説明

チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体および用途

【課題】密着性向上効果に優れるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を提供する。
【解決手段】チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、下記式1で表される化合物である。


(式中のaは0〜3の整数であり、bは0または1であり、cは1〜4の整数であり、aとbとcの和は4である。mは1または2である。Rは−CH−CH(CH)−あるいは−C(CH−で表される2価の基であり、Rはメチル基またはエチル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着性向上剤等に好適に用いられる新規なチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体および当該チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種塗料をガラス等の無機基材に塗工する際に、密着性を向上させる目的でシランカップリング剤が塗料に添加されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、シランカップリング剤の多くは沸点が低く、高温塗工が必要な塗料に対しては多量に添加する必要があった。また、密着性向上効果も充分とは言えず、例えばチタン、ジルコニウム等の塩や、イミダゾール等のアミン、リン酸エステル、ウレタン樹脂、チオール化合物等の密着性助剤も同時に添加することによって初めて密着性を達成できる場合も多かった。しかしながら、これら密着性助剤の配合は工程数が増加するだけではなく、塗料特性を損なわない密着性助剤種や添加量の最適化作業が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−300491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、その第一の目的は、密着性向上効果に優れるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を提供することにある。
さらに、本発明の第二の目的は、上記のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体が優れた密着性向上効果を有することを見出し発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は次の〔1〕から〔5〕である。
〔1〕下記式1で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【0007】
【化1】

(式中のaは0〜3の整数であり、bは0または1であり、cは1〜4の整数であり、aとbとcの和は4である。mは1または2である。Rは−CH−CHR−あるいは−CR(CH)−で表される2価の基であり(Rは水素原子またはメチル基である)、Rはメチル基またはエチル基である。)
〔2〕下記式2で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【0008】
【化2】

(式中のdは0〜5の整数であり、eは0〜2の整数であり、fは1〜6の整数であり、dとeとfの和は6である。mは1または2である。Rは−CH−CHR−あるいは−CR(CH)−で表される2価の基あり(Rは水素原子またはメチル基である)、Rはメチル基またはエチル基であり、Rは下記式3で表される6価の基である。)
【0009】
【化3】

〔3〕下記式4で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式5で表される多価チオール化合物とを反応させてなる、前記〔1〕に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【0010】
【化4】

(式中のRは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはエチル基である。)
【0011】
【化5】

(式中のgは0または1であり、hは3または4であり、gとhの和は4であり、mは1または2である。)
〔4〕下記式4で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式6で表される多価チオール化合物とを反応させてなる、前記〔2〕に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【0012】
【化6】

(式中のRは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはエチル基である。)
【0013】
【化7】

(式中のiは0〜2の整数であり、jは4から6の整数であり、iとjの和は6であり、mは1または2である。Rは下記式3で表される6価の基である。)
【0014】
【化8】

〔5〕前記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、優れた密着性向上効果を有しており、塗料に例えば0.1〜10質量%という比較的少量添加することで、密着性助剤の添加を必要とすることなく塗料に高い密着性を付与することが可能である。
【0016】
また、チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は密着性の付与効果に優れているため、塗料などに密着性を付与する密着性向上剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図2】実施例2で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図3】実施例3で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図4】実施例4で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図5】実施例5で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図6】実施例11で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【図7】実施例12で得られた化合物の核磁気共鳴スペクトルを示すチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
<チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体>
本実施形態のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、下記式1で表される化合物である。
【0019】
【化9】

(式中のaは0〜3の整数であり、bは0または1であり、cは1〜4の整数であり、aとbとcの和は4である。mは1または2である。Rは−CH−CHR−あるいは−CR(CH)−で表される2価の基であり(Rは水素原子またはメチル基である)、Rはメチル基またはエチル基である。
【0020】
また、本実施形態のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、下記式2で表される化合物である。
【0021】
【化10】

(式中のdは0〜5の整数であり、eは0〜2の整数であり、fは1〜6の整数であり、dとeとfの和は6である。mは1または2である。Rは−CH−CHR−あるいは−CR(CH)−で表される2価の基であり(Rは水素原子またはメチル基である)、Rはメチル基またはエチル基であり、Rは下記式3で表される6価の基である。)
【0022】
【化11】

