説明

チタン板のプレス成形方法

【課題】プレス成形時にV字状のプレスパターンの頂点に割れが発生することがなく、プレス成形性に優れたチタン板のプレス成形方法を提供することを課題とする。
【解決手段】質量%で、Feを0.15%以下(0%を含まない)、Oを0.15%以下(0%を含まない)含有するチタン板をプレス成形して、前記チタン板にV字状のプレスパターンを形成するチタン板のプレス成形方法であって、前記チタン板のα相(六方晶)のC軸の集積度が高い方向をA方向、その直交方向をB方向としたとき、V字状のプレスパターンの頂点方向をA方向として前記チタン板に前記プレスパターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレート式熱交換器の構成材用等として用いられるチタン板に、V字状のプレスパターン(凹凸)を形成するチタン板のプレス成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チタンは、軽量、高強度、高耐食性に加え、溶接性、超塑性、拡散接合性などの利用加工諸特性を有することから、従来から航空機産業を中心に多用されてきた。これらの特性を更に活用すべく、近年、チタンは、熱交換器や化学プラント部材の構成材等にも使用されるようになっており、特に海水に対して、耐腐食性に優れるという特性があることから、海水熱交換器に多く用いられている。
【0003】
特に純チタンの板材、すなわちチタン板は、プレート式熱交換器の構成材として広く採用されているが、伝熱効率を向上させる必要があるため、図2に示すように、チタン板1には、V字状のプレスパターン2(図2は説明のための概略図であり、詳細なプレスパターンは図3を参照。)がプレス成形で形成されていた。
【0004】
V字状のプレスパターン2は、圧延、焼鈍を終えたチタン板1を、V字状のプレスパターンを形成した金型(図示せず)でプレス成形することにより形成されているが、従来からのプレス成形では、チタン板1の圧延時の圧延方向XとV字状のプレスパターン2の頂点3方向が一致する方向になるようにチタン板1を板置きしてプレス成形していた。
【0005】
その理由は、チタン板1の板幅が圧延工程での圧延ロールの長さの影響を受けるため、広幅のチタン板1を作製することには限界があり、大型の成型品を作製(プレス成形)する際には、チタン板1の圧延時の圧延方向XとV字状のプレスパターン2の頂点3の方向が一致する方向になるようにしてチタン板1を板置きせざるをえなかったことと、純チタンでなるチタン板1は、圧延方向Xの方が圧延垂直方向よりも延性が高く、圧延方向Xが、V字状のプレスパターン2の頂点方向と一致する方向になるようにして板置きしてプレス成形した方が割れを抑制することができると考えたためである。
【0006】
具体的に、従来からのプレート式熱交換器の構成材用等として用いられるチタン板に、V字状のプレスパターンを形成する際のチタン板の板置き方向を示した先行技術文献は特にないが、本出願人が先に特許出願した特許文献1には、プレート式熱交換器では、伝熱性向上のためチタン板の表面をプレス成形により凹凸形状とするということが記載されており、実際にプレス成形は、圧延方向が、V字状のプレスパターンの頂点方向と一致する方向になるようにしてチタン板を板置きして実施されている。
【0007】
このように、プレート式熱交換器の構成材を作製する際には、圧延方向Xが、V字状のプレスパターンの頂点方向と一致する方向になるようにしてチタン板を板置きしてプレス成形されていたが、チタン板をプレス成形した際に、V字状のプレスパターンの頂点に割れが発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−291362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたもので、プレス成形時にV字状のプレスパターンの頂点に割れが発生することがなく、プレス成形性に優れたチタン板のプレス成形方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、質量%で、Feを0.15%以下(0%を含まない)、Oを0.15%以下(0%を含まない)含有するチタン板をプレス成形して、前記チタン板にV字状のプレスパターンを形成するチタン板のプレス成形方法であって、前記チタン板のα相(六方晶)のC軸の集積度が高い方向をA方向、その直交方向をB方向としたとき、V字状のプレスパターンの頂点方向をA方向として前記チタン板に前記プレスパターンを形成することを特徴とするチタン板のプレス成形方法である。