チオコラリンの生合成に関与する遺伝子およびその異種産生
本発明は、チオコラリンの生合成に関与する遺伝子およびその異種産生に関する。本発明により、チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターが同定およびクローニングされた。この遺伝子クラスターは、抗腫瘍活性および抗菌活性を有するチオコラリンの異種産性に使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、チオコラリンの生合成に関与する遺伝子クラスターおよびチオコラリンの異種産生におけるその使用に関する。
【0002】
発明の背景
チオコラリン(I):
【化1】
は、海洋アクチノミセス属から、具体的にはミクロモノスポラ科から単離された環式二量体チオデプシペプチドである(Perez Baz et al, J. Antibiotics, 50(9), 738-741, 1997; Romero et al., J. Antibiotics, 50(9), 734-737, 1997)。チオコラリンはミクロモノスポラ・マリナ(Micromonospora marina)またはミクロモノスポラ種(Micromonospora sp.)L−13−ACM−092から得られるという記載があるが、その後の研究で、モザンビークのインド洋沿岸で発見された海洋軟体動物から単離されたアクチノミセス属ミクロモノスポラ種ML1からも単離可能であることが示されている(Espliego, F. Ph.D. Thesis, 1996, University of Leon; de la Calle, F. Ph.D. Thesis, 1998, Autonomous University of Madrid)。
【0003】
in vitro研究では、黒色腫、乳癌、非小細胞肺癌および結腸癌などの種々の種類の固形腫瘍の細胞系統の増殖を阻害するチオコラリンの能力が示されている。チオコラリンはまた、ヒト癌腫異種移植片に対するin vivoアッセイおいて顕著な抗腫瘍活性を有することも示されている(Faircloth et al. Eur. J. Cancer, 33, 175, 1997 (abstract))。チオコラリンはさらに、グラム陽性菌に対して抗菌活性を示す。
【0004】
前記の海洋アクチノミセス属(ミクロモノスポラ種ML1)からチオコラリンを得るのは、小規模では実現可能であるが、この微生物で見られる生産の変動のため、大規模でのこのような取得は制限される。実際に、この生物からのチオコラリンの生産は、この生物の増殖速度が遅いために時間がかかり、バッチの違いにより生産収量が大きく異なる。
【0005】
従って、一方では該海洋アクチノミセス属からのチオコラリンの取得が極めて制限されていること、また他方で、チオコラリン分子も複雑な構造を持ち、その合成は産業レベルでは煩雑となりかねないということから、方向性を持った様式でその取得方法を改善する手段を作り出すために、その生合成の遺伝的基礎を理解することが望ましい。天然産生株が一般に低濃度かつ極めて不規則な様式でしか生成物を産生しないことを考えれば、これはチオコラリンの産生量に増加をもたらし得る。同様に、この化合物を天然に産生しない宿主におけるチオコラリンの産生も可能となる。
【0006】
組換えDNA技術の発達により、主としてアクチノミセス属の細菌の、このような生物活性化合物の生合成に関与する遺伝子を操作する手段により生物活性化合物を作出および産生するための興味深い研究分野が拓かれている。天然株は通常、対象とする代謝物を低濃度でしか産生しないので、これらの技術は既知の天然化合物の産生を向上させるために使用可能である。
【0007】
遺伝子操作および発酵に適した他のアクチノミセス属における、チオコラリンの生合成に関与する遺伝子クラスターの異種発現によっても、同様に、短い発酵時間でより高い生産収量で該化合物を産生することが可能となる。
【0008】
周知のとおり、いくつかの細菌および真菌が、抗腫瘍性および抗菌性などをはじめ、非リボゾーム起源を有する多様な生物活性ペプチドを合成する。この化合物ファミリーの生合成は、モジュール方式の触媒ドメイン機構を有する多機能酵素である非リボゾームペプチドシンセターゼ(NRPS)によって行われる。これらの各モジュールは延長サイクルを行い、すなわち、化合物の最終構造を活性化し、そこに特定のアミノ酸を組み込む。最小のモジュールは、(i)特定のアミノ酸の選択と、ATPを用いることによりそのアデニル化アミノアシル型の形成を担うアデニル化ドメイン(A、およそ550のアミノ酸を有する)、(ii)補因子として働き、共有結合によりPドメインと結合するホスホパンテテイン(PP)補欠分子族を含むペプチジル担体ドメイン(P、およそ80のアミノ酸を有する)(このドメインは、次の反応中心に移る前に活性化されたアデニル化アミノ酸を固定することを担う)、および(iii)2つの連続するPドメインに存在する2つのアデニル化アミノアシル部分の間に新しいペプチド結合を作り出す縮合ドメイン(C、およそ450のアミノ酸を有する)の3つのドメインによって形成される。Cドメインには、この系の最初のアミノ酸を活性化するモジュールがない。いくつかのNRPSは、D−アミノ酸を生じるエピマー化、N型またはC型のメチル化、L−CysまたはL−Serアミノ酸に作用する環化などの特定の働きを行う付加的ドメインを有する。最後のモジュールの後に存在する最後のドメインは、一般に直鎖または環状ペプチドを生じる中間体酵素の放出を担う。一般規則として、種々のモジュールの構造は生成ペプチドの最終的なアミノ酸配列を反映している。この同一線上の規則により、NRPSにおける各モジュールへの特定の活性化機能の割付が可能となる。NRPSに関する情報は、例えば、Quing-Tao, S. et al., 2004. Dissecting and Exploiting Nonribosomal Peptide Synthetases. Acta Biochimica et Biophysica. Sinica, 36 (4): 243-249に見出すことができる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の重要な目的は、チオコラリンの産生を担うタンパク質をコードする完全ヌクレオチド配列を単離および同定することである。これに基づき、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質を構成するアミノ酸配列の機能を単離および決定することができる。この目的は、完全生合成チオコラリン産生経路に関連するタンパク質を総てコードする、単離され、かつ所望により精製された新規な核酸分子を提供することにより達成することができる。
【0010】
本発明者らはチオコラリンの生合成を担う総ての遺伝子、すなわち、チオコラリンの生合成に関与する遺伝子クラスターを同定およびクローニングし、これにより、方向性を持った様式でこの化合物の産生を向上および操作するための遺伝的基礎を提供することができた。
【0011】
非リボゾームペプチドシンセターゼ(NRPS)アデニル化ドメインのコンセンサス配列に由来するイニシエーターオリゴヌクレオチドを用いることで、ミクロモノスポラ種ML1染色体の6断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅したが、これらの断片は総て、PSV1、PSV2、PSV3、PSV4、PSV5およびPSV6と呼ばれる推定(仮定)NRPSアデニル化ドメイン断片を含む(実施例3)。該アデニル化ドメインの、挿入による不活性化は、そのうち2つ(PSV2およびPSV5)がチオコラリンを産生しない突然変異体を生じたが、このことはそれらがチオコラリンの生合成に関与していることを示している(実施例7および10)。
【0012】
およそ64.6キロベース(kb)のDNA領域(配列番号1)の配列決定は、36の完全なオープンリーディングフレーム(ORF)と別の2つの不完全なORFの存在を示した(実施例12、表1)。ストレプトミセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトミセス・アルブス(Streptomyces albus)およびストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)における、前記ORFのうちの26を含む、およそ53kbの領域の異種発現により、該アクチノミセス属のチオコラリンの産生がもたらされた(実施例19)。
【0013】
チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを図1に模式的に示す。驚くことに、チオコラリン遺伝子のクラスターはペプチド骨格のアミノ酸の数をもとに予測されるものよりも多くのNRPSコード遺伝子を含む。同定されたタンパク質のうちのいくつかは、例えばTio12、Tio17、Tio18、Tio19、Tio20、Tio21、Tio22、Tio27およびTio28として同定されているNRPSのいくつかのものなど、チオコラリンペプチド構造の形成に関与している。Tio20およびTio21として同定されているタンパク質はおそらくチオコラリン骨格の生合成に関与するNRPSを形成し、そして、おそらくは、Tio27およびTio28として同定されている他の2つのNRPSがミクロモノスポラ種ML1におけるチオコラリンの生合成の調節に関与し得る小ペプチドの生合成を担っている可能性がある。また、Tio5、Tio6およびTio23など、耐性プロセスに関連している可能性のあるタンパク質がいくつかある。配列決定された領域において同定されたチオコラリン経路の可能性のあるレギュレーターは、Tio3、Tio4、Tio7、Tio24およびTio25に相当する。最後に、イニシエーターユニット3−ヒドロキシ−キナルデート、Tio8、Tio9、Tio10およびTio11の生成に関連するタンパク質がいくつかある。その遺伝子分断によりチオコラリンを産生しない表現型が生じる遺伝子は、図1においてアステリスクで示されている(tio20、tio27およびtio28)。
【0014】
よって、本発明は、チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターの同定およびクローニングに関する。チオコラリンの生合成および好適な宿主細胞におけるその発現を担う該遺伝子クラスターは、チオコラリンの効率的な産生を可能とする。
【0015】
従って、一つの態様では、本発明は、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子に関する。
【0016】
別の態様では、本発明は、本発明により提供される少なくとも1つの核酸分子を含んでなる組成物に関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、本発明により提供される核酸分子またはその断片を含んでなるプローブに関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、本発明により提供される核酸分子を含んでなるベクターに関する。
【0019】
別の態様では、本発明は、本発明により提供されるベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞に関する。
【0020】
別の態様では、本発明は、本発明により提供される核酸分子によりコードされるタンパク質に関する。
【0021】
別の態様では、本発明は、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質を製造するための方法であって、そのゲノムが操作されたチオコラリン産生生物の使用を含む方法に関する。
【0022】
別の態様では、本発明は、別のアクチノミセス属におけるチオコラリンの製造のための、ミクロモノスポラ種ML1由来のチオコラリンの生合成を担う遺伝子の使用に基づく方法に関する。
【発明の具体的説明】
【0023】
本発明によれば、完全な生合成チオコラリン産生経路に関与するタンパク質の全部または一部をコードする、単離され、所望により精製された新規な核酸分子が提供される。
【0024】
よって、一つの態様では、本発明は、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子(以下「本発明の核酸分子」という)、好ましくは、所望により単離され、精製された核酸分子に関する。この生合成チオコラリン産生経路タンパク質は、一般的に言えば非リボゾームペプチドシンセターゼ(NRPS)である。NRPSはチオコラリンの生合成を担っている。
【0025】
本明細書において生合成チオコラリン産生経路タンパク質に用いられる「生物学的に活性な断片」とは、全長タンパク質の活性機能を保持するタンパク質構造の一部を意味する。この生物学的に活性な断片は、本発明の核酸分子の対応する領域によりコードされていてもよい。本発明の核酸分子の領域の大きさは広い範囲で異なってよいが、ある特定の実施態様では、該領域は少なくとも10、15、20、25、50、100、1,000、2,500、5,000、10,000、20,000、25,000またはそれを超えるヌクレオチド長であり得る。該領域は通常、100〜10,000ヌクレオチド長、好ましくは100〜7,500ヌクレオチド長であり、生物学的に機能があり、すなわち、生合成チオコラリン産生経路タンパク質の生物学的に活性な断片をコードし得る。
【0026】
本発明の核酸分子は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)分子であり得る。本発明の核酸分子はまた、一本鎖核酸分子または誘導された二本鎖核酸分子であり得る。本発明の核酸分子の限定されない例としては、ゲノムDNA(gDNA)分子、メッセンジャーRNA(mRNA)分子およびmRNA分子に対する相補的DNA(cDNA)分子が挙げられる。
【0027】
本発明の核酸分子の突然変異体および変異体は、本発明の範囲内に含まれる。このような突然変異体および変異体としては、少なくとも1つの分子が変更、置換、欠失または挿入された本発明の核酸分子が挙げられる。例としては、本発明の核酸分子の突然変異体および変異体は、1、2、3、4、5、10、15、25、50、100、200、500およびそれを超えるヌクレオチド変異(変更、置換、欠失および挿入)を有し得る。同じタンパク質をコードする縮重変異体、ならびに違うタンパク質をコードする非縮重変異体もあり得る。該突然変異体および変異体のヌクレオチド配列は、チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターのオープンリーディングフレーム(ORF)にコードされている対応するタンパク質の少なくとも1つの生物活性または機能を保存しているタンパク質、またはその生物学的に活性な断片をコードする。該クラスターの遺伝子の対立遺伝子型ならびに多型も本発明の範囲内に含まれる。
【0028】
ある特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、総ての生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、所望により精製され、単離された核酸分子である。この場合、本発明の核酸分子は、チオコラリンの生合成を担う完全な遺伝子クラスターを含むヌクレオチド配列を含んでなる。
【0029】
チオコラリンの生合成を担う完全な遺伝子クラスターのヌクレオチド配列は、配列番号1、ミクロモノスポラ種の64,650塩基対(bp)ゲノムDNA配列に含まれる。また、本発明の範囲には、配列番号1で示されるヌクレオチド配列の相補鎖、すなわち、配列番号1で示されるものと相補的なヌクレオチドからなるもの(例えば、AがTに置き換わり、CがGに置き換わったもの、またはその逆)および/または逆転ヌクレオチド配列[すなわち、例えば、(5’→3’)から(3’→5’)に読み取り方向が変わることにより生じる配列]が含まれる。
【0030】
本発明はさらに、配列番号1で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を有する本発明の核酸分子とハイブリダイズする核酸分子を含み、該分子はチオコラリン産生生物から単離することができ、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質をコードする。当業者に公知の典型的なハイブリダイゼーション技術および条件は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1989)に記載されている。相同プローブのためには、通常のまたは厳密なハイブリダイゼーション技術が用いられるが、標的核酸分子配列と100%未満の相同性の部分的に相同なプローブには、厳密性の低いハイブリダイゼーション技術が用いられる。後者(部分的に相同なプローブ)の場合、種々の条件でサザンまたはノーザンハイブリダイゼーションを行うことができる。例として、ホルムアミドを含有する溶媒中でハイブリダイゼーションが行われる場合、好ましい条件は、一定温度、およそ42℃、6×SSCおよび50%ホルムアミドを含有する溶液のイオン強度の使用を含む。厳密性の低いハイブリダイゼーション条件でも同じ温度およびイオン強度を使用することができるが、アニーリングバッファー中のホルムアミド量を低くする(およそ45%から0%に)。あるいは、ハイブリダイゼーションは、ホルムアミドを含まない水溶液中で行うこともできる。一般に、水性媒体中でのハイブリダイゼーションでは、水溶液のイオン強度は同じ強度、一般にはおよそ1M Na+に維持するが、アニーリング温度は68℃から42℃に引き下げることができる。
【0031】
チオコラリンの生合成を担う完全な遺伝子クラスターの配列決定(配列番号1)により、36の完全オープンリーディングフレーム(ORF)と別の2つの不完全なORF(ORF1およびORF38、下記参照)の存在が示された。表1(実施例12)は、生合成チオコラリン産生経路に含まれる種々のORFの位置、ならびに該ORFにコードされているアミノ酸配列を示す。
【0032】
チオコラリンの産生に必須の全生合成タンパク質をコードする、チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含む完全染色体(ゲノム)DNA分子は、2つのプラスミド、具体的にはコスミドSuperCos1およびpKC505に効率的にパッケージングされている(実施例1および2)。チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含むこれらの2つのコスミドは、チオコラリンの産生のための完全な生合成経路を再生するに十分なものである。よって、ある特定の実施態様では、本発明は、2つのコスミド中に、チオコラリン産生に実質的により効率的な手段を与える生合成チオコラリン遺伝子の完全クラスターを提供する。
【0033】
ある特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、所望により精製、単離された核酸分子である。ある特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、
配列番号1のヌクレオチド2〜535を含んでなる核酸分子(orf1);
配列番号1のヌクレオチド993〜1130cを含んでなる核酸分子(orf2);
配列番号1のヌクレオチド1517〜2131を含んでなる核酸分子(tio3);
配列番号1のヌクレオチド2154〜2822cを含んでなる核酸分子(tio4);
配列番号1のヌクレオチド2970〜3791cを含んでなる核酸分子(tio5);
配列番号1のヌクレオチド3794〜4777cを含んでなる核酸分子(tio6);
配列番号1のヌクレオチド4904〜5611を含んでなる核酸分子(tio7);
配列番号1のヌクレオチド5701〜6426cを含んでなる核酸分子(tio8);
配列番号1のヌクレオチド6426〜7688cを含んでなる核酸分子(tio9);
配列番号1のヌクレオチド7733〜8524cを含んでなる核酸分子(tio10);
配列番号1のヌクレオチド8791〜10002を含んでなる核酸分子(tio11);
配列番号1のヌクレオチド10002〜11590cを含んでなる核酸分子(tio12);
配列番号1のヌクレオチド11847〜13634を含んでなる核酸分子(tio13);
配列番号1のヌクレオチド13734〜15005cを含んでなる核酸分子(tio14);
配列番号1のヌクレオチド15005〜16354cを含んでなる核酸分子(tio15);
配列番号1のヌクレオチド16441〜18744cを含んでなる核酸分子(tio16);
配列番号1のヌクレオチド18774〜19055cを含んでなる核酸分子(tio17);
配列番号1のヌクレオチド19260〜20036を含んでなる核酸分子(tio18);
配列番号1のヌクレオチド20146〜20880cを含んでなる核酸分子(tio19);
配列番号1のヌクレオチド21188〜28969を含んでなる核酸分子(tio20);
配列番号1のヌクレオチド28979〜38398を含んでなる核酸分子(tio21);
配列番号1のヌクレオチド38449〜38661を含んでなる核酸分子(tio22);
配列番号1のヌクレオチド38642〜41263を含んでなる核酸分子(tio23);
配列番号1のヌクレオチド41835〜42368を含んでなる核酸分子(tio24);
配列番号1のヌクレオチド42395〜43255cを含んでなる核酸分子(tio25);
配列番号1のヌクレオチド43340〜43741cを含んでなる核酸分子(tio26);
配列番号1のヌクレオチド44152〜49563を含んでなる核酸分子(tio27);
配列番号1のヌクレオチド49635〜53669を含んでなる核酸分子(tio28);
配列番号1のヌクレオチド53749〜55305cを含んでなる核酸分子(orf29);
配列番号1のヌクレオチド55384〜57222cを含んでなる核酸分子(orf30);
配列番号1のヌクレオチド57895〜58467cを含んでなる核酸分子(orf31);
配列番号1のヌクレオチド58535〜59206cを含んでなる核酸分子(orf32);
配列番号1のヌクレオチド59298〜59564cを含んでなる核酸分子(orf33);
配列番号1のヌクレオチド59611〜60114cを含んでなる核酸分子(orf34);
配列番号1のヌクレオチド60202〜60888を含んでなる核酸分子(orf35);
配列番号1のヌクレオチド60960〜62240を含んでなる核酸分子(orf36);
配列番号1のヌクレオチド62300〜62833を含んでなる核酸分子(orf37);
配列番号1のヌクレオチド62925〜64650を含んでなる核酸分子(orf38);または
生合成チオコラリン産生経路タンパク質の生物学的に活性な断片をコードするそれらの断片からなる群から選択される。
【0034】
別の特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、2以上の生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、所望により精製、単離された核酸分子である。ある特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、orf1、orf2、tio3、tio4、tio5、tio6、tio7、tio8、tio9、tio10、tio11、tio12、tio13、tio14、tio15、tio16、tio17、tio18、tio19、tio20、tio21、tio22、tio23、tio24、tio25、tio26、tio27、tio28、orf29、orf30、orf31、orf32、orf33、orf34、orf35、orf36、orf37、orf38として同定されている遺伝子、および生合成チオコラリン産生経路タンパク質の生物学的に活性な断片をコードするそれらの断片から選択される2以上の遺伝子を含んでなる。
【0035】
別の特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質、またはその生物学的に活性な断片、またはその突然変異体もしくは変異体をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、所望により、精製、単離された核酸分子であり、該タンパク質は、ORF1(配列番号2)、ORF2(配列番号3)、Tio3(配列番号4)、Tio4(配列番号5)、Tio5(配列番号6)、Tio6(配列番号7)、Tio7(配列番号8)、Tio8(配列番号9)、Tio9(配列番号10)、Tio10(配列番号ll)、Tio11(配列番号12)、Tio12(配列番号13)、Tio13(配列番号14)、Tio14(配列番号15)、Tio15(配列番号16)、Tio16(配列番号17)、Tio17(配列番号18)、Tio18(配列番号19)、Tio19(配列番号20)、Tio20(配列番号21)、Tio21(配列番号22)、Tio22(配列番号23)、Tio23(配列番号24)、Tio24(配列番号25)、Tio25(配列番号26)、Tio26(配列番号27)、Tio27(配列番号28)、Tio28(配列番号29)、ORF29(配列番号30)、ORF30(配列番号31)、ORF31(配列番号32)、ORF32(配列番号33)、ORF33(配列番号34)、ORF34(配列番号35)、ORF35(配列番号36)、ORF36(配列番号37)、ORF37(配列番号38)、ORF38(配列番号39)として同定されているタンパク質からなる群から選択される。該タンパク質は、チオコラリンの生合成を担う遺伝子(配列番号1)のクラスターの対応する上記orf(orf1、orf2、tio3、tio4、tio5、tio6、tio7、tio8、tio9、tio10、tio11、tio12、tio13、tio14、tio15、tio16、tio17、tio18、tio19、tio20、tio21、tio22、tio23、tio24、tio25、tio26、tio27、tio28、orf29、orf30、orf31、orf32、orf33、orf34、orf35、orf36、orf37、orf38)から、また、その対応する領域、突然変異体または変異体から得ることができる。
