説明

チオール化合物を含んでなる弱臭性反応試薬

【課題】 本発明は、刺激臭や不快臭が少なく、従来用いられてきた低級脂肪族或いは芳香族チオール化合物と同等若しくはより高い反応性を有し、且つ合成が容易なチオール化合物を含んでなる反応試薬、並びに該反応試薬を用いるスルフィド及び環状チオアセタールの生成方法の提供を課題とする。
【解決手段】 一般式[1]


で示される化合物を含んでなる反応試薬、環状アセタールと該一般式[1]で示される化合物を酸の存在下反応させるスルフィド生成方法、アルコキシベンジルアルコール、アルコキシベンジルハライド又はアルコキシフェノールと硫化物とを反応させる、又は反応後更にアルキル化剤と反応させる一般式[1]で示される化合物の製造方法、並びに環状アセタールに、一般式[1]で示される化合物を作用させてスルフィドを生成させ、更に環化反応に付す環状チオアセタールの生成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用上問題となるほどの不快臭を有さず、環状アセタールと反応させて対応のスルフィドを生成し得る反応試薬、並びに該反応試薬を用いるスルフィド及び環状チオアセタールの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来様々な反応に用いられているチオール化合物としては、低級脂肪族や芳香族チオール化合物等があるが、これらは刺激臭や不快臭を伴うため、用いる際には作業環境に特別の配慮をする必要があった。そのため、チオール化合物が各種化合物の合成に有用であるにも拘わらず、その利用が敬遠されがちであった。
【0003】
このことから、刺激臭や不快臭が少なく、従来用いられてきた低級脂肪族或いは芳香族チオール化合物と同等の反応性を有するチオール化合物を含んでなる反応試薬が求められ、研究されてきた。特開2002-265434には、刺激臭や不快臭が少ないチオール化合物が記載されているが、より合成が容易で反応性の高い化合物が現在望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開2002-265434公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたもので、刺激臭や不快臭が少なく、従来用いられてきた低級脂肪族或いは芳香族チオール化合物と同等若しくはより高い反応性を有し、且つ合成が容易なチオール化合物を含んでなる反応試薬、並びに該反応試薬を用いるスルフィド及び環状チオアセタールの生成方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)一般式[1]

(式中、pは8〜12の整数を表し、qは0又は1〜5の整数を表し、且つp+qは9〜17の整数を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す)で示される化合物を含んでなる反応試薬、
【0007】
(2)環状アセタールに、一般式[1]

(式中、pは8〜12の整数を表し、qは0又は1〜5の整数を表し、且つp+qは9〜17の整数を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す)で示される化合物を酸の存在下反応させて、当該環状アセタールの環開裂によって対応するスルフィドを生成させることを特徴とするスルフィド生成方法、
【0008】
(3)アルコキシベンジルアルコール、アルコキシベンジルハライド又はアルコキシフェノールと硫化物とを反応させる、又は反応後更にアルキル化剤と反応させることを特徴とする、一般式[1]

(式中、pは8〜12の整数を表し、qは0又は1〜5の整数を表し、且つp+qは9〜17の整数を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す)で示される化合物の製造方法、
【0009】
(4)

で示される化合物、
【0010】
並びに、(5)環状アセタールに、一般式[1]

(式中、p、q及びRは上記と同じ)で示される化合物を作用させて、当該環状アセタールの環開裂によって対応するスルフィドを生成させ、更に該スルフィドを環化反応に付す環状チオアセタールの生成方法、に関する。
【0011】
即ち、本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、一般式[1]

(式中、pは8〜12の整数を表し、qは0又は1〜5の整数を表し、且つp+qは9〜17の整数を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す)で示される化合物が、刺激臭或いは不快臭を殆ど有していないこと、及びこれを反応試薬として用いれば作業環境に特別の配慮をすることなく容易にスルフィド及び環状チオアセタールを生成し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【発明の効果】
【0012】
本発明の反応用試薬は、刺激臭や不快臭が極めて少なく且つ従来用いられてきたチオール化合物と同等の反応性を有するため、作業環境に特別の配慮をすることなくスルフィド及び環状チオアセタールの生成反応に有効に利用し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る下記一般式[1]

【0014】
で示される化合物に於いて、pは通常8〜12の整数を表し、中でも8〜10が好ましく、8がより好ましい。また、qは通常0又は1〜5の整数を表し、0又は1が好ましく、1がより好ましい。上記p及びqの総和(p+q)は、通常9〜17の整数であり、8〜11が好ましく、9がより好ましい。
【0015】
本発明に係る一般式[1]で示される化合物に於ける、Rのアルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜3のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、1,2−ジメチルブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が好ましい。
【0016】
本発明に係る一般式[1]で示される化合物のRとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、水素基が好ましいものとして挙げられるが、中でも水素がより好ましい。
【0017】
本発明に係る一般式[1]で示される化合物は、具体的には

