説明

チャンバー装置、これを備えたロボットセルおよびチャンバールームの換気方法

【課題】チャンバールームの天壁に他の製造機器を配設することを可能にし、
チャンバールーム内の塵埃を効率良く排出することができる。
【解決手段】チャンバールーム26内に、クリーンエアーを供給するエアー供給機構27と、一端がエアー供給機構27に連通し、他端がチャンバールーム26内に開放された送気口手段と、チャンバールーム26の下部に形成した排気口61から、チャンバールーム26内のエアーを排気するエアー排気機構30と、を備え、送気口手段は、チャンバールーム26内に鉛直軸周りの旋回流を発生させる複数の縦送気口ユニット29を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンエアーを供給しつつエアーを排気して、チャンバールームを所定の空気清浄度に維持するチャンバー装置、これを備えたロボットセルおよびチャンバールームの換気方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クリーンエアーをチャンバールームの上方から供給するエアー供給手段と、エアーをチャンバールームの下方から排気するエアー排気手段と、を備えた製造装置が知られている(特許文献1参照)。この製造装置は、エアーをダウンフローさせることによって、製造工程で発生する塵埃を下方へ排除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−125121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のチャンバールームでは、天壁部分にエアー供給手段(ファン・フィルターユニット)があるため、天壁部分に他の製造機器等を配設(天吊り)することができないことになる。すなわち、他の用途に天壁全域を使用することができず、天壁全域において他の製造機器等を配設することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、チャンバールームの天壁に他の製造機器を配設することを可能にし、
チャンバールーム内の塵埃を効率良く排出することができるチャンバー装置、これを備えたロボットセルおよびチャンバールームの換気方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のチャンバー装置は、チャンバールーム内に、クリーンエアーを供給するエアー供給手段と、一端がエアー供給手段に連通し、他端がチャンバールーム内に開放された送気口手段と、チャンバールームの下部に形成した排気口から、チャンバールーム内のエアーを排気するエアー排気手段と、を備え、送気口手段は、チャンバールーム内に鉛直軸周りの旋回流を発生させる複数の送気口ユニットを有していることを特徴とする。
【0007】
本発明のチャンバールームの換気方法は、チャンバールームに対しクリーンエアーの送気と排気とを行って、チャンバールーム内を換気するチャンバールームの換気方法であって、チャンバールームの側部からクリーンエアーの送気を行ってチャンバールーム内に旋回流を発生させると共に、チャンバールームの下部から排気を行うことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、チャンバールーム内において鉛直軸周りの旋回流を発生させると共に、チャンバールームの下部から排気を行うことによって、チャンバールーム内のエアーが、鉛直軸周りに旋廻しつつ降下する。これにより、旋廻流のダウンフローを形成することができる。そのため、エアーがチャンバールーム全域を流れ、エアーが滞留する空間を少なくすると共に、チャンバールーム内に発生した塵埃を下方に除去することができる。ゆえに、チャンバールーム内において、高い空気清浄度を維持することができる。また、必ずしも天壁部分(天井部分)に送気口手段を設ける必要がない構成によって、ダウンフローを形成することができるため、天壁部分において使用可能スペースを確保することができる。
【0009】
上記のチャンバー装置において、各送気口ユニットは、エアー供給手段に連通するエアーマニホールドと、エアーマニホールドに連通する複数の吹出し口と、を有していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、複数の吹出し口から均一にエアーを吹き出すことができ、容易に旋廻流を発生させることができる。また、各送気口ユニットを簡単な構成とすることができる。
【0011】
