説明

チタン含有粉末、排ガス処理触媒及びチタン含有粉末の製造方法

【課題】成形性が良好で、耐摩耗性が高く、焼成後の比表面積の低下が少ないハニカム状排ガス処理触媒用のチタン含有粉末等を提供する。
【解決手段】ハニカム状排ガス処理触媒の原料用のチタン含有粉末であって、二酸化チタン及びチタン複合酸化物の少なくとも一方を含み、(a)リンをPとして0.03〜0.5質量%含むこと、(b)アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は、前記チタン含有粉末が、(1)二酸化チタンのみを含有する場合は12〜40nmの範囲にあり、(2)チタン複合酸化物を含む場合には10〜38nmの範囲にあること、(c)硫酸根を0.4〜4.0質量%の範囲で含有すること、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム成形性の良好な排ガス処理触媒用のチタン含有粉末及びその製造方法、並びにそれを用いた機械強度及び耐摩耗性の高い排ガス処理触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所、各種工場やゴミ焼却所などから排出される燃焼排ガス中には光化学スモッグなどの原因となる窒素酸化物などが含有されている。このため、排ガス中からこれら窒素酸化物を除去する排煙脱硝技術が種々提案されている。広く採用されている排煙脱硝技術の1つに、排ガスにアンモニアを注入してから触媒と接触させ、窒素酸化物を窒素ガスと水とに還元する選択的接触還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)法がある。このSCR法では、酸化チタン担体に酸化バナジウム、酸化タングステンなどの活性成分を担持した触媒が用いられる。通常、SCR法の脱硝触媒は煙道内に配置され、排ガスと接触することにより脱硝反応を進行させるが、煙道内の圧力損失の増大を抑えると共に、排ガスとの接触面積を大きくするため、脱硝触媒は例えばハニカム形状に成形されて使用されている。
ハニカム形状の脱硝触媒は、粉体状の担体成分をハニカム形状に押出成形した後、活性成分を含浸・担持する方法や、担体成分と活性成分を成形助材等と共に混練してハニカム形状に押出成形する方法などにより成形される。このため、担体成分となる酸化チタン粉末は、押出成形性の高いものが好ましい。ここで、比較的高温で焼成した酸化チタン粉末は、押出成形性が良好である一方で、押出形成して得られたハニカム構造体を焼成する際に酸化チタンの結晶化が進むため、比表面積が低下し、脱硝性能の低下を招く場合があり、比較的低温で焼成した酸化チタンは、比表面積の低下は少ないが、押出成型性が悪くハニカム形状に成形することが難しいという問題がある。
また、燃焼排ガス中にはダストが含まれている場合が多く、排ガスがハニカム構造体の内側を通流する際にダストが接触すると、脱硝触媒が摩耗してしまうため、ハニカム成形される酸化チタン粉末には高い耐摩耗性も求められる。
【0003】
ここで、特許文献1には、酸化チタンを含有するハニカム形状の脱硝触媒において、硫化アンモニウムなどの被毒物質による脱硝触媒の活性の低下を抑制するため、リンをPに換算して5〜25質量%含んだものが記載されている。しかし発明者らは、このようにリンを高濃度で含む脱硝触媒は、初期活性が低く、触媒被毒による活性の低下を抑制できるとしても、維持される活性の高さが十分ではない。
また、特許文献2には、チタニアゾルなどの含水酸化チタンを焼成して得られた焼成物に、酸化物として0.3〜5wt%のリンを担持した窒素酸化物還元用触媒が好適例として記載されている。ここで、特許文献2には、リンを含む窒素酸化物還元用触媒は500℃以上の高温領域で使用すると高い活性を発揮することができる一方で、この窒素酸化物還元用触媒を500℃よりも低い反応領域で使用すると脱硝活性が低くなる傾向があることが明記されている。
ところが、特許文献2の表2には、Pとして2.6wt%のリンを含む窒素酸化物還元用触媒が例示されているのみであり(実施例2B)、Pの担持量の好適範囲の下限値として記載されている0.3wt%からは大きく離れた含有量となっている。そうすると、特許文献2には、500℃以上の高温領域で使用したとき高い活性を発揮するであろうリンの担持量の下限値として0.3wt%程度の含有量が示唆されてはいるものの、当該含有量付近において実体的な記載がされているとはいえない。ましてその他の温度領域で使用される窒素酸化物還元用触媒についてのリンの担持量の記載はない。従って、特許文献2には、例えば500℃以下といった比較的低温の温度範囲で使用され、且つ、Pを0.3wt%程度と低濃度で担持した窒素酸化物還元用触媒が実質的に開示されているとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−087815号公報:請求項10、段落0013の6〜8行目、表1の実施例7
【特許文献2】特開平4―346834号公報:請求項1、2頁2欄10〜16行目、3頁3欄37〜39行目
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、成形性が良好で、耐摩耗性が高く、焼成後の比表面積の低下が少ないチタン含有粉末、このチタン含有粉末を含有するハニカム状排ガス処理触媒、及び前記チタン含有粉末の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、二酸化チタン及びチタン複合酸化物の少なくとも一方を含むハニカム状排ガス処理触媒の原料用のチタン含有粉末において、下記(a)〜(c)を備えることを特徴とするチタン含有粉末である。
(a)リンをPとして0.03〜0.5質量%含むこと。
(b)アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は、前記チタン含有粉末が、(1)二酸化チタンのみを含有する場合は12〜40nmの範囲にあり、(2)チタン複合酸化物を含む場合には10〜38nmの範囲にあること。
(c)硫酸根を0.4〜4.0質量%の範囲で含有すること。
前記第1の発明は、以下の特徴を備えていてもよい。
(i)前記チタン複合酸化物がチタンと、ケイ素、タングステン、モリブデン、ジルコニウムから選ばれた少なくとも一種の元素との複合酸化物であること。
(ii)前記チタン含有粉末は99.9質量%以上が45μm以下の粒子径である場合が好適であること。
【0007】
第2の発明は、前記第1の発明のチタン含有粉末と、活性成分と、を含有し、当該チタン含有粉末の含有割合が60質量%以上であることを特徴とするハニカム状排ガス処理触媒である。
この第2の発明を別の観点から見ると、活性成分と、二酸化チタンとチタン複合酸化物との少なくとも一方と、0.018〜0.5質量%のPと、を含むことを特徴とするハニカム状排ガス処理触媒であるといえる。
前記第2の発明は、以下の特徴を備えていてもよい。
(i)前記活性成分は、酸化バナジウムであること。
(ii)前記ハニカム状排ガス処理触媒が窒素酸化物除去触媒であること。
【0008】
第3の発明は、硫酸チタン溶液を熱加水分解して得られたメタチタン酸とリン化合物とを混合して、チタン含有スラリー溶液を得る第1工程と、
前記スラリー溶液のpHを2から9.5に調整する第2工程と、
pH調整された前記スラリー溶液を洗浄した後、脱水する第3工程と、
前記スラリー溶液を脱水して得られた脱水ケーキをキルンにて焼成して、チタン含有粉末を得る第4工程と、を含み、
かつ、
前記チタン含有粉末がリンをPとして0.03〜0.5質量%含むように、前記第1工程において、リン化合物を添加することを特徴とするハニカム状排ガス処理触媒用のチタン含有粉末の製造方法である。
前記第3の発明は、以下の特徴を備えていてもよい。
