説明

チューブインチューブダンパ

【課題】ゴム状弾性体とアウターチューブとの接着状況にむらが発生するのを抑制し、もって接着品質を安定させることができるダンパ構造を提供する。
【解決手段】互いに同芯状に組み付けられるインナーチューブ2とアウターチューブ3をゴム状弾性体4を介して連結してなり、ゴム状弾性体4はインナーチューブ2の外周面に接着されてインナーチューブ2と共にアウターチューブ3に挿入されるチューブインチューブダンパにおいて、ゴム状弾性体4とアウターチューブ3に、挿入時にこれら両者を互いにねじ込み結合するためのねじ目形状5が設けられている。インナーチューブ2とアウターチューブ3の組み合わせ態様については、両チューブを各1本ずつ組み合わせる態様と、アウターチューブ1本に対しインナーチューブ2本を組み合わせる態様とがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに同芯状に組み付けられるインナーチューブとアウターチューブを両チューブの間に介装されるゴム状弾性体を介して連結してなるチューブインチューブダンパに関するものである。本発明のチューブインチューブダンパは例えば、自動車等車両のプロペラシャフトに用いられ、あるいは駆動力を伝える他の種類のシャフトに用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から図8に示すように、互いに同芯状に組み付けられるインナーチューブ51とアウターチューブ52を両チューブ51,52の間に介装されるゴム状弾性体53を介して連結してなるチューブインチューブダンパが知られており、このダンパは以下のようにして製造されている。
(1)インナーチューブ51の外周面にゴム状弾性体53を加硫接着し、または予め筒状に成形したゴム状弾性体53をインナーチューブ51の外周面に装着して後加熱接着し、インナーチューブ51とゴム状弾性体53とをサブアッセンブリする。
(2)次いで、アウターチューブ52の内周面に接着剤を塗布するなどの接着処理を施すとともに同内周面に嵌合液を塗布し、このアウターチューブ52の内周空間に上記サブアッセンブリ品を軸方向から圧入する。
(3)次いで、ゴム状弾性体53をアウターチューブ52の内周面に後加熱接着する。
【0003】
上記従来品には、ゴム状弾性体53とアウターチューブ52との接着状況にむら(斑)があり、よって接着品質が安定しないと云う不都合がある。これは各部品が軸方向に長い形状であるため、圧入時に接着剤が剥がれたり、或はゴム状弾性体(各ゴム塊)53に応力分布の不均一が発生したりすることが原因と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−60235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて、ゴム状弾性体とアウターチューブとの接着状況にむらが発生するのを抑制し、もって接着品質を安定させることができるダンパ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるダンパは、互いに同芯状に組み付けられるインナーチューブとアウターチューブをゴム状弾性体を介して連結してなり、前記ゴム状弾性体は前記インナーチューブの外周面に接着されて前記インナーチューブと共に前記アウターチューブに挿入されるチューブインチューブダンパにおいて、前記ゴム状弾性体と前記アウターチューブに、前記挿入時にこれら両者を互いにねじ込み結合するためのねじ目形状が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2によるダンパは、上記した請求項1記載のチューブインチューブダンパにおいて、前記インナーチューブは、前記アウターチューブにその軸方向一方から挿入される第一インナーチューブと、前記アウターチューブにその軸方向他方から挿入される第二インナーチューブとを有し、前記第一インナーチューブの外周面に第一ゴム状弾性体が接着されるとともに前記第二インナーチューブの外周面に第二ゴム状弾性体が被着され、前記第一ゴム状弾性体とアウターチューブ、および前記第二ゴム状弾性体とアウターチューブにそれぞれ前記ねじ目形状が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3によるダンパは、上記した請求項2記載のチューブインチューブダンパにおいて、前記第一ゴム状弾性体と前記アウターチューブの組み合わせによるねじ目形状と、前記第二ゴム状弾性体と前記アウターチューブの組み合わせによるねじ目形状とは、ねじ目の螺旋の向きが同じ向きとされていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4によるダンパは、上記した請求項2記載のチューブインチューブダンパにおいて、前記第一ゴム状弾性体と前記アウターチューブの組み合わせによるねじ目形状と、前記第二ゴム状弾性体と前記アウターチューブの組み合わせによるねじ目形状とは、ねじ目の螺旋の向きが反対の向きとされていることを特徴とする。
【0010】
更にまた、本発明の請求項5によるダンパは、上記した請求項1ないし4の何れかに記載のチューブインチューブダンパにおいて、前記ねじ目形状は、前記ゴム状弾性体に設けられたねじ島を備える雄ねじ部と、前記アウターチューブに設けられたねじ溝を備える雌ねじ部との組み合わせよりなり、前記ねじ目形状のピッチは一定であって、前記ねじ島およびねじ溝の軸方向幅は挿入方向の先端から後方へかけて漸次幅広に設定されていることを特徴とする。
【0011】
上記構成を備える本発明のダンパにおいては、ゴム状弾性体とアウターチューブに互いをねじ込むためのねじ目形状が設けられているため、上記従来品のように圧入するのではなく、ゴム状弾性体およびインナーチューブよりなるサブアッセンブリ品とアウターチューブとをねじ込むことにより組み付ける。しめしろの大きさは、従来の圧入と比較して小さめに設定し、または零に設定し、スムーズにねじ込めるようにする。また、ねじ込み最終段階で捩りトルクをかけ、ゴム状弾性体とアウターチューブとの隙間をなくし、後加熱接着処理を行なう。したがってスムーズにねじ込みが行なわれるため、接着処理による接着剤が剥がれるのを抑制することが可能となり、またゴム状弾性体に応力分布の不均一が発生するのを抑制することが可能となる。また、上記ねじ目形状を設けた場合には、ゴム状弾性体とアウターチューブとが円周方向に機械的に係合するため、過大トルクに対するストッパ機能を発揮することが可能となる。
【0012】
インナーチューブとアウターチューブの組み合わせ態様については、両チューブを各1本ずつ組み合わせる態様と、アウターチューブ1本に対しインナーチューブ2本を組み合わせる態様とが考えられ、後者の場合、インナーチューブは、アウターチューブにその軸方向一方から挿入される第一インナーチューブと、アウターチューブにその軸方向他方から挿入される第二インナーチューブとを有し、第一インナーチューブの外周面に第一ゴム状弾性体が接着されるとともに第二インナーチューブの外周面に第二ゴム状弾性体が被着され、第一ゴム状弾性体とアウターチューブ、および第二ゴム状弾性体とアウターチューブにそれぞれねじ目形状が設けられる。またこの場合、第一ゴム状弾性体とアウターチューブの組み合わせによるねじ目形状と、第二ゴム状弾性体とアウターチューブの組み合わせによるねじ目形状とは、ねじ目の螺旋の向きが同じ向きとされる態様と、ねじ目の螺旋の向きが反対の向きとされる態様とが考えられ、態様ごとに異なる捩り特性が発揮される。
【0013】
ねじ目形状のピッチについては、スムーズなねじ込みを確保するため、ピッチを一定に設定するのが望ましい。
【0014】
