チャネル推定強化方法および装置
雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)エンハンサ装置(24)は、雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)を整数倍率mによって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値(h)に変換するために構成されたオーバーサンプラ(30)を含む。オーバーサンプラ(30)は、時間領域チャネル推定値(h)をm個のデインターリーブされたサブベクトル(hi)に分割するために構成されたデインターリーバ(32)に接続されている。デインターリーバ(32)は、m個の雑音抑圧サブベクトル(h’i)を形成するために、個々のデインターリーブされたサブベクトル(hi)から雑音のあるタップを抑圧するために構成されたサプレッサ(34)に接続されている。サプレッサ(34)は、最大信号対雑音比(γi)と関連付けられた雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を選択するために構成されたセレクタ(36)に接続されている。セレクタ(36)は、選択された雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を雑音抑圧予備周波数領域推定値(H’)に変換するために構成された離散フーリエ変換器(38)に接続されている。離散フーリエ変換器(38)は、強化された周波数領域チャネル推定値(Hout)を形成するために、雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)のタップを位相調整するために構成された移相器(40)に接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、無線通信システムにおけるチャネル推定に係わり、特に、雑音のある周波数領域チャネル推定の強化に関する。
【背景技術】
【0002】
直交周波数分割多重(OFDM)は、マルチパスフェージングへの対抗と、モバイル・ワイヤレス・チャネル上での高ビットレート伝送とのための効率的な手法である。OFDMシステムでは、チャネル全体は、多くの狭いサブチャネルに分割され、サブチャネルは、並列にされ、その結果、シンボル長を増大し、シンボル間干渉(ISI)を低減する。チャネル推定は、OFDMシステムの性能を改善するために広く使用されている。チャネル推定は、ダイバーシティ結合、コヒーレント検出、および、空間・時間符号化のため極めて重要である。様々なOFDMチャネル推定スキームが文献に提案されている。
【0003】
最小二乗(LS)推定または線形最小平均二乗誤差(LMMSE)推定は、非特許文献1に提案された周波数領域ベースのチャネル推定方法である。
【0004】
非特許文献2は、LS推定チャネルの周波数応答を取得するために付加的な離散フーリエ変換(DFT)処理を導入した。非特許文献1における周波数領域推定方法と比べて、変換領域推定方法は、チャネルの時間領域特性を使用する。
【0005】
非特許文献3は、DFTの代わりに離散コサイン変換に基づくチャネル推定方法について記載する。
【0006】
しかし、直交周波数分割多元接続(OFDMA)システムのような多くのアプリケーションでは、(個々のユーザは、利用可能なスペクトルの一部だけにアクセスするので)完全な周波数応答のうちの一部のチャネル推定値だけが利用可能であり、時間領域内のチャネルインパルス応答の推定値は、従来型のDFTベースの方法から取得され得ない。部分周波数応答の離散フーリエ逆変換(IDFT)の後、チャネルインパルス応答は、時間領域内のすべてのタップに漏洩することになる。雑音と漏洩電力とが取り違えられるので、従来型のDFT方法は、雑音を推定するだけでなく、有用であるが、漏洩したチャネル電力を失うことにもなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】O.Edfors、M.Sandell、J.−J.van de Beek、S.K.Wilson、P.O.Borjesson著、「OFDM channel estimation by singular value decomposition」、IEEE Transactions on Communications、第46巻、第7号、ページ931−939、1998年
【0008】
【非特許文献2】Y.Zhao、A.Huang著、「A novel channel estimation method for OFDM mobile communication systems based on pilot signals and transform−domain processing」、the 47th IEEE Vehicular Technology conference(VTC ’97)予稿集、第3巻、ページ2089−2093、Phoenix、Ariz、USA、1997年5月
【0009】
【非特許文献3】Shaopeng Feng、Nan Hu、Bin Yang、Weiling Wu著、「DCT−Based Channel Estimation Method for MIMO−OFDM Systems」、Wireless Communications & Networking Conference、2007年IEEE
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一般的な目的は、雑音のある周波数領域チャネル推定値を強化することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、特許請求の範囲によって達成される。
【0012】
本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値を強化する方法は、以下のステップ、すなわち、
・雑音のある周波数領域チャネル推定値を整数倍率mによって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値に変換するステップと、
・時間領域チャネル推定値をm個のデインターリーブされたサブベクトルに分割するステップと、
・m個の雑音抑圧サブベクトルを形成するために個々のデインターリーブされたサブベクトルから雑音のあるタップを抑圧するステップと、
・最大信号対雑音比と関連付けられた雑音抑圧サブベクトルを選択するステップと、
・選択された雑音抑圧サブベクトルを雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値に変換するステップと、
・強化された周波数領域チャネル推定値を形成するために雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値のタップを位相調整するステップと、
を含む。
【0013】
本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置は、
・雑音のある周波数領域チャネル推定値を整数倍率mによって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値に変換するために構成されているオーバーサンプラと、
・時間領域チャネル推定値をm個のデインターリーブされたサブベクトルに分割するために構成されているデインターリーバと、
・m個の雑音抑圧サブベクトルを形成するために個々のデインターリーブされたサブベクトルから雑音のあるタップを抑圧するために構成されているサプレッサと、
・最大信号対雑音比と関連付けられた雑音抑圧サブベクトルを選択するために構成されているセレクタと、
・選択された雑音抑圧サブベクトルを雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値に変換するために構成されている離散フーリエ逆変換器(38)と、
・強化された周波数領域チャネル推定値を形成するために雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値のタップを位相調整するために構成されている移相器と、
を含む。
【0014】
本発明による無線通信システム受信機は、このような雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置を含む。
発明は、発明のさらなる目的および利点と一緒に、添付図面と併せて以下の説明を参照することによって最も良く理解されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】雑音のある周波数領域チャネル推定値の実施例の電力スペクトルを示した図である。
【図2】本発明の実施形態により強化された後の図1に対応する雑音のある周波数領域チャネル推定値の電力スペクトルを示した図である。
【図3】本発明による方法を示したフローチャートである。
【図4】本発明による方法の実施形態を示したフローチャートである。
【図5】ゼロパディング後の図1に対応する雑音のある周波数領域チャネル推定値の電力スペクトルを示した図である。
【図6】図5に対応するゼロパディングされたチャネル推定値のIDFTの電力分布を示した図である。
【図7a】図6に対応する時間領域推定値から取得されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図7b】図6に対応する時間領域推定値から取得されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図7c】図6に対応する時間領域推定値から取得されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図8a】図7aに対応する雑音抑圧されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図8b】図7bに対応する雑音抑圧されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図8c】図7cに対応する雑音抑圧されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図9】本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置を含む無線受信機のブロック図である。