【0018】


【0019】


【0020】


【0021】


【0022】


【0023】


【0024】


【0025】


【0026】


【0027】


【0028】


【0029】


【0030】


【0031】


【0032】


【0033】


【0034】


【0035】


【0036】


【0037】


【0038】


【0039】
等が挙げられるが、中でも

【0040】


【0041】


【0042】


【0043】


【0044】
等が好ましく、

【0045】
がより好ましい。
【0046】
本発明の一般式[1]で示される化合物を含んでなる反応試薬としては、上記の如き化合物を含有する試薬であり、乾燥したものであっても、例えば水、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、トルエン等の適当な溶媒に溶解したものであっても何れでもよい。該試薬は、スルフィド合成方法に好適に用いることができ、該反応に於いて高効率で反応し得るものである。また、特に環状アセタールと反応させる本発明のスルフィド生成方法や本発明の環状チオアセタールの生成方法に於いて有用な試薬として用いることができる。
【0047】
一般式[1]で示される化合物の製造方法(本発明の化合物の製造方法)としては、アルコキシベンジルアルコール、アルコキシベンジルハライド又はアルコキシフェノールと硫化物とを反応させる方法や、アルコキシベンジルアルコール、アルコキシベンジルハライド又はアルコキシフェノールと硫化物とを反応させた後、更にアルキル化反応に付す方法等が挙げられる。具体的には、一般式[1]に於いてRが水素原子の場合、アルコキシベンジルアルコール、アルコキシベンジルハライド又はアルコキシフェノールと硫化物とを反応させた後、更に例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液を反応させることによってなされる。尚、アルコキシベンジルアルコール、アルコキシベンジルハライド又はアルコキシフェノールと硫化物との反応は、要すれば還流下、通常0〜150℃、好ましくは40〜100℃、通常30分〜4時間、好ましくは30分〜1時間行えばよく、その後のアルカリ水溶液との反応は、要すれば還流下、通常20〜120℃、好ましくは40〜100℃、通常2〜10時間、好ましくは3〜5時間行えばよい。また、Rがアルキル基の場合には、更に、得られたチオールに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを添加した後、ヨウ化アルキル、臭化アルキル、アルキルスルホン酸エステル等の適当なアルキル化剤と反応させることにより目的の一般式[1]で示される化合物が得られる。尚、ここでのアルカリとの反応は、通常20〜120℃、好ましくは40〜100℃、通常2〜10時間、好ましくは3〜5時間行えばよく、また、アルキル化剤との反応は、通常通常0〜150℃、好ましくは40〜100℃、通常30分〜4時間、好ましくは30分〜1時間行えばよい。また、上記ヨウ化アルキル、臭化アルキル、アルキルスルホン酸エステルのアルキル基としては、上記本発明に係る一般式[1]で示される化合物に於ける、Rのアルキル基と同じものが挙げられる。
【0048】
上記アルコキシベンジルアルコール、アルコキシベンジルハライド及びアルコキシフェノールは、市販のものを用いても、自体公知の方法により調製したものを用いてもよく、例えばアルコキシベンジルアルコールは、ヒドロキシベンズアルデヒドと炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等の強塩基とを反応させた後、アルキルハライドを反応させ、更に、水素化ホウ素ナトリウム、リチウムアルキルハイドライド等の還元剤と反応させることにより得られる。
【0049】
上記本発明の化合物の製造方法で用いられる硫化物としては、アルコキシベンジルアルコール及びアルコキシフェノールのヒドロキシル基、或いはアルコキシベンジルハライドのハロゲンをメルカプト基にし得るものであれば特に限定はされないが、具体的には例えばチオ尿素、硫化ナトリウム、五硫化二リン酸等が挙げられ、中でもチオ尿素が好ましい。尚、硫化物と上記アルコキシベンジルアルコール、アルコキシベンジルハライド又はアルコキシフェノールとを反応させる際には、トシル酸(トルエンスルホン酸)、メタンスルホン酸等の触媒を存在させておくことが好ましい。また、反応に用いられる上記硫化物の量は、通常アルコキシベンジルアルコール、アルコキシベンジルハライド又はアルコキシフェノール1molに対して、通常1〜10mol、好ましくは1〜3molであればよい。
【0050】
上記本発明の化合物の製造方法に於けるアルカリ水溶液の量は、反応させる化合物に対して過剰量であれば特に限定されないが、反応させる溶液の通常1〜5倍量、好ましくは1〜3倍量である。
【0051】
上記本発明の化合物のRがアルキルの場合の製造方法で用いられる、アルカリの量は、反応させる化合物に対して過剰量であれば特に限定されず、反応させる溶液の通常1〜5倍量、好ましくは1〜3倍量である。また、アルキル化剤の量は、用いられるアルキル化剤の種類により異なるが、チオール1molに対して通常1〜10mol、好ましくは1〜3molである。
【0052】
本発明の製造方法の具体例として、例えば4−オクチロキシフェニルメタノールから4オクチロキシフェニルメタンチオールを調製する場合には、4−オクチロキシフェニルメタノール1mmolと硫化物1mmolとを1〜2時間環流下で反応させ、更に該反応溶液に水酸化ナトリウム水溶液20mlを加え、3〜6時間環流下で反応させることにより、4オクチロキシフェニルメタンチオールを得ることができる。尚、該反応溶液から目的物を取得する場合、自体公知の方法に準じて行えばよく、例えば該溶液に塩酸を加え、例えばジエチルエーテル等の有機溶媒で目的物を抽出した後、溶媒を留去することにより、本発明の目的物を得ることができる。
【0053】
また、得られたチオール化合物を主に上記の如きアルキル化剤と反応させることにより一般式[1]のRがアルキル基である本発明の化合物を得ることができる。即ち、例えば4−オクチロキシフェニルメタノールからメチル(4オクチロキシフェニルメチル)スルファンを調製する場合には、上記のようにして得られた4オクチロキシフェニルメタンチオールをエタノールに溶解し、該エタノール溶液10mLに対して水酸化ナトリウム溶液30〜50mLを添加した後、ヨウ化メチルを4オクチロキシフェニルメタンチオール1mmolに対して2〜5mmol滴下し2〜5時間反応させることによりメチル(4オクチロキシフェニルメチル)スルファンを得ることができる。尚、該反応溶液から目的物を取得する場合、上記と同様に溶媒抽出により、取得することができる。
【0054】
本発明のスルフィドの生成方法は、一般式[1]で示される化合物を、酸の存在下で環状アセタールと反応させることによりなされ、該反応により環状アセタールの環が開裂し、対応するスルフィドを生成することができる。
【0055】
ここでいう環状アセタールとしては、五員環、六員環のものが好ましく、中でも五員環の環状アセタールが特に好ましい。環状アセタールの具体例としては、例えば、置換基を有する下記一般式[2]で示される化合物又は置換を有さない下記一般式[2]で示される化合物

(式中、Rは水素原子又はアルキル基を表す)、或いは置換基を有する下記一般式[3]で示される化合物又は置換を有さない下記一般式[3]で示される化合物

(式中、Rは上記と同じ)等が挙げられる。
【0056】
一般式[2]及び[4]で示される化合物に於けるRのアルキル基としては、通常炭素数1〜6のものが挙げられ、好ましくは炭素数1〜3、より好ましくは1〜2、更に好ましくは炭素数1のアルキル基である。具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2-ジメチルブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が好ましく、メチル基、エチル基等がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0057】
一般式[2]及び[4]で示される化合物が置換基を有する場合の置換基としては、例えばアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、アミド基等が挙げられる。尚、一般式[2]に於ける置換基の数は、通常1〜3個、好ましくは1〜2個、より好ましくは2個であり、一般式[4]に於ける置換基の数は、通常1〜4個、好ましくは1〜3個である。
【0058】
一般式[2]及び[4]で示される化合物が置換基を有する場合、その置換基としてのアルキル基は、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、通常炭素数1〜6のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2-ジメチルブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。置換基としてのアリール基としては、通常炭素数6〜14のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。置換基としてのアラルキル基としては、通常炭素数7〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられる。
【0059】
置換基としてのヒドロキシアルキル基は、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、通常炭素数1〜6のものが挙げられ、具体的には、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシイソブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシイソペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0060】
上記置換基としてのアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、炭素数2〜40のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基等が挙げられる。
【0061】
上記の如き一般式[2]及び[4]で示される化合物の置換基の具体例の中でも、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基等が好ましく、ヒドロキシル基がより好ましい。
【0062】
尚、上記置換基は、必要に応じて本発明のスルフィドの製造方法に付す前に、保護基を付加しても構わない。該保護基は、通常この分野で用いられているものであれば全て用いることができるが、酸に強い保護基を用いることが好ましい。具体的には、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、トリフェニルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基等が挙げられ、中でもベンジル基が好ましい。また、保護基の付加方法としては、通常この分野で行われている方法であれば特に限定はされないが、例えばベンジル基を付加する場合には、置換基を有する一般式[2]又は[4]で示される化合物に、ベンジルハライドと水素化ナトリウムを反応させればよく、ベンジルハライド及び水素化ナトリウムの量は、通常ベンジル化する際に用いられる量を適宜選択すればよい。
【0063】
一般式[2]及び[4]で示される化合物の具体例としては、例えば

