説明

チューブ成形用ロール式引取り装置

【課題】チューブ成型用ロール式引取り装置は、減速機構として遊星歯車を使用しているため、バックラッシュが必然的に発生する。チューブの押出成形は、チューブの引取り速度の変動が良品と不良品とを左右するため、さらなる引取り速度の精度向上が可能なチューブ成型用ロール式引取り装置を提供する。
【解決手段】押出機から押し出された成形材料を金型12内でチューブ状に成形し、このチューブ状に成形された材料11を駆動回転する引取りロール18により連続的に引き取るチューブ成型用ロール式引取り装置17は、引取りロール18の駆動機構が遊星ローラー式減速機を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ成型用ロール式引取り装置およびこれにより製造されたチューブ状成形材料にて被覆した電子写真装置の回転部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には樹脂などのシームレスチューブを押出成形する技術が開示されている。これによると、押出金型によりシームレスチューブが押し出され、水冷サイジング工程,チューブ引き取り工程,チューブ切断工程,チューブ収納工程の順に加工される。
【0003】
このようなシームレスチューブの一般的な引取り装置としては、キャタピラ式またはベルトコンベア式のものや、ロール式の引取り装置などが知られている。特許文献2には、キャタピラ式の引取り装置が開示されている。これは、強力な引き取り力を発揮させることができ、硬質のチューブやパイプ成形の引取り装置として用いられるが、成形品の表面の接触跡を嫌う製品や、高速で成形される製品には適していない。また、特許文献3には、ベルト式の引取り装置が開示されている。これは、キャタピラ式引取り装置に比べてチューブを安定して引き取ることができる反面、チューブと引取り機構との接触時間が長くなる傾向を有し、成形後のチューブの円周方向に沿って電気抵抗値のむらが発生し易い。このため、帯電性能を必要とするチューブを成形する場合には、ロール式の引取り装置が専ら使用されている。
【0004】
このロール式引取り装置は、ベルト式の引取り装置と比べると、大きな引き取り力を発揮させることが難しい。しかしながら、引取り機構に起因するチューブへの応力の影響が少なく、異形品や軟質系のチューブ製品を成形する場合、その潰れや摩擦などに影響する時間を減らすことが可能である。しかも、引取り装置自体の構造をベルト式と比べて比較的小さくすることが可能である。
【0005】
【特許文献1】特開平11−123753号公報
【特許文献2】特開平9−254232号公報
【特許文献3】特開2003−162129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロール式引取り装置は、駆動源であるACサーボモーターに減速機構として遊星歯車を使用しているため、0.05°〜0.08°程度のバックラッシュが必然的に発生する。また、引取りロールとしてゴムローラーを使用しているため、ゴムローラーの外径寸法公差やその偏心などにより引取り速度にむらが発生する。このような要因により、成形されたチューブの表面に大小の波模様が発生したり、チューブの外径にばらつきが生じたり、チューブの外観や形状が不良となる場合がある。チューブの押出成形は、チューブの引取り速度の変動が良品と不良品とを左右するため、さらなる引取り速度の精度向上が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、押出機から押し出されたチューブに対する引取り速度のさらなる精度向上を企図したチューブ成型用ロール式引取り装置を提供することにある。
【0008】
また、このようなチューブ成型用ロール式引取り装置によって得られる単層または複層構造のチューブ状成形材料を被覆した電子写真装置における回転部材を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の形態は、押出機から押し出された材料を金型内でチューブ状に成形し、このチューブ状に成形された材料を駆動回転する引取りロールにより連続的に引き取るチューブ成型用ロール式引取り装置にある。この第1の形態によるチューブ成型用ロール式引取り装置においては、引取りロールの駆動機構が遊星ローラー式減速機を有することを特徴とする。
【0010】
