説明

チップ成形体整列装置及びチップ成形体整列方法

【課題】短時間でチップ成形体をセッター上に密に整列させることができるチップ成形体整列装置及びチップ成形体整列方法を提供する。
【解決手段】チップ成形体整列装置1では、通気性を有するセッター4に向けてエア噴出口12aからエアを噴出する。これにより、セッター4に置かれた時点でチップ成形体S同士が重なり合っていたとしても、エアによってチップ成形体Sがセッター4の表面から浮き、その間にエアが入り込むことで、チップ成形体Sを互いに分離した状態とすることができる。また、エアを用いてチップ成形体Sの整列を行うことにより、従来のようなプレート状整列治具を用いる場合と比べて短時間でチップ成形体Sをセッター4上に密に整列させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ成形体整列装置及びチップ成形体整列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサなどに代表されるチップ部品の製造工程では、グリーンシートの積層体をチップ化して得られるチップ成形体をセッターに供給し、セッターの表面でチップ成形体を整列させた状態で焼成炉による焼成を行っている。この工程では、焼成時のムラを抑制するため、セッター表面上でのチップ成形体同士の重なりや偏りを抑えることが重要となっている。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載の被熱処理物のさや詰め方法では、マトリクス状に貫通保持孔が設けられたプレート状整列治具を熱処理さや上にセットし、各貫通保持孔に被熱処理物を収容した後でプレート状整列治具を熱処理さやから引き上げることにより、熱処理さや上に被熱処理物を整列させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−132670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の方法では、マトリクス状の貫通保持孔のそれぞれに被熱処理物を収容するために時間がかかるという問題がある。この問題は、被熱処理物の寸法が小さくなるほど顕著になると考えられる。また、熱処理さや上での被熱処理物同士の間隔が貫通保持孔の間隔で決まるので、熱処理さや上に配列可能な被熱処理物の個数が制限されやすいという問題もある。
【0006】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、短時間でチップ成形体をセッター上に密に整列させることができるチップ成形体整列装置及びチップ成形体整列方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のため、本発明に係るチップ成形体整列装置は、チップ成形体をセッター上に整列させるチップ成形体整列装置であって、エアを噴出するエア噴出口が上方向きに設けられ、エア噴出口を塞ぐように通気性を有するセッターが載置されるエア噴出チャンバと、エア噴出チャンバに向けてエアを供給するエア供給部と、エア供給部のエア供給量を制御するエア制御部と、を備え、エア制御部は、エア噴出口から噴出するエアがセッター上のチップ成形体の周囲を流れる状態となったときにエア供給部によるエアの供給を停止することを特徴としている。
【0008】
このチップ成形体整列装置では、通気性を有するセッターに向けてエア噴出口からエアを噴出する。これにより、セッターに置かれた時点でチップ成形体同士が重なり合っていたとしても、エアによってチップ成形体がセッター表面から浮き、その間にエアが入り込むことで、チップ成形体を互いに分離した状態とすることができる。また、エアを用いてチップ成形体の整列を行うことにより、従来のようなプレート状整列治具を用いる場合と比べて短時間でチップ成形体をセッター上に密に整列させることができる。
【0009】
また、エアがエア噴出チャンバに供給されているときに、セッターの姿勢を揺動させる揺動制御部を更に備えたことが好ましい。これにより、より短時間でチップ成形体をセッター上に整列させることが可能となる。
【0010】
