説明

チョコレート成形装置

【課題】中空にチョコレートを成形する装置の構成簡易化を図る。
【解決手段】材料となるチョコレートを入れる中空内部領域が形成された合わせ構造のチョコレート型20と、チョコレート型を着脱可能且つ第一の回転軸を中心に回転可能に支持する支持体40と、支持体を第一の回転軸と交差する方向に沿った第二の回転軸を中心に回転可能に支持する基台50と、支持体を前記第二の回転軸回りに回転させる回転動作付与手段とを備え、第二の回転軸は、鉛直上下方向に対して直交又は傾斜しており、チョコレート型は、第二の回転軸の軸線から偏心した位置に重心を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空立体形状にチョコレートを形成するチョコレート成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは加熱すると液状になる性質があるので、これを利用して内部を中空として所望の立体形状に成形する形成装置が案出されている。このチョコレート成形装置は、第一の回転軸を中心に回転可能に支持されたドラムと、ドラムの中心から半径方向外側に延出された第二の回転軸の先端部に取り付け可能なチョコレート型とから構成されている。上記チョコレート型は、所望形状の凹部が形成された二つの成形型を結合して内部に密閉空間を形成することが可能であり、この密閉空間内に予め加熱して液状化したチョコレートを流し込み(或いは固形のチョコレートを先に入れた状態でチョコレート型を加熱し)、第一の回転軸と第二の回転軸にそれぞれ回転力を付与して二軸回りで回転させることで、チョコレート型の中空内部の内面全体に薄くチョコレートを行き渡らせることができ、これを冷却することにより、チョコレート型の内部形状に従って中空の形状に成形することを可能としていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平3−71095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、第一の回転軸にトルク付与を行う駆動源と第二の回転軸にトルク付与を行う駆動源とが必要となり、駆動源を二つとすることで装置構成が複雑化し、生産コスト高を生じるという問題があった。また、駆動源を一つとして、相互の回転軸にトルク付与を行うために、ギヤ列を組み合わせた伝達機構を用いることもできるが、二軸回りの回転動作をチョコレート型に付与するにはその伝達機構の構成が複雑化し、やはり生産コスト高を生じるという問題が不可避であった。
【0005】
本発明は、より簡便な構成により型に所望の回転を付与するチョコレート成形装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、材料となるチョコレートを入れる中空内部領域が形成された合わせ構造のチョコレート型と、前記チョコレート型を着脱可能且つ第一の回転軸を中心に回転可能に支持する支持体と、前記支持体を前記第一の回転軸と交差する方向に沿った第二の回転軸を中心に回転可能に支持する基台と、前記支持体を前記第二の回転軸回りに回転させる回転動作付与手段とを備え、前記第二の回転軸は、鉛直上下方向に対して直交又は傾斜しており、前記チョコレート型は、前記第二の回転軸の軸線から偏心した位置に重心を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記チョコレート型は、可撓性を有するシリコン樹脂から形成されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、チョコレート型を格納する保護ケースを備え、前記支持体は、前記保護ケースを介して前記チョコレート型を支持することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記チョコレート型は、錘により前記第二の回転軸の軸線から偏心した位置を重心とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明では、液状化しているチョコレートをチョコレート型の中空内部領域に入れた状態、或いは、固形のチョコレートを入れた状態でチョコレート型を加熱して内部で液状化させた状態で、チョコレート型を支持体に装着し、回転動作付与手段により第二の回転軸を中心に支持体を回転させる。その結果、チョコレート型の重心は上下方向に位置変化を生じる。そして、チョコレート型は重力を受けてその重心が下方に移動しようとするので、支持体に対して第一の回転軸回りの回転を生じることとなる。
