説明

チップLED検査装置

【課題】チップLEDの封止樹脂部に存在する欠損を正確に検出できる検査装置を提供する。
【解決手段】チップLED50を支持する透明な板状又はシート状の支持部材5と、支持部材5より上方に配設され、チップLED50の表面側の画像を撮像するカメラ6と、支持部材5より下方位置に、支持部材5を挟んでカメラ6と対向するように設けられた遮光板10と、遮光板10より下方に設けられた照明機構15とからなる。遮光板10は、少なくともチップLEDよりも大きい大きさを有し、照明機構15は、チップLED50の封止樹脂部54を、遮光板10の外側から支持部材5を透過して照明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップLEDの封止樹脂部に生じた傷や欠けといった欠損を検出する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チップLEDとしては各種形態のものが知られているが、その一つとして、図4に示すようなものが知られている。
【0003】
同図4に示すように、このチップLED50は、透光性を有する基板51と、該基板51の裏面に相互に分離した状態で形成された少なくとも2つの不透光性の電極部52,52と、前記基板51の表面中央部に配設された発光部53と、基板51の表面を被覆して前記発光部53を封止する透光性の封止樹脂54とから構成される。
【0004】
前記封止樹脂54は、発光部53を被覆する部分が凸曲面状(この例では、ほぼ半球状)に成形されており、上述した発光部53を封止する役割の他、凸曲面部54aは、発光部53から発せられた光を集光させるレンズとしての役割を担っている。
【0005】
したがって、かかる役割を担う凸曲面部54aに傷や欠けといった欠損が生じている場合には、発光部53から発せられた光がこの欠損部によって乱され、当該チップLED50から照射される光が不均一なものとなるという不都合を生じる。
【0006】
このため、従来、封止樹脂54(特に、凸曲面部54a)に生じた欠損を検出することのできる検査装置が求められていた。
【0007】
他方、検査装置としては、従来、チップLEDを検査対象物としたものではないが、半導体パッケージの配線パターンを検査する装置として、特開2009−288050公報に開示された検査装置が知られている。
【0008】
この検査装置は、間接照明手段により被検体を照明し、当該被検体をラインセンサカメラにより撮像してその画像を解析し、欠点を検出するというものであり、間接照明手段は、ドーム状をした凹曲面状の反射面を有する本体を備え、本体の開口部側の内面に形成された光出射口から、前記反射面に光を照射し、当該反射面により反射された光によって下方の被検体を照明する。尚、カメラは、前記本体に形成された観察窓から前記被検体を撮像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−288050公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記構成を有するチップLEDの場合、従来の検査装置をそのまま当該チップLEDの検査に適用しても、当該チップLEDの構成上、その封止樹脂部に存在する欠損部を正確には検出することができなかった。
【0011】
上記従来の間接照明手段を用いてチップLEDを照明した場合、これをカメラによって撮像した画像は、図5に示すように、平面から視て、前記凸曲面部の外周部分(基板からの立ち上がり部分)(符号55)、及び電極がない部分(表裏に透光する部分)(符号56)が暗部となり、その他の電極部及び発光部が明部となった明暗画像となる。尚、画像中のチップLED50に相当する部分以外も暗部となる。
【0012】
電極部及び発光部は比較的良く光を反射するため、封止樹脂及び基板を透過した光は、当該電極部で反射され、再び基板及び封止樹脂を透過してカメラに入光するため、同部が明部となり、これに対し、電極が形成されていないところについては、封止樹脂及び基板を透過した光が反射されないため、暗部となるのである。
【0013】
また、前記凸曲面部の基板からの立ち上がり部分(外周部分)については、上記構造を備えた従来の間接照明手段では、照明に寄与する前記反射光(照明光)が下方に向けてある程度指向性を有するものとなっているため、この照明光と鋭角に交差する前記外周部では、当該外周部表面で正反射される照明光が多く、また、樹脂内部に入光する照明光が少ないことから、当該外周部からカメラに入光する反射光が少く、このため暗部になるものと思われる。
【0014】