【0036】
別の特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、生合成チオコラリン産生経路タンパク質の少なくとも1つの変異体またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、所望により精製、単離された核酸分子であり、該変異体は、そのアミノ酸配列が配列番号2〜39に示されているタンパク質から選択されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と少なくとも30%、有利には50%、好ましくは60%、より好ましくは70%、いっそうより好ましくは80%、特に90%、より特定的には95%以上のアミノ酸配列同一性を有する。該変異体は、チオコラリン生合成を担う遺伝子のクラスターのorfのいずれかにコードされている対応するタンパク質の少なくとも1つの生物活性を保存している。
【0037】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明の核酸分子、好ましくは単離された核酸分子を含んでなる組成物に関する。ある特定の実施態様では、該組成物は、一つの本発明の核酸分子を含んでなる。別の特定の実施態様では、該組成物は、2以上の本発明の核酸分子を含んでなる。該核酸分子はDNAおよびRNAのいずれであってもよい。
【0038】
本発明の核酸分子は、チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターが好適な宿主細胞に挿入されているので、天然または組換えいずれかの、いずれのチオコラリン産生生物からでも単離することができるが、ある特定の実施態様では、本発明の核酸分子は海洋アクチノミセス属ミクロモノスポラ種ML1から単離されたものである(実験の部、工程1、実施例1〜4参照)。
【0039】
好適な宿主細胞からの(染色体)ゲノムDNAおよびクローニングされた組換えDNAの単離および同定は、好適な遺伝子ライブラリーを追跡するためのプローブとして全ヌクレオチド配列またはその一部を用い、通常または厳密なハイブリダイゼーション法により行うことができる。
【0040】
よって、別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子またはその断片を含んでなるプローブに関する。一般に、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60またはそれを超えるヌクレオチドの配列を含むのが好適である。20〜60ヌクレオチド長の配列が好ましい。ある特定の実施態様では、該プローブは、ミクロモノスポラ種のチオコラリンの生合成に関与する遺伝子を検出するために使用できる。チオコラリンの生合成に関連する、例えばgDNA、cDNAまたはmRNAなどの核酸を検出するための該プローブの使用は、本発明のさらなる態様をなす。
【0041】
あるいは、好適な宿主細胞からの(染色体)ゲノムDNA、また、クローニングされた組換えDNAの単離および同定は、核酸の酵素的増幅に基づく技術により行うことができる。例としては、例えばPCRなどの酵素的増幅反応に使用可能なイニシエーターオリゴヌクレオチドを設計し(チオコラリンの生合成に関与するDNAおよびタンパク質の既知配列に基づく)、他の同一または関連の配列を増幅し、同定することができる。
【0042】
本発明の核酸分子は、常法により単離および所望により精製することができる。本発明の核酸分子は一般に組換え体または単離法により得られるが、本発明ではまた、本発明の核酸分子が化学合成により得られることも意図しており、これらの分子は野生型(wt)および突然変異体双方のチオコラリン産生生物に由来するものと同じ、または実質的に同じ構造を有する。
【0043】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードする本発明の核酸分子を含んでなるベクター(以下「本発明のベクター」という)に関する。ある特定の実施態様では、本発明のベクターは、クローニングベクターまたは発現ベクターなどの生物学的に機能的なベクターまたはプラスミドである。
【0044】
ある特定の実施態様では、本発明のベクターはクローニングベクター、好ましくはコスミドである。好ましいクローニングベクターは、それらが大きなDNA配列(例えば、目的生成物の生合成に関与する完全な遺伝子クラスター)を組み込めるかどうかによって選択される。該ベクターは一般に従来のベクターであり、市販されている。本発明はさらに、遺伝物質が当業者に公知の技術による遺伝子操作により単一のクローニングベクターまたはプラスミド(例えば、コスミド)に最終的に含まれるように減量できることを意図する。このような再配列は、クローニング、PCRもしくは合成遺伝子または当技術分野の現状において既知のこれら技術の組合せにより行うことができる。
【0045】
別の特定の実施態様では、本発明のベクターは、好適な宿主細胞への挿入に好適な発現ベクターである。該ベクターの該好適な宿主細胞への挿入は、従来の遺伝物質導入法(例えば、形質転換、トランスフェクションなど)のいずれによって行うこともできる。
【0046】
よって、別の態様では、本発明は、本発明のベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞(以下「本発明の宿主細胞」という)に関する。本発明の宿主細胞は、1以上の本発明の核酸分子を含む。ある特定の実施態様では、本発明の宿主細胞は、単一の本発明の核酸分子を含む。別の特定の実施態様では、本発明の宿主細胞は2以上の本発明の核酸分子を含み、この場合、本発明の核酸分子は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0047】
好ましい本発明の宿主細胞は、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる本発明の(外因性)核酸分子を含んでなる本発明のベクターで、チオコラリンの生合成および/または再配列を指示するのに十分な様式で安定的に形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞である。この宿主細胞は、好ましくは微生物、より好ましくは細菌である。ある特定の実施態様では、該宿主細胞は、例えば、アクチノミセス属、ストレプトミセス属などのグラム陽性菌である。
【0048】
本発明の実施例では、ストレプトミセス・コエルコロル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトミセス・アルブス(Streptomyces albus)およびストレプトミセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)などの種々のストレプトミセス種を用いたが、チオコラリンの生合成に関与する遺伝子の異種発現は、本発明のベクターで、好ましくは安定的に形質転換可能な限り、他のストレプトミセス属、アクチノミセス属で行うこともできる。タンパク質のin vitro発現は所望により常法を用いて行うことができる。
【0049】
ある特定の実施態様では、本発明は、例えば、本発明の核酸分子の少なくとも1領域が、対応する非組換え宿主、すなわち、野生型チオコラリン産生細胞(細菌)に比べて変更されたチオコラリンレベルを産生する、組換え細菌などの組換え宿主細胞を生じるように変更されている組換え細菌などの組換え宿主細胞を提供する。このために、例えば、チオコラリンの産生に関与するNRPSの最も重要なドメインを担う遺伝子のコピー数を増やすか、または当技術分野の現状において既知の遺伝子操作技術によりこれらの遺伝子の遺伝子発現調節配列を増やして、チオコラリン産生の収量を高めることを含む、当業者に公知の常法を使用することができる。
【0050】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子にコードされているタンパク質(以下「本発明のタンパク質」という)に関する。
【0051】
本明細書において「タンパク質」とは、チオコラリン産生のための生合成経路に含まれる、本発明の核酸分子にコードされているポリペプチドおよび酵素などを意味する。本発明のタンパク質は、アミノ酸部分が共有ペプチド結合により連結されている、全長アミノ酸鎖などの様々な鎖長のアミノ酸鎖、ならびにチオコラリンの生合成に関与する該タンパク質の生物学的に活性な断片、ならびにその生物学的に活性な変異体を含む。本発明のタンパク質は、天然型であっても組換え型であっても合成品であってもよい。例として、チオコラリンの生合成に関与する該タンパク質は、従来の組換えDNA技術により、またはそのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を好適な発現ベクターに挿入し、そのタンパク質を好適な宿主細胞内で発現させること、または、例えば、アミノ酸が1個ずつ連続的にアミノ酸鎖に連結されるMerrifield (Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154 (1963))の固相ペプチド合成法によるなどの従来の化学的ペプチド合成により製造することができる。あるいは、本発明のタンパク質は、種々の製造業者(例えば、Perkin-Elmer, Inc.)が販売している自動タンパク質合成装置を用いて合成することもできる。
【0052】
本発明の範囲内に含まれる生物学的に活性な変異体は、本発明の核酸分子にコードされているアミノ酸配列の少なくとも1つの生物学的に活性な断片、そのタンパク質の活性な機能を保持したタンパク質構造の一部、例えば、tio18遺伝子にコードされているTio18タンパク質と同じ、または実質的に同じ活性を有する、tio18遺伝子にコードされているチオエステラーゼ部分(すなわち、これは、少なくとも同じ、または少なくともおよそ70%、有利には少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは約95%の力を有する)を含む。
【0053】
本発明のタンパク質の生物学的に活性な変異体は、アミノ酸、天然に存在する対立遺伝子などが除去、置換または付加されている活性なアミノ酸構造を含む。生物学的に活性な断片は、断片を調製するために全長タンパク質に化学的または酵素的消化を施した後、全長タンパク質と同じまたは実質的に同じ生物活性を保存しているアミノ酸構造断片をアッセイすることにより容易に同定することができる。
【0054】
ある特定の実施態様では、本発明のタンパク質は、orf1、orf2、tio3、tio4、tio5、tio6、tio7、tio8、tio9、tio10、tio11、tio12、tio13、tio14、tio15、tio16、tio11、tio18、tio19、tio20、tio21、tio22、tio23、tio24、tio25、tio26、tio27、tio28、orf29、orf30、orf31、orf32、orf33、orf34、orf35、orf36、orf37およびorf38として同定される遺伝子からなる群から選択される遺伝子にコードされている、チオコラリンの生合成に関与する、所望により精製、単離されたタンパク質である。
【0055】
別の特定の実施態様では、本発明のタンパク質は、ORF1(配列番号2)、ORF2(配列番号3)、Tio3(配列番号4)、Tio4(配列番号5)、Tio5(配列番号6)、Tio6(配列番号7)、Tio7(配列番号8)、Tio8(配列番号9)、Tio9(配列番号10)、Tio10(配列番号11)、Tio11(配列番号12)、Tio12(配列番号13)、Tio13(配列番号14)、Tio14(配列番号15)、Tio15(配列番号16)、Tio16(配列番号17)、Tio17(配列番号18)、Tio18(配列番号19)、Tio19(配列番号20)、Tio20(配列番号21)、Tio21(配列番号22)、Tio22(配列番号23)、Tio23(配列番号24)、Tio24(配列番号25)、Tio25(配列番号26)、Tio26(配列番号27)、Tio27(配列番号28)、Tio28(配列番号29)、ORF29(配列番号30)、ORF30(配列番号31)、ORF31(配列番号32)、ORF32(配列番号33)、ORF33(配列番号34)、ORF34(配列番号35)、ORF35(配列番号36)、ORF36(配列番号37)、ORF37(配列番号38)、ORF38(配列番号39)として同定されているタンパク質、ならびにそれらの組合せ、またはそれらの生物学的に活性な断片からなる群から選択される、チオコラリンの生合成に関与する、所望により精製、単離されたタンパク質である。これらタンパク質の推定機能は表1に含まれている。
【0056】
チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードし、該化合物の生合成を担う遺伝子クラスターのorfは、常法を用いて同定することができる。このような技術の限定されない例としては、停止コドンおよび開始コドンの位置決定、それらコドンの頻度に基づくリーディングフレームの推定位置、他のアクチノミセスで発現される遺伝子との類似性によるアライメントなどのためのコンピューター解析を含む。よって、本発明のタンパク質は本発明のヌクレオチド配列を用いて同定することができ、orfまたはそれらにコードされているタンパク質を単離および所望により精製すること、あるいは化学法により合成することができる。orfに基づく該産物の発現のための遺伝子構築物が設計可能であり、好適な発現調節エレメント(プロモーター、ターミネーターなど)を含めることができ、該遺伝子構築物を、1以上のorfにコードされているタンパク質を発現させるために好適な宿主細胞に導入することができる。
【0057】
本発明のタンパク質は、常法により単離し、所望により精製することができる。これらのタンパク質は実質的に純粋な形態で得られることが好ましいが、より低い純度、一般におよそ80%〜90%の純度でも許容される。本発明はまた、本発明のタンパク質が化学合成により得られることも意図しており、それらのタンパク質は野生型(wt)および突然変異型双方のチオコラリン産生生物に直接由来するものと同じまたは実質的に同じ構造を有する。
【0058】
別の態様では、本発明は、チオコラリンの生合成に関与する本発明のタンパク質を製造する方法であって、チオコラリン産生生物を好適な(栄養および環境)条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンの生合成に関与する1以上のタンパク質を単離することを含む方法に関する。所望により、本発明のタンパク質は、これまでに記載されているものなどの常法により単離および精製することができる。
【0059】
別の態様では、本発明は、チオコラリンを製造する方法であって、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子のコピー数が増加されたチオコラリン産生生物を該化合物の産生に好適な条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含む方法に関する。
【0060】
ある特定の実施態様では、チオコラリン産生生物は、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子のコピー数が増加された、例えばミクロモノスポラ種などのアクチノミセス属である。チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子のコピー数の増加は、当業者に公知の常法により行うことができる。この場合、これまでに記載されている方法は、チオコラリンの産生に関与する遺伝子の発現に好適な栄養および環境条件下で該生物を発酵させることを含む。所望により、産生されたチオコラリンを常法により培養培地から単離および精製することができる。
【0061】
別の態様では、本発明は、チオコラリンの生合成を担うタンパク質をコードする遺伝子の発現が、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする1以上の遺伝子を操作もしくは置換することにより、または該遺伝子の発現の調節を担う配列を操作することにより調節されているチオコラリン産生生物を、該化合物の産生に好適な条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含む、チオコラリンの製造方法に関する。チオコラリンの生合成を担う該タンパク質をコードする遺伝子の発現は向上されていることが好ましい。このために、チオコラリン生合成過程に必須でない遺伝子配列を除去することもできるし、あるいは該遺伝子の遺伝子発現調節配列の効率を当業者に公知の一連の遺伝子工学により高めることもできる。こうして、チオコラリンの産生の収量を高めることができる。チオコラリン生合成過程に必須でない遺伝子配列を除去するため、または該遺伝子の遺伝子発現調節配列の効率を高めるための遺伝子操作は、当業者に公知の遺伝子工学技術により行うことができる。
【0062】
ある特定の実施態様では、このチオコラリン産生生物は、チオコラリンの生合成を担うタンパク質をコードする遺伝子の発現が、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする1以上の遺伝子を操作または置換することにより、あるいは該遺伝子の発現の調節を担う配列を操作することにより調節されている(当業者に公知の常法により行うことができる)、例えばミクロモノスポラ種などのアクチノミセス属である。この場合、上述の方法は、該生物を、チオコラリンの産生に関与する遺伝子の発現に好適な栄養および環境条件下で発酵させることを含む。所望により、産生されたチオコラリンを常法により培養培地から単離および精製することができる。
【0063】
別の態様では、本発明は、チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含んでなる本発明のベクターで形質転換またはトランスフェクトされた本発明の宿主細胞を、該化合物の産生に好適な条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含む、チオコラリンの製造方法に関する。(栄養、環境などの)条件は、宿主細胞の性質によって選択する。
【0064】
ある特定の実施態様では、本発明の宿主細胞は、チオコラリンを天然で産生する生物、チオコラリンを天然で産生しない生物およびチオコラリンの産生のために遺伝的に操作された生物から選択される。ある特定の実施態様では、本発明の宿主細胞は、アクチノミセス属またはストレプトミセス属である。
【0065】
別の態様では、本発明は、ミクロモノスポラ種ML1由来のチオコラリン生合成を担う遺伝子の使用に基づく、別のアクチノミセス属における該化合物の製造のための方法であって、
(1)チオコラリン生合成経路の特定の遺伝子に改変を有する突然変異体を得ること;
(2)チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含むミクロモノスポラ種ML1染色体領域を単離すること;
(3)チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を得て分析すること;および
(4)他のアクチノミセス属でチオコラリンを異種産生させること
を含む方法に関する。
【0066】
チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含むミクロモノスポラ種ML1染色体領域の同定および単離、ならびに該クラスターのヌクレオチド配列の分析は、本明細書中の実施例で非限定的に例示される、本発明により提供される技術に基づいて行うことができる。
【0067】
チオコラリン生合成経路の特定の遺伝子に改変を有する突然変異体は、常法により同定することができる。ある特定の実施態様では、該突然変異体は、培養し、例えば実施例5に記載されているようなHPLC−MSなどの常法によりチオコラリンの産生を測定することによって確認することができる。
【0068】
チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターの全部または一部は、チオコラリンの産生に好適な条件下で好適な栄養培地を用いて発酵させることによるチオコラリンの異種産生のために、例えば形質転換またはトランスフェクションなどの常法によりアクチノミセス属に導入することができ、このようにして得られたチオコラリンは、所望により常法により単離および/または精製することができる。
【0069】
チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターの同定は、商業上大きな重要性を持っている。本発明により提供されるチオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターが単離され、完全に記載されれば、チオコラリンの産生およびチオコラリン産生生物の操作が可能となる。この意味で、チオコラリンの産生に関与するNRPSの最も重要なドメインを担う遺伝子のコピー数を増加させることもできるし、あるいはそれらの遺伝子の遺伝子発現調節配列の効率を、当技術分野の現状において既知の遺伝子工学技術により高めることもでき、このようにしてその産生収量を高めることができる。
【0070】
本発明により提供されるチオコラリン遺伝子の完全クラスターの同定およびクローニングに伴うもう1つの利点は、チオコラリンの効率的産生に関する。実際、これにより少ない工程数で対象化合物を得ることができる。クラスター突然変異体における生合成過程に必須でない配列の除去は、対象化合物の産生に必要な時間を大幅に短縮する。残った配列は、チオコラリンの産生に十分なものであり、チオコラリンを産生するためのそれらの機能を保持している。
【実施例】
【0071】
実験の部
本発明の実験手順は、当技術分野の現状において通常の分子生物学的方法を含む。本明細書では説明されない技術に関する詳細は、Kieser et al. (Practical Streptomyces genetics. The John Innes Foundation, Norwich, Great Britain, 2000)およびSambrook et al. (Molecular cloning: a laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, USA, 2001)の手引き書に示されている。限定されるものではないが、以下の工程は、本発明を詳細に説明するものである。
【0072】
工程1.チオコラリン生合成経路遺伝子を含むミクロモノスポラ種ML1染色体領域の単離
実施例1:ミクロモノスポラ種ML1染色体DNA由来のSuperCos1における遺伝子ライブラリーの構築
染色体DNAは、Pharma Mar, S.A.カルチャーコレクションにおいて、MIAM2培地(5g/lの酵母抽出物、3g/lの食肉抽出物、5g/lのトリプトン、5g/lのグルコース、20g/lのデキストリン、4g/lのCaCO3、10g/lの海塩pH6.8)中で入手できるミクロモノスポラ種ML1培養物(Espliego, F. Ph.D. Thesis, 1996, University of Leon; de la Calle, F. Ph.D. Thesis, 1998, Autonomous University of Madrid)から脱塩プロトコール(Kieser et al. 2000)を用いて得た。この染色体DNAをBamHIエンドヌクレアーゼで部分消化し、得られた断片を用いて、BamHIで消化したコスミドSuperCos 1(Stratagene)において遺伝子ライブラリーを作製した。大腸菌XL−1 Blue MR(Stratagene)におけるこの遺伝子ライブラリーの生成は、既に記載されている手順(Sambrook et al. 2001)に従い、in vitroパッケージングキットGigapack III Goldパッケージング抽出キット(Stratagene)で行った。
【0073】
1,000個の大腸菌形質導入コロニーをナイロン膜に付着させ、通常のプロトコール(Sambrook et al. 2001)によりin situコロニーハイブリダイゼーション分析を行った。