【図10】本発明によるエンハンサ装置の実施形態を示したブロック図である。
【図11】本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるオーバーサンプラの実施形態のブロック図である。
【図12】本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるオーバーサンプラの別の実施形態のブロック図である。
【図13】本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるサプレッサの実施形態のブロック図である。
【図14】本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるセレクタの実施形態のブロック図である。
【図15】本発明によって達成された改善を示した図である。
【図16】本発明によって達成された改善の別の態様を示した図である。
【図17】本発明によって達成された改善のさらに別の態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の記述は、OFDMA、例えば、ロング・ターム・エボリューション(LTE)システムに関連して本発明の原理を説明することになる。しかし、同じ原理は、WCDMAシステムのような他のシステムに適用されることがある。
【0017】
時間領域では、チャネル電力の大半は、副搬送波間の相関に起因してチャネルインパルス応答内の最初の少数のタップに集中される。しかし、1個または少数個のリソースブロック(RB)だけがユーザに割り付けられる場合、時間分解能は、低くなり、その結果として、チャネルパスは、互いに十分に分離しないことがある。さらに、チャネル電力の一部は、不適切なサンプリング位置に起因して時間領域内の至る所で漏洩することがある。したがって、サンプリング位置が最適ではない場合、雑音からチャネル電力漏洩を区別することが困難である。以下に提案される解決手法は、サンプリング位置を微調整するために仮想オーバーサンプリングに基づいている。この解決手法は、周波数領域内での位相回転によって実際のオーバーサンプリングの効果を模倣する。
【0018】
例えば、周波数領域におけるLSチャネル推定方法、または、周波数領域チャネル推定値を生じるその他の方法の結果として、長さNである雑音のある周波数領域チャネル推定値
が利用可能であると仮定する。
【0019】
図1は、このような雑音のある周波数領域チャネル推定値Hinの実施例の電力スペクトルを示した図である。
【0020】
図2は、本発明により強化された後の図1における雑音のある周波数領域チャネル推定値の電力スペクトルを示した対応する図であり、強化された周波数領域チャネル推定値Houtをもたらす。チャネル推定値Houtの電力スペクトルは、原チャネル推定値Hinの電力スペクトルより遙かに滑らかであることに注意する。
【0021】
図3は、本発明による方法を示したフローチャートである。図3のステップS1では、雑音のある周波数領域チャネル推定値Hinが整数倍率m、すなわち、m=2、3、4...によって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値に変換される。ステップS2は、時間領域チャネル推定値をm個のデインターリーブされたサブベクトルに分割する。ステップS3は、m個の雑音抑圧サブベクトルを形成するために個々のデインターリーブされたサブベクトルから雑音のあるタップを抑圧する。ステップS4は、最大信号対雑音比と関連付けられた雑音抑圧サブベクトルを選択する。ステップS5は、選択された雑音抑圧サブベクトルを雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値に変換する。ステップS6は、強化された周波数領域チャネル推定値Houtを形成するために雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値のタップを位相調整する。
【0022】
図4は、本発明による方法の実施形態を示したフローチャートである。ステップS11では、原チャネル推定値Hinは、図5に示されるように、(m−1)N個のゼロによってゼロパディングされる(本実施例では、m=3が仮定される)。ステップS12は、その後、オーバーサンプリング・レートmによる乗算がゼロパディング後に時間領域内で同じ電力を維持することになる(この乗算は、選択的であり、対応する補償がプロセスの後の段階、例えば、後述される最後のステップS22でも実行できる)として、
に従って、ゼロパディングされたチャネル推定値にm・N点IDFTを実行する。図6は、ゼロパディングされた原チャネル推定値HinのIDFThの電力分布を示す。
【0023】
記載されたステップS11+S12は、図3のステップS1の1つの可能な実施を示す。別の可能性は、雑音のある時間領域チャネル推定値を形成し、雑音のある時間領域チャネル推定値の個々のサンプルの後にm−1個のゼロをパディングし、ゼロパディングされた雑音のある時間領域チャネル推定値を低域通過濾波するために、雑音のある時間領域チャネル推定値HinにN点IDFTを実行することである。
【0024】
図4のステップ13は、
であり、
が天井関数であり、
が床関数であるとして、
に従って、時間領域チャネル推定値hをm個のデインターリーブされたサブベクトルhiにデインターリーブする。
結果として得られるサブベクトルh−1、h0、h1の電力分布は、図7a〜図7cに示される。
【0025】
サブベクトルhiは、*が巡回畳み込みを表すとして、HinのN点IDFTに対応するh0の端数シフトi/mによる巡回シフト版、すなわち、
と考えられることがある。
【0026】
ステップS14は、個々のサブベクトルhiのピーク電力タップの位置nmax,iを決定する。好ましくは、ピーク探索は、システム遅延が巡回プレフィックス(CP)の長さの範囲内であると仮定して、n=[0,L]かつn=[N−L,N−1]に限定される。ここで、Lは、CPの等価長でもよい仮定チャネル長である。実施例では、L=2が使用されている。
【0027】
ステップS15は、
に従って個々のサブベクトルhiの雑音レベルεiを推定し、すなわち、ピーク領域の外側にあるタップの平均電力を決定する。
【0028】
式(4)において、εiは、雑音および漏洩の電力である。したがって、漏洩が多いほど、εiが大きくなり、推定チャネル電力が小さくなる。
【0029】
アップリンク・マルチユーザ・マルチ入力マルチ出力(MU−MIMO)が可能にされた場合、式(4)中の上記の雑音位置L<mod(n−nmax,i,N)<N−Lは、MU−MIMOに起因して巡回シフトされた基準信号系列によって占有された位置を除くために応じて調整されるべきである。
【0030】
ステップS16は、有効チャネルパスを捕捉するためにiの個々の値の閾値を設定する。閾値は、Tεiに設定され、ここで、Tは定数であり、最良性能を達成するためにシミュレーションから取得できる。典型的な実施例として、T=2であるが、一般に、Tは、区間[1.5,2.5]内の値を有している。
【0031】
閾値Tεiが設定された後、ステップS17は、
に従ってhi内の雑音のあるタップを抑圧する。
【0032】
このステップは、それぞれの雑音閾値Tεiを下回る電力をもち、決定されたそれぞれの位置nmax,iからチャネル長Lの範囲内に配置されたタップ(巡回の意味では、タップN−1は、タップ0に隣接している)と、決定されたそれぞれの位置nmax,iからチャネル長Lの範囲内に配置されていないタップとを抑圧するが、ピーク電力タップはそのままにしておく。取得されたサブベクトルh’−1、h’0、h’1の電力分布は、図8a〜図8cに示される。それぞれのピーク電力タップの周りの十分に強いタップだけが抑圧を切り抜けることに注意する。
【0033】
ステップS18は、
として、個々の信号ベクトルh’iの信号電力P’iを推定する。
【0034】
ステップS19は、
として、個々のサブベクトルh’iの信号対雑音比(SNR)を計算する。
【0035】
ステップS20は、最大SNR γiを有しているサブベクトルh’i0、すなわち、
を選択する。
【0036】
ステップS21は、
に従って、選択されたサブベクトルh’i0(実施例では、i0=−1)にN点DFTを実行する。
【0037】
h’i0は、端数シフトi0/mによるh0の巡回シフト版であるため、周波数領域内の位相回転がこの時間シフトを補償するためにH’のタップに加えられる。このように、ステップS22は、
に従って、H’のタップを位相調整する。
【0038】
この強化された周波数領域チャネル推定値Houtの電力スペクトルは、図2に示される。
【0039】
強化されたチャネル推定値Houtは、チャネル推定値を必要とするデータ復調および他の目的のため使用されることになる。推定されたシステム遅延は、nmax,i0+i0/mである。
【0040】
(仮想)オーバーサンプリング・レートmの選択に関して、高オーバーサンプリング・レートは、システム性能のためいつでも優れているが、計算複雑性を増大する。このように、性能と費用とのトレードオフが好ましい。
【0041】
狭いユーザ帯域幅および高いSNR動作レベルは、チャネル電力漏洩によって引き起こされた信号対干渉雑音比(SINR)劣化を最小限に抑えるために高オーバーサンプリング・レートを必要とする。典型的に、より高次の変調、および、より高い符号化率は、高SNRを必要とし、単一のアンテナの場合、例えば、専用室内システムにおけるアンテナ1本当たりのSNRは、多重受信アンテナの場合のSNRより高い。
【0042】
所定のSNRとユーザ帯域幅(Nの値に対応する)とに関して、オーバーサンプリング・レートmに対するチャネル電力漏洩に起因したSINR劣化は、
として、
のように計算されることがある。
【0043】
上記計算は、異なるオーバーサンプリング・レートmに対し実行されることがある。SINR劣化要件、すなわち、劣化が定義済みの値より高くないことを満たす最小オーバーサンプリング・レートは、所定のSNRおよびユーザ帯域幅に対する仮想オーバーサンプリング・レートmになるように選択される。最適オーバーサンプリング・レートのルックアップテーブルは、テーブルへのインデックスとしてのSNRおよびユーザ帯域幅(Nによって表現される)に応じて構築されることがあり得る。
【0044】
図9は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置を含む無線受信機、本実施例では、LTE受信機を示したブロック図である。アンテナ受信アップリンク信号は、信号をベースバンドにダウン変換し、復調器12に転送する無線機10に接続される。復調器12は、受信されたシンボルを変調されたデータシンボルに変換し、変調されたデータシンボルは、ビットソフト値にデマッピングされる。デマッピング後、復調器12は、ビットソフト値を復号器14に転送し、復号器は、ビットソフト値を復号化する。復調器12は、等化器18に接続されたチャネル推定器16を含む。等化器18からの変調された等化されたデータシンボルは、デマッピング器20に転送され、デマッピング器は、データシンボルをビットソフト値にデマッピングする。チャネル推定値16は、本発明による周波数領域チャネル推定器22と雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置24とを含む。推定器22は、雑音のある周波数領域チャネル推定値を発生し、この雑音のある周波数領域チャネル推定値は、前述の原理によるエンハンサ装置24により強化される。
【0045】
図10は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置24の実施形態を示したブロック図である。エンハンサ装置24は、雑音のある周波数領域チャネル推定値Hinを整数倍率mによって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値hに変換するために構成されたオーバーサンプラ30を含む。オーバーサンプラ30は、時間領域チャネル推定値hをm個のデインターリーブされたサブベクトルhiに分割するために構成されたデインターリーバ32に接続される。デインターリーバ32は、m個の雑音抑圧サブベクトルh’iを形成するために、個々のデインターリーブされたサブベクトルhiからの雑音のあるタップを抑圧するために構成されたサプレッサ34に接続される。サプレッサ34は、最大信号対雑音比γiと関連付けられた雑音抑圧サブベクトルh’i0を選択するために構成されたセレクタ36に接続される。セレクタ36は、選択された雑音抑圧サブベクトルh’i0を雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値H’に変換するために構成された離散フーリエ変換器38に接続される。離散フーリエ変換器38は、強化された周波数領域チャネル推定値Houtを形成するために、雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値H’のタップを位相調整するために構成された移相器40に接続される。図示された実施形態では、セレクタ36によって使用された雑音レベルεiは、サプレッサ34から取得され、このサプレッサは、閾値Tεiを設定するためにこれらの雑音レベルを既に決定している。セレクタ36は、選択されたインデックスi0を移相器40にさらに転送する。
【0046】
図11は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるオーバーサンプラ30の実施形態のブロック図である。オーバーサンプラ30の本実施形態は、雑音のある周波数領域チャネル推定値Hinを(m−1)・N個のゼロでゼロパディングするために構成されたゼロパディング器42を含む。ゼロパディング器42は、ゼロパディングされた雑音のある周波数領域チャネル推定値Hinにm・N点離散フーリエ逆変換を実行するために構成されたIDFT44に接続される。
【0047】
図12は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるオーバーサンプラ30の別の実施形態のブロック図である。オーバーサンプラ30の本実施形態は、雑音のある周波数領域チャネル推定値HinにN点離散フーリエ逆変換を実行するために構成されたIDFT46を含む。IDFT46は、雑音のある時間領域チャネル推定値の個々のサンプルの後にm−1個のゼロをパディングするために構成されたゼロパディング器48に接続される。ゼロパディング器48は、ゼロパディングされた雑音のある時間領域チャネル推定値を低域通過濾波するために構成された低域通過フィルタ50に接続される。
【0048】
図13は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるサプレッサ34の実施形態のブロック図である。サプレッサ34の本実施形態は、個々のインターリーブされたサブベクトルhiのピーク電力タップのそれぞれの位置を決定するために構成された位置検出器52を含む。位置検出器52は、個々のサブベクトルhiのそれぞれの雑音閾値Tεiを検出するために構成された閾値検出器52に接続される。閾値検出器54は、それぞれの雑音閾値Tεiを下回る電力をもち、決定されたそれぞれの位置から所定のチャネル長Lの範囲内に配置されたタップ(巡回の意味では、タップN−1は、タップ0に隣接している)と、決定されたそれぞれの位置からチャネル長Lの範囲内に配置されていないタップとを抑圧するが、ピーク電力タップはそのままにしておくために構成されたタップ雑音サプレッサ56に接続される。
【0049】
図14は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるセレクタ36の実施形態のブロック図である。セレクタ36の本実施形態は、個々の雑音抑圧サブベクトルh’iのそれぞれの総電力指標を推定するために構成された電力推定器58を含む。電力推定器58は、対応する推定信号電力指標P’iおよび対応する推定雑音レベル推定値εiに基づいて、個々の雑音抑圧サブベクトルh’iと関連付けられたSNRγiを決定するために構成されたSNR計算器60に接続される。SNR計算器60は、最大計算SNRγiと関連付けられた雑音抑圧サブベクトルh’i0を選択するために構成されたサブベクトルセレクタ62に接続される。
【0050】
前述の様々なブロックおよび方法ステップの機能は、典型的に、対応するソフトウェアを動かす1台もしくは数台のマイクロプロセッサまたはマイクロ/信号プロセッサ組み合わせ体に基づいている。DFTおよびIDFTは、典型的に、高速フーリエ変換(FFT)および高速フーリエ逆変換(IFFT)によって個々に実行される。
【0051】
本発明の仮想オーバーサンプリングベースの強化方法を試験するために、仮想オーバーサンプリングの有無を問わずに、チャネル推定値がシミュレーションを用いて比較された。シミュレーションパラメータは、以下の通りであった。
【0052】
図15は、本発明によるオーバーサンプリングを用いる場合のLSチャネル推定値とオーバーサンプリングを用いない場合のLSチャネル推定値とを比較する。シミュレーションは、3GPP ETUモデルと、1つのRBチャネルおよび2つのアンテナの使用とに基づいている。例えば、所定のブロック誤り率(BLER)0.01に対し、仮想オーバーサンプリングを用いる場合のチャネル推定値は、仮想オーバーサンプリングを用いない場合のチャネル推定値を下回る大きさが1dBより大きいSNRを容認可能である。図15からさらに分かることは、より高いSNRで、仮想オーバーサンプリングを用いない場合の性能は、不正確なチャネル推定に起因して、BLERフロアに接近するが、仮想オーバーサンプリングを用いる場合の性能は、BLERフロアに接近しないことである。理想的なチャネル推定値と、理想的な雑音および干渉電力推定値を用いる場合の理想的な性能もまた基準として表される。
【0053】
図16は、DCT法によって取得された(3GPP EVA5モデルに基づく)理想的ではないチャネル推定値に対する未加工ビット誤り率(rawBER)を、非特許文献3を参照のこと、本発明により強化されたチャネル推定値と比較する。シミュレーションは、1つのRBチャネルおよび2つのアンテナの使用に基づいている。理想的なチャネル推定値と理想的な雑音および干渉電力推定値とを用いる場合の理想的な性能は、同様に基準として表される。
【0054】
図17は、DCT法によって取得された(3GPP EVA5モデルに基づく)理想的ではないチャネル推定値に対するスループットを、非特許文献3を参照のこと、本発明により強化されたチャネル推定値と比較する。シミュレーションは、1つのRBチャネルと、2つのアンテナと、最大再送回数=4との使用に基づいている。
【0055】
図16および図17から、本発明による方法は、非特許文献3に記載されたDCT法に勝り、性能は、より高い仮想オーバーサンプリング・レートmを用いる場合に一層優れていることが分かる。さらに、本発明による方法の時間領域結果は、(i0による)タイミングアドバンス推定を行うために直接的に使用され得るが、DCTアルゴリズムの時間領域結果は、使用され得ない。
【0056】
雑音のある周波数領域(DFTベース)チャネル推定における仮想オーバーサンプリングの導入は、雑音およびチャネル電力漏洩の影響を著しく低減する。その結果として、チャネル推定値のSNRおよびシステムの性能が改善される。
【0057】
1個または少数個のRBが割り付けられたとき、オーバーサンプリングは、非特許文献2に記載されたDFTだけのチャネル推定と比較して、チャネル推定性能を非常に改善する。
【0058】
様々な変形および変更が特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨から逸脱することなく本発明に行われてもよいことが当業者によって理解されるであろう。
【0059】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、無線通信システムにおけるチャネル推定に係わり、特に、雑音のある周波数領域チャネル推定の強化に関する。
【背景技術】
【0002】
直交周波数分割多重(OFDM)は、マルチパスフェージングへの対抗と、モバイル・ワイヤレス・チャネル上での高ビットレート伝送とのための効率的な手法である。OFDMシステムでは、チャネル全体は、多くの狭いサブチャネルに分割され、サブチャネルは、並列にされ、その結果、シンボル長を増大し、シンボル間干渉(ISI)を低減する。チャネル推定は、OFDMシステムの性能を改善するために広く使用されている。チャネル推定は、ダイバーシティ結合、コヒーレント検出、および、空間・時間符号化のため極めて重要である。様々なOFDMチャネル推定スキームが文献に提案されている。