この場合、エアーマニホールドは、鉛直方向に延在し、複数の吹出し口は、エアーマニホールドに沿って鉛直方向に列設されていることが好ましい。
なお、ここで言う「列設」とは、一列に設けられて状態を言う。これら吹出し口の間隔が等間隔であれば、エアーが鉛直方向に均一に吹き出されるのでさらに良い。
【0012】
この構成によれば、複数の吹出し口を鉛直方向に列設することによって、鉛直方向全域で、上記旋廻流を発生することができる。そのため、更に、エアーが滞留する空間を少なくすることができる。
【0013】
この場合、各吹出し口は、クリーンエアーの吹出し方向を可変可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、各吹出し口の吹出し方向を調整することができるため、各種条件に合わせた適切な上記旋廻流を発生することができる。
【0015】
上記のチャンバー装置において、各送気口ユニットは、エアー供給手段に連通するエアーマニホールドと、エアーマニホールドに連通するスリット状の吹出し口と、を有していることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、各送気口ユニットを、スリット状の吹出し口を有するだけの簡単な構成にすることができると共に、吹き出されるエアーにより鉛直方向全域で上記旋廻流を発生することができる。
【0017】
これらの場合、チャンバールームは、直方体形状に形成され、複数の送気口ユニットは、チャンバールームの周側壁で構成される4つ縦方向隅部のうちの、少なくとも対角に位置する2つの縦方向隅部に配設された、少なくとも2つの送気口ユニットで構成されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、直方体形状のチャンバールームにおいて、周側壁で構成された縦方向隅部に、各送気口ユニットを配設することにより、周側壁部分にも使用可能スペースを確保することができる。また、エアーが滞留しやすい縦方向隅部の位置から、エアーを吹き出すことで、更に、エアーが滞留する空間を作ることがない。なお、ここにいう「縦方向隅部」とは、チャンバールームを平面視した際の四つ角の部分を示している。
【0019】
この場合、エアー排気手段は、チャンバールームにおける床部直下の下部空間に配設され、エアー中の異物を除去する排気フィルターを介して、チャンバールーム内のエアーおよび下部空間内のエアーを排気することを特徴とすることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、排気フィルターを設けることで、チャンバールーム内および下部空間内の異物(塵埃)が含有したエアーを清浄化することができ、クリーンエアーを外部に排気することができる。すなわち、チャンバー装置の排気エアーによって、外部雰囲気を汚染することがない。また、塵埃等が発生しやすいエアー排気手段の周囲のエアーも換気することができる。
【0021】
本発明のロボットセルは、上記のチャンバー装置と、チャンバールーム内に配設された天吊り型のロボットと、を備えたことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、上記のチャンバー装置を用いることにより、天吊り型ロボットを天壁に配設することができると共に、チャンバールーム内を所定の空気清浄度に維持することができる。すなわち、チャンバー装置の機能を損なうことなく天吊り型のロボットを設置することができる。
【0023】
また、本発明の他のチャンバー装置は、天壁と底壁と複数の側壁とで囲まれた方体形状のチャンバールーム内に、エアーを供給するエアー供給手段と、一端がエアー供給手段に連通され、他端がチャンバールームに連通された送気手段と、チャンバールームの底壁に形成した排気口から、チャンバールーム内のエアーを排気するエアー排気手段と、を備え、送気手段は、チャンバールームの複数の側壁により構成される隅部のうち少なくとも2つの隅部に設けられ、鉛直方向に延在する送気ユニットを有し、送気ユニットは、吹出し方向がチャンバールームの鉛直軸から0°を越える角度外れるように設けられた吹出し口を有することを特徴とする。
なお、ここで言う「方体形状」とは、直方体形状(四角柱形状)のほか、三角柱形状や、五角柱、六角柱等の多角柱形状を含む概念である。
【0024】
