説明

チューブ型除電器

【課題】エアーチューブによるイオン量減少の問題がなく、エアーチューブの長さを長くしても充分な除電効果が得られ、しかも、狭い場所での使用が容易であるに加え、イオンを一点から集中噴射させることができて、狭い特定箇所への局所的な除電を行うのに好適なチューブ型除電器を提供する。
【解決手段】先端から気体を噴射するための可撓性を有する噴射用エアーチューブ1中に、高電圧を印加されるワイヤ電極2を挿入し、このワイヤ電極の先端と噴射用エアーチューブの先端部に設けられた接地電極7との間で放電させてイオンを噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンを空気等の気体と共にエアーチューブ(エアーホースを含めて言う)を通じて噴射して除電するチューブ型除電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の除電器では、放電部でのコロナ放電で生じたイオンを、離れた特定箇所へ誘導する場合、一般に、放電部にエアーチューブ(又はパイプ)を接続し、イオンを圧縮空気と共にエアーチューブを通じて噴射していたが、エアーチューブの先端から噴射されるまでにイオン量が激減し、エアーチューブを長くすると所期する除電効果が得られず、除電効果があるのは、エアーチューブの長さがせいぜい200mm〜300mm程度までで、それ以上長くすると除電効果がほとんど無かった。
【0003】
特許文献1(実用新案登録第2524245号公報)には、エアーチューブ(エアーホース)の先端に接続した電気絶縁材製の電極ヘッドにエアー噴射孔と3個の円形穴を設け、これら3個の円形穴内において、いずれも針状のプラス電極、マイナス電極、検出電極をそれぞれ植設し、これら3つの電極を電線を介して外部の回路と接続した除電器が開示されている。
【0004】
これによると、エアーチューブによるイオン量減少や長さの制限はないが、エアーチューブの先端に電極ヘッドを接続し、さらにこの電極ヘッドに電線を接続しているため、狭い場所での使用が制限されるとともに、プラス・マイナスの針状電極が植設された円形穴とエアー噴射孔との位置がずれていて、イオン生成箇所とエアー噴射箇所とが一致していないため、イオンを一点から集中噴射させることができない。
【特許文献1】実用新案登録第2524245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、エアーチューブによるイオン量減少の問題がなく、エアーチューブの長さを長くしても充分な除電効果が得られ、しかも、狭い場所での使用が容易であるに加え、イオンを一点から集中噴射させることができて、狭い特定箇所への局所的な除電を行うのに好適なチューブ型除電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるチューブ型除電器は、先端から気体を噴射するための可撓性を有する噴射用エアーチューブ中に、高電圧を印加されるワイヤ電極を挿入し、このワイヤ電極の先端と対向電極との間で放電させてイオンを噴射する。
【0007】
対向電極は、噴射用エアーチューブの先端部に設けられた接地電極であることが好ましい。その場合、接地電極は、樹脂製とした噴射用エアーチューブの先端部外周面に付着した金属箔にて形成することができる。
【0008】
ワイヤ電極を絶縁被覆で被覆し、その先端部を絶縁被覆から剥き出すことで、ワイヤ電極の先端と接地電極との間で放電させることができる。
【0009】
噴射用エアーチューブと、気体供給源からの気体を供給する供給用エアーチューブとを中継ボックスにて互いに接続するとともに、ワイヤ電極と高電圧電源からの高電圧を供給する高圧ケーブルも、この中継ボックスにて互いに電気接続する。
【0010】
ワイヤ電極と高圧ケーブルは、中継ボックス内に設置された抵抗又はコンデンサを介して電気接続する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可撓性の噴射用エアーチューブ内に挿入したワイヤ電極の先端と、対向電極との間、好ましくは、噴射用エアーチューブの先端部に設けられた接地電極との間で放電させてイオンを噴射するので、噴射用エアーチューブの先端内部でイオンを生成すると同時に気体と共に噴射でき、噴射用エアーチューブによるイオン量減少の問題がなく、噴射用エアーチューブの長さを1m以上に長くしても充分な除電効果が得られる。
また、可撓性の噴射用エアーチューブ内にワイヤ電極を挿入した単純かつ細い構造であるので、狭い場所での使用が容易である。
さらに、イオンを噴射用エアーチューブの先端の一点から集中噴射させることができるので、狭い特定箇所への局所的な除電を行うのに好適である。
【0012】
請求項3に係る発明のように、接地電極を、樹脂製とした噴射用エアーチューブの先端部外周面に付着した金属箔にて形成すると、樹脂製のエアーチューブが電気的に静電容量の役目をするので、ワイヤ電極の先端と接地電極との間の極度の放電(火花放電など)を防止でき、安全である。
【0013】
請求項4に係る発明のように、ワイヤ電極を絶縁被覆で被覆し、その先端部を絶縁被覆から剥き出せば、ワイヤ電極の先端以外での放電や、漏電や、金属製であるワイヤ電極の腐食を防止できる。
【0014】
請求項5に係る発明のように、供給側エアーチューブとの接続、及び高電圧供給側高圧ケーブルとの接続を共通の中継ボックスを用いて行うと、配管・配線が容易である。
【0015】