その結果、チョコレート型は第一の回転軸と第二の回転軸の二軸回りで回転を行うこととなり、液状化したチョコレートはチョコレート型の中空内部空間の内面全域を流動して付着する。かかる状態でチョコレートが冷えるとチョコレート型の内部形状に従って中空の固形チョコレートが形成される。
このように、請求項1記載の発明は、チョコレート型の重心位置を所定の位置に設けることで一軸回りのトルク付与を行うだけで二軸回りの回転動作を実現することが可能であり、二つの回転駆動源や傘歯歯車などを用いた二軸回りの動作伝達機構を不要とし、簡易な構成で内部を中空とした固形のチョコレートを成形することが可能である。
【0009】
請求項2記載の発明は、チョコレート型を可撓性を有するシリコン樹脂から形成したので、固形化した中空のチョコレートをチョコレート型から容易に取り出すことが可能である。
【0010】
請求項3記載の発明は、チョコレート型を格納する保護ケースを備えるので、固形化したチョコレートを取り出しやすくするためにチョコレート型を変形性のある材料で形成した場合でも、外部からチョコレート型を保護することができ、所望の形状通りのチョコレートを成形することが可能である。
【0011】
請求項4記載の発明は、錘を用いるので、チョコレート型の重心位置の調整が容易となり、重心を偏心位置とする設計の用意化を図ることが可能となる。
また、例えば、錘を着脱交換可能としたり、取り付け位置の調節又は変更を可能としたりすれば、重心位置を自在に調節でき、チョコレート型の回転時の挙動を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態に係るチョコレート成形装置の全体を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態に係るチョコレート成形装置の全体構成を示す分解斜視図である。
【図3】支持体の軸部周辺における水平面に沿った断面図である、
【図4】図4(A)〜図4(F)は中空のチョコレートの成形の工程を順番に示した工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の実施形態)
本発明の実施形態について、図1乃至図4に基づいて説明する。図1は、本実施形態たるチョコレート成形装置10の斜視図、図2はその分解斜視図である。
上記チョコレート成形装置10は、図示のように、材料となるチョコレートを入れる中空内部領域が形成された合わせ構造のチョコレート型20と、チョコレート型20を内部に収容可能な保護ケース30と、当該保護ケース30を介してチョコレート型20を着脱可能且つ第一の回転軸Pを中心に回転可能に支持する支持体40と、支持体40を第一の回転軸Pと直交する第二の回転軸Qを中心に回転可能に支持する基台50と、支持体40を第二の回転軸Qの軸回りに回転させる回転動作付与手段60とを備えている。
なお、以下の説明において、鉛直上下方向をZ軸方向、水平であって互いに直交する一方をX軸方向、他方をY軸方向とする。また、上述した第二の回転軸QはY軸方向と平行であるものとする。
【0014】
(基台)
基台50は、X−Y平面に沿って載置される底板51と、底板51のY軸方向における一端近傍から立設された立板52とから構成されている。立板52はその下端部が底板51に設けられた開口部53に挿入され、立板52の下端部に設けられ、弾性により表面から内側に退避可能な爪54が開口部53の内側に設けられた凹部に嵌合して開口部53に挿入された立板52をロックして結合する構造となっている。
立板52は、底板51に結合された状態において、その全体がX−Z平面に平行となる板状を呈しており、平面の中央部にはY軸方向に沿って貫通形成された円形の支持穴55が形成されており、当該支持穴55により支持体40を第二の回転軸Q(Y軸)回りに回転可能に支持する構造となっている。
【0015】
(チョコレート型)
チョコレート型20は、上側合わせ型21と下側合わせ型22とからなり、各合わせ型21,22はいずれもチョコレート材料を入れる凹部23,24と凹部23,24の周囲に形成されたフランジ上のリブ25,26を備えている。
