説明

チルト調整機構

【課題】容易にかつ高精度に撮像素子のチルト調整を行うことのできるチルト調整機構を提供する。
【解決手段】撮像素子11の撮像面11aを撮影光学系(40)に対して筐体39A内で設定された基準面Bpに一致させるべく、筐体39Aに対する傾斜を変更可能に撮像素子11を保持するチルト調整機構50である。撮像素子11を保持する撮像素子保持板(52)と、基準面Bpに対して直交される調整方向ADへと変位可能に撮像素子保持板を支持する支持点を形成するカム面(55c)を有する少なくとも3つの支持部材55と、を備え、カム面は、基準面Bpに対して傾斜され、各支持部材55は、基準面Bpに沿う方向で見て撮像素子11を取り囲むとともに、撮像素子保持板に対する支持点におけるカム面の傾斜方向を撮像素子11側へ向けて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子のチルト調整を可能とするチルト調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の撮影装置では、小型化が求められるとともに撮影画像の高画質化が求められている。ここで、高画質化への要求を満たすためには、撮影光学系により形成される被写体像を適切に取得する位置に撮像素子を設けることが望ましい。このため、撮影光学系に対する基準面を筐体内で設定し、当該基準面に撮像素子の撮像面を一致させるべく、撮影光学系の撮影光軸方向での撮像素子の位置を調整するとともにその撮影光軸方向に対する撮像素子の傾斜を調整するいわゆる撮像素子のチルト調整を高精度に行う。このチルト調整のために、筐体内において撮像素子を3点で支持するとともに、その各支持点の撮影光軸方向への調整を可能とする構成とすることが、知られている。
【0003】
このような構成として、撮像素子が実装される板状の撮像素子保持部材を、レンズ鏡筒の撮像素子保持枠に対して角度調整可能に取り付ける取付角度調整機構が考えられている(特許文献1参照)。この取付角度調整機構では、撮像素子保持部材に、撮像素子を取り巻く3つのネジ穴と、その近傍位置を切り起こして形成した板バネと、2つのガイド用貫通孔と、が設けられている。その撮像素子保持部材は、その各ガイド用貫通孔に撮像素子保持枠の2つのガイド用突起が挿通されて撮影光軸に直交する方向で位置決めされ、3つの板バネ部が撮像素子保持枠に押し当てられつつ3つのネジ穴を経た調整ネジで撮像素子保持枠にネジ止めされている。この取付角度調整機構では、各調整ネジの撮像素子保持部材への螺合量を調節することにより、撮像素子保持部材の撮像素子保持部材に対する取付角度を調整することができ、組付け作業および調整作業を容易なものとすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の取付角度調整機構では、撮像素子保持枠に対して撮像素子保持部材を離間させるべく付勢する3つの板バネが、撮像素子保持部材を切り起こして形成されていることから、各板バネは、撮像素子保持部材に撮影光軸方向(撮像素子保持枠から離間する方向)の付勢力を付与する際、その撮影光軸に直交する方向への付勢力も併せて付与することとなる。このため、撮像素子の撮影光軸に直交する方向での位置が所定の状態から変化してしまう虞がある。また、そのような変化を、ガイド用貫通孔とガイド用突起とを撮影光軸方向に挿通させることにより防止できた場合であっても、当該ガイド用突起が、撮影光軸に直交する方向で当該ガイド用貫通孔の内周面に押し当てられることにより、各調整ネジで撮像素子保持部材を撮影光軸方向に変位させることが困難となる虞がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、容易にかつ高精度に撮像素子のチルト調整を行うことのできるチルト調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のチルト調整機構は、撮影光学系により形成される被写体像を取得する撮像素子の撮像面を前記撮影光学系に対して筐体内で設定された基準面に一致させるべく、前記筐体に対する傾斜を変更可能に前記撮像素子を保持するチルト調整機構であって、前記撮像素子を保持する撮像素子保持板と、前記基準面に対して直交される調整方向へと変位可能に前記撮像素子保持板を支持する支持点を形成するカム面を有する少なくとも3つの支持部材と、を備え、前記カム面は、前記基準面に対して傾斜され、前記各支持部材は、前記基準面に沿う方向で見て前記撮像素子を取り囲むとともに、前記撮像素子保持板に対する支持点における前記カム面の傾斜方向を前記撮像素子側へ向けて設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載のチルト調整機構は、撮影光学系により形成される被写体像を取得する撮像素子の撮像面を前記撮影光学系に対して筐体内で設定された基準面に一致させるべく、前記筐体に対する傾斜を変更可能に前記撮像素子を保持するチルト調整機構であって、前記撮像素子を保持する撮像素子保持板と、前記基準面に対して直交される調整方向へと変位可能に前記撮像素子保持板を支持する支持点を形成するカム面を有する少なくとも3つの支持部材と、を備え、前記カム面は、前記基準面に対して傾斜され、前記各支持部材は、前記カム面に起因して該カム面の傾斜方向に作用する前記撮像素子保持板への押圧力における前記基準面に沿う方向の成分で見て、前記撮像素子保持板の各被支持点におけるいずれか1個の被支持点に作用する押圧力に対して、前記撮像素子保持板の各被支持点における残りの被支持点に作用する押圧力の合成成分が打ち消し合うように、互いの前記傾斜方向が設定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載のチルト調整機構は、請求項1または請求項2に記載のチルト調整機構であって、前記各カム面は