この構成によれば、吹出し口の吹出し方向が、チャンバールームの鉛直軸から0°を越える角度外れるように構成されているため、チャンバールーム内において鉛直軸周りの旋回流を発生させることができる。また、エアー排気手段によりチャンバールームの下部から排気を行うことができる。これにより、チャンバールーム内のエアーが、鉛直軸周りに旋廻しつつ降下し、旋廻流のダウンフローを形成することができる。このため、エアーがチャンバールーム全域を流れ、エアーが滞留する空間を少なくすると共に、チャンバールーム内に発生した塵埃を下方に除去することができる。したがって、チャンバールーム内において、高い空気清浄度を維持することができる。また、必ずしも天壁部分(天井部分)に送気口手段を設ける必要がない構成によって、ダウンフローを形成することができるため、天壁部分において使用可能スペースを確保することができる。
【0025】
この場合、各送気ユニットは、複数の吹出し口を有しており、複数の吹出し口は、鉛直方向に等間隔に列設されていることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、複数の吹出し口を鉛直方向に列設することによって、鉛直方向全域で、上記旋廻流を発生することができる。そのため、更に、エアーが滞留する空間を少なくすることができる。
【0027】
同様に、各送気ユニットは、鉛直方向に延在するスリット状の吹出し口を有することが好ましい。
【0028】
この構成によれば、各送気口ユニットを、スリット状の吹出し口を有するだけの簡単な構成にすることができると共に、吹き出されるエアーにより鉛直方向全域で上記旋廻流を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るロボットセルの側面図である。
【図2】ロボットセルの配管系を示した模式図である。
【図3】横送気口ユニットおよび縦送気口ユニットを示したロボットセルの断面図である。
【図4】ロボットセル内のエアーの流れを示した説明図である。
【図5】縦送気口ユニットの変形例(a)および配置構成(b)を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付した図面を参照して、本発明のチャンバー装置を適用したロボットセルについて説明する。このロボットセルは、天吊り型の産業用ロボットを収容し、チャンバールーム内の作業エリアにおいて、ワークに対し各種作業を行うものである。特に、このロボットセルは、チャンバールーム内に適切なエアーの流れを、効率良く作ることができる。
【0031】
図1および図2に示すように、ロボットセル1は、全体として直方体の形状を有しており、上下中間位置に配設した支持板2によって上部空間3と下部空間4とに分断されている。上部空間3は、チャンバールーム26によって覆われており、産業用ロボット12の作業エリアとして用いられる。一方、下部空間4は、下部外壁5によって覆われており、後述する制御装置13等を収納する収納エリアとして用いられる。ロボットセル1は、チャンバールーム26および下部外壁5によって全体として密閉されている。また、支持板2には、上部空間3と下部空間4とを連通するための複数の連通孔6が形成されている。なお、ロボットセル1は、その内部が外部に対し正圧となるように、エアーの供給量および排気量が制御されている。なお、支持板2は、チャンバールーム26の底部となる。
【0032】
ロボットセル1は、チャンバールーム26を有すると共にチャンバールーム26内を所定の空気清浄度に維持するチャンバー装置11と、チャンバールーム26の天壁26bに天吊りされた産業用ロボット(ロボット)12と、チャンバー装置11および産業用ロボット12を制御する制御装置13と、を備えている。なお、ロボットセル1は、これに加えて、チャンバールーム26や支持板2上に各種製造機器等(ワークをセットしたパレットや作業台等を含む)を配設することによって、ワークの製造装置や組立装置として機能する。
【0033】
産業用ロボット12は、天吊り型の水平多関節ロボット(いわゆるスカラーロボット)であり、アームおよびエンドエフェクターを駆動して、各種作業を行う。
【0034】
チャンバー装置11は、上部空間3を覆うチャンバールーム26と、チャンバールーム26内にクリーンエアーを供給するエアー供給機構(エアー供給手段)27と、チャンバールーム26における天壁26aと四周壁26bとで構成された隅部(以下、横方向隅部と記載)に横設された2つの横送気口ユニット28と、チャンバールーム26の四周壁26bの隅部(以下、縦方向隅部と記載)に縦設された4つの縦送気口ユニット29と、下部外壁5の側壁に配設されたエアー排気機構(エアー排気手段)30と、を備えている。
【0035】
