説明

チャックテーブル検査装置

【課題】チャックテーブルの吸引保持性能の良否を容易に判定できるようにする。
【解決手段】基台90と多孔質部材91とを貼り合わせて構成されるチャックテーブル9における貼り合わせ状態を検査するチャックテーブル検査装置1において、検査玉保持部50から検査玉500をチャックテーブル9の多孔質部材91に向けて落下させて多孔質部材91における検査玉500の跳ね上がりを監視センサ81で監視し、検査玉500の跳ね上がりが監視センサ81より高くなるか否かによって、チャックテーブル9の吸引保持性能の良否を判断する。チャックテーブル9の吸引保持性能の良否を適切に判断することができ、また、温度や湿度の影響を受けにくいため、正確な判定が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基台と多孔質部材とを貼り合わせて構成されるチャックテーブルにおける基台と多孔質部材との貼り合わせ状態を検査する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種加工装置においては、チャックテーブルと呼ばれる被加工物を保持するためのテーブルを備えている。チャックテーブルは、多孔質部材と、多孔質部材を支持する基台とを備え、基台には多孔質部材と吸引源とを連通させる吸引通路が形成されている。
【0003】
例えば被加工物がテープに貼着される場合は、チャックテーブルにおいては、多孔質部材の全面がテープによって覆われた状態として吸引を行うことにより、エアのリークを生じさせることなく、テープを介して被加工物を吸引保持することができる。
【0004】
ところが、多孔質部材と基台との接合が不十分であったりするために両者の間に上下方向の隙間が存在する場合があり、この場合は、吸引通路においてエアがリークして吸引保持性能が低下するという問題がある。そこで、チャックテーブルの吸引保持性能の良否を判定するために、種々の方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
例えば、基台と多孔質部材との間に隙間があると、多孔質部材をテープなどで覆って吸引を行ったときに多孔質部材が下方に引き下げられることを利用し、吸引前後の多孔質部材の高さの差を測定することにより、多孔質部材と基台との間の隙間を確認する方法がある。また、多孔質部材を叩いてそのときの音の周波数を測定する方法によって多孔質部材と基台との間の隙間を判断する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−229889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記前者の方法では、多孔質部材と基台との間の隙間が小さい場合は、吸引を行っても多孔質部材が引き下げられないことがあり、隙間を確認できないという問題がある。また、上記後者の方法では、音の伝わり方が温度や湿度の影響を受けるために、誤検出をすることがあるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、チャックテーブルの吸引保持性能の良否を容易に判定できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基台と多孔質部材とを貼り合わせて構成されるチャックテーブルの貼り合わせの状態を検査するチャックテーブル検査装置に関するもので、チャックテーブルが載置されるチャックテーブル検査台と、硬質球体からなる検査用の検査玉と、チャックテーブル検査台の上方において検査玉を所定の高さで保持する検査玉保持部と、チャックテーブル検査台と検査玉保持部との間の高さであって検査玉保持部より低い高さに配設され検査玉を監視する監視センサと、検査玉保持部から検査玉を落下させ、チャックテーブルの多孔質部材に当たって跳ね上がる検査玉が監視センサより高く跳ね上がった場合はチャックテーブルを正常と判断する判断部と、から構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、検査球を監視する監視センサを備え、検査玉保持部から検査玉をチャックテーブルの多孔質部材に向けて落下させて多孔質部材における跳ね上がりを監視センサで監視するため、検査玉の跳ね上がりが監視センサより高くなるか否かによって、チャックテーブルの吸引保持性能の良否を判断することができる。すなわち、基台と多孔質部材との間の隙間の大きさが許容範囲内であるときに検査玉が監視センサより高い位置に跳ね上がるように、検査玉保持部と監視センサとの相対的な高さの関係を設定することで、チャックテーブルの良否を判定することができる。したがって、チャックテーブルの吸引保持性能の良否を適切に判断することができ、また、温度や湿度の影響を受けにくいため、正確な判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】チャックテーブル検査装置の一例を示す斜視図である。
【図2】検査玉が多孔質部材で跳ね上がり、監視センサの高さまで至らない状態を模式的に示す正面図である。
【図3】検査玉が多孔質部材で跳ね上がり、監視センサより高い位置に至った状態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すチャックテーブル検査装置1は、基台90と多孔質部材91とを貼り合わせて構成されるチャックテーブル9の基台90と多孔質部材91との貼り合わせ状態を検査する装置であり、検査対象のチャックテーブル9が載置されるチャックテーブル検査台2を備えている。チャックテーブル9は、基台90の表面側においてリング状に突出した凸部90aの内側に多孔質部材91が収容されて構成されている。
【0013】
チャックテーブル検査台2からは柱部3が立設されており、柱部3からは水平方向に水平支持部4が延びている。水平支持部4は、その先端部において検査玉保持部5を支持しており、柱部3に沿って上下方向に水平支持部4を摺動させることにより、検査玉保持部5の高さを調整することができる。検査玉保持部5は、チャックテーブル検査台2の上方に位置している。
【0014】