また、平面視において、セッターは矩形状をなしており、揺動制御部は、セッターの隅部を順次昇降させることが好ましい。このような揺動により、セッターの隅部に至るまでチップ成形体を分散できる。したがって、更に多くのチップ成形体をセッター上に整列させることができる。
【0011】
また、平面視において、セッターは矩形状をなしており、揺動制御部は、セッターの一辺を順次昇降させることが好ましい。このような揺動により、セッターの隅部に至るまでチップ成形体を分散できる。したがって、更に多くのチップ成形体をセッター上に整列させることができる。
【0012】
また、揺動制御部は、エア噴出チャンバへのエアの供給が開始されてから所定時間が経過した後にセッターの揺動を開始することが好ましい。この場合、セッターへのエア噴出が安定した後に揺動を行うので、チップ成形体の過剰な移動が抑制され、チップ成形体の分散の一層の均一化が図られる。
【0013】
また、セッターをエア噴出口の外周部分に対して押さえる押さえ枠を更に備えたことが好ましい。この場合、押さえ枠によってエア噴出中にセッターが動いてしまうことを防止できる。また、エアによって浮いたチップ成形体がセッターの外側に飛び出てしまうことも防止できる。
【0014】
また、セッターと押さえ枠との間を気密に封止する封止部を更に備えたことが好ましい。この場合、セッターの上面以外の方向にエアが流れることを防止できる。これにより、チップ成形体の分散速度を好適に確保できる。
【0015】
また、チップ成形体を供給口から一定量で供給するフィーダと、フィーダの供給口に対してセッターを一定速度で相対移動させる駆動制御部と、を更に備えたことが好ましい。このような構成により、セッター上にある程度分散した状態でチップ成形体を置くことが可能となるので、より短時間でチップ成形体をセッター上に整列させることが可能となる。
【0016】
また、本発明に係るチップ成形体整列方法は、チップ成形体をセッター上に整列させるチップ成形体整列方法であって、エア噴出チャンバのエア噴出口を塞ぐように通気性を有するセッターを載置し、当該セッター上に複数のチップ成形体を供給するチップ供給工程と、エア噴出チャンバに向けてエアを供給し、エア噴出口から噴出するエアがセッター上のチップ成形体の周囲を流れる状態となったときにエアの供給を停止するエア供給工程と、を備えたことを特徴としている。
【0017】
このチップ成形体整列方法では、チップ供給工程において、通気性を有するセッターに複数のチップ成形体を供給し、エア供給工程において、セッター上のチップ成形体に向けてエア噴出口からエアを噴出する。これにより、セッターに置かれた時点でチップ成形体同士が重なり合っていたとしても、エアによってチップ成形体がセッター表面から浮き、その間にエアが入り込むことで、チップ成形体を互いに分離した状態とすることができる。また、エアを用いてチップ成形体の整列を行うことにより、従来のようなプレート状整列治具を用いる場合と比べて短時間でチップ成形体をセッター上に密に整列させることができる。
【0018】
また、エア供給工程において、エアがエア噴出チャンバに供給されているときに、セッターの姿勢を揺動させることが好ましい。これにより、より短時間でチップ成形体をセッター上に整列させることが可能となる。
【0019】
また、平面視において、セッターは矩形状をなしており、エア供給工程において、セッターの隅部を順次昇降させることが好ましい。このような揺動により、セッターの隅部に至るまでチップ成形体を分散できる。したがって、更に多くのチップ成形体をセッター上に整列させることができる。
【0020】
平面視において、セッターは矩形状をなしており、エア供給工程において、セッターの一辺を順次昇降させることが好ましい。このような揺動により、セッターの隅部に至るまでチップ成形体を分散できる。したがって、更に多くのチップ成形体をセッター上に整列させることができる。
【0021】
また、エア供給工程において、エア噴出チャンバへのエアの供給が開始されてから所定時間が経過した後にセッターの揺動を開始することが好ましい。この場合、セッターへのエア噴出が安定した後に揺動を行うので、チップ成形体の過剰な移動が抑制され、チップ成形体の分散の一層の均一化が図られる。
【0022】
