チアゾロチアゾール誘導体
【課題】有機溶媒に対する溶解性が良好なチアゾロチアゾール誘導体を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるチアゾロチアゾール誘導体。一般式(I)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表す。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるチアゾロチアゾール誘導体。一般式(I)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チアゾロチアゾール誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機感光体や有機電界発光素子、有機トランジスタ、有機光メモリー等の有機電子デバイスでは、発生した電荷を効率良く受け取り、且つその電荷を速く移動させることが高機能化や高寿命化に繋がることから、電荷輸送材料が重要な材料となっている。
電荷輸送材料は、その機能の観点から、電荷移動度や電荷注入性などの特性に着目して開発が進められている。
【0003】
また、電荷輸送材料には、溶解性、成膜性、耐熱性等、種々の特性が要求される。例えば、有機電子写真感光体においては、溶解性が高く残留電位が小さいことが望まれる。有機電界発光素子においては、より高輝度の発光を有し、繰り返し使用時での安定性に優れることが望まれている(例えば、非特許文献1参照)。その他、合成が容易な電荷輸送材料であることも重要であり、また物性をコントロールし易いことも望まれている。
これらの要求を満たすために、置換基を導入して物性をコントロールすることが一般的に行われている。
【0004】
電子デバイスの電荷輸送材料としては、具体的には、例えばポリビニルカルバゾール(PVK)に代表される電荷輸送性高分子や、N,N−ジ(m−トリル)N,N’−ジフェニルベンジジン、1,1−ビス[N,N−ジ(p−トリル)アミノフェニル]シクロヘキサン或いは4−(N,N−ジフェニル)アミノベンズアルデヒドーN,N−ジフェニルヒドラゾン化合物等のジアミノ化合物や、ジベンゾチオフェン(例えば、特許文献1参照。)等の低分子化合物が知られている。
【0005】
また、チアゾロチアゾール誘導体の公知例として、例えば非特許文献2、3には下記化学式2から4で表されるチアゾロチアゾール誘導体が知られており、下記化学式3、および4で表されるチアゾロチアゾール誘導体を蒸着法によって成膜したものである。
【0006】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−126403号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】電子情報通信学会技術研究報告、OME95−54(1995)
【非特許文献2】S.Ando,J.Nishida,et al.,J.Mater.Chem.,vol.14,p.1787-1790 (2004).
【非特許文献3】S.Ando,J.Nishida,et al.,Chemistry Letters,vol.33,No.9,p. 1170-1171(2004).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、ハロゲン系の有機溶媒に対する良好な溶解性を有する新規なチアゾロチアゾール誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の本発明により達成される。即ち、
請求項1にかかる発明は、下記一般式(I)で表されるチアゾロチアゾール誘導体である。
【0011】
【化2】
【0012】
一般式(I)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表す。
【0013】
請求項2にかかる発明は、前記一般式(I)のR1が、炭素数が3以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が3以上12以下の分岐状の置換基であり、R2が、炭素数が1以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が2以上12以下の分岐状の置換基である請求項1に記載のチアゾロチアゾール誘導体である。
【0014】
請求項3にかかる発明は、前記一般式(I)のR1が、それぞれ独立に、炭素数3以上12以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上12以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上12以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上12以下の分岐状アルコキシ基である請求項1または請求項2に記載のチアゾロチアゾール誘導体である。
【0015】
請求項4にかかる発明は、前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体である。
【0016】
請求項5にかかる発明は、前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、炭素数1以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体である。
【0017】
請求項6にかかる発明は、前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、炭素数3以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、ハロゲン系の有機溶媒に対する溶解性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
請求項2に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、ハロゲン系の有機溶媒に対する溶解性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
請求項3に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、耐熱性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
請求項4に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、ハロゲン系の有機溶媒に対する溶解性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
請求項5に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、ハロゲン系の有機溶媒に対する溶解性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
請求項6に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、非ハロゲン系の有機溶媒に対する溶解性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1における赤外吸収スペクトルを表す。
【図2】実施例1における1H−NMRスペクトルを表す。
【図3】実施例2における赤外吸収スペクトルを表す。
【図4】実施例2における1H−NMRスペクトルを表す。
【図5】実施例3における赤外吸収スペクトルを表す。
【図6】実施例3における1H−NMRスペクトルを表す。
【図7】実施例4における赤外吸収スペクトルを表す。
【図8】実施例4における1H−NMRスペクトルを表す。
【図9】実施例5における赤外吸収スペクトルを表す。
【図10】実施例5における1H−NMRスペクトルを表す。
【図11】実施例6における赤外吸収スペクトルを表す。
【図12】実施例6における1H−NMRスペクトルを表す。
【図13】実施例7における赤外吸収スペクトルを表す。
【図14】実施例7における1H−NMRスペクトルを表す。
【図15】実施例8における赤外吸収スペクトルを表す。
【図16】実施例8における1H−NMRスペクトルを表す。
【図17】実施例9における赤外吸収スペクトルを表す。
【図18】実施例9における1H−NMRスペクトルを表す。
【図19】実施例10における赤外吸収スペクトルを表す。
【図20】実施例10における1H−NMRスペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態のチアゾロチアゾール誘導体は、下記一般式(I)で表される。
【0021】
【化3】
【0022】
一般式(I)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表す。
【0023】
なかでも、前記一般式(I)のR1が、炭素数が3以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が3以上12以下の分岐状の置換基であり、R2が、炭素数が1以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が2以上12以下の分岐状の置換基である態様が好適である。
ここで、炭素数が3以上12以下の直鎖状の置換基としては、炭素数3以上12以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上12以下の直鎖状アルコキシ基が挙げられ、また、主鎖部分を構成する炭素数が3以上12以下の分岐状の置換基としては、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基であって、アルキル基、もしくはアルコキシ基の分岐鎖を除いた直鎖状の主鎖部分における炭素数が2以上12以下である置換基が挙げられる。
【0024】
本実施形態のチアゾロチアゾール誘導体は、分子構造的に芳香環の平面性が高くπ電子の共役が広がった状態によって電荷輸送性に優れた性能を発揮しているものと考えられる。
前記一般式(I)で表される化合物は、チオフェン環に隣接する置換基をフェニル基にすることにより、溶解性が向上する。これは末端のフェニル置換基とチオフェン環の結合がフリーに回転することによるものと推測される。また、R1にアルキル基、またはアルコキシ基を導入することで有機溶媒との疎水性相互作用が増し、有機溶媒への溶解性を向上するものと考えられる。さらに、R2にアルキル基、またはアルコキシ基を導入することにより有機溶媒との疎水性相互作用が増し、溶解性を大幅に向上するものと考えられる。また、イオン化ポテンシャルを小さくするなどの効果もある。また、フェニル基の置換基としてアルキル基、またはアルコキシ基を導入することにより分子量が増加し、良好な耐熱性を呈するものと推測される。
特にチアゾロチアゾール誘導体である一般式(I)の置換基R1およびR2の長さを、炭素数が20以下、好ましくは12以下、さらにR2にあっては好ましくは8以下のアルキル基、またはアルコキシ基とすることによって、置換基同志の絡まり合いを抑えられ、これによっても溶解性が向上したものと考えられる。
しかし、本実施形態は上記した推測によって限定されることはない。
【0025】
なお、本実施形態の化合物ではない下記化学式3で示されるチアゾロチアゾール化合物は、結晶で得られるが、有機溶媒に溶解しにくいために塗布溶液を作製すると結晶が析出し、塗布溶液は経時安定性が不良であり、使用しにくい。また、化学式3で示されるチアゾロチアゾール化合物を用いて製膜したときの膜厚にむらが生じるが、一般式(I)で表されるチアゾロチアゾール誘導体を用いた場合には、塗布による膜厚むらの発生が抑制される。
【0026】
【化4】
【0027】
以下、本実施形態の一般式(I)について詳細に説明する。
フェニル基に対するR1の結合部位として好ましくは、3位または4位であり、さらに好ましくは4位である。
【0028】
R1における炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基として具体的には、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、またはイコシル基であり、好ましくは炭素数3以上12以下の直鎖状アルキル基であり、具体的にはプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、またはドデシル基であり、好ましくは、ブチル基、ヘキシル基、n-オクチル基、またはドデシル基である。
【0029】
R1における炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、またはイコシルオキシ基であり、好ましくは炭素数3以上12以下の直鎖状アルコキシ基であり、具体的にはプロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、またはドデシルオキシ基であり、好ましくは、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクトキシ基、またはドデシルオキシ基である。
【0030】
R1における炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、1−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、tert-オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、2―メチルオクチル基、2,2−ジメチルへプチル基、2,2−ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、2,6−ジメチル−4−へプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、1−メチルデシル基、2−メチルデシル基、2,2−ジメチルデシル基、2,3−ジメチルデシル基、2,2ジエチルデシル基、1−ヘキシルへプチル基、1−メチルヘキサデシル基、または1,1−ジメチルヘキサデシル基であり、好ましくは炭素数3以上12以下の分岐状アルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、tert-ブチル基、2−メチル−ヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2,2-ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、2−メチルデシル基、2,2-ジメチルデシル基、または2,3−ジメチルデシル基であり、好ましくは、tert-ブチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2,2-ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、または2,2−ジメチルデシル基である。
【0031】
R1における炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基として具体的には、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、2−エチルブチルオキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、2,2−ジメチルヘキシルオキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2−ジメチルオクチルオキシ基、2,3−ジメチルオクチルオキシ基、2−メチルデシルオキシ基、2,2−ジメチルデシルオキシ基、2,3−ジメチルデシルオキシ基、2−メチルドデシル基、2−メチルテトラデシル基、2−メチルヘキサデシル基、または2−メチルオクタデシル基、好ましくは炭素数3以上12以下の分岐状アルコキシ基であり、具体的にはイソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、2,2-ジメチルヘキシルオキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2-ジメチルオクチルオキシ基、2,3−ジメチルオクチルオキシ基、2−メチルデシルオキシ基、2,2ジメチルデシルオキシ基、または2,3−ジメチルデシルオキシ基であり、さらに好ましくは、tert-ブトキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2-ジメチルオクチルオキシ基、または2,3−ジメチルデシルオキシ基である。
【0032】
また、R2における炭素数1以上20以下の直鎖状アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、またはイコシル基であり、好ましくは炭素数1以上8以下の直鎖状アルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、またはヘキシル基、オクチル基であり、さらに好ましくは、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、またはオクチル基である。さらに好ましくはR2における炭素数3以上8以下の直鎖状アルキル基であり、プロピル基、ブチル基、またはヘキシル基、オクチル基が好ましい。
【0033】
R2における炭素数1以上20以下の直鎖状アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、またはイコシルオキシ基であり、好ましくは炭素数1以上8以下の直鎖状アルコキシ基であり、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、またはオクチルオキシ基であり、さらに好ましくは、メトキシ基、ブトキシ基、またはヘキシルオキシ基である。さらに好ましくは炭素数3以上8以下の直鎖状アルコキシ基であり、ブトキシ基、またはヘキシルオキシ基が好ましい。
【0034】
R2における炭素数1以上20以下の分岐状アルキル基として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、1−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、tert-オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、2―メチルオクチル基、2,2−ジメチルへプチル基、2,2−ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、2,6−ジメチル−4−へプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、1−メチルデシル基、2−メチルデシル基、2,2−ジメチルデシル基、2,3−ジメチルデシル基、2,2ジエチルデシル基、1−ヘキシルへプチル基、1−メチルヘキサデシル基、または1,1−ジメチルヘキサデシル基であり、好ましくは炭素数3以上12以下の分岐状アルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、tert-ブチル基、2−メチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2,2-ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、2−メチルデシル基、2,2-ジメチルデシル基、または2,3−ジメチルデシル基であり、好ましくは、tert-ブチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2,2-ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、または2,2−ジメチルデシル基である。さらに好ましくは炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基であり、tert-ブチル基、または2,2-ジメチルヘキシル基、が好ましい。
【0035】
R2における炭素数1以上20以下の分岐状アルコキシ基として具体的には、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、2−エチルブチルオキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、2,2−ジメチルヘキシルオキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2−ジメチルオクチルオキシ基、2,3−ジメチルオクチルオキシ基、2−メチルデシルオキシ基、2,2−ジメチルデシルオキシ基、2,3−ジメチルデシルオキシ基、2−メチルドデシル基、2−メチルテトラデシル基、2−メチルヘキサデシル基、または2−メチルオクタデシル基、好ましくは炭素数3以上12以下の分岐状アルコキシ基であり、具体的にはイソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、2,2-ジメチルヘキシルオキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2-ジメチルオクチルオキシ基、2,3−ジメチルオクチルオキシ基、2−メチルデシルオキシ基、2,2−ジメチルデシルオキシ基、または2,3−ジメチルデシルオキシ基であり、さらに好ましくは、tert-ブトキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2-ジメチルオクチルオキシ基、または2,3−ジメチルデシルオキシ基である。さらに好ましくは炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基であり、tert-ブトキシ基、またはイソプロポキシ基、が好ましい。
【0036】
特に、前記一般式(I)のR1が、炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基、または炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基であり、且つR2が、炭素数3以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基であることが好ましく、これによってハロゲン系の有機溶媒だけでなく、非ハロゲン系の有機溶媒にも溶解性が良好となる。
前記構造を有するチアゾロチアゾール誘導体の製造が容易になったり、精製が容易で高純度のものを容易に得やすく、また前記構造を有するチアゾロチアゾール誘導体を用いて、例えば電荷輸送材料を製造することが容易になる。
【0037】
なお、本実施形態において溶解とは、本実施形態のチアゾロチアゾール誘導体を有機溶剤に添加し、目視により結晶が確認できなくなった状態を指す。また、溶解性が良好であるとは、有機溶剤の沸点において溶解した状態を示す。
【0038】
本実施形態のチアゾロチアゾール誘導体を溶解する有機溶剤としては、本実施形態のチアゾロチアゾール誘導体を溶解するものであれば如何なるものでも使用する。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン、キシレン、メシチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の通常の有機溶剤、あるいは下記のハロゲン化有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いる。
【0039】
ハロゲン化有機溶剤としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子などのハロゲン原子を1個以上有する炭化水素系化合物、芳香族炭化水素系化合物であり、沸点が30℃以上300℃以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは沸点が50℃以上200℃以下の範囲であるハロゲン原子を1個以上有する炭化水素系化合物、芳香族炭化水素系化合物である。
【0040】
ハロゲン化有機溶剤の具体例としては、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロルエチレン、などのハロゲン化炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロメチルベンゼン、o−クロロトルエン、o−,p−ジクロロトルエン、トリクロロトルエン、などのハロゲン化芳香族炭化水素などである。
【0041】
一般式(I)で表されるチアゾロチアゾール誘導体は、例えば下記のようにして合成されるがこれに限定されるものではない。
【0042】
(1)チアゾロチアゾール部位に隣接するチオフェンの5位をハロゲン化した後、アルキル基またはアルコキシ基置換フェニルボロン酸またはピナコールボロン類と前述したハロゲン体との鈴木反応により合成される。
【0043】
(2)アルキルまたはアルコキシ基置換臭化フェニルとチオフェンボロン酸との鈴木反応からアルキルまたはアルコキシ基置換フェニルチオフェンを合成した後、このアルキルまたはアルコキシ基置換フェニルチオフェンチオフェンの5位をホルミル化し、次いでルベアン酸等との環化反応により合成される。
【0044】
(2)の合成法は例えば、特開平2006−206503号公報に記載されている方法であるが、この方法を用いた場合、反応中間化合物であるホルミル化合物の安定性が乏しく、特に高温、具体的には、200℃以上の温度条件で反応中に分解してしまうこと、さらに反応生成物の溶解性が乏しいために精製が困難となる。また、反応中間化合物であるホルミル化合物が反応の際に分解してしまうために、原料回収が困難となることや、低収率で行う反応であることからコストアップにもつながる。
【0045】
一方、(1)の反応では、先にチオフェン含有チアゾロチアゾール骨格を形成した後、チオフェンの5位をハロゲン化して、さらにアルキルまたはアルコキシフェニルボロン酸またはピナコールボロン類との鈴木反応から末端の置換基を導入する手法により、各段階において、精製され、化学的に安定であり、反応の収率も良い。
【0046】
チアゾロチアゾール誘導体の製造方法について具体的に説明する。実施の形態においては、例えば、J.R.Johnson,D.H.Rotenberg,and R.Ketcham,J.Am.Chem.Soc.,vol92,4046 (1970)に記載されている方法のようにルベアン酸と下記一般式(II−1)で示されるチオフェンアルデヒド誘導体とを環化反応させることにより、チオフェン含有チアゾロチアゾール〔下記一般式(III−1)〕を合成し、次いで、公知の方法であるN-ブロモスクシンイミド(以下、NBSと称する。)などによりハロゲン化して下記一般式(IV−1)で示されるハロゲン化合物を合成し、さらにこれを下記一般式(V−1)で示される置換フェニルボロン酸または置換フェニルピナコールボロンとパラジウム触媒による鈴木反応でカップリング反応を行うことにより、チアゾロチアゾール誘導体〔一般式(I)〕を合成する。
【0047】
【化5】
【0048】
一般式(II−1)におけるR2、および一般式(III−1)におけるR2は、いずれも一般式(I)のR2と同義である。
【0049】
【化6】
【0050】
一般式(IV−1)において、R2は上記一般式(I)のR2と同義である。また、Xは臭素原子またはヨウ素原子を表す。
【0051】
【化7】
【0052】
一般式(V−1)において、R1は上記一般式(I−1)のR1と同義である。また、Gはボロン酸基、もしくはホウ酸エステル基類を表す。
【0053】
ホウ酸エステル基類としては、例えば以下に示すものが試薬の入手性の観点から好適に用いられる。
ホウ酸ピナコレートエステル基、ホウ酸1,3-プロパンジオールエステル基、ホウ酸ネオペンチルグリコールエステル基が挙げられる。
【0054】
【化8】
【0055】
以下、具体的化合物のいくつかについて合成例を示すが、他の化合物についても合成される。また、合成法はこれらに限定されるものではない。
目的物の同定には、1H−NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3、VARIAN株式会社製、UNITY−300、300MHz)と、IRスペクトル(KBr錠剤法にてフーリェ変換赤外分光光度計(株式会社 堀場製作所、FT−730、分解能4cm−1))を用いた。
【0056】
本実施形態の具体的化合物を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0057】