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記チタン板のA方向の全伸びが、20%以上であることを特徴とする請求項1記載のチタン板のプレス成形方法である。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記チタン板のα相の平均結晶粒径が、10〜200μmであることを特徴とする請求項1または2記載のチタン板のプレス成形方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、プレス成形時にV字状のプレスパターンの頂点に割れが発生することはなく、プレス成形性に優れたチタン板をプレス成形により得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のプレス成形方法を示すチタン板の平面概略図である。
【図2】従来のプレス成形方法を示すチタン板の平面概略図である。
【図3】実施例でプレス成形性の評価を行うために用いたプレス成形金型を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のF−F線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前記したように、チタン板の圧延方向とV字状のプレスパターンの頂点方向が一致する方向になるようにしてチタン板を板置きしてプレス成形した場合、その頂点に割れが発生することがあったため、その問題を解消するために、本発明者らは、鋭意、実験、研究を進めた。
【0016】
その結果、Feの含有量とOの含有量を規定した上で、チタン板の六方晶の集積度が高い方向と、プレス成形で得られるV字状のプレスパターンの頂点方向を一致させてプレス成形を実施することで、プレス成形時にV字状のプレスパターンの頂点に割れが発生することはなく、プレス成形性に優れたチタン板を得ることが可能になることを見出し、本発明の完成に至った。
【0017】
また、チタン板の六方晶の集積度が高い方向の全伸びが20%以上であれば、プレス成形時にV字状のプレスパターンの頂点に割れが発生することがなく、プレス成形性に優れたチタン板を得ることが、より確実にできることも確認した。
【0018】
更には、チタン板のα相の平均結晶粒径が10〜200μmであれば、プレス成形時にV字状のプレスパターンの頂点に割れが発生することがなく、プレス成形性に優れたチタン板を得ることが、より確実にできることも確認した。
【0019】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて更に詳細に説明する。
【0020】
通常のチタン板1は、分塊圧延→熱間圧延→中間焼鈍→冷間圧延→最終焼鈍といった各工程間に、随時ブラスト、酸洗処理を入れて製造されるが、本発明は、これらの圧延、焼鈍を終えたチタン板1に対し、プレス成形で、V字状のプレスパターン2を形成する方法を発明の対象とする。
【0021】
(プレスパターンの形成方向)
図1は、本発明の一実施形態を示す略図であり、チタン板1にV字状のプレスパターン2(図1は説明のための概略図であり、詳細なプレスパターンは図3を参照。)を形成する方法を例示する。図面中、両方向矢印で示すA方向は、チタン板1の板面上でのα相(六方晶)のC軸の集積度が高い方向を示し、B方向は、板面上でのその直交方向を示す。また、Xで示す矢印は、チタン板1の圧延時の圧延方向を示し、圧延方向とB方向は一致する。すなわち、チタン板1を圧延したときに、六方晶のC軸は、圧延方向(B方向)と直交する方向(A方向)に集積する。尚、図1は略図であり、実際のV字状のプレスパターン2は、3本のV字状の線ではなく、V字状の凹凸の繰返しである。
【0022】
本発明のチタン板のプレス成形方法では、チタン板1に形成されるV字状のプレスパターン2の頂点3の方向を、チタン板1の板面上でのα相(六方晶)のC軸の集積度が高いA方向に向けてプレス成形する。プレス成形したチタン板1は、B方向の方がA方向より耐力が低くなるので、B方向の板の流れ込みが増加し、成形性が向上する。