本発明においては、バックラッシュが基本的に発生しない遊星ローラー式減速機を用いていており、引取り速度のむらが従来のものよりも少なくなる。
【0011】
本発明の第1の形態によるチューブ成型用ロール式引取り装置において、引取りロールの外周面が金属にて形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の第2の形態は、電子写真装置に組み込まれた回転部材であって、本発明の第1の形態によるチューブ成形用ロール式引取り装置により引き取られた単層または複層構造のチューブ状成形材料が被覆されていることを特徴とする回転部材にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、チューブ状に成形された材料を駆動回転する引取りロールの駆動機構が遊星ローラー式減速機を有しているので、引取りロールの駆動機構にバックラッシュが発生しない。特に、引取りロールの外周面を金属にて形成した場合には、チューブの外径のばらつきやチューブの形状および外観不良などの不良が発生せず、形状および外観の優れたチューブを成形することかできる。
【0014】
また、このようなチューブを用いることで、優れた性能の電子写真装置の回転部材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を電子写真装置の帯電ローラーに組み込まれる押出成形されたチューブの製造に応用した実施形態について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明はこのような実施形態のみに限らず、必要に応じて本発明の精神に帰属する他の任意の技術にも応用することができる。
【0016】
本発明の対象となる電子写真装置の回転部材としての帯電ローラーは、心金部と、その外周面に一体的に接合される円筒状の発泡弾性体層と、この発泡弾性体層の外周面を覆う表面層とを有する。心金部は、アルミニウム,銅,鉄,またはこれらを含む合金など、良好な導電性を持つ材料にて形成され、例えば0.1〜1.5mm程度の外径を持つ管材または中実の棒状であってよい。芯金部は、要求される寸法,強度および導電性を具えている必要があることは言うまでもない。この心金部の外周を取り囲む発泡弾性体層は、導電材を配合した発泡導電性ゴム組成物や導電性ポリウレタンフォームなどを用いることができる。この発泡弾性体層が嵌め込まれる表面層は、予めシームレスチューブの形態に成形したチューブ状材料であり、本発明の対象となったシームレスチューブが用いられる。このチューブを構成する材料は、樹脂やエラストマーあるいは共重合体などの押出し成形可能な熱可塑性材料であれば良く、天然ゴムや合成ゴムを用いることも可能であり、必要に応じて所望の特性を持ったチューブを得ることができる。発泡弾性体層に被覆を行っている。発泡弾性体層の表面にシームレスチューブを被覆する場合、成形されたシームレスチューブ内に圧縮空気を吹き込みながら発泡弾性体層を心金部と共にシームレスチューブ内に差し込むことにより行う。
【0017】
単層または多層からなるシームレスチューブは、種々の方法にて製造することができるが、一般的には押出し成形法が好適である。このような帯電ローラーの一部を構成する2層構造のシームレスチューブを製造するためのシステムを図1に模式的に示す。予め重合体および導電材、さらに必要に応じて架橋剤や安定化剤ならびにその他の添加剤を混合したコンパウンドを2層構造となったシームレスチューブ11の内層および外層毎に調製する。調整されたコンパウンドは、図示しない押出し機により加熱,混練,可塑化,融解され、押出し金型12の注入ポート13,14から別々に注入される。融解したコンパウンドは、押出し金型内でチューブ状に成形され、図示しない円錐状のスリットを有するダイス15から押し出される。このようにして押出し金型12から押し出されたチューブ11は、水を用いた冷却装置16を通過する間に冷却固化し、引取り装置17の一対の引取りロール18によって引き取られ、図示しない切断機により所定寸法毎に切断される。
【0018】
チューブ11の径および肉厚は、押出し金型12の先端部のダイス15の出口の径と、そのクリアランスとによりほぼ決定され、引取り装置17の引取り速度を制御することにより、製品としての寸法の許容範囲内に収まるように調整される。このようにして連続的にシームレスチューブ11を成形することができる。ダイス15を交換することにより、様々な寸法のチューブ11を成形することが可能である。