エアー供給機構27から供給されたクリーンエアーは、各横送気口ユニット28および各縦送気口ユニット29からチャンバールーム26内に供給される。チャンバールーム26内のエアーは、エアー排気機構30により、下部空間4を介して、ロボットセル1外部に排気される。なお、請求項にいう送気口ユニットは、縦送気口ユニット29により構成されており、請求項にいう送気口手段は、4つの縦送気口ユニット29により構成されている。
【0036】
チャンバールーム26は、直方体形状の枠体にシールを介して天壁26aおよび四周壁(周側壁)26bを取り付けて構成されている。四周壁26bは、4枚の側壁で構成され、枠体に対し取り外し可能に構成されている。チャンバールーム26は、その床部に当たる支持板2(床壁)を除いて密閉されており、支持板2の複数の連通孔6を介して、床部直下の下部空間4と連通している。
【0037】
エアー供給機構27は、圧縮エアーを供給するエアー供給設備36と、上流端がエアー供給設備36に接続された主流路37と、主流路37を2方に分岐する2本の分岐流路38と、各分岐流路38をそれぞれ3方に分岐すると共に、下流端が異なる送気口ユニット28、29それぞれに接続した3本の個別流路39と、を備えている。すなわち、エアー供給設備36から供給されたエアーは、6方に分岐して、2つの横送気口ユニット28および4つの縦送気口ユニット29に供給される。
【0038】
主流路37には、エアー供給設備36側から順に、レギュレーター45、開閉弁46およびフィルター47が介設されている。レギュレーター45は、制御装置13からの指令に基づいて、供給されるエアーの圧力を制御する。フィルター47は、いわゆるHEPAフィルター (High Efficiency Particulate Air Filter)であり、エアー供給設備36から供給されたエアーを清浄化(異物除去)して、クリーンエアーを生成する。すなわち、エアー供給設備36から供給されたエアーは、レギュレーター45によって、圧力調整がなされると共に、フィルター47によって、清浄化されてから、各送気口ユニット28,29に供給される。なお、各個別流路39に、制御装置13に接続された開閉弁をそれぞれ介設し、各送気口ユニット28、29へのエアーの供給を個別に制御できるようにしても良い。
【0039】
図1、図2および図3(a)に示すように、2つの横送気口ユニット28は、天壁26aと四周壁26bとで構成された4つ横方向隅部のうち、平行な2つの横方向隅部に配設されている。すなわち、天壁26aの前後端の位置もしくは左右端の位置に配設されている。各横送気口ユニット28は、個別流路39に接続される横マニホールド51と、横マニホールド51に連通する複数のスリットノズル52と、を備えている。すなわち、各横送気口ユニット28は、一端(上流端)がエアー供給機構27に連通し、他端(下流端)がチャンバールーム26内に開放されている。
【0040】
横マニホールド51は、エアーマニホールドであり、横方向隅部に沿って水平方向に延在している。複数のスリットノズル52は、横マニホールド51の延在方向(水平方向)に沿って列設されており、それぞれ横マニホールド51に連通されている。各スリットノズル52は、スリット状の吹出し口を有する共に、水平な吹出し方向を有している。すなわち、各スリットノズル52は、クリーンエアーの一部をチャンバールーム26の天面(天壁26aの内面)に吹き付けるように設けられている。また、2つの横送気口ユニット28は、対向位置に配置されており、2つの横送気口ユニット28の各スリットノズル52が向き合うようになっている。そのため、各スリットノズル52は、相互に内向きの流れとなるように、クリーンエアーを吹き出す構成となっている。なお、各スリットノズル52は、フレキシブルボールジョイントによって、吹き出し方向が可変可能に構成されている。ここで言う「可変可能」とは、吹出し口の角度を変更できることを言う。これにより、例えば、用途に応じてエアーの吹出し方向を変更したい場合、容易に変更できる。
【0041】
図1、図2および図3(b)に示すように、4つの縦送気口ユニット29は、四周壁26bが構成する4つ縦方向隅部にそれぞれ配設されている。各縦送気口ユニット29は、個別流路39に接続される縦マニホールド(エアーマニホールド)53と、縦マニホールド53に連通する複数のスリットノズル54と、を備えている。すなわち、各縦送気口ユニット29は、一端(上流端)がエアー供給機構27に連通し、他端(下流端)がチャンバールーム26内に開放されている。
【0042】