【0023】
(成分組成)
本発明では、チタン板の成分組成も発明の要点とするが、次にその成分組成を規定した理由を説明する。
【0024】
純チタンは、不可避的不純物としてC、H、O、N、Fe等を微量に含有し、残部がTiであるが、本発明では、その不可避的不純物の中でも含有量が比較的多く、機械的性質に影響を及ぼすFeとOの含有量の上限を規定した。
【0025】
Feの含有量が0.15質量%を超えて多くなりすぎると、強度が大きくなりすぎてチタン板のA方向の伸びが低下してしまい、プレス成形性が劣化する。従って、Feの含有量の上限は0.15質量%とする。尚、Feの含有量の好ましい上限は0.10質量%であり、より好ましい上限は0.07質量%である。
【0026】
Oの含有量が0.15質量%を超えて多くなりすぎると、強度が大きくなりすぎてチタン板のA方向の伸びが低下してしまい、プレス成形性が劣化する。従って、Oの含有量の上限は0.15質量%とする。尚、Oの含有量の好ましい上限は0.10質量%であり、より好ましい上限は0.07質量%である。
【0027】
(A方向の全伸び)
また、本発明では、チタン板のA方向(六方晶のC軸の集積度が高い方向)の全伸びを20%以上とすることが好ましい。チタン板のA方向の全伸びが20%未満であると、プレス成形性が劣化する。このチタン板のA方向の全伸びは、25%以上とすることがより好ましく、30%以上とすることが更に好ましい。
【0028】
(α相の平均結晶粒径)
本発明では、更に、チタン板のα相の平均結晶粒径が10〜200μmであることが好ましい。α相の平均結晶粒径は、大きいほどプレス成形時の変形双晶の頻度を増加させ、チタン板の全伸びが増加し、成形性が向上する。しかしながら、その平均結晶粒径が大きくなりすぎると、成形品の成形後の肌荒れ発生の原因となる。
【0029】
α相の平均結晶粒径のより好ましい下限は20μm、更に好ましい下限は30μmである。一方、より好ましい上限は175μm、更に好ましい上限は150μmである。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0031】
本実施例では、まず、CCIM(コールドクルーシブル誘導溶解法)により表1に示す含有量でFe並びにOを含有するチタン鋳塊を鋳造した。残部はTiおよびC、H、N、等の不可避的不純物である。鋳塊の大きさはφ100mmの円柱形で、10Kgである。この鋳塊を用いて分塊圧延を行い、その後は放冷して厚み45mmの板形状の分塊圧延材を得た。更に、熱間圧延を実施し、スケール除去を行い厚み約5mmの熱延板を得た。
【0032】
次いで、大気炉にて、700℃で5分間加熱してから空冷する焼鈍処理(中間焼鈍)を行った後、スケール除去を行った。次に、冷間圧延率89%の冷間圧延を行った後、大気炉にて、800℃で3分間加熱してから空冷する焼鈍処理(最終焼鈍)を行い、スキンパスを実施し、スケール除去を行って厚み0.3mmのチタン板を製造した。
【0033】
これらの圧延、焼鈍を終えたチタン板に対し、No.1〜3では、チタン板に形成されるV字状のプレスパターンの頂点方向を、六方晶のC軸の集積度が高い方向、すなわち圧延方向とは直交する圧延垂直方向(A方向)に向けてプレス成形した。一方、No.4,5では、チタン板に形成されるV字状のプレスパターンの頂点方向を、六方晶のC軸の集積度が高い方向とは直交する方向、すなわち圧延方向(B方向)に向けてプレス成形した。
【0034】
プレス成形を終えた各チタン板の金属組織の観察・測定と、プレス成形性の評価を夫々下記の要領で行った。また、A方向(六方晶のC軸の集積度が高い方向)の全伸びと強度についても併せて測定した。
【0035】
本実施例では、電界放出型走査顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope:FESEM)(日本電子社製、JSM5410)に、後方錯乱電子回析像(Electron Back Scattering(Scattered) Pattern:EBSP)システムを搭載した結晶方位解析法によって金属組織の観察・測定を実施した。この測定方法を用いたのは、EBSP法は他の測定方法と比較して高分解能であり、高精度な測定ができるためである。まず、測定原理について説明する。
【0036】