ねじ島およびねじ溝の軸方向幅については、これも一定で良いが、挿入方向の先端から後方へかけて漸次幅広に設定すると、ねじ込み当初の回転抵抗が減少するため、ねじ込みが一層スムーズなものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0016】
すなわち、本発明のダンパによれば、ゴム状弾性体とアウターチューブに互いをねじ込むためのねじ目形状が設けられているため、従来のように圧入するのではなく、ゴム状弾性体およびインナーチューブよりなるサブアッセンブリ品とアウターチューブとをねじ込むことにより組み付ける。したがってスムーズにねじ込みが行なわれるため、接着処理による接着剤が剥がれるのを抑制することができ、ゴム状弾性体に応力分布の不均一が発生するのを抑制することができる。したがって本発明所期の目的どおり、ゴム状弾性体とアウターチューブとの接着状況にむらが発生するのを抑制し、もって接着品質を安定させることができるダンパ構造を提供することができる。また、上記ねじ目形状を設けた場合には、ゴム状弾性体とアウターチューブとが円周方向に機械的に係合するため、過大トルクに対するストッパ機能を発揮することができる。また、ねじ島およびねじ溝の軸方向幅を挿入方向の先端から後方へかけて漸次幅広に設定した場合には、ねじ込み当初の回転抵抗が減少するため、ねじ込みが一層スムーズなものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施例に係るチューブインチューブダンパの一部切り欠きした正面図
【図2】同ダンパの製造工程を示す説明図
【図3】本発明の第二実施例に係るチューブインチューブダンパの一部切り欠きした正面図
【図4】本発明の第三実施例に係るチューブインチューブダンパの一部切り欠きした正面図
【図5】本発明の第四実施例に係るチューブインチューブダンパの半裁断面図
【図6】本発明の第五実施例に係るチューブインチューブダンパの一部切り欠きした正面図
【図7】(A)は従来例に係るダンパの捩り特性を示すグラフ図、(B)(C)はそれぞれ本発明の実施例に係るダンパの捩り特性を示すグラフ図
【図8】従来例に係るダンパの一部切り欠きした正面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
尚、本発明には、以下の実施形態が含まれる。
【0019】
構成・・・
(1)チューブインチューブダンパにおいて、ゴムと金属部品にねじ目を施したことを特徴とする。従来の圧入ではなく、アウターチューブとゴムを付けたインナーチューブとをねじ込むように組み付ける。このとき、アウターチューブとゴムにねじ目をつけ、スムーズにねじ込める程度のしめしろに設定する。ねじ込み最終段階で捩りトルクをかけ、アウターチューブとゴムの隙間をなくし、後加熱接着処理を行なう。
(2)態様としては、以下のものが考えられる。
A.従来形状にねじ目を施した形状
B.連結シャフト(インナーチューブ)を2分割とした形状
a.ねじ目を同一方向にしたもの
b.ねじ目を逆にしたもの
(3)尚、ゴムは直接インナーチューブに加硫成形するだけでなく、帯状に成型し、インナーチューブにねじ目を付けるように巻き込んで後加熱接着で成形しても可能である。
(4)アウターチューブをテーパー状にして、ねじ込みをさらに容易にした形状も可能である。
(5)ねじ島の大きさを最初は小さく、徐々に大きくし、ねじ込みやすくした形状も可能である。
(6)捩り特性について
従来形状では、捩り角度が増加してもあまりトルクが上がらない(図7(A))。本発明形状では、ねじ込む方向のばね定数が上がる傾向にある(図7(B))。また、連結シャフトを2分割にし、ねじ目を逆にしたものは、正負とも捩り角度が増すとばね定数が上がる傾向になる(図7(C))。このように捩り特性も容易に変更することができる。
(7)組み立てについて
