説明

チップ抵抗器の製造方法

【課題】本発明は、製造工程における抵抗値の安定化を図ることで歩留まりを向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明のチップ抵抗器の製造方法は、シート基板1上に1次分割部1aを跨いで抵抗層2を形成する工程と、抵抗層2上であって複数の1次分割部1aにおいて隣接する1次分割部1a間に第1のレジスト層3と、抵抗層2上であって複数の1次分割部1aを跨いで第2のレジスト層4とを形成する工程と、第1のレジスト層3と第2のレジスト層4とをめっきレジストとして抵抗層2に電解めっきによる電極層5を形成する工程と、電極層5が形成されたシート基板1を熱処理する工程と、熱処理の工程の後に抵抗値修正を行う工程と、抵抗値修正を行った後にシート基板1を複数の1次分割部1aと複数の2次分割部1bとで分割する工程を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ抵抗器、特に抵抗値が100mΩ以下の低抵抗で、所謂0603(縦0.6mm、横0.3mm、高さ0.23mm程度の外形寸法)サイズや、0402(縦0.4mm、横0.2mm、高さ0.13mm程度の外形寸法)サイズ、またはそれ以下の微小サイズのチップ抵抗器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ抵抗器は、多くの種類の電子機器に用いられている。チップ抵抗器の用途の一つに、電流測定が挙げられる。この電流測定の方法は、測定したい電流線に対して電気的に直列にチップ抵抗器を接続させて、このチップ抵抗器の電圧降下を測定することで行うことができる。このようなチップ抵抗器は通常のチップ抵抗器に比べ、抵抗値が低いことが求められている。
【0003】
抵抗値を低くするためには、抵抗層の抵抗値を下げるだけではなく、電極の抵抗値を下げる必要がある。電極の抵抗値を下げるためには、電極の材料として、比抵抗の低い金属を用いればよい。そのような一例として、電極をAgによる電解めっきで形成する方法がある。このような電極は、導体と樹脂の混合ペーストを焼成して得られる電極などに比べ、抵抗値を低くすることができる。
【0004】
このようなチップ抵抗器の具体的な製造方法を簡単に説明する。シート状の基板の上面にAgPdからなる抵抗層を形成した後に、AgPd上にレジストを形成する。その後に電解めっきを行うことで、レジストに覆われていない抵抗層上に電極層を形成する。この電極層の成分はAgである。この後に、レジストを剥離し、抵抗層にトリミングを施して抵抗値修正を行い、その後に露出している抵抗体を覆うように保護膜を形成する。その後の工程は、シート状基板を分割して端面電極を形成し、さらに、バレルめっきによりニッケルめっき層とスズめっき層を形成するというものである(特許文献1参照。)。
【0005】
また、めっき層を形成することによって生じる歪みを除去することを目的としてめっき層の形成後に熱処理を行う技術も、知られている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−194399号公報
【特許文献2】特開平2−17603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電流の測定に用いる抵抗器は、その抵抗値が小さければ小さいほど、その抵抗器が消費する電力を小さくすることができる。一方、抵抗値が小さいほど電圧降下も小さくなり、電圧を測定する精度の向上が求められる。従って、抵抗器による電力の消費と測定できる電圧精度との釣合いを考えて抵抗値を設定することが好ましい。特に、大電流を測定する場合には、測定用の抵抗器による電力消費を抑えて、この抵抗器による発熱を少なくするために、より低い抵抗値のチップ抵抗器が求められるようになってきた。
【0008】
このように、より低抵抗にすることにより、相対的に電極の抵抗値が抵抗器全体に占める割合が増加してくる。従って、従来ならば問題とならなかった電極に起因する抵抗値についての事象が存在することがわかった。
【0009】
そのような事象として、抵抗値の変動がある。従来技術において、抵抗値修正を行うことで、一度は抵抗値を所望の範囲にすることができる。しかし、最終的なチップ抵抗器になった際の抵抗値が、抵抗値修正を行った抵抗値から、変動し、しかも変動にバラツキがあるという事象である。これは、抵抗値修正を行ったあとに保護膜を形成する際に、保護膜を焼成したり、保護膜の凝固を促進するために200〜300℃程度の環境下におく場合に抵抗値が変動してしまうことによるものである。抵抗値の変動が一定であれば、変動分を見越して抵抗値修正を行うことで最終的なチップ抵抗器の抵抗値を所望の範囲にすることが可能となる。しかし、変動にバラツキがあるとそのような方法を採ることもできず、最終的な抵抗値が所望の範囲に収まらず、チップ抵抗器の製造後の検査工程により工程不良品として扱われることになり、歩留まりを低下させてしまう。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、製造工程における抵抗値の安定化を図ることで歩留まりを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を有している。
【0012】