(i)前記第1工程にて、前記第1工程にて、ケイ素、タングステン、モリブデン、ジルコニウムから選ばれた少なくとも一種の元素を含む前駆体を混合してチタン含有スラリー溶液を得ること。
【0009】
第4の発明は、前記第3の発明に係る製造方法にて製造したハニカム状排ガス処理触媒用のチタン含有粉末に、水と酸化バナジウム若しくはその前駆体及び成型助剤を加えてチタン含有粉末のスラリー溶液を得る工程と、
前記スラリー溶液に補強材を加えて混練し、混和物を得る工程と、
前記混和物を押出形成してハニカム構造体を得る工程と、
前記ハニカム構造体を乾燥させた後、更に400〜700℃の温度範囲で焼成し、酸化チタンに酸化バナジウムが担持された排ガス処理触媒を得る工程と、を含むことを特徴とするハニカム状排ガス処理触媒の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチタン含有粉末中にはリンが含有されているので、焼成時に酸化チタンの結晶化が抑制されることによりハニカム構造体の比表面積の低下を抑制することができる。更に、リンの含有量をPとして0.03〜0.5質量%の範囲に調整することにより、脱硝触媒自体の初期活性の低下を抑え、前述の比表面積の低下抑制の効果とあわせて高い触媒活性を維持することができる。更には、触媒の機械強度及び摩耗強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本例のハニカム構造体を、ハニカム孔の貫通方向の一端側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
[チタン含有粉末]
本発明におけるハニカム状排ガス処理触媒用チタン含有粉末は、二酸化チタン(TiO)又はチタン複合酸化物の少なくとも一方を含んでいる。
チタン複合酸化物は、二酸化チタン(「第1の無機酸化物」である)と、例えば、ケイ素(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)などのチタン以外の元素を含有する1種以上の無機酸化物(以下、「第2の無機酸化物」ともいう)との混合物である。二酸化チタンの粉末又はチタン複合酸化物の粉末は少なくともアナターゼ型の二酸化チタンを含んでいる。チタン複合酸化物の具体例としては、二酸化チタン及びシリカ(TiO−SiO)、二酸化チタン及び酸化タングステン(TiO−WO)、二酸化チタン及び酸化モリブデン(TiO−MoO)、二酸化チタン及びジルコニア(TiO−ZrO)などの二元系複合酸化物、また、二酸化チタンと酸化タングステン及びシリカ(TiO−WO−SiO)、二酸化チタンと酸化モリブデン及びシリカ(TiO−MoO−SiO)などの三元系複合酸化物が挙げられる。この三元系複合酸化物は、TiOにSiOやWO、MoOを高分散で含んだ構造を有し、加熱焼成による結晶化の進行やルチル型TiOへの転移を抑制する性質を有するので好適である。チタン複合酸化物中における第2の無機酸化物の含有量は、二酸化チタンの量よりも少ないことが好ましく、0質量%を超え、20質量%以下の範囲にあることが望ましい。第2の無機酸化物の含有量が二酸化チタンの量よりも多くなると排ガス処理触媒、特に窒素酸化物除去触媒の担体として、硫化物などに対する耐性や耐摩耗性などの優れた効果が得られないことがある。
【0013】
更に、実施の形態に係るチタン含有粉末は、上述の二酸化チタンやチタン複合酸化物に加えてリンを含んでいる。ここで、リンを含むチタン含有粉末にて脱硝触媒を製造すると、例えば500℃以下の温度範囲ではリンは脱硝触媒の触媒活性を低下させる作用があるが、本発明者らは、リンの存在が、チタン含有粉末の焼成時やハニカム成形された脱硝触媒の焼成時における二酸化チタンの結晶化の進行を抑える作用があることを見出した。この二酸化チタンの結晶化の進行は、具体的にはチタン含有粉末に含まれるアナターゼ型二酸化チタンの結晶子径の増大として観察される。
特に、脱硝触媒の活性成分として担持されるバナジウム(酸化バナジウムとして担持される)は、二酸化チタンの結晶化を促進する物質であるが、チタン含有粉末前駆体にリンを添加し、焼成して得られたリンの酸化物は、バナジウムによる結晶化の促進を抑制することができる。この結果、リンを添加して結晶化の進行を抑えることにより、チタン含有粉末の製造時における高温焼成が可能となり押出成形性の高いチタン含有粉末を得ることができる。更に、このようにして製造されたチタン含有粉末は、活性成分が添加され、ハニカム形状に成形された後の焼成時においても結晶化の進行が抑えられ、比表面積の低下を抑制できる。
更に、二酸化チタンの結晶化の進行を抑えると、焼成後のハニカム状排ガス処理触媒を構成する構造体(二酸化チタンやチタン複合酸化物)の緻密性が向上する。この結果、排ガス処理触媒の耐摩耗性が向上すると共に、その強度が向上してハニカム構造体を構成する隔壁をより薄くすることが可能となる。
本発明のチタン含有粉末におけるリンの含有量はPに換算して、0.03〜0.5質量%の範囲であることが好ましい。リンの含有量が0.03質量%を下回ると、チタン含有粉末やハニカム構造耐を焼成する際の二酸化チタンの結晶化の進行が大きく、耐摩耗性や圧縮強度が劣る。リンの含有量が0.5質量%を超えると、脱硝率を低下させる影響が大きくなる。
【0014】
(1)本発明のチタン含有粉末が、二酸化チタンのみからなる場合には、アナターゼ型結晶の(101)面の結晶子径は12〜40nmの範囲がより好適である。ここで、結晶子径が12nmより小さい場合には、チタン含有粉末の捏和物をハニカム形状に押出成形する際に脱水現象が生じて成形性が悪くなり、隔壁の薄いハニカム構造体の成形が難しくなる。また、この場合には、成形できたとしても、担体の緻密性も低下し、ハニカム構造体の耐摩耗性も悪化する。一方、前記結晶子径が40nmより大きくなると、リンが添加されハニカム構造体の焼成中における結晶化の進行が抑えられているとはいっても、焼成の開始時点における結晶子径が大きいことから、焼成後のハニカム構造体の比表面積の低下を招き、触媒活性が低下するので好ましくない。
また、(2)本発明のチタン含有粉末が、チタン複合酸化物を含む場合には、アナターゼ型結晶の(101)面の結晶子径は10〜38nmの範囲が好適である。ここで、結晶子径が10nmより小さい場合には、チタン含有粉末の捏和物をハニカム形状に押出成形する際に脱水現象が生じて成形性が悪くなり、隔壁の薄いハニカム構造体の成形が難しくなる。また、この場合には、成形できたとしても、担体の緻密性も低下し、ハニカム構造体の耐摩耗性も悪化する。一方、前記結晶子径が38nmより大きくなると、リンが添加されハニカム構造体の焼成中における結晶化の進行が抑えられているとはいっても、焼成の開始時点における結晶子径が大きいことから、焼成後のハニカム構造体の比表面積の低下を招き、触媒活性が低下するので好ましくない。
なお、この結晶子径はシェラー(Scherrer)の式から求めることができる。
【0015】
更に、本発明のハニカム状排ガス処理触媒用チタン含有粉末は、粉末中に硫酸根(SO)を乾燥基準で0.4〜4.0質量%の範囲で含有する。前記含有量は、0.5〜3.5質量%の範囲がより望ましい。前記含有量は、1.0〜3.5質量%の範囲がより望ましい。
チタン含有粉末に含まれる硫酸根は、ハニカム構造体を乾燥し、焼成する際における同構造体の収縮を抑える役割を果たす。このため、硫酸根の含有量が0.3質量%より少ない場合には、乾燥、焼成時における収縮率が大きくなるため、得られたハニカム構造体にひび割れ等が生じ強度が弱くなる。また、触媒の細孔容積、特に細孔直径50nm(500Å)以下の細孔容積が小さくなるため窒素酸化物除去性能などが低下するので好ましくない。
一方で硫酸根の含有量が4.0質量%より多い場合には、チタン含有粉末の捏和物を押出成形してハニカム形状にする際に脱水固化する現象などが生じて流動性が悪くなる。また、成形助剤として添加される有機可塑剤などの粘性が低下するため、押出成形が難しくなる。