、単一の傾斜面で形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載のチルト調整機構は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のチルト調整機構であって、前記各支持部材は、前記筐体に前記調整方向に沿う軸線回りに回転可能に設けられ、前記各カム面は、前記調整方向に対して傾斜する螺旋状の平面であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載のチルト調整機構は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチルト調整機構であって、さらに、前記撮像素子保持板と前記各カム面とを前記調整方向で圧接させる付勢力を、前記撮像素子保持板または前記各カム面のいずれか一方に付与する付勢手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載のチルト調整機構は、請求項5に記載のチルト調整機構であって、前記付勢手段は、板バネであることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載のチルト調整機構は、請求項5または請求項6に記載のチルト調整機構であって、前記付勢手段は、前記各支持部材に個別に対応して設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載のチルト調整機構は、請求項7に記載のチルト調整機構であって、前記各付勢手段は、前記撮像素子保持板の各被支持点において押圧力を調整すべく、付勢力が設定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載のチルト調整機構は、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のチルト調整機構であって、前記各カム面は、前記撮像素子保持板の各被支持点において押圧力を調整すべく、傾斜角度が設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載のチルト調整機構は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のチルト調整機構であって、前記各支持部材は、前記撮像素子保持板の各被支持点において押圧力を調整すべく、前記基準面に沿う方向で見た配置位置が設定されていることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載のチルト調整機構は、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のチルト調整機構であって、前記支持部材は、焼結材料で形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載のチルト調整機構は、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のチルト調整機構であって、前記支持部材は、ダイカスト法で形成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項13に記載の撮像装置は、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のチルト調整機構を搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るチルト調整機構では、カム面に起因して撮像素子保持板の各被支持点に作用する押圧力を互いに打ち消すことができるので、撮像素子保持板を調整方向に直交する方向へと押圧するように作用する力を極めて小さなものとすることができる。このため、撮像素子が基準面に沿う方向へと変位することを防止することができる。
【0020】
また、各押圧力を互いに打ち消すことができることから、撮像素子保持板を調整方向に直交する方向へと押圧するように作用する力を極めて小さなものとすることができるので、例えば、撮像素子保持板の調整方向に直交する方向への移動を係合により規制する構成とした場合であっても、その係合箇所に大きな摩擦力が生じることを防止することができる。このため、撮像素子保持板を調整方向に容易に変位させることができ、撮像素子のチルト調整を容易なものとすることができる。
【0021】
さらに、撮像素子保持板の各被支持部を、基準面に対して傾斜されたカム面で支持するとともに、そのカム面における当接位置を変化させることにより調整方向での支持位置を変化させるものであることから、調整方向での撮像素子保持板の支持位置を微小に変化させることができるので、撮像素子のチルト調整を高精度に行うことができる。
【0022】
上記した構成に加えて、前記各カム面は、単一の傾斜面で形成されていることとすると、カム面における撮像素子保持板への当接位置の変化に対する各支持点の調整方向での変化を連続的ものとすることができるので、より簡易にかつ高精度に撮像素子のチルト調整を行うことができる。
【0023】
上記した構成に加えて、前記各支持部材は、前記筐体に前記調整方向に沿う軸線回りに回転可能に設けられ、前記各カム面は、前記調整方向に対して傾斜する螺旋状の平面であることとすると、支持部材を軸線回りに回転操作することで調整方向での支持位置を変化させることができる。このため、より小さく簡易な構成としつつ、支持部材の回転操作量に対する各支持点の調整方向での変化量を微小なものとしつつ漸次的な変化を可能とすることができ、より高精度に撮像素子のチルト調整を行うことができる。
【0024】
