説明

チップレシーバ及び生垣バリカン

【課題】 刃部への着脱を容易とすると共に、装着時の脱却も確実に防止可能とする。
【解決手段】 チップレシーバ1は、固定部2の前後両端に、生垣バリカン20の刃部23の前端に係止可能な係止部5,5を有し、各係止部5に、生垣バリカン20のプロテクタ31に設けたツマミネジ33が螺合可能なナット6を備えている。よって、チップレシーバ1の一方の係止部5を刃部23の前端に係止させ、他方の係止部5をツマミネジ33で螺着すれば、チップレシーバ1は刃部23へ簡単に装着でき、容易に外れることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生垣バリカンに突設された刃部に装着され、刈り取られた枝葉を捕集するためのチップレシーバと、そのチップレシーバを備えた生垣バリカンとに関する。
【背景技術】
【0002】
生垣バリカンは、本体の前方に、例えば固定刃と、モータで駆動するクランク機構等の駆動機構により前後移動する可動刃とからなる直線状の刃部を突設し、その刃部によって生垣の上面や側面等の刈り込みが可能となっている。
このような生垣バリカンの刃部には、刈り取られた枝葉を捕集するチップレシーバが装着される場合がある。このチップレシーバは、刃部に沿って固定される固定部と、その固定部に延設される広板状の捕捉部とからなり、固定部をネジ等を利用して刃部に取り付けることで、刃部に装着可能としている。
【0003】
ネジによる固定では、工具が必要となってチップレシーバの着脱作業が面倒となり、ツマミネジを用いると刃部での突出部分が大きくなって作業の邪魔になる。そこで、特許文献1に記載のように、刃部への固定部を弾性材料によって横断面略コ字状に形成し、この固定部を刃部に沿って長手方向にスライドさせて刃部に係合させることで、チップレシーバをネジを用いることなく簡単に着脱可能とする工夫がなされている。
【0004】
【特許文献1】特許第3121580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、固定部の係合による構造では、チップレシーバが枝等に引っ掛かったりして長手方向等に大きな外力が加わると、チップレシーバが刃部から外れるおそれがあり、装着時の信頼性が高いとは言えない。
【0006】
そこで、請求項1及び3に記載の発明は、刃部への着脱が容易で、しかも装着時の脱却を確実に防止して信頼性も高いチップレシーバ及び生垣バリカンを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、チップレシーバとして、固定部の前後方向の一端に、刃部の先端へ前方から係止可能な係止部を設け、他端に、係止部の係止状態で生垣バリカンに螺着可能なネジ孔を設けたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、生垣バリカンが両刃タイプの場合の使い勝手を良くするために、固定部の前後両端に係止部とネジ孔とを夫々設けて前後方向に対称形状としたものである。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、生垣バリカンとして、本体側に、刃部の先端へ請求項1又は2に記載のチップレシーバの係止部を係止させた状態でチップレシーバの他端側のネジ孔と螺合可能なツマミネジを設けたことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3の目的に加えて、既存の生垣バリカンにも本発明のチップレシーバを容易に取付可能とするために、本体の前方にプロテクタを着脱可能に設けたものにあっては、プロテクタにツマミネジを設けた構成としたものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1及び3に記載の発明によれば、工具を用いなくてもチップレシーバを簡単に生垣バリカンに着脱でき、作業性に優れる。しかも、ツマミネジによってチップレシーバが確実に装着されるため、作業中にチップレシーバが外れるおそれがなく、装着時の信頼性も高くなる。また、ツマミネジはチップレシーバの後方のみで用いられるため、刃部側での突出部分とならず、作業の邪魔になることもない。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、生垣バリカンが両刃タイプの場合、利き腕や作業内容に合わせてチップレシーバの装着側を選択でき、使い勝手に優れる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加えて、プロテクタの交換のみで既存の生垣バリカンにも請求項1又は2のチップレシーバを容易に取付可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のチップレシーバの一例を示す説明図で、上が平面、中央が側面、下が底面を夫々示す。このチップレシーバ1は、後述する生垣バリカン20の刃部23に装着される固定部2と、その固定部2に延設される幅広の捕捉部3とからなり、全体が合成樹脂で形成される。