一方、前記欠損部はその表面が凸凹状になっており、当該欠損部において照射光が乱反射されるため、明部となる。したがって、欠損が、外周部以外の凸曲面部や、電極が形成されている部分に対応する位置にある場合には、いずれも明部となるため、当該欠損を検出することが極めて困難なのである(図5参照。図5において符号57が欠損である。)。
【0015】
尚、チップLEDとしては、上述した形態のものの他、基板裏面の全面に不透光性の樹脂やその他の部材が設けられたものもあるが、前記電極部や発光部が明部になるという点については異なるところがない。
【0016】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、チップLEDの封止樹脂部に存在する欠損部を、これが存在する位置に拘わらず正確に検出することができる検査装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための本発明は、
透光性を有する基板と、該基板の裏面に形成された不透光性の電極部と、前記基板の表面中央部に配設された発光部と、前記基板表面を被覆して前記発光部を封止する透光性の封止樹脂とから構成され、該封止樹脂の少なくとも前記発光部を覆う部分が凸曲面状に形成されたチップLEDの、前記封止樹脂に生じた欠損を検出する検査装置であって、
前記チップLEDを支持する透明な板状又はシート状の支持部材と、
前記支持部材より上方に配設され、該支持部材上に載置されたチップLEDの表面側の画像を撮像するカメラと、
前記支持部材より下方位置に、該支持部材を挟んで前記カメラと対向するように設けられた遮光板と、
前記遮光板より下方に設けられた照明機構とからなり、
前記遮光板は、少なくとも前記チップLEDの平面形状よりも大きい平面形状を有し、
前記照明機構は、前記支持部材上に載置されたチップLEDの封止樹脂部を、前記遮光板の外側から前記支持部材を透過して照明するように構成されたチップLED検査装置に係る。
【0018】
本発明に係る検査装置では、まず、検査対象のチップLEDを支持部材上の検査領域(前記カメラの撮像視野領域)内に位置させる。尚、チップLEDを搬送する機構としては、例えば、適宜搬送手段によりチップLEDを搬送して、前記支持部材上の検査領域内に載置するといったものの他、支持部材上でチップLEDを適宜搬送手段により搬送して、適宜搬送速度で前記検査領域内を通過させるといったものでも良く、或いは、チップLEDが載置された状態の支持部材を移動させて、当該チップLEDを適宜搬送速度で前記検査領域内を通過させるといった機構のものでも良い。
【0019】
支持部材上の検査領域内に位置したチップLEDは前記照明機構によって照明され、その表面側の画像がカメラによって撮像される。
【0020】
前記カメラと対向する位置、即ち、前記チップLEDの直下には遮光板が設けられており、前記照明機構は、前記遮光板の外側から前記支持部材を透過してチップLEDの封止樹脂部を照明する。即ち、遮光板が設けられている関係上、チップLEDは、前記照明機構から照射された斜め下方からの光のみによって、その封止樹脂部が照明される。
【0021】
斜め下方から封止樹脂部に照射された光は、基本的には、当該封止樹脂部をそのまま照射方向に透過する。したがって、前記カメラに入光する光はごく僅かであり、当該カメラによって撮像されるチップLEDの画像は、その全体が暗部となった画像となる。
【0022】
一方、封止樹脂部に欠損がある場合には、その表面が凸凹状になっているため、前記照明機構から照射された光の内、当該欠損部に当たる光は、その凸凹の表面で乱反射され、その一部が前記カメラに入光する。したがって、前記照明機構によって前記封止樹脂部を照明した場合、欠損がある場合には、同部が明部になった画像となる。
【0023】
斯くして、本発明によれば、封止樹脂部に欠損がある場合には、同欠損部のみが明部となった画像を得ることができるので、前記判定部において、撮像画像を解析して当該欠損部の有無を判定する際には、これを容易にしかも正確に行うことができる。
【0024】
尚、本発明において、前記照明機構は、これを、上面が開口した円筒状の本体と、該本体内に、周方向に等間隔に、且つ内側斜め上方に向けた光軸の光を照射するように配設された複数の光源とから構成することができる。
【0025】
かかる構成の照明機構によれば、本体に配設された複数の光源全体として、主として、上方の環状領域を高照度領域として照明し、前記チップLEDは、この照明機構から照射される光の内、主に、内側斜め上方に向けて照射される光によって、その封止樹脂部が照明される。
【0026】