前処理としてアウターチューブに接着処理を施し、インナーゴムチューブ寸法を接着剤が剥がれない、またはしめしろなし状態で嵌合液を塗布し、ねじ込み圧入する。
【0020】
効果・・・
(8)スムーズにねじ込むことで均一な接着品質が見込める。
(9)ねじ目を切ることで、過大トルクに対するストッパ機能も期待できる。
【実施例】
【0021】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0022】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係るチューブインチューブダンパ1を示しており、当該実施例に係るダンパ1は以下のように構成されている。
【0023】
すなわち先ず、互いに同芯状に組み付けられるインナーチューブ(内筒または内環)2およびアウターチューブ(外筒または外環)3が設けられており、この両チューブ2,3が、両チューブ2,3間に介装されたゴム状弾性体(ゴム)4を介して連結されている。両チューブ2,3の組み合わせについては、両チューブ2,3が各1本ずつ組み合わされる態様とされている。
【0024】
ゴム状弾性体4は、円筒状を呈し、インナーチューブ2の外周面に接着され、インナーチューブ2と共にアウターチューブ3の内周部に挿入され、挿入後、アウターチューブ3の内周面に接着されている。
【0025】
また、ゴム状弾性体4とアウターチューブ3に、組み立て工程における前記挿入時にこれら両者3,4を互いにねじ込み結合するためのねじ目形状5が設けられており、このねじ目形状5は、ゴム状弾性体4の外周面に設けられた雄ねじ部6と、アウターチューブ3の内周面に設けられた雌ねじ部7との組み合わせにより構成されている。
【0026】
ねじ目形状5のピッチは、その軸方向全長に亙って所定の一定寸法に設定されている。雄ねじ部6は、ねじ島(ねじ山)6aを備えている。ねじ島6aの外周面(頂部)は円筒面状に形成されている。ねじ島6aの軸方向幅wはこれも軸方向全長に亙って所定の一定寸法に設定されている。雌ねじ部7は、ねじ溝7aを備えている。ねじ溝7aの内径面(底部)は円筒面状に形成されている。ねじ溝7aの軸方向幅wはこれも軸方向全長に亙って所定の一定寸法に設定されている。ねじ島6aの軸方向幅wとねじ溝7aの軸方向幅wは略同じ大きさに設定されている(w≒w)。ねじ島6aの挿入前自由状態における外径寸法はねじ溝7aの内径寸法よりも少々大きく設定され、よって両者6a,7aにしめしろが設定されているが、このしめしろの大きさは、従来の圧入構造と比較して小さめ(後記工程で塗布する接着剤が剥がれない程度)に設定され、これによりスムーズにねじ込むことが可能とされている。尚、しめしろは設定されず零であっても良く、この場合には、ねじ込みが一層スムーズに行なわれる。
【0027】
インナーチューブ2は、金属等の剛材によって円筒状に成形されており、その軸方向一方(図では右方)の端部にスプライン等よりなる連結部2aが設けられるとともに軸方向他方(図では左方)の端部は開口部2bとされている。
【0028】
また、アウターチューブ3はこれも金属等の剛材によって円筒状に成形されており、その軸方向他方の端部にナックル等よりなる連結部3aが設けられるとともに軸方向一方の端部は、インナーチューブ2およびゴム状弾性体4を挿入する開口部3bとされている。
【0029】
上記ダンパ1は、これを以下のようにして製造する。
(1)インナーチューブ2の外周面にゴム状弾性体4を加硫接着し、または予め筒状に成形したゴム状弾性体4をインナーチューブ2の外周面に装着して後加熱接着し、これらインナーチューブ2およびゴム状弾性体4よりなるサブアッセンブリ品を製作する。尚、ゴム状弾性体4を加硫接着(加硫成形)する際または予め筒状に成形する際に、ねじ目形状5に係る雄ねじ部6を形成する。またこれに対応して、アウターチューブ3には、ねじ目形状5に係る雌ねじ部7を形成する。