ここで、チタン含有粉末中の硫酸根の含有量は、後述するチタン含有粉末の製造方法において、洗浄や焼成等により調整することができる。
【0016】
以上に説明した本発明のハニカム状排ガス処理触媒用のチタン含有粉末は、粒子計が45μm以下の粒子が、全重量の99.9質量%以上を占めていることが好ましい。この粒径範囲の粒子が全重量の99.9質量%より少ない場合、即ち、45μmより大きい粒子径のチタン含有粉末が0.1質量%より多い場合には、押出成形した際に隔壁が欠落してしまい、所望のハニカム構造体が得られないことがある。
【0017】
[チタン含有粉末の製造方法]
以上に述べてきた特徴を備えるチタン含有粉末の製造方法の一例について説明する。二酸化チタン原料であるメタチタン酸などのチタン含有溶液に、リン原料であるリン化合物を添加し、当該リンをP換算で0.03〜0.5質量%含むスラリー溶液を調製する。また、メタチタン酸の原料として、硫酸法による二酸化チタンの製造工程より得られる硫酸チタン溶液を用い、この硫酸チタンを加水分解してメタチタン酸を得ることにより、前記スラリー溶液中に硫酸根を含有させることができる。また、この硫酸根は、前記スラリー溶液に硫酸アンモニウムなど、硫酸塩溶液を添加することにより含有させてもよい。
リン化合物の添加量は、予備実験などにより、脱水、焼成をしたチタン含有粉末中のPに換算したリンの含有量とリン化合物の添加量との対応を予め把握しておくことなどにより決定される。リン化合物の具体的な例としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、リン酸化物、リン塩化物、リン硫化物などが挙げられる。
また、チタン複合酸化物を調製する場合には、上述のリン及びチタン含有溶液にケイ素(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)などの第2の無機酸化物を構成する元素が含まれている化合物を添加する。
【0018】
こうして得られたリン、チタンなどの含有溶液に、例えば硫酸などの酸、アンモニアなどのアルカリを添加し、当該溶液のpHを2〜9.5の範囲内の予め設定した値に調整する。pHの調整は、原料の安定化のために行われ、その値は、製品(すなわち、チタン含有粉末)の物性を考慮して決定される。
こうしてリン、チタンなどを含み、予め設定した値にpHを調整したスラリー溶液が得られたら、このスラリー溶液を例えば50〜100℃の温度範囲で0.5〜24時間、加熱熟成する。予め行った予備実験などにより、熟成温度や熟成時間とアナターゼ型結晶の(101)面の結晶子径との関係を把握しておくことにより、所望の結晶子径を持つ二酸化チタンやチタン複合酸化物を調製することができる。そして、加熱熟成後のスラリー溶液を脱水し、得られた脱水ケーキを蒸留水などで洗浄してから、再度、脱水を行って脱水ケーキを得る。
得られた脱水ケーキ中の水分を乾燥させて得られた乾燥体を、大気雰囲気のキルン内などで例えば400〜700℃の温度範囲で、0.5〜20時間焼成し、二酸化チタン又はチタン複合酸化物と、Pとして0.03〜0.5質量%のリンとを含むチタン含有粉末を得ることができる。このチタン含有粉末をボールミルなどにより更に粉砕して全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径のチタン含有粉末を得る。
【0019】
[ハニカム状排ガス処理触媒]
本発明のハニカム状排ガス処理触媒は、上述のハニカム状排ガス処理触媒用チタン含有粉末を全重量の60質量%以上含有することが好ましく、より好適な含有割合は70〜99.9質量%の範囲である。当該チタン含有粉末の含有割合が60質量%より少ない場合には、所望の脱硝活性が得られないことがある。また、上述のように、本発明のチタン含有粉末を60質量%以上含有していれば、例えばリンを含まない本発明の技術的範囲外のチタン含有粉末を40質量%未満含有していてもよい。
前記ハニカム状排ガス処理触媒には、窒素酸化物を除去するための活性成分が含まれる。活性成分としては、例えば、バナジウム(V)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、鉄(Au)、パラジウム(Pd)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、インジウム(In)、イリジウム(Ir)などの金属成分が挙げられる。
上述の活性成分のうち、特にバナジウム酸化物(V)は、安価であり且つ窒素酸化物の除去率が高いために好適に使用される。また、窒素酸化物を除去するための排ガス処理触媒に使用される活性成分の含有量は、酸化物として全触媒重量の0.1〜30質量%の範囲である。
上述のようにリンをPとして0.03〜0.5質量%含むチタン含有粉末は、焼成時における結晶化の進行が抑制される結果、(1)二酸化チタンのみを含有する場合は、アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径を12〜40nmの範囲とし、(2)チタン複合酸化物を含む場合には、同結晶子径を10〜38nmの範囲とすることができる。このようなチタン含有粉末を少なくとも60質量%以上含有するようにして成形されたハニカム状排ガス処理触媒は、チタン含有粉末の結晶子径が小さいことにより緻密な構造体を形成することが可能であり、その摩耗強度が向上する。
【0020】
このほか、リンを含み、結晶化の進行が抑制されたチタン含有粉末を少なくとも60質量%以上含有するようにして成形されたハニカム状排ガス処理触媒は、チタン含有粉末の結晶化が進行していないことから、粘り気を備え、高い靭性を発揮することができる。また、前記チタン含有粉末が0.4〜4.0質量%の硫酸根を含有していることにより、ハニカム状排ガス処理触媒を焼成する際における構造体の収縮が抑えられ、ひび割れ等の発生による構造体の強度低下を防止することができる。これらの結果、ハニカム状排ガス処理触媒の圧縮強度が向上する。
更に、リンを含有するチタン含有粉末をハニカム形状に形成し、更にこのハニカム状の構造体を焼成する際においても、酸化チタンの結晶化の進行が抑えられ、比表面積の低下を抑制することができると共に、当該リンの含有量が、Pとして0.03〜0.5質量%の範囲に調整されていることにより、初期活性の低下が抑えられることから比較的高い脱硝活性を得ることができる。そして既述のように当該ハニカム状排ガス処理触媒は耐摩耗性が高いことから、その比表面積が低下しにくく、初期活性に近い脱硝活性を長期間維持することができる。
【0021】
[ハニカム状排ガス処理触媒の製造方法]
本例のハニカム状排ガス処理触媒は、(a)本例のチタン含有粉末と活性成分又はその前駆物質を、成形助材等と共に混練して捏和物とした後に、所望のハニカム形状に押出成形し、乾燥、焼成する方法(混練法)、(b)本例のチタン含有粉末を、成形助材等と共に混練して捏和物とした後に、所望のハニカム形状に押出成形し、乾燥、焼成した担体に、活性成分を含有する水溶液を含浸し、乾燥、焼成する方法(含浸法)などにより製造される。
特に前記(a)の混練法により製造した触媒はソリッドタイプの触媒と言われており、高い脱硝活性を得られることから、混練法により活性物質として酸化バナジウムを担持したハニカム状排ガス処理触媒を製造する場合を一例に挙げて説明しておく。
まず、本発明のチタン含有粉末を水などの溶媒に分散させてスラリー溶液とし、このスラリー溶液中に酸化バナジウムの前駆体、例えばメタバナジン酸アンモニウムと、溶解剤であるモノエタノールアミンとを添加する。更に、このスラリー溶液に、グラスファイバーや酸性白土などの補強材、ポリエチレンオキサイドなどの潤滑剤を加え、ニーダーなどの混練機で混練捏和して押出成形に適した捏和物を調製する。