式1のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は多くの樹脂に相溶するため幅広い用途に用いることが可能であり、式2のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は少量の添加で高い密着性を得たい場合に好適に用いられる。
<チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の製造方法>
前記式1または式2で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、例えばアルコキシシリル基〔−Si(OR〕と二重結合を有する化合物(以降、A成分という)と、チオール基(−SH)を有する多価チオール化合物(以降、B成分という)とを反応させることによって得ることができる。この2成分は、A成分の二重結合と、B成分のチオール基とが下記式7で表される反応式で反応する。なお、Xは水素原子またはメチル基、YはA成分の二重結合に結合するX以外の残基を表し、ZはB成分のチオール基に結合する残基を表す。
【0023】
【化12】

式7に示すように、A成分の二重結合を形成する2つの炭素のどちらもチオールのSと結合する。2つの生成物の生成比率は反応条件により異なり、例えば本反応の触媒にアミンなどの塩基触媒を反応系に添加した場合には、生成物(1)が多く生成し、ラジカル発生剤を反応系に添加した場合には生成物(2)が多く生成する傾向にある。多くの場合、製造後のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は生成物(1)と(2)の混合物となっている。
【0024】
また、チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を製造するにあたり、B成分はチオール基を3〜6個有しているため、式8のようにB成分のチオール基のうち一部がA成分と反応した生成物を得ることができる。なお、VはB成分のチオール基に結合する残基を表す。
【0025】
【化13】

式8におけるA成分の付加個数が式1のcや式2のfに相当する。多くの場合、製造後のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は付加反応した置換基の数が異なる物質の混合物となっている。
【0026】
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の製造方法においては、5℃以上の温度で反応させることができるが、5時間以内といった短時間で反応させるためには、60〜80℃で反応させることがより好ましい。塩基触媒やラジカル発生剤を添加すれば、より短時間で高収率にて反応させることができる。
【0027】
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体の製造方法においては、無溶剤でも反応を進行させることができるが、低温で反応させる場合など、粘度を下げたい場合には溶剤を加えて反応させることもできる。その際には、アルコキシシリル基、二重結合、チオール基と反応しない溶剤、例えばアルコール類、ケトン類、エステル類または芳香族類が好ましい。
【0028】
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体のうち、式1で表される化合物は、下記式4で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式5で表される多価チオール化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0029】
【化14】

(式中のRは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはエチル基である。)
【0030】
【化15】

(式中のgは0または1であり、hは3または4であり、gとhの和は4であり、mは1または2である。)
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体のうち、式2で表される化合物は、前記式4で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式6で表される多価チオール化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0031】
【化16】

(式中のiは0〜2の整数であり、jは4から6の整数であり、iとjの和は6であり、mは1または2である。Rは下記式3で表される6価の基である。)
【0032】
【化17】

<密着性向上剤>
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体は、特にガラスや金属等の無機基材に対して高い密着性向上性能を有していることから、密着性向上剤として用いることができる。チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、二重結合を有する化合物等に配合することによって、高い密着性向上効果を発揮することができる。
【0033】
さらに、式1で表される化合物であり、aが0でないチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体、あるいは式2で表される化合物であり、dが0でないチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体はチオール基を有し、エポキシ基、二重結合、イソシアネート基と反応する。このため、チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体をエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、二重結合を有する化合物に添加することにより、さらに高い密着性効果を発揮することができる。
【0034】
チオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤は、有効成分として樹脂に対し好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%添加すると高い密着性を発揮することができる。
【実施例】
【0035】
以下に、合成例、実施例および比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。各実施例および比較例で用いた測定方法と評価方法を下記に示す。
<赤外線吸収スペクトル分析(IR)>
機種;日本分光(株)製 FT/IR-600
セル;KBr上に展開、分解;4cm−1、積算回数;16回
<核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)>
機種;日本ブルカー(株)製、400MHz−Advance400、条件;積算回数16回、溶媒;重クロロホルム
<粘度>
機種;東機産業(株)製(R型粘度計)、温度;25℃
<密着性評価>
硬化膜を形成したサンプルを温度121℃、相対湿度(RH)100%で8時間処理した後、JIS K5600−5−6に規定される塗膜の機械的性質−付着性(クロスカット法)試験法で評価を行った。そして、全く剥離の無いものを合格とした。
【0036】
以下に、本実施例および比較例で用いた試薬を示す。
<アルコキシシリル基を有する化合物:A成分>
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以降、A−1という)。その構造を下記式9に示す。
【0037】
【化18】