【0003】
最小二乗(LS)推定または線形最小平均二乗誤差(LMMSE)推定は、非特許文献1に提案された周波数領域ベースのチャネル推定方法である。
【0004】
非特許文献2は、LS推定チャネルの周波数応答を取得するために付加的な離散フーリエ変換(DFT)処理を導入した。非特許文献1における周波数領域推定方法と比べて、変換領域推定方法は、チャネルの時間領域特性を使用する。
【0005】
非特許文献3は、DFTの代わりに離散コサイン変換に基づくチャネル推定方法について記載する。
【0006】
しかし、直交周波数分割多元接続(OFDMA)システムのような多くのアプリケーションでは、(個々のユーザは、利用可能なスペクトルの一部だけにアクセスするので)完全な周波数応答のうちの一部のチャネル推定値だけが利用可能であり、時間領域内のチャネルインパルス応答の推定値は、従来型のDFTベースの方法から取得され得ない。部分周波数応答の離散フーリエ逆変換(IDFT)の後、チャネルインパルス応答は、時間領域内のすべてのタップに漏洩することになる。雑音と漏洩電力とが取り違えられるので、従来型のDFT方法は、雑音を推定するだけでなく、有用であるが、漏洩したチャネル電力を失うことにもなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】O.Edfors、M.Sandell、J.−J.van de Beek、S.K.Wilson、P.O.Borjesson著、「OFDM channel estimation by singular value decomposition」、IEEE Transactions on Communications、第46巻、第7号、ページ931−939、1998年
【0008】
【非特許文献2】Y.Zhao、A.Huang著、「A novel channel estimation method for OFDM mobile communication systems based on pilot signals and transform−domain processing」、the 47th IEEE Vehicular Technology conference(VTC ’97)予稿集、第3巻、ページ2089−2093、Phoenix、Ariz、USA、1997年5月
【0009】
【非特許文献3】Shaopeng Feng、Nan Hu、Bin Yang、Weiling Wu著、「DCT−Based Channel Estimation Method for MIMO−OFDM Systems」、Wireless Communications & Networking Conference、2007年IEEE
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一般的な目的は、雑音のある周波数領域チャネル推定値を強化することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、特許請求の範囲によって達成される。
【0012】
本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値を強化する方法は、以下のステップ、すなわち、
・雑音のある周波数領域チャネル推定値を整数倍率mによって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値に変換するステップと、
・時間領域チャネル推定値をm個のデインターリーブされたサブベクトルに分割するステップと、
・m個の雑音抑圧サブベクトルを形成するために個々のデインターリーブされたサブベクトルから雑音のあるタップを抑圧するステップと、
・最大信号対雑音比と関連付けられた雑音抑圧サブベクトルを選択するステップと、
・選択された雑音抑圧サブベクトルを雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値に変換するステップと、
・強化された周波数領域チャネル推定値を形成するために雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値のタップを位相調整するステップと、
を含む。
【0013】
本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置は、
・雑音のある周波数領域チャネル推定値を整数倍率mによって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値に変換するために構成されているオーバーサンプラと、
・時間領域チャネル推定値をm個のデインターリーブされたサブベクトルに分割するために構成されているデインターリーバと、
・m個の雑音抑圧サブベクトルを形成するために個々のデインターリーブされたサブベクトルから雑音のあるタップを抑圧するために構成されているサプレッサと、
・最大信号対雑音比と関連付けられた雑音抑圧サブベクトルを選択するために構成されているセレクタと、
・選択された雑音抑圧サブベクトルを雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値に変換するために構成されている離散フーリエ逆変換器(38)と、
・強化された周波数領域チャネル推定値を形成するために雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値のタップを位相調整するために構成されている移相器と、
を含む。
【0014】
本発明による無線通信システム受信機は、このような雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置を含む。
発明は、発明のさらなる目的および利点と一緒に、添付図面と併せて以下の説明を参照することによって最も良く理解されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】雑音のある周波数領域チャネル推定値の実施例の電力スペクトルを示した図である。
【図2】本発明の実施形態により強化された後の図1に対応する雑音のある周波数領域チャネル推定値の電力スペクトルを示した図である。
【図3】本発明による方法を示したフローチャートである。
【図4】本発明による方法の実施形態を示したフローチャートである。
【図5】ゼロパディング後の図1に対応する雑音のある周波数領域チャネル推定値の電力スペクトルを示した図である。
【図6】図5に対応するゼロパディングされたチャネル推定値のIDFTの電力分布を示した図である。
【図7a】図6に対応する時間領域推定値から取得されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図7b】図6に対応する時間領域推定値から取得されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図7c】図6に対応する時間領域推定値から取得されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図8a】図7aに対応する雑音抑圧されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図8b】図7bに対応する雑音抑圧されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図8c】図7cに対応する雑音抑圧されたデインターリーブされたサブベクトルの電力分布を示した図である。
【図9】本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置を含む無線受信機のブロック図である。
【図10】本発明によるエンハンサ装置の実施形態を示したブロック図である。
【図11】本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるオーバーサンプラの実施形態のブロック図である。
【図12】本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるオーバーサンプラの別の実施形態のブロック図である。
【図13】本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるサプレッサの実施形態のブロック図である。
【図14】本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるセレクタの実施形態のブロック図である。
【図15】本発明によって達成された改善を示した図である。
【図16】本発明によって達成された改善の別の態様を示した図である。
【図17】本発明によって達成された改善のさらに別の態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の記述は、OFDMA、例えば、ロング・ターム・エボリューション(LTE)システムに関連して本発明の原理を説明することになる。しかし、同じ原理は、WCDMAシステムのような他のシステムに適用されることがある。
【0017】
時間領域では、チャネル電力の大半は、副搬送波間の相関に起因してチャネルインパルス応答内の最初の少数のタップに集中される。しかし、1個または少数個のリソースブロック(RB)だけがユーザに割り付けられる場合、時間分解能は、低くなり、その結果として、チャネルパスは、互いに十分に分離しないことがある。さらに、チャネル電力の一部は、不適切なサンプリング位置に起因して時間領域内の至る所で漏洩することがある。したがって、サンプリング位置が最適ではない場合、雑音からチャネル電力漏洩を区別することが困難である。以下に提案される解決手法は、サンプリング位置を微調整するために仮想オーバーサンプリングに基づいている。この解決手法は、周波数領域内での位相回転によって実際のオーバーサンプリングの効果を模倣する。
【0018】
例えば、周波数領域におけるLSチャネル推定方法、または、周波数領域チャネル推定値を生じるその他の方法の結果として、長さNである雑音のある周波数領域チャネル推定値
が利用可能であると仮定する。
【0019】
図1は、このような雑音のある周波数領域チャネル推定値Hinの実施例の電力スペクトルを示した図である。