上記した構成に加えて、さらに、前記撮像素子保持板と前記各カム面とを前記調整方向で圧接させる付勢力を、前記撮像素子保持板または前記各カム面のいずれか一方に付与する付勢手段を備えることとすると、撮像素子保持板に対する調整方向での各支持点の位置をより適切に調整することができ、より高精度に撮像素子のチルト調整を行うことができる。
【0025】
上記した構成に加えて、前記付勢手段は、板バネであることとすると、調整方向での大きさ寸法の増大を招くことなく、撮像素子保持板の各被支持部を支持部材のカム面へとより適切に押圧(圧接)させることができる。このため、より高精度に撮像素子のチルト調整を行うことができる。
【0026】
上記した構成に加えて、前記付勢手段は、前記各支持部材に個別に対応して設けられていることとすると、撮像素子保持板の各被支持部を支持部材のカム面へとより適切に押圧(圧接)させることができる。このため、より高精度に撮像素子のチルト調整を行うことができる。
【0027】
上記した構成に加えて、前記各付勢手段は、前記撮像素子保持板の各被支持点において押圧力を調整すべく、付勢力が設定されていることとすると、撮像素子保持板の各被支持点において調整方向に直交する方向に作用する押圧力をより効果的に互いに打ち消すものとすることができる。
【0028】
上記した構成に加えて、前記各カム面は、前記撮像素子保持板の各被支持点において押圧力を調整すべく、傾斜角度が設定されていることとすると、撮像素子保持板の各被支持点において調整方向に直交する方向に作用する押圧力をより効果的に互いに打ち消すものとすることができる。
【0029】
上記した構成に加えて、前記各支持部材は、前記撮像素子保持板の各被支持点において押圧力を調整すべく、前記基準面に沿う方向で見た配置位置が設定されていることとすると、撮像素子保持板の各被支持点において調整方向に直交する方向に作用する押圧力をより効果的に互いに打ち消すものとすることができる。
【0030】
上記した構成に加えて、前記支持部材は、焼結材料で形成されていることとすると、高精度にカム面を形成することができるとともに、温度変化に対する変形を極めて小さなものとすることができるので、より高精度に撮像素子のチルト調整を行うことができる。
【0031】
上記した構成に加えて、前記支持部材は、ダイカスト法で形成されていることとすると、高精度にカム面を形成することができるとともに、温度変化に対する変形を極めて小さなものとすることができるので、より高精度に撮像素子のチルト調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る一例としてのチルト調整機構50を搭載するデジタルカメラ10の概略構成を示す説明図である。
【図2】チルト調整機構50の構成を説明するために、筐体部39Aを裏面側(撮像素子11の裏面11b側)から見た説明図である。
【図3】保持板52が撮像素子11および基板51を一体的に保持する様子を示す模式的な斜視図である。
【図4】図3に示すI−I線に沿って得られた断面図である。
【図5】第2被支持部52b2に対する支持構造を模式的に示す斜視図である。
【図6】図5に示すII−II線に沿って得られた断面図である。
【図7】支持部材55の構成を説明するための模式的な斜視図である。
【図8】調整カム面55c上での第2被支持部52b2に押圧力Pが作用する様子を説明するための説明図である。
【図9】図2から付勢板バネ56、コイルバネ57および段付ネジ58を除いた図において、第1被支持部52b1の被支持箇所52fに作用する押圧力Pのうちの直交成分である押圧力P1、第2被支持部52b2の被支持箇所52fに作用する押圧力Pのうちの直交成分である押圧力P2、および第3被支持部52b3の被支持箇所52fに作用する押圧力Pのうちの直交成分である押圧力P3を、その作用方向で示す説明図である。
【図10】保持板52を概略的に示すとともに、互いに打ち消す態様を示すべく、各支持点における傾斜方向に変えて3つの被支持点に作用する押圧力Pのうちの直交成分を各押圧力P1、P2、P3で表した説明図であって、(a)はその他の一例を示し、(b)はその他の(a)とは異なる例を示し、(c)はその他の(a)および(b)とは異なる例を示し、(d)はその他の(a)、(b)、(c)とは異なる例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係るチルト調整機構について図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0034】
本発明に係るチルト調整機構の一実施例であるチルト調整機構50の構成を、図1から図9を用いて説明する。先ず、チルト調整機構50を搭載するデジタルカメラ10について、図1を用いて説明する。図1は、デジタルカメラ10の概略構成を示す説明図である。このデジタルカメラ10は、図1に示すように、カメラボディ(本体部)39(後述する筐体部39A(図2等参照))に対し着脱可能とされた交換レンズ部40(撮像光学系)により形成される撮影対象となる物体すなわち被写体の像を、撮像素子11により読み取って適宜処理するように構成されている。デジタルカメラ10は、撮像素子11に加えて、CDS回路12、A/D変換部13、デジタル信号処理回路14、圧縮伸張回路15、DRAM16、メモリカード17、SG部18、CPU19、マイク20、アンプ・フィルタ部21、A/D変換部22、音声データ圧縮伸張回路23、D/A変換部24、アンプ・フィルタ部25、OSD26、RAM27、CPUバス28、DC/DCコンバータ29、電源30、フォーカルプレーンシャッタ31、を具備している。
【0035】