縦マニホールド53は、エアーマニホールドであり、縦方向隅部に沿って鉛直方向に延在している。複数のスリットノズル54は、縦マニホールド53の延在方向(鉛直方向)に沿って列設されており、それぞれ縦マニホールド53に連通されている。各スリットノズル54は、スリット状の吹出し口を有すると共に、斜め下向きで且つ、チャンバールーム26の真ん中を中心とする鉛直軸周りの円周方向に倣った吹出し方向を有している。すなわち、各スリットノズル54は、チャンバールーム26内で鉛直軸周りの旋廻流を発生するように、クリーンエアーを吹き出す構成となっている。
【0043】
より具体的には、各スリットノズル54は、その吹出し方向が、チャンバールーム26の水平方向の中心である鉛直中心軸V(鉛直軸)から外れる角度となるように設置されている(図3(b)参照)。この場合の角度は、最適な旋廻流を発生させるものであり、鉛直中心軸V(チャンバールーム26の中心)を通る仮想線を角度0°としたときに、0°を越え且つ側壁の内面に沿う角度の範囲であることが好ましい。
【0044】
図1および図2に示すように、エアー排気機構30は、下部外壁5の側壁に配設されると共に下部外壁5(下部空間4)の内部と外部とを連通する排気口61と、排気口61上に設けられる共に排気するエアーを清浄化する排気フィルター62と、同じく排気口61上に設けられると共に、排気フィルター62の抵抗に勝って、エアーを排気するファンユニット63と、を備えている。エアー排気機構30は、排気口61からチャンバールーム26内のエアーおよび下部空間4内のエアーを外部に排気する。なお、排気フィルター62に対し、ファンユニット63は、下部空間4の内側(上流側)に配設されている。
【0045】
なお、実施形態のチャンバールーム26は、直方体形状、具体的には四角柱形状に形成されているが、これを三角柱形状や、五角柱、六角柱等の多角柱形状に形成としてもよい。また、これに設けられる縦送気口ユニット29(縦マニホールド53)は、少なくとも複数の縦方向隅部のうち2つの縦方向隅部に配設されていればよい。
【0046】
図1および図2に示すように、制御装置13は、産業用ロボット12を制御するロボットコントローラーを備えている。制御装置13は、その発熱部を冷却するために、発熱部にエアーを吹き付ける冷却ファンユニット64を有している。なお、冷却ファンユニット64によって発生したエアーの流れがスムーズに排気されるように、冷却ファンユニット64による送気方向と、エアー排気機構30による吸気方向とが、一致するようになっている。
【0047】
ここで図4を参照して、ロボットセル1内におけるエアーの流れについて説明する。なお、このエアーの流れは、産業用ロボット12の稼動時において、チャンバー装置11を駆動することで形成される。図4に示すように、チャンバールーム26内では、2つの横送気口ユニット28の各スリットノズル52および4つの縦送気口ユニット29の各スリットノズル54からエアーを同時に吹き出すことで、所定のエアーの流れ(気流)を形成する。具体的には、2つの横送気口ユニット28の各スリットノズル52は、相互に内向きの流れとなるように、クリーンエアーを吹き出す。これによって、チャンバールーム26の天壁26a付近では、クリーンエアーの一部がチャンバールーム26の天面に吹きつけられると共に、吹き出された相互のクリーンエアーが衝突する。エアー排気機構30がチャンバールーム26の下部に設けられているため、吹き出されたエアーは、衝突後にスムーズに降下し、ダウンフローを形成する。
【0048】
一方、4つの縦送気口ユニット29の各スリットノズル54は、鉛直軸周りの旋廻流を発生するように、クリーンエアーを吹き出す。これによって、天壁26a付近を除くチャンバールーム26内で鉛直軸周りの旋廻流が発生する。エアー排気機構30がチャンバールーム26の下部に設けられているため、吹き出されるエアーは、旋廻しつつ降下し、旋廻流のダウンフローを形成する。
【0049】
これらにより、所定のエアーの流れによって支持板2に達したエアーは、連通孔6から下部空間4に供給される。その後、下部空間4のエアーは、エアー排気機構30によって、排気口61から排気される。このように、産業用ロボット12の稼動時において、常時、チャンバールーム26に対し、クリーンエアーの送気と排気とを行って、所定のエアーの流れで、チャンバールーム26内を換気する。
【0050】
このように、縦マニホールド53と複数のスリットノズル54とを備えた縦送気口ユニット29を用いることで、複数のスリットノズル54から均一にエアーを吹き出すことができ、良好な旋廻流を発生させることができる。また、各縦送気口ユニット29を簡単な構成とすることができる。