EBSP法は、FESEMの鏡筒内にセットした試料に電子線を照射してスクリーン上にEBSPを投影する。これを高感度カメラで撮影して、コンピュータに画像として取り込む。この画像を解析して、既知の結晶系を用いたシミュレーションによるパターンとの比較によって、結晶の方位が決定される。算出された結晶の方位は3次元オイラー角として、位置座標(x、y)などと共に記録される。このプロセスが全測定点に対して自動的に行われるので、測定終了時には数万〜数十万点のデータを得ることができる。
【0037】
このように、EBSP法には、X線回析法や透過電子顕微鏡を用いた電子線回析法よりも、観察視野が広く、数百個以上の多数の結晶粒に対する各種情報を、数時間以内で得ることができる利点がある。また、結晶粒毎の測定ではなく、指定した領域を一定間隔で走査して測定するために、測定領域全体を網羅した上記多数の測定ポイントに関する、上記各情報を得ることができる利点もある。尚、これらFESEMにEBSPシステムを搭載した結晶方位解析法の詳細は、神戸製鋼技報/Vol.52 No.2(Sep.2002)P66−70などに詳細に記載されている。
【0038】
<α相の平均結晶粒径>
α相(結晶粒)の平均結晶粒径については、チタン板の1mm×1mmの平面内に存在する結晶粒のうち、そのサイズが上位100個のα相の平均結晶粒径について、前記した測定により得た。この測定は、前記したように、FESEMにEBSPシステムを搭載した結晶方位解析法を用いて、チタン板の表面に平行な平面であって、且つ、板厚方向の1/4t部の集合組織を測定することで実施した。具体的には、チタン板の圧延面表面を機械研磨し、更にバフ研磨に次いで電解研磨を行って表面を調整した試料を準備した。その後、日本電子社製FESEM(JEOL JSM 5410)を用いて、EBSPによる測定を行った。EBSP測定・解析システムは、EBSP:TSL社製のOIM(Orientation Imaging Microscopy)を用いた。
【0039】
チタン板の測定範囲は、その平面のうち1mm×1mmの範囲とし、測定ピッチは縦横1μmピッチとした。チタン板のα相のサイズは平均50μmであると想定され、この測定で1mm×1mmの範囲に存在する全てのα相を、観察・測定することができる。この範囲で測定することができたα相のうち、サイズが上位100個の結晶粒を抽出して観察を行い、(Σx)/100という式からα相の平均結晶粒径を求め出した。尚、この式でxは、夫々の測定した各α相の結晶粒径を示す。
【0040】
<A方向の全伸びと、引張強度の測定>
チタン板のA方向の全伸びを測定し、参考試験としてチタン板のA方向の引張強度についても測定した。
【0041】
チタン板のA方向の全伸びについては、製造した各チタン板からJISZ2201に規定される13号試験片を作製し、この試験片について、JISZ2241に準拠する引張試験を行うことで求めた。この全伸びは、標点距離を50mmとし、引張試験での引張破断後に試験片を突き合わせて標点距離を測定することで求めた。
【0042】
また、引張強度は、引張試験後A方向の引張強度(TS)を測定して求めた。尚、試験速度(引張試験での歪み速度)は、0.3mm/minとした。
【0043】
<プレス成形性>
プレス成形性については、図3に示すような、V字形の溝を設けたプレート式熱交換器の熱交換部分をプレス成形することを模擬したプレス成形金型を用いてチタン板(試験体)のプレス成形を実施し、その評価を行った。プレス成形金型は、図3に示すように、成形部の大きさが100mm×100mmで、その表面には、ピッチ10mm、最大高さ4mmの平面V字形の平行する稜線部が6本形成されている。その各稜線部のR形状は、図3(a)の上から下に向かって順に、R=0.4、1.8、0.8、1.0、1.4、0.6の計6種類である。
【0044】
この成形金型を用いて8ton油圧プレス機によってプレス成形を実施した。具体的には、各試験体の表裏面に動粘度34mm/s(40℃)のプレス油を塗布し、各試験体を下金型の上面に配置し、そのフランジ部を板押さえで拘束した後、プレス速度1mm/s、押し込み深さ3.8mmの条件でプレス成形を実施した。プレス成形性の評価は、プレス成形後に認められる割れの数で評価した。具体的な評価方法を以下に説明する。
【0045】
プレス成形後の各試験体の図3(a)に示す稜線部と、測定位置A、B、C、C´、D、Eの一点鎖線との交点計36箇所について、割れの有無を目視で観察した。尚、測定位置C´は、図3(b)に示すように、隣接する稜線部の間に位置する谷部である。