撮像素子11は、CCD(電荷結合素子)等を用いて構成されており、交換レンズ部40およびフォーカルプレーンシャッタ31を介して入力された被写体像を電気信号(アナログ画像データ)に変換して、CDS回路12へと出力する。そのCDS回路12は、相関二重サンプリング回路であり、入力された電気信号のノイズを低減させて、A/D変換部13へと出力する。そのA/D変換部13は、CDS回路12によって低ノイズ化された電気信号を最適なサンプリング周波数(例えば、NTSC(National Television System Committee)信号のサブキャリア周波数の整数倍)でデジタル信号(デジタル画像データ)に変換する。このA/D変換部13により変換されたデジタル画像データは、明確な図示は略すがデジタル信号処理回路14へと出力される。
【0036】
デジタル信号処理回路14は、A/D変換部13からのデジタル画像データを、輝度データと色差データとに分けて、γ(ガンマ)補正及び画像圧縮・伸張のためのデータ処理等を行う。このデータ処理されたデジタル画像データは、LCD(Liquid Crystal Display)32、およびEVF(Electronic View Finder)33に表示される。このLCD32およびEVF33では、OSD26で生成されたOSD表示画面(オンスクリーンディスプレイ)が適宜表示される。
【0037】
圧縮伸張回路15は、JPEG形式に準拠するものとされており、デジタル画像データを直交変換・ハフマン符号化して圧縮する、あるいはハフマン復号化・逆直交変換して伸張する。
【0038】
DRAM16は、圧縮処理されたデジタル画像データを一時的に格納する。また、このように圧縮処理されたデジタル画像データは、画像データファイルとして、カードスロット34に挿入されたメモリカード17に格納(記録)される。また、メモリカード17は、後述する圧縮処理されたデジタル音声データを音声データファイルとして格納(記録)する。
【0039】
SG部18は、制御信号生成部であり、CPU19と連携して、撮像素子11、CDS回路12およびA/D変換部13のそれぞれにタイミング信号を与え、これらを適正に同期させる。
【0040】
そのCPU19は、RAM27を有し、CPUバス28を介してデジタル信号処理回路14、DRAM16、メモリカード17等と接続されている。また、CPU19は、デジタルカメラ10に操作可能に設けられた操作部35、レリーズ釦36およびズーム釦37に為された操作による指示や、図示を略すリモコン等の外部からの動作指示に応じて、デジタルカメラ10の各部の動作の制御を、図示を略すROMに格納されたプログラムにより統括的に行う。この各部の動作の制御とは、例えば、メモリカード17へのデジタル画像データおよびデジタル音声データの記録動作の制御、メモリカード17に記録されているデジタル画像データおよびデジタル音声データの再生動作の制御、OSD26およびストロボ38の駆動制御等である。
【0041】
マイク20、アンプ・フィルタ部21、A/D変換部22、音声データ圧縮伸張回路23、D/A変換部24およびアンプ・フィルタ部25は、音声に関する信号処理部分を構成する。マイク20には、図示は略すが、音(音声)を電気信号に変換する変換素子が内蔵されている。このマイク20は、入力された音を電気信号(アナログ音声データ)に変換して、アンプ・フィルタ部21へと出力する。そのアンプ・フィルタ部21は、入力された電気信号を増幅して必要帯域にカットオフして、A/D変換部22へと出力する。そのA/D変換部22は、所定帯域の2倍以上のサンプリング周波数でデジタル音声データに変換し、音声データ圧縮伸張回路23へと出力する。その音声データ圧縮伸張回路23は、圧縮・符号化処理を行い、適宜メモリカード17等に記録(格納)する。また、メモリカード17等に記録(格納)されたデジタル音声データは、D/A変換部24により電気信号(アナログ音声データ)に変換され、アンプ・フィルタ部25で増幅されて、図示を略す音声出力部(スピーカ)を通じて音(音声)として出力される。
【0042】
これらデジタルカメラ10の各部には、DC/DCコンバータ29を介して、電源30から適宜電力が供給される。そのDC/DCコンバータ29は、電源30からの入力電圧を変圧する。
【0043】
その撮像素子11(その撮像面11a)上に被写体像を形成する撮像光学系は、上述したように、デジタルカメラ10のカメラボディ39の一部を構成する筐体部39A(図2等参照)に対して着脱可能とされた交換レンズ部40として構成されている。その交換レンズ部40は、複数の光学素子から為る光学素子群41がレンズ群保持構造体42に収容されて構成されている。その光学素子群41は、本実施例では、最も被写体(物体)側に位置する対物レンズから、撮影光軸OAに沿って複数の光学素子(レンズや絞り等)で形成されている。この明細書では、撮像光学系における光学的な軸線、すなわち光学素子群41(レンズ群保持構造体42)の中心軸位置となる各光学素子の回転対称軸を、撮像光学系すなわちデジタルカメラ10の撮影光軸OAとする。
【0044】
レンズ群保持構造体42は、光学素子群41を撮影光軸OAに沿って移動可能に保持している。そのレンズ群保持構造体42には、フォーカスリング43と絞りリング44とが設けられている。フォーカスリング43は、ピント合わせ(合焦)のための回転操作が可能とされており、回転姿勢の変化に伴って光学素子群41における各光学素子の撮影光軸OA上での位置を適宜変化させる構成とされている。絞りリング44は、光量の調整のための回転操作が可能とされており、回転姿勢の変化に伴って光学素子群41の絞り(図示せず)を適宜変化させる構成とされている。
【0045】