まず、固定部2は、図2にも示すように、細幅な帯板4の両端に、下方側を折り返したコ字状の係止部5,5を形成しており、係止部5の上側には、ネジ孔を形成するナット6が一体に埋め込まれている。係止部5の下側には、生垣バリカン20における刃部23の固定ネジ34(図4等)との干渉を回避するために、長手方向にスリット7を設けている。また、帯板4には、両端の係止部5,5を除いて複数の長孔8,8・・が断続的に穿設され、帯板4の一側縁には、刃部23の固定ネジ34の位置に対応した凸部9,9・・が形成されて、各凸部9の真下に、長孔8と連通する連通孔10が形成されている。
【0011】
次に、捕捉部3は、図3にも示すように、帯板4における凸部9側と反対の端縁に、帯板4と平行に形成される上板部11と、その上板部11からくの字状に上方へ折れ曲がる広板部12と、上板部11と広板部12との連結際でその裏面に突設され、上板部11と所定間隔をおいて重なる略同形状の下板部13とからなり、上板部11と広板部12とは、固定部2から離れるに従って長手方向の寸法が徐々に長くなる平面形状となっている。14,14・・は、広板部12の裏面で下板部13に連続するように短手方向に立設された補強リブである。
ここでは、チップレシーバ1が長手方向の中央を挟んで前後で対称形状となるように捕捉部3が形成され、固定部2においても、帯板4の長孔8や凸部9も前後で対称に配置されている。
【0012】
一方、図4は、本発明の生垣バリカンの一例を示す平面図で、生垣バリカン20は、図示しないモータを下向きに内蔵したモータハウジング21の下方に、モータの回転を直線運動に変換するクランク機構を内蔵した本体となる本体ハウジング22を一体に連結し、本体ハウジング22の前方(図4の右側)に、クランク機構で動作する直線状の刃部23を突設してなる。この刃部23は、図5にも示すように、上下一対の帯板状の固定板24,24と、その固定板24,24の間にあって左右の側縁に刃27,27・・を千鳥状に形成した帯板状の二枚の可動刃25,26とからなり、クランク機構によって可動刃25,26が互いに逆方向へ前後移動する。34,34・・は、可動刃25,26の長孔を貫通して固定板24,24同士を連結する固定ネジである。
【0013】
また、モータハウジング21の後面側と本体ハウジング22の後端上面との間には、トリガースイッチ29を設けた主ハンドル28が前後方向に形成され、本体ハウジング22の中央部には、本体ハウジング22の両側面に下端を連結されてモータハウジング21の上方を通る矩形枠状の補助ハンドル30が装着されている。
さらに、本体ハウジング22の前端には、前方斜め上方へ向けて板状のプロテクタ31が装着されている。このプロテクタ31の根元部分の下面中央に、チップレシーバ1の係止部5を差し込み可能な差し込み凹部32が形成され、プロテクタ31の当該部分には、差し込み凹部32に下端が突出するツマミネジ33が螺合されている。
【0014】
以上の如く構成されたチップレシーバ1及び生垣バリカン20において、チップレシーバ1を刃部23に装着する場合、まず、上側の固定板24の固定ネジ34の位置に凸部9を合わせて(図5)、チップレシーバ1を刃部23に沿わせ、そのままチップレシーバ1を刃部23側へ移動させて、上板部11と下板部13とで刃部23を挟むように刃部23側へ押し込む(図6)。すると、各固定ネジ34が連通孔10を通過して帯板4の長孔8内に納まる。このとき、チップレシーバ1の前方の係止部5は刃部23の前方にあり、後方の係止部5は刃部23の上面に乗り上がってプロテクタ31の差し込み凹部32の前方に位置している。なお、帯板4は、係止部5,5との前後の連結部分が他の部分よりも薄肉となっているため、容易に変形して刃部23上へ乗り上がる。
【0015】
次に、チップレシーバ1を後退させて、後方の係止部5をプロテクタ31の差し込み凹部32へ差し込むと、前方の係止部5が刃部23の先端に係止すると共に、後方の係止部5のナット6がツマミネジ33の下方に位置する。よって、そのままツマミネジ33を回転操作してナット6にねじ込むと、当該側の係止部5がプロテクタ31へネジ止めされ、チップレシーバ1の装着が完了する(図4,7)。この状態では、図4及び8に示すように、捕捉部3の上板部11が刃部23の上側半分を、下板部13が刃部23の下側半分を夫々覆い、刃部23の反対側の半分のみが露出する格好となる。なお、チップレシーバ1は、長手方向の前後に対称形状であるため、利き腕や作業内容によっては、刃部23の反対側に同様の手順で装着することもできる。
【0016】