請求項6に係る発明のように、ワイヤ電極と高圧ケーブルとを中継ボックス内に設置された抵抗又はコンデンサを介して電気接続すると、放電電流を制限できるとともに、そのための抵抗又はコンデンサを中継ボックスにて保護できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
図1に本発明による除電器の全体概要構成を示す。この除電器は、柔軟な可撓性を有するナイロン等の樹脂製の噴射用エアーチューブ1中に、可撓性を有するステンレス等の金属製ワイヤ電極2を挿入しており、この噴射用エアーチューブ1と、図示しないエアー供給源からエアーを供給される供給側エアーチューブ3とを、中継ボックス4を介して接続するとともに、高電圧電源5からの高電圧を供給する高圧ケーブル6とワイヤ電極2も、この中継ボックス4を介して電気接続し、ワイヤ電極2の先端と噴射用エアーチューブ1の先端部外周面に設けられた、対向電極である接地電極7との間で放電させて、噴射用エアーチューブ1の先端からエアーと共にイオンを噴射する。
【0018】
中継ボックス4には、その両端面を貫通するエアー通路8及びこれに分岐する配線路9が形成され、エアー連通路8の入口外側にはコック10、出口外側にはワンタッチジョイント11がそれぞれ設けられている。そして、コック10に供給側エアーチューブ3、ワンタッチジョイント11に噴射用エアーチューブ1を接続することで、これらエアーチューブ3・1がエアー通路8を通じて連通されている。また、高圧ケーブル6の心線とワイヤ電極2とが、配線路9内に設置した放電電流制限用抵抗12を介して、中継ボックス4内で電気接続されている。なお、抵抗に代えてコンデンサを用いてもよい。
【0019】
図2及び図3に噴射用エアーチューブ1の先端部の構造を示す。接地電極7は、銅箔等の金属箔を噴射用エアーチューブ1の外周面に付着して形成され、接地電極7に接続したアース線13を介して接地される。ワイヤ電極2は、本例の場合、ステンレス細線2aをポリテトラフルオロエチレンチューブ2bで絶縁被覆したもので、その先端部を剥き出してあることにより、ステンレス細線2aの先端と接地電極7との間で、樹脂製の噴射用エアーチューブ1の先端部を介したコロナ放電がこのエアーチューブ1内で生ずるようになっている。その際、エアーチューブ1の先端部は電気的に静電容量の役目をする。
【0020】
従って、噴射用エアーチューブ1の先端部の内部でのこのようなコロナ放電により生じたイオンは、生成と当時に、減量することなくエアーチューブ1の先端からエアーと共に集中して噴射される。
【0021】
なお、ワイヤ電極2は絶縁被覆したものでなくともよく、また、エアーに代えて窒素ガス等の他の気体を用いてもよい。さらに、噴射用エアーチューブ1の先端部に接地電極7を設けたが、噴射用エアーチューブ1の外部に対向電極を設置して、それとワイヤ電極2との間で放電させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による除電器の全体概要構成図である。
【図2】噴射用エアーチューブの先端部の斜視図である。
【図3】その一部切欠側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 噴射用エアーチューブ
2 ワイヤ電極
2a ステンレス細線
2b ポリテトラフルオロエチレンチューブ
3 供給側エアーチューブ
4 中継ボックス
5 高電圧電源
6 高圧ケーブル
7 接地電極
8 エアー通路
9 配線路
10 コック
11 ワンタッチジョイント
12 放電電流制限用抵抗
13 アース線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端から気体を噴射するための可撓性を有する噴射用エアーチューブ中に、高電圧を印加されるワイヤ電極を挿入し、このワイヤ電極の先端と対向電極との間で放電させてイオンを噴射することを特徴とするチューブ型除電器。
【請求項2】
対向電極が噴射用エアーチューブの先端部に設けられた接地電極であることを特徴とする請求項1に記載の特徴とするチューブ型除電器。
【請求項3】
接地電極を、樹脂製とした噴射用エアーチューブの先端部外周面に付着した金属箔にて形成したことを特徴とする請求項2に記載のチューブ型除電器。
【請求項4】
ワイヤ電極を絶縁被覆で被覆し、その先端部を絶縁被覆から剥き出したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のチューブ型除電器。
【請求項5】
噴射用エアーチューブと、気体供給源からの気体を供給する供給用エアーチューブとを中継ボックスにて互いに接続するとともに、ワイヤ電極と高電圧電源からの高電圧を供給する高圧ケーブルも、この中継ボックスにて互いに電気接続したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のチューブ型除電器。
【請求項6】
ワイヤ電極と高圧ケーブルとを中継ボックス内に設置された抵抗又はコンデンサを介して電気接続したことを特徴とする請求項5に記載のチューブ型除電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−47484(P2008−47484A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224015(P2006−224015)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000183738)春日電機株式会社 (54)
【Fターム(参考)】