【0064】


【0065】


【0066】


【0067】


【0068】


【0069】


【0070】


【0071】


【0072】


【0073】


【0074】


【0075】


【0076】


【0077】


【0078】


【0079】


【0080】


【0081】


【0082】


【0083】


【0084】


【0085】


【0086】


【0087】


【0088】


【0089】


【0090】


【0091】


【0092】


等が挙げられ、中でも
【0093】

【0094】


【0095】


等が好ましい。
【0096】
本発明のスルフィドの生成方法における酸としては、プロトンを放出し、溶液を酸性にし得るものであれば特に限定はされないが、具体的には三フッ化ホウ素、4塩化スズ等のルイス酸、塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられ、中でも三フッ化ホウ素、4塩化スズ等のルイス酸、塩酸等が好ましく、4塩化スズ、塩酸等がより好ましく、塩酸が特に好ましい。
【0097】
本発明のスルフィドの生成方法における一般式[1]で示される化合物を環状アセタールと反応させる際の反応温度は、通常10〜100℃、好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜50℃で、その反応時間は通常10〜50時間、好ましくは10〜20時間である。また、該反応は必要に応じて攪拌しながら反応させてもよい。
【0098】
本発明のスルフィドの生成方法において用いられる一般式[1]で示される化合物の量は、環状アセタール1molに対して通常1〜10mol、好ましくは3〜10mol、より好ましくは5〜10molである。また、本発明のスルフィドの生成方法において用いられる酸の量は、環状アセタールに対して過剰量あればよく、環状アセタール1gに対して通常0.5〜20mL、好ましくは1〜10mLである。
【0099】
本発明のスルフィドの生成方法によって得られるスルフィドは、出発物質である環状アセタールに対応するものであり、例えば一般式[1]で示される化合物を環状アセタールに作用させる時、例えば環状アセタールが置換基を有さない一般式[2]

【0100】
(式中、Rは上記と同じ)である場合、下記一般式[5]

【0101】
(式中、Rは上記と同じ)で示される化合物が得られ、例えば環状アセタールが下記一般式[6]で示される化合物

【0102】
(式中、Rは上記と同じ。Rは、アルキル基、アリール基、アラルキル基を表す)である場合、下記一般式[7]で示される化合物

【0103】
(式中、R及びR2は上記と同じ)が得られ、例えば環状アセタールが下記一般式[8]で示される化合物

【0104】
(式中、R及びR2は上記と同じ。Rは、アルキル基、アリール基、アラルキル基を表す)である場合、下記一般式[9]で示される化合物

【0105】
(式中、R、R2及びR3は上記と同じ)が得られ、例えば環状アセタールが下記一般式[4]で示される化合物

【0106】
(式中、Rは上記と同じ)である場合、下記一般式[10]で示される化合物

【0107】
(式中、Rは上記と同じ)が得られる。
【0108】
一般式[6]、[7]、[8]及び[9]中のR及び一般式[8]及び[9]中のRに於ける、アルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、通常炭素数1〜6のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2,2-ジメチルブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。R及びRに於けるアリール基としては、通常炭素数6〜14のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。R及びRに於けるアラルキル基としては、通常炭素数7〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等が挙げられる。
【0109】
本発明のスルフィドの生成方法は、具体的には例えば以下のようにして行えばよい。即ち、例えば環状アセタール1molと一般式[1]で示される化合物5〜10molを酸の存在下で、通常30〜60℃、好ましくは40〜50℃で通常10〜50時間、好ましくは10〜20時間、攪拌しながら反応させることにより、出発物質である環状アセタールに対応するスルフィドを得ることができる。反応終了後、該スルフィドを抽出する方法としては、自体公知の溶媒抽出法等によりなされればよく、例えば先ず酸を中和するために適当なアルカリを添加し、その後有機溶媒を添加して溶媒抽出し、該溶媒を留去することによりなされればよい。尚、この際のアルカリ及び有機溶媒の量は、溶媒抽出法で通常用いられる範囲で適宜選択して用いればよい。
【0110】
本発明の環状チオアセタールの生成方法は、環状アセタールに、一般式[1]