よって、このようにチップレシーバ1を装着した生垣バリカン20を使用する場合は、例えば生垣の後方に糸を水平に張り、一方の手で主ハンドル28を、他方の手で補助ハンドル30を夫々保持して、可動刃25,26を動作させて刃部23の露出側へ生垣バリカン20を水平移動させれば、可動刃25,26によって生垣上面の枝葉が切断される。切断された枝葉は、チップレシーバ1の捕捉部3上で受けられるため、枝葉を飛散させることなくそのまま所定箇所へ運んで廃棄等することができる。
そして、チップレシーバ1を取り外す場合、ツマミネジ33を緩めて後方側の係止部5とプロテクタ31との連結を解除し、そのままチップレシーバ1を前方へスライドさせれば、前方側の係止部5が刃部23から離脱する。よって、チップレシーバ1を刃部23から簡単に取り外すことができる。
【0017】
このように上記形態のチップレシーバ1及び生垣バリカン20によれば、工具を用いなくてもチップレシーバ1を簡単に着脱でき、作業性に優れる。しかも、ツマミネジ33によってチップレシーバ1が確実に装着されるため、作業中にチップレシーバ1が外れるおそれがなく、装着時の信頼性も高くなる。また、ツマミネジ33はチップレシーバ1の後方のみで用いられるため、刃部23側での突出部分とならず、作業の邪魔になることもない。
特に、チップレシーバ1においては、固定部2の前後両端に係止部5とナット6とを夫々設けて前後方向に対称形状としているため、両刃タイプの生垣バリカン20に使用する場合、利き腕や作業内容に合わせてチップレシーバ1の装着側を選択でき、使い勝手に優れる。
さらに、生垣バリカン20では、プロテクタ31にツマミネジ33を設けているため、プロテクタ31の交換のみで既存の生垣バリカンにもチップレシーバ1を容易に取付可能となる。
【0018】
なお、チップレシーバは、必ずしも前後方向で対称形状にする必要はなく、生垣バリカンが片刃タイプであれば、固定部の一端に係止部のみを、他端にナットのみを夫々設けて刃部への装着側を固定しても良い。また、チップレシーバのネジ孔としてはナットを用いるものに限らず、チップレシーバに直接ネジ孔を形成することも可能である。
【0019】
一方、生垣バリカンでは、刃部やハウジング等の形状は上記形態に限らず、例えば刃部は1つの可動刃が固定刃に対して前後運動するタイプであっても本発明は適用可能である。また、ツマミネジはプロテクタに設けるものに限らず、本体ハウジングにツマミネジを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】チップレシーバの説明図である。
【図2】A−A線断面図である。
【図3】B−B線断面図である。
【図4】チップレシーバを装着した生垣バリカンの平面図である。
【図5】チップレシーバの装着手順を示す説明図である。
【図6】チップレシーバの装着手順を示す説明図である。
【図7】チップレシーバの装着手順を示す説明図である。
【図8】チップレシーバを装着した生垣バリカンの底面図である。
【符号の説明】
【0021】
1‥チップレシーバ、2‥固定部、3‥捕捉部、4‥帯板、5‥係止部、6‥ナット、11‥上板部、12‥広板部、13‥下板部、20‥生垣バリカン、22‥本体ハウジング、23‥刃部、24‥固定板、25,26‥可動刃、31‥プロテクタ、32‥差し込み凹部、33‥ツマミネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生垣バリカンの前方に突設される直線状の刃部に沿って着脱可能に固定される固定部と、その固定部に延設される広板状の捕捉部とからなるチップレシーバであって、
前記固定部の前後方向の一端に、前記刃部の先端へ前方から係止可能な係止部を設け、他端に、前記係止部の係止状態で前記生垣バリカンに螺着可能なネジ孔を設けたことを特徴とするチップレシーバ。
【請求項2】
固定部の前後両端に係止部とネジ孔とを夫々設けて前後方向に対称形状とした請求項1に記載のチップレシーバ。
【請求項3】
駆動機構を内蔵した本体の前方に直線状の刃部を突設した生垣バリカンであって、
前記本体側に、前記刃部の先端へ請求項1又は2に記載のチップレシーバの係止部を係止させた状態で前記チップレシーバの他端側のネジ孔と螺合可能なツマミネジを設けたことを特徴とする生垣バリカン。
【請求項4】
本体の前方にプロテクタを着脱可能に設けたものにあっては、前記プロテクタにツマミネジを設けた請求項3に記載の生垣バリカン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−14661(P2006−14661A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195848(P2004−195848)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】