【0074】
実施例2:ミクロモノスポラ種ML1染色体DNAからのpKC505における遺伝子ライブラリーの構築
染色体DNAは、MIAM2培地中のミクロモノスポラ種ML1培養物から脱塩プロトコール(Kieser et al. 2000)を用いて得た。この染色体DNAをSau3AIエンドヌクレアーゼで部分消化し、得られた断片を用いて、BamHIで消化した二機能性コスミド大腸菌(Escherichia coli)/ストレプトミセスpKC505(Richardson at al. 1987, Gene 61, 231-241)において遺伝子ライブラリーを作製した。大腸菌ED8767におけるこの遺伝子ライブラリーの作製は、すでに記載されている手順(Sambrook et al. 2001)に従い、in vitroパッケージングキットGigapack III Goldパッケージング抽出キット(Stratagene)で行った。
【0075】
3,300の大腸菌形質導入コロニーを、TSB培地(Merck)を25μg/mlのアプラマイシンを含む96ウェルマイクロタイタープレートに付着させ、30℃で24時間インキュベートした。これらのクローンを、25μg/mlのアプラマイシンを含むTSA(Tryptic Soy Agar)に複製させ、30℃で一晩の後、コロニーをナイロン膜に移し、通常のプロトコール(Sambrook et al. 2001)によりin situコロニーハイブリダイゼーションを行った。
【0076】
実施例3:NRPSにおけるアデニル化ドメインに特異的なオリゴヌクレオチドの設計およびミクロモノスポラ種ML1染色体DNAからのそれらのPCR増幅
チオコラリンの構造に基づけば、その生合成を担うNRPSは、L−システインを活性化する1〜3のアデニル化ドメインと1つのグリシン活性化ドメインを持つと予測された。これを基礎に、NRPSアデニル化ドメイン内で保存されている領域に基づき、NRPSアデニル化ドメインの増幅に関して文献に記載されているオリゴヌクレオチドと組み合わせたNRPSアデニル化ドメインをコードするDNA断片を特異的に増幅し得る縮重したオリゴヌクレオチドを設計した。
【0077】
イニシエーターオリゴヌクレオチド:
MTF2(5’−GCNGGYGGYGCNTAYGTNCC−3’;Neilan et al. 1999. J. Bacteriol. 181(13):4089-4097)および
PSV−4(5’−SAGSAGGSWGTGGCCGCCSAGCTCGAAGAA−3’)
を用いてPCR増幅を行ったところ、1.3kbのバンドが得られ、これをPGEM−T Easyベクター(Promega)にクローニングした。用いたPCRプログラムは、95℃−2分;60℃−15分;72℃−6分の初期サイクルの後、95℃−1分;60℃−2分;72℃−2分の20サイクルであった。ミクロモノスポラ種ML1染色体DNAを鋳型として用いた。
【0078】
これらのクローンを制限断片長多型(RFLP)により分析したところ、ペプチドシンセターゼpGPSV1、pGPSV2およびpGPSV3に相当する3つの異なるクローンが存在することが示され、これらはそれぞれPSV1、PSV2およびPSV3と呼ばれるアデニル化ドメイン断片を含んでいた。
【0079】
次に、これらのクローンの挿入部をEcoRI消化で遊離させ、その断片をpBBR1−MCS2(Kovach, M.E. et al. 1995. Gene. 166:175-176)にクローニングし、それぞれプラスミドpBPSV1、pBPSV2およびpBPSV3を構築し、これらはそれぞれPSV1、PSV2およびPSV3と呼ばれるアデニル化ドメイン断片を含んでいた。
【0080】
イニシエーターオリゴヌクレオチドMTF2およびPS4で得られたPCバンドから、イニシエーターオリゴヌクレオチドPS2−TG:5’−ACNGGNMRNCCNAARGG−3’およびMTR:5’−CCNCGDATYTTNACY−3’(Neilan et al. 1999. J. Bacteriol. 181(13):4089-4097)を用いてネスティッド−PCR(95℃−1分;60℃−1分;72℃−1分の30サイクル)を行い、750bpのバンドを得、これをPGEM−T Easyベクター(Promega)にクローニングした。これらのクローンをRFLPにより分析したところ、ペプチドシンセターゼpGPSV4およびpGPSV5にそれぞれ相当する2つの異なる新たなクローン種が存在することを示し、それぞれPSV4およびPSV5と呼ばれるアデニル化ドメイン断片を含んでいた。
【0081】
イニシエーターオリゴヌクレオチドPS2M:5’−TACACSGGCWSSACSGG−3’およびPSV−4を用いてPCR増幅を行ったところ1.3kbのバンドが得られ、PGEM−T Easyベクターへクローニングした。用いたプログラムは、アニーリング温度72℃5サイクルによるタッチダウンスタートの後、70℃のアニーリング10サイクル、最後に68℃での20サイクル(96℃−1分;72℃−68℃−2分;72℃−3分)であった。これらのクローンをRFLPにより分析したところ、ペプチドシンセターゼpGPSV6に相当する新たなクローン種であることが示され、これはPSV6と呼ばれるアデニル化ドメイン断片を含んでいた。
【0082】
実施例4:コロニーハイブリダイゼーションによる遺伝子ライブラリーの分析
SuperCos1およびpKC505で構築された遺伝子ライブラリー(実施例1および2)に対し、DIG DNA標識および検出キット系(Roche)を用いて、in situコロニーハイブリダイゼーション分析(Sambrook et al. 2001)を個々に行った。PSV1〜PSV6と呼ばれる6つのアデニル化ドメイン断片をプローブとして用いた。
【0083】
以下のものがSuperCos1で構築された遺伝子ライブラリーから得られた。
・断片PSV1とハイブリダイズした、pCT1a、pCT1bおよびpCT1cと呼ばれる3つの陽性コスミド(クローン)
・断片PSV2とハイブリダイズした、pCT2a、pCT2bおよびpCT2cと呼ばれる3つの陽性コスミド(クローン)(これらの断片のうち、pCT2cは断片PSV5ともハイブリダイズした)
・断片PSV3とハイブリダイズした、pCT3aおよびpCT3bと呼ばれる2つの陽性コスミド(クローン)(さらに、双方ともPSV6ともハイブリダイズした)および
・断片PSV4とハイブリダイズした、pCT4aと呼ばれる1つの陽性コスミド(クローン)。
【0084】
pKC505で構築された遺伝子ライブラリーからは55の陽性コスミドが得られた。
・断片PSV2とハイブリダイズした、cosVl−F8、cosV7−D2、cosV7−D12、cosV14−H4、cosV19−B4、cosV29−B9、cosV31−B11、cosV31−H10、cosV33−D12、cosV33−F7と呼ばれる10の陽性コスミド(クローン)
・断片PSV5とハイブリダイズした、COSV1−B6、cosV6−H8、cosVll−F10、cosV20−F8、cosV22−F7、cosV25−B3、cosV32−B4と呼ばれる7つの陽性コスミドおよび
・断片PSV1、PSV3、PSV4またはPSV6とハイブリダイズした、cosV1−B7、cosV1−F5、cosV2−E5、cosV2−F11、cosV3−D9、cosV4−D2、cosV5−D7、cosV5−G6、cosV6−A7、cosV6−A12、cosV7−E7、cosV8−F8、cosV9−H7、cosV10−A3、cosV11−B4、cosV11−G2、cosV12−B12、cosV13−B2、cosV16−H11、cosV17−A3、cosV19−F4、cosV20−B3、cosV20−H5、cosV21−H6、cosV22−B11、cosV23−F8、cosV26−H11、cosV28−G1、cosV29−E1、cosV29−G6、cosV30−G5、cosV31−A12、cosV31−E10、cosV32−A7、cosV32−D10、cosV33−A8、cosV33−D10、cosV33−F10と呼ばれる38の陽性コスミド。
【0085】
工程2:単離された6つのアデニル化領域における突然変異体の作出
【0086】
ミクロモノスポラ種ML1染色体DNA(PSV1、PSV2、PSV3、PSV4、PSV5およびPSV6)から従前に増幅した6つのアデニル化ドメイン断片を、チオコラリンの生合成に関与する領域を評価することを目的とした独立した遺伝子分断実験に用いた(実施例6〜11)。
【0087】
接合性プラスミド大腸菌/ストレプトミセスpOJ260(Bierman et al. 1992, Gene 116, 43-49)を用い、それぞれPSV1〜PSV6を含む構築物pFL903、pFL904、pFL905、pFL906、pFL940およびpFL941を作出した。これらの構築物を接合性大腸菌ET12567(pDB307)株(Kieser et al. 2000)に導入し、そしてここから、記載の手順(Kieser et al. 2000)を用い、接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンをアプラマイシンで選択し、適切な染色体領域に組み込まれているかどうか、アデニル化ドメイン断片PSV1〜PSV6の相当する領域を用い、サザンハイブリダイゼーションにより確認した。PSVアデニル化ドメイン(PSV1〜PSV6)を各領域から選択した交差接合体をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次に、それらの菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLC−MSにより分析した(実施例5)。アデニル化ドメインPSV2およびPSV5に作用する突然変異は、チオコラリンを産生しない表現型を有する(実施例7および10)。PSV1、PSV3、PSV4およびPSV6に欠失を有する突然変異体におけるチオコラリンの産生は、野生株wtと同様であった(実施例6、8、9および11)。これらの実験は、アデニル化ドメインPSV2およびPSV5がチオコラリンの生合成に関与していることを示した。
【0088】
実施例5:チオコラリン産生のHPLC検出
分析した種々の株のアセトニトリル抽出物をロータリーエバポレーターで濃縮し、DMSOに再懸濁させた後、HPLC−MS分析に用いた。
【0089】
サンプル(10μ1)を、アセトニトリルおよび水中0.1%のトリフルオロ酢酸の混合物を溶媒とし、逆相カラム(Symmetry C18、2.1×150mm、Waters)を用いてHPLCにより分析した。最初の4分間は、移動相の濃度をアセトニトリル10%で一定に維持した。次に、30分まで、10%〜100%のアセトニトリルの直線勾配を開始した。用いた流速は0.25ml/分であった。スペクトル検出およびピーク同定はフォトダイオード検出器を用い、Millenniumコンピューターソフトウエア(Waters)を用いて行った。クロマトグラムは230nmの吸光度で抽出したものである。
【0090】
実施例6:PSV1領域における遺伝子分断
PSV1領域はプラスミドpBPSV1から1.3kbのEcdRIバンドとして得、接合性プラスミド大腸菌/ストレプトミセスpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL903を作出した。pOJ260はストレプトミセスにアプラマイシン耐性を付与する遺伝子を含み、これらの細胞では、それは自殺プラスミドである。
【0091】
この構築物pFL903を接合性大腸菌ET12567(pUB307)に導入し、そしてここから、記載の手順(Kieser et al. 2000)を用い、接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV1領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV1バンドであった。
【0092】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV1をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLC−MSにより分析し(実施例5参照)、チオコラリン産生体であることが分かった。培養培地MT4 1リットル当たりの組成は次の通りである:6gのダイズ粉末、2.5gの麦芽抽出物、2.5gのペプトン、5gのデキストロース、20gのデキストリン、4gのCaCO3、10gの海塩、pH6.8に調整。
【0093】
実施例7:PSV2領域における遺伝子分断
PSV2領域はプラスミドpBPSV2から1.3kbのEcoRIバンドとして得、プラスミドpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL904を作出した。
【0094】
この構築物pFL904を接合性大腸菌ET12567株(pUB307)に導入し、そしてここから、接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV2領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV2バンドであった。
【0095】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV2をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLC−MSにより分析したところ(実施例5)、結果としてこの株はチオコラリンを産生しないことが分かった。
【0096】
実施例8:PSV3領域における遺伝子分断
PSV3領域はプラスミドpBPSV3から1.4kbのEcoRIバンドとして得、プラスミドpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL905を作出した。
【0097】
この構築物pFL905を接合性大腸菌ET12567(pUB307)株に導入し、そしてここから接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV3領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV3バンドであった。
【0098】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV3をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLC−MSにより分析したところ(実施例5)、チオコラリン産生体であることが分かった。
【0099】
実施例9:PSV4領域における遺伝子分断
PSV4領域はプラスミドpGPSV4から1.2kbのEcoRIバンドとして得、プラスミドpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL906を作出した。
【0100】
この構築物pFL906を接合性大腸菌ET12567(pUB307)株に導入し、そしてここから接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV4領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV4バンドであった。
【0101】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV4をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLC−MSにより分析したところ(実施例5)、チオコラリン産生体であることが分かった。
【0102】
実施例10:PSV5領域における遺伝子分断
PSV5領域はプラスミドpGPSV5から1.1kbのEcoRIバンドとして得、プラスミドpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL940を作出した。
【0103】
この構築物pFL940を接合性大腸菌ET12567(pUB307)株に導入し、そしてここから接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV5領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV5バンドであった。
【0104】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV5をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLCにより分析したところ、結果としてこの株はチオコラリンを産生しないことが分かった。
【0105】
実施例11:PSV6領域における遺伝子分断
PSV6領域はプラスミドpGPSV6から1.1kbのEcoRIバンドとして得、プラスミドpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL941を作出した。
【0106】
この構築物pFL941を接合性大腸菌ET12567(pUB307)株に導入し、そしてここから接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV6領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV6バンドであった。
【0107】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV6をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLCにより分析したところ、チオコラリン産生体であることが分かった。
【0108】
工程3:チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターのヌクレオチド配列の取得および分析
その遺伝子分断がチオコラリンを産生しない表現型を生じたものはアデニル化ドメインPSV2およびPSV5の増幅領域だけであったというこれまでの結果に基づき、2つの重複するコスミドcosV33D12(アデニル化ドメインPSV2の領域を含む)およびpCT2c(アデニル化ドメインPSV2およびPSV5の領域を含む)を配列決定のために選択した。該コスミドから得られた64,650bpの分析を行ったところ、36の完全ORFと2つの不完全ORFの存在が示され、その構成を図1に示す。種々の遺伝子から推定される産物のデータベースに存在するタンパク質配列と比較することで、それらのほとんどに関する機能の推定が可能であった(表1)。
【0109】
実施例12:コスミドcosV33−D12とpCT2cの挿入部のヌクレオチド配列の同定および分析
通常の方法およびウィスコンシン大学のthe Genetics Computer GroupからのプログラムパッケージGCGを用いて両コスミドを配列決定し、配列のコンピューター分析に用いた(Devereux et al. 1984, Nucleic Acid Res. 12, 387-395)。
【0110】
このようにして64,650ヌクレオチドの配列が得られ、そのコンピューター分析を行ったところ、38のORF[36の完全ORFと2つの不完全ORF]の存在が示され、その構成を図1に示す。これらのORFの遺伝子発現産物をBLASTプログラム(Altschul et al. 1997, Nucleic Acid Res. 25, 3389-3402)を用い、データベースに存在する既知の機能を有するタンパク質と比較し、これにより、これらのORFのほとんどのものの推定機能が割り付けられた(表1)。
【0111】
【表1】
【0112】
同定されたタンパク質のいくつかは、例えば同定されたNRPSの、Tio12、Tio17、Tio18、Tio19、Tio20、Tio21、Tio22、Tio27およびTio28のいくつかなどの、チオコラリンペプチド構造の形成に関与する。Tio5、Tio6およびTio23などの耐性過程に関連する可能性のあるタンパク質もいくつかある。これらの配列領域において同定された可能性のあるチオコラリン経路レギュレーターはTio3、Tio4、Tio7、Tio24、Tio25に相当する。最後に、イニシエーターユニット3−ヒドロキシ−キナルデート、Tio8、Tio9、Tio1OおよびTio11の形成に関連するタンパク質もいくつかある。
【0113】
その遺伝子分断がチオコラリンを産生しない表現型を生じる遺伝子が図1にアスタリスクで示されている(tio20、tio27およびtio28)。
【0114】
実施例13:tio28における遺伝子分断
チオコラリンの生合成においてTio28タンパク質が関与するかどうかを証明するために、tio28遺伝子の遺伝子分断およびアデニル化ドメインの1つだけの特異的遺伝子分断による不活性化を行った。
【0115】
このアデニル化ドメイン内の2つのイニシエーターオリゴヌクレオチド(FL−T−102upおよびFL−T−102rp)をデザインし、tio28における1,428塩基対を増幅するために用いた。このイニシエーターオリゴヌクレオチドの配列は次の通りである。
FL−T−102up:5’−ACCTGAGGTACTGGGCGCAGC−3’(21ヌクレオチド)
FL−T−102rp:5’−CCGATCACCACCACCGTGGC−3’(20ヌクレオチド)
【0116】
PCRプログラムは、94℃2分、30サイクル(94℃30秒、53℃60秒、68℃90秒)、68℃5分および4℃15分であった。PCR反応混合物は、1μlのコスミドpCT2c 鋳型DNA、1μlの各オリゴヌクレオチド30pmol/μl濃度、7.5μlの2mM dNTP溶液(dATP、dTTP、dCTPおよびdGTP)、1μlの50mM MgSO4、5μlのPfx反応バッファー(Invitrogene)、5μlのPfxエンハンサー溶液(Invitrogene)、28μlの蒸留水および0.5μlのPfxポリメラーゼ(Invitrogene)。
【0117】
PSV7と呼ばれる、得られたPCR産物をプラスミドpOJ260のEcoRV部位にクローニングし、pFL971を作出した。
【0118】
この構築物pFL971を接合性大腸菌ET12567(pUB307)株に導入し、そしてここから接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV7領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPCR産物PSV7であった。
【0119】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV7をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLCMSにより分析したところ(実施例5)、結果としてこの株はチオコラリンを産生しないことが分かった。
【0120】
工程4:他のアクチノミセス属におけるチオコラリンの異種発現
チオコラリンの生合成における同定された遺伝子の関与を確認するため、いくつかのストレプトミセス種におけるチオコラリン遺伝子クラスターの異種発現をアッセイした。配列番号1の1,393番(MseI制限部位)と54,301番(AclI制限部位)の間に含まれるDNA領域を大腸菌で複製可能なプラスミドに、その後、大腸菌で複製可能であって、ストレプトミセス属の組み込みが可能なプラスミドにクローニングするDNA断片として選択した。このDNA領域はtio3とtio28(双方とも含み、完全である)の間に位置する総てのORFを含む(図1)。このDNA領域の選択は、Tio3タンパク質とTio28タンパク質が、二次代謝タンパク質と類似性を示した配列決定領域内で最も外側のタンパク質であるということによった。
【0121】
そのサイズが大きいため、該DNA領域は、3つの異なるコスミド(cosV33−D12、cosV19−B4およびpCT2c)から得られた3つの独立したDNA断片:
・断片A(20.2kb):MseI(配列番号1の1,393番)〜NsiI(配列番号1の21,585番);
・断片B(19kb):NsiI(配列番号1の21,585番)〜EcoRI(配列番号1の40,636番);および
・断片C(13.7kb):EcoRI(配列番号1の40,636番)〜AclI(配列番号1の54,301番)
を連結する複数段階で得た。
【0122】
サブクローニングを助けるため、完全DNA断片をまず、大腸菌pOJ260で複製可能なプラスミドにサブクローニングした(実施例14)。この挿入部をレスキューし、エリスロマイシン耐性プロモーター(ermEp)(pARP)[実施例16]を含む、または該プロモーターを含まない(pAR15AT)[実施例15]、大腸菌で複製可能であって、ストレプトミセス属の組み込みが可能なベクターにサブクローニングした。選択されたこのDNA領域をストレプトミセスの組み込みが可能なプラスミドpAR15ATに双方向で(実施例17)、また、pARP(実施例18)にクローニングした。最後に、該構築物を属間接合により数種のストレプトミセスに導入した(実施例19)。
【0123】
実施例14:選択されたDNA領域の、大腸菌プラスミドpOJ260へのクローニング