(2)次いで、アウターチューブ3の内周面に接着剤を塗布するなどの接着処理を施すとともに同内周面に嵌合液を塗布し、図2に示すようにアウターチューブ3の内周空間に軸方向一方の開口部3bから上記インナーチューブ2およびゴム状弾性体4よりなるサブアッセンブリ品をねじ込んでゆく。
(3)所定距離までのねじ込みが完了したら、両チューブ2,3が軸方向に相対変位しない状態として捩りトルクをかけ、アウターチューブ3とゴム状弾性体4間の隙間をなくし、ゴム状弾性体4に予圧縮を付与する。
(4)次いで、ゴム状弾性体4をアウターチューブ3の内周面に後加熱接着する。
【0030】
上記構成のダンパ1によれば、ゴム状弾性体4とアウターチューブ3に互いをねじ込むためのねじ目形状5が設けられているため、従来品のように軸方向ストレートに圧入するのではなく、ゴム状弾性体4およびインナーチューブ2よりなるサブアッセンブリ品とアウターチューブ3とをねじ込むことにより組み付けが行なわれる。したがってスムーズにねじ込みが行なわれるため、接着処理による接着剤が剥がれるのを抑制することができ、ゴム状弾性体4に応力分布の不均一が発生するのを抑制することができる。したがってゴム状弾性体4とアウターチューブ3との接着状況にむらが発生するのを抑制し、もって接着品質を安定させることができる。また、ねじ目形状5を設けた場合にはゴム状弾性体4とアウターチューブ3とが捩れ方向(円周方向)に係合するため、過大トルクに対するストッパ機能を発揮することができ、過大トルクによりゴム状弾性体4が破損するのを抑制することができる。捩り特性については上記したように、ねじ込む方向のばね定数が上がる傾向となる(図7(B))。
【0031】
第二実施例・・・
図3は、本発明の第二実施例に係るチューブインチューブダンパ1を示しており、当該実施例に係るダンパ1は以下のように構成されている。
【0032】
すなわち先ず、互いに同芯状に組み付けられるインナーチューブ(内筒または内環)2A,2Bおよびアウターチューブ(外筒または外環)3が設けられており、この両チューブ2A,2B,3が、両チューブ2A,2B,3間に介装されたゴム状弾性体(ゴム)4A,4Bを介して連結されている。両チューブ2A,2B,3の組み合わせについては、アウターチューブ1本に対しインナーチューブ2本が組み合わされる態様とされ、インナーチューブは、アウターチューブ3にその軸方向一方(図では右方)から挿入される第一インナーチューブ2Aと、その軸方向他方(図では左方)から挿入される第二インナーチューブ2Bとよりなり、第一インナーチューブ2Aおよびアウターチューブ3が両チューブ2A,3間に介装された第一ゴム状弾性体4Aを介して連結されるとともに、第二インナーチューブ2Bおよびアウターチューブ3が両チューブ2B,3間に介装された第二ゴム状弾性体4Bを介して連結されている。
【0033】
第一ゴム状弾性体4Aは、円筒状を呈し、第一インナーチューブ2Aの外周面に接着され、第一インナーチューブ2Aと共にアウターチューブ3の内周部に挿入され、挿入後、アウターチューブ3の内周面に接着されている。第二ゴム状弾性体4Bは同じく、円筒状を呈し、第二インナーチューブ2Bの外周面に接着され、第二インナーチューブ2Bと共にアウターチューブ3の内周部に挿入され、挿入後、アウターチューブ3の内周面に接着されている。
【0034】
また、第一ゴム状弾性体4Aとアウターチューブ3および第二ゴム状弾性体4Bとアウターチューブ3にそれぞれ、組み立て工程における前記挿入時にこれら両者3,4A、3,4Bを互いにねじ込み結合するためのねじ目形状5が設けられており、このねじ目形状5は、第一ゴム状弾性体4Aまたは第二ゴム状弾性体4Bの外周面に設けられた雄ねじ部6と、アウターチューブ3の内周面に設けられた雌ねじ部7との組み合わせにより構成され、両ねじ目形状5におけるねじ目の螺旋の向きは図示するように同じ向きとされている。