請求項1に記載の発明は、シート基板を分割して複数のチップ抵抗器を得るチップ抵抗器の製造方法であって、前記シート基板は直線で平行な複数の1次分割部と、前記複数の1次分割部に対して直角に交わる直線である複数の2次分割部とで分割されるものであり、前記シート基板上に前記複数の1次分割部を跨いで抵抗体ペーストを印刷して抵抗層を形成する工程と、前記抵抗層上であって前記複数の1次分割部において隣接する1次分割部間に第1のレジスト層と、前記抵抗層上であって前記複数の1次分割部を跨いで第2のレジスト層とを形成する工程と、前記抵抗層における前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層に被覆されていない部分に電解めっきによる電極層を形成する工程と、前記電極層が形成されたシート基板を熱処理する工程と、前記熱処理の工程の後に抵抗値修正を行う工程と、前記抵抗値修正を行った後に前記シート基板を前記複数の1次分割部と前記複数の2次分割部とで分割する工程を備えたチップ抵抗器の製造方法である。
【0013】
請求項1に記載の発明は、製造工程中の抵抗値を安定にすることで歩留まりを向上させるという作用効果を有する。
【0014】
この作用効果について、以下、説明する。
【0015】
抵抗層はいわゆる厚膜工法で形成されており、その表面は凹凸が大きい。その上に電解めっきによる電極層を形成した際に、めっき層と抵抗層は単に接触しているだけであり、その密着力は、非常に低抵抗になる分野においては十分とは言えないものである。
【0016】
しかし、請求項1に記載の発明のように、電解めっきによる電極層の形成後に熱処理を行うことで、抵抗層と電極層間に拡散が生じ、両者の密着性が向上する。これにより、高温環境下におかれても、抵抗層と電極層との密着が強固であるので、抵抗値の変動が小さくなるのである。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記第1のレジスト層および前記第2のレジスト層は、ともにガラスからなるもので、前記熱処理の温度は前記ガラスの融点以上である請求項1記載のチップ抵抗器の製造方法である。
【0018】
請求項2に記載の発明も、請求項1に記載の発明と同様に、抵抗層と電極層との密着性を向上させ、抵抗値変動を少なくするものである。但し、その作用は、請求項1に記載の発明とは異なるものである。
【0019】
請求項2に記載の発明は、ガラスからなるレジスト層を溶融させ、電極層および抵抗層にレジスト層を浸透させることで密着性を向上させるものである。これについて、より詳細に説明すると、めっきによる電極層のはがれは、その端部が起点となる。熱処理を行うことで、第1のレジスト層および第2のレジスト層のガラスの一部が溶融して、この電極層との抵抗層の間に入り込むことで抵抗層と電極層との密着性が向上し、これにより抵抗層と電極層との接触部の抵抗値が安定するからと考えられる。そして、抵抗値が安定してから抵抗値修正を行うことで、最終的なチップ抵抗器としての抵抗値と抵抗値修正を行ったときの抵抗値との差を小さくすることででき、歩留まりを向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明のチップ抵抗器の製造方法は、シート基板を分割して複数のチップ抵抗器を得るチップ抵抗器の製造方法であって、前記シート基板は直線で平行な複数の1次分割部と、前記複数の1次分割部に対して直角に交わる直線である複数の2次分割部とで分割されるものであり、前記シート基板上に前記複数の1次分割部を跨いで抵抗体ペーストを印刷して抵抗層を形成する工程と、前記抵抗層上であって前記複数の1次分割部において隣接する1次分割部間に第1のレジスト層と、前記抵抗層上であって前記複数の1次分割部を跨いで第2のレジスト層とを形成する工程と、前記抵抗層における前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層に被覆されていない部分に電解めっきによる電極層を形成する工程と、前記電極層が形成されたシート基板を熱処理する工程と、前記熱処理の工程の後に抵抗値修正を行う工程と、前記抵抗値修正を行った後に前記シート基板を前記複数の1次分割部と前記複数の2次分割部とで分割する工程を備え、抵抗値を安定にすることができるので、歩留まりを向上させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の製造工程の正面断面図
【図2】本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の製造工程の正面断面図
【図3】本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の製造工程の正面断面図
【図4】本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の製造工程の平面図
【図5】本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の製造工程の平面図
【図6】本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の製造工程の平面図
【図7】本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の製造工程の平面図