制限部位EcoRI(配列番号1の40,636番)とAclI(配列番号1の54,301番)の間に位置するDNA領域を、コスミドpCT2(図2)から常法(Sambrook et al. 2001)により得た。このDNA断片を大腸菌プラスミドpUK21(Vieira et al. 1991, Gene 100, 189-194)のユニークな制限部位EcoRIおよびClaIにクローニングし、構築物pFL1023を作出した(図3)。
【0124】
制限部位NsiI(配列番号1の21,585番)とEcoRI(配列番号1の40,636番)の間に位置するDNA領域をコスミドcosV19−B4から常法(Sambrook et al. 2001)により得た。このDNA断片を大腸菌プラスミドpGEM−11Zf(Promega)のユニークな制限部位NsiIとEcoRIにクローニングし、構築物pFL1022(図3)を作出した。
【0125】
これら2つのDNA断片を次に連結した。このため、pFL1022に位置する制限部位NsiI(配列番号1の21,585番)とEcoRI(配列番号1の40,636番)の間に位置するDNA断片を制限酵素HindiII(NsiI制限部位の直前の多重クローニング部位に位置する)およびEcoRIで消化することによりレスキューした。次に、この断片を構築物pFL1023に存在する制限部位HindIIIとEcoRIにクローニングし、プラスミドpFL1024(図3)を作出した。
【0126】
pFL1024にクローニングされた全領域をSpeIバンドとしてレスキューし(pUK21の多重クローニング部位の両末端にこれら2つの制限部位が存在するため)、プラスミドpOJ260のユニークなSpeI部位にクローニングし、プラスミドpFL1036(図3)を作出した。
【0127】
最後に、コスミドcosV33−D12から切断部位MseI(配列番号1の1,393番)およびNsiI(配列番号1の21,585番)の間に位置する断片を得、これをpFL1036のそれぞれNdeI部位とNsiI部位にクローニングし、pOJ260(Bierman et al. 1992 Gene 116, 43-49)に配列番号1の1,393番(MseI制限部位)と54,301番(AclI制限部位)の間、すなわち、ORF tio3〜tio28(双方とも含み、完全である)からなる全領域を含む構築物pFL1041(図4)を作出した。さらに、pFL1041では、この領域は2つのSpeI制限部位にフランキングされている。pFL1041は大腸菌で複製可能なプラスミドである。
【0128】
実施例15:ストレプトミセスpAR15ATの組み込みが可能なプラスミドの構築
プラスミドpACYC184(Rose 1988, Nucleic Acids Res. 16, 355)の複製起点ori p15AをSgrAI−Xbal断片をとして得、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片で処理した。この複製起点をプラスミドpUKAのSmaI部位にクローニングし、プラスミドpU015A(図5)を得た。pUKAは、コスミドpKC505(Richardson at al. 1987, Gene 61, 231-241)からPstI−EcoRIバンドとして得られ、そのPstI−AccI制限部位にクローニングされたアプラマイシン耐性遺伝子プラスミドを含むpDK21の誘導体である(Vieira et al. 1991, Gene 100, 189-194)。
【0129】
アプラマイシン耐性遺伝子aac(3)IVの後にori p15Aを含むDNA断片は、pDO15AのBglII−XhoI消化によって得られた。この断片を、同じ制限酵素を用い、プラスミドpOJ436にクローニングし(Bierman et al. 1992, Gene 116, 43-49)、構築物pOJ15A(図5)を得た。
【0130】
プラスミドpOJ260に由来し、接合起点oriTを含むDraI−BglII断片(クレノウで処理)を、pOJ15AのPvuII制限部位にクローニングした。このようにして最終的にプラスミドpAR15ATを得た(図5)。
【0131】
実施例16:ストレプトミセスpARPの組み込みが可能なプラスミドの構築
プラスミドpGB15(Blanco et al. 2001, Chem. Biol. 8, 253-263)から得られたクレノウで処理したEcoRI−HindIII DNA断片としての、エロラマイシン生合成経路由来のelmGTグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を、pSL1180(Amersham Pharmacia)のEcl136II制限部位にクローニングした。このようにして、elmGT遺伝子が構成的ermEエリスロマイシン耐性遺伝子プロモーター(PermE)の制御下にある構築物pSLelmGTaを得た(図6)。
【0132】
PermE−elmGTを含むpSLelmGTaから得られたSpeI−NheI断片を、実施例15に記載されているプラスミドpAR15ATのXbaI部位にクローニングし、構築物pAR15ATG*を得た(図6)。
【0133】
プラスミドpAR15ATG*のXbaI消化とその後の再連結により、elmGT遺伝子を除去し、PermEプロモーターが維持され、プラスミドpARPを得た(図6)。
【0134】
実施例17:選択されたDNA領域の、ストレプトミセスpAR15ATの組み込みが可能なプラスミドへの双方向でのクローニング
配列番号1の1,393番(MseI制限部位)と54,301番(AclI制限部位)からなる領域を含む、pFL1041からのSpeI DNA断片(図4)をプラスミドpAR15ATのXbaI制限部位に双方向でクローニングした(図5)。このようにして、アプラマイシン耐性遺伝子を有し、大腸菌において複製可能であり、ストレプトミセスに組み込み可能である、pFL1048およびpFL1048と呼ばれる2つの新たなプラスミド(図7)を、φC31ファージのattP領域を用いる系により作出した。
【0135】
実施例18:選択されたDNA領域の、ストレプトミセスpARPの組み込みが可能なプラスミドのErmE遺伝子プロモーターの後へのクローニング
同様にして、配列番号1の1,393番(MseI制限部位)と54,301番(AclI制限部位)からなる領域を含む、pFL1041(図4)由来のSpeI DNA断片を、プラスミドpARPのXbaI制限部位にクローニングした(図6)。このようにして、tio3(配列番号4)に相当するORFが、pARPに存在する構成的プロモーターPermEの制御下にあるpFL1049(図7)を作出した。このプラスミドはアプラマイシン耐性遺伝子を有し、φC31ファージのattP領域を用いる系により、大腸菌で複製可能であり、ストレプトミセスにおいて組み込み可能である。
【0136】
実施例19:種々のストレプトミセスにおけるチオコラリン生合成経路の異種発現
プラスミドpFL1048(図7)を接合により、大腸菌ET12567(pUB307)株(Kieser et al. 2000)からストレプトミセス・リビダンスTK21(Kieser et al. 2000)およびストレプトミセス・アルブスJ1074種(Chater et al. 1980, J. Gene. Microbiol. 116, 323-334)へ導入した。
【0137】
プラスミドpFL1049(図7)を接合により、大腸菌ET12567(pUB307)株からストレプトミセス・コエリコロルM145(Redenbach et al., 1996, Mol. Microbiol., 21, 77-96)、ストレプトミセス・リビダンスTK21、ストレプトミセス・アルブスJ1074およびストレプトミセス・アベルミチリスATCC 31267種に導入した。
【0138】
最後に、プラスミドpFL1048r(図7)を接合により、大腸菌ET12567株(pUB307)からストレプトミセス・リビダンスTK21種に導入した。
【0139】
ストレプトミセス・アルブス(pFL1049)クローンの、産生培地R5A(Fernandez et al. 1998, J. Bacteriol. 180, 4929-4937)における培養結果を図8Aに示す。図8Bは、このクロマトグラムで、保持時間27分を有するピークの吸収スペクトルとその質量スペクトルを示し(図8C)、それは双方とも精製チオコラリンのものと同一であった。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】配列決定されたミクロモノスポラ種ML1染色体領域の遺伝子編成を含む、チオコラリン遺伝子およびそれを取り囲む遺伝子のクラスターの模式図。チオコラリン遺伝子クラスターの異種発現のためのプラスミドの構築に用いた制限部位を示す。
【図2】コスミドcosV33−D12およびpCT2cの模式図。ori:大腸菌(E. coli)の複製起点。SCP2:ストレプトミセス属の複製起点。aac(3)IV:アプラマイシン耐性遺伝子。neo:ネオマイシン耐性遺伝子。bla:アンピシリン耐性遺伝子。SV40 ori:エピソーム複製の真核生物起点
【図3】プラスミドpFL1036を構築するために行ったクローニングを示す図。ori:大腸菌の複製起点。M13 ori:M13ファージの複製起点。oriT:接合移入起点。lacZ:β−ガラクトシダーゼ遺伝子。kanR:カナマイシン耐性遺伝子。aac(3)IV:アプラマイシン耐性遺伝子。bla:アンピシリン耐性遺伝子。
【図4】プラスミドpFL1041を構築するために行ったクローニングを示す図。ori:大腸菌の複製起点。SCP2:ストレプトミセスの複製起点。oriT:接合移入起点。lacZ:β−ガラクトシダーゼ遺伝子。aac(3)TV:アプラマイシン耐性遺伝子。
【図5】プラスミドpAR15ATを構築するために行ったクローニングを示す図。ori p15A:大腸菌の複製起点。oriT:接合移入起点。intφC31:φ31ファージインテグラーゼ遺伝子。attP:部位特異的組換え部位。kanR:カナマイシン耐性遺伝子。aac(3)IV:アプラマイシン耐性遺伝子。K:大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片で処理した切断部位。
【図6】プラスミドpAPRを構築するために行ったクローニングを示す図。ori p15A:大腸菌の複製起点。oriT:接合移入起点。ori M13:M13ファージの複製起点。ori:大腸菌の複製起点。lacZ:β−ガラクトシダーゼ遺伝子。lacI:ラクトースオペロンレプレッサー遺伝子。intφC31:φC31ファージインテグラーゼ遺伝子。attP:部位特異的組換え部位。kanR:カナマイシン耐性遺伝子。aac(3)IV:アプラマイシン耐性遺伝子。K:大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片で処理した切断部位。PermE:ermE遺伝子プロモーター。
【図7】プラスミドpFL1048、pFL1048rおよびpFL1049の図。ori p15A:大腸菌の複製起点。oriT:接合移入起点。intφC31:φC31ファージインテグラーゼ遺伝子。attP:部位特異的組換え部位。aac(3)IV:アプラマイシン耐性遺伝子。
【図8A】7日間のR5A培地での増殖後のストレプトミセス・アルブス(pFL1049)培養抽出物のHPLCクロマトグラム。チオコラリンに対応するピークとその保持時間、27分を示す。
【図8B】図8Aに示されている27分ピークに存在する生成物(チオコラリン)のUV吸収スペクトル。
【図8C】図8Aに示されている27分ピークに存在する生成物(チオコラリン)の質量スペクトル。
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、チオコラリンの生合成に関与する遺伝子クラスターおよびチオコラリンの異種産生におけるその使用に関する。
【0002】
発明の背景
チオコラリン(I):
【化1】
は、海洋アクチノミセス属から、具体的にはミクロモノスポラ科から単離された環式二量体チオデプシペプチドである(Perez Baz et al, J. Antibiotics, 50(9), 738-741, 1997; Romero et al., J. Antibiotics, 50(9), 734-737, 1997)。チオコラリンはミクロモノスポラ・マリナ(Micromonospora marina)またはミクロモノスポラ種(Micromonospora sp.)L−13−ACM−092から得られるという記載があるが、その後の研究で、モザンビークのインド洋沿岸で発見された海洋軟体動物から単離されたアクチノミセス属ミクロモノスポラ種ML1からも単離可能であることが示されている(Espliego, F. Ph.D. Thesis, 1996, University of Leon; de la Calle, F. Ph.D. Thesis, 1998, Autonomous University of Madrid)。
【0003】
in vitro研究では、黒色腫、乳癌、非小細胞肺癌および結腸癌などの種々の種類の固形腫瘍の細胞系統の増殖を阻害するチオコラリンの能力が示されている。チオコラリンはまた、ヒト癌腫異種移植片に対するin vivoアッセイおいて顕著な抗腫瘍活性を有することも示されている(Faircloth et al. Eur. J. Cancer, 33, 175, 1997 (abstract))。チオコラリンはさらに、グラム陽性菌に対して抗菌活性を示す。
【0004】
前記の海洋アクチノミセス属(ミクロモノスポラ種ML1)からチオコラリンを得るのは、小規模では実現可能であるが、この微生物で見られる生産の変動のため、大規模でのこのような取得は制限される。実際に、この生物からのチオコラリンの生産は、この生物の増殖速度が遅いために時間がかかり、バッチの違いにより生産収量が大きく異なる。
【0005】
従って、一方では該海洋アクチノミセス属からのチオコラリンの取得が極めて制限されていること、また他方で、チオコラリン分子も複雑な構造を持ち、その合成は産業レベルでは煩雑となりかねないということから、方向性を持った様式でその取得方法を改善する手段を作り出すために、その生合成の遺伝的基礎を理解することが望ましい。天然産生株が一般に低濃度かつ極めて不規則な様式でしか生成物を産生しないことを考えれば、これはチオコラリンの産生量に増加をもたらし得る。同様に、この化合物を天然に産生しない宿主におけるチオコラリンの産生も可能となる。
【0006】
組換えDNA技術の発達により、主としてアクチノミセス属の細菌の、このような生物活性化合物の生合成に関与する遺伝子を操作する手段により生物活性化合物を作出および産生するための興味深い研究分野が拓かれている。天然株は通常、対象とする代謝物を低濃度でしか産生しないので、これらの技術は既知の天然化合物の産生を向上させるために使用可能である。
【0007】
遺伝子操作および発酵に適した他のアクチノミセス属における、チオコラリンの生合成に関与する遺伝子クラスターの異種発現によっても、同様に、短い発酵時間でより高い生産収量で該化合物を産生することが可能となる。
【0008】
周知のとおり、いくつかの細菌および真菌が、抗腫瘍性および抗菌性などをはじめ、非リボゾーム起源を有する多様な生物活性ペプチドを合成する。この化合物ファミリーの生合成は、モジュール方式の触媒ドメイン機構を有する多機能酵素である非リボゾームペプチドシンセターゼ(NRPS)によって行われる。これらの各モジュールは延長サイクルを行い、すなわち、化合物の最終構造を活性化し、そこに特定のアミノ酸を組み込む。最小のモジュールは、(i)特定のアミノ酸の選択と、ATPを用いることによりそのアデニル化アミノアシル型の形成を担うアデニル化ドメイン(A、およそ550のアミノ酸を有する)、(ii)補因子として働き、共有結合によりPドメインと結合するホスホパンテテイン(PP)補欠分子族を含むペプチジル担体ドメイン(P、およそ80のアミノ酸を有する)(このドメインは、次の反応中心に移る前に活性化されたアデニル化アミノ酸を固定することを担う)、および(iii)2つの連続するPドメインに存在する2つのアデニル化アミノアシル部分の間に新しいペプチド結合を作り出す縮合ドメイン(C、およそ450のアミノ酸を有する)の3つのドメインによって形成される。Cドメインには、この系の最初のアミノ酸を活性化するモジュールがない。いくつかのNRPSは、D−アミノ酸を生じるエピマー化、N型またはC型のメチル化、L−CysまたはL−Serアミノ酸に作用する環化などの特定の働きを行う付加的ドメインを有する。最後のモジュールの後に存在する最後のドメインは、一般に直鎖または環状ペプチドを生じる中間体酵素の放出を担う。一般規則として、種々のモジュールの構造は生成ペプチドの最終的なアミノ酸配列を反映している。この同一線上の規則により、NRPSにおける各モジュールへの特定の活性化機能の割付が可能となる。NRPSに関する情報は、例えば、Quing-Tao, S. et al., 2004. Dissecting and Exploiting Nonribosomal Peptide Synthetases. Acta Biochimica et Biophysica. Sinica, 36 (4): 243-249に見出すことができる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の重要な目的は、チオコラリンの産生を担うタンパク質をコードする完全ヌクレオチド配列を単離および同定することである。これに基づき、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質を構成するアミノ酸配列の機能を単離および決定することができる。この目的は、完全生合成チオコラリン産生経路に関連するタンパク質を総てコードする、単離され、かつ所望により精製された新規な核酸分子を提供することにより達成することができる。
【0010】
本発明者らはチオコラリンの生合成を担う総ての遺伝子、すなわち、チオコラリンの生合成に関与する遺伝子クラスターを同定およびクローニングし、これにより、方向性を持った様式でこの化合物の産生を向上および操作するための遺伝的基礎を提供することができた。
【0011】
非リボゾームペプチドシンセターゼ(NRPS)アデニル化ドメインのコンセンサス配列に由来するイニシエーターオリゴヌクレオチドを用いることで、ミクロモノスポラ種ML1染色体の6断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅したが、これらの断片は総て、PSV1、PSV2、PSV3、PSV4、PSV5およびPSV6と呼ばれる推定(仮定)NRPSアデニル化ドメイン断片を含む(実施例3)。該アデニル化ドメインの、挿入による不活性化は、そのうち2つ(PSV2およびPSV5)がチオコラリンを産生しない突然変異体を生じたが、このことはそれらがチオコラリンの生合成に関与していることを示している(実施例7および10)。
【0012】
およそ64.6キロベース(kb)のDNA領域(配列番号1)の配列決定は、36の完全なオープンリーディングフレーム(ORF)と別の2つの不完全なORFの存在を示した(実施例12、表1)。ストレプトミセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトミセス・アルブス(Streptomyces albus)およびストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)における、前記ORFのうちの26を含む、およそ53kbの領域の異種発現により、該アクチノミセス属のチオコラリンの産生がもたらされた(実施例19)。
【0013】
チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを図1に模式的に示す。驚くことに、チオコラリン遺伝子のクラスターはペプチド骨格のアミノ酸の数をもとに予測されるものよりも多くのNRPSコード遺伝子を含む。同定されたタンパク質のうちのいくつかは、例えばTio12、Tio17、Tio18、Tio19、Tio20、Tio21、Tio22、Tio27およびTio28として同定されているNRPSのいくつかのものなど、チオコラリンペプチド構造の形成に関与している。Tio20およびTio21として同定されているタンパク質はおそらくチオコラリン骨格の生合成に関与するNRPSを形成し、そして、おそらくは、Tio27およびTio28として同定されている他の2つのNRPSがミクロモノスポラ種ML1におけるチオコラリンの生合成の調節に関与し得る小ペプチドの生合成を担っている可能性がある。また、Tio5、Tio6およびTio23など、耐性プロセスに関連している可能性のあるタンパク質がいくつかある。配列決定された領域において同定されたチオコラリン経路の可能性のあるレギュレーターは、Tio3、Tio4、Tio7、Tio24およびTio25に相当する。最後に、イニシエーターユニット3−ヒドロキシ−キナルデート、Tio8、Tio9、Tio10およびTio11の生成に関連するタンパク質がいくつかある。その遺伝子分断によりチオコラリンを産生しない表現型が生じる遺伝子は、図1においてアステリスクで示されている(tio20、tio27およびtio28)。
【0014】
よって、本発明は、チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターの同定およびクローニングに関する。チオコラリンの生合成および好適な宿主細胞におけるその発現を担う該遺伝子クラスターは、チオコラリンの効率的な産生を可能とする。
【0015】
従って、一つの態様では、本発明は、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子に関する。
【0016】
別の態様では、本発明は、本発明により提供される少なくとも1つの核酸分子を含んでなる組成物に関する。
【0017】
別の態様では、本発明は、本発明により提供される核酸分子またはその断片を含んでなるプローブに関する。
【0018】
別の態様では、本発明は、本発明により提供される核酸分子を含んでなるベクターに関する。
【0019】
別の態様では、本発明は、本発明により提供されるベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞に関する。
【0020】
別の態様では、本発明は、本発明により提供される核酸分子によりコードされるタンパク質に関する。
【0021】
別の態様では、本発明は、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質を製造するための方法であって、そのゲノムが操作されたチオコラリン産生生物の使用を含む方法に関する。
【0022】
別の態様では、本発明は、別のアクチノミセス属におけるチオコラリンの製造のための、ミクロモノスポラ種ML1由来のチオコラリンの生合成を担う遺伝子の使用に基づく方法に関する。
【発明の具体的説明】
【0023】
本発明によれば、完全な生合成チオコラリン産生経路に関与するタンパク質の全部または一部をコードする、単離され、所望により精製された新規な核酸分子が提供される。
【0024】
よって、一つの態様では、本発明は、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子(以下「本発明の核酸分子」という)、好ましくは、所望により単離され、精製された核酸分子に関する。この生合成チオコラリン産生経路タンパク質は、一般的に言えば非リボゾームペプチドシンセターゼ(NRPS)である。NRPSはチオコラリンの生合成を担っている。
【0025】
本明細書において生合成チオコラリン産生経路タンパク質に用いられる「生物学的に活性な断片」とは、全長タンパク質の活性機能を保持するタンパク質構造の一部を意味する。この生物学的に活性な断片は、本発明の核酸分子の対応する領域によりコードされていてもよい。本発明の核酸分子の領域の大きさは広い範囲で異なってよいが、ある特定の実施態様では、該領域は少なくとも10、15、20、25、50、100、1,000、2,500、5,000、10,000、20,000、25,000またはそれを超えるヌクレオチド長であり得る。該領域は通常、100〜10,000ヌクレオチド長、好ましくは100〜7,500ヌクレオチド長であり、生物学的に機能があり、すなわち、生合成チオコラリン産生経路タンパク質の生物学的に活性な断片をコードし得る。
【0026】
本発明の核酸分子は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)分子であり得る。本発明の核酸分子はまた、一本鎖核酸分子または誘導された二本鎖核酸分子であり得る。本発明の核酸分子の限定されない例としては、ゲノムDNA(gDNA)分子、メッセンジャーRNA(mRNA)分子およびmRNA分子に対する相補的DNA(cDNA)分子が挙げられる。
【0027】