【0019】
本実施形態におけるチューブ11の外層を構成する材料を調整するため、次に列挙する材料を用意した。すなわち、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂、より具体的にはスチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合樹脂(日本合成ゴム株式会社の商品名「ダイナロン」)およびポリエチレンである。この他に、第1カーボンブラック(ライオンアクゾ株式会社の商品名「ケッチェンブラックEC」),第2カーボンブラック(デグサジャパン株式会社の商品名「スペシャルブラック250」),酸化マグネシウム,ステアリン酸カルシウムも用意した。これらを加圧式ニーダーにより200〜220℃で溶融混練した後、冷却して粉砕機により粉砕し、マスターバッチを作成した。そして、このマスターバッチにさらにスチレン系熱可塑性エラストマー樹脂とポリエチレンとを加え、再び200℃〜220℃で同様に混練,冷却,粉砕を行い、単軸押出し機で180℃〜200℃で造粒したペレットを得た。このペレットの成分比は、スチレン系熱可塑性エラストマー樹脂を100重量部とした場合、他の材料の割合は次の通りである。すなわち、ポリエチレンが72〜20重量部、カーボンブラック1が11〜14重量部、カーボンブラック2が20〜28重量部、酸化マグネシウムが10〜15重量部、ステアリン酸カルシウムが1〜1.5重量部である。
【0020】
本実施形態におけるチューブ11の内層を構成する材料を調整するため、次に列挙する材料を用意した。すなわち、エーテル系のウレタンエラストマー樹脂,カーボンブラック(ケッチェンブラックEC),導電性酸化チタン,酸化マグネシウム,ステアリン酸カルシウムである。これらを加圧式ニーダーにより160〜200℃で混練,冷却,粉砕を行い、単軸押出し機で160℃〜210℃で造粒したペレットを得た。このペレットの成分比は、エーテル系のウレタンエラストマー樹脂が100重量部、カーボンブラックが15〜18重量部、導電性酸化チタンが20部、酸化マグネシウムが10重量部、ステアリン酸カルシウムが1重量部である。
【0021】
上述した2層チューブ同時押出し成形用の金型12は、図示しない外筒内にチューブ11の内層形成用の図示しないマンドレルと外層形成用のマンドレルとを位置決め状態で組み込み、ボルトなどの締結部品を用いてこれらを一体的に固定した金型本体を有する。この金型本体における外筒と内層形成用のマンドレルと外層形成用のマンドレルとの位置合わせ面は、それぞれテーパ状となっており、金型12の軸線と平行な方向に沿った相対位置の精度が確保できるように配慮している。金型12は、成形材料に直接接触する金型本体以外に、これを保持する部分を具えている。この金型本体を保持する部分は、主としてS45CやS55Cなどの炭素鋼にて作られる。上述した金型本体は、溶融樹脂の高圧に耐えることと、外部から加熱されるため、一般的には普通硬鋼が用いられるが、必要に応じてニッケルクローム鋼や不銹鋼,工具鋼なども使用することができる。そして、これを適当な形状に仕上げ、焼き入れを行って表面を研摩した後、硬質クロームめっき処理を施している。金型本体のロックウェル硬度HRCは60〜62であり、クロームめっき層の厚みは、1/100〜5/100mm程度である。
【0022】
本実施形態における引取り装置17の正面形状を図2に示し、その右側面形状を図3に示す。このロール式引取り装置17の引取りロール18を駆動するための駆動機構には、図示しない遊星ローラー式減速機19が組み込まれている。遊星ローラー式減速機19は、図示しない太陽ローラーと、これを取り囲む図示しない内輪と、これら太陽ローラーと内輪との間を転動する図示しない遊星ローラーとを有する。一般的には内輪を固定することにより、太陽ローラーを中心とする遊星ローラーの公転運動を出力として取り出す。また、チューブ11を引き取る引取りロール18は、チューブ11に当接する外周面を硬質合成ゴムや金属などで形成することができるが、加工性や加工精度などを考慮して全金属製のものを使用することが好ましい。外周面を金属で形成した引取りロール18は、この部分をゴムなどで形成した引取りロールに比べてチューブ11に対する摩擦係数が低く、表面も硬質であるため、強力な引き取り力を発生させることが困難である。しかしながら、樹脂製のチューブ11を成形する場合には大きな引き取り力が不要となるため、これで引取り力が問題となることはない。また、全金属製の引取りロール18の外径の加工精度は、ゴム製の引取りロールよりも高くすることができるため、遊星ローラー式減速機19の使用と相俟ってギヤマークや引取りロール18の回転の振れをほぼ無くすことができる。しかも、金属製の引取りロール18は、ゴム製の引取りロールよりも環境温度の変化による外径の変動や劣化などが少なく、長期間に亙って引取り精度が変わらないという利点もある。