なお、上側合わせ型21と下側合わせ型22は、回転により上下の配置が入れ替わり得るが、説明の便宜のために図示の上側の型を上側合わせ型21とし、図示の下側の型を下側合わせ型22と称することとする。
【0016】
各リブ25,26は、互いにサイズが等しい円形であり、相互のリブ25,26の平面を重ね合わせた状態で互いの凹部23,24が密閉空間となる。そして、二つの凹部23,24からなる内部空間が固形化した中空のチョコレートの目的の形状となるように各凹部23,24の内部形状が形成されている。図1,2の例では、チョコレート型20の内部空間は球型を例示しているが、固形化したチョコレートが取り出し可能な形状(いわゆる型抜きの成形に向かない形状以外)であれば、いかなる立体形状を採用しても良い。
【0017】
上記合わせ型21,22は、いずれもシリコン樹脂の一体成形で形成されており、可撓性を有している。これにより、内部でチョコレート材料が固形化したときに、各合わせ型21,22を撓ませることでチョコレートとの間に隙間を形成することができ、固形化したチョコレートを破損させることなく容易に取り出すことを可能としている。
また、各合わせ型21,22のリブ25,26には、いずれもその直径方向両端部に半円状の切り欠き25a,26aが形成されている。これら切り欠き25a,26aは、いずれも、後述する保護ケース30の下側内カバー32の結合端部内側に設けられた円形ボス状の凸部32bに嵌合し、同一の凸部32Bに嵌合することにより合わせ型21,22がZ軸回りに角度ズレを生じないようにするための位置合わせのために設けられているものである。
【0018】
なお、この例では、チョコレート型20の内部空間の形状が球形であり、Z軸回りの形状が均一なので、角度ズレは問題とならないが、Z軸を中心とする回転体以外の形状でチョコレートを成形する場合には特に角度ズレの防止は有効となる。
また、リブ25,26は円形であることが必須ではないが、リブ25,26が同一形状で同一大であることが望ましい。
【0019】
(保護ケース)
保護ケース30は、チョコレート型20を内側に収容した状態で相互に結合可能な上側内カバー31及び下側内カバー32と、上下の内カバー31,32を内側に収容した状態で相互に結合可能な上側外カバー33及び下側外カバー34とから構成されている。
なお、上側内カバー31と下側内カバー32、上側外カバー33と下側外カバー34は、いずれも、回転により上下の配置が入れ替わるが、説明の便宜のために図示の上側のカバーを上側内カバー31、上側外カバー33とし、図示の下側のカバーを下側内カバー32、下側外カバー34と称することとする。
【0020】
上下の内カバー31,32はいずれも上下に開口した略円筒形であって、下側内カバー32はその上端部に拡径部32aが設けられると共にその内側が段部となっており、前述した上下の合わせ型21,22のリブ25,26が嵌合する。また、この拡径部32aの内側であって直径方向両端部には、前述したように、円形ボス状の凸部32bが設けられており、上下の合わせ型21,22のリブ25,26の切り欠き25a,26aに嵌合して角度合わせを行っている。
また、拡径部32aの外周であって直径方向両端部には、上側内カバー31の拡径部31aの外周に設けられた留め具31b,31bに係止される係止爪32c,32cが設けられている。かかる係止爪32c,32cは、いずれも直径方向外側に延出されると共にその延出端部の下面に下方に凸となる突部(図示略)が形成されている。
【0021】
一方、上側内カバー31はその下端部に拡径部31aが設けられると共にその内側が段部となっており、前述した下側内カバー32の拡径部32aを内側に挿入可能となっている。
また、この拡径部31aの外周であって直径方向両端部には、下側内カバー32の拡径部32aの外周に設けられた係止爪32c,32cを係止する矩形に開口した留め具31b,31bが設けられている。これらの留め具31b,31bは、図2では直径方向外側に向かって延出されているが、使用時には、その先端部が下方を向くように基端部を屈曲させることができ、当該屈曲操作により矩形の開口部に下側内カバー32の各係止爪32c,32cを挿入させることができる。その際、係止爪32c,32cの延出端部下面の突部を押し込むことにより、各係止爪32c,32cから留め具31b,31bが外れないように引っかかるようになっている。