本発明の核酸分子の突然変異体および変異体は、本発明の範囲内に含まれる。このような突然変異体および変異体としては、少なくとも1つの分子が変更、置換、欠失または挿入された本発明の核酸分子が挙げられる。例としては、本発明の核酸分子の突然変異体および変異体は、1、2、3、4、5、10、15、25、50、100、200、500およびそれを超えるヌクレオチド変異(変更、置換、欠失および挿入)を有し得る。同じタンパク質をコードする縮重変異体、ならびに違うタンパク質をコードする非縮重変異体もあり得る。該突然変異体および変異体のヌクレオチド配列は、チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターのオープンリーディングフレーム(ORF)にコードされている対応するタンパク質の少なくとも1つの生物活性または機能を保存しているタンパク質、またはその生物学的に活性な断片をコードする。該クラスターの遺伝子の対立遺伝子型ならびに多型も本発明の範囲内に含まれる。
【0028】
ある特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、総ての生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、所望により精製され、単離された核酸分子である。この場合、本発明の核酸分子は、チオコラリンの生合成を担う完全な遺伝子クラスターを含むヌクレオチド配列を含んでなる。
【0029】
チオコラリンの生合成を担う完全な遺伝子クラスターのヌクレオチド配列は、配列番号1、ミクロモノスポラ種の64,650塩基対(bp)ゲノムDNA配列に含まれる。また、本発明の範囲には、配列番号1で示されるヌクレオチド配列の相補鎖、すなわち、配列番号1で示されるものと相補的なヌクレオチドからなるもの(例えば、AがTに置き換わり、CがGに置き換わったもの、またはその逆)および/または逆転ヌクレオチド配列[すなわち、例えば、(5’→3’)から(3’→5’)に読み取り方向が変わることにより生じる配列]が含まれる。
【0030】
本発明はさらに、配列番号1で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を有する本発明の核酸分子とハイブリダイズする核酸分子を含み、該分子はチオコラリン産生生物から単離することができ、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質をコードする。当業者に公知の典型的なハイブリダイゼーション技術および条件は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1989)に記載されている。相同プローブのためには、通常のまたは厳密なハイブリダイゼーション技術が用いられるが、標的核酸分子配列と100%未満の相同性の部分的に相同なプローブには、厳密性の低いハイブリダイゼーション技術が用いられる。後者(部分的に相同なプローブ)の場合、種々の条件でサザンまたはノーザンハイブリダイゼーションを行うことができる。例として、ホルムアミドを含有する溶媒中でハイブリダイゼーションが行われる場合、好ましい条件は、一定温度、およそ42℃、6×SSCおよび50%ホルムアミドを含有する溶液のイオン強度の使用を含む。厳密性の低いハイブリダイゼーション条件でも同じ温度およびイオン強度を使用することができるが、アニーリングバッファー中のホルムアミド量を低くする(およそ45%から0%に)。あるいは、ハイブリダイゼーションは、ホルムアミドを含まない水溶液中で行うこともできる。一般に、水性媒体中でのハイブリダイゼーションでは、水溶液のイオン強度は同じ強度、一般にはおよそ1M Na+に維持するが、アニーリング温度は68℃から42℃に引き下げることができる。
【0031】
チオコラリンの生合成を担う完全な遺伝子クラスターの配列決定(配列番号1)により、36の完全オープンリーディングフレーム(ORF)と別の2つの不完全なORF(ORF1およびORF38、下記参照)の存在が示された。表1(実施例12)は、生合成チオコラリン産生経路に含まれる種々のORFの位置、ならびに該ORFにコードされているアミノ酸配列を示す。
【0032】
チオコラリンの産生に必須の全生合成タンパク質をコードする、チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含む完全染色体(ゲノム)DNA分子は、2つのプラスミド、具体的にはコスミドSuperCos1およびpKC505に効率的にパッケージングされている(実施例1および2)。チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含むこれらの2つのコスミドは、チオコラリンの産生のための完全な生合成経路を再生するに十分なものである。よって、ある特定の実施態様では、本発明は、2つのコスミド中に、チオコラリン産生に実質的により効率的な手段を与える生合成チオコラリン遺伝子の完全クラスターを提供する。
【0033】
ある特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、所望により精製、単離された核酸分子である。ある特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、
配列番号1のヌクレオチド2〜535を含んでなる核酸分子(orf1);
配列番号1のヌクレオチド993〜1130cを含んでなる核酸分子(orf2);
配列番号1のヌクレオチド1517〜2131を含んでなる核酸分子(tio3);
配列番号1のヌクレオチド2154〜2822cを含んでなる核酸分子(tio4);
配列番号1のヌクレオチド2970〜3791cを含んでなる核酸分子(tio5);
配列番号1のヌクレオチド3794〜4777cを含んでなる核酸分子(tio6);
配列番号1のヌクレオチド4904〜5611を含んでなる核酸分子(tio7);
配列番号1のヌクレオチド5701〜6426cを含んでなる核酸分子(tio8);
配列番号1のヌクレオチド6426〜7688cを含んでなる核酸分子(tio9);
配列番号1のヌクレオチド7733〜8524cを含んでなる核酸分子(tio10);
配列番号1のヌクレオチド8791〜10002を含んでなる核酸分子(tio11);
配列番号1のヌクレオチド10002〜11590cを含んでなる核酸分子(tio12);
配列番号1のヌクレオチド11847〜13634を含んでなる核酸分子(tio13);
配列番号1のヌクレオチド13734〜15005cを含んでなる核酸分子(tio14);
配列番号1のヌクレオチド15005〜16354cを含んでなる核酸分子(tio15);
配列番号1のヌクレオチド16441〜18744cを含んでなる核酸分子(tio16);
配列番号1のヌクレオチド18774〜19055cを含んでなる核酸分子(tio17);
配列番号1のヌクレオチド19260〜20036を含んでなる核酸分子(tio18);
配列番号1のヌクレオチド20146〜20880cを含んでなる核酸分子(tio19);
配列番号1のヌクレオチド21188〜28969を含んでなる核酸分子(tio20);
配列番号1のヌクレオチド28979〜38398を含んでなる核酸分子(tio21);
配列番号1のヌクレオチド38449〜38661を含んでなる核酸分子(tio22);
配列番号1のヌクレオチド38642〜41263を含んでなる核酸分子(tio23);
配列番号1のヌクレオチド41835〜42368を含んでなる核酸分子(tio24);
配列番号1のヌクレオチド42395〜43255cを含んでなる核酸分子(tio25);
配列番号1のヌクレオチド43340〜43741cを含んでなる核酸分子(tio26);
配列番号1のヌクレオチド44152〜49563を含んでなる核酸分子(tio27);
配列番号1のヌクレオチド49635〜53669を含んでなる核酸分子(tio28);
配列番号1のヌクレオチド53749〜55305cを含んでなる核酸分子(orf29);
配列番号1のヌクレオチド55384〜57222cを含んでなる核酸分子(orf30);
配列番号1のヌクレオチド57895〜58467cを含んでなる核酸分子(orf31);
配列番号1のヌクレオチド58535〜59206cを含んでなる核酸分子(orf32);
配列番号1のヌクレオチド59298〜59564cを含んでなる核酸分子(orf33);
配列番号1のヌクレオチド59611〜60114cを含んでなる核酸分子(orf34);
配列番号1のヌクレオチド60202〜60888を含んでなる核酸分子(orf35);
配列番号1のヌクレオチド60960〜62240を含んでなる核酸分子(orf36);
配列番号1のヌクレオチド62300〜62833を含んでなる核酸分子(orf37);
配列番号1のヌクレオチド62925〜64650を含んでなる核酸分子(orf38);または
生合成チオコラリン産生経路タンパク質の生物学的に活性な断片をコードするそれらの断片からなる群から選択される。
【0034】
別の特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、2以上の生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、所望により精製、単離された核酸分子である。ある特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、orf1、orf2、tio3、tio4、tio5、tio6、tio7、tio8、tio9、tio10、tio11、tio12、tio13、tio14、tio15、tio16、tio17、tio18、tio19、tio20、tio21、tio22、tio23、tio24、tio25、tio26、tio27、tio28、orf29、orf30、orf31、orf32、orf33、orf34、orf35、orf36、orf37、orf38として同定されている遺伝子、および生合成チオコラリン産生経路タンパク質の生物学的に活性な断片をコードするそれらの断片から選択される2以上の遺伝子を含んでなる。
【0035】
別の特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質、またはその生物学的に活性な断片、またはその突然変異体もしくは変異体をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、所望により、精製、単離された核酸分子であり、該タンパク質は、ORF1(配列番号2)、ORF2(配列番号3)、Tio3(配列番号4)、Tio4(配列番号5)、Tio5(配列番号6)、Tio6(配列番号7)、Tio7(配列番号8)、Tio8(配列番号9)、Tio9(配列番号10)、Tio10(配列番号ll)、Tio11(配列番号12)、Tio12(配列番号13)、Tio13(配列番号14)、Tio14(配列番号15)、Tio15(配列番号16)、Tio16(配列番号17)、Tio17(配列番号18)、Tio18(配列番号19)、Tio19(配列番号20)、Tio20(配列番号21)、Tio21(配列番号22)、Tio22(配列番号23)、Tio23(配列番号24)、Tio24(配列番号25)、Tio25(配列番号26)、Tio26(配列番号27)、Tio27(配列番号28)、Tio28(配列番号29)、ORF29(配列番号30)、ORF30(配列番号31)、ORF31(配列番号32)、ORF32(配列番号33)、ORF33(配列番号34)、ORF34(配列番号35)、ORF35(配列番号36)、ORF36(配列番号37)、ORF37(配列番号38)、ORF38(配列番号39)として同定されているタンパク質からなる群から選択される。該タンパク質は、チオコラリンの生合成を担う遺伝子(配列番号1)のクラスターの対応する上記orf(orf1、orf2、tio3、tio4、tio5、tio6、tio7、tio8、tio9、tio10、tio11、tio12、tio13、tio14、tio15、tio16、tio17、tio18、tio19、tio20、tio21、tio22、tio23、tio24、tio25、tio26、tio27、tio28、orf29、orf30、orf31、orf32、orf33、orf34、orf35、orf36、orf37、orf38)から、また、その対応する領域、突然変異体または変異体から得ることができる。
【0036】
別の特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、生合成チオコラリン産生経路タンパク質の少なくとも1つの変異体またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、所望により精製、単離された核酸分子であり、該変異体は、そのアミノ酸配列が配列番号2〜39に示されているタンパク質から選択されるタンパク質またはその生物学的に活性な断片と少なくとも30%、有利には50%、好ましくは60%、より好ましくは70%、いっそうより好ましくは80%、特に90%、より特定的には95%以上のアミノ酸配列同一性を有する。該変異体は、チオコラリン生合成を担う遺伝子のクラスターのorfのいずれかにコードされている対応するタンパク質の少なくとも1つの生物活性を保存している。
【0037】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明の核酸分子、好ましくは単離された核酸分子を含んでなる組成物に関する。ある特定の実施態様では、該組成物は、一つの本発明の核酸分子を含んでなる。別の特定の実施態様では、該組成物は、2以上の本発明の核酸分子を含んでなる。該核酸分子はDNAおよびRNAのいずれであってもよい。
【0038】
本発明の核酸分子は、チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターが好適な宿主細胞に挿入されているので、天然または組換えいずれかの、いずれのチオコラリン産生生物からでも単離することができるが、ある特定の実施態様では、本発明の核酸分子は海洋アクチノミセス属ミクロモノスポラ種ML1から単離されたものである(実験の部、工程1、実施例1〜4参照)。
【0039】
好適な宿主細胞からの(染色体)ゲノムDNAおよびクローニングされた組換えDNAの単離および同定は、好適な遺伝子ライブラリーを追跡するためのプローブとして全ヌクレオチド配列またはその一部を用い、通常または厳密なハイブリダイゼーション法により行うことができる。
【0040】
よって、別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子またはその断片を含んでなるプローブに関する。一般に、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60またはそれを超えるヌクレオチドの配列を含むのが好適である。20〜60ヌクレオチド長の配列が好ましい。ある特定の実施態様では、該プローブは、ミクロモノスポラ種のチオコラリンの生合成に関与する遺伝子を検出するために使用できる。チオコラリンの生合成に関連する、例えばgDNA、cDNAまたはmRNAなどの核酸を検出するための該プローブの使用は、本発明のさらなる態様をなす。
【0041】
あるいは、好適な宿主細胞からの(染色体)ゲノムDNA、また、クローニングされた組換えDNAの単離および同定は、核酸の酵素的増幅に基づく技術により行うことができる。例としては、例えばPCRなどの酵素的増幅反応に使用可能なイニシエーターオリゴヌクレオチドを設計し(チオコラリンの生合成に関与するDNAおよびタンパク質の既知配列に基づく)、他の同一または関連の配列を増幅し、同定することができる。
【0042】
本発明の核酸分子は、常法により単離および所望により精製することができる。本発明の核酸分子は一般に組換え体または単離法により得られるが、本発明ではまた、本発明の核酸分子が化学合成により得られることも意図しており、これらの分子は野生型(wt)および突然変異体双方のチオコラリン産生生物に由来するものと同じ、または実質的に同じ構造を有する。
【0043】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードする本発明の核酸分子を含んでなるベクター(以下「本発明のベクター」という)に関する。ある特定の実施態様では、本発明のベクターは、クローニングベクターまたは発現ベクターなどの生物学的に機能的なベクターまたはプラスミドである。
【0044】
ある特定の実施態様では、本発明のベクターはクローニングベクター、好ましくはコスミドである。好ましいクローニングベクターは、それらが大きなDNA配列(例えば、目的生成物の生合成に関与する完全な遺伝子クラスター)を組み込めるかどうかによって選択される。該ベクターは一般に従来のベクターであり、市販されている。本発明はさらに、遺伝物質が当業者に公知の技術による遺伝子操作により単一のクローニングベクターまたはプラスミド(例えば、コスミド)に最終的に含まれるように減量できることを意図する。このような再配列は、クローニング、PCRもしくは合成遺伝子または当技術分野の現状において既知のこれら技術の組合せにより行うことができる。
【0045】
別の特定の実施態様では、本発明のベクターは、好適な宿主細胞への挿入に好適な発現ベクターである。該ベクターの該好適な宿主細胞への挿入は、従来の遺伝物質導入法(例えば、形質転換、トランスフェクションなど)のいずれによって行うこともできる。
【0046】
よって、別の態様では、本発明は、本発明のベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞(以下「本発明の宿主細胞」という)に関する。本発明の宿主細胞は、1以上の本発明の核酸分子を含む。ある特定の実施態様では、本発明の宿主細胞は、単一の本発明の核酸分子を含む。別の特定の実施態様では、本発明の宿主細胞は2以上の本発明の核酸分子を含み、この場合、本発明の核酸分子は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0047】
好ましい本発明の宿主細胞は、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる本発明の(外因性)核酸分子を含んでなる本発明のベクターで、チオコラリンの生合成および/または再配列を指示するのに十分な様式で安定的に形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞である。この宿主細胞は、好ましくは微生物、より好ましくは細菌である。ある特定の実施態様では、該宿主細胞は、例えば、アクチノミセス属、ストレプトミセス属などのグラム陽性菌である。
【0048】
本発明の実施例では、ストレプトミセス・コエルコロル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトミセス・アルブス(Streptomyces albus)およびストレプトミセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)などの種々のストレプトミセス種を用いたが、チオコラリンの生合成に関与する遺伝子の異種発現は、本発明のベクターで、好ましくは安定的に形質転換可能な限り、他のストレプトミセス属、アクチノミセス属で行うこともできる。タンパク質のin vitro発現は所望により常法を用いて行うことができる。
【0049】
ある特定の実施態様では、本発明は、例えば、本発明の核酸分子の少なくとも1領域が、対応する非組換え宿主、すなわち、野生型チオコラリン産生細胞(細菌)に比べて変更されたチオコラリンレベルを産生する、組換え細菌などの組換え宿主細胞を生じるように変更されている組換え細菌などの組換え宿主細胞を提供する。このために、例えば、チオコラリンの産生に関与するNRPSの最も重要なドメインを担う遺伝子のコピー数を増やすか、または当技術分野の現状において既知の遺伝子操作技術によりこれらの遺伝子の遺伝子発現調節配列を増やして、チオコラリン産生の収量を高めることを含む、当業者に公知の常法を使用することができる。
【0050】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子にコードされているタンパク質(以下「本発明のタンパク質」という)に関する。
【0051】
本明細書において「タンパク質」とは、チオコラリン産生のための生合成経路に含まれる、本発明の核酸分子にコードされているポリペプチドおよび酵素などを意味する。本発明のタンパク質は、アミノ酸部分が共有ペプチド結合により連結されている、全長アミノ酸鎖などの様々な鎖長のアミノ酸鎖、ならびにチオコラリンの生合成に関与する該タンパク質の生物学的に活性な断片、ならびにその生物学的に活性な変異体を含む。本発明のタンパク質は、天然型であっても組換え型であっても合成品であってもよい。例として、チオコラリンの生合成に関与する該タンパク質は、従来の組換えDNA技術により、またはそのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を好適な発現ベクターに挿入し、そのタンパク質を好適な宿主細胞内で発現させること、または、例えば、アミノ酸が1個ずつ連続的にアミノ酸鎖に連結されるMerrifield (Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154 (1963))の固相ペプチド合成法によるなどの従来の化学的ペプチド合成により製造することができる。あるいは、本発明のタンパク質は、種々の製造業者(例えば、Perkin-Elmer, Inc.)が販売している自動タンパク質合成装置を用いて合成することもできる。
【0052】
本発明の範囲内に含まれる生物学的に活性な変異体は、本発明の核酸分子にコードされているアミノ酸配列の少なくとも1つの生物学的に活性な断片、そのタンパク質の活性な機能を保持したタンパク質構造の一部、例えば、tio18遺伝子にコードされているTio18タンパク質と同じ、または実質的に同じ活性を有する、tio18遺伝子にコードされているチオエステラーゼ部分(すなわち、これは、少なくとも同じ、または少なくともおよそ70%、有利には少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは約95%の力を有する)を含む。
【0053】
本発明のタンパク質の生物学的に活性な変異体は、アミノ酸、天然に存在する対立遺伝子などが除去、置換または付加されている活性なアミノ酸構造を含む。生物学的に活性な断片は、断片を調製するために全長タンパク質に化学的または酵素的消化を施した後、全長タンパク質と同じまたは実質的に同じ生物活性を保存しているアミノ酸構造断片をアッセイすることにより容易に同定することができる。
【0054】
ある特定の実施態様では、本発明のタンパク質は、orf1、orf2、tio3、tio4、tio5、tio6、tio7、tio8、tio9、tio10、tio11、tio12、tio13、tio14、tio15、tio16、tio11、tio18、tio19、tio20、tio21、tio22、tio23、tio24、tio25、tio26、tio27、tio28、orf29、orf30、orf31、orf32、orf33、orf34、orf35、orf36、orf37およびorf38として同定される遺伝子からなる群から選択される遺伝子にコードされている、チオコラリンの生合成に関与する、所望により精製、単離されたタンパク質である。
【0055】
別の特定の実施態様では、本発明のタンパク質は、ORF1(配列番号2)、ORF2(配列番号3)、Tio3(配列番号4)、Tio4(配列番号5)、Tio5(配列番号6)、Tio6(配列番号7)、Tio7(配列番号8)、Tio8(配列番号9)、Tio9(配列番号10)、Tio10(配列番号11)、Tio11(配列番号12)、Tio12(配列番号13)、Tio13(配列番号14)、Tio14(配列番号15)、Tio15(配列番号16)、Tio16(配列番号17)、Tio17(配列番号18)、Tio18(配列番号19)、Tio19(配列番号20)、Tio20(配列番号21)、Tio21(配列番号22)、Tio22(配列番号23)、Tio23(配列番号24)、Tio24(配列番号25)、Tio25(配列番号26)、Tio26(配列番号27)、Tio27(配列番号28)、Tio28(配列番号29)、ORF29(配列番号30)、ORF30(配列番号31)、ORF31(配列番号32)、ORF32(配列番号33)、ORF33(配列番号34)、ORF34(配列番号35)、ORF35(配列番号36)、ORF36(配列番号37)、ORF37(配列番号38)、ORF38(配列番号39)として同定されているタンパク質、ならびにそれらの組合せ、またはそれらの生物学的に活性な断片からなる群から選択される、チオコラリンの生合成に関与する、所望により精製、単離されたタンパク質である。これらタンパク質の推定機能は表1に含まれている。
【0056】
チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードし、該化合物の生合成を担う遺伝子クラスターのorfは、常法を用いて同定することができる。このような技術の限定されない例としては、停止コドンおよび開始コドンの位置決定、それらコドンの頻度に基づくリーディングフレームの推定位置、他のアクチノミセスで発現される遺伝子との類似性によるアライメントなどのためのコンピューター解析を含む。よって、本発明のタンパク質は本発明のヌクレオチド配列を用いて同定することができ、orfまたはそれらにコードされているタンパク質を単離および所望により精製すること、あるいは化学法により合成することができる。orfに基づく該産物の発現のための遺伝子構築物が設計可能であり、好適な発現調節エレメント(プロモーター、ターミネーターなど)を含めることができ、該遺伝子構築物を、1以上のorfにコードされているタンパク質を発現させるために好適な宿主細胞に導入することができる。