【図8】本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の製造工程の平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
(一実施の形態)
以下、一実施の形態を用いて、本発明の説明をする。
【0023】
図1〜図3は、本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の製造工程の正面断面図、図4〜図8は、発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の製造工程の平面図である。
【0024】
なお、図1(a)、図1(b)、図1(c)、図2(a)、図2(b)、図2(c)、図3(a)は、それぞれ、平面図である図5(a)、図5(b)、図5(c)、図6(a)、図6(b)、図6(c)、図8の正面断面図である。なお、それぞれの図面は、理解しやすいように記載しており、図面の縦横の長さの比や、図中の構成要素のそれぞれの厚みの比も実際のものとは異なる。
【0025】
本発明のチップ抵抗器の製造方法は、シート基板1を分割して複数のチップ抵抗器30を得るチップ抵抗器30の製造方法であって、前記シート基板1は直線で平行な1次分割部1aと、前記1次分割部1aに対して直角に交わる直線である複数の2次分割部1bとで分割されるものであり、前記シート基板1上に前記1次分割部1aを跨いで抵抗層2を形成する工程と、前記抵抗層2上であって前記複数の1次分割部1aにおいて隣接する1次分割部1a間に第1のレジスト層3と、前記抵抗層2上であって前記複数の1次分割部1aを跨いで第2のレジスト層4とを形成する工程と、前記第1のレジスト層3と前記第2のレジスト層4とをめっきレジストとして前記抵抗層2に電解めっきによる電極層5を形成する工程と、前記電極層5が形成されたシート基板1を熱処理する工程と、前記熱処理の工程の後に抵抗値修正を行う工程と、前記抵抗値修正を行った後に前記シート基板1を前記複数の1次分割部1aと前記複数の2次分割部1bとで分割する工程を備えている。
【0026】
また、上記の製造方法に加え、前記抵抗値修正を行う工程の後に、前記第1のレジスト層3を覆う保護膜7を形成する工程と、前記シート基板1を前記1次分割部1aで分割して短冊基板20を得る工程と、前記短冊基板20上に形成された前記保護膜7上にマスク(図示せず)を配置して、前記短冊基板20の端面から前記電極層5上まで端面電極9、10を形成する工程と、を備え、前記端面電極9、10を形成する工程の後に、前記2次分割部1bで分割する工程を行い、前記分割する工程の後に、前記電極層5および前記端面電極9、10に電解めっきによるめっき層として銅めっき層11、ニッケルめっき層12、スズめっき層13を形成する工程を備えたものとすることもできる。
【0027】
本発明のチップ抵抗器の製造方法のより詳細な説明について、以下に説明する。
【0028】
シート基板1は絶縁体であり、好ましい例としては、アルミナ基板である。図4に示すように、シート基板1には互いに平行な直線である複数の1次分割部1aと、1次分割部1aに直角に交わる直線である複数の2次分割部1bが定義される。複数の2次分割部1bは互いに平行である。
【0029】
この1次分割部1aと2次分割部1bとは、後にシート基板1を分割する際分割の位置を示す仮想の線である。また1次分割部1aと2次分割部1bとは、シート基板1の分割する位置に形成したスリット(図示せず)としてもよい。スリットはシート基板1の上面に形成された非貫通の溝である。また、スリットはシート基板1の裏面にも形成しておいてもよい。このようなスリットを予め形成しておくと、後に行う分割が行い易くなるという利点がある。なお、シート基板1の上面とは、図1(b)のシート基板1において抵抗層2が形成されている面をいい、これと対向する面を裏面と言う。
【0030】
図4に示すシート基板1の一部を拡大したものが図1(a)および図5(a)である。図1(a)は正面断面図であり、その切断面は2次分割部1bと平行で、任意の隣り合う2次分割部1bの中央部におけるものである。
【0031】
本発明の製造方法の一実施の形態は、このようなシート基板1を用い、以下のように製造していく。
【0032】
最初に、図1(b)および図5(b)に示すように、シート基板1上に抵抗層2を形成する。抵抗層2は、PdAgのペーストを印刷し、その後焼成したものである。なお、PdAgを2回印刷して層を厚くして形成することで、抵抗層2の抵抗値を下げることもできる。抵抗層2は隣接する2次分割部1bの間にそれぞれ形成され、かつ、1次分割部1aを跨いで形成される。
【0033】
次に、図1(c)および図5(c)に示すように、抵抗層2上に第1のレジスト層3と第2のレジスト層4を形成する、第1のレジスト層3は1次分割部1a間に形成される。一方、第2のレジスト層4は1次分割部1aを跨ぐように形成される。第1のレジスト層3および第2のレジスト層4は、ガラスペーストを印刷した後に焼成することで得られる。この焼成温度は、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4に用いたガラス材料にもよるが、620℃で焼成している。また、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4は、分離しており、これらは繋がってはいない。また、図5(c)に示すように、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4は、抵抗層2の幅より広く形成されており、抵抗層2の幅の方向を覆っている。なお、抵抗層2の幅とは、抵抗層2における1次分割部1aに対し平行な方向の長さである。第1のレジスト層3および第2のレジスト層4は、次の工程の電解めっきの際のめっきレジストにもなる。
