説明

チョークコイル台座および空気調和機のコントローラ

【課題】巻回数の異なる整列巻きされた巻線を備えるチョークコイルを載置するチョークコイル台座を共通化してコストを削減する。
【解決手段】回路基板に組込まれるチョークコイル台座100は、片面にチョークコイルが載置される板状の台座本体110と、台座本体110の前記チョークコイルを載置する面とは逆の面に形成され、前記回路基板に配設されて、前記回路基板と台座本体110とを予め定められた間隔で離隔させる脚部120と、を備え、台座本体110には、前記チョークコイルの整列巻きされた巻線の異なる複数の巻回数に応じた位置に、該巻線を通す複数の挿入口111a〜111aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に組込まれるチョークコイル台座および当該チョークコイル台座が組込まれた回路基板を備える空気調和機のコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
チョークコイルを回路基板に実装する際には、実装を容易にし、かつ該チョークコイルと基板の回路配線との絶縁距離を確保するために、通常は、該チョークコイルをチョークコイル台座に載置して実装する。
【0003】
従来のチョークコイル台座は、載置される特定のチョークコイルのサイズ、形状、巻線の巻回数等に合わせて、該チョークコイル毎に用意されていた。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている台座付トロイダルコイル用コアケースの台座には、トロイダルコアケースと係合させるための係止爪を有する台座突起部と、巻線端部に半田付けされたリード線位置に合わせて形成され該リード線を通すための挿入穴と、が設けられている。
【0005】
また、例えば、特許文献2に開示されている台座付コイルの台座は、コアケースの嵌合部に結合させるための保持部が突設され、巻線の端子の位置決めを容易にするために、貫通孔に代えて台座の端部で開口する貫通溝が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−45444号公報
【特許文献2】特開2003−272924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、特許文献1および2に示すような従来のチョークコイル台座は、個々のチョークコイルに合わせて製作するため、コスト高とならざるを得なかった。
【0008】
さらに、従来のチョークコイル台座は、絶縁距離が確保できないので、端子の位置決めを容易にするために開口部の面積を増やすことが困難であるという問題点もあった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、絶縁距離の確保と巻線の位置決めを容易にすることとを両立し、かつ複数のチョークコイルに対応するチョークコイル台座を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係るチョークコイル台座は、回路基板に組込まれるチョークコイル台座であって、片面にチョークコイルが載置される板状の台座本体と、前記台座本体の前記チョークコイルを載置する面とは逆の面に形成され、前記回路基板に配設されて、前記回路基板と前記台座本体とを予め定められた間隔で離隔させる脚部と、を備え、前記台座本体には、前記チョークコイルに整列巻きされた巻線の異なる複数の巻回数に応じた位置に、該巻線を通す複数の孔部が形成されている。
【0011】
この構成では、載置されるチョークコイルの巻線の巻回数に応じた位置に、板状の台座本体に該巻線を通す複数の孔部が形成されている。したがって、整列巻きされた巻線を有し巻回数が異なる複数のチョークコイルについて台座を共通化することが可能となる。
【0012】
さらにこの構成では、前記台座本体の前記チョークコイルを載置する面とは逆の面に前記回路基板に配設される脚部が形成され、前記回路基板と前記台座本体との間は、予め定められた間隔で離隔されている。したがって、前記脚部によって絶縁距離を確保することができるので、開口部の面積を増加させることが可能となり、巻線の異なる複数の巻回数に応じた位置に該巻線を通す複数の孔部を設けることが可能となっている。また、前記チョークコイルの端子の位置決めを容易にするために、前記複数の孔部のそれぞれの面積を拡大することも可能である。さらに、従来デッドスペースとなっていたチョークコイル台座下の回路基板上に、例えばコンデンサ等の部品を配設することもできる。
【0013】