【0111】
(式中、p、q、Rは上記と同じ)で示される化合物を酸の存在下で作用させて、当該環状アセタールの環開裂によって対応するスルフィドを生成させ、更に該スルフィドを環化反応させることによりなされる。尚、該環状チオアセタールの生成方法に於けるスルフィドの生成は、上記本発明のスルフィドの生成方法と同様になされればよい。
【0112】
上記環化反応としては、得られたスルフィドをメシル化反応、トシル化反応又はトリフルオロメタンスルホニル化反応に付した後ヨウ化物及び炭酸塩との反応に付すことによりなされる。該メシル化反応としては、スルフィドに、要すればルチジン、ピリジン等の触媒をスルフィド1gに対して、通常0.5〜10g、好ましくは1〜5gと共に、例えば塩化メシル(メチルスルホニルクロリド)等のメシル化合物を添加し、反応させることによりなされる。トシル化反応は、スルフィドに、塩化トシル(トシルクロリド)等のトシル化合物を反応させることによりなされればよく、トリフロメタンスルホニル化反応は、塩化トリフロメタンスルホニル等のトリフロメタンスルホニル化合物を反応させることによりなされればよい。ここで用いられるメシル化合物、メシル化合物、或いはトリフロメタンスルホニル化反応の量は、スルフィド1molに対して通常1〜5mol、好ましくは1〜2molである。その反応時間は、通常1〜10時間、好ましくは1〜5時間、より好ましくは1〜2時間であり、反応温度は、通常10〜50℃、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15〜25℃である。尚、上記メシル化反応、トシル化反応、又はトリフロメタンスルホニル化反応の際の溶媒としては、通常この分野で用いられるものであればいずれでもよいが、例えばトルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0113】
上記ヨウ化物としては、例えばヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等が挙げられ、中でもヨウ化ナトリウムが好ましい。用いられるヨウ化物の量は、通常メシル化、トシル化、又はトリフルオロメタンスルホニル化されたスルフィド1molに対して通常1〜20mol、好ましくは5〜10molである。また、上記炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、中でも炭酸バリウムが好ましい。用いられる炭酸塩の量は、通常メシル化、トシル化、又はトリフルオロメタンスルホニル化されたスルフィド1molに対して通常1〜30mol、好ましくは10〜20molである。メシル化、トシル化、又はトリフルオロメタンスルホニル化されたスルフィドとヨウ化物及び炭酸塩との反応時間は、通常10〜50時間、好ましくは10〜20時間であり、反応温度は、通常10〜200℃、好ましくは50〜100℃、好ましくは70〜100℃である。また、その際に用いられる溶媒としては、例えばアセトン,N,N−ジメチルホルムアミド(DMF),ピリジン,ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒が挙げられ、中でもアセトン、DMFが好ましい。
【0114】
本発明の環状チオアセタールの生成は、具体的には以下のようになされる。
【0115】
即ち、本発明のスルフィドの生成方法で得られたスルフィド1molと例えばメタンスルホニルクロリド2〜5molとを室温で1〜3時間反応させ、得られた物質を溶媒抽出し、DMF溶液20〜100mlに溶解する。該DMF溶液に、例えばヨウ化ナトリウム5〜10mol及び炭酸バリウム10〜20molを加え、70〜100℃で10〜20時間反応させることにより、出発物質である環状アセタールに対応した環状チオアセタールを生成することができる。
【0116】
本発明の環状チオアセタールの生成方法に於いては、得られたスルフィドを例えば光延反応(光延反転)等に付し、炭素に結合している基の立体配置を反転させた後、環化反応に付しても構わない。これにより立体異性体の環状チオアセタールを得ることができる。尚、光延反応は、以下のようになされればよい。即ち、本発明のスルフィドの生成方法により得られたスルフィドと、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)若しくはジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)、安息香酸、並びにトリフェニルホスフィンとを例えばテトラヒドロフラン等の溶媒中で反応させた後、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で加水分解することによりなされる。この際用いられるDIAD若しくはDEAD、安息香酸、並びにトリフェニルホスフィンの量は、通常このような反応を行う際に用いられる量であれば特に限定はされないが、スルフィド1molに対して、それぞれが通常1〜10mol、好ましくは1〜5molとなるようにすればよい。また、その際の反応温度は、通常10〜40℃、好ましくは15〜25℃であり、反応時間は、通常5〜20時間、好ましくは5〜15時間である。上記加水分解時のアルカリ水溶液の量は、アルカリがスルフィド1molに対して1〜5mol、好ましくは1〜3molとなるように選択されればよい。また、この際反応温度は、通常10〜40℃、好ましくは15〜25℃であり、反応時間は、通常5〜30時間、好ましくは10〜20時間である。
【0117】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0118】
実施例1
(1)4-オクチロキシフェニルメタノール(6)の調製
4-ヒドロキシベンズアルデヒド(3)15g(和光純薬工業(株)製)と炭酸カリウム 33.9g(和光純薬工業(株)製)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、和光純薬工業(株)製))100ml中90℃で1時間加熱した後、室温に冷却した。更に、1-ブロモオクタン25.4ml(和光純薬工業(株)製)を加え3時間撹拌した後、濾過した。得られた濾液を減圧下で濃縮し、残渣をメタノール100mlで希釈した後、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH、和光純薬工業(株)製))13.9gを加えて1.5時間撹拌反応させた。反応終了後、メタノールを留去してエチルエーテルと水を加え、有機層を1M塩酸及び食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥後、溶媒を留去した。その後、n-ヘキサンで再結晶し、更に再結晶母液からシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=5:1)により4-オクチロキシフェニルメタノール(6)27.2g(収率94%)を白色板状結晶として得た。
【0119】

【0120】
以下に、該結晶のNMR及びMSの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz.CDCl) δ: 7.30-7.27 (m, aromatic 2H), 6.89 (dt, J= 8.7, 2.5 Hz, aromatic 2H), 4.61 (s, 2H), 3.95 (t, J= 6.5 Hz, 2H), 1.77 (quintet, J= 5.6 Hz, 2H), 1.54 (s, 1H), 1.45 (quintet, J= 7.1 Hz, 2H), 1.39-1.28 (m, 8H), 0.89 (bt, J=6.9 Hz, 3H). 13C-NMR (100MHz, CDC13) 6: 158.8, 132, 128.6 (2C), 114.6 (2C), 68, 65, 31, 29.3, 29.25, 29.23, 26, 22.6, 14.1.
MS m/z- 236(M+ ,23.8), 124 (100), 106 (57). HRMS; calcd for 236.1776 (Cl5H2402).
found:236.1780. IR v: 3606, 3446, 3022-2871, 2360, 1612-1583, 1512-1469 cm-1. Anal. calcd for C15H2402: C, 76.04; H, 10.26. found; C, 76.23; H, 10.24.
【0121】
(2)4-オクチロキシフェニルメタンチオール(5)の調製
(1)で得られた4-オクチロキシフェニルメタノール(6)250mg(1.06mmol)とp-トルエンスルホン酸・H2O(p-TsOH・H2O、和光純薬工業(株)製)) 190mgをアセトニトリル25mlに溶解したチオ尿素80mg(1.06mmol、和光純薬工業(株)製))に加え、1時間還流した後、10%水酸化ナトリウム水溶液を加え更に4時間還流する。反応溶液に2.5M塩酸をpH1になるまで加え、ジエチルエーテルで抽出し有機層を食塩水で洗浄、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:ベンゼン=5:1)により精製し4-オクチロキシフェニルメタンチオール(5)208mg(収率77%)を得た。
【0122】

