、自動車の接地系を意図する最終物品または半製品の製造における使用。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物を含む、自動車の接地系を意図する最終物品または半製品。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項記載に定義したゴム組成物を含む、タイヤ。
【請求項13】
天然ゴムおよび合成ポリイソプレンから選ばれる少なくとも1種のジエンエラストマーと、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマーおよびイソプレンコポリマーからなる群から選ばれる1種以上のジエンエラストマーとのブレンド、1種以上の補強用充填剤および加硫系をベースとする組成物における、加硫促進剤としての、請求項1〜4のいずれか1項記載の式(I)を有する1種以上のチアゾリン化合物の使用。

【公表番号】特表2013−507472(P2013−507472A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532610(P2012−532610)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065074
【国際公開番号】WO2011/042526
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】