次に、デジタルカメラ10におけるチルト調整機構50の構成について、図2から図9を用いて詳細に説明する。このチルト調整機構50は、撮像素子11のチルト調整、すなわち設定された基準面(基準位置)Bp(図1参照)に撮像素子11の撮像面11aを一致させるべく、その基準面Bpに直交する方向での撮像素子11の位置および当該方向に対する撮像素子11の傾斜を調整することが可能とされている。このため、基準面Bpに直交する方向が調整方向(図3等の符号AD参照)となる。その基準面Bp(図1参照)とは、デジタルカメラ10のカメラボディ39(図1参照)において、撮影光学系(交換レンズ部40)の光学特性に応じて設定されるものであり、その撮影光軸OA方向に直交している。このため、調整方向は、撮影光軸OA方向に平行である。その調整方向は、以下では、撮影光軸OAと同様に被写体側へ向けた矢印に符号ADを付して示す。本実施例では、デジタルカメラ10が、上述したように、カメラボディ39に対して着脱可能な交換レンズ部40により撮影光学系が構成されていることから、基準面Bpは、そのカメラボディ39のうち交換レンズ部40を取り付ける面(マウント面(図示せず))を構成する筐体部39Aにおいて、そのマウント面に対して所定の間隔を置くように当該マウント面と平行とされて設定されている。このため、撮像素子11のチルト調整は、フランジバック調整ともいう。この筐体部39Aは、図示は略すが、他の筐体部と協働してカメラボディ39(図1参照)を形成することが可能とされている。
【0046】
このチルト調整機構50では、図2から図4に示すように、撮像素子11を保持板52で保持しており、その保持板52を筐体部39Aに対して調整方向ADに変位可能な3つの支持点(後述する調整カム面55c(図5等参照)における被支持箇所52fが当接された箇所)を介して支持している。その撮像素子11は、図3および図4に示すように、基板51に電気的に接続(実装)されている。その基板51は、コンデンサや抵抗等の複数の電子部品が実装されており、コネクタ部51aを介して電気的に接続されるメイン基板(図示せず)とともに上述した各構成(電子回路(図1参照))を構成する。基板51には、実装された撮像素子11の裏面11b(撮像面11aとは反対側の面(撮像素子11を構成するパッケージ部の裏面))と対向する位置に、取付開口51bが設けられている。その取付開口51bは、基板51の裏面側(撮像素子11が実装された面とは反対側)から、保持板52の後述する各接着部52aを撮像素子11の裏面11bに当接させることを可能としている。
【0047】
保持板52は、図3および図4に示すように、全体に平坦な板状を呈し、本実施例では少なくとも基板51よりも高い強度を有しかつ熱伝導性を有する材料から形成されている。この保持板52は、2つの接着部52aと、3つの被支持部52bと、2つの基準穴52cと、3つの回転規制部52dと、を有する。
【0048】
2つの接着部52aは、保持板52における中央部分が前方側へとずらすように屈曲変形されて形成されており、保持板52が基板51の裏面側に配置された状態において、取付開口51bから撮像素子11の裏面11bに宛がうことが可能とされている。この各接着部52aには、裏面11bに面当接される箇所となる接着凸部分52eが形成されている。接着凸部分52eは、接着部52aが部分的に前方側へとずらすように屈曲変形されて形成されており、本実施例では、上側の接着部52aの両端位置に2つの接着凸部分52eが設けられ、下側の接着部52aに1つの接着凸部分52eが設けられている。各接着部52aは、取付開口51bを通じて撮像素子11の裏面11bに宛がわれ、その各接着凸部分52eが当該裏面11bに接着されることにより、撮像素子11に取り付けられる。これにより、保持板52は、撮像素子11が実装された基板51と一体的に、撮像素子11を保持することができる。
【0049】
その保持板52の3つの被支持部52bは、筐体部39Aにより支持される箇所である。この各被支持部52bは、本実施例では、調整方向ADに直交する方向(基準面Bpに沿う方向(基準面Bpと平行な面))で見て、保持板52が保持する撮像素子11を取り囲むように3箇所に設けられており、縁部で後述する調整カム面55cに当接する被支持箇所52fを形成する。そのうちの1つの被支持部52b(以下では、個別に述べるときには第1被支持部52b1ともいう)は、保持板52における中央部分から平坦な状態を維持しつつ一方向に延出されている。残りの2つの被支持部52b(以下では、個別に述べるときには一方を第2被支持部52b2ともいい、他方を第3被支持部52b3ともいう)は、保持板52における中央部分から、平坦な状態を維持しつつ第1被支持部52b1とは反対側となる他方向へと延出された後に、平坦な状態を維持しつつその延出方向と直交する方向の両側へ延出されている。このため、本実施例では、3つの被支持部52bは、同一面上に位置されている。
【0050】
その保持板52の2つの基準穴52cは、筐体部39Aに対する保持板52の位置決めのために設けられた貫通穴である。本実施例では、一方の基準穴52cが第1被支持部52b1に設けられており、他方の基準穴52cが第3被支持部52b3に設けられている。2つの基準穴52cは、筐体部39Aの位置決め突起39Aaおよび位置決め突起39Ab(図2参照)の挿通が可能とされている。この位置決め突起39Aaおよび位置決め突起39Abは、筐体部39Aから後側(交換レンズ部40が取り付けられる側とは逆側)へ向けて調整方向ADに伸長された棒状を呈する。このため、2つの基準穴52cは、それぞれが対応する位置決め突起39Aaまたは位置決め突起39Abを挿通させることにより、筐体部39Aに対する調整方向ADに直交する方向(基準面Bpに沿う方向)で見た保持板52の位置を規定する。なお、本実施例では、第3被支持部52b3の近傍に位置する基準穴52cが、長穴すなわち位置決め突起39Abの外径寸法よりも一方向のみが大きくされた内径寸法とされており、位置決め突起39Abの挿通位置の自由度、すなわち保持板52の調整代が確保されている。
【0051】
その保持板52の3つの回転規制部52dは、後述する付勢板バネ56の回動を防止するものである。各回転規制部52dは、本実施例では、各被支持部52bに対応して1つずつ設けられており、対応する被支持部52bにおいて保持板52から後側(基板51が設けられる側とは逆側)に突出された柱状を呈する。
【0052】
この保持板52には、熱伝達部材53が取り付けられている。この熱伝達部材53は、熱伝導性を有する材料から形成されており、螺合部材53a(図2参照)により一端が保持板52に固定されている。熱伝達部材53は、図示は略すが保持板52に保持された撮像素子11および基板51が筐体部39Aを含むカメラボディ39(図1参照)に収容された状態において、他端がカメラボディ39の一部に熱伝達可能に当接するものとされている。このため、熱伝達部材53は、保持板52を介して、そこに保持された撮像素子11とカメラボディ39とを熱伝達可能に接続することができ、当該撮像素子11から発生した熱を逃がすことができる。
【0053】
このチルト調整機構50では、保持板52の3つの被支持部52b(その被支持箇所52f)を、調整方向ADに各々変位可能に筐体部39Aに支持させることにより、保持板52に保持された撮像素子11のチルト調整を可能とする。その変位可能な支持のための構造は、3つの被支持部52b(その被支持箇所52f)に対して基本的に同様な構成とされていることから、以下では、第2被支持部52b2における支持構造について図5および図6を用いて説明し、他の支持構造については省略する。図5は、第2被支持部52b2に対する支持構造を模式的に示す斜視図であり、図6は、図5のII−II線に沿って得られた断面図である。
【0054】
チルト調整機構50における第2被支持部52b2に対する支持構造は、図5および図6に示すように、ボス部54に、支持部材55および付勢板バネ56が、コイルバネ57を介して段付ネジ58により取り付けられて構成されている。
【0055】
ボス部54は、筐体部39Aから裏面側に突出されて形成され、突出端が平坦な設置面54aとされており、その設置面54aの中心位置に螺合穴54bが設けられている。その設置面54aは、本実施例では、調整方向ADに対して直交する平面とされており、図示は略すが他の支持構造における各ボス部の設置面と調整方向ADで見て同一平面上に位置するように設定されている。螺合穴54bは、その設置面54aから直交する方向、すなわち調整方向ADに沿って延在された穴部の内周壁面にネジ溝が設けられて形成されている。この螺合穴54bは、後述するように段付ネジ58の先端ネジ部58aの螺合による挿通が可能とされている。このボス部54の設置面54aに支持部材55が設置される。
【0056】
その支持部材55は、図7に示すように、全体に円柱形状を呈するとともに、その軸線に等しい軸線(以下では、中心軸線MAとする)を有する貫通孔55aが設けられて構成されている。支持部材55では、下面が中心軸線MAに直交する平面である設置平坦面55b(図6等参照)とされており、上面が調整カム面55cとされている。その調整カム面55cは、中心軸線MAを中心とする回転方向で見て、中心軸線MA方向で見た高さ寸法、すなわち設置平坦面55bを基準とする中心軸線MA方向で見た支持部材55の厚さ寸法を連続的に変化させるように、螺旋状とされた平面により規定されている。換言すると、調整カム面55cは、中心軸線MA方向に対して傾斜する単一の平面であり、中心軸線MAに直交する平面である設置平坦面55bとの間隔、すなわち中心軸線MA方向で見た位置を漸次的に変化させる。本実施例では、上面には、調整カム面55cに加えて、上側平坦面55dと下側平坦面55eとが設けられている。この上側平坦面55dは、調整カム面55cにおける中心軸線MA方向で見て最も大きな高さ寸法となる一端の高さ寸法を維持するように、中心軸線MAに直交する方向に沿って中心軸線MAを中心とする回転方向に延在されている。下側平坦面55eは、調整カム面55cにおける中心軸線MA方向で見て最も小さな高さ寸法となる他端の高さ寸法を維持するように、中心軸線MAに直交する方向に沿って中心軸線MAを中心とする回転方向に延在されている。このため、上側平坦面55dと下側平坦面55eとの間には、中心軸線MAに沿って延在する縦壁面が形成されている。
【0057】
また、支持部材55では、その貫通孔55aの設置平坦面55b側(下面側)に、縮径部55fが設けられている。この縮径部55fは、貫通孔55aの内径寸法を狭めるように中心軸線MAを中心として内側に突出されて形成されている。この貫通孔55aは、後述するようにコイルバネ57の挿通を許す内径寸法とされており、縮径部55fにおいてコイルバネ57の挿通を許すことのない内径寸法とされている。このため、縮径部55fの上端面が、コイルバネ57の係合が可能とされたバネ係合部55gとして機能する。
【0058】
この支持部材55には、外周面に操作突起55hが設けられている。この操作突起55hは、支持部材55の回転操作のための治具(工具(図示せず))の係合が可能とされた凸所であり、本実施例では中心軸線MAに直交する平面に沿って互いに直交する4方向に延出されている。また、各操作突起55hは、本実施例では、中心軸線MAに直交する方向で見て、ボス部54の設置面54aよりも外方位置まで延出されており、回転操作のための治具(工具(図示せず))を中心軸線MA方向から接近させて係合させる際、当該治具がボス部54と干渉することが防止されている。この支持部材55は、本実施例では、焼成により焼結材(焼結品)として形成されている。
【0059】
この支持部材55をボス部54の設置面54a側へと押圧するために、図5および図6に示すように、コイルバネ57が設けられている。そのコイルバネ57は、支持部材55の貫通孔55aへの挿通が可能であるとともに、そこに形成された縮径部55fへと挿通することのできない外径寸法に設定されている。また、コイルバネ57は、後述する段付ネジ58の基端円柱部58bを取り巻くことが可能な内径寸法に設定されている。このコイルバネ57は、後述するように、治具(工具(図示せず))の各操作突起55hへの係合により回転操作が為された際、ボス部54の設置面54a上において支持部材55が安定して回転するように、当該設置面54aへ向けて押圧することが可能な長さ寸法およびバネ力に設定されている。ここで、安定した回転とは、設置面54aと設置平坦面55bとが面当接した状態を維持しつつ支持部材55が回転することをいう。