【0023】
本実施形態におけるロール駆動機構の駆動源は、1000rpmで回転する出力が0.2kWのACサーボモーター20である。このサーボモーター20の回転軸に上述した遊星ローラー式減速機19の太陽ローラーを連結し、さらにその出力軸にもう一台の遊星ローラー式減速機19の太陽ローラーを直列に接続している。このようにして、減速比を1/80にまで2段減速し、後段の遊星ローラー式減速機19の主力軸に引取りロール18を連結している。一対の引取りロール18は、チューブ11を挟んで対向し、その対向方向に沿って相互に逆方向に同期して移動することができるようになっている。これらの引取りロール18は、SUS材を用いた全金属製で外径が300mmであり、引取り力は最大で10kg、チューブ11に対する加圧は、エアシリンダー21を用いて行っている。
【0024】
チューブ11の引取り速度を1m/minに設定し、成形後のチューブ11を発泡弾性体層に被覆後、その外観を目視で検査すると共に外径測定器を使って帯電ローラーの外径のむらを測定した。測定結果を図4に実線で示す。本実施形態の引取り装置17を使用した場合、成形中に目立った引取りによる問題は起らず、得られたチューブ11を発泡弾性体層に被覆した後の外径測定において目立った外径のむらも認められなかった。また、外観を目視で検査した場合も良好な表面となっていることを確認できた。
【0025】
本実施形態を従来のものと比較するため、引取りロールを駆動するための減速機構として遊星歯車式減速機を用い、かつ外周部分を合成ゴムにて形成した200mmの外径の引取りロールを用い、これ以外は先の実施形態と同じものを用いてチューブ11を形成した。そして、これを帯電ローラーに組み込み、その外径を測定した。結果を図4中の破線で示す。この比較例の引取り装置17を使用した成形では、チューブ11を発泡弾性体層に被覆した後の外径測定において、細かい波状の外径むらが出ていることがわかった。
【0026】
以上の結果から、遊星ローラー式減速機19を減速機構に用いたチューブ成形用ロール式引取り装置においては、得られるチューブの寸法などの品質を従来のものよりも向上させることができることが理解されよう。
【0027】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるチューブ成形用ロール式引取り装置の一実施形態を模式的に表す概念図である。
【図2】図1に示したロール式引取り装置の正面図である。
【図3】図2に示したロール式引取り装置の右側面図である。
【図4】電子写真装置における帯電ローラーの外径の変動を表すグラフである。
【符号の説明】
【0029】
11 シームレスチューブ
12 押出し金型
13,14 注入ポート
15 ダイス
16 冷却装置
17 引取り装置
18 引取りロール
19 遊星ローラー式減速機
20 ACサーボモーター
21 エアシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機から押し出された材料を金型内でチューブ状に成形し、このチューブ状に成形された材料を駆動回転する引取りロールにより連続的に引き取るチューブ成型用ロール式引取り装置において、前記引取りロールの駆動機構が遊星ローラー式減速機を有することを特徴とするチューブ成型用ロール式引取り装置。
【請求項2】
前記引取りロールの外周面が金属にて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチューブ成型用ロール式引取り装置。
【請求項3】
電子写真装置に組み込まれた回転部材であって、請求項1または請求項2に記載のチューブ成形用ロール式引取り装置により引き取られた単層または複層構造のチューブ状材料が被覆されていることを特徴とする回転部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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