【0123】
以下に、該物質のNMR及びMSの測定結果を示す。
H-NMR ( 400 MHz, CDCl) δ: 7.22 (dt, J= 8.79 and 2.51 Hz, aromatic 2H), 6.88 (dt, J= 8.8 and 2.6 Hz, aromatic 2H ), 3.93 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.71 (d, J= 7.3 Hz, 2H), 1.76 (quintet, J= 7.3 Hz, 1H), 1.73 (t, J= 7.3 Hz, 1H), 1.51-1.27 (m, 10H), 0.89( bt, J=7.0 Hz, 3H).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) 6: 158.2, 133.0, 129.1 (2C), 114..6 (2C), 29.34, 29.30, 29.2, 28.4, 26.0, 22.6, 14.1.
IR (CHCl3) v: 3021-2856, 2580, 1610-1583, 1512-1434 cm-1.
MS (20 eV) m/z: 252(M+, 5), 219 (69), 151(8), 107 (100). HRMS; calcd for C15H240S 252.1548 (M+), found: 252. 1551.
【0124】
実施例2
2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-D-リボース 1,1-ジ-(4-オクチロキシフェニルメタン)チオアセタール(14a)の調製
4-オクチロキシフェニルメタノール(5)5.8g(22.8mmol)と濃塩酸2.1ml(和光純薬工業(株)製)を1-O-メチル-3,5-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α,β-リボフラノシド(13)1.5g(4.6mmol)に加え、40℃で18.5時間撹拌反応させた。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液を加えて中和し、該溶液をジエチルエーテルで抽出した。更に、抽出した有機層を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=12/1〜8/1)により精製し、2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-D-リボース 1,1-ジ-(4-オクチロキシフェニルメタン)チオアセタール(14a)3.1g(収率84%)を無色油状物質として得た。

【0125】
以下に、該物質のNMR及びMSの測定結果を示す。
H-NMR (400MHz,CDCl3) δ: 7.33-7.26 (aromatic, 8H), 7.16 (dt, J= 8.8 and 2.6 Hz 2H), 7.62-7.04 (m, 2H), 7.02-6.98 (m, 2H), 6.73-6.77 (m, 2H), 4.51 (s, 2H), 4.32 (d, A part of AB JAB = 11 4 Hz 1H) 4 06 (d, B part of AB JAB = 11.4 Hz, 1H), 3.88(t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.85-3.61 (m, 9H), 3.48 (dd, A part of AB JAB = 9.6 Hz, J= 5.9 Hz, 1H), 3.44 (dd, B part of AB JAB = 9.6 Hz, J= 4.2 Hz, 1H), 2.30 (d, J= 4.2 Hz, 1H), 2.13 (ddd. A part of AB JAB = 14.7, J= 9.9 and 3.9 Hz, 1H), 1.89 (ddd, B part of AB JAB = 14.7, J= 10.9, 2.6 Hz, 1H), 1.81-1.69 (m, 4H), 1.51-1.28 (m, 20H), 0.89 (bt. J= 6.8, 6H).
13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 158. 1, 158.0, 138.3, 137.8, 130,2 (2C), 130.1 (2C), 130.0, 129.91, 128.5 (2C), 128.2 (2C), 127.83, 127.81, 127.6 (3C), 127.4, 114.4 (2C), 114.3 (2C), 77.2, 73.4, 72.7, 71.8, 70.7, 67.9, 67.8, 46:0, 37.2, 34.3, 33.4, 81.8 (2C), 29.4 (2C), 29.34, 29.31, 29.2 (2C), 26.09, 26.07, 22.6 (2C), 14.0(2C).
FABMS; 823(M+ + Na,29), HRMS(FAB): calcd for C49H6805S2Na 823.4409 (M++Na), found: 252.1551.
【0126】
実施例3
1-(4-オクチロキシフェニル)メチルチオ-2,4-ジデオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-4-チオ-L-キシロース(15a)の調製
メタンスルホニルクロリド48μl(0.63mmol、和光純薬工業(株)製)を2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-D-リボース 1,1-ジ-(4-オクチロキシフェニルメタン)チオアセタール(14a)204mg(0.25mmol)のピリジン溶液2mlに加え、室温で4.5時間撹拌反応させた。反応終了後、水を加え、該溶液からジエチルエーテルで目的物を抽出し、得られたジエチルエーテルを1M塩酸、食塩水で洗浄し、更に硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥後、溶媒を留去した。
【0127】
次いで、残渣をDMF 10mlに溶解し、ヨウ化ナトリウム372mg(2.5mmol、和光純薬工業(株)製)と炭酸バリウム740mg(3.75mmol、和光純薬工業(株)製)を加え、90℃で17.5時間撹拌反応させた。反応終了後、該溶液を濾過して濾液にジエチルエーテルと水を加え、有機層をチオ硫酸ナトリウム、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1)を用いて精製し、1-(4-オクチロキシフェニル)メチルチオ-2,4-ジデオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-4-チオ-L-キシロース(15a) 102.4g(収率73%)をα-異性体及びβ-異性体の混合物として得た。
【0128】

【0129】
以下に、NMR及びMSの測定結果を示す。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.37-7.18 (m, 10H), 6.84-6.78 (m, 2H), 4.59-4.45 (m, 5H), 4.31 (dd, J= 8.1 and 4.0 Hz, 0.7H, α-isomer), 4.26 (dd, J= 7.3 and 6.2 Hz, 0.3H, α-isomer) 4.19-4.15 (m, 0.7H, b), 3.98-3.82 (m, 3.3 H), 3.79 (s, 0.7H, b), 3.77(s, 0.3H, α-isomer), 3.69-3.54 (m, 2H), 2.45 (ddd, A part of AB JAB = 13.0 Hz, J= 6.0 and 4.3, 0.65H, β-isomer), 2.32 (ddd, Apart of AB JAB = 13.5 Hz, J= 7.3 and 4.8 Hz, 0.35H), 2.23 (ddd, B part ofAB JAB = 13.5 Hz, J= 6.8 and 6.2 Hz, 0.35H, α-isomer), 1.92 (ddd, B part of AB JAB = 13.0 Hz, J= 8.2 and 3.6 Hz, 0.65H, b), 1.77 (quintet, J= 7.1 Hz, 2H), 1.44 (quintet, J= 7.2 Hz, 2H), 1.36-1.22 (m, 10H), 0.89 (t, J= 7.0 Hz, 3H). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3);
α-isomer, δ: 158.2, 138.2, 137.9, 130.0 (2C), 129.8, 128.3 (2C), 128.2 (2C), 127.8, 127.7, 127.6 (2C), 127.6 (2C), 114.5 (2C), 80.8 (2C), 73.4, 71.5, 70.4, 50.8, 47.4, 40.3, 36.6, 31.8, 29.3, 29.26, 29.22, 26.0, 22.6, 14.1.
β-isomer; δ: 158.3, 138.1, 138.0, 129.9 (2C), 129.4, 128.4 (2C), 128.3, 127.6 (4O, 127.6 (2C), 114.6 (2C), 80.7 (2C), 73.3, 71.6, 69.5, 68.0, 51.6, 48.7, 41.8, 36.5, 31.8, 31.8, 29.3, 29.26, 29.22, 26.0, 22.6, 14.1. IR ( CHCl3 ) v: 3031, 2927, 2858, 1610, 1510 cm-1
FABMS m/z: 587(M++Na, 2); HRMS calcd for C34H4403S2Na (M+ +Na): 587.2630, found 587.2623.
【0130】
実施例4
(1)2-デオキシ-3-O-ベンジル-4-ベンゾイル-L-リゾース 1,1-ジ-(4-オクチロキシフェニルメタン)チオアセタール(16a)の調製(光延反応)
トリフェニルホスフィン151.0mg(0.58mmol、和光純薬工業(株)製)、安息香酸71.2mg(0.58mmol、和光純薬工業(株)製)とジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)0.11ml(0.58mmol、和光純薬工業(株)製)を含むテトラヒドロフラン(THF)溶液1.5mlを、実施例2で得た2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-D-リボース 1,1-ジ-(4-オクチロキシフェニルメタン)チオアセタール(14a)259mg(0.32mmol)のTHF溶液(3.5ml)に滴下し、10時間撹拌反応させた。反応終了後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1)を用いて精製し、2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-4-ベンゾイル-L-リゾース 1,1-ジ-(4-オクチロキシフェニルメタン)チオアセタール(16a)240mg(収率83%)を無色油状物質として得た。
【0131】
以下に、該物質のNMR及びMSの測定結果を示す。