これにより、上側内カバー31と下側内カバー32とは一体的に結合される。またこれの結合時には、チョコレート型20の各リブ21,22が拡径部31aと拡径部32aの段部に挟まれるようにして保持される。
【0022】
上下の外カバー33,34はそれぞれ半球殻状であって、その内側には上述した上下の内カバー31,32がそれぞれ嵌合する円筒状の内壁が設けられている。
上側外カバー33は、その下端部に拡径部33aが設けられ、当該拡径部33aの内部には段部が形成されている。また、拡径部33aの直径方向両端部には、当該直径方向に沿って外側に延出された保護ケース30の回転を可能とするための支軸の断片33bが形成されている。この支軸の断片33bは、下側外カバー34の支軸34aと共に保持体40に保持され、上下の外カバー33,34が分離しないように保持するためのストッパとしても機能する。
また、支軸の断片33bの形成位置には切り欠き33cが形成されており、当該切り欠き33cには下側外カバー34の支軸34aが嵌合するようになっている。この嵌合構造により、上下の外カバー33,34はZ軸回りの角度合わせを可能としている。
【0023】
下側外カバー34は、その上端部が前述した上側外カバー33の拡径部33aに挿入されるようになっている。また、当該挿入部分における直径方向両端部には、当該直径方向に沿って外側に延出された支軸34a、34aが形成されている。かかる支軸34a、34aの中心線が前述した第一の回転軸Pとなっている。
また、下側外カバー34は、その下部に円筒形の錘格納部35が形成されている。この円筒形の錘格納部35は、その中心線が支軸34aの中心線(第一の回転軸P)と直交するように形成されている。また、錘格納部35は上方に開口してその内部空間が下側外カバー34の内部空間と連なっており、下側外カバー34の上方開口部から錘格納部35内に錘を入れることができるようになっている。また、符号36は、錘格納部35を塞ぐと共に格納された錘が動かないように固定する蓋部材である。
錘単体の重心は下側外カバー34の円形である上端開口部の中心線上に位置するように設計されている。これにより、チョコレート型20を含む保護ケース30全体の重心は、球形の中心よりも錘格納部35寄りにずれた位置に設定される。
【0024】
(支持体及び回転動作付与手段)
支持体40は、保護ケース30の一方と他方の支軸34aをそれぞれその先端部で回転可能に支持する第一及び第二の支持腕41、42を有する支持部43と、支持部43と一体的に形成されると共に基台50の支持穴55に回転可能に支持される軸部44とを備えている。
支持部43は、Y軸方向沿って平行に配設された第一と第二の支持腕41,42の基端部が横棒により一体的に連結されてなる略コ字状を呈しており、当該横棒の中間位置にY軸方向に沿って各支持腕41,42とは逆側に延出された軸部44が形成されている。
【0025】
各支持腕41、42は、その先端部近傍であって互いの対向面側に保護ケース30の各支軸34aがそれぞれ挿入される軸穴41a、42aが形成されている。図示のように、第一の支持腕41の軸穴41aは軸線方向(図2ではX軸方向)にのみ開口した円孔だが、第二の支持腕42の軸穴42aは、その軸線方向(図2ではX軸方向)及び上方(Z軸方向)にも開口している。そして、保護ケース30を支持体40に取り付ける際には、まず、一方の支軸34aを軸穴41aに挿入し、次いで、他方の支軸34aを上方から軸穴42aに挿入するようになっている。
【0026】
そして、このままの状態では一方の支軸34aが軸穴42aから上方に外れてしまうので、第二の支持腕42には、軸穴42aの開口部の上方を塞ぐことで支軸34aを上方に脱落しないようにするストッパ45が設けられている。このストッパ45の基端部45bは、第二の支持腕42の内部でY軸方向に沿って設けられたガイド46の上面に摺接してY軸方向に沿って移動可能に支持されており、その先端部45aは、第二の支持腕42の上面に設けられた開口部から外部に突出配置される共に、Y軸方向に沿った前後移動により軸穴42aを上方から閉塞する位置と軸穴42aから退避した位置とに切り換え可能となっている。なお、かかるストッパ45は、ストッパ45の先端部45aが軸穴42aを閉塞する位置を維持するよう押圧バネ47で押圧されており、この押圧バネ47に抗して手動操作でストッパ45を押し戻すことにより、軸穴42aから退避した位置とすることを可能としている。
