説明

チップ型固体電解コンデンサ

【課題】 部材を削減し、溶接工数を低減して生産性の向上を可能にした固体電解コンデンサを提供すること。
【解決手段】 導出部2aの少なくとも一部が、コンデンサ素子3を実装する側の陽極端子8の接続面に対して垂直な方向に、扁平形状を有し、導出部2aにおける陽極端子8との接続面が、陰極部5における陰極端子9との接続面と同一面上にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、弁作用金属としてタンタル、ニオブなどを用いた固体電解コンデンサは、小型で静電容量が大きく、周波数特性に優れることから、CPUの電源回路などに広く使用されている。
【0003】
近年、携帯型電子機器の発展に伴い、特にチップ型固体電解コンデンサの小型化及び薄型化が進行している。さらに、構造の見直しによる生産性の向上や構成部材の削減による低コスト化が求められている。
【0004】
従来技術によるチップ型固体電解コンデンサの一例を説明する。図2は、従来のチップ型固体電解コンデンサの構成を説明する概略断面図である。
【0005】
図2に示すように、陽極体21は、タンタルやアルミニウム等の弁作用金属の微粉末を成型し焼結した、微小な多数の孔を備えた多孔質層を有した直方体状の焼結体である。陽極体21とともに、コンデンサ素子23の一部となる陽極リード22は、弁作用金属のワイヤー等からなり、陽極体21の任意の面から導出している導出部22aと陽極体21に埋没している埋没部22bからなる。陽極体21の多孔質層の表面には酸化皮膜による誘電体層(図示せず)を形成している。さらに、誘電体層の表面には固体電解質層24を形成し、固体電解質層24の表面には、陰極部25としてグラファイト層25a、銀ペースト層25bを順次形成し、コンデンサ素子23を構成している。
【0006】
導出部22aは、42アロイなどからなる導電性の支持部材26を介して、端子基板31に設けられている電極端子である陽極端子28に電気的に接続される。この場合、導出部22aと支持部材26の電気的な接続は、溶接等で行われ、支持部材26と陽極端子28の電気的な接続は、導電性接着剤27で行われる。
【0007】
また、陰極部25は、端子基板31に設けられている電極端子である陰極端子29に導電性接着剤27で電気的に接続される。その後、成形樹脂からなる外装30を設けてチップ型固体電解コンデンサ32が完成する。このような構成のチップ型固体電解コンデンサの例が、特許文献1の図2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−134362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のチップ型固体電解コンデンサにおいて、陽極リードは、支持部材を介して陽極端子と電気的に接続する構造をとっているため、部材が多くなり、溶接工数も増加し、生産性が低下するという課題がある。
【0010】
したがって本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、部材を削減し、溶接工数を低減して生産性の向上を可能にした固体電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、陽極リードの導出部の少なくとも一部が、コンデンサ素子を実装する側の陽極端子の接続面に対して垂直な方向に、扁平形状を有している。この扁平形状を有する導出部における陽極端子との接続面と、陰極部における陰極端子との接続面を同一平面上に設けることによって、支持部材を用いずに導出部を陽極端子に接続させることができる。この構造を用いることによって、支持部材を必要とせず、かつ溶接等の作業工数を低減することができるため、部材削減と生産性の向上とを図ったチップ型固体電解コンデンサの提供が可能になる。
【0012】
すなわち、本発明のチップ型固体電解コンデンサは、多孔質層を備えた弁作用金属からなる陽極体と、前記陽極体に埋没する埋没部と前記陽極体から導出する導出部を有する陽極リードと、前記陽極体の表面に順次形成された誘電体層、固体電解質層、陰極部とを備えたコンデンサ素子を有し、前記コンデンサ素子は前記導出部と電気的に接続する陽極端子と、前記陰極部と電気的に接続する陰極端子を備えるとともに、絶縁材料により全面を覆う外装を備える固体電解コンデンサであって、前記導出部の少なくとも一部が、前記コンデンサ素子を実装する側の前記陽極端子の接続面に対して垂直な方向に、扁平形状を有し、前記導出部における前記陽極端子との接続面が、前記陰極部における前記陰極端子との接続面と同一面上にあることを特徴とする。
【0013】
本発明のチップ型固体電解コンデンサは、前記導出部における前記陽極端子の接続面に対して垂直な方向の寸法が、前記埋没部の外形の寸法より大きいことが好ましい。
【0014】
本発明のチップ型固体電解コンデンサは、前記埋没部の少なくとも一部が、前記陰極端子における前記陰極部との接続面に対して平行な方向に、扁平形状を有することが好ましい。
【0015】
本発明のチップ型固体電解コンデンサは、前記弁作用金属がアルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のチップ型固体電解コンデンサにおいて、陽極リードの導出部が、コンデンサ素子を実装する側の陽極端子の接続面に対して垂直な方向に、扁平形状を有し、導出部における陽極端子との接続面と陰極部における陰極端子との接続面を同一平面上に設けることによって、支持部材を用いずに導出部を陽極端子に接続させることができる。この構造を用いることによって、支持部材を必要とせず、かつ溶接等の作業工数を低減することができるため、部材削減と生産性の向上とを図ったチップ型固体電解コンデンサの提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のチップ型固体電解コンデンサの構成を説明する概略断面図であり、図1(a)は、概略正面断面図、図1(b)は、コンデンサ素子を陽極リード側から見た概略側面図、図1(c)は、他の例のコンデンサ素子を陽極リード側から見た概略側面図。