【0132】
1H-NMR(400 MHz, CDCl3) δ: 8.06-8.03 (m, 2H), 7.57-7.54 (m, 1H), 7.45-7.42 (m, 2H), 7.33-7.20 (m, 8H), 7.15-7.12 (m, 2H), 7.06-7.01 (m, 2H), 6.93-6.90 (m, 2H), 6.70-6.64 (m, 2H), 5.38 (ddd, J= 6.2, 4.9 and 3.7 Hz, 1H ), 4.53 (d, A part of AB JAB = 12.1 Hz, 1H ), 4.47 ( d, B part of AB JAB = 12.1 Hz, 1H), 4.44 (d, A part of AB JAB = 11.4 Hz, 1H), 4.07 (d, B part of AB JAB = 11.4 Hz, 1H), 4.06-4.02 (In, 1H), 3.85 (t, J= 6.7 Hz, 2H), 3.84-3.64 (m, 9H), 3.71 (d, A part of AB JAB = 13.2 Hz, 1H), 3.53 (d, B part of AB JAB = 13.2, 1H ), 2.11 (ddd, A part of AB JAB = 14.3 Hz, J= 10.1 and 3.7 Hz, 1H ), 1.94 ( ddd, A part of AB JAB = 14.3 Hz, J= 11.0 and 2.6 Hz, 1H), 1.77 (quintet, J= 6.8 Hz, 2H), 1.73 (quintet, J= 6.6 Hz, 2H), 1.57-0.87(m, 20H), 0.89 (t, J= 6.0 Hz, 3H), 0.88 (t, J= 6.6 Hz, 8H).
13C-NMR (l00MHz, CDC13) 6: 165.8, 158.1, 138.2, 137.9, 133.0, 130.03 (2C), 130.01, 129.8, 129.7 (2C), 129.5, 128.3 (4C), 128.1 (2C), 127.6 (2C), 127.6 (2C), 127.5 (2C), 127.3 (2C), 114.4 ( 2C), 114.8 (2C), 75.4, 73.8, 73.3, 73.0, 68.1, 67.9, 67.8, 45.8, 37.3, 34.5, 33.4, 81.8 (2C), 29.4 (2C), 19.32 (2C), 29.31(2C), 29.2, 26.1, 26.06(2C), 22.6(2C). IR (CHCl3) v: 3024, 3010, 2927, 2856, 1716, 1608, 1500 cm-1.
FABMS m/z: 927(M+ +Na, 1). HRMS(FAB): calcd for C56H7206S2Na 927.4668, (M+ +Na), found; 927.4677.
【0133】
(2)2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-L-リゾース 1,1-ジ-(4-オクチロキシフェニルメタン)チオアセタール(16b)の調製
ナトリウムメトキシド(和光純薬工業(株)製)28%メタノール溶液0.26ml(1.28mmol)を0℃で、上記(1)で得た2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-4-ベンゾイル-L-リゾース 1,1-ジ-(4-オクチロキシフェニルメタン)チオアセタール(16a)(583mg、0.64mmol)を含むメタノール2mlとクロロホルム(CHCl3)2mlの混合溶液に加え、室温で15時間撹拌反応させた。反応終了後、5%リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)水溶液を加えて中和し、該溶液からジエチルエーテルで目的物を抽出し、該ジエチルエーテルを飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液、食塩水で洗浄し、更に硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=8/1〜6/1)を用いて精製し、2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-L-リゾース 1,1-ジ-(4-オクチロキシフェニルメタン)チオアセタール(16b)429mg(収率94%,(1)からの収率は78%)を無色油状物質として得た。
【0134】

【0135】
以下に、該物質のNMR及びMSの測定結果を示す。
[α]D27.6 = -62.15 (c 1.39, CHC13).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.37-7.23 (m, 8H), 7.14-7. 12
(m, 2H), 7.09-7.05 (m, 2H), 7.03-7.00 (m, 2H), 6.73-6.68 (m, 4H), 4.48 (s, 2H), 4.25 (d, A part of AB JAB =11.4 Hz, 1H), 4.10 (d, B part of AB JAB = 11.4 Hz, 1H), 3.87 (t, J= 5.7 Hz, 2H), 3.83-3.63 (m, 9H), 3.42 (d, J=5.7 Hz, 2H), 2.29 (d, J= 5.7 Hz, 1H), 2.14 (ddd, A part of AB JAB = 14.4 Hz, J= 9.0 and 4.8 Hz, 1H), 1.94 (ddd, B part of AB JAB = 14.4 Hz, J= 10.1 and 3.7 Hz, 1H), 1.76 (quintet, J= 6.6 Hz, 2H), 1.65 (quintet, J= 6.6 Hz, 2H), 1.46-1.29 (m, 20H), 0.89 (t, J= 6.3 Hz, 3H), 0.88 (t, J= 6.8 Hz, 3H).
13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 158.12, 158.08, 138.3, 137.9, 130.2, 130.1, 129.9, 129.8, 128.4 (2C), 128.2 (2C), 127.8 (2C), 127.7, 127.6 (2C), 127.5 (2C), 114.4 (2C), 114.3 (2C), 76.6, 73.3, 73.2, 71.1, 68.7, 45.7, 37.7, 34.3, 33.7, 31.8 (2C), 29.4 (2C), 29.32, 29.81, 29.2 (2C), 26.1, 26.0, 22.7 (2C), 14.1 (2C).
IR (CHC13) v: 3566, 3020, 2850, 1610, 1510 cm-1.
FABMS m/z- 823(M++ Na, 27). HRMS (FAB): calcd for C49H680SNa (M++Na): 823.4406, found; 823.4412
【0136】
(3)1-O-(4-オクチロキシフェニル)メチルチオ-2,4-ジデオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-4-チオ-D-リボース(17)の調製
メタンスルホニルクロリド0.35ml(4.55mmol、和光純薬工業(株)製)を2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-L-リゾース 1,1-ジ-(4-オクチロキシフェニルメタン)チオアセタール(16b)1.46g(1.82mmol)のピリジン溶液に加え、室温で1.5時間撹拌反応させた。反応終了後、水を加え、該溶液からジエチルエーテルで目的物を抽出し、得られたジエチルエーテルを1M塩酸、食塩水で洗浄し、更に硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥後、溶媒を留去した。
【0137】
次いで、残渣をDMF 85mlに溶解し、ヨウ化ナトリウム2.7g(10.82mmol、和光純薬工業(株)製)と炭酸バリウム5.4g(27.3mmol、和光純薬工業(株)製)を加え、90℃で17時間撹拌反応させた。反応終了後、該溶液を濾過して濾液にジエチルエーテルと水を加え、有機層をチオ硫酸ナトリウム、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥後、溶媒を留去した。残渣からシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=15:1)を用いて精製し、1-O-(4-オクチロキシフェニル)メチルチオ-2,4-ジデオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-4-チオ-D-リボース(17)1.01g(収率98%)を得た。更に、異性体をHPLCにより分離し、α-異性体:127.0mg、β-異性体:701.8mgをそれぞれ無色油状物質として得た。
【0138】