こうして得られた混和物を例えば真空式の押出成形機などで押出成形し、ハニカム構造体を得る。しかる後、得られたハニカム構造体を乾燥させ、乾燥後のハニカム構造体を大気雰囲気のキルン内などで例えば400〜700℃の温度範囲で、0.5〜24時間焼成してグラスファイバーや酸性白土が添加されたに酸化チタンに、酸化バナジウムが担持されたハニカム状の排ガス処理触媒を得る。
【0022】
ここで、本発明者らは、酸化チタン担体に活性物質として酸化バナジウムを添加した状態で酸化チタンを焼成すると、バナジウムの存在により二酸化チタンの結晶化が進行することを把握している。そこで、本例の排ガス処理触媒の製造方法では、バナジウム及びその前駆体を添加しない状態で焼成して得たチタン含有粉末を利用している。このことから、例えばチタン含有粉末の焼成段階からバナジウムを添加した場合と比較して、排ガス処理触媒の焼成を終えた時点における二酸化チタンの結晶化の進行度合いを抑えることができる。
このようにして得られたハニカム状排ガス処理触媒の構造体の形状は、図1に示すように、(i)ハニカム構造体の外形寸法が好ましくは30〜300mm□(□は、ハニカム孔の貫通方向の一端側から見た構造体の平面形状(図1に示す平面形状)が四角形であることを示している)、更に好ましくは50〜200mm□、(ii)ハニカム構造体の長さが100〜3000mm、更に好ましくは300〜1500mm、(iii)例えば平面形状が四角形に開口するハニカム孔(以下、目開きということがある)の1辺の長さが好ましくは1〜15mm、更に好ましくは2〜10mm、(iv)ハニカムの隔壁厚が好ましくは0.1〜2mm、更に好ましくは0.1〜1.5mm、(v)ハニカムの開口率が好ましくは60〜85%、更に好ましくは70〜85%の範囲である場合を例示できる。該ハニカム構造体の形状が前記形状の範囲を外れる場合には、成形が困難になったり、ハニカム構造体の強度が弱くなったり、また、単位体積当たりの脱硝活性や有機ハロゲン化合物の分解活性等が低くなったりする場合がある。
【0023】
[ハニカム状排ガス処理触媒を用いた脱硝プロセス]
本発明のハニカム状排ガス処理触媒は、NOを含有する排ガス、特にボイラー排ガスなどのようにNO、SOを含有するほか重金属、ダストを含有する排ガスに、アンモニアなどの還元剤を添加して接触還元するNO除去法に好適に使用される。また、該触媒の使用条件は、通常の脱硝処理条件が採用され、具体的には、反応温度は150〜600℃、より好適には300〜400℃、空間速度1000〜100000hr―1の範囲などが例示される。
本実施の形態のチタン含有粉末によれば以下の効果がある。チタン含有粉末中にリンが添加されていることにより、酸化チタンの結晶化を抑制してハニカム構造体の比表面積の低下を抑制することができる。その一方で、リンの含有量をPとして0.03〜0.5質量%の範囲に調整することにより、脱硝触媒自体の初期活性の低下を抑え、前述の比表面積の低下抑制の効果とあわせて高い触媒活性を維持することができる。更には、触媒の機械強度及び摩耗強度を向上させることができる。
【実施例】
【0024】
[評価方法]
各例のチタン含有粉末用いて製造したハニカム状排ガス処理触媒の評価方法について以下に記す。
[1]結晶子径
粉末X線回折法にてアナターゼ型二酸化チタン結晶の(101)面のピークを測定し、シェラー(Scherrer)の式(1)から結晶子径Lを得る。
L=Kλ/(βcosθ)…(1)
ここで、Kは定数、λは波長、βは半価幅、θは入射角を示す。
[2]成形性
成型性の判定基準は、押出成型されたハニカム触媒のダイス面からの流れが安定的であれば○とした。一方、流れが不安定でハニカム触媒の内部に欠陥が発生した場合は×とした。
[3]摩擦強度
各ハニカム状排ガス処理触媒を、ハニカム孔数9×9目、長さ100mmに切り出して試験試料とし、この試験試料を流通式反応器に充填した。流通式反応器には、砂を含むガスを下記の条件で通流させ、触媒重量の減少量から下記(2)式に基づいて摩耗率を測定した。流通式反応器内を通流した砂の通砂量は、流通式反応器の後段にサイクロンを設け、摩耗試験終了後、当該サイクロンに捕集された砂の重量を測定することにより求めた。
摩耗率(%/kg)={〔摩耗開始前の触媒重量(g)−摩耗終了後の触媒重量(g)〕/摩耗開始前の触媒重量(g)}×100/通砂量(kg)…(2)
試験条件
触媒形状:ハニカム孔数9×9目、長さ100mm
ガス流速:(16.5±2)m/s(触媒断面)
ガス温度:室温25℃
ガス流通時間:3時間
砂濃度:(40±5)g/Nm
砂:珪砂 平均粒径500μm
【0025】
[4]圧縮強度
ハニカム状排ガス処理触媒を立方体又は直方体に切り出した試料に対し、ハニカム孔の貫通方向、及びこの方向と直交する方向(以下、単に「直交方向」ともいう)に一定速度で圧縮負荷をかけ、試料が破壊されるまでの最大荷重(N)を読み取り、下記(3)式より圧縮強度を求める。
圧縮試験機:東京試験機製作所(型式 AL/B30P)
圧縮強度:
(N/cm)=W(N)/{a(cm)×c(cm)} …(3)
ここで、a(cm)及びc(cm)は供試料の加圧面の2辺の寸法を示す。W(N)は徐々に負荷し試料が完全に破壊されるまでの最大荷重を示す。
[5]比表面積
30%窒素―70%ヘリウムの混合ガスを吸着ガスとしたBET法に基づく比表面積測定装置によりチタン含有粉末又はハニカム状排ガス処理触媒の比表面積を求める。
[6]細孔容積
ポロシメーターを用いて、水銀圧入法によりハニカム状排ガス処理触媒の全細孔容積を求める。
【0026】
[7]脱硝試験
各ハニカム状排ガス処理触媒を、ハニカム孔数3×3目、長さ300mmに切り出して試験試料とし、この試験試料を流通式反応器に充填した。この流通式反応器に下記組成のモデルガスを通流させて脱硝率を測定した。触媒接触前後のガス中の窒素酸化物(NO)の脱硝率は、下記(4)式により求めた。このときNOの濃度は化学発光式の窒素酸化物分析計にて測定した。
脱硝率(%)=
{〔未接触ガス中のNO(質量ppm)−接触後のガス中のNO(質量ppm)〕/未接触ガス中のNO(質量ppm)}×100 …(2)
試験条件
触媒形状:ハニカム孔数3×3目、長さ300mm
反応温度:380℃、SV=10,000hr―1
モデルガス組成:NO=180質量ppm、NH=180質量ppm、SO=500質量ppm、O=2重量%、HO=10重量%、N=バランス
【0027】
[実施例1]
<チタン含有粉末(a)及びハニカム状排ガス処理触媒(a)>
硫酸法による二酸化チタンの製造工程より得られる硫酸チタン溶液を熱加水分解してメタチタン酸スラリーを得た。このメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で25.0kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これにリン酸を10.4g加え、更に、15質量%アンモニア水を30.5kg加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。脱水後、P含有量が0.03質量%(Dry Basis)、燃焼法で測定した硫酸根(SO)が2.7wt%(Dry Basis)(以下、硫酸根の測定法については同じ)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(a)を調製した。当該チタン含有粉末(a)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.5nmであった。