【0057】
本発明のタンパク質は、常法により単離し、所望により精製することができる。これらのタンパク質は実質的に純粋な形態で得られることが好ましいが、より低い純度、一般におよそ80%〜90%の純度でも許容される。本発明はまた、本発明のタンパク質が化学合成により得られることも意図しており、それらのタンパク質は野生型(wt)および突然変異型双方のチオコラリン産生生物に直接由来するものと同じまたは実質的に同じ構造を有する。
【0058】
別の態様では、本発明は、チオコラリンの生合成に関与する本発明のタンパク質を製造する方法であって、チオコラリン産生生物を好適な(栄養および環境)条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンの生合成に関与する1以上のタンパク質を単離することを含む方法に関する。所望により、本発明のタンパク質は、これまでに記載されているものなどの常法により単離および精製することができる。
【0059】
別の態様では、本発明は、チオコラリンを製造する方法であって、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子のコピー数が増加されたチオコラリン産生生物を該化合物の産生に好適な条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含む方法に関する。
【0060】
ある特定の実施態様では、チオコラリン産生生物は、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子のコピー数が増加された、例えばミクロモノスポラ種などのアクチノミセス属である。チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子のコピー数の増加は、当業者に公知の常法により行うことができる。この場合、これまでに記載されている方法は、チオコラリンの産生に関与する遺伝子の発現に好適な栄養および環境条件下で該生物を発酵させることを含む。所望により、産生されたチオコラリンを常法により培養培地から単離および精製することができる。
【0061】
別の態様では、本発明は、チオコラリンの生合成を担うタンパク質をコードする遺伝子の発現が、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする1以上の遺伝子を操作もしくは置換することにより、または該遺伝子の発現の調節を担う配列を操作することにより調節されているチオコラリン産生生物を、該化合物の産生に好適な条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含む、チオコラリンの製造方法に関する。チオコラリンの生合成を担う該タンパク質をコードする遺伝子の発現は向上されていることが好ましい。このために、チオコラリン生合成過程に必須でない遺伝子配列を除去することもできるし、あるいは該遺伝子の遺伝子発現調節配列の効率を当業者に公知の一連の遺伝子工学により高めることもできる。こうして、チオコラリンの産生の収量を高めることができる。チオコラリン生合成過程に必須でない遺伝子配列を除去するため、または該遺伝子の遺伝子発現調節配列の効率を高めるための遺伝子操作は、当業者に公知の遺伝子工学技術により行うことができる。
【0062】
ある特定の実施態様では、このチオコラリン産生生物は、チオコラリンの生合成を担うタンパク質をコードする遺伝子の発現が、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする1以上の遺伝子を操作または置換することにより、あるいは該遺伝子の発現の調節を担う配列を操作することにより調節されている(当業者に公知の常法により行うことができる)、例えばミクロモノスポラ種などのアクチノミセス属である。この場合、上述の方法は、該生物を、チオコラリンの産生に関与する遺伝子の発現に好適な栄養および環境条件下で発酵させることを含む。所望により、産生されたチオコラリンを常法により培養培地から単離および精製することができる。
【0063】
別の態様では、本発明は、チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含んでなる本発明のベクターで形質転換またはトランスフェクトされた本発明の宿主細胞を、該化合物の産生に好適な条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含む、チオコラリンの製造方法に関する。(栄養、環境などの)条件は、宿主細胞の性質によって選択する。
【0064】
ある特定の実施態様では、本発明の宿主細胞は、チオコラリンを天然で産生する生物、チオコラリンを天然で産生しない生物およびチオコラリンの産生のために遺伝的に操作された生物から選択される。ある特定の実施態様では、本発明の宿主細胞は、アクチノミセス属またはストレプトミセス属である。
【0065】
別の態様では、本発明は、ミクロモノスポラ種ML1由来のチオコラリン生合成を担う遺伝子の使用に基づく、別のアクチノミセス属における該化合物の製造のための方法であって、
(1)チオコラリン生合成経路の特定の遺伝子に改変を有する突然変異体を得ること;
(2)チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含むミクロモノスポラ種ML1染色体領域を単離すること;
(3)チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を得て分析すること;および
(4)他のアクチノミセス属でチオコラリンを異種産生させること
を含む方法に関する。
【0066】
チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含むミクロモノスポラ種ML1染色体領域の同定および単離、ならびに該クラスターのヌクレオチド配列の分析は、本明細書中の実施例で非限定的に例示される、本発明により提供される技術に基づいて行うことができる。
【0067】
チオコラリン生合成経路の特定の遺伝子に改変を有する突然変異体は、常法により同定することができる。ある特定の実施態様では、該突然変異体は、培養し、例えば実施例5に記載されているようなHPLC−MSなどの常法によりチオコラリンの産生を測定することによって確認することができる。
【0068】
チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターの全部または一部は、チオコラリンの産生に好適な条件下で好適な栄養培地を用いて発酵させることによるチオコラリンの異種産生のために、例えば形質転換またはトランスフェクションなどの常法によりアクチノミセス属に導入することができ、このようにして得られたチオコラリンは、所望により常法により単離および/または精製することができる。
【0069】
チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターの同定は、商業上大きな重要性を持っている。本発明により提供されるチオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターが単離され、完全に記載されれば、チオコラリンの産生およびチオコラリン産生生物の操作が可能となる。この意味で、チオコラリンの産生に関与するNRPSの最も重要なドメインを担う遺伝子のコピー数を増加させることもできるし、あるいはそれらの遺伝子の遺伝子発現調節配列の効率を、当技術分野の現状において既知の遺伝子工学技術により高めることもでき、このようにしてその産生収量を高めることができる。
【0070】
本発明により提供されるチオコラリン遺伝子の完全クラスターの同定およびクローニングに伴うもう1つの利点は、チオコラリンの効率的産生に関する。実際、これにより少ない工程数で対象化合物を得ることができる。クラスター突然変異体における生合成過程に必須でない配列の除去は、対象化合物の産生に必要な時間を大幅に短縮する。残った配列は、チオコラリンの産生に十分なものであり、チオコラリンを産生するためのそれらの機能を保持している。
【実施例】
【0071】
実験の部
本発明の実験手順は、当技術分野の現状において通常の分子生物学的方法を含む。本明細書では説明されない技術に関する詳細は、Kieser et al. (Practical Streptomyces genetics. The John Innes Foundation, Norwich, Great Britain, 2000)およびSambrook et al. (Molecular cloning: a laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, USA, 2001)の手引き書に示されている。限定されるものではないが、以下の工程は、本発明を詳細に説明するものである。
【0072】
工程1.チオコラリン生合成経路遺伝子を含むミクロモノスポラ種ML1染色体領域の単離
実施例1:ミクロモノスポラ種ML1染色体DNA由来のSuperCos1における遺伝子ライブラリーの構築
染色体DNAは、Pharma Mar, S.A.カルチャーコレクションにおいて、MIAM2培地(5g/lの酵母抽出物、3g/lの食肉抽出物、5g/lのトリプトン、5g/lのグルコース、20g/lのデキストリン、4g/lのCaCO3、10g/lの海塩pH6.8)中で入手できるミクロモノスポラ種ML1培養物(Espliego, F. Ph.D. Thesis, 1996, University of Leon; de la Calle, F. Ph.D. Thesis, 1998, Autonomous University of Madrid)から脱塩プロトコール(Kieser et al. 2000)を用いて得た。この染色体DNAをBamHIエンドヌクレアーゼで部分消化し、得られた断片を用いて、BamHIで消化したコスミドSuperCos 1(Stratagene)において遺伝子ライブラリーを作製した。大腸菌XL−1 Blue MR(Stratagene)におけるこの遺伝子ライブラリーの生成は、既に記載されている手順(Sambrook et al. 2001)に従い、in vitroパッケージングキットGigapack III Goldパッケージング抽出キット(Stratagene)で行った。
【0073】
1,000個の大腸菌形質導入コロニーをナイロン膜に付着させ、通常のプロトコール(Sambrook et al. 2001)によりin situコロニーハイブリダイゼーション分析を行った。
【0074】
実施例2:ミクロモノスポラ種ML1染色体DNAからのpKC505における遺伝子ライブラリーの構築
染色体DNAは、MIAM2培地中のミクロモノスポラ種ML1培養物から脱塩プロトコール(Kieser et al. 2000)を用いて得た。この染色体DNAをSau3AIエンドヌクレアーゼで部分消化し、得られた断片を用いて、BamHIで消化した二機能性コスミド大腸菌(Escherichia coli)/ストレプトミセスpKC505(Richardson at al. 1987, Gene 61, 231-241)において遺伝子ライブラリーを作製した。大腸菌ED8767におけるこの遺伝子ライブラリーの作製は、すでに記載されている手順(Sambrook et al. 2001)に従い、in vitroパッケージングキットGigapack III Goldパッケージング抽出キット(Stratagene)で行った。
【0075】
3,300の大腸菌形質導入コロニーを、TSB培地(Merck)を25μg/mlのアプラマイシンを含む96ウェルマイクロタイタープレートに付着させ、30℃で24時間インキュベートした。これらのクローンを、25μg/mlのアプラマイシンを含むTSA(Tryptic Soy Agar)に複製させ、30℃で一晩の後、コロニーをナイロン膜に移し、通常のプロトコール(Sambrook et al. 2001)によりin situコロニーハイブリダイゼーションを行った。
【0076】
実施例3:NRPSにおけるアデニル化ドメインに特異的なオリゴヌクレオチドの設計およびミクロモノスポラ種ML1染色体DNAからのそれらのPCR増幅
チオコラリンの構造に基づけば、その生合成を担うNRPSは、L−システインを活性化する1〜3のアデニル化ドメインと1つのグリシン活性化ドメインを持つと予測された。これを基礎に、NRPSアデニル化ドメイン内で保存されている領域に基づき、NRPSアデニル化ドメインの増幅に関して文献に記載されているオリゴヌクレオチドと組み合わせたNRPSアデニル化ドメインをコードするDNA断片を特異的に増幅し得る縮重したオリゴヌクレオチドを設計した。
【0077】
イニシエーターオリゴヌクレオチド:
MTF2(5’−GCNGGYGGYGCNTAYGTNCC−3’;Neilan et al. 1999. J. Bacteriol. 181(13):4089-4097)および
PSV−4(5’−SAGSAGGSWGTGGCCGCCSAGCTCGAAGAA−3’)
を用いてPCR増幅を行ったところ、1.3kbのバンドが得られ、これをPGEM−T Easyベクター(Promega)にクローニングした。用いたPCRプログラムは、95℃−2分;60℃−15分;72℃−6分の初期サイクルの後、95℃−1分;60℃−2分;72℃−2分の20サイクルであった。ミクロモノスポラ種ML1染色体DNAを鋳型として用いた。
【0078】
これらのクローンを制限断片長多型(RFLP)により分析したところ、ペプチドシンセターゼpGPSV1、pGPSV2およびpGPSV3に相当する3つの異なるクローンが存在することが示され、これらはそれぞれPSV1、PSV2およびPSV3と呼ばれるアデニル化ドメイン断片を含んでいた。
【0079】
次に、これらのクローンの挿入部をEcoRI消化で遊離させ、その断片をpBBR1−MCS2(Kovach, M.E. et al. 1995. Gene. 166:175-176)にクローニングし、それぞれプラスミドpBPSV1、pBPSV2およびpBPSV3を構築し、これらはそれぞれPSV1、PSV2およびPSV3と呼ばれるアデニル化ドメイン断片を含んでいた。
【0080】
イニシエーターオリゴヌクレオチドMTF2およびPS4で得られたPCバンドから、イニシエーターオリゴヌクレオチドPS2−TG:5’−ACNGGNMRNCCNAARGG−3’およびMTR:5’−CCNCGDATYTTNACY−3’(Neilan et al. 1999. J. Bacteriol. 181(13):4089-4097)を用いてネスティッド−PCR(95℃−1分;60℃−1分;72℃−1分の30サイクル)を行い、750bpのバンドを得、これをPGEM−T Easyベクター(Promega)にクローニングした。これらのクローンをRFLPにより分析したところ、ペプチドシンセターゼpGPSV4およびpGPSV5にそれぞれ相当する2つの異なる新たなクローン種が存在することを示し、それぞれPSV4およびPSV5と呼ばれるアデニル化ドメイン断片を含んでいた。
【0081】
イニシエーターオリゴヌクレオチドPS2M:5’−TACACSGGCWSSACSGG−3’およびPSV−4を用いてPCR増幅を行ったところ1.3kbのバンドが得られ、PGEM−T Easyベクターへクローニングした。用いたプログラムは、アニーリング温度72℃5サイクルによるタッチダウンスタートの後、70℃のアニーリング10サイクル、最後に68℃での20サイクル(96℃−1分;72℃−68℃−2分;72℃−3分)であった。これらのクローンをRFLPにより分析したところ、ペプチドシンセターゼpGPSV6に相当する新たなクローン種であることが示され、これはPSV6と呼ばれるアデニル化ドメイン断片を含んでいた。
【0082】
実施例4:コロニーハイブリダイゼーションによる遺伝子ライブラリーの分析
SuperCos1およびpKC505で構築された遺伝子ライブラリー(実施例1および2)に対し、DIG DNA標識および検出キット系(Roche)を用いて、in situコロニーハイブリダイゼーション分析(Sambrook et al. 2001)を個々に行った。PSV1〜PSV6と呼ばれる6つのアデニル化ドメイン断片をプローブとして用いた。
【0083】
以下のものがSuperCos1で構築された遺伝子ライブラリーから得られた。
・断片PSV1とハイブリダイズした、pCT1a、pCT1bおよびpCT1cと呼ばれる3つの陽性コスミド(クローン)
・断片PSV2とハイブリダイズした、pCT2a、pCT2bおよびpCT2cと呼ばれる3つの陽性コスミド(クローン)(これらの断片のうち、pCT2cは断片PSV5ともハイブリダイズした)
・断片PSV3とハイブリダイズした、pCT3aおよびpCT3bと呼ばれる2つの陽性コスミド(クローン)(さらに、双方ともPSV6ともハイブリダイズした)および
・断片PSV4とハイブリダイズした、pCT4aと呼ばれる1つの陽性コスミド(クローン)。
【0084】
pKC505で構築された遺伝子ライブラリーからは55の陽性コスミドが得られた。
・断片PSV2とハイブリダイズした、cosVl−F8、cosV7−D2、cosV7−D12、cosV14−H4、cosV19−B4、cosV29−B9、cosV31−B11、cosV31−H10、cosV33−D12、cosV33−F7と呼ばれる10の陽性コスミド(クローン)
・断片PSV5とハイブリダイズした、COSV1−B6、cosV6−H8、cosVll−F10、cosV20−F8、cosV22−F7、cosV25−B3、cosV32−B4と呼ばれる7つの陽性コスミドおよび
・断片PSV1、PSV3、PSV4またはPSV6とハイブリダイズした、cosV1−B7、cosV1−F5、cosV2−E5、cosV2−F11、cosV3−D9、cosV4−D2、cosV5−D7、cosV5−G6、cosV6−A7、cosV6−A12、cosV7−E7、cosV8−F8、cosV9−H7、cosV10−A3、cosV11−B4、cosV11−G2、cosV12−B12、cosV13−B2、cosV16−H11、cosV17−A3、cosV19−F4、cosV20−B3、cosV20−H5、cosV21−H6、cosV22−B11、cosV23−F8、cosV26−H11、cosV28−G1、cosV29−E1、cosV29−G6、cosV30−G5、cosV31−A12、cosV31−E10、cosV32−A7、cosV32−D10、cosV33−A8、cosV33−D10、cosV33−F10と呼ばれる38の陽性コスミド。
【0085】
工程2:単離された6つのアデニル化領域における突然変異体の作出
【0086】
ミクロモノスポラ種ML1染色体DNA(PSV1、PSV2、PSV3、PSV4、PSV5およびPSV6)から従前に増幅した6つのアデニル化ドメイン断片を、チオコラリンの生合成に関与する領域を評価することを目的とした独立した遺伝子分断実験に用いた(実施例6〜11)。
【0087】
接合性プラスミド大腸菌/ストレプトミセスpOJ260(Bierman et al. 1992, Gene 116, 43-49)を用い、それぞれPSV1〜PSV6を含む構築物pFL903、pFL904、pFL905、pFL906、pFL940およびpFL941を作出した。これらの構築物を接合性大腸菌ET12567(pDB307)株(Kieser et al. 2000)に導入し、そしてここから、記載の手順(Kieser et al. 2000)を用い、接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンをアプラマイシンで選択し、適切な染色体領域に組み込まれているかどうか、アデニル化ドメイン断片PSV1〜PSV6の相当する領域を用い、サザンハイブリダイゼーションにより確認した。PSVアデニル化ドメイン(PSV1〜PSV6)を各領域から選択した交差接合体をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次に、それらの菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLC−MSにより分析した(実施例5)。アデニル化ドメインPSV2およびPSV5に作用する突然変異は、チオコラリンを産生しない表現型を有する(実施例7および10)。PSV1、PSV3、PSV4およびPSV6に欠失を有する突然変異体におけるチオコラリンの産生は、野生株wtと同様であった(実施例6、8、9および11)。これらの実験は、アデニル化ドメインPSV2およびPSV5がチオコラリンの生合成に関与していることを示した。
【0088】
実施例5:チオコラリン産生のHPLC検出
分析した種々の株のアセトニトリル抽出物をロータリーエバポレーターで濃縮し、DMSOに再懸濁させた後、HPLC−MS分析に用いた。
【0089】
サンプル(10μ1)を、アセトニトリルおよび水中0.1%のトリフルオロ酢酸の混合物を溶媒とし、逆相カラム(Symmetry C18、2.1×150mm、Waters)を用いてHPLCにより分析した。最初の4分間は、移動相の濃度をアセトニトリル10%で一定に維持した。次に、30分まで、10%〜100%のアセトニトリルの直線勾配を開始した。用いた流速は0.25ml/分であった。スペクトル検出およびピーク同定はフォトダイオード検出器を用い、Millenniumコンピューターソフトウエア(Waters)を用いて行った。クロマトグラムは230nmの吸光度で抽出したものである。
【0090】
実施例6:PSV1領域における遺伝子分断
PSV1領域はプラスミドpBPSV1から1.3kbのEcdRIバンドとして得、接合性プラスミド大腸菌/ストレプトミセスpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL903を作出した。pOJ260はストレプトミセスにアプラマイシン耐性を付与する遺伝子を含み、これらの細胞では、それは自殺プラスミドである。
【0091】
この構築物pFL903を接合性大腸菌ET12567(pUB307)に導入し、そしてここから、記載の手順(Kieser et al. 2000)を用い、接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV1領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV1バンドであった。
【0092】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV1をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLC−MSにより分析し(実施例5参照)、チオコラリン産生体であることが分かった。培養培地MT4 1リットル当たりの組成は次の通りである:6gのダイズ粉末、2.5gの麦芽抽出物、2.5gのペプトン、5gのデキストロース、20gのデキストリン、4gのCaCO3、10gの海塩、pH6.8に調整。
【0093】
実施例7:PSV2領域における遺伝子分断
PSV2領域はプラスミドpBPSV2から1.3kbのEcoRIバンドとして得、プラスミドpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL904を作出した。
【0094】
この構築物pFL904を接合性大腸菌ET12567株(pUB307)に導入し、そしてここから、接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV2領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV2バンドであった。
【0095】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV2をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLC−MSにより分析したところ(実施例5)、結果としてこの株はチオコラリンを産生しないことが分かった。
【0096】
実施例8:PSV3領域における遺伝子分断
PSV3領域はプラスミドpBPSV3から1.4kbのEcoRIバンドとして得、プラスミドpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL905を作出した。
【0097】
この構築物pFL905を接合性大腸菌ET12567(pUB307)株に導入し、そしてここから接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV3領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV3バンドであった。