本発明の請求項2に係るチョークコイル台座は、請求項1に係るチョークコイル台座において、前記台座本体が、チョークコイルの外形に応じた形状とされている。この構成によれば、前記台座本体の面積が必要最小限に抑えられるので、よりデッドスペースが削減される。
【0014】
本発明の請求項3に係るチョークコイル台座は、請求項1または2に係るチョークコイル台座において、前記台座本体は、前記チョークコイルのコアが平面視で横向きに見える向きに載置可能な形状であって、載置される前記チョークコイルの外形に応じた形状を有する。
【0015】
この構成によれば、前記チョークコイルは、前記チョークコイルのコアが平面視で横向きに見える向きに載置される。つまり、前記チョークコイルが前記回路基板表面に直立するのではなく、倒された状態で該回路基板表面に載置されている。したがって、前記回路基板表面からチョークコイル頂部までの高さが抑えられる。しかも、前記台座本体は、載置される前記チョークコイルの外形に応じた形状を有するので、該台座本体の面積が必要最小限に抑えられる。
【0016】
本発明の請求項4に係るチョークコイル台座は、請求項1〜3に係るチョークコイル台座が、射出成形によって、前記台座本体と前記脚部とが一体に形成される。この構成によれば、前記脚部と前記台座本体とを別体に形成する場合とは異なり、例えば接着あるいは溶着等によって該脚部を該台座本体に結合する工程が不要となる。したがって、前記脚部と前記台座本体との接合部の強度が向上するとともに、低コストでチョークコイル台座を製作することが可能となる。
【0017】
本発明の請求項5に係る空気調和機のコントローラは、トロイダルコイルが請求項3または4のいずれかに記載のチョークコイル台座に載置されて回路基板に組込まれている。この構成によれば、前記回路基板表面からトロイダルコイル頂部までの高さが抑えられ、かつ、チョークコイル台座下の回路基板上に部品を配設して該回路基板の面積を減らすことができるので、該回路基板が組込まれるコントローラを小型化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るチョークコイル台座によれば、巻回数が異なるチョークコイルを用いる場合にも、絶縁距離を確保しながらも、チョークコイル毎に台座を用意することなく容易に位置決めをすることができる。さらに、従来デッドスペースとなっていたチョークコイル台座下の回路基板上に、部品を配設することができる。したがって、チョークコイル台座を共通化できるのでコスト削減が可能となり、さらに、チョークコイル台座下の回路基板上に部品を配設できるので前記回路基板の小型化が可能となり、該回路基板を組込んだ装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機のコントローラ用のノイズフィルタ用基板の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るチョークコイル台座の詳細を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図3】従来のチョークコイル台座の一例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る空気調和機のコントローラ用のノイズフィルタ用基板の一例を示す。図1(A)は、ノイズフィルタ用基板1の平面図であり、図1(B)は、ノイズフィルタ用基板1の正面図である。
【0021】
ノイズフィルタ用基板1は、トロイダルコイル200が、本発明の一実施形態に係るチョークコイル台座100に載置されてプリント基板300に配設されている。なお、トロイダルコイル200の巻線の端部にはリード端子が接続され、該リード端子はプリント基板300に接続されているが、図1では、チョークコイル台座100の説明のために該リード端子の図示を省略している。
【0022】
トロイダルコイル200は、本実施形態では三相のトロイダルコイルであり、コモンモードノイズを除去するためのコモンモードチョークコイルとして用いられている。巻線の断面積を大きくして、空気調和機のコントローラに流れる例えば45Aの大電流に対応するために、トロイダルコイル200の巻線には、エッジワイズ巻きされた平角線が用いられている。
【0023】
空気調和機のコントローラ等を構成する電気回路に、電気的ノイズが混入すると、機器の誤作動等の不具合を生じることがある。そのため通常は、該電気回路に電気的ノイズを除去するためのノイズフィルタ回路を設ける。本実施形態では、前記ノイズフィルタ回路をノイズフィルタ用基板1に形成して空気調和機のコントローラに実装している。ノイズフィルタリングの対象は、コントローラを構成する電気回路に流れるコモンモードノイズである。
【0024】