このチタン含有粉末(a)23.5kgに、モノエタノールアミン0.25kgにメタバナジン酸アンモニウム0.325kgを溶解した溶液を加え、次いでアンモニア水と水を加えこの混合スラリーのpHを9とした。更に、グラスファイバー(GF)1.25kg及びポリエチレンオキサイド0.5kgを加えてニーダーにて加熱しながら捏和して押出成形に適した捏和物を調製した。次いで該捏和物を真空押出成形機でハニカム形状に押出成形し、ハニカム外形寸法75mm□(四角形状を意味する)、目開き(ハニカム孔径)6.5mm(一辺の長さが6.5mmの四角形状)、隔壁厚0.9mm、開口率75.1%、長さ300mmのハニカム構造体を得た。このハニカム構造体を600℃で3hr焼成して、重量比でTiO粉末(a)/V/GFが94/1/5の組成をもつハニカム状排ガス処理触媒(a)を調製した。
【0028】
[実施例2]
<チタン含有粉末(b)及びハニカム状排ガス処理触媒(b)>
リン酸の添加量を17.3gとし、P含有量が0.05質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例1同様の方法にてチタン含有粉末(b)を調製した。当該チタン含有粉末(b)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.4nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(b)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(b)を調製した。
【0029】
[実施例3]
<チタン含有粉末(c)及びハニカム状排ガス処理触媒(c)>
リン酸の添加量を86.3gとし、P含有量が0.25質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(c)を調製した。当該チタン含有粉末(c)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.1nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(c)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(c)を調製した。
【0030】
[実施例4]
<チタン含有粉末(d)及びハニカム状排ガス処理触媒(d)>
リン酸の添加量を172.7gとし、P含有量が0.5質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例1のチタン含有粉末(a)と同様の方法にてチタン含有粉末(d)を調製した。当該チタン含有粉末(d)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.0nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(d)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(d)を調製した。
【0031】
[比較例1]
<チタン含有粉末(e)及びハニカム状排ガス処理触媒(e)>
リン酸を添加しない点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(e)を調製した。当該チタン含有粉末(e)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.9nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(e)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(e)を調製した。
【0032】
[比較例2]
<チタン含有粉末(f)及びハニカム状排ガス処理触媒(f)>
リン酸の添加量を345.3gとし、P含有量が1質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(f)を調製した。当該チタン含有粉末(f)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.7nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(f)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(f)を調製した。
【0033】
[比較例3]
<ハニカム状排ガス処理触媒(e−2)>
チタン含有粉末(e)23.5kgに、モノエタノールアミン0.25kgにメタバナジン酸アンモニウム0.325kgを溶解した溶液を加え、これにリン酸を16.2g加え、次いでアンモニア水と水を加えこの混合スラリーのpHを9とした。更に、グラスファイバー(GF)1.25kg及びポリエチレンオキサイド0.5kgを加えてニーダーにて加熱、混練捏和して押出成形に適した捏和物を調製した。次いで該捏和物を真空押出成形機でハニカム形状に押出成形し、ハニカム外形寸法75mm□(四角形状を意味する)、目開き(ハニカム孔径)6.5mm(一辺の長さが6.5mmの四角形状)、隔壁厚0.9mm、開口率75.1%、長さ300mmのハニカム構造体を得た。ここで、P含有量は、二酸化チタン含有粉末の重量比で0.05質量%(Dry Basis)である。このハニカム構造体を60℃で24hr乾燥後、600℃で3hr焼成して、重量比でTiO粉末(e)/V/GFが94/1/5の組成をもつハニカム状排ガス処理触媒(e−2)を調製した。
【0034】
[比較例4]
<チタン含有粉末(g)及びハニカム状排ガス処理触媒(g)>
実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で25.0kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これにリン酸を17.3g加え、更に、15質量%アンモニア水でpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過、脱水、15質量%アンモニア水による洗浄工程を3回繰り返した。これを脱水して、P含有量が0.05質量%(Dry Basis)、硫酸根が0.2wt%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(g)を調製した。当該チタン含有粉末(g)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は19.1nmであった。このチタン含有粉末(g)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(g)を調製した。
【0035】
[比較例5]
<チタン含有粉末(h)及びハニカム状排ガス処理触媒(h)>
実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で25.0kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これにリン酸を17.3g加え、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。これを脱水して、P含有量が0.05質量%(Dry Basis)、硫酸根が4.1wt%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(h)を調製した。当該粉末(h)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は15.2nmであった。このチタン含有粉末(h)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(h)を調製したが、成形性不良のため性能測定ハニカム触媒を得られなかった。
【0036】
[実施例5]
<チタン含有粉末(i)及びハニカム状排ガス処理触媒(i)>