【0020】
図2は、本発明により強化された後の図1における雑音のある周波数領域チャネル推定値の電力スペクトルを示した対応する図であり、強化された周波数領域チャネル推定値Houtをもたらす。チャネル推定値Houtの電力スペクトルは、原チャネル推定値Hinの電力スペクトルより遙かに滑らかであることに注意する。
【0021】
図3は、本発明による方法を示したフローチャートである。図3のステップS1では、雑音のある周波数領域チャネル推定値Hinが整数倍率m、すなわち、m=2、3、4...によって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値に変換される。ステップS2は、時間領域チャネル推定値をm個のデインターリーブされたサブベクトルに分割する。ステップS3は、m個の雑音抑圧サブベクトルを形成するために個々のデインターリーブされたサブベクトルから雑音のあるタップを抑圧する。ステップS4は、最大信号対雑音比と関連付けられた雑音抑圧サブベクトルを選択する。ステップS5は、選択された雑音抑圧サブベクトルを雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値に変換する。ステップS6は、強化された周波数領域チャネル推定値Houtを形成するために雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値のタップを位相調整する。
【0022】
図4は、本発明による方法の実施形態を示したフローチャートである。ステップS11では、原チャネル推定値Hinは、図5に示されるように、(m−1)N個のゼロによってゼロパディングされる(本実施例では、m=3が仮定される)。ステップS12は、その後、オーバーサンプリング・レートmによる乗算がゼロパディング後に時間領域内で同じ電力を維持することになる(この乗算は、選択的であり、対応する補償がプロセスの後の段階、例えば、後述される最後のステップS22でも実行できる)として、
に従って、ゼロパディングされたチャネル推定値にm・N点IDFTを実行する。図6は、ゼロパディングされた原チャネル推定値HinのIDFThの電力分布を示す。
【0023】
記載されたステップS11+S12は、図3のステップS1の1つの可能な実施を示す。別の可能性は、雑音のある時間領域チャネル推定値を形成し、雑音のある時間領域チャネル推定値の個々のサンプルの後にm−1個のゼロをパディングし、ゼロパディングされた雑音のある時間領域チャネル推定値を低域通過濾波するために、雑音のある時間領域チャネル推定値HinにN点IDFTを実行することである。
【0024】
図4のステップ13は、
であり、
が天井関数であり、
が床関数であるとして、
に従って、時間領域チャネル推定値hをm個のデインターリーブされたサブベクトルhiにデインターリーブする。
結果として得られるサブベクトルh−1、h0、h1の電力分布は、図7a〜図7cに示される。
【0025】
サブベクトルhiは、*が巡回畳み込みを表すとして、HinのN点IDFTに対応するh0の端数シフトi/mによる巡回シフト版、すなわち、
と考えられることがある。
【0026】
ステップS14は、個々のサブベクトルhiのピーク電力タップの位置nmax,iを決定する。好ましくは、ピーク探索は、システム遅延が巡回プレフィックス(CP)の長さの範囲内であると仮定して、n=[0,L]かつn=[N−L,N−1]に限定される。ここで、Lは、CPの等価長でもよい仮定チャネル長である。実施例では、L=2が使用されている。
【0027】
ステップS15は、
に従って個々のサブベクトルhiの雑音レベルεiを推定し、すなわち、ピーク領域の外側にあるタップの平均電力を決定する。
【0028】
式(4)において、εiは、雑音および漏洩の電力である。したがって、漏洩が多いほど、εiが大きくなり、推定チャネル電力が小さくなる。
【0029】
アップリンク・マルチユーザ・マルチ入力マルチ出力(MU−MIMO)が可能にされた場合、式(4)中の上記の雑音位置L<mod(n−nmax,i,N)<N−Lは、MU−MIMOに起因して巡回シフトされた基準信号系列によって占有された位置を除くために応じて調整されるべきである。
【0030】
ステップS16は、有効チャネルパスを捕捉するためにiの個々の値の閾値を設定する。閾値は、Tεiに設定され、ここで、Tは定数であり、最良性能を達成するためにシミュレーションから取得できる。典型的な実施例として、T=2であるが、一般に、Tは、区間[1.5,2.5]内の値を有している。
【0031】
閾値Tεiが設定された後、ステップS17は、
に従ってhi内の雑音のあるタップを抑圧する。
【0032】
このステップは、それぞれの雑音閾値Tεiを下回る電力をもち、決定されたそれぞれの位置nmax,iからチャネル長Lの範囲内に配置されたタップ(巡回の意味では、タップN−1は、タップ0に隣接している)と、決定されたそれぞれの位置nmax,iからチャネル長Lの範囲内に配置されていないタップとを抑圧するが、ピーク電力タップはそのままにしておく。取得されたサブベクトルh’−1、h’0、h’1の電力分布は、図8a〜図8cに示される。それぞれのピーク電力タップの周りの十分に強いタップだけが抑圧を切り抜けることに注意する。
【0033】
ステップS18は、
として、個々の信号ベクトルh’iの信号電力P’iを推定する。
【0034】
ステップS19は、
として、個々のサブベクトルh’iの信号対雑音比(SNR)を計算する。
【0035】
ステップS20は、最大SNR γiを有しているサブベクトルh’i0、すなわち、
を選択する。
【0036】
ステップS21は、
に従って、選択されたサブベクトルh’i0(実施例では、i0=−1)にN点DFTを実行する。
【0037】
h’i0は、端数シフトi0/mによるh0の巡回シフト版であるため、周波数領域内の位相回転がこの時間シフトを補償するためにH’のタップに加えられる。このように、ステップS22は、
に従って、H’のタップを位相調整する。
【0038】
この強化された周波数領域チャネル推定値Houtの電力スペクトルは、図2に示される。
【0039】
強化されたチャネル推定値Houtは、チャネル推定値を必要とするデータ復調および他の目的のため使用されることになる。推定されたシステム遅延は、nmax,i0+i0/mである。
【0040】
(仮想)オーバーサンプリング・レートmの選択に関して、高オーバーサンプリング・レートは、システム性能のためいつでも優れているが、計算複雑性を増大する。このように、性能と費用とのトレードオフが好ましい。
【0041】
狭いユーザ帯域幅および高いSNR動作レベルは、チャネル電力漏洩によって引き起こされた信号対干渉雑音比(SINR)劣化を最小限に抑えるために高オーバーサンプリング・レートを必要とする。典型的に、より高次の変調、および、より高い符号化率は、高SNRを必要とし、単一のアンテナの場合、例えば、専用室内システムにおけるアンテナ1本当たりのSNRは、多重受信アンテナの場合のSNRより高い。
【0042】
所定のSNRとユーザ帯域幅(Nの値に対応する)とに関して、オーバーサンプリング・レートmに対するチャネル電力漏洩に起因したSINR劣化は、
として、
のように計算されることがある。
【0043】
上記計算は、異なるオーバーサンプリング・レートmに対し実行されることがある。SINR劣化要件、すなわち、劣化が定義済みの値より高くないことを満たす最小オーバーサンプリング・レートは、所定のSNRおよびユーザ帯域幅に対する仮想オーバーサンプリング・レートmになるように選択される。最適オーバーサンプリング・レートのルックアップテーブルは、テーブルへのインデックスとしてのSNRおよびユーザ帯域幅(Nによって表現される)に応じて構築されることがあり得る。
【0044】
図9は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置を含む無線受信機、本実施例では、LTE受信機を示したブロック図である。アンテナ受信アップリンク信号は、信号をベースバンドにダウン変換し、復調器12に転送する無線機10に接続される。復調器12は、受信されたシンボルを変調されたデータシンボルに変換し、変調されたデータシンボルは、ビットソフト値にデマッピングされる。デマッピング後、復調器12は、ビットソフト値を復号器14に転送し、復号器は、ビットソフト値を復号化する。復調器12は、等化器18に接続されたチャネル推定器16を含む。等化器18からの変調された等化されたデータシンボルは、デマッピング器20に転送され、デマッピング器は、データシンボルをビットソフト値にデマッピングする。チャネル推定値16は、本発明による周波数領域チャネル推定器22と雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置24とを含む。推定器22は、雑音のある周波数領域チャネル推定値を発生し、この雑音のある周波数領域チャネル推定値は、前述の原理によるエンハンサ装置24により強化される。
【0045】
図10は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置24の実施形態を示したブロック図である。エンハンサ装置24は、雑音のある周波数領域チャネル推定値Hinを整数倍率mによって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値hに変換するために構成されたオーバーサンプラ30を含む。オーバーサンプラ30は、時間領域チャネル推定値hをm個のデインターリーブされたサブベクトルhiに分割するために構成されたデインターリーバ32に接続される。デインターリーバ32は、m個の雑音抑圧サブベクトルh’iを形成するために、個々のデインターリーブされたサブベクトルhiからの雑音のあるタップを抑圧するために構成されたサプレッサ34に接続される。サプレッサ34は、最大信号対雑音比γiと関連付けられた雑音抑圧サブベクトルh’i0を選択するために構成されたセレクタ36に接続される。セレクタ36は、選択された雑音抑圧サブベクトルh’i0を雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値H’に変換するために構成された離散フーリエ変換器38に接続される。離散フーリエ変換器38は、強化された周波数領域チャネル推定値Houtを形成するために、雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値H’のタップを位相調整するために構成された移相器40に接続される。図示された実施形態では、セレクタ36によって使用された雑音レベルεiは、サプレッサ34から取得され、このサプレッサは、閾値Tεiを設定するためにこれらの雑音レベルを既に決定している。セレクタ36は、選択されたインデックスi0を移相器40にさらに転送する。