また、本発明に係る前記遮光板は、これが黒色を呈するものであるのが好ましい。黒色である場合には、これによって反射される反射光が少なく、外乱光を生じさせ難いからである。
【0027】
尚、検査対象物としてのチップLEDは、透光性を有する基板と、該基板の裏面に形成された不透光性の電極部と、前記基板の表面中央部に配設された発光部と、前記基板表面を被覆して前記発光部を封止する透光性の封止樹脂とから構成され、該封止樹脂の少なくとも前記発光部を覆う部分が凸曲面状に形成されたものであり、凸曲面部の形状については何ら限定されない。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、カメラによって撮像されるチップLEDの画像を、その全体が暗部となった画像とすることができ、この結果、前記封止樹脂部に欠損が存在する場合には、当該欠損部のみが明部となった画像を得ることができ、このため、得られた画像を解析して欠損の有無を判定する際には、これを容易にしかも正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る検査装置を示した正面図である。
【図2】本実施形態に係る照明機構を示した縦断面図である。
【図3】本実施形態におけるチップLEDの撮像画像を示した説明図である。
【図4】チップLEDの形態を説明するための説明図である。
【図5】従来の検査装置によって得られる撮像画像を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一具体的な実施の態様につき、図面に基づいて説明する。
【0031】
図1に示すように、本例のチップLED検査装置1は、検査対象のチップLED50が載置される透明な板状の支持部材5と、この支持部材5より上方に配設され、当該支持部材5上に載置されたチップLED50の表面側の画像を撮像するカメラ6と、前記支持部材5より下方位置(本例では、支持部材5の裏面)に、該支持部材5を挟んで前記カメラ6と対向するように設けられた遮光板10と、この遮光板10より下方位置に、前記カメラ6と対向するように設けられた照明機構15と、カメラ6によって撮像された画像を解析して、撮像したチップLED50の良否を判定する判定部8とを備えている。
【0032】
尚、本例の検査対象物たるチップLED50は、前述の図4に示した形態を有しているものとする。
【0033】
前記支持部材5は、ガラス等、歪みなく光を透過するものであればその材質に制限はなく、また、その形態も剛性の高い板材の他、可撓性のあるシート材であっても良い。
【0034】
前記照明機構15は、図2に示すように、上面が開口した円筒状の本体16と、この本体16内に、周方向に等間隔に、且つ内側斜め上方に向けた光軸の光を照射するように配設された複数のLEDランプ17とからなる。
【0035】
この照明機構15によれば、環状に配設された各LEDランプ17から照明光が照射され、照射された光は、本体16の開口部18を通過し、複数のLEDランプ17全体として、上方の環状領域を高照度領域として照明する。斯くして、支持部材5上に載置されたチップLED50は、この照明機構15から内側斜め上方に向けて照射され、支持部材5を透過する光によって照明される。
【0036】
前記カメラ6は、その下方のチップLED50の画像を撮像するもので、画像を撮像できるものであればどのようなものでも良く、例えば、エリアセンサカメラやラインセンサカメラを適用することができる。但し、ラインセンサカメラを用いる場合には、チップLED50を所定速度で移動させる必要がある。
【0037】
前記遮光板10は、黒色を呈する部材から構成され、少なくとも前記チップLED50の平面形状よりも大きい平面形状、即ち、チップLED50が当該遮光板10上からはみだす部分が無い大きさを有する。
【0038】
また、前記判定部8は、カメラ6によって撮像された画像を解析して、例えば、撮像画像を2値化処理して、チップLED50の封止樹脂54部に欠損が存在するか否かを判別する。
【0039】
以上の構成を備えた本例の検査装置1によれば、以下のようにして、チップLED50が検査される。
【0040】
まず、検査対象たるチップLED50を適宜搬送手段により搬送して、前記支持部材5上の検査領域、即ち、前記カメラの撮像視野領域内に位置させる。
【0041】
前記支持部材5上の前記検査領域では、照明機構15によってチップLED50が照明され、この状態で、当該チップLED50の表面側の画像がカメラ6によって撮像される。
【0042】
チップLED50の直下には遮光板10が設けられており、照明機構15から照射される内側斜め上方に向けた光は、この遮光板10の外側から支持部材5を透過してチップLED50を照明し、チップLED50の封止樹脂部54(凸曲面部54a)は、このような斜め下方からの光のみによって照明される。