焼成温度を650℃とした点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(i)を調製した。当該チタン含有粉末(i)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は32.0nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(i)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(i)を調製した。
【0037】
[実施例6]
<チタン含有粉末(j)及びハニカム状排ガス処理触媒(j)>
焼成温度を450℃とした点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(j)を調製した。当該チタン含有粉末(j)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は13.8nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(j)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(j)を調製した。
【0038】
[比較例6]
<チタン含有粉末(k)及びハニカム状排ガス処理触媒(k)>
焼成温度を750℃とした点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(k)を調製した。当該チタン含有粉末(k)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は52.0nmであり、硫酸根の含有量は2.7wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(k)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(k)を調製した。
【0039】
[比較例7]
<チタン含有粉末(l)及びハニカム状排ガス処理触媒(l)>
焼成温度を750℃とした点以外は、実施例1と同様の方法にてチタン含有粉末(l)を調製した。当該チタン含有粉末(l)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は11.9nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(l)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(l)を調製したが、成型性不良のため性能測定用ハニカム触媒が得られなかった。
【0040】
[実施例7]
<チタン含有粉末(m)及びハニカム状排ガス処理触媒(m)>
実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で22.5kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに10.4gのリン酸と2.81kgのパラタングステン酸アンモニウムを加え、更に、15質量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。脱水後、WO含有量が10.0重量%(Dry Basis)、P含有量が0.05質量%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(m)を調製した。当該チタン含有粉末(m)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.6nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(m)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(m)を調製した。
【0041】
[実施例8]
<チタン含有粉末(n)及びハニカム状排ガス処理触媒(n)>
リン酸の添加量を17.3gとし、P含有量が0.05質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例7と同様の方法にてチタン含有粉末(n)を調製した。当該チタン含有粉末(n)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.5nmであり、硫酸根の含有量は2.7wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(n)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(n)を調製した。
【0042】
[実施例9]
<チタン含有粉末(o)及びハニカム状排ガス処理触媒(o)>
メタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で22.4kg、リン酸の添加量を86.3gとし、P含有量が0.25質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例7と同様の方法にてチタン含有粉末(o)を調製した。当該チタン含有粉末(o)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.4nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(o)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(o)を調製した。
【0043】
[実施例10]
<チタン含有粉末(p)及びハニカム状排ガス処理触媒(p)>
リン酸の添加量を172.7gとし、P含有量が0.5質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例7と同様の方法にてチタン含有粉末(p)を調製した。当該チタン含有粉末(p)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.2nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(p)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(p)を調製した。
【0044】
[比較例8]
<チタン含有粉末(q)及びハニカム状排ガス処理触媒(q)>
リン酸を添加しない点以外は、実施例7と同様の方法にてチタン含有粉末(q)を調製した。当該チタン含有粉末(q)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.4nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(q)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(q)を調製した。
【0045】
[比較例9]
<チタン含有粉末(r)及びハニカム状排ガス処理触媒(r)>
メタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で22.4kg、リン酸の添加量を345.3gとし、P含有量が1質量%(Dry Basis)となっている点以外は、実施例7と同様の方法にてチタン含有粉末(r)を調製した。当該チタン含有粉末(r)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は17.0nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(r)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(r)を調製した。
【0046】
[比較例10]
<ハニカム状排ガス処理触媒(q−2)>