【0139】
以下に、α、β異性体のNMR及びMSの測定結果を示す。
・α-異性体:
[α]D21.9 = 228.53 (c 0.62, CHCl3).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.36-7.25 (m,10H), 7.23-7.20 (m, 2H), 6.84-6.80 (m, 2H), 4.55 (d, A part of AB JAB = 12.3 Hz, 1H), 4.50 (s, 2H), 4.48 (d, B part of AB JAB = 12.3 Hz, 1H), 4.30 (dd, J= 5.9 and 10 Hz, 1H), 4.40 (q, J= 5.3 Hz, 2H ), 3.92 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.82 (q, J= 5.5 Hz, 1H), 3.79 (s, 1H), 3.52 (dd; A part of AB JAB = 9.9 Hz. J= 8.4 Hz, 1H), 3.47 (dd, B part of AB JAB = 9.9 Hz, J= 6.2 Hz, 1H), 2.43 (ddd, A part of AB JAB= 13.5 Hz, J= 6.9 and 5.1 Hz, 1H), 2.14 (ddd, B part of AB JAB = 13.5 Hz, J= 5.8 and 5.7 Hz, 1H), 1,76 (quintet, J= 7.0 Hz, 2H), 1.48-1.26 (m, 10H), 0.89 (t, J= 6.9 Hz, 3H).
13C-NMR (100 MHz, CDCl3) 5: 158.2, 138.0, 137.9, 130.0 (2C), 129.3, 128.4 (2C), 128.3 (2C), 127.7 (2C), 127.64 (2C), 127.6 (2C), 114 (2C), 82.6, 73.1, 71.6, 71.5, 68.0, 53.0, 48.8, 40.9, 36.~, 31.8, 29.3, 29.26, 29.21, 26.0, 22.6, 14.1.
IR (CHCl3) v: 2929, 2856, 1608, 1510 cm-1.
FABMS m/z- 587(M++Na, 31); HRMS calcd for C34H4403S2Na (M++Na): 587.2630, found 587.2637.
【0140】
・β-異性体:
[α]D22.3 = 102.395 (c 0.78, CHC13).
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)
6: 7.36-7.25 (m, 10H), 7.22-7.19 (m, 2H), 6.84-6.80 (m, 2H), 4.55-4.46 (m, 5H), 4.24 (dd, J = 6.4 Hz, 3.7 Hz, 1H), 3.92 (t, J= 6.6 Hz, 2H), 3.77 (dd. J= 15.0 Hz, 13.4 Hz, 2H), 3.67 (ddd, J= 8.6, 6.2 and 2.6 Hz, 1H), 3.54- 3.46 (m, 2H), 2.34 (ddd, A part of AB JAB = 13.5 Hz, J= 5.31 and 3.13 Hz, 1H), 2.00 (ddd, B part of AB JAB = 13.5 Hz~ J= 8.9 and 4.4 H2, 1H), 1.77(quintet, J= 6.8 Hz, 2H), 1.44 (quintet, J= 8.0 Hz, 2H), 1.36- 1.18 (m, 8H), 0.89(t, J= 6.8 Hz, 3H).
13C-NMR (100 MHz, CDCl3) S: 158.3, 138.0, 137.9, 129.9(2C), 129.4, 128.4 (4C), 83.0, 73.0, 71.0, 68.0, 53.1, 49.7, 41.2, 36.4, 31.8, 39.3, 29.3, 29.3, 26.0, 22.6, 14.1.
IR (CHC13) v: 2929, 2856, I608, 1510 cm-1. FABMS m/z: 587(M++Na,73);
HRMS calcd for C34H4403S2Na (M++Na): 587.2630, found 587.2637,
【0141】
比較例1
(1)2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-D-リボース 1,1-ジ-(フェニルメタン)チオアセタール(14b)の調製
ベンジルチオール2.47g(22.8mmol)と濃塩酸2.1mlを1-O-メチル-3,5-ジ-O-ベンジル-2-デオキシ-α,β-リボフラノシド(13) 1.5g(4.6mmol)に加え、40℃で18.5時間撹拌反応した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液を加えた後、ジエチルエーテルを加えて溶媒抽出し、更に有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=12/1から8/1)により精製し、2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-D-リボース 1,1-ジ-(フェニルメタン)チオアセタール(14b)を無色油状物質として2.1g(収率85%)得た。

【0142】
(2)1-O-フェニルメチルチオ-2,4-ジデオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-4-チオ-L-キシロース(15b)の調製
メタンスルホニルクロリド 0.35ml(4.55mmol)を上記(1)で得た2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-D-リボース 1,1-ジ-(フェニルメタン)チオアセタール(14b)1.00g(1.82mmol)のピリジン溶液に加え、室温で1.5時間反応させた。反応終了後、水を加え、ジエチルエーテルを添加して溶媒中し、得られた有機層を1M 塩酸、食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。
【0143】
次に残渣をアセトン85mlに溶解し、ヨウ化ナトリウム2.7g(10.82mmol)と炭酸バリウム5.4g(27.3mmol)を加え、56℃で42時間撹拌反応した。反応終了後、濾過して濾液にジエチルエーテルと水を加え、有機層をチオ硫酸ナトリウム、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製し、1-O-フェニルメチルチオ-2,4-ジデオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-4-チオ-L-リボース(15b)を無色油状物質として0.32g(収率40%)得た。
【0144】