また、エア供給工程において、エア噴出口の外周部分を押さえ枠によって押さえることが好ましい。この場合、押さえ枠によってエア噴出中にセッターが動いてしまうことを防止できる。また、エアによって浮いたチップ成形体がセッターの外側に飛び出てしまうことも防止できる。
【0023】
また、エア供給工程において、セッターと押さえ枠との間を気密に封止することが好ましい。この場合、セッターの上面以外の方向にエアが流れることを防止できる。これにより、チップ成形体の分散速度を好適に確保できる。
【0024】
また、チップ供給工程において、チップ成形体をフィーダの供給口から一定量で供給すると共に、フィーダの供給口に対してセッターを一定速度で相対移動させることが好ましい。このような構成により、セッター上にある程度分散した状態でチップ成形体を置くことが可能となるので、より短時間でチップ成形体をセッター上に整列させることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るチップ成形体整列装置及びチップ成形体整列方法によれば、短時間で多くのチップ成形体をセッター上に整列させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るチップ成形体整列装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したチップ成形体整列装置の制御機構を示すブロック図である。
【図3】チャンバ本体部の揺動の一例を示す図である。
【図4】チャンバ本体部の揺動の別の例を示す図である。
【図5】図1に示したチップ成形体整列装置を用いたチップ成形体整列方法を示す斜視図である。
【図6】図5の後続の工程を示す斜視図である。
【図7】図6の後続の工程を示す斜視図である。
【図8】セッター上のチップ成形体の初期状態を示す図である。
【図9】エア噴出中におけるセッター上のチップ成形体を示す図である。
【図10】エア噴出終了後におけるセッター上のチップ成形体を示す図である。
【図11】従来の方法におけるセッター上のチップ成形体の整列の様子を示す図である。
【図12】実施例におけるセッター上のチップ成形体の整列の様子を示す図である。
【図13】実施例に関する評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るチップ成形体整列装置及びチップ成形体整列方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明に係るチップ成形体整列装置の一実施形態を示す斜視図である。また、図2は、図1に示したチップ成形体整列装置の制御機構を示すブロック図である。図1及び図2に示すように、チップ成形体整列装置1は、設置板2と、エア噴出チャンバ3と、セッター4と、リニアフィーダ5と、制御部6とを備え、焼成前のチップ成形体S(図6参照)をセッター4上に整列させる装置として構成されている。
【0029】
チップ成形体Sは、セラミックシートの積層体をダイシング等によって個片化したものであり、焼成後のチップ部品における素子部に相当する部分である。本実施形態では、セッター4上に整列させるチップ成形体Sとして、例えば長さ0.4mm×幅0.2m×奥行き0.2mm(0402タイプ)のチップ部品に用いられるものを想定している。
【0030】
設置板2は、略長方形状をなしている。設置板2の上面には、エア噴出チャンバ3の幅に対応する2本のガイド11,11が設けられている。エア噴出チャンバ3は、チャンバ本体部12と、脚部13とを有している。チャンバ本体部12は、例えば扁平な直方体形状をなしている。チャンバ本体部12は、エア供給部14に接続され、エアの供給を受けるようになっている。
【0031】
また、チャンバ本体部12の上面には、矩形のエア噴出口12aが形成されており、エア噴出口12aの外周部分12bは、セッター4が載置される載置面となっている。したがって、エア供給部14から供給されたエアは、エア噴出口12aから載置面に載置されているセッター4に向けて噴出される。
【0032】