【0051】
また、複数のスリットノズル54を鉛直方向に列設することによって、鉛直方向全域で、上記旋廻流を発生することができる。そのため、更に、エアーが滞留する空間を作ることがない。また、天壁26aに送気口手段を設けなくても、適切なダウンフローを発生させることができる。
【0052】
さらに、各スリットノズル54の吹出し方向を可変可能に構成することにより、各スリットノズル54の吹出し方向を調整することができるため、各種条件に合わせた適切な上記旋廻流を発生することができる。
【0053】
なお、上記実施形態においては、ダウンフローを促進するために、各スリットノズル54の吹出し方向を斜め下方向としたが、各スリットノズル54の吹出し方向を、斜め下方向に代えて水平方向とする構成であっても良い。
【0054】
次に、図5を参照して、縦送気口ユニット29の変形例について説明する。図5に示すように、変形例の縦送気口ユニット29は、前後端を閉塞した円筒状の縦マニホールド53と、縦マニホールド53に設けられ、鉛直方向に延在するスリット孔(スリット状の吹出し口)65と、を備えている(図5(a)参照)。スリット孔65は、チャンバールーム26の真ん中を中心とする鉛直軸周りの円周方向に倣う方向に設けられており、鉛直軸周りの円周方向に倣ってクリーンエアーを吹き出す構成を有している(図5(b)参照)。すなわち、スリット孔65は、チャンバールーム26内で鉛直軸周りの旋廻流を発生するように、クリーンエアーを吹き出す。
【0055】
このように、各縦送気口ユニット29が、縦マニホールド53とスリット孔65とを有する構成であるため、各縦送気口ユニット29を簡単な構成にすることができると共に、均一に吹き出されるエアーにより鉛直方向全域で上記旋廻流を発生することができる。そのため、更に、エアーが滞留する空間を作ることがない。
【0056】
以上のような構成によれば、チャンバールーム26内において鉛直軸周りの旋回流を発生させると共に、チャンバールーム26の下部から排気を行うことによって、チャンバールーム26内のエアーが、鉛直軸周りに旋廻しつつ降下する。これにより、旋廻流のダウンフローを形成することができる。そのため、エアーがチャンバールーム26全域を流れ、エアーが滞留する空間を作ることがないと共に、チャンバールーム26内に発生した塵埃を下方に除去することができる。ゆえに、チャンバールーム26内において、高い空気清浄度を維持することができる。また、必ずしも天壁26a部分(天井部分)に送気口手段を設ける必要がない構成によって、ダウンフローを形成することができるため、天壁26a部分において使用可能スペースを確保することができる。
【0057】
また、直方体形状のチャンバールーム26において、四周壁26bで構成された縦方向隅部に、各縦送気口ユニット29を配設することにより、四周壁26b部分にも使用可能スペースを確保することができる。また、エアーが滞留しやすい縦方向隅部の位置から、エアーを吹き出すことで、更に、エアーが滞留する空間を作ることがない。
【0058】
さらに、排気フィルター62を設けることで、チャンバールーム26内および下部空間内の異物(塵埃)が含有したエアーを清浄化することができ、クリーンエアーを外部に排気することができる。すなわち、チャンバー装置11(ロボットセル1)の排気エアーによって、外部雰囲気を汚染することがない。また、塵埃等が発生しやすいエアー排気機構30の周囲のエアーも換気することができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、天吊り型の産業用ロボット12を用いたロボットセル1に、本発明のチャンバー装置11を適用したが、他の各種製造装置等に本発明のチャンバー装置11を適用しても良い。また、本実施形態では、平坦な天壁26aを有するチャンバールーム26に対し、本発明を適用したが、天壁部分の形状によって天壁26a部分に送気口手段を配設することができないチャンバールーム26に対し、本発明を適用しても良い。
【0060】
また、本実施形態においては、縦送気口ユニット29を4つ縦方向隅部全てに配設したが、4つ縦方向隅部のうち、2つの縦方向隅部のみに縦送気口ユニット29を配設する構成であっても良い。例えば、対角に位置する縦方向隅部に2つの縦送気口ユニット29を配設する構成であっても良い。
【0061】
さらに、本実施形態においては、チャンバールーム26の縦方向隅部に各縦送気口ユニット29を配設する構成であったが、四周壁26bの縦方向隅部に対する中央部に各縦送気口ユニット29を配設する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0062】