【0145】
比較例2
(1)2-デオキシ-3-O-ベンジル-L-リゾース 1,1-ジ-(フェニルメタン)チオアセタール(16c)の調製(光延反応)
トリフェニルホスフィン302.0mg(1.16mmol)、安息香酸142.4mg(1.16mmol)とジエチル アゾジカルボキシレート0.22ml(1.16mmol)のTHF溶液3mlを比較例1(1)2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-D-リボース 1,1-ジ-(フェニルメタン)チオアセタールで得た2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-D-リボース 1,1-ジ-(フェニルメタン)チオアセタール(14b)(348mg、0.64mmol)のTHF(7ml)溶液に滴下し、10時間撹拌反応させた。反応終了後、溶媒を留去し、残渣を得た。この残渣をメタノール2mlと塩化メチレン2mlに溶解しに0℃でナトリウムメトキシド28%メタノール溶液0.26ml(1.28mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。反応終了後、5%リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)水溶液を加え、ジエチルエーテルを添加し、溶媒抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)水溶液、食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル=6/1から3/1)により精製し、2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-L-リゾース 1,1-ジ-(フェニルメタン)チオアセタール(16c)を無色油状物質として136mg(収率39%)得た。

【0146】
(2)1-O-フェニルメチルチオ-2,4-ジデオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-4-チオ-D-リボース(17b)の調製
メタンスルホニルクロリド0.35ml(4.55mmol)を、(1)で得た2-デオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-L-リゾース 1,1-ジ-(フェニルメタン)チオアセタール(16c)1.00g(1.82mmol)のピリジン溶液に加え、室温で1.5時間撹拌反応させた。反応終了後、水、ジエチルエーテルを加え、溶媒抽出し、得られた有機層を1M 塩酸、食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。
【0147】
次に残渣をアセトン(85ml)に溶解し、ヨウ化ナトリウム(2.7g、10.82mmol)と炭酸バリウム(5.4g、27.3mmol)を加え、56℃で42時間撹拌反応させた。反応終了後、濾過して濾液にジエチルエーテルと水を加え、有機層をチオ硫酸ナトリウム、食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製し1-O-フェニルメチルチオ-2,4-ジデオキシ-3,5-ジ-O-ベンジル-4-チオ-D-リボース(17b)を無色油状物質として0.29g(収率37%)得た。

【0148】
尚、実施例と比較例それぞれのL-リボース型チオ糖の反応収率を表1に、D-リボース型チオ糖の反応収率を表2にまとめた。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

【0151】
表1及び表2の結果から、本発明の化合物を用いると、従来のチオール化合物と比較して反応収率が劇的に向上することがわかる。
実験例1.各種含硫黄化合物の臭気官能試験
下記表3に示す各種チオール化合物について、臭気の官能試験をA、B及びCの3名により行った。尚、表中における臭気の強さは、以下の程度を夫々示す。
5:極めて強い臭気、4:強い臭気、3:臭を感じる、2:弱い臭気、1:微かに弱い臭気、
0:臭を感じない
【0152】
【表3】

【0153】
表3の結果から明らかな如く、本発明の化合物の臭気は明らかに弱いことが判る。これらチオール化合物を反応試薬として用いることにより、作業環境の悪化等の心配をすることなく、種々の反応を行うことができることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]

(式中、pは8〜12の整数を表し、qは0又は1〜5の整数を表し、且つp+qは9〜17の整数を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す)で示される化合物を含んでなる反応試薬。
【請求項2】
反応試薬が、環状アセタールに作用させて当該環状アセタールの環開裂によって対応するスルフィドを生成させる反応に用いられるものである請求項1に記載の反応試薬。
【請求項3】
環状アセタールが五員環又は六員環である請求項1に記載の反応試薬。
【請求項4】
環状アセタールが五員環である請求項1に記載の反応試薬。
【請求項5】
p+qが9である請求項1〜4の何れかに記載の反応試薬。
【請求項6】
pが8、qが1である請求項1〜4の何れかに記載の反応試薬。
【請求項7】
環状アセタールに、一般式[1]

(式中、pは8〜12の整数を表し、qは0又は1〜5の整数を表し、且つp+qは9〜17の整数を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す)で示される化合物を、酸の存在下反応させて、当該環状アセタールの環開裂によって対応するスルフィドを生成させることを特徴とする、スルフィド生成方法。
【請求項8】
環状アセタールが五員環又は六員環である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
環状アセタールが五員環である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
環状アセタールが、置換基を有する又は置換基を有さない、下記一般式[2]

(式中、Rは水素原子、アルキル基)で示される化合物である請求項7記載の方法。
【請求項11】
p+qが9である請求項7〜10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
pが8、qが1である請求項7〜10の何れかに記載の方法。
【請求項13】
アルコキシベンジルアルコール、アルコキシベンジルハライド又はアルコキシフェノールと硫化物とを反応させる、又は反応後更にアルキル化剤と反応させることを特徴とする、一般式[1]

(式中、pは8〜12の整数を表し、qは0又は1〜5の整数を表し、且つp+qは9〜17の整数を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す)で示される化合物の製造方法。
【請求項14】

で示される化合物。
【請求項15】
環状アセタールに、一般式[1]

(式中、pは8〜12の整数を表し、qは0又は1〜5の整数を表し、且つp+qは9〜17の整数を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す)で示される化合物を酸の存在下反応させて、当該環状アセタールの環開裂によって対応するスルフィドを生成させ、更に該スルフィドを環化反応に付すことを特徴とする環状チオアセタールの生成方法。
【請求項16】
環化反応が、メシル化反応、トシル化反応又はトリフルオロメタンスルホニル化反応に付した後、ヨウ化物及び炭酸塩との反応に付すことによりなされる、請求項15記載の環状チオアセタールの生成方法。

【公開番号】特開2006−298823(P2006−298823A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122762(P2005−122762)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年10月23日 日本薬学会近畿支部発行の「第54回 日本薬学会近畿支部総会・大会 講演要旨集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年12月1日 有機合成化学協会関西支部、日本薬学会近畿支部主催の「第24回 有機合成若手セミナー 明日の有機合成を担う人のために」において文書をもって発表
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【出願人】(500514742)
【Fターム(参考)】