【0027】
保護ケース30を支持体40に装着する際には、一方の支軸34aを第一の支持腕41の軸穴41aに挿入し、手動操作でストッパ45を後退させることで軸穴42の上方を開放し、他方の支軸34aを上方から軸穴42a内に挿入する。
また、保護ケース30を支持体40から外す場合には、手動操作でストッパ45を後退させることで軸穴42の上方を解放し、他方の支軸34aを軸穴42aから上方に取り外すと共に、一方の支軸34aは、軸穴42aから引き抜くことを可能としている。
このように、支持体45は、保護ケース30及びチョコレート型20を手動操作により容易に着脱自在としている。
なお、上述の押圧バネ47に替えて、第二の支持腕42の内部でストッパ45の前側に配置した引っ張りバネを使用することも可能である。
【0028】
軸部44は、X−Z平面に沿った断面形状が正方形の管状であり、その外部にはその中心線がY軸方向を向いた円形のリブ48が二つ設けられている。そして、軸部44は、基台50の支持穴55に挿入された状態で、二つのリブ48の外周面が支持穴55の内周面に摺接して支持体40のY軸回りの回転を可能としている。かかる軸部44の中心線が第二の回転軸Qとなっている。なお、この第二の回転軸Qは前述した第一の回転軸Pと互いに直交するように支持体40は設計されている。
【0029】
図3は回転動作付与手段60及び軸部44のY軸方向に沿った断面図である。
回転動作付与手段60は、チョコレート型20をY軸回りに回転させる手動の回転操作が入力されるレバー61と、レバー60の回動端部に設けられたつまみ62と、つまみ62をY軸回りに回転可能とした状態で固定する留め具63と、レバー61の基端部において回転中心位置に固定連結される回転軸64と、回転軸64に固定装備された主動噛み合い部材65と、主動噛み合い部材65に噛合してトルクが伝達される従動噛み合い部材66と、従動噛み合い部材66が主動噛み合い部材65に噛み合うように付勢する押圧バネ67とを備えている。
【0030】
上記レバー61の基端部には筒状部61aが形成されており、当該筒状部61aには回転軸64の一端部が挿入され且つ固定されている。そして、つまみ62を介してレバー61に回転力が入力されると、回転軸64も回転を行うようになっている。
回転軸64はY軸方向に沿って配設され、立板52の背面から正面側(保護ケース30側)に向かって延出されている。
回転軸64の端部は、主動噛み合い部材65が固定されており、この主動噛み合い部材65のレバー61側の端面には鋸歯状の噛み合い歯が形成されている。
【0031】
従動噛み合い部材66は、その一端部(レバー61側)がコイル状の押圧バネ67を挿入可能な円筒状の大径部66aとなっており、他端部(チョコレート型20側)が回転軸64を挿入可能な円筒状の小径部66bとなっている。そして、大径部66aと小径部66bとの境界位置の外周面上には正方形状のリブ66cが形成されており、これらは同心となる配置で一体的に形成されている。前述したように、支持体40の軸部44は断面正方形状の管状であり、リブ66cは、軸部44の内部に嵌合するようになっている。つまり、従動噛み合い部材66と支持体40とはY軸回りに一体的に回転を行うようになっている。
なお、軸部44の断面形状とリブ66cの外径とは、正方形に限らず、他の正多角形でも良い。またあるいは、軸部44と従動噛み合い部材66とを相互に円形としてキー溝を設け、キーを回転止めとしても良いし、相互にスプライン構造を形成しても良い。
【0032】
また、従動噛み合い部材66の小径部66aの先端側(チョコレート型20側)の端面には、主動噛み合い部材65の噛み合い歯に噛合する鋸歯状の噛み合い歯が形成されている。
従動噛み合い部材66は、その中心を回転軸64が貫通するように配設され、当該回転軸64に沿って軸部44内で進退移動が可能である。そして、大径部66a内に挿入された押圧バネ67は、従動噛み合い部材66を主動噛み合い部材65側に押圧しているので、回転軸64のトルクは、各噛み合い部材65,66の噛み合い歯を介して伝達され、さらに、従動噛み合い部材66のリブ66cから保持体40の軸部44に伝達される。
これにより、つまみ62を通じてレバー61に回転操作が付与されると、Y軸回りで支持体40、保護ケース30及びチョコレート型20を回転させることができる。
【0033】