さらに、チャンバ本体部12の上面には、セッター4をエア噴出口12aの外周部分12bに対して押さえる略正方形状の押さえ枠15が設けられている。押さえ枠15は、その中央部分が略正方形状に開口すると共に、チップ成形体Sの高さに対して十分な高さを有し、例えばヒンジ等によってチャンバ本体部12の上面に開閉可能に取り付けられている。
【0033】
この押さえ枠15における押さえ面は、チャンバ本体部12の上面縁部を押さえる第1の押さえ面15aと、第1の押さえ面15aの内側でセッター4の上面縁部を押さえる第2の押さえ面15bとを有している(図8参照)。第2の押さえ面15bと、チャンバ本体部12におけるエア噴出口12aの外周部分12bとには、パッキン16,16がそれぞれ設けられている。したがって、押さえ枠15の閉状態において、第2の押さえ面15bとセッター4の上面との間の気密性、及びチャンバ本体部12とセッター下面との間の気密性が保たれるようになっている。
【0034】
一方、エア噴出チャンバ3の脚部13は、略正方形の板状をなし、設置板2のガイド11,11間に配置されている。これにより、エア噴出チャンバ3は、リニアフィーダ5から離間した始点位置と、リニアフィーダ5の下側に入り込む終点位置との間で、ガイド11,11に沿って設置板2上を移動可能となっている。エア噴出チャンバ3の駆動機構には、例えばエアシリンダを用いることができる。また、より精密な移動を行う場合には、ボールネジとサーボモータとを用いてもよい。
【0035】
ここで、上述したチャンバ本体部12は、脚部13の略中央に設けられた球面軸受17と、脚部13の四隅にそれぞれ設けられたエアシリンダ18及びロッド19とによって脚部13から所定の高さで支持されている。より具体的には、チャンバ本体部12は、球面軸受17によってチャンバ本体部12の下面中心を支点として揺動可能に支持され、チャンバ本体部12の下面四隅が自在継手によってロッド19の先端に取り付けられている。このような構成により、チャンバ本体部12は、ロッド19の昇降によって水平方向に対して揺動可能となっている。
【0036】
セッター4は、例えば多孔質のアルミナやジルコニア、ムライトによって略正方形状に形成され、通気性を有している。セッター4の寸法は、チャンバ本体部12のエア噴出口12aよりも一回り大きくなっており、セッター4をチャンバ本体部12の上面に載置することで、エア噴出口12aを塞ぐことが可能となっている。
【0037】
リニアフィーダ5は、ホッパー20内に収容された多数のチップ成形体Sを供給する部分である。リニアフィーダ5は、設置板2において、ガイド11,11の終点側に立設された台21上に設置され、制御部6による制御に基づいて、供給口22から一定量のチップ成形体Sをセッター4に向けて供給する。
【0038】
制御部6は、図2に示すように、機能的な構成要素として、エア制御部31と、チャンバ駆動制御部32と、チャンバ揺動制御部33と、フィーダ制御部34とを有している。
【0039】
エア制御部31は、エア供給部14からチャンバ本体部12に供給されるエアの供給量及び供給時間を制御する部分である。エアの供給量及び供給時間は予め設定されており、エア制御部31は、エア噴出口12aから噴出するエアがセッター4上のチップ成形体Sの周囲を流れる状態となったときにエアの供給を停止する。
【0040】
チャンバ駆動制御部32は、ガイド11,11に沿うエア噴出チャンバ3の移動を制御する部分である。チャンバ駆動制御部32は、始点位置と終点位置との間でエア噴出チャンバ3が一定の速度で移動するように、エア噴出チャンバ3の駆動機構を制御する。
【0041】
チャンバ揺動制御部33は、チャンバ本体部12の揺動を制御する部分である。より具体的には、チャンバ揺動制御部33は、エア供給部14からチャンバ本体部12にエアが供給されてから所定時間が経過した後、エアシリンダ18によるロッド19の昇降を開始する。
【0042】
ロッド19の昇降は、一のロッド19から時計回り又は反時計回りで順次昇降させ、図3に示すように、セッター4の隅部が隅部A,隅部B,隅部C,隅部Dの順で1箇所ずつ順次持ち上がるようにしてもよく、隣り合う2つのロッド19を時計回り又は反時計回りで順次昇降させ、図4に示すように、セッター4の辺が辺E,辺F,辺G,辺Hの順で順次持ち上がるようにしてもよい。
【0043】