【0034】
次に、図2(a)および図6(a)に示すように電解めっきにより電極層5を形成する。電解めっきは、図1(c)および図5(c)に示すシート基板1をめっき液に浸漬させ、抵抗層2に電気を流すことで行うことができる。したがって、抵抗層2における露出している部分に電極層5が形成される。なお、図2(a)において、電極層5は第1のレジスト層3および第2のレジスト層4の上面の一部にも形成されている。この理由は、電解めっきにより、最初は抵抗層2上にめっきによる膜が形成されるが、このめっきによる膜も導体であり、抵抗層2に流した電気が流れるので、この膜上に、さらにめっきによる膜が形成される。このように、めっきによる膜上にさらにめっきによる膜が形成されることを繰り返すことで、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4の上面の一部にも形成されるものであって、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4の一部が導体ということではない。これらは絶縁体である。電極層5の組成はAgである。Agは導電性に優れるので、低抵抗のチップ抵抗器の電極に用いることは好ましい。
【0035】
次に、シート基板1は熱処理を施される。熱処理は、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4の焼成温度と同じ温度で行われる。その理由は、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4を溶融させるためである。そして、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4が液体のように著しく粘性を低下させて流れ出さないような温度である必要もある。これらの理由により、熱処理温度は、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4の焼成温度と同じにしている。なお、抵抗層2と電極層5との拡散には500℃以上の温度が必要であるので、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4に用いるガラスの融点は、抵抗層2と電極層5との拡散に必要な温度以上であることが必要となる。
【0036】
次に、図2(b)および図6(b)に示すように、抵抗層2に抵抗値修正を行う。抵抗値修正は、レーザ光線を照射することで、第1のレジスト層3ごと抵抗層2の一部を、そのエネルギーにより消失させるものである。トリミング跡6は、このような抵抗値修正により、消失した部分を指す。このような抵抗値修正はトリミングとも呼ばれており、抵抗値を所定の抵抗値にするために行われるものである。この抵抗値修正は、2次分割部1bと平行な方向において隣接する電極層5にそれぞれ抵抗値測定用検針を接触させ、抵抗値を測定しながら行う。なお、抵抗値修正を行う際には、抵抗値の測定を正確に行うために、前処理が必要になる場合もある。例えば、シート基板1の端部で複数の抵抗層2を電気的に接続しておくと、所謂めっきランドを1箇所にすることができ、電解めっきの際には便利であるが、抵抗値修正のために抵抗値を測定する場合には、他の抵抗層2の影響を受けてしまい、正確な測定が出来なくなるので、このめっきランドを切断して各抵抗層2を電気的に独立させるような処理である。
【0037】
次に、図2(c)および図6(c)に示すように、第1のレジスト層3を覆うように保護膜7を形成する。保護膜7は完全に第1のレジスト層3を覆い、さらに電極層5の一部も覆う。この保護膜7はガラスによる保護膜を用いている。
【0038】
次に、図7(a)に示すように、1次分割部1aおよび2次分割部1bが作る長方形の四隅に再上面電極層8を形成する。この再上面電極層8は隣接する2次分割部1b間の中央部には存在しないので、図3(a)、(b)には現れない。再上面電極層8は、Agと樹脂の混合ペーストを印刷し、その後乾燥させて形成される。再上面電極層8は、後で説明する端面電極9を形成する際に、段差を少なくするという機能を有する。
【0039】
次に、シート基板1は、1次分割部1aの位置で切断され、複数の短冊基板20に分割される。この分割の方法は、ダンシングで切断する方法が挙げられる。また、予めスリットを形成している場合には、外力を加えてスリット部で割ることで分割する方法もある。図7(b)は、このように分割した後の短冊基板20の一部を拡大した図である。
【0040】