【0046】
図11は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるオーバーサンプラ30の実施形態のブロック図である。オーバーサンプラ30の本実施形態は、雑音のある周波数領域チャネル推定値Hinを(m−1)・N個のゼロでゼロパディングするために構成されたゼロパディング器42を含む。ゼロパディング器42は、ゼロパディングされた雑音のある周波数領域チャネル推定値Hinにm・N点離散フーリエ逆変換を実行するために構成されたIDFT44に接続される。
【0047】
図12は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるオーバーサンプラ30の別の実施形態のブロック図である。オーバーサンプラ30の本実施形態は、雑音のある周波数領域チャネル推定値HinにN点離散フーリエ逆変換を実行するために構成されたIDFT46を含む。IDFT46は、雑音のある時間領域チャネル推定値の個々のサンプルの後にm−1個のゼロをパディングするために構成されたゼロパディング器48に接続される。ゼロパディング器48は、ゼロパディングされた雑音のある時間領域チャネル推定値を低域通過濾波するために構成された低域通過フィルタ50に接続される。
【0048】
図13は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるサプレッサ34の実施形態のブロック図である。サプレッサ34の本実施形態は、個々のインターリーブされたサブベクトルhiのピーク電力タップのそれぞれの位置を決定するために構成された位置検出器52を含む。位置検出器52は、個々のサブベクトルhiのそれぞれの雑音閾値Tεiを検出するために構成された閾値検出器52に接続される。閾値検出器54は、それぞれの雑音閾値Tεiを下回る電力をもち、決定されたそれぞれの位置から所定のチャネル長Lの範囲内に配置されたタップ(巡回の意味では、タップN−1は、タップ0に隣接している)と、決定されたそれぞれの位置からチャネル長Lの範囲内に配置されていないタップとを抑圧するが、ピーク電力タップはそのままにしておくために構成されたタップ雑音サプレッサ56に接続される。
【0049】
図14は、本発明による雑音のある周波数領域チャネル推定値エンハンサ装置で使用されることがあるセレクタ36の実施形態のブロック図である。セレクタ36の本実施形態は、個々の雑音抑圧サブベクトルh’iのそれぞれの総電力指標を推定するために構成された電力推定器58を含む。電力推定器58は、対応する推定信号電力指標P’iおよび対応する推定雑音レベル推定値εiに基づいて、個々の雑音抑圧サブベクトルh’iと関連付けられたSNRγiを決定するために構成されたSNR計算器60に接続される。SNR計算器60は、最大計算SNRγiと関連付けられた雑音抑圧サブベクトルh’i0を選択するために構成されたサブベクトルセレクタ62に接続される。
【0050】
前述の様々なブロックおよび方法ステップの機能は、典型的に、対応するソフトウェアを動かす1台もしくは数台のマイクロプロセッサまたはマイクロ/信号プロセッサ組み合わせ体に基づいている。DFTおよびIDFTは、典型的に、高速フーリエ変換(FFT)および高速フーリエ逆変換(IFFT)によって個々に実行される。
【0051】
本発明の仮想オーバーサンプリングベースの強化方法を試験するために、仮想オーバーサンプリングの有無を問わずに、チャネル推定値がシミュレーションを用いて比較された。シミュレーションパラメータは、以下の通りであった。
【0052】
図15は、本発明によるオーバーサンプリングを用いる場合のLSチャネル推定値とオーバーサンプリングを用いない場合のLSチャネル推定値とを比較する。シミュレーションは、3GPP ETUモデルと、1つのRBチャネルおよび2つのアンテナの使用とに基づいている。例えば、所定のブロック誤り率(BLER)0.01に対し、仮想オーバーサンプリングを用いる場合のチャネル推定値は、仮想オーバーサンプリングを用いない場合のチャネル推定値を下回る大きさが1dBより大きいSNRを容認可能である。図15からさらに分かることは、より高いSNRで、仮想オーバーサンプリングを用いない場合の性能は、不正確なチャネル推定に起因して、BLERフロアに接近するが、仮想オーバーサンプリングを用いる場合の性能は、BLERフロアに接近しないことである。理想的なチャネル推定値と、理想的な雑音および干渉電力推定値を用いる場合の理想的な性能もまた基準として表される。
【0053】
図16は、DCT法によって取得された(3GPP EVA5モデルに基づく)理想的ではないチャネル推定値に対する未加工ビット誤り率(rawBER)を、非特許文献3を参照のこと、本発明により強化されたチャネル推定値と比較する。シミュレーションは、1つのRBチャネルおよび2つのアンテナの使用に基づいている。理想的なチャネル推定値と理想的な雑音および干渉電力推定値とを用いる場合の理想的な性能は、同様に基準として表される。
【0054】
図17は、DCT法によって取得された(3GPP EVA5モデルに基づく)理想的ではないチャネル推定値に対するスループットを、非特許文献3を参照のこと、本発明により強化されたチャネル推定値と比較する。シミュレーションは、1つのRBチャネルと、2つのアンテナと、最大再送回数=4との使用に基づいている。
【0055】
図16および図17から、本発明による方法は、非特許文献3に記載されたDCT法に勝り、性能は、より高い仮想オーバーサンプリング・レートmを用いる場合に一層優れていることが分かる。さらに、本発明による方法の時間領域結果は、(i0による)タイミングアドバンス推定を行うために直接的に使用され得るが、DCTアルゴリズムの時間領域結果は、使用され得ない。
【0056】
雑音のある周波数領域(DFTベース)チャネル推定における仮想オーバーサンプリングの導入は、雑音およびチャネル電力漏洩の影響を著しく低減する。その結果として、チャネル推定値のSNRおよびシステムの性能が改善される。
【0057】
1個または少数個のRBが割り付けられたとき、オーバーサンプリングは、非特許文献2に記載されたDFTだけのチャネル推定と比較して、チャネル推定性能を非常に改善する。
【0058】
様々な変形および変更が特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨から逸脱することなく本発明に行われてもよいことが当業者によって理解されるであろう。
【0059】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)を強化する方法であって、
前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)を整数倍率mによって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値(h)に変換するステップ(S1)と、
前記時間領域チャネル推定値(h)をm個のデインターリーブされたサブベクトル(hi)に分割するステップ(S2)と、
m個の雑音抑圧サブベクトル(h’i)を形成するために個々のデインターリーブされたサブベクトル(hi)から雑音のあるタップを抑圧するステップ(S3)と、
最大信号対雑音比(γi)と関連付けられた雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を選択するステップ(S4)と、
前記選択された雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)に変換するステップ(S5)と、
強化された周波数領域チャネル推定値(Hout)を形成するために前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)のタップを位相調整するステップ(S6)とを含む方法。
【請求項2】
前記抑圧するステップ(S3)は、
個々のインターリーブされたサブベクトル(hi)に対するピーク電力タップのそれぞれの位置を決定するステップ(S14)と、
個々のサブベクトル(hi)に対するそれぞれの雑音閾値(Tεi)を設定するステップ(S15+S16)と、
前記ピーク電力タップをそのままにしながら、前記それぞれの雑音閾値(Tεi)を下回る電力をもち、前記決定されたそれぞれの位置から所定のチャネル長(L)の範囲内に配置されたタップと、前記決定されたそれぞれの位置から前記チャネル長(L)の範囲内に配置されていないタップとを抑圧するステップ(S17)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位相調整するステップは、
kがタップインデックスであり、
Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であり、
i0が前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)におけるピーク位置であるとして、
に従って、前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)のタップH’kを移相するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択するステップ(S4)は、
個々のデインターリーブされたサブベクトル(hi)に対するそれぞれの雑音レベル指標(εi)を推定するステップ(S15)と、
個々の雑音抑圧サブベクトル(h’i)に対するそれぞれの総電力指標を推定するステップ(S18)と、
対応する前記推定された総電力指標および対応する前記推定された雑音レベル指標(εi)に基づいて、個々の雑音抑圧サブベクトル(h’i)と関連付けられた信号対雑音比(γi)を計算するステップ(S19)と、