【0098】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV3をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLC−MSにより分析したところ(実施例5)、チオコラリン産生体であることが分かった。
【0099】
実施例9:PSV4領域における遺伝子分断
PSV4領域はプラスミドpGPSV4から1.2kbのEcoRIバンドとして得、プラスミドpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL906を作出した。
【0100】
この構築物pFL906を接合性大腸菌ET12567(pUB307)株に導入し、そしてここから接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV4領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV4バンドであった。
【0101】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV4をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLC−MSにより分析したところ(実施例5)、チオコラリン産生体であることが分かった。
【0102】
実施例10:PSV5領域における遺伝子分断
PSV5領域はプラスミドpGPSV5から1.1kbのEcoRIバンドとして得、プラスミドpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL940を作出した。
【0103】
この構築物pFL940を接合性大腸菌ET12567(pUB307)株に導入し、そしてここから接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV5領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV5バンドであった。
【0104】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV5をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLCにより分析したところ、結果としてこの株はチオコラリンを産生しないことが分かった。
【0105】
実施例11:PSV6領域における遺伝子分断
PSV6領域はプラスミドpGPSV6から1.1kbのEcoRIバンドとして得、プラスミドpOJ260のEcoRI部位にクローニングし、pFL941を作出した。
【0106】
この構築物pFL941を接合性大腸菌ET12567(pUB307)株に導入し、そしてここから接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。これらの交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV6領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPSV6バンドであった。
【0107】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV6をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLCにより分析したところ、チオコラリン産生体であることが分かった。
【0108】
工程3:チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターのヌクレオチド配列の取得および分析
その遺伝子分断がチオコラリンを産生しない表現型を生じたものはアデニル化ドメインPSV2およびPSV5の増幅領域だけであったというこれまでの結果に基づき、2つの重複するコスミドcosV33D12(アデニル化ドメインPSV2の領域を含む)およびpCT2c(アデニル化ドメインPSV2およびPSV5の領域を含む)を配列決定のために選択した。該コスミドから得られた64,650bpの分析を行ったところ、36の完全ORFと2つの不完全ORFの存在が示され、その構成を図1に示す。種々の遺伝子から推定される産物のデータベースに存在するタンパク質配列と比較することで、それらのほとんどに関する機能の推定が可能であった(表1)。
【0109】
実施例12:コスミドcosV33−D12とpCT2cの挿入部のヌクレオチド配列の同定および分析
通常の方法およびウィスコンシン大学のthe Genetics Computer GroupからのプログラムパッケージGCGを用いて両コスミドを配列決定し、配列のコンピューター分析に用いた(Devereux et al. 1984, Nucleic Acid Res. 12, 387-395)。
【0110】
このようにして64,650ヌクレオチドの配列が得られ、そのコンピューター分析を行ったところ、38のORF[36の完全ORFと2つの不完全ORF]の存在が示され、その構成を図1に示す。これらのORFの遺伝子発現産物をBLASTプログラム(Altschul et al. 1997, Nucleic Acid Res. 25, 3389-3402)を用い、データベースに存在する既知の機能を有するタンパク質と比較し、これにより、これらのORFのほとんどのものの推定機能が割り付けられた(表1)。
【0111】
【表1】
【0112】
同定されたタンパク質のいくつかは、例えば同定されたNRPSの、Tio12、Tio17、Tio18、Tio19、Tio20、Tio21、Tio22、Tio27およびTio28のいくつかなどの、チオコラリンペプチド構造の形成に関与する。Tio5、Tio6およびTio23などの耐性過程に関連する可能性のあるタンパク質もいくつかある。これらの配列領域において同定された可能性のあるチオコラリン経路レギュレーターはTio3、Tio4、Tio7、Tio24、Tio25に相当する。最後に、イニシエーターユニット3−ヒドロキシ−キナルデート、Tio8、Tio9、Tio1OおよびTio11の形成に関連するタンパク質もいくつかある。
【0113】
その遺伝子分断がチオコラリンを産生しない表現型を生じる遺伝子が図1にアスタリスクで示されている(tio20、tio27およびtio28)。
【0114】
実施例13:tio28における遺伝子分断
チオコラリンの生合成においてTio28タンパク質が関与するかどうかを証明するために、tio28遺伝子の遺伝子分断およびアデニル化ドメインの1つだけの特異的遺伝子分断による不活性化を行った。
【0115】
このアデニル化ドメイン内の2つのイニシエーターオリゴヌクレオチド(FL−T−102upおよびFL−T−102rp)をデザインし、tio28における1,428塩基対を増幅するために用いた。このイニシエーターオリゴヌクレオチドの配列は次の通りである。
FL−T−102up:5’−ACCTGAGGTACTGGGCGCAGC−3’(21ヌクレオチド)
FL−T−102rp:5’−CCGATCACCACCACCGTGGC−3’(20ヌクレオチド)
【0116】
PCRプログラムは、94℃2分、30サイクル(94℃30秒、53℃60秒、68℃90秒)、68℃5分および4℃15分であった。PCR反応混合物は、1μlのコスミドpCT2c 鋳型DNA、1μlの各オリゴヌクレオチド30pmol/μl濃度、7.5μlの2mM dNTP溶液(dATP、dTTP、dCTPおよびdGTP)、1μlの50mM MgSO4、5μlのPfx反応バッファー(Invitrogene)、5μlのPfxエンハンサー溶液(Invitrogene)、28μlの蒸留水および0.5μlのPfxポリメラーゼ(Invitrogene)。
【0117】
PSV7と呼ばれる、得られたPCR産物をプラスミドpOJ260のEcoRV部位にクローニングし、pFL971を作出した。
【0118】
この構築物pFL971を接合性大腸菌ET12567(pUB307)株に導入し、そしてここから接合によりミクロモノスポラ種ML1株に導入した。交差接合クローンを25μg/mlのアプラマイシンで選択し、それらの染色体DNAから、このPSV7領域が本当に分断されているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認した。この場合、用いたプローブはPCR産物PSV7であった。
【0119】
突然変異体ミクロモノスポラ種ΔPSV7をチオコラリン産生培地MT4で増殖させ、次にその菌糸体をアセトニトリルで抽出し、HPLCMSにより分析したところ(実施例5)、結果としてこの株はチオコラリンを産生しないことが分かった。
【0120】
工程4:他のアクチノミセス属におけるチオコラリンの異種発現
チオコラリンの生合成における同定された遺伝子の関与を確認するため、いくつかのストレプトミセス種におけるチオコラリン遺伝子クラスターの異種発現をアッセイした。配列番号1の1,393番(MseI制限部位)と54,301番(AclI制限部位)の間に含まれるDNA領域を大腸菌で複製可能なプラスミドに、その後、大腸菌で複製可能であって、ストレプトミセス属の組み込みが可能なプラスミドにクローニングするDNA断片として選択した。このDNA領域はtio3とtio28(双方とも含み、完全である)の間に位置する総てのORFを含む(図1)。このDNA領域の選択は、Tio3タンパク質とTio28タンパク質が、二次代謝タンパク質と類似性を示した配列決定領域内で最も外側のタンパク質であるということによった。
【0121】
そのサイズが大きいため、該DNA領域は、3つの異なるコスミド(cosV33−D12、cosV19−B4およびpCT2c)から得られた3つの独立したDNA断片:
・断片A(20.2kb):MseI(配列番号1の1,393番)〜NsiI(配列番号1の21,585番);
・断片B(19kb):NsiI(配列番号1の21,585番)〜EcoRI(配列番号1の40,636番);および
・断片C(13.7kb):EcoRI(配列番号1の40,636番)〜AclI(配列番号1の54,301番)
を連結する複数段階で得た。
【0122】
サブクローニングを助けるため、完全DNA断片をまず、大腸菌pOJ260で複製可能なプラスミドにサブクローニングした(実施例14)。この挿入部をレスキューし、エリスロマイシン耐性プロモーター(ermEp)(pARP)[実施例16]を含む、または該プロモーターを含まない(pAR15AT)[実施例15]、大腸菌で複製可能であって、ストレプトミセス属の組み込みが可能なベクターにサブクローニングした。選択されたこのDNA領域をストレプトミセスの組み込みが可能なプラスミドpAR15ATに双方向で(実施例17)、また、pARP(実施例18)にクローニングした。最後に、該構築物を属間接合により数種のストレプトミセスに導入した(実施例19)。
【0123】
実施例14:選択されたDNA領域の、大腸菌プラスミドpOJ260へのクローニング
制限部位EcoRI(配列番号1の40,636番)とAclI(配列番号1の54,301番)の間に位置するDNA領域を、コスミドpCT2(図2)から常法(Sambrook et al. 2001)により得た。このDNA断片を大腸菌プラスミドpUK21(Vieira et al. 1991, Gene 100, 189-194)のユニークな制限部位EcoRIおよびClaIにクローニングし、構築物pFL1023を作出した(図3)。
【0124】
制限部位NsiI(配列番号1の21,585番)とEcoRI(配列番号1の40,636番)の間に位置するDNA領域をコスミドcosV19−B4から常法(Sambrook et al. 2001)により得た。このDNA断片を大腸菌プラスミドpGEM−11Zf(Promega)のユニークな制限部位NsiIとEcoRIにクローニングし、構築物pFL1022(図3)を作出した。
【0125】
これら2つのDNA断片を次に連結した。このため、pFL1022に位置する制限部位NsiI(配列番号1の21,585番)とEcoRI(配列番号1の40,636番)の間に位置するDNA断片を制限酵素HindiII(NsiI制限部位の直前の多重クローニング部位に位置する)およびEcoRIで消化することによりレスキューした。次に、この断片を構築物pFL1023に存在する制限部位HindIIIとEcoRIにクローニングし、プラスミドpFL1024(図3)を作出した。
【0126】
pFL1024にクローニングされた全領域をSpeIバンドとしてレスキューし(pUK21の多重クローニング部位の両末端にこれら2つの制限部位が存在するため)、プラスミドpOJ260のユニークなSpeI部位にクローニングし、プラスミドpFL1036(図3)を作出した。
【0127】
最後に、コスミドcosV33−D12から切断部位MseI(配列番号1の1,393番)およびNsiI(配列番号1の21,585番)の間に位置する断片を得、これをpFL1036のそれぞれNdeI部位とNsiI部位にクローニングし、pOJ260(Bierman et al. 1992 Gene 116, 43-49)に配列番号1の1,393番(MseI制限部位)と54,301番(AclI制限部位)の間、すなわち、ORF tio3〜tio28(双方とも含み、完全である)からなる全領域を含む構築物pFL1041(図4)を作出した。さらに、pFL1041では、この領域は2つのSpeI制限部位にフランキングされている。pFL1041は大腸菌で複製可能なプラスミドである。
【0128】
実施例15:ストレプトミセスpAR15ATの組み込みが可能なプラスミドの構築
プラスミドpACYC184(Rose 1988, Nucleic Acids Res. 16, 355)の複製起点ori p15AをSgrAI−Xbal断片をとして得、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片で処理した。この複製起点をプラスミドpUKAのSmaI部位にクローニングし、プラスミドpU015A(図5)を得た。pUKAは、コスミドpKC505(Richardson at al. 1987, Gene 61, 231-241)からPstI−EcoRIバンドとして得られ、そのPstI−AccI制限部位にクローニングされたアプラマイシン耐性遺伝子プラスミドを含むpDK21の誘導体である(Vieira et al. 1991, Gene 100, 189-194)。
【0129】
アプラマイシン耐性遺伝子aac(3)IVの後にori p15Aを含むDNA断片は、pDO15AのBglII−XhoI消化によって得られた。この断片を、同じ制限酵素を用い、プラスミドpOJ436にクローニングし(Bierman et al. 1992, Gene 116, 43-49)、構築物pOJ15A(図5)を得た。
【0130】
プラスミドpOJ260に由来し、接合起点oriTを含むDraI−BglII断片(クレノウで処理)を、pOJ15AのPvuII制限部位にクローニングした。このようにして最終的にプラスミドpAR15ATを得た(図5)。
【0131】
実施例16:ストレプトミセスpARPの組み込みが可能なプラスミドの構築
プラスミドpGB15(Blanco et al. 2001, Chem. Biol. 8, 253-263)から得られたクレノウで処理したEcoRI−HindIII DNA断片としての、エロラマイシン生合成経路由来のelmGTグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を、pSL1180(Amersham Pharmacia)のEcl136II制限部位にクローニングした。このようにして、elmGT遺伝子が構成的ermEエリスロマイシン耐性遺伝子プロモーター(PermE)の制御下にある構築物pSLelmGTaを得た(図6)。
【0132】
PermE−elmGTを含むpSLelmGTaから得られたSpeI−NheI断片を、実施例15に記載されているプラスミドpAR15ATのXbaI部位にクローニングし、構築物pAR15ATG*を得た(図6)。
【0133】
プラスミドpAR15ATG*のXbaI消化とその後の再連結により、elmGT遺伝子を除去し、PermEプロモーターが維持され、プラスミドpARPを得た(図6)。
【0134】
実施例17:選択されたDNA領域の、ストレプトミセスpAR15ATの組み込みが可能なプラスミドへの双方向でのクローニング
配列番号1の1,393番(MseI制限部位)と54,301番(AclI制限部位)からなる領域を含む、pFL1041からのSpeI DNA断片(図4)をプラスミドpAR15ATのXbaI制限部位に双方向でクローニングした(図5)。このようにして、アプラマイシン耐性遺伝子を有し、大腸菌において複製可能であり、ストレプトミセスに組み込み可能である、pFL1048およびpFL1048と呼ばれる2つの新たなプラスミド(図7)を、φC31ファージのattP領域を用いる系により作出した。
【0135】
実施例18:選択されたDNA領域の、ストレプトミセスpARPの組み込みが可能なプラスミドのErmE遺伝子プロモーターの後へのクローニング
同様にして、配列番号1の1,393番(MseI制限部位)と54,301番(AclI制限部位)からなる領域を含む、pFL1041(図4)由来のSpeI DNA断片を、プラスミドpARPのXbaI制限部位にクローニングした(図6)。このようにして、tio3(配列番号4)に相当するORFが、pARPに存在する構成的プロモーターPermEの制御下にあるpFL1049(図7)を作出した。このプラスミドはアプラマイシン耐性遺伝子を有し、φC31ファージのattP領域を用いる系により、大腸菌で複製可能であり、ストレプトミセスにおいて組み込み可能である。
【0136】
実施例19:種々のストレプトミセスにおけるチオコラリン生合成経路の異種発現
プラスミドpFL1048(図7)を接合により、大腸菌ET12567(pUB307)株(Kieser et al. 2000)からストレプトミセス・リビダンスTK21(Kieser et al. 2000)およびストレプトミセス・アルブスJ1074種(Chater et al. 1980, J. Gene. Microbiol. 116, 323-334)へ導入した。
【0137】
プラスミドpFL1049(図7)を接合により、大腸菌ET12567(pUB307)株からストレプトミセス・コエリコロルM145(Redenbach et al., 1996, Mol. Microbiol., 21, 77-96)、ストレプトミセス・リビダンスTK21、ストレプトミセス・アルブスJ1074およびストレプトミセス・アベルミチリスATCC 31267種に導入した。
【0138】
最後に、プラスミドpFL1048r(図7)を接合により、大腸菌ET12567株(pUB307)からストレプトミセス・リビダンスTK21種に導入した。
【0139】
ストレプトミセス・アルブス(pFL1049)クローンの、産生培地R5A(Fernandez et al. 1998, J. Bacteriol. 180, 4929-4937)における培養結果を図8Aに示す。図8Bは、このクロマトグラムで、保持時間27分を有するピークの吸収スペクトルとその質量スペクトルを示し(図8C)、それは双方とも精製チオコラリンのものと同一であった。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】配列決定されたミクロモノスポラ種ML1染色体領域の遺伝子編成を含む、チオコラリン遺伝子およびそれを取り囲む遺伝子のクラスターの模式図。チオコラリン遺伝子クラスターの異種発現のためのプラスミドの構築に用いた制限部位を示す。
【図2】コスミドcosV33−D12およびpCT2cの模式図。ori:大腸菌(E. coli)の複製起点。SCP2:ストレプトミセス属の複製起点。aac(3)IV:アプラマイシン耐性遺伝子。neo:ネオマイシン耐性遺伝子。bla:アンピシリン耐性遺伝子。SV40 ori:エピソーム複製の真核生物起点
【図3】プラスミドpFL1036を構築するために行ったクローニングを示す図。ori:大腸菌の複製起点。M13 ori:M13ファージの複製起点。oriT:接合移入起点。lacZ:β−ガラクトシダーゼ遺伝子。kanR:カナマイシン耐性遺伝子。aac(3)IV:アプラマイシン耐性遺伝子。bla:アンピシリン耐性遺伝子。
【図4】プラスミドpFL1041を構築するために行ったクローニングを示す図。ori:大腸菌の複製起点。SCP2:ストレプトミセスの複製起点。oriT:接合移入起点。lacZ:β−ガラクトシダーゼ遺伝子。aac(3)TV:アプラマイシン耐性遺伝子。
【図5】プラスミドpAR15ATを構築するために行ったクローニングを示す図。ori p15A:大腸菌の複製起点。oriT:接合移入起点。intφC31:φ31ファージインテグラーゼ遺伝子。attP:部位特異的組換え部位。kanR:カナマイシン耐性遺伝子。aac(3)IV:アプラマイシン耐性遺伝子。K:大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片で処理した切断部位。
【図6】プラスミドpAPRを構築するために行ったクローニングを示す図。ori p15A:大腸菌の複製起点。oriT:接合移入起点。ori M13:M13ファージの複製起点。ori:大腸菌の複製起点。lacZ:β−ガラクトシダーゼ遺伝子。lacI:ラクトースオペロンレプレッサー遺伝子。intφC31:φC31ファージインテグラーゼ遺伝子。attP:部位特異的組換え部位。kanR:カナマイシン耐性遺伝子。aac(3)IV:アプラマイシン耐性遺伝子。K:大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片で処理した切断部位。PermE:ermE遺伝子プロモーター。
【図7】プラスミドpFL1048、pFL1048rおよびpFL1049の図。ori p15A:大腸菌の複製起点。oriT:接合移入起点。intφC31:φC31ファージインテグラーゼ遺伝子。attP:部位特異的組換え部位。aac(3)IV:アプラマイシン耐性遺伝子。
【図8A】7日間のR5A培地での増殖後のストレプトミセス・アルブス(pFL1049)培養抽出物のHPLCクロマトグラム。チオコラリンに対応するピークとその保持時間、27分を示す。
【図8B】図8Aに示されている27分ピークに存在する生成物(チオコラリン)のUV吸収スペクトル。
【図8C】図8Aに示されている27分ピークに存在する生成物(チオコラリン)の質量スペクトル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子。
【請求項2】
総ての生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
配列番号1で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでなる、請求項1または2に記載の核酸分子。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸分子とハイブリダイズし、かつ、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードする、核酸分子。
【請求項5】
生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項6】
配列番号1のヌクレオチド2〜535を含んでなる核酸分子(orf1);
配列番号1のヌクレオチド993〜1130cを含んでなる核酸分子(orf2);
配列番号1のヌクレオチド1517〜2131を含んでなる核酸分子(tio3);
配列番号1のヌクレオチド2154〜2822cを含んでなる核酸分子(tio4);
配列番号1のヌクレオチド2970〜3791cを含んでなる核酸分子(tio5);
配列番号1のヌクレオチド3794〜4777cを含んでなる核酸分子(tio6);
配列番号1のヌクレオチド4904〜5611を含んでなる核酸分子(tio7);
配列番号1のヌクレオチド5701〜6426cを含んでなる核酸分子(tio8);
配列番号1のヌクレオチド6426〜7688cを含んでなる核酸分子(tio9);
配列番号1のヌクレオチド7733〜8524cを含んでなる核酸分子(tio10);
配列番号1のヌクレオチド8791〜10002を含んでなる核酸分子(tio11);
配列番号1のヌクレオチド10002〜11590cを含んでなる核酸分子(tio12);
配列番号1のヌクレオチド11847〜13634を含んでなる核酸分子(tio13);
配列番号1のヌクレオチド13734〜15005cを含んでなる核酸分子(tio14);
配列番号1のヌクレオチド15005〜16354cを含んでなる核酸分子(tio15);
配列番号1のヌクレオチド16441〜18744cを含んでなる核酸分子(tio16);
配列番号1のヌクレオチド18774〜19055cを含んでなる核酸分子(tio17);
配列番号1のヌクレオチド19260〜20036を含んでなる核酸分子(tio18);
配列番号1のヌクレオチド20146〜20880cを含んでなる核酸分子(tio19);