チタン含有粉末(q)を用いた点以外は、比較例3と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(q−2)を調製した。
【0047】
[比較例11]
<チタン含有粉末(s)及びハニカム状排ガス処理触媒(s)>
実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で22.5kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに10.4gのリン酸と2.81kgのパラタングステン酸アンモニウムを加え、更に、15質量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過、脱水、15質量%アンモニア水による洗浄工程を3回繰り返した。これを脱水して、P含有量が0.05質量%(Dry Basis)、硫酸根が0.3wt%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(s)を調製した。当該チタン含有粉末(s)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は19.8nmであった。このチタン含有粉末(s)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(s)を調製した。
【0048】
[比較例12]
<チタン含有粉末(t)及びハニカム状排ガス処理触媒(t)>
実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で22.5kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに10.4gのリン酸と2.81kgのパラタングステン酸アンモニウムを加え、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。これを脱水して、P含有量が0.05質量%(Dry Basis)、硫酸根が4.1wt%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(t)を調製した。当該チタン含有粉末(t)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は14.8nmであった。このチタン含有粉末(t)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒を調製(t)したが、成形性不良のため性能測定ハニカム触媒を得られなかった。
【0049】
[実施例11]
<チタン含有粉末(u)及びハニカム状排ガス処理触媒(u)>
焼成温度を650℃とした点以外は、実施例8のチタン含有粉末(n)と同様の方法にてチタン含有粉末(u)を調製した。当該チタン含有粉末(u)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は29.4nmであり、硫酸根の含有量は2.4wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(u)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(u)を調製した。
【0050】
[実施例12]
<チタン含有粉末(v)及びハニカム状排ガス処理触媒(v)>
焼成温度を450℃とした点以外は、実施例8のチタン含有粉末(n)と同様の方法にてチタン含有粉末(v)を調製した。当該チタン含有粉末(v)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は12.9nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(v)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(v)を調製した。
【0051】
[比較例13]
<チタン含有粉末(w)及びハニカム状排ガス処理触媒(w)>
焼成温度を750℃とした点以外は、実施例8のチタン含有粉末(n)と同様の方法にてチタン含有粉末(w)を調製した。当該粉末(v)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は48.0nmであり、硫酸根の含有量は2.7wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(w)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(w)を調製した。
【0052】
[比較例14]
<チタン含有粉末(x)及びハニカム状排ガス処理触媒(x)>
焼成温度を350℃とした点以外は、実施例8のチタン含有粉末(n)と同様の方法にてチタン含有粉末(x)を調製した。当該チタン含有粉末(x)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は9.8nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(x)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(x)を調製したが、成型性不良のため性能測定用ハニカム触媒が得られなかった。
【0053】
[実施例13]
<チタン含有粉末(y−1)及びハニカム状排ガス処理触媒(y−1)>
実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で24.2kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに17.3gのリン酸と4重量%濃度のケイ酸18.75kgを加え、更に、15質量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。脱水後、SiO含有量が3.0重量%(Dry Basis)、P含有量が0.05質量%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(g)を調製した。当該チタン含有粉末(g)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は16.8nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(y−1)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(y−1)を調製した。
【0054】
[実施例14]
<チタン含有粉末(y−2)及びハニカム状排ガス処理触媒(y−2)>
実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で24.2kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに17.3gのリン酸とパラモリブデン酸アンモニウム0.92kgを加え、更に、15質量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。脱水後、MoO含有量が3.0重量%(Dry Basis)、P含有量が0.05質量%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(y−2)を調製した。当該チタン含有粉末(y−2)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は18.1nmであり、硫酸根の含有量は2.6wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(y−2)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(y−2)を調製した。