計算された最大信号対雑音比(γi)と関連付けられた雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を選択するステップ(S20)とを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記分割するステップ(S2)は、
であり、
Nが前記周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であり、
が天井関数であり、
が床関数であるとして、
に従ってm個のデインターリーブされたサブベクトルhiを形成するステップを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記変換するステップ(S1)は、
Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数である、雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)を(m−1)・N個のゼロでゼロパディングするステップと、
ゼロパディングされた雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)にm・N点離散フーリエ逆変換を実行するステップとを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記変換するステップ(S1)は、
雑音のある時間領域チャネル推定値を形成するために、Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であるとして、前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)にN点離散フーリエ逆変換を実行するステップと、
前記雑音のある時間領域チャネル推定値の個々のサンプルの後にm−1個のゼロをパディングするステップと、
前記ゼロパディングされた雑音のある時間領域チャネル推定値を低域通過濾波するステップとを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)は、OFDMチャネルから取得される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)は、線形最小平均二乗誤差推定値であるとする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)エンハンサ装置(24)であって、
前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)を整数倍率mによって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値(h)に変換するために構成されているオーバーサンプラ(30)と、
前記時間領域チャネル推定値(h)をm個のデインターリーブされたサブベクトル(hi)に分割するために構成されているデインターリーバ(32)と、
m個の雑音抑圧サブベクトル(h’i)を形成するために、個々のデインターリーブされたサブベクトル(hi)から雑音のあるタップを抑圧するために構成されているサプレッサ(34)と、
最大信号対雑音比(γi)と関連付けられた雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を選択するために構成されているセレクタ(36)と、
前記選択された雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)に変換するために構成されている離散フーリエ変換器(38)と、
強化された周波数領域チャネル推定値(Hout)を形成するために、前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)のタップを位相調整するために構成されている移相器(40)とを含むエンハンサ装置(24)。
【請求項11】
前記サプレッサ(34)は、
個々のインターリーブされたサブベクトル(hi)に対するピーク電力タップのそれぞれの位置を決定するために構成されている位置検出器(52)と、
個々のサブベクトル(hi)に対するそれぞれの雑音閾値(Tεi)を検出するために構成されている閾値検出器(54)と、
前記ピーク電力タップをそのままにしながら、前記それぞれの雑音閾値(Tεi)を下回る電力をもち、前記決定されたそれぞれの位置から所定のチャネル長(L)の範囲内に配置されたタップと、前記決定されたそれぞれの位置から前記チャネル長(L)の範囲内に配置されていないタップとを抑圧するために構成されているタップ雑音サプレッサ(56)とを含む、請求項10に記載のエンハンサ装置。
【請求項12】
前記移相器(40)は、
kがタップインデックスであり、
Nが前記周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であり、
i0が前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)におけるピーク位置であるとして、
に従って、前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)の前記タップH’kを移相するために構成されている、請求項10または11に記載のエンハンサ装置。
【請求項13】
前記セレクタ(36)は、
個々の雑音抑圧サブベクトル(h’i)に対するそれぞれの総電力指標を推定するために構成されている電力推定器(58)と、
対応する前記推定された総電力指標および対応する推定された雑音レベル指標(εi)に基づいて、個々の雑音抑圧サブベクトル(h’i)と関連付けられた信号対雑音比(γi)を決定するために構成されている信号対雑音比計算器(60)と、
計算された最大信号対雑音比(γi)と関連付けられた雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を選択するために構成されているサブベクトルセレクタ(62)とを含む、請求項10から12のいずれかに記載のエンハンサ装置。
【請求項14】
前記デインターリーバ(32)は、
であり、
Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であり、
が天井関数であり、
が床関数であるとして、
に従ってm個のデインターリーブされたサブベクトルhiを形成するために構成されている、請求項10から13のいずれかに記載のエンハンサ装置。
【請求項15】
前記オーバーサンプラ(30)は、
Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であるとして、前記雑音のある時間領域チャネル推定値(Hin)に(m−1)・N個のゼロをパディングするために構成されているゼロパディング器(42)と、
前記ゼロパディングされた雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)にm・N点離散フーリエ逆変換を実行するために構成されている離散フーリエ逆変換器(44)とを含む、請求項10から14のいずれかに記載のエンハンサ装置。
【請求項16】
前記オーバーサンプラ(30)は、
雑音のある時間領域チャネル推定値を形成するために、Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であるとして、前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)にN点離散フーリエ逆変換を実行するために構成されている離散フーリエ逆変換器(46)と、
前記雑音のある時間領域チャネル推定値の個々のサンプルの後にm−1個のゼロをパディングするために構成されているゼロパディング器(48)と、
前記ゼロパディングされた雑音のある時間領域チャネル推定値を低域通過濾波するために構成されている低域通過フィルタ(50)とを含む、請求項10から14のいずれかに記載のエンハンサ装置。
【請求項17】
請求項10から16のいずれかに記載の雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)エンハンサ装置(24)を含む無線通信システム受信機。
【請求項1】
雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)を強化する方法であって、
前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)を整数倍率mによって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値(h)に変換するステップ(S1)と、
前記時間領域チャネル推定値(h)をm個のデインターリーブされたサブベクトル(hi)に分割するステップ(S2)と、
m個の雑音抑圧サブベクトル(h’i)を形成するために個々のデインターリーブされたサブベクトル(hi)から雑音のあるタップを抑圧するステップ(S3)と、
最大信号対雑音比(γi)と関連付けられた雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を選択するステップ(S4)と、
前記選択された雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)に変換するステップ(S5)と、
強化された周波数領域チャネル推定値(Hout)を形成するために前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)のタップを位相調整するステップ(S6)とを含む方法。
【請求項2】
前記抑圧するステップ(S3)は、
個々のインターリーブされたサブベクトル(hi)に対するピーク電力タップのそれぞれの位置を決定するステップ(S14)と、
個々のサブベクトル(hi)に対するそれぞれの雑音閾値(Tεi)を設定するステップ(S15+S16)と、
前記ピーク電力タップをそのままにしながら、前記それぞれの雑音閾値(Tεi)を下回る電力をもち、前記決定されたそれぞれの位置から所定のチャネル長(L)の範囲内に配置されたタップと、前記決定されたそれぞれの位置から前記チャネル長(L)の範囲内に配置されていないタップとを抑圧するステップ(S17)とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位相調整するステップは、