なお、チャンバ本体部12の揺動角度は、例えばセッター4の上面が水平状態から5°〜15°の範囲で傾く程度であることが好ましい。また、揺動の開始は、エアの供給開始時を0とし、エアの供給終了時を100とした場合に、例えば40以降〜80以降となるタイミングで行うことが好ましい。例えばエアの供給時間が5秒である場合、揺動の開始は2秒以降〜4秒以降とすることが好ましい。
【0044】
フィーダ制御部34は、リニアフィーダ5によるチップ成形体Sの供給を制御する部分である。フィーダ制御部34は、チャンバ駆動制御部32によるエア噴出チャンバ3の移動と協働し、供給口22の下方を一定速度で通過していくセッター4に一定量のチップ成形体Sが供給されるようにリニアフィーダ5を制御する。
【0045】
続いて、上述したチップ成形体整列装置1によるチップ成形体整列方法について説明する。
【0046】
まず、図5に示すように、エア噴出チャンバ3が始点位置に位置している状態で、エア噴出口12aを塞ぐようにセッター4をセットする。次に、押さえ枠15を閉じ、セッター4をエア噴出口12aの外周部分12bに対して押さえる。押さえ枠15を閉じた後、図6に示すように、エア噴出チャンバ3を始点位置から終点位置に向けて一定速度で移動させると共に、供給口22の下方を一定速度で通過していくセッター4に向けてリニアフィーダ5から一定量のチップ成形体Sを供給する。
【0047】
そして、図7に示すように、エア噴出チャンバ3が終点位置まで到達した後、エア噴出チャンバ3の移動及びチップ成形体Sの供給を停止する。これにより、図8に示すように、セッター4上には、ある程度分散した状態でチップ成形体Sが載置される。
【0048】
チップ成形体Sの載置を終えた後、エア供給部14からエア噴出チャンバ3に向けてエアの供給を開始する。これにより、チャンバ本体部12のエア噴出口12aから噴出したエアが通気性のセッター4を通り、セッター4上のチップ成形体Sが浮き上がりながら周囲に分散することとなる。また、エアの供給を開始してから所定時間が経過した後、チャンバ本体部12の揺動を開始する。
【0049】
この後、チップ成形体Sの分散が進行し、図9に示すように、エア噴出口12aから噴出するエアがセッター4上のチップ成形体Sの周囲を流れる状態となったときにエア供給部14によるエアの供給を停止する。これにより、図10に示すように、セッター4上に均一な状態でチップ成形体Sが整列する。
【0050】
以上説明したように、チップ成形体整列装置1では、通気性を有するセッター4に向けてエア噴出口12aからエアを噴出する。これにより、セッター4に置かれた時点でチップ成形体S同士が重なり合っていたとしても、エアによってチップ成形体Sがセッター4の表面から浮き、チップ成形体S同士の間にエアが入り込むことで、チップ成形体Sを互いに分離した状態とすることができる。また、エアを用いてチップ成形体Sの整列を行うことにより、従来のようなプレート状整列治具を用いる場合と比べて短時間でチップ成形体Sをセッター4上に密に整列させることができる。
【0051】
また、チップ成形体整列装置1では、エア噴出チャンバ3へのエアの供給が開始されてから所定時間が経過した後に、チャンバ本体部12の隅部又は一辺を揺動するようになっている。エア噴出中にチャンバ本体部12を揺動することにより、チップ成形体Sの分散が促進され、より短時間でチップ成形体Sをセッター4上に整列させることが可能となる。また、揺動の開始をエア供給の開始時から遅らせることで、セッター4へのエア噴出が安定した後に揺動が行われることとなり、チップ成形体Sの過剰な移動が抑制される。これにより、チップ成形体Sの分散の一層の均一化が図られる。
【0052】
また、チップ成形体整列装置1では、セッター4をエア噴出口12aの外周部分12bに対して押さえる押さえ枠15を備えている。この場合、押さえ枠15によってエア噴出中にセッター4が動いてしまうことを防止できる。また、エアによって浮いたチップ成形体Sがセッター4の外側に飛び出てしまうことも防止できる。さらに、セッター4と押さえ枠15との間にはパッキン16が設けられている。このため、セッター4の上面以外の方向にエアが流れることを防止でき、チップ成形体Sの分散速度を好適に確保できる。
【0053】