1:ロボットセル、 4:下部空間、 11:チャンバー装置、 12:産業用ロボット、 26:チャンバールーム、 26b:四周壁、 27:エアー供給機構、 29:縦送気口ユニット、 30:エアー排気機構、 53:縦マニホールド、 61:排気口、 62:排気フィルター、 65:スリット孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバールーム内に、クリーンエアーを供給するエアー供給手段と、
一端が前記エアー供給手段に連通し、他端が前記チャンバールーム内に開放された送気口手段と、
前記チャンバールームの下部に形成した排気口から、前記チャンバールーム内のエアーを排気するエアー排気手段と、を備え、
前記送気口手段は、前記チャンバールーム内に鉛直軸周りの旋回流を発生させる複数の送気口ユニットを有していることを特徴とするチャンバー装置。
【請求項2】
前記各送気口ユニットは、
前記エアー供給手段に連通するエアーマニホールドと、
前記エアーマニホールドに連通する複数の吹出し口と、を有していることを特徴とする請求項1に記載のチャンバー装置。
【請求項3】
前記エアーマニホールドは、鉛直方向に延在し、
複数の前記吹出し口は、前記エアーマニホールドに沿って鉛直方向に列設されていることを特徴とする請求項2に記載のチャンバー装置。
【請求項4】
前記各吹出し口は、クリーンエアーの吹出し方向を可変可能に構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のチャンバー装置。
【請求項5】
前記各送気口ユニットは、
前記エアー供給手段に連通するエアーマニホールドと、
前記エアーマニホールドに連通するスリット状の吹出し口と、を有していることを特徴とする請求項1に記載のチャンバー装置。
【請求項6】
前記チャンバールームは、直方体形状に形成され、
複数の前記送気口ユニットは、前記チャンバールームの周側壁で構成される4つ縦方向隅部のうちの、少なくとも対角に位置する2つの前記縦方向隅部に配設された、少なくとも2つの前記送気口ユニットで構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のチャンバー装置。
【請求項7】
前記エアー排気手段は、
前記チャンバールームにおける床部直下の下部空間に配設され、
エアー中の異物を除去する排気フィルターを介して、前記チャンバールーム内のエアーおよび前記下部空間内のエアーを排気することを特徴とすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のチャンバー装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のチャンバー装置と、
前記チャンバールーム内に配設された天吊り型のロボットと、を備えたことを特徴とするロボットセル。
【請求項9】
チャンバールームに対しクリーンエアーの送気と排気とを行って、前記チャンバールーム内を換気するチャンバールームの換気方法であって、
前記チャンバールームの側部から前記クリーンエアーの送気を行って前記チャンバールーム内に旋回流を発生させると共に、前記チャンバールームの下部から排気を行うことを特徴とするチャンバールームの換気方法。
【請求項10】
天壁と底壁と複数の側壁とで囲まれた方体形状のチャンバールーム内に、エアーを供給するエアー供給手段と、
一端が前記エアー供給手段に連通され、他端が前記チャンバールームに連通された送気手段と、
前記チャンバールームの底壁に形成した排気口から、前記チャンバールーム内のエアーを排気するエアー排気手段と、を備え、
前記送気手段は、前記チャンバールームの複数の前記側壁により構成される隅部のうち少なくとも2つの隅部に設けられ、鉛直方向に延在する送気ユニットを有し、
前記送気ユニットは、吹出し方向が前記チャンバールームの鉛直軸から0°を越える角度外れるように設けられた吹出し口を有することを特徴とすることを特徴とするチャンバー装置。
【請求項11】
前記各送気ユニットは、複数の吹出し口を有しており、
複数の前記吹出し口は、鉛直方向に等間隔に列設されていることを特徴とする請求項10に記載のチャンバー装置。
【請求項12】
前記各送気ユニットは、鉛直方向に延在するスリット状の吹出し口を有することを特徴とする請求項10に記載のチャンバー装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate