説明

チョコレート被覆菓子の製造方法、チョコレート被覆菓子製造装置

【課題】薪状菓子の天面および側面のみをチョコレートで被覆する。
【解決手段】バウムクーヘンを複数等分にした薪状菓子1の下面11をラインLに載せた後に、受け皿Rによって上方から下方へ向けてカーテン状に流れるようにしたチョコレートAに潜らせて、天面12および側面13をチョコレートAで被覆し、この薪状菓子1へ上方から第1エアノズルE1によってエア201を吹き付け、天面12および側面13に被覆されたチョコレートAの余剰分A1を吹き飛し、さらに、薪状菓子1の側面13と下面11とが接する位置へ第2エアノズルE2、第3エアノズルE3によって斜め上方両側および底面側から斜め上方エア301,底面エア302を吹き付け、天面12および側面13に被覆されたチョコレートAのうち下面11側に回り込もうとする回り込み分A2を吹き飛してチョコレート被覆菓子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレート被覆菓子の製造方法、チョコレート被覆菓子製造装置に関し、薪状菓子の一部分のみを、さらに詳しくは環状のバームクーヘンの複数等分、例えば、8等分したうちの一つの薪状菓子の天面および側面のみを、チョコレート被覆することが可能となり、チョコレートの被覆によって極めて視覚的興趣に富むチョコレート被覆菓子を製造することができるチョコレート被覆菓子の製造方法、チョコレート被覆菓子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チョコレートをパフ類やキャラメル類、焼き物類等に被覆した被覆菓子が多種製造されている。例えば、本出願人は、下記特許文献1にて、バームクーヘンの外周を2種のチョコレートで被覆し、極めて視覚的興趣に富んだ白樺の木肌模様を形成することができるチョコレート被覆菓子の製造方法を提案しているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3010552号公報
【0004】
上記特許文献1にて提案したチョコレート被覆菓子の製造方法は、回転可能な軸の周囲に形成した菓子母体に対し、熱溶融させた第1のチョコレートを入れた付着槽を下方から臨ませて菓子母体を回転させることにより、第1のチョコレートを菓子母体の周囲全体に付着させた後、受け槽を下方に配置させ、菓子母体を回転させながら上方から熱溶融させた第2のチョコレートを菓子母体の長さ方向に搾り落として付着させることにより、第2のチョコレートを菓子母体の周囲に部分的に付着させると共に第1のチョコレートと混じり合わせた後、切断加工および仕上げ加工を行う、といったものである。
【0005】
ここで、バームクーヘンを複数等分にし、湾曲した底辺と、この底辺よりも長さが短い湾曲した天辺と、底辺および天辺を結ぶ左右の側辺とが断面視すると認められるような薪状菓子は、単一のチョコレートで全体を被覆するのであれば装置を利用して生産することに困難性が生じにくいものの、例えば、外周(下面)の白樺模様を生かしつつ、側面と天面とを別のチョコレートで被覆した菓子製品にしようとすると、下記のような問題が生じる。
【0006】
すなわち、下面に白樺模様をコーティングした薪状菓子を、下面を下にしてラインに載せ、上方から下方へカーテン状に流れるチョコレートに潜らせて、天面および側面をチョコレート被覆しようとすれば、被覆されたチョコレートの余剰分が側面から下面に回り込んで、その余剰分で下面の白樺模様が潰れてしまい、白樺模様が美しく現れなくなるという問題がある。
【0007】
また、先に天面および側面をチョコレート被覆し、その後に、下面に白樺模様を形成しようとすれば、上記特許文献1に提案した方法の発明を実施することができないので、やはり下面の白樺模様でチョコレート被覆し、側面と天面を別のチョコレートで被覆した菓子製品を製造することが困難であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、バームクーヘンを複数等分にし、湾曲した底辺と、この底辺よりも長さが短い湾曲した天辺と、底辺および天辺を結ぶ左右の側辺とが断面視すると認められるような薪状菓子を、下面の白樺模様等の極めて視覚的興趣性を生かしつつ、側面と天面を別のチョコレートで被覆した菓子製品を製造するには非常に困難な技術的課題があった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑み提案されたもので、バームクーヘンを複数等分にしたような薪状菓子であっても、下面の極めて視覚的興趣性を生かしつつ、側面と天面を別のチョコレートで被覆した菓子製品を製造することが可能なチョコレート被覆菓子の製造方法、チョコレート被覆菓子製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るチョコレート被覆菓子の製造方法は、天辺と、湾曲した下辺と、前記天辺および前記下辺を結ぶ左右の側辺とを有する薪状菓子を、前記下辺を含む下面を下にしてラインに載せ、上方から下方へカーテン状に流れるチョコレートに潜らせて、前記天辺を含む天面および前記側辺を含む側面をチョコレート被覆し、前記天面および前記側面がチョコレート被覆された前記薪状菓子へ上方からエアを吹き付け、前記天面および前記側面に被覆されたチョコレートの余剰分を吹き飛ばし、前記薪状菓子の側面と下面とが接する位置へ斜め上方両側および底面側からエアを吹き付け、前記天面および前記側面に被覆されたチョコレートのうち前記下面側に回り込もうとする分を吹き飛ばしてチョコレート被覆菓子を製造することを特徴とする。
【0011】
特に本発明は、薪状菓子の一端部から他端部まですべてのチョコレート被覆が終了した後に、天面および側面に被覆されたチョコレートのうち下面側に回り込もうとする分を吹き飛ばすことを始めることが好ましく、また、薪状菓子の他端部のチョコレート被覆が行われている時に、天面および側面に被覆されたチョコレートのうち下面側に回り込もうとする分を吹き飛ばすことを薪状菓子の一端部から始めても好ましいチョコレート被覆菓子の製造方法である。
【0012】
さらに本発明は、下面が既にチョコレート被覆された薪状菓子を用いて実施することが好ましい。また、薪状菓子を被覆するチョコレートがラインに付着することに起因して、薪状菓子の下面が汚れることを防ぐライン洗浄手段を用いてチョコレート被覆菓子を製造することがさらに好ましい。このほか、薪状菓子の天面および側面に被覆したチョコレートを固化する冷却工程を備えることも好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記チョコレート被覆菓子の製造方法を実施するために用いるチョコレート被覆菓子製造装置であって、前記薪状菓子の下面を接面として載置するラインと、このラインに載置された前記薪状菓子の前記天面および前記側面をチョコレート被覆するために設けられ、一部に切り欠きが形成されて前記カーテン状に流れるチョコレートを形成する受け皿部と、この受け皿部よりも前記ラインの進行方向側に設けられ、前記天面および前記側面がチョコレート被覆された前記薪状菓子へ上方からエアを吹き付ける第1エアノズル部と、この第1エアノズル部よりも前記ラインの進行方向側に設けられ、前記薪状菓子の側面と下面とが接する位置へ斜め上方両側および底面側からエアを吹き付け、前記天面および前記側面に被覆されたチョコレートのうち前記下面側に回り込もうとする分を吹き飛す第2および第3エアノズル部と、を備え、前記第2および第3エアノズル部を前記ラインの進行方向に可動可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、天辺と、湾曲した下辺と、天辺および下辺を結ぶ左右の側辺とを有する薪状菓子を、下辺を含む下面を下にしてラインに載せ、上方から下方へカーテン状に流れるチョコレートに潜らせて、天辺を含む天面および側辺を含む側面をチョコレート被覆することに加え、特に、天面および側面にチョコレート被覆された薪状菓子へ上方からエアを吹き付け、天面および側面に被覆されたチョコレートの余剰分を吹き飛ばし、かつ、薪状菓子の側面と下面とが当接する位置へ斜め上方両側および底面側からエアを吹き付け、天面および側面に被覆されたチョコレートのうち下面側に回り込もうとする分を吹き飛ばして製造するようにした。したがって、天面および側面に被覆されたチョコレートの余剰分を除くことができ、さらに、天面および側面に被覆されたチョコレートのうち下面側に回り込もうとする分を吹き飛すことができ、被覆に不要となった分のチョコレートを薪状菓子の下面側に回り込ませないで、一部分、具体的には、薪状菓子の天面および側面のみをチョコレート被覆することができる。これにより、例えば、極めて視覚的興趣性を有するように下面に既に何らかの模様等が付加された薪状菓子の下面を別のチョコレートで汚さないで、その模様を生かしつつ、側面と天面を別のチョコレートで被覆した菓子製品を製造することができる。
【0015】
特に、薪状菓子の一端部から他端部まですべてのチョコレート被覆が終了した後に、天面および側面に被覆されたチョコレートのうち下面側に回り込もうとする分を吹き飛ばすことを始めることにより、または、薪状菓子の他端部のチョコレート被覆が行われている時に、天面および側面に被覆されたチョコレートのうち下面側に回り込もうとする分を吹き飛ばすことを薪状菓子の一端部から始めることにより、被覆するチョコレートの種類によって異なる粘性、固まりやすさに適宜対応しながら、側面と天面のみをチョコレートで被覆した菓子製品を製造することができる。これにより、様々なチョコレートを使って、バラエティあふれるチョコレート被覆菓子を製造することが可能となる。
【0016】
また、本発明は、下面が既にチョコレート被覆された薪状菓子を用いることにより、極めて視覚的興趣性を有するように下面に既にチョコレート被覆した薪状菓子であっても、その視覚的興趣性を生かしつつ、側面と天面を別のチョコレートで被覆した菓子製品を製造することができる。また、薪状菓子を被覆するチョコレートがラインに付着することに起因して、薪状菓子の下面が汚れることを防ぐライン洗浄手段を用いて製造するので、薪状菓子の下面、特に、視覚的興趣性を有するようにされた下面を、被覆するチョコレートによって汚すようなことも防ぐことができ、提供しようとするチョコレートで被覆した菓子製品の品質を向上させることができる。
【0017】
さらに、薪状菓子の天面および側面に被覆したチョコレートを固化する冷却工程を備えれば、冷却工程によって被覆したチョコレートをその粘性、固まりやすさを考慮しながら固化することができ、薪状菓子の下面側にチョコレートを回り込ませないで一部分、具体的には、薪状菓子の天面および側面のみをチョコレート被覆することが確実に行えるようになる。
【0018】
また、本発明では、上記チョコレート被覆菓子の製造方法を実施するために用いるチョコレート被覆菓子製造装置に関し、薪状菓子の下面を接面として載置するラインと、このラインに載置された薪状菓子の天面および側面をチョコレート被覆するために設けられ、一部に切り欠きが形成されてカーテン状に流れるチョコレートを形成する受け皿部と、この受け皿部よりもラインの進行方向側に設けられ、天面および側面がチョコレート被覆された薪状菓子へ上方からエアを吹き付ける第1エアノズル部と、この第1エアノズル部よりもラインの進行方向側に設けられ、薪状菓子の側面と下面とが接する位置へ斜め上方両側および底面側からエアを吹き付け、天面および側面に被覆されたチョコレートのうち下面側に回り込もうとする分を吹き飛す第2および第3エアノズル部とを備えて構成し、第2および第3エアノズル部をラインの進行方向に可動可能とした。したがって、上記チョコレート被覆菓子の製造方法にて得られる発明の効果を具備した上で、効率よくチョコレート被覆菓子を製造することできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るチョコレート被覆菓子の製造方法と、これを実施するのに用いるチョコレート被覆菓子製造装置の概略を表す一部破断全体斜視図である。
【図2】本発明におけるコーティング工程を表す説明図である。
【図3】本発明におけるエア吹き付け工程を表す説明図である。
【図4】本発明における仕上げ工程を表す説明図である。
【図5】本発明に係るチョコレート被覆菓子の製造方法と、これを実施するのに用いるチョコレート被覆菓子製造装置の要部を表す要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るチョコレート被覆菓子の製造方法と、これを実施するのに用いるチョコレート被覆菓子製造装置の一実施形態について、図面を参照しつつ詳述する。なお、本発明に適用される薪状菓子としては、形状のほかに特に限定されず、どのような薪状菓子を用いてもよい。また、バウムクーヘンを複数等分に分けたバームクーヘン片を用いることが望ましい。バウムクーヘンは、回転軸の周囲に生地を塗り付け、焼き、この工程を繰り返して製造される。このためバウムクーヘンを複数等分に分ければ、ちょうど木を割った薪のような形状となるので、薪状菓子と称するに適するからである。さらに、上記特許文献1として取り上げた本出願人の先行技術では、バウムクーヘンの外周に白樺の木肌模様が形成されるので、このような外周に白樺の木肌模様のついたバウムクーヘンを複数等分に分けたものを本発明の実施に用いることにより、バウムクーヘンの天面と側面のチョコレート被覆と、下面の白樺の木肌模様とが相俟って視覚的興趣に富んだ薪状菓子を製造することができる。
【0021】
また、本発明に用いるチョコレートは、従来公知のチョコレートであれば如何なるチョコレートでもよく、法規上に規定される純チョコレートや準チョコレート類は勿論のこと、その他各種ハードバターを使用したチョコレート類をも含まれている。
【0022】
本発明に係るチョコレート被覆菓子の製造方法は、その実施形態の一例として、図1に示すようなチョコレート被覆菓子製造装置Eを作動させることにより実施することができる。すなわち、本発明に係るチョコレート被覆菓子の製造方法は、要部として図5に示すように、バウムクーヘンを複数等分に分けて形成され、湾曲した下辺11aと、この下辺11aと同方向の湾曲を有して下辺11aよりも長さが短い天辺12aと、下辺11aおよび天辺12aを結ぶ左右の側辺13a,13bが断面視にて有する薪状菓子1を、下辺11aを含む下面11を下にしてラインLに載せ、受け皿Rによって上方から下方へ向けてカーテン状に流れるようにしたチョコレートAに潜らせて、天辺12aを含む天面12および側辺13a,13bを含む側面13をチョコレートAで被覆するコーティング工程100と、天面12および側面13にチョコレートAで被覆された薪状菓子1へ上方から第1エアノズルE1によってエア201を吹き付け、天面12および側面13に被覆されたチョコレートAの余剰分A1を吹き飛すエア吹き付け工程200と、薪状菓子1の側面13と下面11とが接する位置へ第2エアノズルE2、第3エアノズルE3によって斜め上方両側および底面側から斜め上方エア301,底面エア302を吹き付け、天面12および側面13に被覆されたチョコレートAのうち下面11側に回り込もうとする回り込み分A2を吹き飛す仕上げ工程300とを具備するものである。
【0023】
特に、被覆するチョコレートAの種類によって粘性や固まりやすさが異なるので、被覆するチョコレートAの種類により、仕上げ程300は、コーティング工程100において薪状菓子1の一端部1Xから他端部1Yまですべて、チョコレートAの被覆が終了した後に開始してもよく、あるいは、コーティング工程100において薪状菓子1の他端部1YにてチョコレートAの被覆が行われている時に、薪状菓子1の一端部1Xから開始してもよいように、斜め上方エア301を吹き出す第2エアノズルE2、底面エア302を吹き出す第3エアノズルE3をラインLの進行方向に沿って可動可能としている。
【0024】
また、本発明では、図1に示すように、コーティング工程100、エア吹き付け工程200および仕上げ程300において、チョコレートAの一部がラインLに付着するので、これに起因して、ラインL上に載せた薪状菓子1の下面11が汚れないようにするため、ラインLに向けて第4エアノズルE4によって洗浄エア401を吹き付け、ラインLに付着したチョコレートAの一部を取り除く洗浄手段となるライン用エア吹付工程400を具備している。
【0025】
このほか、図示を省略したが、薪状菓子1の天面および側面に被覆したチョコレートを固化する冷却工程を具備している。この冷却工程は、仕上げ工程300を終えた後に行うものである。この冷却工程により、被覆したチョコレートAの粘性、固まりやすさを考慮しながらチョコレートAを固化することができ、薪状菓子1の下面11側にチョコレートAを回り込ませないで、天面12および側面13のみを被覆することが確実に行えるようになる。
【0026】
ここで 本発明に係るチョコレート被覆菓子の製造方法を実施するのに用いるチョコレート被覆菓子製造装置Eに関し、図1〜図4に基づいて簡単に説明する。
【0027】
チョコレート被覆菓子製造装置Eは、図1に示すように、薪状菓子1を載せ、本発明に係るチョコレート被覆菓子の製造方法を実施する各工程を順次行うためのラインLと、このラインL上に載せられた薪状菓子1に対し上記各工程が順次行われる場とするため、ラインL上に載せられた薪状菓子1の入口部T1と出口部T2とが設けられている筐体Tと、この筐体T内に、上記各工程が順次行われるようにするための各種の構成部品(受け皿R、第1エアノズルE1、第2エアノズルE2、第3エアノズルE3および第4エアノズルE4)が収容されて構成されている。
【0028】
具体的には、ラインLには、薪状菓子1が下面を接面として載置される。また、ラインLは、筐体Tの入口部T1までのラインL1と、上記各工程が行われる筐体T内および出口部T2から出た薪状菓子1に対して行われる冷却工程に至るラインL2とが、進行方向に連続して並べられ、別の駆動機構によって作動するラインLとして構成されている。
【0029】
さらに、筐体T内には、図2に示すように、入口部T1側に、ラインL2に載置された薪状菓子1の天面12および側面13へチョコレートAを被覆する受け皿Rが、チョコレートAをカーテン状に流れるようにするために、一部に切り欠きR1が形成されて設けられている。受け皿Rは、図1、図2から理解されるように、チョコレートAが筐体T1外部から内部へ筒内を通って一度溜まり、その後、切り欠きR1から下方、すなわちラインL2に載置された薪状菓子1の天面12および側面13へ向けて、カーテン状になって流れおちるための機構を作りだすものとして機能している。
【0030】
また、筐体Tの入口部T1には、図1に示すように、切り欠きR1から下方、すなわちラインL2に載置された薪状菓子1の天面12および側面13へ向けて、カーテン状になって流れおちたチョコレートAのうち、ラインL2に付着してしまった分を吹き飛ばす第4エアノズルE4が設けられている。この第4エアノズルE4は、ラインL1とラインL2の継ぎ目に、エア吹き出し口をラインL2へ向けて洗浄エア401が吹き出るようにして配置されている。なお、本発明のチョコレート被覆菓子の製造方法を実施するとき、コーティング工程100によってラインL2に付着したチョコレートAのほか、エア吹き付け工程200、仕上げ工程300によってラインL2に付着したチョコレートAも同様に、第4エアノズルE4の洗浄エア401によってラインL2から吹き飛ばされるようになる。これにより、チョコレートAがラインL2に付着することに起因して、薪状菓子1の下面(例えば、チョコレートによって白樺模様が形成された下面)を汚すことなく、上記各工程を進めることが可能となる。
【0031】
また、受け皿Rよりもラインの進行方向側、さらに詳しくは、受け皿Rの背後側に隣接した位置には、チョコレートAで被覆された薪状菓子1の天面12および側面13へ、上方からエア201を吹き付ける第1エアノズルE1が設けられている。第1エアノズルE1は、図3に示すように、天面12および側面13にチョコレートAで被覆された薪状菓子1へ上方からエア201を吹き付けることで、天面12および側面13に被覆されたチョコレートAの余剰分A1を吹き飛すことができる。また、図1に示すように、受け皿Rよりもラインの進行方向側であって、さらに詳しくは、筐体T内の出口部T2側には、薪状菓子1の側面13と下面11とが接する位置へ、斜め上方両側から斜め上方エア301を吹き付ける第2エアノズルE2と、底面側から斜め上方エア301を吹き付ける第3エアノズルE3とがラインL2を挟むようにして設けられている。図4に示すように、この第2エアノズルE2と第3エアノズルE3により、天面12および側面13に被覆されたチョコレートAのうち、下面11側に回り込もうとする回り込み分A2を吹き飛すことができる。
【0032】
特に、第2エアノズルE2と第3エアノズルE3とは、筐体T内の出口部T2側に、天面12および側面13に被覆されたチョコレートAのうち、下面11側に回り込もうとする回り込み分A2を吹き飛すに際し、チョコレートAの粘性や固まりやすさを考慮すべく、ラインL(ラインL2)の進行方向に可動可能にして設けられている。その可動可能とは、例えば、被覆するチョコレートAの粘性が高く、固まりやすい種類である場合、チョコレートAが薪状菓子1の下面11に回り込む速度が相対的に遅くなるので、コーティング工程100において薪状菓子1の一端部1Xから他端部1Yまですべて、チョコレートAの被覆が終了した後に開始できる位置(筐体T内の出口部T2側)まで可動することを意味し、また例えば、被覆するチョコレートAの粘性が低く、固まりにくい種類である場合、チョコレートAが薪状菓子1の下面11に回り込む速度が相対的に早くなるので、コーティング工程100において薪状菓子1の他端部1YにてチョコレートAの被覆が行われている時に、薪状菓子1の一端部1Xから開始することができる位置(筐体T内の入口部T1側)まで可動することを意味するものである(図1、図4、図5等参照)。
【0033】
以下、本発明に係るチョコレート被覆菓子製造装置Eを用い、本発明に係るチョコレート被覆菓子の製造方法を実施した一例を、図1〜図4を参照しつつ概説する。
【0034】
まず、図1に示すように、バウムクーヘンを複数等分に分けて形成され、湾曲した下辺11aと、この下辺11aと同方向の湾曲を有して下辺11aよりも長さが短い天辺12aと、下辺11aおよび天辺12aを結ぶ左右の側辺13a,13bとが断面視で認められるような薪状菓子1を、下辺11aを含む下面11を下にしてラインL(ラインL1)に載せる。このとき、薪状菓子1は、下面11に白樺模様など視覚的興趣に富んだチョコレート被覆がされているものを用いる。
【0035】
次に、図2に示すように、薪状菓子1を受け皿Rによって上方から下方へ向けてカーテン状に流れるようにしたチョコレートAに潜らせて、天辺12aを含む天面12および側辺13a,13bを含む側面13をチョコレートAで被覆する(コーティング工程100)。なお、このコーティング工程100に入る前に、ライン用エア吹付工程400によって、ラインL2が第4エアノズルの洗浄エア401が吹き付けられて、ラインL2の洗浄が完了していることを確認することが好ましい。
【0036】
次に、図3に示すように、コーティング工程100によって天面12および側面13にチョコレートAで被覆された薪状菓子1へ上方から、第1エアノズルE1によってエア201を吹き付け、天面12および側面13に被覆されたチョコレートAの余剰分A1を吹き飛す(エア吹き付け工程200)。このエア吹き付け工程200では、第1エアノズルE1が受け皿Rの背後側に隣接して設けられているので、天面12および側面13に被覆されたチョコレートAの余剰分A1をいち早く吹き飛すことができる。
【0037】