検査玉保持部5は、2つの可動部材50を備えている。各可動部材50は、断面が半円状に形成された側板50aと、側板50aの下部に渡された半円状の底板50bとから構成されている。
【0015】
2つの可動部材50によって囲まれた空間には、チャックテーブル9の検査用の硬質球体からなる検査玉500が収容されている。検査玉500は、例えばアルミナセラミックスによって形成されており、所定の高さにおいて検査玉保持部5によって保持されている。
【0016】
水平支持部4の側面には、2つの可動部材50を開閉する可動部材開閉部6が配設されている。可動部材開閉部6は、水平支持部4に固定されたシリンダ60と、シリンダ60によって駆動されて進退するピストン61とを備えており、ピストン61の先端部に可動部材50の側板50aが固定されている。
【0017】
チャックテーブル検査台2の側部には、鉛直方向に延びる2つの軸部70、71が配設され、個々の軸部70、71には、それぞれ監視センサ80、81が固定されている。監視センサ80、81は、検査玉保持部5より低い位置に配設されている。
【0018】
図示の例では、監視センサ80が発光部80aを、監視センサ81が受光部81aをそれぞれ備え、監視センサ80の発光部80aと監視センサ81の受光部81aとが水平方向に対向しており、図2に示すように、発光部80aと受光部81aとを結ぶ検出ライン82が形成されている。検査玉500が検出ライン82を通過すると、発光部80aから発せられた光が遮断されるため、検査玉500の通過による光の遮断を監視センサ81が検出できるように構成されている。監視センサ81には、監視センサ81の検出結果に応じてチャックテーブル9が正常か否かを判断する判断部83が接続されている。
【0019】
図1に示したチャックテーブル検査装置1において、チャックテーブル検査台2には、チャックテーブル9の基台90側が載置され、多孔質部材91が上に向いた状態となる。また、検査玉保持部5を所定の高さに固定しておく。具体的には、基台90と多孔質部材91との間の隙間の大きさが許容範囲内であるときに検査玉500が監視センサ80、81より高い位置に跳ね上がるように、水平支持部4を鉛直方向に移動させて検査玉保持部5の鉛直方向の位置を調整する。なお、監視センサ80、81が鉛直方向に移動可能である場合は、監視センサ80、81の位置を調整することにより、検査玉保持部5との相対的な位置関係を調整することができる。いずれにしても、監視センサ80、81の高さは、検査玉保持部5の高さとの相対的な関係で所定の高さとなる。
【0020】
こうしてチャックテーブル9が載置された状態で、シリンダ60がピストン61を後退させると、2つの可動部材50が離れて2つの底板50bの間の間隔があき、検査玉保持部5に保持された検査玉500が落下する。そうすると、落下中の検査玉500が検出ライン82を通過する。監視センサ81は、検査玉500が検出ライン82を通過したことを検知すると、次に、検査玉500が多孔質部材91に当たって検査500が跳ね上がることを想定し、再度検査玉500が検出ライン82を遮断するか否かの監視を開始する。
【0021】
そして、図2に示すように、跳ね上がった検査玉が一定時間内に検出ライン82に達しない場合は、基台90と多孔質部材91との間に許容できない隙間があるために、チャックテーブル9において衝撃力が逃げており、判断部83は、チャックテーブル9の吸引保持性能に問題ありと判定する。
【0022】
一方、図3に示すように、多孔質部材91に当たった検査玉が検出ライン82よりも高く跳ね上がった場合は、監視センサ81がそのことを検知すると、判断部83は、基台90と多孔質部材91との間に隙間がないか、隙間があっても許容できる範囲のもので、チャックテーブル9の吸引保持性能が正常であると判定する。
【0023】
このようにして、検査玉500が多孔質部材91に当たって跳ね上がる高さに応じて、チャックテーブル9の吸引保持性能の良否を判定する。
【0024】
以上のように、チャックテーブル検査装置1では、検査玉500をチャックテーブル9の多孔質部材91に落下させ、多孔質部材91における跳ね返りの高さが一定以上か否かにもとづいてチャックテーブル9の吸引保持性能の良否を判定することができ、基台90と多孔質部材91との間の隙間の大きさに応じた跳ね上がり量を基準とすることで、吸引保持性能の良否を適切に判断することができる。また、温度や湿度の影響を受けにくいため、正確な判定が可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1:チャックテーブル検査装置
2:チャックテーブル検査台
3:柱部 4:ブラケット
5:検査玉保持部
50:可動部材 50a:側板 50b:底板
500:検査玉
6:可動部材開閉部 60:シリンダ 61:ピストン
70,71:軸部
80,81:監視センサ 80a:発光部 81a:受光部 82:検出ライン
83:判断部
9:チャックテーブル 90:基台 91:多孔質部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と多孔質部材とを貼り合わせて構成されるチャックテーブルにおける該基台と該多孔質部材との貼り合わせ状態を検査するチャックテーブル検査装置であって、
該チャックテーブルが載置されるチャックテーブル検査台と、
硬質球体からなる検査用の検査玉と、
該チャックテーブル検査台の上方において該検査玉を所定の高さで保持する検査玉保持部と、
該チャックテーブル検査台と該検査玉保持部との間の高さであって、該検査玉保持部より低い高さに配設され、該検査玉を監視する監視センサと、
該検査玉保持部から該検査玉を落下させ、該チャックテーブルの多孔質部材に当たって跳ね上がる該検査玉が該監視センサより高く跳ね上がった場合は該チャックテーブルを正常と判断する判断部と、
で構成されるチャックテーブル検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−86187(P2013−86187A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225644(P2011−225644)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】