チョークコイル台座100には、例えばPBT(Polybutylene Terephthalate)樹脂やPET(Polyetylene Terephthalate)樹脂、PP(Polypropylene)樹脂等の電気抵抗率の高い熱可塑性樹脂が用いられる。プリント基板300とトロイダルコイル200との間に、チョークコイル台座100が介在することで、両者の絶縁距離が確保される。また、トロイダルコイル200をチョークコイル台座100に載置することで、直接プリント基板300に実装するよりも、トロイダルコイル200の実装が容易になる。
【0025】
チョークコイル台座100は、トロイダルコイル200を平面視で環状に見える向き(横向き)に載置する円盤状の台座本体110と、台座本体110のトロイダルコイル200を載置する面とは逆の面に形成され、プリント基板300に配設される円柱状の脚部120と、を備える。
【0026】
台座本体110と脚部120とは、前記熱可塑性樹脂を射出成形することによって一体に成形される。そのため、脚部120と台座本体110とを別体に形成する場合とは異なり、例えば接着あるいは溶着等によって脚部120を台座本体110に結合する工程が不要となる。したがって、脚部120と台座本体110との結合部の強度が向上するとともに、低コストでチョークコイル台座100を製作することが可能となる。
【0027】
台座本体110は、絶縁効果を確保し、かつ、その面積を最小限に抑えるため、トロイダルコイル200の巻線外周部の直径よりも若干大きな直径とされている。必要最小限の面積に台座本体110を形成することで、デッドスペースが最小限に抑えられるとともに、チョークコイル台座100が最小限の材料で形成されることになるため、コスト削減が可能となる。脚部120の高さは例えば3mmであり、プリント基板300と台座本体110との間は、この3mmの間隔で離隔される。
【0028】
図2は、チョークコイル台座100の詳細を示す図である。図2(A)は、チョークコイル台座100の平面図であり、図2(B)は、チョークコイル台座100の正面図である。図3は、従来のチョークコイル台座の一例を示す図であり、図2に同じく、図3(A)は平面図であり、図3(B)は正面図である。
【0029】
本発明の一実施形態に係るチョークコイル台座100について、従来のチョークコイル台座と対比しながら以下に説明する。
【0030】
従来のチョークコイル台座は、三相用のトロイダルコイルを載置する場合、トロイダルコイルの巻線の終端部に接続された計6つの端子を通すために、円盤状の台座本体110外縁部付近(挿入口111a)と中心部付近(挿入口111b)とに3つずつ均等の間隔で挿入口(孔部)が設けられている。すなわち、挿入口数は、前記端子の数と同数である。なお、前記端子の形状に合わせて、図3の例では、挿入口111a、111bの形状は略矩形とされ、挿入口111aは、その長さ方向が台座本体の中心に向かって形成され、挿入口111bは、その長さ方向が挿入口111aの長さ方向と略30°をなすように形成されている。
【0031】
ところで、トロイダルコイル200の巻線が整列巻きされている場合、巻回数が異なると巻線終端に接続された端子の位置が変化する。この複数の位置に対応させて、本実施形態に係るチョークコイル台座100の外縁部付近の挿入口は形成されている。すなわち、従来の挿入口111aに加えて、挿入口111a〜111aがさらに形成されている。挿入口111a〜111aは、その長さ方向が台座本体の中心に向かって形成され、かつ、その長さ方向が挿入口111bの長さ方向となす角度が、順次減少する位置に形成されている。
【0032】
台座本体110の外縁部に位置する端子1つに対して、4つの挿入口111a〜111aが用意されているので、整列巻きされたチョークコイルの巻線の巻回数が異なっても、いずれかの挿入口に端子を通すことができる。
【0033】
従来のチョークコイル台座は、円盤状の台座本体110のみからなる。一方、本発明に係るチョークコイル台座100は、台座本体110のトロイダルコイル200を載置する面とは逆の面に形成された4本の脚部120をさらに備えている。脚部120のうちの1本は台座本体110の中心に、3本は台座本体110の外縁部に均等の間隔、かつトロイダルコイル200の端子と干渉しない位置に形成されている。
【0034】
プリント基板300と台座本体110との間は、脚部120の高さ(本実施形態では3mm)で離隔されることになる。すなわち、絶縁距離が確保されるので、台座本体110の開口面積を増やすことができる。したがって、従来のチョークコイル台座が備える挿入口111aおよび111bに加えて、挿入口111a〜111aを設けることが可能となっている。さらに、各挿入口の面積を拡大して端子の位置決めを容易にすることも可能である。