また、チップ成形体整列装置1では、チップ成形体Sを供給口22から一定量で供給するリニアフィーダ5と、リニアフィーダ5の供給口22に対してセッター4を一定速度で相対移動させるチャンバ駆動制御部32とを更に備えている。このような構成により、セッター4上にある程度分散した状態でチップ成形体Sを置くことが可能となるので、より短時間でチップ成形体Sをセッター4上に整列させることが可能となる。
【0054】
続いて、本実施例に関する評価実験について説明する。
【0055】
この評価試験では、比較例として、まず、リニアフィーダ5を使わずにチップ成形体Sをセッター4の中央に山積みし、手動でセッター4を揺動させることによってチップ成形体Sの分散をおこなった。図11は、その結果を示す図である。同図に示すように、比較例では、チップ成形体Sが均一に分散されておらず、セッター4の中央付近(山積みされていた部分)ではチップ成形体Sが重なり合っている一方で、セッター4の縁部に向かうほどチップ成形体Sがまばらになっていた。また、この比較例では、約38000個のチップ成形体Sを図11の状態に分散させるまでの時間は、およそ150秒であった。
【0056】
一方、実施例では、上記実施形態と同様に、リニアフィーダ5を用いてチップ成形体Sをセッター4にある程度分散させた状態とし、その後、エアによってチップ成形体Sの分散を行った。図12は、その結果を示す図である。同図に示すように、実施例では、チップ成形体Sがセッター4全体に均一に分散されていた。また、この実施例では、比較例と同じ形状寸法のセッター4に対して約60000個のチップ成形体Sを図12の状態に分散させるまでの時間は、およそ5秒〜10秒であった。
【0057】
次に、実施例について、図13に示すように、チップ成形体Sの載置態様、エア流量、揺動の有無といった条件を変えながら、チップ成形体Sの整列が完了するまでの時間を評価した。より具体的には、条件1では、リニアフィーダ5を用いずにセッター4上にチップ成形体Sを山積みにし、揺動は行わずにエア流量を初期時から整列完了まで325L/minで一定とした。
【0058】
また、条件2では、リニアフィーダ5を用いてセッター4上にチップ成形体Sを載置し、揺動を行いながらエア流量を初期時から整列完了まで250L/minで一定とした。条件3では、リニアフィーダ5を用いてセッター4上にチップ成形体Sを載置し、エア流量を初期時に300L/minとした後、揺動を行いながら一定の割合でエア流量を減少させた。条件4では、リニアフィーダ5を用いてセッター4上にチップ成形体Sを載置し、揺動を行いながらエア流量を開始時から3秒間250L/minで一定とし、その後一定の割合でエア流量を減少させた。
【0059】
その結果、条件1ではチップ成形体Sの整列完了時間(エア噴出口12aから噴出するエアがセッター4上のチップ成形体Sの周囲を流れる状態になるまでの時間)は10秒であったのに対し、条件2〜4ではチップ成形体Sの整列完了時間は5秒であった。また、整列完了までに要するエア供給量は、条件3が最も少ないという結果となった。
【符号の説明】
【0060】
1…チップ成形体整列装置、3…エア噴出チャンバ、4…セッター、5…リニアフィーダ、12a…エア噴出口、12b…外周部分、14…エア供給部、15…押さえ枠、16…パッキン(封止部)、22…封止部、31…エア制御部、32…チャンバ駆動制御部、33…チャンバ揺動制御部、S…チップ成形体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ成形体をセッター上に整列させるチップ成形体整列装置であって、
エアを噴出するエア噴出口が上方向きに設けられ、前記エア噴出口を塞ぐように通気性を有するセッターが載置されるエア噴出チャンバと、
前記エア噴出チャンバに向けてエアを供給するエア供給部と、
前記エア供給部のエア供給量を制御するエア制御部と、を備え、
前記エア制御部は、前記エア噴出口から噴出するエアが前記セッター上の前記チップ成形体の周囲を流れる状態となったときに前記エア供給部による前記エアの供給を停止することを特徴とするチップ成形体整列装置。
【請求項2】