3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以降、A−2という)。その構造を下記式10に示す。
【0038】
【化19】

3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(以降、A−3という)。その構造を下記式11に示す。
【0039】
【化20】

<多価チオール化合物:B成分>
トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)(以降、B−1という)。その構造を下記式12に示す(粘度0.1Pa・s)。
【0040】
【化21】

ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(以降、B−2という)。その構造を下記式13に示す(粘度0.4Pa・s)。
【0041】
【化22】

ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(以降、B−3という)。その構造を下記式14に示す(粘度2.5Pa・s)。
【0042】
【化23】

メチル-3-メルカプトプロピオネート(以降、β−1という)。その構造を下記式15に示す。
【0043】
【化24】

テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)(以降、β−2という)。その構造を下記式16に示す。
【0044】
【化25】

(実施例1〜5および11、12)
セパラブルの4つ口フラスコに温度計と還流管を備え、内部を窒素雰囲気にした。この4つ口フラスコに、下記表1に従いA成分とB成分を仕込み、90℃で6時間反応させた。6時間反応後の粘度を表1に示す。また、IRとNMRの結果を表1に従い下記に示すと共に、図1〜図7に示す。
(合成例1および2)
セパラブルの4つ口フラスコに温度計と還流管を備え、内部を窒素雰囲気にした。この4つ口フラスコに下記表1に従いA成分とB成分を仕込み、90℃で6時間反応させた。
【0045】
【表1】

<IRの結果>
(結果I1)
2945cm−1:57%T、2841cm−1:64%T、1736cm−1:41%T、1464cm−1:72%T、1414cm−1:70%T、1388cm−1:78%T、1352cm−1:76%T、1192cm−1:49%T、1086cm−1:41%T、820cm−1:57%T
(結果I2)
2945cm−1:44%T、2841cm−1:50%T、1736cm−1:26%T、1466cm−1:61%T、1414cm−1:70%T、1388cm−1:66%T、1352cm−1:63%T、1192cm−1:31%T、1086cm−1:25%T、982cm−1:70%T、820cm−1:57%T
(結果I3)
2945cm−1:47%T、2841cm−1:52%T、1736cm−1:30%T、1464cm−1:62%T、1414cm−1:71%T、1388cm−1:67%T、1352cm−1:64%T、1192cm−1:35%T、1086cm−1:30%T、982cm−1:70%T、820cm−1:45%T
(結果I4)
2945cm−1:46%T、2841cm−1:54%T、2569cm−1:94%T、1736cm−1:22%T、1464cm−1:60%T、1414cm−1:63%T、1388cm−1:60%T、1354cm−1:54%T、1192cm−1:30%T、1086cm−1:27%T、822cm−1:45%T
(結果I5)
2945cm−1:57%T、2841cm−1:68%T、2569cm−1:92%T、1738cm−1:24%T、1464cm−1:67%T、1390cm−1:62%T、1356cm−1:56%T、1153cm−1:33%T、1084cm−1:36%T、822cm−1:59%T
(結果I6)
2945cm−1:60%T、2841cm−1:67%T、1737cm−1:29%T、1465cm−1:79%T、1414cm−1:78%T、1389cm−1:77%T、1355cm−1:73%T、1193cm−1:39%T、1086cm−1:30%T、821cm−1:53%T
(結果I7)
2974cm−1:52%T、2927cm−1:63%T、1738cm−1:36%T、1460cm−1:76%T、1389cm−1:67%T、1353cm−1:74%T、1166cm−1:42%T、1079cm−1:39%T、958cm−1:59%T、791cm−1:66%T
上記結果I4およびI5における2569cm−1のピークはチオール基によるものである。結果I1〜I7において、C=Cに由来する1600〜1700cm−1のピークが観測されないことから、A−1、A−2およびA−3が反応していることがわかる。
<NMRの結果>
表1に示した結果N1のNMRスペクトルを図1、結果N2のNMRスペクトルを図2、結果N3のNMRスペクトルを図3、結果N4のNMRスペクトルを図4、結果N5のNMRスペクトルを図5、結果N6のNMRスペクトルを図6および結果N7のNMRスペクトルを図7に示した。
【0046】
各NMRスペクトルにおけるピークの帰属を下記の式15に示す。
【0047】
【化26】