次に、図3(a)および図8に示すように、スパッタ工法により端面電極9および端面電極10を形成する。端面電極9は短冊基板20の端面と上面の端部に形成される。このスパッタ工法においては、まず、マスクを用いて、短冊基板20の上面側からスパッタを行うことで必要な部分のみ端面電極9を形成するようにしている。端面電極9は、2次分割部1b方向における隣接する保護膜7間に位置するシート基板1、第2のレジスト層4、電極層5、再上面電極層8を覆う。端面電極9の形成が終了したら、今度は端面電極10をスパッタ工法で形成する。この端面電極10は、マスクを用いて短冊基板20の裏面側からスパッタを行うことで必要な部分のみ端面電極10を形成するようにしている。端面電極9および端面電極10は両方とも、NiCrからなる。なお、端面電極9を形成した後に端面電極10を形成するのではなく、順序を逆にしてもよい。また、マスクを用いて、短冊基板20の上面と裏面の両方から同時にスパッタを行い、端面電極9および端面電極10を一体的に形成することもできる。
【0041】
次に、短冊基板20を2次分割部1bで切断し、複数の基板21に分割する。この分割方法は、シート基板1を短冊基板20に分割する方法と同様である。
【0042】
次に、図3(b)に示すように、端面電極9および端面電極10上にめっき層を形成する。このめっき層は、銅めっき層11、ニッケルめっき層12およびスズめっき層13からなり、いずれも電解めっきにより形成される。この電解めっきの方法としては、バレルめっき工法が好ましい。
【0043】
以上のような製造方法によるチップ抵抗器は、以下のような効果を有する。
【0044】
まず、電極層5を形成した後で、抵抗値を修正する工程の前に、熱処理を行う工程を実施することで、抵抗値が安定するという効果を奏する。これは、電解めっきによる電極層5の形成後に熱処理を行うことで、抵抗層2と電極層5間に拡散が生じ、両者の密着性が向上することによるものである。
【0045】
そして、密着性が向上すると、その後の工程により抵抗層2と電極層5間の密着性の低下を防止することが可能になり、これにより抵抗層2と電極層5との接続部の抵抗値を安定させることができる。従って、この安定した状態で抵抗値修正工程を行うことで、その後の抵抗値の変動を抑えることが可能になる、という作用によるものである。
【0046】
さらに、第1のレジスト層3および第2のレジスト層4としてガラスを用いたので、熱処理工程により第1のレジスト層3および第2のレジスト層4のガラスの一部が抵抗層2と電極層5との間に入り込むことにより、より、抵抗層2と電極層5との密着性が向上すると考えられる。
【0047】
また、1次分割部1aを跨ぐのは抵抗層2と第2のレジスト層4であり、電極層5は1次分割部1aを跨がない。電極層5は金属であるので、切断するとバリが出てしまうが、電極層5は1次分割部1aを跨がないので1次分割部1aで分割してもバリは生じないという効果も有する。
【0048】
なお、本実施の形態においては、シート基板1の上面側のみに抵抗層2を形成したが、上面側と裏面側の両方に形成してもよい。即ち、抵抗層2を両面に形成してもよい。こうすることで、チップ抵抗器としての抵抗値を1/2にすることができる。このときの裏面側は、上面側と同様の構成になり、その製造方法も上面側と同様に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明にかかるチップ抵抗器の製造方法は、電気機器や電子機器等に用いられるチップ抵抗器として適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 シート基板
1a 1次分割部
1b 2次分割部
2 抵抗層
3 第1のレジスト層
4 第2のレジスト層
5 電極層
6 トリミング跡
7 保護膜
8 再上面電極層
9 端面電極
10 端面電極
11 銅めっき層
12 ニッケルめっき層
13 スズめっき層
20 短冊基板
21 基板
30 チップ抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基板を分割して複数のチップ抵抗器を得るチップ抵抗器の製造方法であって、前記シート基板は直線で平行な複数の1次分割部と、前記複数の1次分割部に対して直角に交わる直線である複数の2次分割部とで分割されるものであり、
前記シート基板上に前記複数の1次分割部を跨いで抵抗体ペーストを印刷して抵抗層を形成する工程と、
前記抵抗層上であって前記複数の1次分割部において隣接する1次分割部間に第1のレジスト層と、前記抵抗層上であって前記複数の1次分割部を跨いで第2のレジスト層とを形成する工程と、
前記抵抗層における前記第1のレジスト層と前記第2のレジスト層に被覆されていない部分に電解めっきによる電極層を形成する工程と、
前記電極層が形成されたシート基板を熱処理する工程と、
前記熱処理の工程の後に抵抗値修正を行う工程と、
前記抵抗値修正を行った後に前記シート基板を前記複数の1次分割部と前記複数の2次分割部とで分割する工程を備えたチップ抵抗器の製造方法。
【請求項2】
前記第1のレジスト層および前記第2のレジスト層は、ともにガラスからなるもので、前記熱処理の温度は前記ガラスの融点以上である請求項1記載のチップ抵抗器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98358(P2013−98358A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239989(P2011−239989)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】