また、回転動作付与手段60の回転軸64,主動噛み合い部材65,従動噛み合い部材66及び押圧バネ67はクラッチ機構を構成しており、レバー61に対する回転操作に対して支持体40(又は保護ケース30、チョコレート型20)側で何らかの原因により回転を阻害されると、押圧バネ67の押圧力に抗して噛み合い歯の噛み合いが外れてレバー61,回転軸64及び主動噛み合い部材65のみが空回りし、回転動作付与手段60の各部の破損を防止することが可能となっている。
また、回転操作中にレバー61を急に停止させた場合であって、保護カバー30、チョコレート型20及び支持体40が慣性力により回転し続けた場合にも、押圧バネ67の押圧力に抗して噛み合い歯の噛み合いが外れて、回転動作付与手段60の各部の破損を防止することができる。
【0034】
(中空のチョコレートの成型方法)
上記構成からなるチョコレート成形装置10を用いて中空のチョコレートを成形する方法を説明する。図4(A)〜図4(F)は中空のチョコレートの成形の工程を順番に示した工程説明図である。
まず、図4(A)に示すように、下側合わせ型22を下側内カバー32に格納する。そして、図4(B)に示すように、下側合わせ型22の凹部24内にチョコレート材料を入れる。このとき、チョコレート材料は、チョコレートの原材料であるカカオマス、砂糖、ココアバター、粉乳、乳化剤、香料を混合、精錬化して液状(ペースト状)したものを下側合わせ型22に流し込んでも良いが、ここでは、既に完成した板状のチョコレートを砕いたものを利用する場合を例に説明する。
【0035】
次いで、図4(C)に示すように、下側合わせ型22のチョコレート材料を、オーブンや電子レンジなどの加熱機器を使用し又は湯煎を行って、加熱により溶かして液状化させる(前述したチョコレート原材を利用する場合にはこの加熱工程は不要である)。
そして、図4(D)に示すように、下側合わせ型22に上側合わせ型21を嵌め、その上から、上側内カバー31を装着し、留め具31b,31b(図示略)により下側内カバー32と結合させる。
さらに、下側外カバー34に上側外カバー33を接合させることで、チョコレート型20を格納した状態で保護ケース30が組上がった状態となり、かかる状態で支持体40に保護ケース30を装着する。
【0036】
次に、図4(E)に示すように、つまみ62及びレバー61を回転操作し、支持体40を介して保護ケース30及びチョコレート型20を第二の回転軸Q回りに回転させる。
このとき、保護ケース30及びチョコレート型20は、第一の回転軸軸P回りにフリーとなっており、保護ケース30及びチョコレート型20の重心は、錘格納部35に設けられた錘により第二の回転軸Qに対して偏心した位置にある。
このため、レバー61から第二の回転軸Q回りに回転力が付与された時に、重心がY軸回りに移動して上方に移動すると、保護ケース30及びチョコレート型20は重力により重心位置が低位置となるように第一の回転軸Pの軸回りに回転を生じることとなる。
これにより、レバー61を通じて第二の回転軸Q回りに回転を加えるだけで、保護ケース30及びチョコレート型20は第一と第二の回転軸について同時回転を生じることとなる。このため、例えば、一軸回りでの回転であれば当該軸線の両極位置にはチョコレートを流動させることができないが、二軸回りによりそのような偏りを生じることなく、チョコレート型20の内面全体に液状化したチョコレートを均一に行き渡らせることができる。
【0037】
上記回転操作により、チョコレート型20の内面全体に液状化したチョコレートが行き渡った状態で保護ケース30及びチョコレート型20を支持体から取り外し、冷蔵庫などで冷却する。このとき、外ケース33,34は外しても良い。
これにより、チョコレート型20の内部で液状化したチョコレートが固化する。
そして、チョコレート型20の合わせ型21,22のみを変形させて固化したチョコレートとの間に隙間を形成することで、容易に合わせ型21,22が外れるので、図4(F)に示すように、内部が中空の固形チョコレートを取り出すことができる。
【0038】
(実施形態の効果)
上記チョコレート成形装置10では、保護カバー30及びチョコレート型20の重心位置を錘によって第二の回転軸Qの軸線上からずれた位置に設定したので、レバー61により第二の回転軸Q回りのトルク付与を行うだけで、重心位置の変動により第一の回転軸Pの軸回りの回転動作をも生じさせることができ、各軸ごとの回転駆動源や傘歯歯車などを用いた二軸回りの動作伝達機構を不要とし、簡易な構成で内部を中空とした固形のチョコレートを成形することが可能となっている。