【0043】
斜め下方から凸曲面部54aに照射された光は、基本的には、当該凸曲面部54aをそのまま照射方向に透過する。したがって、前記カメラ6に入光する光はごく僅かであり、当該カメラ6によって撮像されるチップLED50の画像は、図3に示すように、その全体が暗部となった画像となる。
【0044】
一方、凸曲面部54aに欠損がある場合には、その表面が凸凹状になっているため、照明機構15から照射された光の内、当該欠損部57に当たる光は、その凸凹の表面で乱反射され、その一部がカメラ6に入光する。したがって、照明機構15によって凸曲面部54aを照明した場合、欠損部57がある場合には、同図3に示すように、同欠損部57が明部になった画像となる。
【0045】
前記判定部8には、カメラ6によって撮像されたこのような画像が送信され、送信された画像が当該判定部8において解析され、前記欠損部57の有無が判定される。その際、カメラ6によって撮像される画像は欠損部57のみが明部となるので、当該欠損部57の検出を容易且つ正確に行うことができる。
【0046】
以後、支持部材5上に載置されたチップLED50を順次新たなものと交換して、上記一連の検査を行うことで、多数のチップLED50について連続的に欠損の検査が行われる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の態様を採り得る。
【0048】
例えば、遮光板10を、黒色を呈する部材から構成したが、これに限られるものではない。
【0049】
また、検査対象物としてのチップLED50の形態は、上例のものに限られるものではなく、凸曲面状をした封止樹脂54を有するものについては、本発明に係る検査装置によって、欠損の有無を良好に検査することができ、凸曲面部54aの形状についても何ら限定されない。
【0050】
また、上例では、前記支持部材5を固定したものとしたが、チップLED50が載置された状態の支持部材5を移動させて、当該チップLED50を適宜搬送速度で前記検査領域内を通過させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0051】
1 チップLED検査装置
5 支持部材
6 カメラ
8 判定部
10 遮光板
15 照明機構
16 本体
17 LEDランプ
50 チップLED
51 基板
52 電極
53 発光部
54 封止樹脂
54a 凸曲面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する基板と、該基板の裏面に形成された不透光性の電極部と、前記基板の表面中央部に配設された発光部と、前記基板表面を被覆して前記発光部を封止する透光性の封止樹脂とから構成され、該封止樹脂の少なくとも前記発光部を覆う部分が凸曲面状に形成されたチップLEDの、前記封止樹脂に生じた欠損を検出する検査装置であって、
前記チップLEDを支持する透明な板状又はシート状の支持部材と、
前記支持部材より上方に配設され、該支持部材上に載置されたチップLEDの表面側の画像を撮像するカメラと、
前記支持部材より下方位置に、該支持部材を挟んで前記カメラと対向するように設けられた遮光板と、
前記遮光板より下方に設けられた照明機構とからなり、
前記遮光板は、少なくとも前記チップLEDの平面形状よりも大きい平面形状を有し、
前記照明機構は、前記支持部材上に載置されたチップLEDの封止樹脂部を、前記遮光板の外側から前記支持部材を透過して照明するように構成されてなることを特徴とするチップLED検査装置。
【請求項2】
前記照明機構は、上面が開口した円筒状の本体と、該本体内に、周方向に等間隔に、且つ内側斜め上方に向けた光軸の光を照射するように配設された複数の光源とから構成されることを特徴とする請求項1記載のチップLED検査装置。
【請求項3】
前記遮光板が黒色を呈している請求項1又は2記載のチップLED検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−15230(P2012−15230A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148554(P2010−148554)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(305021292)第一実業ビスウィル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】