【0035】
脚部120によって離隔されるプリント基板300と台座本体110との間のスペースには、プリント基板300上に図略のコンデンサ等の部品が実装されている。従来デッドスペースとなっていたチョークコイル台座下の回路基板上に部品が実装されているので、従来のコントローラよりもプリント基板300を小型化することが可能となっている。
【0036】
以上説明したように、上記実施形態に係るチョークコイル台座100によれば、従来、巻線の巻回数が異なるトロイダルコア毎に製作していたチョークコイル台座を共通化できるので、コスト削減が可能となる。また、上記実施形態に係る空気調和機のコントローラは、上記実施形態に係るチョークコイル台座100を採用することで、プリント基板300の表面からトロイダルコイル頂部までの高さが抑えられ、かつ、プリント基板300上のチョークコイル台座100に覆われた部分に部品を配設してプリント基板300の面積を減らすことが可能となるので、従来の空気調和機のコントローラよりも小型化することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態に係るチョークコイル台座100および空気調和機のコントローラについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取ることもできる。
【0038】
(1)上記実施形態では、チョークコイル台座100は、三相のトロイダルコイル200を載置するが、載置されるトロイダルコイルが二相あるいは四相であっても本発明は適用できる。また、トロイダルコイルに限らず載置されるコイルの巻線が整列巻きであれば、本発明を適用できる。
【0039】
(2)上記実施形態では、脚部120は円柱状に形成されているが、脚部の形状はこれに限定されるものではなく、絶縁距離を確保できる高さ(上記実施形態では3mm)に形成されていれば、例えば角柱状等の異なる形状であってもよい。
【0040】
(3)上記実施形態では、トロイダルコイルを、コモンモードノイズを除去するコモンモードチョークコイルとして用いているが、トロイダルコイルは、ノーマルモードノイズを除去するノーマルモードチョークコイルとして用いてもよく、また、トロイダルコイルの用途はノイズフィルタに限られるものでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 ノイズフィルタ用基板
100 チョークコイル台座
110 台座本体
111a〜111a 挿入口(孔部)
111b 挿入口
120 脚部
200 トロイダルコイル(チョークコイル)
300 プリント基板(回路基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板(300)に組込まれるチョークコイル台座であって、
片面にチョークコイル(200)が載置される板状の台座本体(110)と、
前記台座本体(110)の前記チョークコイルを載置する面とは逆の面に形成され、前記回路基板(300)に配設されて、前記回路基板(300)と前記台座本体(110)とを予め定められた間隔で離隔させる脚部(120)と、を備え、
前記台座本体(110)には、前記チョークコイルに整列巻きされた巻線の異なる複数の巻回数に応じた位置に、該巻線を通す複数の孔部(111a〜111a)が形成されているチョークコイル台座。
【請求項2】
前記台座本体(110)は、チョークコイル(200)の外形に応じた形状を有する請求項1に記載のチョークコイル台座。
【請求項3】
前記台座本体(110)は、
前記チョークコイル(200)のコアが平面視で横向きに見える向きに載置可能な形状であって、
載置される前記チョークコイル(200)の外形に応じた形状を有する請求項1または2に記載のチョークコイル台座。
【請求項4】
射出成形によって、前記台座本体(110)と前記脚部(120)とが一体に形成される請求項1〜3のいずれかに記載のチョークコイル台座。
【請求項5】
トロイダルコイル(200)が請求項3または4に記載のチョークコイル台座(100)に載置されて回路基板(300)に組込まれた空気調和機のコントローラ。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−165795(P2010−165795A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5937(P2009−5937)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】