【0055】
[実施例15]
<チタン含有粉末(y−3)及びハニカム状排ガス処理触媒(y−3)>
実施例1と同様のメタチタン酸スラリーを二酸化チタン換算で23.0kg取り出し、還流器付攪拌槽に仕込み、これに17.3gのリン酸と1.4kgのパラタングステン酸アンモニウムと4重量%濃度のケイ酸18.75kgを加え、更に、15質量%アンモニア水を加えてpHを9.5に調整した後、95℃で1時間に亘り十分な攪拌を行いつつ加熱熟成した。加熱熟成後のスラリーを冷却して攪拌槽から取り出し、固形分を濾過した。脱水後、WO含有量が5.0重量%(Dry Basis)、SiO含有量が3.0重量%(Dry Basis)、P含有量が0.05質量%(Dry Basis)の洗浄ケーキを得た。該洗浄ケーキを110℃で20時間乾燥した後、これを550℃で5時間焼成してチタン含有粉末を得た。該チタン含有粉末をボールミルで更に、粉砕して、全体の99.9質量%以上が45μm以下の粒子径をもつチタン含有粉末(y−3)を調製した。当該チタン含有粉末(y−3)に含まれるアナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は14.6nmであり、硫酸根の含有量は2.5wt%(Dry Basis)であった。このチタン含有粉末(y−3)を用いた点以外は、実施例1と同様の手法でハニカム状排ガス処理触媒(y−3)を調製した。
【0056】
上述の各実施例、比較例にて使用したチタン含有粉末a〜x、y−1〜y−3の物性(リン含有量、結晶子径、硫酸根含有量、比表面積(SA)、焼成温度)を(表1)に示す。これらのうち、チタン含有粉末a〜lが二酸化チタンのみを含有する場合に相当し、チタン含有粉末m〜x、y1〜y−3がチタン複合酸化物を含む場合に相当している。また実施例1〜15、比較例1〜14に係わるハニカム状排ガス浄化触媒の評価結果(チタン含有粉末中のリン含有量(但し、比較例3、10については換算値)、成型性評価、摩耗率、圧縮強度、比表面積(SA)、細孔容積(PV))を(表2)に示す。

【表1】

【表2】

【0057】
(表2)によれば、実施例1〜15に示した排ガス浄化触媒は、本発明の(a)〜(c)の要件を満たすチタン含有粉末を原料として製造したものであり、これらのチタン含有粉末はハニカム構造体の成型性が良好であった。また、摩耗率は0.055〜0.097%/sand−kg、ハニカム孔の貫通方向への圧縮強度は、314〜436N/cm、ハニカム孔と直交する方向への圧縮強度は、73〜157N/cmであって、耐摩耗性や機械強度も良好である。また、比表面積は48〜61m/g、細孔容積は0.28〜0.34ml/g、脱硝率は81.5〜88.7%の範囲であり、実用上、良好な範囲の特性であった。
【0058】
これに対して、リンが添加されていない比較例1は、リンが含まれている点を除いてチタン含有粉末の組成が同じ、実施例1〜4に比べて摩耗率が大きく、圧縮強度も劣る。またリンが添加されていない比較例8と、これに対応する実施例7〜10との比較においても同様の傾向が見られる。一方、リンの含有量が1質量%まで多くなると(比較例2、比較例9)、対応する実施例(実施例1〜4、実施例7〜10)よりも脱硝率が低いことが分かる。
また、リンの含有量が本発明の要件を満たしている場合であっても、アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径が上限を超えている比較例6、比較例13は、対応する実施例(実施例1〜4、実施例7〜10)と比較して脱硝率が低下している。そして、結晶子径が下限を下回る比較例7、比較例14では成型不良のため、ハニカム構造体を得ることができなかった。
そして、硫酸根(SO)の含有量が下限を下回る比較例4、比較例11は、各々リンの含有量が同じ実施例2、実施例8に比べて脱硝率が低い。一方、硫酸根の含有量が上限を上回る比較例5、比較例12は、成型不良のため、ハニカム構造体を得ることができなかった。
最後に、リンを含まない状態で焼成したチタン含粉末(粉末e、q)に、後からリン化合物を添加して、ハニカム構造体の成型、焼成を行った比較例3、比較例10は、各々リンの含有量が同じ実施例2、実施例8と比べて脱硝率が低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン及びチタン複合酸化物の少なくとも一方を含むハニカム状排ガス処理触媒の原料用のチタン含有粉末において、下記(a)〜(c)を備えることを特徴とするチタン含有粉末。
(a)リンをPとして0.03〜0.5質量%含むこと。
(b)アナターゼ型結晶(101)面の結晶子径は、前記チタン含有粉末が、(1)二酸化チタンのみを含有する場合は12〜40nmの範囲にあり、(2)チタン複合酸化物を含む場合には10〜38nmの範囲にあること。
(c)硫酸根を0.4〜4.0質量%の範囲で含有すること。
【請求項2】
前記チタン複合酸化物がチタンと、ケイ素、タングステン、モリブデン、ジルコニウムから選ばれた少なくとも一種の元素との複合酸化物であることを特徴とする請求項1記載のチタン含有粉末。
【請求項3】
前記チタン含有粉末は99.9質量%以上が45μm以下の粒子径であることを特徴とする請求項1又は2記載のチタン含有粉末。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のチタン含有粉末と、活性成分と、を含有し、当該チタン含有粉末の含有割合が60質量%以上であることを特徴とするハニカム状排ガス処理触媒。
【請求項5】
前記活性成分は、酸化バナジウムであることを特徴とする請求項4記載のハニカム状排ガス処理触媒。
【請求項6】
前記ハニカム状排ガス処理触媒が窒素酸化物除去触媒であることを特徴とする請求項4又は5記載のハニカム状排ガス処理触媒。
【請求項7】
硫酸チタン溶液を熱加水分解して得られたメタチタン酸とリン化合物とを混合して、チタン含有スラリー溶液を得る第1工程と、
前記スラリー溶液のpHを2から9.5に調整する第2工程と、
pH調整された前記スラリー溶液を洗浄した後、脱水する第3工程と、
前記スラリー溶液を脱水して得られた脱水ケーキをキルンにて焼成して、チタン含有粉末を得る第4工程と、を含み、
かつ、
前記チタン含有粉末がリンをPとして0.03〜0.5質量%含むように、前記第1工程において、リン化合物を添加することを特徴とするハニカム状排ガス処理触媒用のチタン含有粉末の製造方法。
【請求項8】
前記第1工程にて、ケイ素、タングステン、モリブデン、ジルコニウムから選ばれた少なくとも一種の元素を含む前駆体を混合してチタン含有スラリー溶液を得ることを特徴とする請求項7記載のハニカム状排ガス処理触媒用のチタン含有粉末の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の製造方法にて製造したハニカム状排ガス処理触媒用のチタン含有粉末に、水と酸化バナジウム若しくはその前駆体及び成型助剤を加えてチタン含有粉末のスラリー溶液を得る工程と、
前記スラリー溶液に補強材を加えて混練し、混和物を得る工程と、
前記混和物を押出形成してハニカム構造体を得る工程と、
前記ハニカム構造体を乾燥させた後、更に400〜700℃の温度範囲で焼成し、酸化チタンに酸化バナジウムが担持された排ガス処理触媒を得る工程と、を含むことを特徴とするハニカム状排ガス処理触媒の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−139625(P2012−139625A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292986(P2010−292986)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】