前記エアが前記エア噴出チャンバに供給されているときに、前記セッターの姿勢を揺動させる揺動制御部を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のチップ成形体整列装置。
【請求項3】
平面視において、前記セッターは矩形状をなしており、
前記揺動制御部は、前記セッターの隅部を順次昇降させることを特徴とする請求項2記載のチップ成形体整列装置。
【請求項4】
平面視において、前記セッターは矩形状をなしており、
前記揺動制御部は、前記セッターの一辺を順次昇降させることを特徴とする請求項2記載のチップ成形体整列装置。
【請求項5】
前記揺動制御部は、前記エア噴出チャンバへの前記エアの供給が開始されてから所定時間が経過した後に前記セッターの揺動を開始することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項記載のチップ成形体整列装置。
【請求項6】
前記セッターを前記エア噴出口の外周部分に対して押さえる押さえ枠を更に備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のチップ成形体整列装置。
【請求項7】
前記セッターと前記押さえ枠との間を気密に封止する封止部を更に備えたことを特徴とする請求項6記載のチップ成形体整列装置。
【請求項8】
前記チップ成形体を供給口から一定量で供給するフィーダと、
前記フィーダの供給口に対して前記セッターを一定速度で相対移動させる駆動制御部と、を更に備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載のチップ成形体整列装置。
【請求項9】
チップ成形体をセッター上に整列させるチップ成形体整列方法であって、
エア噴出チャンバのエア噴出口を塞ぐように通気性を有するセッターを載置し、当該セッター上に複数のチップ成形体を供給するチップ供給工程と、
前記エア噴出チャンバに向けてエアを供給し、前記エア噴出口から噴出するエアが前記セッター上の前記チップ成形体の周囲を流れる状態となったときに前記エアの供給を停止するエア供給工程と、を備えたことを特徴とするチップ成形体整列方法。
【請求項10】
前記エア供給工程において、前記エアが前記エア噴出チャンバに供給されているときに、前記セッターの姿勢を揺動させることを特徴とする請求項9記載のチップ成形体整列方法。
【請求項11】
平面視において、前記セッターは矩形状をなしており、
前記エア供給工程において、前記セッターの隅部を順次昇降させることを特徴とする請求項10記載のチップ成形体整列方法。
【請求項12】
平面視において、前記セッターは矩形状をなしており、
前記エア供給工程において、前記セッターの一辺を順次昇降させることを特徴とする請求項10記載のチップ成形体整列方法。
【請求項13】
前記エア供給工程において、前記エア噴出チャンバへの前記エアの供給が開始されてから所定時間が経過した後に前記セッターの揺動を開始することを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項記載のチップ成形体整列方法。
【請求項14】
前記エア供給工程において、押さえ枠によって前記セッターを前記エア噴出口の外周部分に対して押さえることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項記載のチップ成形体整列方法。
【請求項15】
前記エア供給工程において、前記セッターと前記押さえ枠との間を気密に封止することを特徴とする請求項14記載のチップ成形体整列方法。
【請求項16】
前記チップ供給工程において、前記チップ成形体をフィーダの供給口から一定量で供給すると共に、前記フィーダの供給口に対して前記セッターを一定速度で相対移動させることを特徴とする請求項9〜15のいずれか一項記載のチップ成形体整列方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−179725(P2011−179725A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43101(P2010−43101)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】