【0035】
両ねじ目形状5においてそれぞれ、ねじ目形状5のピッチはその軸方向全長に亙って所定の一定寸法に設定されている。雄ねじ部6は、ねじ島(ねじ山)6aを備えている。ねじ島6aの外周面(頂部)は円筒面状に形成されている。ねじ島6aの軸方向幅はこれも軸方向全長に亙って所定の一定寸法に設定されている。雌ねじ部7は、ねじ溝7aを備えている。ねじ溝7aの内径面(底部)は円筒面状に形成されている。ねじ溝7aの軸方向幅はこれも軸方向全長に亙って所定の一定寸法に設定されている。ねじ島6aの軸方向幅とねじ溝7aの軸方向幅は略同じ大きさに設定されている。ねじ島6aの挿入前自由状態における外径寸法はねじ溝7aの内径寸法よりも少々大きく設定され、よって両者6a,7aにしめしろが設定されているが、このしめしろの大きさは、従来の圧入構造と比較して小さめ(後記工程で塗布する接着剤が剥がれない程度)に設定され、これによりスムーズにねじ込むことが可能とされている。尚、しめしろは設定されず零であっても良く、この場合には、ねじ込みが一層スムーズに行なわれる。
【0036】
第一インナーチューブ2Aは、金属等の剛材によって円筒状に成形され、その軸方向一方の端部にスプライン等よりなる連結部2aが設けられるとともに軸方向他方の端部は開口部2bとされている。第二インナーチューブ2Bは同じく金属等の剛材によって円筒状に成形され、その軸方向他方の端部にナックル等よりなる連結部2aが設けられるとともに軸方向一方の端部は開口部2bとされている。
【0037】
アウターチューブ3はこれも金属等の剛材によって円筒状に成形されており、その軸方向両端部をそれぞれ第一インナーチューブ2Aおよび第一ゴム状弾性体4Aまたは第二インナーチューブ2Bおよび第二ゴム状弾性体4Bを挿入する開口部3bとされている。また、アウターチューブ3の軸方向中央部には、油や空気などを抜くための貫通穴3cが所要数設けられている。
【0038】
上記ダンパ1は、これを以下のようにして製造する。
(1)第一インナーチューブ2Aの外周面に第一ゴム状弾性体4Aを加硫接着し、または予め筒状に成形した第一ゴム状弾性体4Aを第一インナーチューブ2Aの外周面に装着して後加熱接着し、これら第一インナーチューブ2Aおよび第一ゴム状弾性体4Aよりなるサブアッセンブリ品を製作する。また同様に、第二インナーチューブ2Bの外周面に第二ゴム状弾性体4Bを加硫接着し、または予め筒状に成形した第二ゴム状弾性体4Bを第二インナーチューブ2Bの外周面に装着して後加熱接着し、これら第二インナーチューブ2Bおよび第二ゴム状弾性体4Bよりなるサブアッセンブリ品を製作する。尚、ゴム状弾性体4A,4Bを加硫接着(加硫成形)する際または予め筒状に成形する際に、ねじ目形状5に係る雄ねじ部6を形成する。またこれに対応して、アウターチューブ3には、ねじ目形状5に係る雌ねじ部7を形成する。
(2)次いで、アウターチューブ3の内周面に接着剤を塗布するなどの接着処理を施すとともに同内周面に嵌合液を塗布し、アウターチューブ3の内周空間に軸方向一方の開口部3bから上記第一インナーチューブ2Aおよび第一ゴム状弾性体4Aよりなるサブアッセンブリ品をねじ込んでゆく。また同様に、アウターチューブ3の内周空間に軸方向他方の開口部3bから上記第二インナーチューブ2Bおよび第二ゴム状弾性体4Bよりなるサブアッセンブリ品をねじ込んでゆく。
(3)所定距離までのねじ込みが完了したら、第一インナーチューブ2Aおよびアウターチューブ3が軸方向に相対変位しない状態して捩りトルクをかけ、アウターチューブ3と第一ゴム状弾性体4A間の隙間をなくし、第一ゴム状弾性体4Aに予圧縮を付与する。また同様に、第二インナーチューブ2Bおよびアウターチューブ3が軸方向に相対変位しない状態として捩りトルクをかけ、アウターチューブ3と第二ゴム状弾性体4B間の隙間をなくし、第二ゴム状弾性体4Bに予圧縮を付与する。