【0046】
この目視において、割れの起点となる測定位置A、C、C´、Eについては、割れもくびれも認められなければ2点、くびれが認められれば1点、割れが認められれば0点とし、他の測定位置B、Dについては、割れもくびれも認められなければ1点、くびれが認められれば0.5点、割れが認められれば0点とし、更にその各点数に加工Rの逆数を掛けて割れの状態を数値化し、その合計値を求めた。その合計値を、完全に割れ、くびれが認められない場合を100として規格化した後、温度(T)、潤滑油の粘度(μ)、試験体の板厚(t)に依存する関数F(T,μ,t)、並びに、プレス金型の稜線の角度(α)、ピッチ(p)に依存する関数G(α,p)を掛け合わせて、成形性スコアとして算出した。尚、F並びにGは0〜1の値である。
【0047】
以上の成形性スコアの算出方法は、下記式によって表すことができる。
成形性スコア=F×G×ΣE(ij)/R(j)/(ΣA,C,C´,E 2/R(j)+ΣB,D 1/R(j))×100
この式において、A、C、C´、Eの場合は、E(ij)=1.0×(割れくびれなし:2、くびれ:1、割れ0)として、また、B、Dの場合は、E(ij)=0.5×(割れくびれなし:2、くびれ:1、割れ0)として算出した。また、本実施例では、温度(T)、潤滑油の粘度(μ)、試験体の板厚(t)、プレス金型の稜線の角度(α)、およびプレス金型の稜線のピッチ(p)を一定としたため、F×Gを便宜的に1として成形性スコアを算出した。
【0048】
この算出した成形性スコアが、75点以上を◎、50点以上75点未満を○、50点未満を×とし、◎と○の試料をプレス成形性に優れていると評価した。
【0049】
以上の試験結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
No.1およびNo.2は、FeおよびOの含有量を共に0.15質量%以下とし、チタン板に形成されるV字状のプレスパターンの頂点方向を、六方晶のC軸の集積度が高い方向、すなわち圧延方向とは直交する方向(A方向)に向けてプレス成形した発明例である。
【0052】
これに対し、No.3は、FeおよびOの含有量が上限を超える比較例、また、No.4,5は、チタン板に形成されるV字状のプレスパターンの頂点方向を、六方晶のC軸の集積度が高い方向とは直交する方向、すなわち圧延方向(B方向)に向けてプレス成形した比較例である。
【0053】
No.1,2の発明例では、プレス成形性試験で割れが発生しなかったのに対し、No.3〜5の本発明の要件のうち何らかの要件を満足しない比較例では、プレス成形性試験でV字状のプレスパターンの頂点等に割れが発生した。すなわち、本発明の要件を満足するプレス成形方法で、プレス成形したNo.1,2のチタン板は、プレス成形性に優れたチタン板であるということができる。
【0054】
尚、No.1,2は、A方向の全伸びが20%以上、α相の平均結晶粒径が10〜200μmであり、これらの要件を満足することでも、プレス成形性に優れたチタン板とすることができる。
【符号の説明】
【0055】
1…チタン板
2…プレスパターン
3…頂点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Feを0.15%以下(0%を含まない)、Oを0.15%以下(0%を含まない)含有するチタン板をプレス成形して、前記チタン板にV字状のプレスパターンを形成するチタン板のプレス成形方法であって、
前記チタン板のα相(六方晶)のC軸の集積度が高い方向をA方向、その直交方向をB方向としたとき、
V字状のプレスパターンの頂点方向をA方向として前記チタン板に前記プレスパターンを形成することを特徴とするチタン板のプレス成形方法。
【請求項2】
前記チタン板のA方向の全伸びが、20%以上であることを特徴とする請求項1記載のチタン板のプレス成形方法。
【請求項3】
前記チタン板のα相の平均結晶粒径が、10〜200μmであることを特徴とする請求項1または2記載のチタン板のプレス成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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