kがタップインデックスであり、
Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であり、
i0が前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)におけるピーク位置であるとして、
に従って、前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)のタップH’kを移相するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択するステップ(S4)は、
個々のデインターリーブされたサブベクトル(hi)に対するそれぞれの雑音レベル指標(εi)を推定するステップ(S15)と、
個々の雑音抑圧サブベクトル(h’i)に対するそれぞれの総電力指標を推定するステップ(S18)と、
対応する前記推定された総電力指標および対応する前記推定された雑音レベル指標(εi)に基づいて、個々の雑音抑圧サブベクトル(h’i)と関連付けられた信号対雑音比(γi)を計算するステップ(S19)と、
計算された最大信号対雑音比(γi)と関連付けられた雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を選択するステップ(S20)とを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記分割するステップ(S2)は、
であり、
Nが前記周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であり、
が天井関数であり、
が床関数であるとして、
に従ってm個のデインターリーブされたサブベクトルhiを形成するステップを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記変換するステップ(S1)は、
Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数である、雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)を(m−1)・N個のゼロでゼロパディングするステップと、
ゼロパディングされた雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)にm・N点離散フーリエ逆変換を実行するステップとを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記変換するステップ(S1)は、
雑音のある時間領域チャネル推定値を形成するために、Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であるとして、前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)にN点離散フーリエ逆変換を実行するステップと、
前記雑音のある時間領域チャネル推定値の個々のサンプルの後にm−1個のゼロをパディングするステップと、
前記ゼロパディングされた雑音のある時間領域チャネル推定値を低域通過濾波するステップとを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)は、OFDMチャネルから取得される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)は、線形最小平均二乗誤差推定値であるとする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)エンハンサ装置(24)であって、
前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)を整数倍率mによって仮想オーバーサンプリングされた時間領域チャネル推定値(h)に変換するために構成されているオーバーサンプラ(30)と、
前記時間領域チャネル推定値(h)をm個のデインターリーブされたサブベクトル(hi)に分割するために構成されているデインターリーバ(32)と、
m個の雑音抑圧サブベクトル(h’i)を形成するために、個々のデインターリーブされたサブベクトル(hi)から雑音のあるタップを抑圧するために構成されているサプレッサ(34)と、
最大信号対雑音比(γi)と関連付けられた雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を選択するために構成されているセレクタ(36)と、
前記選択された雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)に変換するために構成されている離散フーリエ変換器(38)と、
強化された周波数領域チャネル推定値(Hout)を形成するために、前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)のタップを位相調整するために構成されている移相器(40)とを含むエンハンサ装置(24)。
【請求項11】
前記サプレッサ(34)は、
個々のインターリーブされたサブベクトル(hi)に対するピーク電力タップのそれぞれの位置を決定するために構成されている位置検出器(52)と、
個々のサブベクトル(hi)に対するそれぞれの雑音閾値(Tεi)を検出するために構成されている閾値検出器(54)と、
前記ピーク電力タップをそのままにしながら、前記それぞれの雑音閾値(Tεi)を下回る電力をもち、前記決定されたそれぞれの位置から所定のチャネル長(L)の範囲内に配置されたタップと、前記決定されたそれぞれの位置から前記チャネル長(L)の範囲内に配置されていないタップとを抑圧するために構成されているタップ雑音サプレッサ(56)とを含む、請求項10に記載のエンハンサ装置。
【請求項12】
前記移相器(40)は、
kがタップインデックスであり、
Nが前記周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であり、
i0が前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)におけるピーク位置であるとして、
に従って、前記雑音抑圧予備周波数領域チャネル推定値(H’)の前記タップH’kを移相するために構成されている、請求項10または11に記載のエンハンサ装置。
【請求項13】
前記セレクタ(36)は、
個々の雑音抑圧サブベクトル(h’i)に対するそれぞれの総電力指標を推定するために構成されている電力推定器(58)と、
対応する前記推定された総電力指標および対応する推定された雑音レベル指標(εi)に基づいて、個々の雑音抑圧サブベクトル(h’i)と関連付けられた信号対雑音比(γi)を決定するために構成されている信号対雑音比計算器(60)と、
計算された最大信号対雑音比(γi)と関連付けられた雑音抑圧サブベクトル(h’i0)を選択するために構成されているサブベクトルセレクタ(62)とを含む、請求項10から12のいずれかに記載のエンハンサ装置。
【請求項14】
前記デインターリーバ(32)は、
であり、
Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であり、
が天井関数であり、
が床関数であるとして、
に従ってm個のデインターリーブされたサブベクトルhiを形成するために構成されている、請求項10から13のいずれかに記載のエンハンサ装置。
【請求項15】
前記オーバーサンプラ(30)は、
Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であるとして、前記雑音のある時間領域チャネル推定値(Hin)に(m−1)・N個のゼロをパディングするために構成されているゼロパディング器(42)と、
前記ゼロパディングされた雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)にm・N点離散フーリエ逆変換を実行するために構成されている離散フーリエ逆変換器(44)とを含む、請求項10から14のいずれかに記載のエンハンサ装置。
【請求項16】
前記オーバーサンプラ(30)は、
雑音のある時間領域チャネル推定値を形成するために、Nが前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)におけるタップの総数であるとして、前記雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)にN点離散フーリエ逆変換を実行するために構成されている離散フーリエ逆変換器(46)と、
前記雑音のある時間領域チャネル推定値の個々のサンプルの後にm−1個のゼロをパディングするために構成されているゼロパディング器(48)と、
前記ゼロパディングされた雑音のある時間領域チャネル推定値を低域通過濾波するために構成されている低域通過フィルタ(50)とを含む、請求項10から14のいずれかに記載のエンハンサ装置。
【請求項17】
請求項10から16のいずれかに記載の雑音のある周波数領域チャネル推定値(Hin)エンハンサ装置(24)を含む無線通信システム受信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2013−520113(P2013−520113A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553166(P2012−553166)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000215
【国際公開番号】WO2011/100858
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
2.LTE
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/CN2010/000215
【国際公開番号】WO2011/100858
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
2.LTE
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】
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