【図2】従来のチップ型固体電解コンデンサの構成を説明する概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明のチップ型固体電解コンデンサの構成を説明する概略断面図であり、図1(a)は、概略正面断面図、図1(b)は、コンデンサ素子を陽極リード側から見た概略側面図、図1(c)は、他の例のコンデンサ素子を陽極リード側から見た概略側面図である。
【0020】
図1(a)に示すように、陽極体1は、従来技術と同様の構成であり、タンタルやアルミニウム等の弁作用金属の微粉末を成型し焼結した、微小な多数の孔からなる多孔質層を有した焼結体である。陽極体1とともに、コンデンサ素子3の一部となる陽極リード2は、弁作用金属のワイヤー等からなり、陽極体1の任意の面から導出している導出部2aと陽極体1に埋没している埋没部2bからなる。陽極体1の多孔質層の表面には酸化皮膜による誘電体層(図示せず)を形成している。さらに、誘電体層の表面には固体電解質層4を形成し、固体電解質層4の表面には、陰極部5としてグラファイト層5a、銀ペースト層5bを順次形成し、コンデンサ素子3を構成している。
【0021】
ここで、本発明の導出部2aは、陽極端子8の接続面に垂直な方向に、扁平形状を有している。さらに導出部2aにおける陽極端子8との接続面、すなわち端面と陰極部5における陰極端子9との接続面が同一平面上に位置している。この構造にすることによって、導出部2aを導電性接着剤7を介するだけで、陽極端子8に電気的に接続することができ、支持部材を削減し、溶接等の作業工数を低減することが可能になる。
【0022】
また、本発明のチップ型固体電解コンデンサは、支持部材を用いず、導出部2aと陽極端子8の接続が可能になるため、接続抵抗の低減等により接続部分の安定化が図られ、信頼性の向上が得られる。
【0023】
扁平形状を有する導出部における陽極端子8の接続面に対して垂直な方向の寸法は、支持部材を用いずに陽極端子8と接続させることが可能になることから、埋没部2bの外形の寸法より大きいことが好ましい。
【0024】
図1(b)や図1(c)に示すように、コンデンサ素子3における扁平形状を有する導出部2aの断面形状を、矩形状や台形状に加工している。このように扁平形状を有する導出部2aの断面形状は、特に制限はなく、陽極端子8側の端面が、陽極端子8に容易に接続できる形状であればよい。
【0025】
さらに陽極リード2を埋め込む面に対する、陽極リード2を導出する位置は、埋め込む面の中央から偏芯していても良く、扁平形状を有する導出部2aの陽極端子8と接続する端面が陽極端子8に接続可能な位置であれば、特に限定しない。なお、陽極リード2を埋め込む面とは、陽極リード2を導出させる面である、導出面と同じ面である。
【0026】
導出部2aを扁平形状に加工する方法としては、金型による潰し加工等を用いることができる。導出部2aを扁平形状に加工する工程は、陽極体1に埋め込む前に行っても、陽極体1の表面に誘電体層、固体電解質層4、陰極部5を形成した後に行ってもよい。前述の各層を形成させた後で扁平形状に加工する場合は、形成した層を傷めないようにハンドリングに注意が必要である。
【0027】
また、埋没部2bの形状は、特に限定はされないが、陽極体1の低背化を考慮した場合、陽極体1と埋没部2bの接触面積を大きくできることから、埋没部2bが、陰極端子9における陰極部5との接続面に対して平行な方向に、扁平形状を有することが好ましい。
【0028】
なお、導出部2aと陽極端子8の溶接による接続は、電気溶接、レーザ光による溶接等でもかまわない。
【0029】
陰極部5は、陰極端子9に導電性接着剤7等で電気的に接続される。その後、成形樹脂からなる外装10を設けてチップ型固体電解コンデンサ12が完成する。
【0030】
なお、本実施の形態では、陽極端子8と陰極端子9が設けられる端子基板11が、プリント基板タイプであるが、リードフレームを用いた端子基板タイプであっても適用可能である。
【0031】
このようにして、支持部材を必要とせず、かつ溶接等の作業工数を低減することができる、部材削減と生産性の向上とを図った本発明のチップ型固体電解コンデンサ12の提供が可能になる。
【0032】
なお、陽極体や陽極リードを構成する弁作用金属は、タンタル、アルミニウム、チタン、ニオブ、ジルコニウム、またはこれらの合金などから適宜選定してよい。
【0033】
また、誘電体層の厚みは、電解酸化の電圧によって適宜調整できる。
【0034】
なお、固体電解質層の形成には二酸化マンガンを用いても良いが、ポリチオフェンあるいはポリピロールなどの導電性高分子を用いると、さらに低等価直列抵抗(低ESR)となるチップ型固体電解コンデンサを得ることが可能になる。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1を詳細に説明する。
【0036】
まず、本実施例では、陽極リードと陽極体において弁作用金属であるタンタルを用いてコンデンサ素子を製造した。
【0037】