(4)次いで、第一ゴム状弾性体4Aおよび第二ゴム状弾性体4Bをそれぞれアウターチューブ3の内周面に後加熱接着する。
【0039】
上記構成のダンパ1によれば、第一および第二ゴム状弾性体4A,4Bとアウターチューブ3に互いをねじ込むためのねじ目形状5が設けられているため、従来品のように軸方向ストレートに圧入するのではなく、ゴム状弾性体4A,4Bおよびインナーチューブ2A,2Bよりなるサブアッセンブリ品とアウターチューブ3とをねじ込むことにより組み付けが行なわれる。したがってスムーズにねじ込みが行なわれるため、接着処理による接着剤が剥がれるのを抑制することができ、ゴム状弾性体4A,4Bに応力分布の不均一が発生するのを抑制することができる。したがってゴム状弾性体4A,4Bとアウターチューブ3との接着状況にむらが発生するのを抑制し、もって接着品質を安定させることができる。また、ねじ目形状5を設けた場合には、ゴム状弾性体4A,4Bとアウターチューブ3とが捩れ方向(円周方向)に係合するため、過大トルクに対するストッパ機能を発揮することができ、過大トルクによりゴム状弾性体4A,4Bが破損するのを抑制することができる。捩り特性については上記したように、ねじ込む方向のばね定数が上がる傾向となる(図7(B))。
【0040】
第三実施例・・・
尚、上記第二実施例では、両ねじ目形状5におけるねじ目の螺旋の向きが同じ向きとされているが、第三実施例として図4に示すように、螺旋の向きは互いに反対の向きであっても良く、この場合には、捩り特性が正負とも捩り角度が増すとばね定数が上がる傾向となる(図7(C))。この第三実施例の他の構成および作用効果は第二実施例と同じであるため、説明を省略する。
【0041】
また、上記第一ないし第三実施例に係るダンパ1についてはそれぞれ、以下のようにその構成を付加・変更することが考えられる。
【0042】
第四実施例・・・
上記第一ないし第三実施例ではそれぞれ、アウターチューブ3が軸方向ストレートの円筒形状とされているが、このアウターチューブ3をテーパー状にして、或は少なくともアウターチューブ3の内周面をテーパー状にして、ねじ込みをさらに容易化する(ねじ込み当初は、ねじ溝7aの内径寸法よりもねじ島6aの外径寸法が小さいので、ねじ込みが容易との考え方)。テーパー状は、サブアッセンブリ品を挿入してゆく(ねじ込んでゆく)のにしたがってアウターチューブ3の内径寸法が徐々に縮小する向きとする。第四実施例として示す図5では、上記第二または第三実施例に係るダンパ1におけるアウターチューブ3がテーパー状とされており、この第二または第三実施例に係るダンパ1は上記したようにアウターチューブ1本に対しインナーチューブ2本が組み合わされる態様であるので、アウターチューブ3の形状が総じて、軸方向両端部から軸方向中央部へかけてそれぞれアウターチューブ3の内径寸法が徐々に縮小する鼓(つづみ)状ないし軸双方向ラッパ状とされている。
【0043】
第五実施例・・・
また、上記第一ないし第四実施例ではそれぞれ、ねじ島6aおよびねじ溝7aの軸方向幅w,wが軸方向全長に亙って所定の一定寸法に設定されているが、このねじ島6aおよびねじ溝7aの軸方向幅をサブアッセンブリ品の挿入方向(ねじ込んでゆく方向)にしたがって、先端部で小さく、後端部へ向けて徐々に大きくし、これによりねじ込みをさらに容易化する(ねじ込み当初は、ねじ溝7aの軸方向幅よりもねじ島6aの軸方向幅が小さいので、ねじ込みが容易との考え方)。第五実施例として示す図6では、上記第一実施例に係るダンパ1におけるねじ島6aの軸方向幅が先端部で小さく、後端へ向けて徐々に大きく設定されており(w11<w12<w13<w14)、これに対応して、ねじ溝7aの軸方向幅も先端部で小さく、後端へ向けて徐々に大きく設定されている(w21<w22<w23<w24)。また、ねじ島6aの軸方向幅とねじ溝7aの軸方向幅はねじ込み終了後の対応する位置ごとに略同じ大きさに設定されている(w11≒w21,w12≒w22,w13≒w23,w14≒w24)。そして、このようにw11<w12<w13<w14かつw21<w22<w23<w24でありながら、w11≒w21,w12≒w22,w13≒w23,w14≒w24とすることによって、ゴム状弾性体4の軸方向全幅に亘って均一ないし略均一の予圧縮を付与することができる。尚、ピッチは一定のままである。