a:3.4〜3.6ppm、b:0.6〜0.7ppm、c:1.7〜1.8ppm、d:4.0〜4.2ppm、e、g、h、i:2.6〜2.8ppm、f:1.1〜1.3ppm、j:3.9〜4.2ppm、k:1.5〜1.6ppm、l:0.6〜0.7ppm、m:1.6〜1.7ppm
結果N4および結果N5はチオールに由来するピークが確認されたが、結果N1〜結果N3および結果N6、結果N7においてはチオール基由来のピークは観測されなかった。また、結果N1〜結果N7より、CH=Cに由来するピークが観測されないことから、A−1、A−2およびA−3は反応していることがわかった。
(実施例6〜10および13、14)
エポキシ樹脂として、98質量%のYDPN638〔フェノールノボラック型エポキシ樹脂:東都化成(株)製、商品名〕と、2質量%のEH−4344S〔イミダゾール型触媒:(株)アデカ製、商品名〕の混合物を選択した(以降、E−1という)。このE−1と実施例1〜5および実施例11、12で得られた密着性向上剤とを表2の配合量に従って配合した。配合したサンプルをOA−10〔無アルカリガラス:日本電気硝子(株)製、商品名〕にバーコーターで塗布し、150℃、1時間の条件で硬化させて樹脂成形物としての硬化膜を得た。得られた硬化膜の密着性を評価し、それらの結果を表2に示す。
(比較例1〜3)
E−1と合成例1または2で得られたサンプルあるいはA−1を表2の配合量に従って配合した。配合したサンプルをOA−10〔無アルカリガラス:日本電気硝子(株)製、商品名〕にバーコーターで塗布し、150℃、1時間の条件で硬化させて樹脂成形物としての硬化膜を得た。得られた硬化膜の密着性を評価し、それらの結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

表2に示した結果より、実施例6〜10および実施例13、14では全く剥離は見られず、密着性が良好であった。その一方、比較例1〜3では本発明のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体以外の化合物を用いたことから、いずれも剥離が生じて密着性は不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化1】

(式中のaは0〜3の整数であり、bは0または1であり、cは1〜4の整数であり、aとbとcの和は4である。mは1または2である。Rは−CH−CHR−あるいは−CR(CH)−で表される2価の基であり(Rは水素原子またはメチル基である)、Rはメチル基またはエチル基である。)
【請求項2】
下記式2で表されるチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化2】

(式中のdは0〜5の整数であり、eは0〜2の整数であり、fは1〜6の整数であり、dとeとfの和は6である。mは1または2である。Rは−CH−CHR−あるいは−CR(CH)−で表される2価の基であり(Rは水素原子またはメチル基である)、Rはメチル基またはエチル基であり、Rは下記式3で表される6価の基である。)
【化3】

【請求項3】
下記式4で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式5で表される多価チオール化合物とを反応させてなる、請求項1に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化4】

(式中のRは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはエチル基である。)
【化5】

(式中のgは0または1であり、hは3または4であり、gとhの和は4であり、mは1または2である。)
【請求項4】
下記式4で表されるアルコキシシリル基含有化合物と下記式6で表される多価チオール化合物とを反応させてなる、請求項2に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体。
【化6】

(式中のRは水素原子またはメチル基であり、Rはメチル基またはエチル基である。)
【化7】

(式中のiは0〜2の整数であり、jは4から6の整数であり、iとjの和は6であり、mは1または2である。Rは下記式3で表される6価の基である。)
【化8】

【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチオエーテル含有アルコキシシラン誘導体を有効成分とする密着性向上剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−136985(P2011−136985A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266684(P2010−266684)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】