【0039】
また、チョコレート型20を可撓性を有するシリコン樹脂から形成したので、各合わせ型21,22を撓ませることで隙間を作り、固形化した中空のチョコレートを容易に取り出すことが可能である。
そして、このようにチョコレート型20をシリコン樹脂で形成した場合であっても、チョコレート型20を格納する保護ケース30を備えるので、チョコレート型20の変形を効果的に防ぎ、所望の形状通りのチョコレートを成形することが可能である。
【0040】
(その他)
チョコレート型20は、シリコン樹脂から形成しているが、可撓性を有し、内部のチョコレートが染み出さず、食品衛生上の問題が生じないことが知られている他の材料を利用しても良い。
また、チョコレート型20及び保護ケース30の重心位置を決定する錘を入れる錘格納部35は、格納する錘の交換等により錘重量を調節可能としても良い。また、保護ケース30の表面から移動可能としたり、取り付け位置を複数用意して、重心の位置を変更調節可能としたりしても良い。
さらに、チョコレート型20及び保護ケース30の重心は、錘により定めているが、これに限らず、チョコレート型20や保護ケース30のいずれかの部分を肉厚とするなど重量の偏りを生じる構造としたり、支持体40の支持腕41,42の互いの長さを異ならせる等の支持体40の構造により重心位置を偏心させても良い。
【0041】
また、上記実施形態では、保護ケース30を内ケースと外ケースからなる二重構造としているが、内部の保護が十分に図ることができるならいずれかケースのみの単層構造としてもよい。
さらに、チョコレート型20及び保護ケース30は、互いに直交する二軸回りで回転可能としたが、斜めに交差する二軸回りで回転可能としても良いし、非平行であって交差しない位置関係(例えばねじれ)の関係にある二軸回りで回転可能としても良い。さらに、支持体40の軸部44の軸線(第二の回転軸Q)は水平方向となる方向に向けているが、水平に対して傾斜した方向に向けても良い。だたし、鉛直上下方向以外の方向とする必要がある。
【0042】
また、上記チョコレート成形装置10は、チョコレート型20の回転操作を行った後に冷却する手法を採っているが、例えば、チョコレート型20と保護ケース30の間に保冷剤や氷等の低温物質を格納するスペースを設けたり、ペルチェ素子等の冷却素子を配設したりして、回転操作を加えながらチョコレート型20の内部のチョコレート材料を冷却可能としても良い。
【符号の説明】
【0043】
10 チョコレート成形装置
20 チョコレート型
30 保護ケース
35 錘格納部
40 支持体
50 基台
P 第一の回転軸
Q 第二の回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料となるチョコレートを入れる中空内部領域が形成された合わせ構造のチョコレート型と、
前記チョコレート型を着脱可能且つ第一の回転軸を中心に回転可能に支持する支持体と、
前記支持体を前記第一の回転軸と交差する方向に沿った第二の回転軸を中心に回転可能に支持する基台と、
前記支持体を前記第二の回転軸回りに回転させる回転動作付与手段とを備え、
前記第二の回転軸は、鉛直上下方向に対して直交又は傾斜しており、
前記チョコレート型は、前記第二の回転軸の軸線から偏心した位置に重心を有することを特徴とするチョコレート成形装置。
【請求項2】
前記チョコレート型は、可撓性を有するシリコン樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1記載のチョコレート成形装置。
【請求項3】
前記チョコレート型を格納する保護ケースを備え、
前記支持体は、前記保護ケースを介して前記チョコレート型を支持することを特徴とする請求項1又は2記載のチョコレート成形装置。
【請求項4】
前記チョコレート型は、錘により前記第二の回転軸の軸線から偏心した位置を重心とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のチョコレート成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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