【0060】
この支持部材55をボス部54(その設置面54a)に取り付けるために、段付ネジ58が設けられている。その段付ネジ58は、先端ネジ部58aと基端円柱部58bと頭部58cとを有する。先端ネジ部58aは、外周面にネジ溝が設けられた円柱状を呈し、ボス部54の螺合穴54bとの螺合が可能とされている。基端円柱部58bは、先端ネジ部58aよりも大きな外径寸法の円柱状を呈し、コイルバネ57の内方に挿通することができかつ支持部材55の縮径部55fへの摺動可能に嵌合することができるとともに、ボス部54の螺合穴54bへと挿通することのできない外径寸法とされている。頭部58cは、基端円柱部58bよりも大きな外径寸法の円板状を呈し、コイルバネ57の内方へと挿通することのできない外径寸法とされている。
【0061】
その段付ネジ58の基端円柱部58bに付勢板バネ56が設けられる。その付勢板バネ56は、保持板52の第2被支持部52b2(その被支持箇所52f)を、支持部材55の調整カム面55cに押圧(圧接)させるために設けられている。付勢板バネ56は、弾性を有する材料から形成された板状を呈し、平坦な取付基部56aと、そこに連続しつつ当該取付基部56aに対して屈曲された押圧部56bと、を有する。その取付基部56aは、段付ネジ58の頭部58cの下面(基端円柱部58bが延出される側の面)と面当接可能とされており、取付穴56cが設けられている。その取付穴56cは、段付ネジ58の基端円柱部58bの挿通を可能とするとともに、コイルバネ57および段付ネジ58の頭部58cの挿通を許すことのない内径寸法とされている。このため、付勢板バネ56の取付基部56aは、段付ネジ58の基端円柱部58bを取付穴56cに挿通させた状態において、コイルバネ57と段付ネジ58の頭部58cとによる挟持が可能とされている。
【0062】
押圧部56bは、取付基部56aに対して一方側(図6を正面視して下側)へと屈曲された後に、先端箇所が他方側へと屈曲されて形成されている。このため、押圧部56bは、その後の屈曲箇所56dが無負荷状態から取付基部56aに対して一方側へと変位されることにより、当該屈曲箇所56dを他方側へと変位させるような付勢力を付与することが可能とされている。その押圧部56bには、切欠部56eが設けられている。この切欠部56eは、取付基部56aからの延出方向に沿って押圧部56bの延出端から屈曲箇所56dを越えて延在するように、押圧部56bを厚さ方向に貫通するように切り欠いて形成されている。切欠部56eは、保持板52の回転規制部52dの係合が可能とされた幅寸法に設定されている。
【0063】
このチルト調整機構50では、ボス部54の設置面54a上に設置平坦面55bを対向させて支持部材55が配置され、そのバネ係合部55gに係合させるようにコイルバネ57が貫通孔55a内に配置され、そのコイルバネ57の上に付勢板バネ56の取付基部56aが設けられている。このとき、支持部材55において設置平坦面55bが中心軸線MAに対して直交する平面とされているとともに、ボス部54の設置面54aが調整方向ADに対して直交する平面とされていることから、中心軸線MAが調整方向ADに沿うものとされている。その付勢板バネ56(取付基部56a)の上側から、取付基部56aの取付穴56c、コイルバネ57および支持部材55の貫通孔55aの縮径部55f内に、段付ネジ58の先端ネジ部58aおよび基端円柱部58bが挿通され、その先端ネジ部58aがボス部54の設置面54aの螺合穴54bに螺合されている。このとき、ボス部54の設置面54aから段付ネジ58の頭部58c(その下面)までの長さ寸法(間隔)は、段付ネジ58における先端ネジ部58aと基端円柱部58bとの段差により、基端円柱部58bの長さ寸法に等しいものとなる。このため、コイルバネ57は、自らの自然長(無負荷状態における長さ寸法)と基端円柱部58bの長さ寸法との設定に応じて、支持部材55のバネ係合部55gと付勢板バネ56の取付基部56aとの間で適宜圧縮される。
【0064】
これにより、支持部材55は、コイルバネ57により設置平坦面55bがボス部54の設置面54aに圧接されているとともに、縮径部55fに摺動可能に嵌合された段付ネジ58の基端円柱部58bにより調整方向AD(中心軸線MA)に直交する方向への移動が防止されている。このため、支持部材55は、ボス部54の設置面54a上において、中心軸線MAを回転中心としつつ安定して回転することが可能とされている。また、付勢板バネ56は、コイルバネ57により取付基部56aが段付ネジ58の頭部58cに圧接されており、コイルバネ57と頭部58cとに挟持されてガタつきが防止されている。
【0065】
その支持部材55の調整カム面55c上に、基板51と一体的に撮像素子11を保持する保持板52の第2被支持部52b2が配置され、その保持板52の第2被支持部52b2に設けられた回転規制部52dを切欠部56eで挟持するように、付勢板バネ56の押圧部56b(その屈曲箇所56d)が第2被支持部52b2(保持板52)に当接されている。このため、保持板52の第2被支持部52b2では、段付ネジ58の基端円柱部58bに設けられた付勢板バネ56の押圧部56b(その屈曲箇所56d)により、調整方向ADで筐体部39A側へ向けて(図6を正面視して上側から下側へ向けて)押圧されており、その第2被支持部52b2の被支持箇所52fが支持部材55の調整カム面55cに圧接されている。このため、調整カム面55cは、基準面Bpに対して直交される調整方向ADで保持板52(第2被支持部52b2)を支持することとなる。
【0066】