【0044】
第六実施例・・・
また、上記各実施例ではそれぞれ、ゴム状弾性体4を予め筒状に成形し、これをインナーチューブ2の外周面に装着して後加熱接着することを説明したが、これに代えて、ゴム状弾性体4を予め帯状に成形し、これをインナーチューブ2の外周面に巻き付けるようにして装着し、このときねじ目を付け、次いで後加熱接着するようにしても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 ダンパ
2,2A,2B インナーチューブ
2a,3a 連結部
2b,3b 開口部
3 アウターチューブ
3c 貫通穴
4,4A,4B ゴム状弾性体
5 ねじ目形状
6 雄ねじ部
6a ねじ島
7 雌ねじ部
7a ねじ溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同芯状に組み付けられるインナーチューブとアウターチューブをゴム状弾性体を介して連結してなり、前記ゴム状弾性体は前記インナーチューブの外周面に接着されて前記インナーチューブと共に前記アウターチューブに挿入されるチューブインチューブダンパにおいて、
前記ゴム状弾性体と前記アウターチューブに、前記挿入時にこれら両者を互いにねじ込み結合するためのねじ目形状が設けられていることを特徴とするチューブインチューブダンパ。
【請求項2】
請求項1記載のチューブインチューブダンパにおいて、
前記インナーチューブは、前記アウターチューブにその軸方向一方から挿入される第一インナーチューブと、前記アウターチューブにその軸方向他方から挿入される第二インナーチューブとを有し、前記第一インナーチューブの外周面に第一ゴム状弾性体が接着されるとともに前記第二インナーチューブの外周面に第二ゴム状弾性体が被着され、前記第一ゴム状弾性体とアウターチューブ、および前記第二ゴム状弾性体とアウターチューブにそれぞれ前記ねじ目形状が設けられていることを特徴とするチューブインチューブダンパ。
【請求項3】
請求項2記載のチューブインチューブダンパにおいて、
前記第一ゴム状弾性体と前記アウターチューブの組み合わせによるねじ目形状と、前記第二ゴム状弾性体と前記アウターチューブの組み合わせによるねじ目形状とは、ねじ目の螺旋の向きが同じ向きとされていることを特徴とするチューブインチューブダンパ。
【請求項4】
請求項2記載のチューブインチューブダンパにおいて、
前記第一ゴム状弾性体と前記アウターチューブの組み合わせによるねじ目形状と、前記第二ゴム状弾性体と前記アウターチューブの組み合わせによるねじ目形状とは、ねじ目の螺旋の向きが反対の向きとされていることを特徴とするチューブインチューブダンパ。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかに記載のチューブインチューブダンパにおいて、
前記ねじ目形状は、前記ゴム状弾性体に設けられたねじ島を備える雄ねじ部と、前記アウターチューブに設けられたねじ溝を備える雌ねじ部との組み合わせよりなり、前記ねじ目形状のピッチは一定であって、前記ねじ島およびねじ溝の軸方向幅は挿入方向の先端から後方へかけて漸次幅広に設定されていることを特徴とするチューブインチューブダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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