【化9】
【0058】
【化10】
【0059】
【化11】
【0060】
【化12】
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
〔実施例1〕
<化合物III−aの合成>
200ml三口フラスコにルベアン酸5.3g(45mmol)、2−チオフェンアルデヒド20g(180mmol)を加え、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと称する)100mlに溶解させた。これを150℃で5時間磁気撹拌した後、25℃まで冷却した。この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。乾燥後結晶をテトラヒドロフラン(以下、THFと称する) 100mlに溶解させ、シリカゲルショートカラムを行うことでIII−aを6.4g得た。1H−NMR、およびIRにより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0063】
【化13】
【0064】
<化合物IV−aの合成>
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに化合物III−aを4.5g(15mmol)、N−ブロモコハク酸イミド(以下、NBSと称する)8.0g(45mmol)を入れ、DMF 200mlに溶解させた。これを60℃で7時間磁気撹拌して反応を完結させた。25℃まで冷却後、この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。60℃で15時間真空乾燥した後、結晶をN−メチルピロリドン(以下、NMPと称する。)から2度再結晶して黄色結晶の化合物IV−a 3.3gを得た。1H−NMR、IRにより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0065】
【化14】
【0066】
<例示化合物1の合成>
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.23g(0.20mmol)をNMP 100mlに溶解させた。これに化合物IV−a 1.84g(4.0mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液8.0ml、4−n−ブチルフェニルボロン酸1.56g(8.8mmol)の順に加え、オイルバス220℃で5時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水1Lの入った2Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール100ml、トルエン100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶にNMP 150ml加え再結晶して、さらに昇華精製することによりオレンジ色結晶の例示化合物1を1.0g得た。
得られた例示化合物1の1H−NMRスペクトルは図2に、IRスペクトルは図1に示した。
【0067】
【化15】
【0068】
〔実施例2〕
<例示化合物11の合成>
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.14g(0.12mmol)をNMP 100mlに溶解させた。これに化合物IV−a 1.85g(4.0mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液8.0ml、4−n−ブトキシフェニルボロン酸1.71g(8.8mmol)の順に加え、オイルバス220℃で4時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、20分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール200ml、トルエン250mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶にNMPを150ml加え再結晶して、さらに昇華精製することでオレンジ色結晶の例示化合物11を1.0g得た。
得られた例示化合物11の1H−NMRスペクトルを図4に、またIRスペクトルを図3に示した。
【0069】
【化16】
【0070】
〔実施例3〕
<例示化合物15の合成>
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.11g(0.10mmol)をNMP 80mlに溶解させた。これに化合物IV−a 1.39g(3.0mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液6.0ml、4−tert−ブチルフェニルボロン酸1.18g(6.6mmol)の順に加え、オイルバス220℃で5時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水500mlが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水500mlで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール100ml、ヘキサン100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶にモノクロロベンゼン400mlを加え再結晶して、さらに昇華精製することでオレンジ色結晶の例示化合物15を1.0g得た。
得られた例示化合物15の1H−NMRスペクトルは図6に、またIRスペクトルは図5に示した。
【0071】
【化17】
【0072】
〔実施例4〕
<化合物III−bの合成>
1L三口フラスコにルベアン酸18g(150mmol)、3−メチルチオフェン−2−アルデヒド75g(600mmol)を加え、DMF 350mlに溶解させた。これをオイルバス150℃で5時間磁気撹拌した後、25℃まで冷却した。この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。べたついた黒色の結晶にトルエン100ml、メタノール200mlを加え10分間超音波磁気撹拌することで洗浄した。洗浄した結晶を吸引ろ過によりろ取して粗結晶を34g得た。さらに、メタノール200mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。乾燥後結晶をモノクロロベンゼン500mlに溶解させ、シリカゲルショートカラムを行うことで化合物III−bを19g得た。1H−NMR、IRより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0073】
【化18】
【0074】
<化合物IV−bの合成>
窒素雰囲気下、1L三口フラスコに化合物III−bを19g(57mmol)、NBS 23g(129mmol)を入れ、DMF 500mlに溶解させた。これを60℃で4時間磁気撹拌して反応を完結させた。25℃まで冷却後、この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、30分間10℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1L、メタノール200mlで洗浄した。60℃で15時間真空乾燥した後、結晶をNMP 300mlで2度再結晶して黄色結晶の化合物IV−bを21g得た。1H−NMR、IRより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0075】
【化19】
【0076】
<例示化合物7の合成>
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.16g(0.14mmol)をNMP 100mlに溶解させた。これに化合物IV−b 2.2g(4.5mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液9.0ml、4−n−ブチルフェニルボロン酸1.78g(10mmol)の順に加え、オイルバス220℃で6時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水500mlが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水300mlで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール200ml、ヘキサン100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶をTHF200ml/トルエン100mlに加熱溶解させ、シリカゲルショートカラムを行った。次いでトルエン300mlで再結晶してオレンジ色結晶の例示化合物7を0.70g得た。
得られた例示化合物7の1H−NMRスペクトルを図8に、またIRスペクトルを図7に示した。
【0077】
【化20】
【0078】
〔実施例5〕
窒素雰囲気下、−80℃に冷却された100ml三口フラスコへ1.6Mのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液を10ml(16mmol)加えた。これを−80℃に冷却後、滴下漏斗より−60℃を保ったままTHF10mlを滴下した。次いで、滴下漏斗より−60℃を保ったまま1−ブロモ−4−n−オクチルベンゼン3.1g(16mmol)を滴下した。これを−40℃で1時間撹拌した後、ホウ酸トリメチル2.3g(22mmol)/THF(10ml)溶液を滴下漏斗より−40℃を保ったまま加えた。その後、ゆっくり2時間かけて10℃まで昇温した後、0℃で10%HCl水溶液50mlを加え、トルエン100mlで抽出した。これを純水100mlで3回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。トルエンを減圧下、留去して残留物を3.3g得た。さらにこの残留物を純水100ml/ヘキサン100mlの混合液で洗浄することで4−n−オクチルフェニルボロン酸である化合物V−aを2.0g得た。1H−NMR、IRより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0079】
【化21】
【0080】
<例示化合物4の合成>
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.11g(0.10mmol)をNMP 100mlに溶解させた。これに化合物IV−a 1.4g(3.0mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液9.0ml、4−n−オクチルフェニルボロン酸(化合物V−a) 1.4g(6.0mmol)の順に加え、オイルバス200℃で5時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、20分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水300mlで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール200ml、トルエン100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶をNMP200mlを用いて再結晶して次いで昇華精製を行うことで、オレンジ色結晶の例示化合物4を0.60g得た。
得られた例示化合物4の1H−NMRスペクトルを図10に、またIRスペクトルを図9に示した。
【0081】
【化22】
【0082】
〔実施例6〕
窒素雰囲気下、−80℃に冷却された200ml三口フラスコへ1.6Mのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液を20ml(32mmol)加えた。これを−80℃に冷却後、滴下漏斗より−60℃を保ったままTHF20ml滴下した。次いで、滴下漏斗より−60℃を保ったまま1−ブロモ−4−n−ドデシルベンゼン10g(32mmol)を滴下した。これを−40℃で1時間撹拌した後、ホウ酸トリメチル4.5g(43mmol)/THF(10ml)溶液を滴下漏斗より−40℃に保ったまま加えた。その後、ゆっくり2時間かけて10℃まで昇温した後、0℃で10%HCl水溶液50mlを加え、トルエン100mlで抽出した。これを純水100mlで3回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。トルエンを減圧下、留去して残留物を得た。さらにこの残留物を純水100ml/ヘキサン100mlの混合液で洗浄することで4−n−ドデシルフェニルボロン酸である化合物V−bを1.8g得た。1H−NMR、IRより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0083】
【化23】
【0084】
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.10g(0.080mmol)をNMP 100mlに溶解させた。これに化合物IV−a 1.2g(2.5mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液6.0ml、4−n−ドデシルフェニルボロン酸である化合物V−b 1.5g(5.0mmol)の順に加え、オイルバス220℃で5時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水400mlが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水300mlで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール200ml、トルエン100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶をNMP200mlから2回再結晶して次いで昇華精製を行うことで、オレンジ色結晶の例示化合物5を0.13g得た。
得られた例示化合物5の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図11に示す。また、NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3)を図12に示す。
【0085】
【化24】
【0086】
〔実施例7〕
<化合物VI−aの合成>
500ml四口フラスコに3−n−オクチルチオフェン60g(305mmol)、DMF100mlに溶解させた。この溶液を5℃まで冷却し、NBS 55g(310mmol)/DMF50mlに予め溶解させた溶液を等圧滴下ロートより5分かけて滴下した。その後、25℃で1時間磁気撹拌した後、純水500mlが入った1Lビーカーに加え、25℃で20分磁気撹拌した。この溶液へ酢酸エチル300mlを加え、25℃で10分磁気撹拌した。酢酸エチル層を分液し、純水300mlで3回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過、減圧下溶媒留去して黄色油状物83gを得た。これを真空蒸留(1〜3mmHg、120〜130℃)して淡黄色油状物76g(収率93%)を得た。
【0087】
【化25】
【0088】
<化合物VI−bの合成>
充分乾燥させた500ml四口フラスコに窒素雰囲気下、マグネシウム9.1g(374mmol)、THF100mlを入れた。ここに、ヨウ素粒状物を3粒入れ、マグネシウム表面を活性化させた。続いて、60℃まで加熱し、化合物VI-a100g(363mmol)/THF50ml溶液を反応の進行と共に滴下した。滴下終了後、マグネシウムがなくなるまで還流撹拌し、40℃まで冷却した。この溶液へ、あらかじめ水素化カルシウムで乾燥させたDMF30mlを10分かけて滴下し、その後30分、50℃で磁気撹拌した。反応終了後5℃まで冷却し、10%塩酸400mlと、トルエン300mlとが入っている1Lビーカー中に入れた。これを25℃で30分磁気撹拌した後、トルエン層を分液して純水300mlで3回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、減圧下溶媒を留去して、赤色油状物94gを得た。これを真空蒸留(1〜3mmHg、140〜150℃)して黄色油状物52g(収率64%)を得た。1H−NMR、IRにより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0089】
【化26】
【0090】
<化合物VI−cの合成>
300ml四口フラスコにルベアン酸8.0g(67mmol)、化合物VI−b 60g(267mmol)を加え、ジメチルホルムアミド60mlに溶解させた。これを150℃で4時間磁気撹拌した後、25℃まで冷却した。この反応液を純水300mlの入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。さらにトルエン300mlを加え10分磁気撹拌した後、トルエン層を分液して純水300mlで3回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、減圧下溶媒を留去して、茶色油状物を得た。これに、メタノール200mlを加えデカンテーションにより、原料を除いた。残渣にヘキサン200mlを加え、5℃まで冷却することで結晶化させた。これを吸引ろ過でろ取して、その残渣をメタノール100mlでかけ洗いして、オレンジ色結晶12g(収率38%)を得た。1H−NMR、IRにより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0091】
【化27】
【0092】
<化合物VI−dの合成>
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに化合物VI−cを12g(23mmol)、NBS 8.9g(50mmol)を入れ、DMF 200mlに溶解させた。これを40℃で1時間磁気撹拌して反応を完結させた。25℃まで冷却後、この反応液を純水500mlの入った2Lビーカーに加え、30分5℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。次いでメタノール100mlで洗浄した後、60℃で15時間真空乾燥させオレンジ色結晶12.2g(収率76%)を得た。1H−NMR、IRにより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0093】
【化28】
【0094】
<例示化合物25の合成>
窒素雰囲気下、200ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.10g(0.090mmol)をTHF60mlに溶解させた。これに化合物VI−d2.06g(3.0mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液7.0ml、4−n−ブチルフェニルボロン酸1.18g(6.6mmol)の順に加え、8時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を5%塩酸水溶液80mlと、トルエン200mlとが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。トルエン層を分液して、純水200mlで3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過、減圧下溶媒を留去して赤色油状物2.8gを得た。シリカゲルろ過カラムでパラジウムを除いた後、メタノール50ml、ヘキサン20mlで洗浄、次いでヘキサン100mlで再結晶した。15時間真空乾燥させた。オレンジ色結晶の例示化合物25を1.8g(収率:78%)得た。
得られた例示化合物25の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図13に示す。また、NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3)を図14に示す。
【0095】
【化29】
【0096】
〔実施例8〕
<例示化合物27の合成>
窒素雰囲気下、200ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.090g(0.080mmol)をTHF50mlに溶解させた。これに化合物VI−d 1.72g(2.5mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液6.0ml、V−a 1.23g(5.3mmol)の順に加え、11時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を5%塩酸水溶液100mlと、トルエン200mlとが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。トルエン層を分液して、純水200mlで3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過後、減圧下溶媒を留去して赤色固体物2.8gを得た。トルエンとヘキサンとの混合溶剤(混合質量比1:5)からシリカゲルカラム精製し、次いでエタノールとヘキサンとの混合溶剤(混合質量比1:1)から再結晶して、15時間真空乾燥させることで、オレンジ色結晶の例示化合物27を0.7g(収率:30%)得た。
得られた例示化合物27の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図15示す。また、NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3)を図16に示す。
【0097】
【化30】
【0098】
〔実施例9〕
<例示化合物28の合成>
窒素雰囲気下、200ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.090g(0.080mmol)をTHF50mlに溶解させた。これに化合物VI−d 1.72g(2.5mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液6.0ml、V−b 1.52g(5.3mmol)の順に加え、12時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を5%塩酸水溶液100mlと、トルエン200mlとが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。トルエン層を分液して、純水200mlで3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過後、減圧下溶媒を留去してオレンジ色固体物3.1gを得た。トルエン/ヘキサンからシリカゲルカラム、次いでエタノール/ヘキサンから再結晶して、15時間真空乾燥させることで、オレンジ色結晶の例示化合物28を1.2g(収率:47%)得た。
得られた例示化合物28の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図17に示す。また、NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3)を図18に示す。
【0099】
【化31】
【0100】
〔実施例10〕
<例示化合物8の合成>
窒素雰囲気下、200ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.090g(0.080mmol)をTHF50mlに溶解させた。これに化合物IV−b 1.23g(2.5mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液6.0ml、V−a 1.24g(5.3mmol)の順に加え、12時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を5%塩酸水溶液100mlと、トルエン200mlとが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。トルエン層を分液して、純水200mlで3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過後、減圧下溶媒を留去してオレンジ色固体物1.7gを得た。トルエンとTHFとの混合溶剤(混合質量比1:2)からシリカゲルカラム精製し、ついで、トルエンから再結晶して、15時間真空乾燥させることで、オレンジ色結晶の例示化合物8を1.2g(収率:70%)得た。
得られた例示化合物8の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図19に示す。また、NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3)を図20に示す。
【0101】
【化32】
【0102】
<チアゾロチアゾール誘導体の溶解性評価>
実施例1から10で得られたチアゾロチアゾール誘導体、および比較例1として前記化学式3の化合物における各種溶媒に対する溶解性を表1に示す。
溶解性試験については溶媒1ml中に例示化合物10mg(1.0質量%)を溶解し、25℃で溶解しない場合、各種溶媒(ジクロロベンゼン、モノクロロベンゼン、クロロホルム、THF、トルエン、キシレン)における沸点で加熱をし、その状況を目視により観察することで行った。
【0103】
−評価基準−
◎ :加熱無しで溶解
○ :加熱して溶解
△ :加熱して一部のみ溶解
× :加熱しても一部溶け残る
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1から10のチアゾロチアゾール誘導体は、比較例1の化学式3の化合物に比べ溶解性に優れていることがわかる。このことから有機感光体や有機電界発光素子、有機トランジスタ、有機光メモリー等の有機電子デバイスに用いられる材料として有用な化合物であることが判る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、チアゾロチアゾール誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機感光体や有機電界発光素子、有機トランジスタ、有機光メモリー等の有機電子デバイスでは、発生した電荷を効率良く受け取り、且つその電荷を速く移動させることが高機能化や高寿命化に繋がることから、電荷輸送材料が重要な材料となっている。
電荷輸送材料は、その機能の観点から、電荷移動度や電荷注入性などの特性に着目して開発が進められている。
【0003】
また、電荷輸送材料には、溶解性、成膜性、耐熱性等、種々の特性が要求される。例えば、有機電子写真感光体においては、溶解性が高く残留電位が小さいことが望まれる。有機電界発光素子においては、より高輝度の発光を有し、繰り返し使用時での安定性に優れることが望まれている(例えば、非特許文献1参照)。その他、合成が容易な電荷輸送材料であることも重要であり、また物性をコントロールし易いことも望まれている。
これらの要求を満たすために、置換基を導入して物性をコントロールすることが一般的に行われている。
【0004】
電子デバイスの電荷輸送材料としては、具体的には、例えばポリビニルカルバゾール(PVK)に代表される電荷輸送性高分子や、N,N−ジ(m−トリル)N,N’−ジフェニルベンジジン、1,1−ビス[N,N−ジ(p−トリル)アミノフェニル]シクロヘキサン或いは4−(N,N−ジフェニル)アミノベンズアルデヒドーN,N−ジフェニルヒドラゾン化合物等のジアミノ化合物や、ジベンゾチオフェン(例えば、特許文献1参照。)等の低分子化合物が知られている。
【0005】
また、チアゾロチアゾール誘導体の公知例として、例えば非特許文献2、3には下記化学式2から4で表されるチアゾロチアゾール誘導体が知られており、下記化学式3、および4で表されるチアゾロチアゾール誘導体を蒸着法によって成膜したものである。
【0006】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−126403号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】電子情報通信学会技術研究報告、OME95−54(1995)
【非特許文献2】S.Ando,J.Nishida,et al.,J.Mater.Chem.,vol.14,p.1787-1790 (2004).
【非特許文献3】S.Ando,J.Nishida,et al.,Chemistry Letters,vol.33,No.9,p. 1170-1171(2004).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、ハロゲン系の有機溶媒に対する良好な溶解性を有する新規なチアゾロチアゾール誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の本発明により達成される。即ち、
請求項1にかかる発明は、下記一般式(I)で表されるチアゾロチアゾール誘導体である。
【0011】
【化2】
【0012】
一般式(I)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表す。
【0013】
請求項2にかかる発明は、前記一般式(I)のR1が、炭素数が3以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が3以上12以下の分岐状の置換基であり、R2が、炭素数が1以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が2以上12以下の分岐状の置換基である請求項1に記載のチアゾロチアゾール誘導体である。
【0014】
請求項3にかかる発明は、前記一般式(I)のR1が、それぞれ独立に、炭素数3以上12以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上12以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上12以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上12以下の分岐状アルコキシ基である請求項1または請求項2に記載のチアゾロチアゾール誘導体である。
【0015】
請求項4にかかる発明は、前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体である。
【0016】
請求項5にかかる発明は、前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、炭素数1以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体である。
【0017】
請求項6にかかる発明は、前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、炭素数3以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、ハロゲン系の有機溶媒に対する溶解性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
請求項2に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、ハロゲン系の有機溶媒に対する溶解性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
請求項3に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、耐熱性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
請求項4に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、ハロゲン系の有機溶媒に対する溶解性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
請求項5に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、ハロゲン系の有機溶媒に対する溶解性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
請求項6に係る発明によれば、上記化学式3で示されるチアゾロチアゾール誘導体に比べ、非ハロゲン系の有機溶媒に対する溶解性に優れたチアゾロチアゾール誘導体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1における赤外吸収スペクトルを表す。
【図2】実施例1における1H−NMRスペクトルを表す。
【図3】実施例2における赤外吸収スペクトルを表す。
【図4】実施例2における1H−NMRスペクトルを表す。
【図5】実施例3における赤外吸収スペクトルを表す。
【図6】実施例3における1H−NMRスペクトルを表す。
【図7】実施例4における赤外吸収スペクトルを表す。
【図8】実施例4における1H−NMRスペクトルを表す。
【図9】実施例5における赤外吸収スペクトルを表す。
【図10】実施例5における1H−NMRスペクトルを表す。
【図11】実施例6における赤外吸収スペクトルを表す。
【図12】実施例6における1H−NMRスペクトルを表す。
【図13】実施例7における赤外吸収スペクトルを表す。
【図14】実施例7における1H−NMRスペクトルを表す。
【図15】実施例8における赤外吸収スペクトルを表す。
【図16】実施例8における1H−NMRスペクトルを表す。
【図17】実施例9における赤外吸収スペクトルを表す。
【図18】実施例9における1H−NMRスペクトルを表す。
【図19】実施例10における赤外吸収スペクトルを表す。
【図20】実施例10における1H−NMRスペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態のチアゾロチアゾール誘導体は、下記一般式(I)で表される。
【0021】
【化3】
【0022】
一般式(I)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表す。
【0023】
なかでも、前記一般式(I)のR1が、炭素数が3以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が3以上12以下の分岐状の置換基であり、R2が、炭素数が1以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が2以上12以下の分岐状の置換基である態様が好適である。
ここで、炭素数が3以上12以下の直鎖状の置換基としては、炭素数3以上12以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上12以下の直鎖状アルコキシ基が挙げられ、また、主鎖部分を構成する炭素数が3以上12以下の分岐状の置換基としては、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基であって、アルキル基、もしくはアルコキシ基の分岐鎖を除いた直鎖状の主鎖部分における炭素数が2以上12以下である置換基が挙げられる。
【0024】
本実施形態のチアゾロチアゾール誘導体は、分子構造的に芳香環の平面性が高くπ電子の共役が広がった状態によって電荷輸送性に優れた性能を発揮しているものと考えられる。
前記一般式(I)で表される化合物は、チオフェン環に隣接する置換基をフェニル基にすることにより、溶解性が向上する。これは末端のフェニル置換基とチオフェン環の結合がフリーに回転することによるものと推測される。また、R1にアルキル基、またはアルコキシ基を導入することで有機溶媒との疎水性相互作用が増し、有機溶媒への溶解性を向上するものと考えられる。さらに、R2にアルキル基、またはアルコキシ基を導入することにより有機溶媒との疎水性相互作用が増し、溶解性を大幅に向上するものと考えられる。また、イオン化ポテンシャルを小さくするなどの効果もある。また、フェニル基の置換基としてアルキル基、またはアルコキシ基を導入することにより分子量が増加し、良好な耐熱性を呈するものと推測される。
特にチアゾロチアゾール誘導体である一般式(I)の置換基R1およびR2の長さを、炭素数が20以下、好ましくは12以下、さらにR2にあっては好ましくは8以下のアルキル基、またはアルコキシ基とすることによって、置換基同志の絡まり合いを抑えられ、これによっても溶解性が向上したものと考えられる。
しかし、本実施形態は上記した推測によって限定されることはない。
【0025】
なお、本実施形態の化合物ではない下記化学式3で示されるチアゾロチアゾール化合物は、結晶で得られるが、有機溶媒に溶解しにくいために塗布溶液を作製すると結晶が析出し、塗布溶液は経時安定性が不良であり、使用しにくい。また、化学式3で示されるチアゾロチアゾール化合物を用いて製膜したときの膜厚にむらが生じるが、一般式(I)で表されるチアゾロチアゾール誘導体を用いた場合には、塗布による膜厚むらの発生が抑制される。
【0026】
【化4】
【0027】
以下、本実施形態の一般式(I)について詳細に説明する。
フェニル基に対するR1の結合部位として好ましくは、3位または4位であり、さらに好ましくは4位である。
【0028】
R1における炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基として具体的には、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、またはイコシル基であり、好ましくは炭素数3以上12以下の直鎖状アルキル基であり、具体的にはプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、またはドデシル基であり、好ましくは、ブチル基、ヘキシル基、n-オクチル基、またはドデシル基である。
【0029】
R1における炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、またはイコシルオキシ基であり、好ましくは炭素数3以上12以下の直鎖状アルコキシ基であり、具体的にはプロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクトキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、またはドデシルオキシ基であり、好ましくは、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクトキシ基、またはドデシルオキシ基である。
【0030】
R1における炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、1−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、tert-オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、2―メチルオクチル基、2,2−ジメチルへプチル基、2,2−ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、2,6−ジメチル−4−へプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、1−メチルデシル基、2−メチルデシル基、2,2−ジメチルデシル基、2,3−ジメチルデシル基、2,2ジエチルデシル基、1−ヘキシルへプチル基、1−メチルヘキサデシル基、または1,1−ジメチルヘキサデシル基であり、好ましくは炭素数3以上12以下の分岐状アルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、tert-ブチル基、2−メチル−ヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2,2-ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、2−メチルデシル基、2,2-ジメチルデシル基、または2,3−ジメチルデシル基であり、好ましくは、tert-ブチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2,2-ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、または2,2−ジメチルデシル基である。
【0031】
R1における炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基として具体的には、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、2−エチルブチルオキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、2,2−ジメチルヘキシルオキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2−ジメチルオクチルオキシ基、2,3−ジメチルオクチルオキシ基、2−メチルデシルオキシ基、2,2−ジメチルデシルオキシ基、2,3−ジメチルデシルオキシ基、2−メチルドデシル基、2−メチルテトラデシル基、2−メチルヘキサデシル基、または2−メチルオクタデシル基、好ましくは炭素数3以上12以下の分岐状アルコキシ基であり、具体的にはイソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、2,2-ジメチルヘキシルオキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2-ジメチルオクチルオキシ基、2,3−ジメチルオクチルオキシ基、2−メチルデシルオキシ基、2,2ジメチルデシルオキシ基、または2,3−ジメチルデシルオキシ基であり、さらに好ましくは、tert-ブトキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2-ジメチルオクチルオキシ基、または2,3−ジメチルデシルオキシ基である。
【0032】
また、R2における炭素数1以上20以下の直鎖状アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、またはイコシル基であり、好ましくは炭素数1以上8以下の直鎖状アルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、またはヘキシル基、オクチル基であり、さらに好ましくは、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、またはオクチル基である。さらに好ましくはR2における炭素数3以上8以下の直鎖状アルキル基であり、プロピル基、ブチル基、またはヘキシル基、オクチル基が好ましい。
【0033】
R2における炭素数1以上20以下の直鎖状アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、またはイコシルオキシ基であり、好ましくは炭素数1以上8以下の直鎖状アルコキシ基であり、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、またはオクチルオキシ基であり、さらに好ましくは、メトキシ基、ブトキシ基、またはヘキシルオキシ基である。さらに好ましくは炭素数3以上8以下の直鎖状アルコキシ基であり、ブトキシ基、またはヘキシルオキシ基が好ましい。
【0034】
R2における炭素数1以上20以下の分岐状アルキル基として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、1−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、tert-オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、2,2−ジメチルヘキシル基、2―メチルオクチル基、2,2−ジメチルへプチル基、2,2−ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、2,6−ジメチル−4−へプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、1−メチルデシル基、2−メチルデシル基、2,2−ジメチルデシル基、2,3−ジメチルデシル基、2,2ジエチルデシル基、1−ヘキシルへプチル基、1−メチルヘキサデシル基、または1,1−ジメチルヘキサデシル基であり、好ましくは炭素数3以上12以下の分岐状アルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、tert-ブチル基、2−メチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2,2-ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、2−メチルデシル基、2,2-ジメチルデシル基、または2,3−ジメチルデシル基であり、好ましくは、tert-ブチル基、2,2-ジメチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2,2-ジメチルオクチル基、2,3−ジメチルオクチル基、または2,2−ジメチルデシル基である。さらに好ましくは炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基であり、tert-ブチル基、または2,2-ジメチルヘキシル基、が好ましい。
【0035】
R2における炭素数1以上20以下の分岐状アルコキシ基として具体的には、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、2−エチルブチルオキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、2,2−ジメチルヘキシルオキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2−ジメチルオクチルオキシ基、2,3−ジメチルオクチルオキシ基、2−メチルデシルオキシ基、2,2−ジメチルデシルオキシ基、2,3−ジメチルデシルオキシ基、2−メチルドデシル基、2−メチルテトラデシル基、2−メチルヘキサデシル基、または2−メチルオクタデシル基、好ましくは炭素数3以上12以下の分岐状アルコキシ基であり、具体的にはイソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、2,2-ジメチルヘキシルオキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2-ジメチルオクチルオキシ基、2,3−ジメチルオクチルオキシ基、2−メチルデシルオキシ基、2,2−ジメチルデシルオキシ基、または2,3−ジメチルデシルオキシ基であり、さらに好ましくは、tert-ブトキシ基、2−メチルオクチルオキシ基、2,2-ジメチルオクチルオキシ基、または2,3−ジメチルデシルオキシ基である。さらに好ましくは炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基であり、tert-ブトキシ基、またはイソプロポキシ基、が好ましい。
【0036】
特に、前記一般式(I)のR1が、炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基、または炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基であり、且つR2が、炭素数3以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基であることが好ましく、これによってハロゲン系の有機溶媒だけでなく、非ハロゲン系の有機溶媒にも溶解性が良好となる。
前記構造を有するチアゾロチアゾール誘導体の製造が容易になったり、精製が容易で高純度のものを容易に得やすく、また前記構造を有するチアゾロチアゾール誘導体を用いて、例えば電荷輸送材料を製造することが容易になる。
【0037】
なお、本実施形態において溶解とは、本実施形態のチアゾロチアゾール誘導体を有機溶剤に添加し、目視により結晶が確認できなくなった状態を指す。また、溶解性が良好であるとは、有機溶剤の沸点において溶解した状態を示す。
【0038】
本実施形態のチアゾロチアゾール誘導体を溶解する有機溶剤としては、本実施形態のチアゾロチアゾール誘導体を溶解するものであれば如何なるものでも使用する。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン、キシレン、メシチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の通常の有機溶剤、あるいは下記のハロゲン化有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いる。
【0039】
ハロゲン化有機溶剤としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子などのハロゲン原子を1個以上有する炭化水素系化合物、芳香族炭化水素系化合物であり、沸点が30℃以上300℃以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは沸点が50℃以上200℃以下の範囲であるハロゲン原子を1個以上有する炭化水素系化合物、芳香族炭化水素系化合物である。
【0040】
ハロゲン化有機溶剤の具体例としては、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロルエチレン、などのハロゲン化炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロメチルベンゼン、o−クロロトルエン、o−,p−ジクロロトルエン、トリクロロトルエン、などのハロゲン化芳香族炭化水素などである。
【0041】
一般式(I)で表されるチアゾロチアゾール誘導体は、例えば下記のようにして合成されるがこれに限定されるものではない。
【0042】
(1)チアゾロチアゾール部位に隣接するチオフェンの5位をハロゲン化した後、アルキル基またはアルコキシ基置換フェニルボロン酸またはピナコールボロン類と前述したハロゲン体との鈴木反応により合成される。
【0043】
(2)アルキルまたはアルコキシ基置換臭化フェニルとチオフェンボロン酸との鈴木反応からアルキルまたはアルコキシ基置換フェニルチオフェンを合成した後、このアルキルまたはアルコキシ基置換フェニルチオフェンチオフェンの5位をホルミル化し、次いでルベアン酸等との環化反応により合成される。
【0044】
(2)の合成法は例えば、特開平2006−206503号公報に記載されている方法であるが、この方法を用いた場合、反応中間化合物であるホルミル化合物の安定性が乏しく、特に高温、具体的には、200℃以上の温度条件で反応中に分解してしまうこと、さらに反応生成物の溶解性が乏しいために精製が困難となる。また、反応中間化合物であるホルミル化合物が反応の際に分解してしまうために、原料回収が困難となることや、低収率で行う反応であることからコストアップにもつながる。
【0045】
一方、(1)の反応では、先にチオフェン含有チアゾロチアゾール骨格を形成した後、チオフェンの5位をハロゲン化して、さらにアルキルまたはアルコキシフェニルボロン酸またはピナコールボロン類との鈴木反応から末端の置換基を導入する手法により、各段階において、精製され、化学的に安定であり、反応の収率も良い。
【0046】
チアゾロチアゾール誘導体の製造方法について具体的に説明する。実施の形態においては、例えば、J.R.Johnson,D.H.Rotenberg,and R.Ketcham,J.Am.Chem.Soc.,vol92,4046 (1970)に記載されている方法のようにルベアン酸と下記一般式(II−1)で示されるチオフェンアルデヒド誘導体とを環化反応させることにより、チオフェン含有チアゾロチアゾール〔下記一般式(III−1)〕を合成し、次いで、公知の方法であるN-ブロモスクシンイミド(以下、NBSと称する。)などによりハロゲン化して下記一般式(IV−1)で示されるハロゲン化合物を合成し、さらにこれを下記一般式(V−1)で示される置換フェニルボロン酸または置換フェニルピナコールボロンとパラジウム触媒による鈴木反応でカップリング反応を行うことにより、チアゾロチアゾール誘導体〔一般式(I)〕を合成する。
【0047】
【化5】
【0048】
一般式(II−1)におけるR2、および一般式(III−1)におけるR2は、いずれも一般式(I)のR2と同義である。
【0049】
【化6】
【0050】
一般式(IV−1)において、R2は上記一般式(I)のR2と同義である。また、Xは臭素原子またはヨウ素原子を表す。
【0051】
【化7】
【0052】
一般式(V−1)において、R1は上記一般式(I−1)のR1と同義である。また、Gはボロン酸基、もしくはホウ酸エステル基類を表す。
【0053】
ホウ酸エステル基類としては、例えば以下に示すものが試薬の入手性の観点から好適に用いられる。
ホウ酸ピナコレートエステル基、ホウ酸1,3-プロパンジオールエステル基、ホウ酸ネオペンチルグリコールエステル基が挙げられる。
【0054】
【化8】
【0055】
以下、具体的化合物のいくつかについて合成例を示すが、他の化合物についても合成される。また、合成法はこれらに限定されるものではない。
目的物の同定には、1H−NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3、VARIAN株式会社製、UNITY−300、300MHz)と、IRスペクトル(KBr錠剤法にてフーリェ変換赤外分光光度計(株式会社 堀場製作所、FT−730、分解能4cm−1))を用いた。
【0056】
本実施形態の具体的化合物を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0057】
【化9】
【0058】
【化10】
【0059】
【化11】
【0060】
【化12】
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
〔実施例1〕
<化合物III−aの合成>
200ml三口フラスコにルベアン酸5.3g(45mmol)、2−チオフェンアルデヒド20g(180mmol)を加え、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと称する)100mlに溶解させた。これを150℃で5時間磁気撹拌した後、25℃まで冷却した。この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。乾燥後結晶をテトラヒドロフラン(以下、THFと称する) 100mlに溶解させ、シリカゲルショートカラムを行うことでIII−aを6.4g得た。1H−NMR、およびIRにより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0063】
【化13】
【0064】
<化合物IV−aの合成>
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに化合物III−aを4.5g(15mmol)、N−ブロモコハク酸イミド(以下、NBSと称する)8.0g(45mmol)を入れ、DMF 200mlに溶解させた。これを60℃で7時間磁気撹拌して反応を完結させた。25℃まで冷却後、この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。60℃で15時間真空乾燥した後、結晶をN−メチルピロリドン(以下、NMPと称する。)から2度再結晶して黄色結晶の化合物IV−a 3.3gを得た。1H−NMR、IRにより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0065】
【化14】
【0066】
<例示化合物1の合成>
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.23g(0.20mmol)をNMP 100mlに溶解させた。これに化合物IV−a 1.84g(4.0mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液8.0ml、4−n−ブチルフェニルボロン酸1.56g(8.8mmol)の順に加え、オイルバス220℃で5時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水1Lの入った2Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール100ml、トルエン100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶にNMP 150ml加え再結晶して、さらに昇華精製することによりオレンジ色結晶の例示化合物1を1.0g得た。
得られた例示化合物1の1H−NMRスペクトルは図2に、IRスペクトルは図1に示した。
【0067】
【化15】
【0068】
〔実施例2〕
<例示化合物11の合成>
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.14g(0.12mmol)をNMP 100mlに溶解させた。これに化合物IV−a 1.85g(4.0mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液8.0ml、4−n−ブトキシフェニルボロン酸1.71g(8.8mmol)の順に加え、オイルバス220℃で4時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、20分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール200ml、トルエン250mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶にNMPを150ml加え再結晶して、さらに昇華精製することでオレンジ色結晶の例示化合物11を1.0g得た。
得られた例示化合物11の1H−NMRスペクトルを図4に、またIRスペクトルを図3に示した。
【0069】
【化16】
【0070】
〔実施例3〕
<例示化合物15の合成>
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.11g(0.10mmol)をNMP 80mlに溶解させた。これに化合物IV−a 1.39g(3.0mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液6.0ml、4−tert−ブチルフェニルボロン酸1.18g(6.6mmol)の順に加え、オイルバス220℃で5時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水500mlが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水500mlで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール100ml、ヘキサン100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶にモノクロロベンゼン400mlを加え再結晶して、さらに昇華精製することでオレンジ色結晶の例示化合物15を1.0g得た。
得られた例示化合物15の1H−NMRスペクトルは図6に、またIRスペクトルは図5に示した。
【0071】
【化17】
【0072】
〔実施例4〕
<化合物III−bの合成>
1L三口フラスコにルベアン酸18g(150mmol)、3−メチルチオフェン−2−アルデヒド75g(600mmol)を加え、DMF 350mlに溶解させた。これをオイルバス150℃で5時間磁気撹拌した後、25℃まで冷却した。この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。べたついた黒色の結晶にトルエン100ml、メタノール200mlを加え10分間超音波磁気撹拌することで洗浄した。洗浄した結晶を吸引ろ過によりろ取して粗結晶を34g得た。さらに、メタノール200mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。乾燥後結晶をモノクロロベンゼン500mlに溶解させ、シリカゲルショートカラムを行うことで化合物III−bを19g得た。1H−NMR、IRより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0073】
【化18】
【0074】
<化合物IV−bの合成>
窒素雰囲気下、1L三口フラスコに化合物III−bを19g(57mmol)、NBS 23g(129mmol)を入れ、DMF 500mlに溶解させた。これを60℃で4時間磁気撹拌して反応を完結させた。25℃まで冷却後、この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、30分間10℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1L、メタノール200mlで洗浄した。60℃で15時間真空乾燥した後、結晶をNMP 300mlで2度再結晶して黄色結晶の化合物IV−bを21g得た。1H−NMR、IRより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0075】
【化19】
【0076】
<例示化合物7の合成>
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.16g(0.14mmol)をNMP 100mlに溶解させた。これに化合物IV−b 2.2g(4.5mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液9.0ml、4−n−ブチルフェニルボロン酸1.78g(10mmol)の順に加え、オイルバス220℃で6時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水500mlが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水300mlで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール200ml、ヘキサン100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶をTHF200ml/トルエン100mlに加熱溶解させ、シリカゲルショートカラムを行った。次いでトルエン300mlで再結晶してオレンジ色結晶の例示化合物7を0.70g得た。
得られた例示化合物7の1H−NMRスペクトルを図8に、またIRスペクトルを図7に示した。
【0077】
【化20】
【0078】
〔実施例5〕
窒素雰囲気下、−80℃に冷却された100ml三口フラスコへ1.6Mのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液を10ml(16mmol)加えた。これを−80℃に冷却後、滴下漏斗より−60℃を保ったままTHF10mlを滴下した。次いで、滴下漏斗より−60℃を保ったまま1−ブロモ−4−n−オクチルベンゼン3.1g(16mmol)を滴下した。これを−40℃で1時間撹拌した後、ホウ酸トリメチル2.3g(22mmol)/THF(10ml)溶液を滴下漏斗より−40℃を保ったまま加えた。その後、ゆっくり2時間かけて10℃まで昇温した後、0℃で10%HCl水溶液50mlを加え、トルエン100mlで抽出した。これを純水100mlで3回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。トルエンを減圧下、留去して残留物を3.3g得た。さらにこの残留物を純水100ml/ヘキサン100mlの混合液で洗浄することで4−n−オクチルフェニルボロン酸である化合物V−aを2.0g得た。1H−NMR、IRより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0079】
【化21】
【0080】
<例示化合物4の合成>
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.11g(0.10mmol)をNMP 100mlに溶解させた。これに化合物IV−a 1.4g(3.0mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液9.0ml、4−n−オクチルフェニルボロン酸(化合物V−a) 1.4g(6.0mmol)の順に加え、オイルバス200℃で5時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水1Lが入った2Lビーカーに加え、20分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水300mlで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール200ml、トルエン100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶をNMP200mlを用いて再結晶して次いで昇華精製を行うことで、オレンジ色結晶の例示化合物4を0.60g得た。
得られた例示化合物4の1H−NMRスペクトルを図10に、またIRスペクトルを図9に示した。
【0081】
【化22】
【0082】
〔実施例6〕
窒素雰囲気下、−80℃に冷却された200ml三口フラスコへ1.6Mのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液を20ml(32mmol)加えた。これを−80℃に冷却後、滴下漏斗より−60℃を保ったままTHF20ml滴下した。次いで、滴下漏斗より−60℃を保ったまま1−ブロモ−4−n−ドデシルベンゼン10g(32mmol)を滴下した。これを−40℃で1時間撹拌した後、ホウ酸トリメチル4.5g(43mmol)/THF(10ml)溶液を滴下漏斗より−40℃に保ったまま加えた。その後、ゆっくり2時間かけて10℃まで昇温した後、0℃で10%HCl水溶液50mlを加え、トルエン100mlで抽出した。これを純水100mlで3回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。トルエンを減圧下、留去して残留物を得た。さらにこの残留物を純水100ml/ヘキサン100mlの混合液で洗浄することで4−n−ドデシルフェニルボロン酸である化合物V−bを1.8g得た。1H−NMR、IRより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0083】
【化23】
【0084】
窒素雰囲気下、300ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.10g(0.080mmol)をNMP 100mlに溶解させた。これに化合物IV−a 1.2g(2.5mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液6.0ml、4−n−ドデシルフェニルボロン酸である化合物V−b 1.5g(5.0mmol)の順に加え、オイルバス220℃で5時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を純水400mlが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水300mlで洗浄した。得られた結晶をさらにメタノール200ml、トルエン100mlで洗浄して、60℃で15時間真空乾燥させた。この結晶をNMP200mlから2回再結晶して次いで昇華精製を行うことで、オレンジ色結晶の例示化合物5を0.13g得た。
得られた例示化合物5の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図11に示す。また、NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3)を図12に示す。
【0085】
【化24】
【0086】
〔実施例7〕
<化合物VI−aの合成>
500ml四口フラスコに3−n−オクチルチオフェン60g(305mmol)、DMF100mlに溶解させた。この溶液を5℃まで冷却し、NBS 55g(310mmol)/DMF50mlに予め溶解させた溶液を等圧滴下ロートより5分かけて滴下した。その後、25℃で1時間磁気撹拌した後、純水500mlが入った1Lビーカーに加え、25℃で20分磁気撹拌した。この溶液へ酢酸エチル300mlを加え、25℃で10分磁気撹拌した。酢酸エチル層を分液し、純水300mlで3回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過、減圧下溶媒留去して黄色油状物83gを得た。これを真空蒸留(1〜3mmHg、120〜130℃)して淡黄色油状物76g(収率93%)を得た。
【0087】
【化25】
【0088】
<化合物VI−bの合成>
充分乾燥させた500ml四口フラスコに窒素雰囲気下、マグネシウム9.1g(374mmol)、THF100mlを入れた。ここに、ヨウ素粒状物を3粒入れ、マグネシウム表面を活性化させた。続いて、60℃まで加熱し、化合物VI-a100g(363mmol)/THF50ml溶液を反応の進行と共に滴下した。滴下終了後、マグネシウムがなくなるまで還流撹拌し、40℃まで冷却した。この溶液へ、あらかじめ水素化カルシウムで乾燥させたDMF30mlを10分かけて滴下し、その後30分、50℃で磁気撹拌した。反応終了後5℃まで冷却し、10%塩酸400mlと、トルエン300mlとが入っている1Lビーカー中に入れた。これを25℃で30分磁気撹拌した後、トルエン層を分液して純水300mlで3回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、減圧下溶媒を留去して、赤色油状物94gを得た。これを真空蒸留(1〜3mmHg、140〜150℃)して黄色油状物52g(収率64%)を得た。1H−NMR、IRにより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0089】
【化26】
【0090】
<化合物VI−cの合成>
300ml四口フラスコにルベアン酸8.0g(67mmol)、化合物VI−b 60g(267mmol)を加え、ジメチルホルムアミド60mlに溶解させた。これを150℃で4時間磁気撹拌した後、25℃まで冷却した。この反応液を純水300mlの入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。さらにトルエン300mlを加え10分磁気撹拌した後、トルエン層を分液して純水300mlで3回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、減圧下溶媒を留去して、茶色油状物を得た。これに、メタノール200mlを加えデカンテーションにより、原料を除いた。残渣にヘキサン200mlを加え、5℃まで冷却することで結晶化させた。これを吸引ろ過でろ取して、その残渣をメタノール100mlでかけ洗いして、オレンジ色結晶12g(収率38%)を得た。1H−NMR、IRにより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0091】
【化27】
【0092】
<化合物VI−dの合成>
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに化合物VI−cを12g(23mmol)、NBS 8.9g(50mmol)を入れ、DMF 200mlに溶解させた。これを40℃で1時間磁気撹拌して反応を完結させた。25℃まで冷却後、この反応液を純水500mlの入った2Lビーカーに加え、30分5℃で磁気撹拌した。撹拌終了後、析出した結晶を吸引ろ過によりろ取して、純水1Lで洗浄した。次いでメタノール100mlで洗浄した後、60℃で15時間真空乾燥させオレンジ色結晶12.2g(収率76%)を得た。1H−NMR、IRにより目的物と矛盾しないことを確認した。
【0093】
【化28】
【0094】
<例示化合物25の合成>
窒素雰囲気下、200ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.10g(0.090mmol)をTHF60mlに溶解させた。これに化合物VI−d2.06g(3.0mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液7.0ml、4−n−ブチルフェニルボロン酸1.18g(6.6mmol)の順に加え、8時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を5%塩酸水溶液80mlと、トルエン200mlとが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。トルエン層を分液して、純水200mlで3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過、減圧下溶媒を留去して赤色油状物2.8gを得た。シリカゲルろ過カラムでパラジウムを除いた後、メタノール50ml、ヘキサン20mlで洗浄、次いでヘキサン100mlで再結晶した。15時間真空乾燥させた。オレンジ色結晶の例示化合物25を1.8g(収率:78%)得た。
得られた例示化合物25の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図13に示す。また、NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3)を図14に示す。
【0095】
【化29】
【0096】
〔実施例8〕
<例示化合物27の合成>
窒素雰囲気下、200ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.090g(0.080mmol)をTHF50mlに溶解させた。これに化合物VI−d 1.72g(2.5mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液6.0ml、V−a 1.23g(5.3mmol)の順に加え、11時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を5%塩酸水溶液100mlと、トルエン200mlとが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。トルエン層を分液して、純水200mlで3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過後、減圧下溶媒を留去して赤色固体物2.8gを得た。トルエンとヘキサンとの混合溶剤(混合質量比1:5)からシリカゲルカラム精製し、次いでエタノールとヘキサンとの混合溶剤(混合質量比1:1)から再結晶して、15時間真空乾燥させることで、オレンジ色結晶の例示化合物27を0.7g(収率:30%)得た。
得られた例示化合物27の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図15示す。また、NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3)を図16に示す。
【0097】
【化30】
【0098】
〔実施例9〕
<例示化合物28の合成>
窒素雰囲気下、200ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0) 0.090g(0.080mmol)をTHF50mlに溶解させた。これに化合物VI−d 1.72g(2.5mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液6.0ml、V−b 1.52g(5.3mmol)の順に加え、12時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を5%塩酸水溶液100mlと、トルエン200mlとが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。トルエン層を分液して、純水200mlで3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過後、減圧下溶媒を留去してオレンジ色固体物3.1gを得た。トルエン/ヘキサンからシリカゲルカラム、次いでエタノール/ヘキサンから再結晶して、15時間真空乾燥させることで、オレンジ色結晶の例示化合物28を1.2g(収率:47%)得た。
得られた例示化合物28の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図17に示す。また、NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3)を図18に示す。
【0099】
【化31】
【0100】
〔実施例10〕
<例示化合物8の合成>
窒素雰囲気下、200ml三口フラスコにテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.090g(0.080mmol)をTHF50mlに溶解させた。これに化合物IV−b 1.23g(2.5mmol)、2M炭酸ナトリウム水溶液6.0ml、V−a 1.24g(5.3mmol)の順に加え、12時間磁気還流撹拌した。1H−NMRで反応完結を確認後、25℃まで冷却し、この反応液を5%塩酸水溶液100mlと、トルエン200mlとが入った1Lビーカーに加え、30分25℃で磁気撹拌した。トルエン層を分液して、純水200mlで3回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過後、減圧下溶媒を留去してオレンジ色固体物1.7gを得た。トルエンとTHFとの混合溶剤(混合質量比1:2)からシリカゲルカラム精製し、ついで、トルエンから再結晶して、15時間真空乾燥させることで、オレンジ色結晶の例示化合物8を1.2g(収率:70%)得た。
得られた例示化合物8の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図19に示す。また、NMRスペクトル(1H−NMR、溶媒:CDCl3)を図20に示す。
【0101】
【化32】
【0102】
<チアゾロチアゾール誘導体の溶解性評価>
実施例1から10で得られたチアゾロチアゾール誘導体、および比較例1として前記化学式3の化合物における各種溶媒に対する溶解性を表1に示す。
溶解性試験については溶媒1ml中に例示化合物10mg(1.0質量%)を溶解し、25℃で溶解しない場合、各種溶媒(ジクロロベンゼン、モノクロロベンゼン、クロロホルム、THF、トルエン、キシレン)における沸点で加熱をし、その状況を目視により観察することで行った。
【0103】
−評価基準−
◎ :加熱無しで溶解
○ :加熱して溶解
△ :加熱して一部のみ溶解
× :加熱しても一部溶け残る
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1から10のチアゾロチアゾール誘導体は、比較例1の化学式3の化合物に比べ溶解性に優れていることがわかる。このことから有機感光体や有機電界発光素子、有機トランジスタ、有機光メモリー等の有機電子デバイスに用いられる材料として有用な化合物であることが判る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるチアゾロチアゾール誘導体。
【化1】
一般式(I)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表す。
【請求項2】
前記一般式(I)のR1が、炭素数が3以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が3以上12以下の分岐状の置換基であり、R2が、炭素数が1以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が2以上12以下の分岐状の置換基である請求項1に記載のチアゾロチアゾール誘導体。
【請求項3】
前記一般式(I)のR1が、それぞれ独立に、炭素数3以上12以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上12以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上12以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上12以下の分岐状アルコキシ基である請求項1または請求項2に記載のチアゾロチアゾール誘導体。
【請求項4】
前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体。
【請求項5】
前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、炭素数1以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体。
【請求項6】
前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、炭素数3以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体。
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるチアゾロチアゾール誘導体。
【化1】
一般式(I)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数3以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上20以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上20以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上20以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上20以下の分岐状アルコキシ基を表す。
【請求項2】
前記一般式(I)のR1が、炭素数が3以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が3以上12以下の分岐状の置換基であり、R2が、炭素数が1以上12以下の直鎖状の置換基、又は、主鎖部分を構成する炭素数が2以上12以下の分岐状の置換基である請求項1に記載のチアゾロチアゾール誘導体。
【請求項3】
前記一般式(I)のR1が、それぞれ独立に、炭素数3以上12以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上12以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上12以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上12以下の分岐状アルコキシ基である請求項1または請求項2に記載のチアゾロチアゾール誘導体。
【請求項4】
前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体。
【請求項5】
前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、炭素数1以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数1以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体。
【請求項6】
前記一般式(I)のR2が、それぞれ独立に、炭素数3以上8以下の直鎖状アルキル基、炭素数3以上8以下の直鎖状アルコキシ基、炭素数3以上8以下の分岐状アルキル基、または炭素数3以上8以下の分岐状アルコキシ基である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のチアゾロチアゾール誘導体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−155818(P2010−155818A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67966(P2009−67966)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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