さらに、図4に示すように、エア吹き付け工程200によって、天面12および側面13に被覆されたチョコレートAの余剰分A1がおよそ吹き飛された薪状菓子1について、側面13と下面11とが接する位置へ第2エアノズルE2、第3エアノズルE3によって斜め上方両側および底面側から斜め上方エア301,底面エア302を吹き付け、天面12および側面13に被覆されたチョコレートAのうち下面11側に回り込もうとする回り込み分A2を吹き飛す(仕上げ工程300)。このとき、仕上げ工程300は、被覆するチョコレートAの種類によって粘性や固まりやすさが異なるので、被覆するチョコレートAの種類により、コーティング工程100において薪状菓子1の一端部1Xから他端部1Yまですべて、チョコレートAの被覆が終了した後に開始する、あるいは、コーティング工程100において薪状菓子1の他端部1YにてチョコレートAの被覆が行われている時に、薪状菓子1の一端部1Xから開始するなど、その開始時期を適宜調整することが好ましい。第2エアノズルE2、第3エアノズルE3をラインLの進行方向に沿って可動可能としているため、仕上げ工程300の開始時期は、簡単に微調整することが可能である。
【0038】
最後に、薪状菓子1の天面および側面に被覆したチョコレートを固化する冷却工程を行う。この冷却工程により、被覆したチョコレートAの粘性、固まりやすさを考慮しながらチョコレートAを固化することができ、下面11側にチョコレートAを回り込ませないで、天面12および側面13のみを被覆した薪状菓子1のチョコレート被覆菓子製品として提供することができる。
【0039】
したがって、本発明では、例えば、バームクーヘンを複数等分した薪状菓子1、例えば、極めて視覚的興趣性を有するように下面11に何らかの模様等が付加された薪状菓子1について、下面11を被覆するチョコレートで汚さないで、その模様を生かしつつ、下面11とは別のチョコレートで側面13と天面12を被覆した菓子製品を製造することができる。
【0040】
特に、仕上げ程300を、コーティング工程100において薪状菓子1の一端部1Xから他端部1YまですべてについてチョコレートAの被覆が終了した後に開始したり、または、コーティング工程100において薪状菓子1の他端部1YのチョコレートAの被覆が行われている時に、薪状菓子1の一端部1Xから開始することにより、被覆するチョコレートAの種類によって異なる粘性、固まりやすさに適宜対応しながら、側面13と天面12のみをチョコレートAで被覆した菓子製品を製造することができる。これにより、様々なチョコレートを使って、バラエティあふれるチョコレート被覆菓子を製造することが可能となる。
【0041】
また、コーティング工程100におけるチョコレートAがラインL(ラインL2)に付着することに起因して、薪状菓子1の下面11が汚れることを防いだりする洗浄手段や、薪状菓子1の天面12および側面13に被覆したチョコレートAを固化する冷却工程を備えることで、薪状菓子1の天面12および側面13のみをチョコレート被覆することが確実に行えるようになる。
【0042】
さらに、本発明では、上記チョコレート被覆菓子の製造方法を実施するのに用いるチョコレート被覆菓子製造装置Eを構成したので、効率よくチョコレート被覆菓子を製造することも可能である。
【0043】
以上、本発明の実施形態を例示して詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態で説明した第1乃至第4エアノズルは公知の手段により達成することができるので、適宜用いることが可能である。また、第1乃至第4エアノズルから吹き出すエアの強度も、薪状菓子の下面にチョコレートを回り込ませないように適宜調整すればよい。
【0044】
また、上記実施形態では、説明の便宜のためにエア吹き付け工程200と仕上げ工程300を敢えて別の工程として行った例を示したが、本発明は、第1乃至第3エアノズルから吹き出すエアの強度を適宜調整すること等により、エア吹き付け工程と仕上げ工程を同時進行にて行うことができるものである。同時進行でチョコレート被覆菓子を製造することはすなわち、生産効率を高めることにつながるものである。
【符号の説明】
【0045】
1・・・薪状菓子
11・・下面
11a・下辺
12・・天面
12a・天辺
13・・側面
13a,13b・側辺
1X・・一端部
1Y・・他端部
100・コーティング工程
200・エア吹き付け工程
201・エア
300・仕上げ工程
301・斜め上方エア
302・底部エア
400・ライン洗浄工程