陽極リードとなる直径0.15mmのタンタル線をタンタル粉末に埋設し、プレス機で成型し、真空炉を用いて約1,200℃の温度で焼結し陽極体を得た。多孔質層を有した陽極体の形状は、縦1.38mm、横1.02mm、高さ0.68mmである。ここでは、縦1.38mmの辺と横1.02mmの辺で囲まれた1つの面を、陰極端子に接続する面とした。また、横1.02mmの辺と高さ0.68mmの辺で囲まれた一方の面から、陽極リードが導出している。
【0038】
次に、陽極体の表面に五酸化タンタルの酸化被膜による誘電体層を形成した。さらに、硝酸マンガンの溶液に浸漬した後、熱分解させて、二酸化マンガンによる固体電解質層を形成し、引き続き、グラファイト層および銀ペースト層による陰極部を形成して、コンデンサ素子を得た。
【0039】
つづいて、コンデンサ素子を固定治具にセットし、陽極リードの導出部を専用の金型を用いて両方向から挟むように潰し、陽極端子の接続面に垂直な方向に扁平形状を有する導出部を設けた。扁平形状を有する導出部における陽極端子の接続面に垂直な方向の寸法は、0.35mmであり、断面形状は矩形状にした。また、扁平形状を有する導出部における陽極端子と接続する端面は、金型形状が反映されており、陰極部における陰極端子との接続面と同一平面上に位置していることが確認された。これにより扁平形状を有する導出部は、陽極端子に容易に接続できると判断した。
【0040】
つぎに、銀フィラーを含んだ導電性接着剤を用いて、扁平形状を有する導出部の端面と陽極端子、陰極部と陰極端子を電気的に接続した。導電性接着剤の硬化は、180℃、20min間で行った。
【0041】
その後、成形樹脂としてガラスフィラー入りのエポキシ系樹脂を用いて熱成型し、外装を実施し、本発明のチップ型固体電解コンデンサを800個作製した。
【0042】
(実施例2)
本発明の実施例2では、陽極リードの導出部を扁平形状にする潰し加工を、陽極体を成型する前に実施したことと、扁平形状を有する導出部の断面形状を台形状にした以外は、実施例1と同様の条件でチップ型固体電解コンデンサを作製した。
【0043】
前述したように、本実施例では、陽極体に埋設する前に、扁平形状に潰し加工を行った陽極リードを用いたため、コンデンサ素子の陰極部などに対する取り扱いが容易になった。
【0044】
(比較例)
比較例では、図2の構造とした以外は、実施例1と同様の条件でチップ型固体電解コンデンサを作製した。
【0045】
これらを評価した結果、本発明のチップ型固体電解コンデンサは、支持部材を削減でき、従来のチップ型固体電解コンデンサの製造工程より単位時間の生産性を約5%向上させることが可能であった。
【0046】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態、及び実施例を説明したが、本発明は、この実施の形態、及び実施例に限られるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で部材や構成の変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当事者であれば、当然成し得るであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1、21 陽極体
2、22 陽極リード
2a、22a 導出部
2b、22b 埋没部
3、23 コンデンサ素子
4、24 固体電解質層
5、25 陰極部
5a、25a グラファイト層
5b、25b 銀ペースト層
7、27 導電性接着剤
8、28 陽極端子
9、29 陰極端子
10、30 外装
11、31 端子基板
12、32 チップ型固体電解コンデンサ
26 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質層を備えた弁作用金属からなる陽極体と、前記陽極体に埋没する埋没部と前記陽極体から導出する導出部を有する陽極リードと、前記陽極体の表面に順次形成された誘電体層、固体電解質層、陰極部とを備えたコンデンサ素子を有し、前記コンデンサ素子は前記導出部と電気的に接続する陽極端子と、前記陰極部と電気的に接続する陰極端子を備えるとともに、絶縁材料により全面を覆う外装を備える固体電解コンデンサであって、前記導出部の少なくとも一部が、前記コンデンサ素子を実装する側の前記陽極端子の接続面に対して垂直な方向に、扁平形状を有し、前記導出部における前記陽極端子との接続面が、前記陰極部における前記陰極端子との接続面と同一面上にあることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記導出部における前記陽極端子の接続面に対して垂直な方向の寸法が、前記埋没部の外形の寸法より大きいことを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記埋没部の少なくとも一部が、前記陰極端子における前記陰極部との接続面に対して平行な方向に、扁平形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記弁作用金属が、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンからなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−105925(P2013−105925A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249259(P2011−249259)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)