配列番号1のヌクレオチド21188〜28969を含んでなる核酸分子(tio20);
配列番号1のヌクレオチド28979〜38398を含んでなる核酸分子(tio21);
配列番号1のヌクレオチド38449〜38661を含んでなる核酸分子(tio22);
配列番号1のヌクレオチド38642〜41263を含んでなる核酸分子(tio23);
配列番号1のヌクレオチド41835〜42368を含んでなる核酸分子(tio24);
配列番号1のヌクレオチド42395〜43255cを含んでなる核酸分子(tio25);
配列番号1のヌクレオチド43340〜43741cを含んでなる核酸分子(tio26);
配列番号1のヌクレオチド44152〜49563を含んでなる核酸分子(tio27);
配列番号1のヌクレオチド49635〜53669を含んでなる核酸分子(tio28);
配列番号1のヌクレオチド53749〜55305cを含んでなる核酸分子(orf29);
配列番号1のヌクレオチド55384〜57222cを含んでなる核酸分子(orf30);
配列番号1のヌクレオチド57895〜58467cを含んでなる核酸分子(orf31);
配列番号1のヌクレオチド58535〜59206cを含んでなる核酸分子(orf32);
配列番号1のヌクレオチド59298〜59564cを含んでなる核酸分子(orf33);
配列番号1のヌクレオチド59611〜60114cを含んでなる核酸分子(orf34);
配列番号1のヌクレオチド60202〜60888を含んでなる核酸分子(orf35);
配列番号1のヌクレオチド60960〜62240を含んでなる核酸分子(orf36);
配列番号1のヌクレオチド62300〜62833を含んでなる核酸分子(orf37);
配列番号1のヌクレオチド62925〜64650を含んでなる核酸分子(orf38);または
生合成チオコラリン産生経路タンパク質の生物学的に活性な断片をコードするそれらの断片からなる群から選択される、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項7】
2以上の生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項8】
orf1、orf2、tio3、tio4、tio5、tio6、tio7、tio8、tio9、tio10、tio11、tio12、tio13、tio14、tio15、tio16、tio17、tio18、tio19、tio20、tio21、tio22、tio23、tio24、tio25、tio26、tio27、tio28、orf29、orf30、orf31、orf32、orf33、orf34、orf35、orf36、orf37、orf38として同定されている遺伝子、および生合成チオコラリン産生経路タンパク質の生物学的に活性な断片をコードするそれらの断片から選択される2以上の遺伝子を含んでなる、請求項7に記載の核酸分子。
【請求項9】
少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質、またはその生物学的に活性な断片、またはその突然変異体もしくは変異体をコードするヌクレオチド配列を含んでなり、前記タンパク質が、ORF1(配列番号2)、ORF2(配列番号3)、Tio3(配列番号4)、Tio4(配列番号5)、Tio5(配列番号6)、Tio6(配列番号7)、Tio7(配列番号8)、Tio8(配列番号9)、Tio9(配列番号10)、Tio10(配列番号ll)、Tio11(配列番号12)、Tio12(配列番号13)、Tio13(配列番号14)、Tio14(配列番号15)、Tio15(配列番号16)、Tio16(配列番号17)、Tio17(配列番号18)、Tio18(配列番号19)、Tio19(配列番号20)、Tio20(配列番号21)、Tio21(配列番号22)、Tio22(配列番号23)、Tio23(配列番号24)、Tio24(配列番号25)、Tio25(配列番号26)、Tio26(配列番号27)、Tio27(配列番号28)、Tio28(配列番号29)、ORF29(配列番号30)、ORF30(配列番号31)、ORF31(配列番号32)、ORF32(配列番号33)、ORF33(配列番号34)、ORF34(配列番号35)、ORF35(配列番号36)、ORF36(配列番号37)、ORF37(配列番号38)、ORF38(配列番号39)として同定されているタンパク質、およびそれらの組合せからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項10】
orf1、orf2、tio3、tio4、tio5、tio6、tio7、tio8、tio9、tio10、tio11、tio12、tio13、tio14、tio15、tio16、tio17、tio18、tio19、tio20、tio21、tio22、tio23、tio24、tio25、tio26、tio27、tio28、orf29、orf30、orf31、orf32、orf33、orf34、orf35、orf36、orf37、orf38、およびそれらの組合せ、またはその対応する領域、突然変異体もしくは変異体からなる群から選択されるorfを含む核酸配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項11】
ミクロモノスポラ種から単離された、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項12】
少なくとも1つの請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸分子を含んでなる、組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸分子またはその断片を含んでなる、プローブ。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸分子または請求項12に記載の組成物を含んでなる、ベクター。
【請求項15】
本発明のベクターで形質転換またはトランスフェクトされた、宿主細胞。
【請求項16】
微生物、好ましくは細菌である、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
前記細菌が、グラム陽性菌、好ましくはアクチノミセス属またはストレプトミセス属である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
本発明の核酸分子によりコードされる、タンパク質。
【請求項19】
ORF1(配列番号2)、ORF2(配列番号3)、Tio3(配列番号4)、Tio4(配列番号5)、Tio5(配列番号6)、Tio6(配列番号7)、Tio7(配列番号8)、Tio8(配列番号9)、Tio9(配列番号10)、Tio10(配列番号11)、Tio11(配列番号12)、Tio12(配列番号13)、Tio13(配列番号14)、Tio14(配列番号15)、Tio15(配列番号16)、Tio16(配列番号17)、Tio17(配列番号18)、Tio18(配列番号19)、Tio19(配列番号20)、Tio20(配列番号21)、Tio21(配列番号22)、Tio22(配列番号23)、Tio23(配列番号24)、Tio24(配列番号25)、Tio25(配列番号26)、Tio26(配列番号27)、Tio27(配列番号28)、Tio28(配列番号29)、ORF29(配列番号30)、ORF30(配列番号31)、ORF31(配列番号32)、ORF32(配列番号33)、ORF33(配列番号34)、ORF34(配列番号35)、ORF35(配列番号36)、ORF36(配列番号37)、ORF37(配列番号38)、ORF38(配列番号39)として同定されているタンパク質、およびそれらの組合せまたはそれらの生物学的に活性な断片からなる群から選択される、請求項18に記載のタンパク質。
【請求項20】
請求項18または19に記載のチオコラリンの生合成に関与するタンパク質を製造する方法であって、好適な条件下でチオコラリン産生生物を増殖させること、および所望によりチオコラリンの生合成に関与する1以上の前記タンパク質を単離することを含んでなる、方法。
【請求項21】
チオコラリンを製造する方法であって、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子のコピー数が増加されたチオコラリン産生生物を該化合物の産生に好適な条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含んでなる、方法
【請求項22】
チオコラリンを製造する方法であって、チオコラリンの生合成を担うタンパク質をコードする遺伝子の発現が、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする1以上の遺伝子を操作もしくは置換することにより、または前記遺伝子の発現の調節を担う配列を操作することにより調節されているチオコラリン産生生物を、前記化合物の産生に好適な条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含んでなる、方法。
【請求項23】
前記チオコラリン産生生物がアクチノミセス属であり、好ましくはクロモノスポラ種である、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
チオコラリンを製造する方法であって、前記化合物の産生に好適な条件下で、請求項15〜17のいずれか一項に記載の宿主細胞を増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含んでなる、方法。
【請求項25】
前記宿主細胞がアクチノミセス属またはストレプトミセス属である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ミクロモノスポラ種ML1由来のチオコラリン生合成を担う遺伝子の使用に基づく、別のアクチノミセス属における該化合物の製造のための方法であって、
(1)チオコラリン生合成経路の特定の遺伝子に改変を有する突然変異体を得ること;
(2)チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含むミクロモノスポラ種ML1染色体領域を単離すること;
(3)チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を得て分析すること;および
(4)他のアクチノミセス属でチオコラリンを異種産生させること
を含んでなる、方法。
【請求項1】
少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子。
【請求項2】
総ての生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
配列番号1で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでなる、請求項1または2に記載の核酸分子。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸分子とハイブリダイズし、かつ、少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードする、核酸分子。
【請求項5】
生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはその生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項6】
配列番号1のヌクレオチド2〜535を含んでなる核酸分子(orf1);
配列番号1のヌクレオチド993〜1130cを含んでなる核酸分子(orf2);
配列番号1のヌクレオチド1517〜2131を含んでなる核酸分子(tio3);
配列番号1のヌクレオチド2154〜2822cを含んでなる核酸分子(tio4);
配列番号1のヌクレオチド2970〜3791cを含んでなる核酸分子(tio5);
配列番号1のヌクレオチド3794〜4777cを含んでなる核酸分子(tio6);
配列番号1のヌクレオチド4904〜5611を含んでなる核酸分子(tio7);
配列番号1のヌクレオチド5701〜6426cを含んでなる核酸分子(tio8);
配列番号1のヌクレオチド6426〜7688cを含んでなる核酸分子(tio9);
配列番号1のヌクレオチド7733〜8524cを含んでなる核酸分子(tio10);
配列番号1のヌクレオチド8791〜10002を含んでなる核酸分子(tio11);
配列番号1のヌクレオチド10002〜11590cを含んでなる核酸分子(tio12);
配列番号1のヌクレオチド11847〜13634を含んでなる核酸分子(tio13);
配列番号1のヌクレオチド13734〜15005cを含んでなる核酸分子(tio14);
配列番号1のヌクレオチド15005〜16354cを含んでなる核酸分子(tio15);
配列番号1のヌクレオチド16441〜18744cを含んでなる核酸分子(tio16);
配列番号1のヌクレオチド18774〜19055cを含んでなる核酸分子(tio17);
配列番号1のヌクレオチド19260〜20036を含んでなる核酸分子(tio18);
配列番号1のヌクレオチド20146〜20880cを含んでなる核酸分子(tio19);
配列番号1のヌクレオチド21188〜28969を含んでなる核酸分子(tio20);
配列番号1のヌクレオチド28979〜38398を含んでなる核酸分子(tio21);
配列番号1のヌクレオチド38449〜38661を含んでなる核酸分子(tio22);
配列番号1のヌクレオチド38642〜41263を含んでなる核酸分子(tio23);
配列番号1のヌクレオチド41835〜42368を含んでなる核酸分子(tio24);
配列番号1のヌクレオチド42395〜43255cを含んでなる核酸分子(tio25);
配列番号1のヌクレオチド43340〜43741cを含んでなる核酸分子(tio26);
配列番号1のヌクレオチド44152〜49563を含んでなる核酸分子(tio27);
配列番号1のヌクレオチド49635〜53669を含んでなる核酸分子(tio28);
配列番号1のヌクレオチド53749〜55305cを含んでなる核酸分子(orf29);
配列番号1のヌクレオチド55384〜57222cを含んでなる核酸分子(orf30);
配列番号1のヌクレオチド57895〜58467cを含んでなる核酸分子(orf31);
配列番号1のヌクレオチド58535〜59206cを含んでなる核酸分子(orf32);
配列番号1のヌクレオチド59298〜59564cを含んでなる核酸分子(orf33);
配列番号1のヌクレオチド59611〜60114cを含んでなる核酸分子(orf34);
配列番号1のヌクレオチド60202〜60888を含んでなる核酸分子(orf35);
配列番号1のヌクレオチド60960〜62240を含んでなる核酸分子(orf36);
配列番号1のヌクレオチド62300〜62833を含んでなる核酸分子(orf37);
配列番号1のヌクレオチド62925〜64650を含んでなる核酸分子(orf38);または
生合成チオコラリン産生経路タンパク質の生物学的に活性な断片をコードするそれらの断片からなる群から選択される、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項7】
2以上の生合成チオコラリン産生経路タンパク質またはそれらの生物学的に活性な断片をコードするヌクレオチド配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項8】
orf1、orf2、tio3、tio4、tio5、tio6、tio7、tio8、tio9、tio10、tio11、tio12、tio13、tio14、tio15、tio16、tio17、tio18、tio19、tio20、tio21、tio22、tio23、tio24、tio25、tio26、tio27、tio28、orf29、orf30、orf31、orf32、orf33、orf34、orf35、orf36、orf37、orf38として同定されている遺伝子、および生合成チオコラリン産生経路タンパク質の生物学的に活性な断片をコードするそれらの断片から選択される2以上の遺伝子を含んでなる、請求項7に記載の核酸分子。
【請求項9】
少なくとも1つの生合成チオコラリン産生経路タンパク質、またはその生物学的に活性な断片、またはその突然変異体もしくは変異体をコードするヌクレオチド配列を含んでなり、前記タンパク質が、ORF1(配列番号2)、ORF2(配列番号3)、Tio3(配列番号4)、Tio4(配列番号5)、Tio5(配列番号6)、Tio6(配列番号7)、Tio7(配列番号8)、Tio8(配列番号9)、Tio9(配列番号10)、Tio10(配列番号ll)、Tio11(配列番号12)、Tio12(配列番号13)、Tio13(配列番号14)、Tio14(配列番号15)、Tio15(配列番号16)、Tio16(配列番号17)、Tio17(配列番号18)、Tio18(配列番号19)、Tio19(配列番号20)、Tio20(配列番号21)、Tio21(配列番号22)、Tio22(配列番号23)、Tio23(配列番号24)、Tio24(配列番号25)、Tio25(配列番号26)、Tio26(配列番号27)、Tio27(配列番号28)、Tio28(配列番号29)、ORF29(配列番号30)、ORF30(配列番号31)、ORF31(配列番号32)、ORF32(配列番号33)、ORF33(配列番号34)、ORF34(配列番号35)、ORF35(配列番号36)、ORF36(配列番号37)、ORF37(配列番号38)、ORF38(配列番号39)として同定されているタンパク質、およびそれらの組合せからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項10】
orf1、orf2、tio3、tio4、tio5、tio6、tio7、tio8、tio9、tio10、tio11、tio12、tio13、tio14、tio15、tio16、tio17、tio18、tio19、tio20、tio21、tio22、tio23、tio24、tio25、tio26、tio27、tio28、orf29、orf30、orf31、orf32、orf33、orf34、orf35、orf36、orf37、orf38、およびそれらの組合せ、またはその対応する領域、突然変異体もしくは変異体からなる群から選択されるorfを含む核酸配列を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項11】
ミクロモノスポラ種から単離された、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項12】
少なくとも1つの請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸分子を含んでなる、組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸分子またはその断片を含んでなる、プローブ。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸分子または請求項12に記載の組成物を含んでなる、ベクター。
【請求項15】
本発明のベクターで形質転換またはトランスフェクトされた、宿主細胞。
【請求項16】
微生物、好ましくは細菌である、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
前記細菌が、グラム陽性菌、好ましくはアクチノミセス属またはストレプトミセス属である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
本発明の核酸分子によりコードされる、タンパク質。
【請求項19】
ORF1(配列番号2)、ORF2(配列番号3)、Tio3(配列番号4)、Tio4(配列番号5)、Tio5(配列番号6)、Tio6(配列番号7)、Tio7(配列番号8)、Tio8(配列番号9)、Tio9(配列番号10)、Tio10(配列番号11)、Tio11(配列番号12)、Tio12(配列番号13)、Tio13(配列番号14)、Tio14(配列番号15)、Tio15(配列番号16)、Tio16(配列番号17)、Tio17(配列番号18)、Tio18(配列番号19)、Tio19(配列番号20)、Tio20(配列番号21)、Tio21(配列番号22)、Tio22(配列番号23)、Tio23(配列番号24)、Tio24(配列番号25)、Tio25(配列番号26)、Tio26(配列番号27)、Tio27(配列番号28)、Tio28(配列番号29)、ORF29(配列番号30)、ORF30(配列番号31)、ORF31(配列番号32)、ORF32(配列番号33)、ORF33(配列番号34)、ORF34(配列番号35)、ORF35(配列番号36)、ORF36(配列番号37)、ORF37(配列番号38)、ORF38(配列番号39)として同定されているタンパク質、およびそれらの組合せまたはそれらの生物学的に活性な断片からなる群から選択される、請求項18に記載のタンパク質。
【請求項20】
請求項18または19に記載のチオコラリンの生合成に関与するタンパク質を製造する方法であって、好適な条件下でチオコラリン産生生物を増殖させること、および所望によりチオコラリンの生合成に関与する1以上の前記タンパク質を単離することを含んでなる、方法。
【請求項21】
チオコラリンを製造する方法であって、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする遺伝子のコピー数が増加されたチオコラリン産生生物を該化合物の産生に好適な条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含んでなる、方法
【請求項22】
チオコラリンを製造する方法であって、チオコラリンの生合成を担うタンパク質をコードする遺伝子の発現が、チオコラリンの生合成に関与するタンパク質をコードする1以上の遺伝子を操作もしくは置換することにより、または前記遺伝子の発現の調節を担う配列を操作することにより調節されているチオコラリン産生生物を、前記化合物の産生に好適な条件下で増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含んでなる、方法。
【請求項23】
前記チオコラリン産生生物がアクチノミセス属であり、好ましくはクロモノスポラ種である、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
チオコラリンを製造する方法であって、前記化合物の産生に好適な条件下で、請求項15〜17のいずれか一項に記載の宿主細胞を増殖させること、および所望によりチオコラリンを単離することを含んでなる、方法。
【請求項25】
前記宿主細胞がアクチノミセス属またはストレプトミセス属である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ミクロモノスポラ種ML1由来のチオコラリン生合成を担う遺伝子の使用に基づく、別のアクチノミセス属における該化合物の製造のための方法であって、
(1)チオコラリン生合成経路の特定の遺伝子に改変を有する突然変異体を得ること;
(2)チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターを含むミクロモノスポラ種ML1染色体領域を単離すること;
(3)チオコラリンの生合成を担う遺伝子クラスターのヌクレオチド配列を得て分析すること;および
(4)他のアクチノミセス属でチオコラリンを異種産生させること
を含んでなる、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図8A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図8A】
【公表番号】特表2009−502187(P2009−502187A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524531(P2008−524531)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000455
【国際公開番号】WO2007/014971
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(505404208)ファルマ、マール、ソシエダード、アノニマ (6)
【氏名又は名称原語表記】PHARMA MRS,S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000455
【国際公開番号】WO2007/014971
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(505404208)ファルマ、マール、ソシエダード、アノニマ (6)
【氏名又は名称原語表記】PHARMA MRS,S.A.
【Fターム(参考)】
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