401・洗浄エア
A・・・チョコレート
A1・・余剰分
A2・・回り込み分
E・・・チョコレート被覆菓子製造装置
E1・・第1エアノズル
E2・・第2エアノズル
E3・・第3エアノズル
E4・・第4エアノズル
L,L1,L2・ライン
R・・・受け皿
R1・・切り欠き
T・・・筐体
T1・・入口部
T2・・出口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天辺と、湾曲した下辺と、前記天辺および前記下辺を結ぶ左右の側辺とを有する薪状菓子を、前記下辺を含む下面を下にしてラインに載せ、上方から下方へカーテン状に流れるチョコレートに潜らせて、前記天辺を含む天面および前記側辺を含む側面をチョコレート被覆し、前記天面および前記側面がチョコレート被覆された前記薪状菓子へ上方からエアを吹き付け、前記天面および前記側面に被覆されたチョコレートの余剰分を吹き飛ばし、前記薪状菓子の側面と下面とが接する位置へ斜め上方両側および底面側からエアを吹き付け、前記天面および前記側面に被覆されたチョコレートのうち前記下面側に回り込もうとする分を吹き飛ばしてチョコレート被覆菓子を製造することを特徴とするチョコレート被覆菓子の製造方法。
【請求項2】
前記薪状菓子の一端部から他端部まですべてのチョコレート被覆が終了した後に、前記天面および前記側面に被覆されたチョコレートのうち前記下面側に回り込もうとする分を吹き飛ばすことを始める、
ことを特徴とする請求項1に記載のチョコレート被覆菓子の製造方法。
【請求項3】
前記薪状菓子の他端部のチョコレート被覆が行われている時に、前記天面および前記側面に被覆されたチョコレートのうち前記下面側に回り込もうとする分を吹き飛ばすことを前記薪状菓子の一端部から始める、
ことを特徴とする請求項1に記載のチョコレート被覆菓子の製造方法。
【請求項4】
下面が既にチョコレート被覆された前記薪状菓子を用いる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のチョコレート被覆菓子の製造方法。
【請求項5】
前記薪状菓子を被覆するチョコレートが前記ラインに付着することに起因して、前記薪状菓子の下面が汚れることを防ぐライン洗浄手段を用いてチョコレート被覆菓子を製造する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のチョコレート被覆菓子の製造方法。
【請求項6】
前記薪状菓子の天面および側面に被覆したチョコレートを固化する冷却工程を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のチョコレート被覆菓子の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1つに記載のチョコレート被覆菓子の製造方法を実施するために用いるチョコレート被覆菓子製造装置であって、
前記薪状菓子の下面を接面として載置するラインと、
このラインに載置された前記薪状菓子の前記天面および前記側面をチョコレート被覆するために設けられ、一部に切り欠きが形成されて前記カーテン状に流れるチョコレートを形成する受け皿部と、
この受け皿部よりも前記ラインの進行方向側に設けられ、前記天面および前記側面がチョコレート被覆された前記薪状菓子へ上方からエアを吹き付ける第1エアノズル部と、
この第1エアノズル部よりも前記ラインの進行方向側に設けられ、前記薪状菓子の側面と下面とが接する位置へ斜め上方両側および底面側からエアを吹き付け、前記天面および前記側面に被覆されたチョコレートのうち前記下面側に回り込もうとする分を吹き飛す第2および第3エアノズル部と、を備え、
前記第2および第3エアノズル部を、前記ラインの進行方向に可動可能とした、
ことを特徴とするチョコレート被覆菓子製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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