この保持板52は、上述したように、その2つの基準穴52cに、筐体部39Aの位置決め突起39Aaおよび位置決め突起39Abが挿通されることにより、筐体部39Aに対する調整方向ADに直交する方向で見た保持板52の位置が規定されている。このため、筐体部39Aでは、調整方向ADに直交する方向で見ると、支持部材55に対する第2被支持部52b2(その被支持箇所52f)の位置関係が変化することはない。これに対し、支持部材55は、上述したように、ボス部54の設置面54a上で中心軸線MAを回転中心として安定して回転することが可能とされていることから、各操作突起55hに係合された治具(工具(図示せず))等を介して回転操作されることにより、保持板52の第2被支持部52b2(その被支持箇所52f)に対する調整カム面55cにおける当接位置を漸次的に変化させることができる。この調整カム面55cは、中心軸線MA方向で見た支持部材55の厚さ寸法を変化させる螺旋状の傾斜面とされているとともに、その中心軸線MAが調整方向ADに平行とされていることから、支持部材55を回転操作することにより、保持板52の第2被支持部52b2(その被支持箇所52f)に対する調整方向ADでの支持点を、調整カム面55c(その傾斜)に応じて調整方向ADに漸次的に変化させることができる。ここで、付勢板バネ56は、取付基部56aの取付穴56cが段付ネジ58(その基端円柱部58b)に挿通されているとともに、押圧部56bの切欠部56eが保持板52の回転規制部52dを挟持していることから、支持部材55の回転操作に伴って回転することが防止されている。
【0067】
ここで、チルト調整機構50では、上述したように、保持板52が、第2被支持部52b2に加えて、第1被支持部52b1および第3被支持部52b3の3点で支持されており、それぞれが支持部材55(その調整カム面55c)により、筐体部39Aにおいて調整方向ADでの支持位置が調整カム面55cに応じて漸次的に変化可能とされている。このため、保持板52の調整方向ADでの位置および調整方向ADに対する傾斜を調整することができるので、その保持板52に一体的に保持された撮像素子11のチルト調整を行うことができる。
【0068】
このとき、保持板52の各被支持点(第1被支持部52b1、第2被支持部52b2および第3被支持部52b3の被支持箇所52f)では、調整カム面55cの傾斜方向に向かう押圧力P(図8および図9参照)が作用する。これについて、以下で、図8を用いて、調整カム面55c上での第2被支持部52b2を例にして説明する。ここで、傾斜方向とは、調整カム面55cと基準面Bp(図1参照)との走向(調整カム面55cと基準面Bpとの交線(交わって作る直線)の伸長方向)に対して直交する方向をいう。
【0069】
図8の例では、調整カム面55cの基準面Bp(図1参照)に対する傾斜角度をθとしている。その基準面Bpは、上述したように、撮影光軸OAすなわち調整方向ADに直交するものとされており、その調整方向ADが支持部材55の中心軸線MA方向に平行とされている。付勢板バネ56による保持板52の第2被支持部52b2への付勢力Fは、調整方向ADに作用する。このため、保持板52の第2被支持部52b2の被支持箇所52fでは、調整方向ADで調整カム面55cに押圧される押圧力F´(=F)を受けるとともに、調整カム面55cから垂直効力N(=Fcosθ)を受けることとなる。これにより、保持板52の第2被支持部52b2では、押圧力F´と垂直効力Nとの合成力として傾斜方向への押圧力Pが作用することとなる。
【0070】
この押圧力Pは、保持板52の各被支持点すなわち第1被支持部52b1、第2被支持部52b2および第3被支持部52b3の被支持箇所52fに作用することとなる(図9参照)。この各被支持点に作用する押圧力Pは、上述したように調整カム面55cの傾斜方向に作用することから、調整方向ADに直交する方向の成分を有しているので、保持板52を筐体部39Aに対して調整方向ADに直交する方向へと付勢(押圧)することとなる。このことを勘案して、本発明に係るチルト調整機構50では、以下のような構成とされている。図9を用いた以下の説明では、第1被支持部52b1の被支持箇所52fに作用する押圧力Pのうちの直交成分を押圧力P1、第2被支持部52b2の被支持箇所52fに作用する押圧力Pのうちの直交成分を押圧力P2、第3被支持部52b3の被支持箇所52fに作用する押圧力Pのうちの直交成分を押圧力P3、とする。
【0071】
チルト調整機構50では、複数の被支持点に作用する押圧力の直交成分が、互いに打ち消し合うものとなるように、撮像素子11を一体的に保持する保持板52と、各支持点を形成する調整カム面55cと、の相対的な位置関係が設定されている。本実施例では、各押圧力P1、P2、P3が、撮像素子11(その撮像面11a)を取り囲むように位置設定された各被支持点(支持点)から撮像素子11側へと向かうように設定されており、押圧力P1と押圧力P2と押圧力P3とが互いに打ち消し合うものとされている。換言すると、押圧力P1と押圧力P2との合成力と、押圧力P3とが、互いに打ち消し合うように設定されている。ここでいう互いに打ち消し合うとは、直交成分としての各押圧力(P1、P2、P3)を減少させるように相対させる(弱め合う)ことをいい、当該直交成分を完全に相殺させることを含むものである。
【0072】
ここで、上述したように、この各押圧力P1、P2、P3は、各被支持点が当接する箇所(支持点)における調整カム面55cの傾斜方向へと作用する。また、各調整カム面55cは、上述したように、各支持部材55の中心軸線MAを中心とする螺旋状とされ、その各支持部材55は、筐体部39Aにおける所定の位置で中心軸線MA回りに回転可能とされている。このため、各支持部材55の調整カム面55cに対する、各被支持部52bの被支持箇所52fを当接させる位置を設定することにより、当該当接箇所(支持点)における調整カム面55cの傾斜方向を設定することができる。このことから、チルト調整機構50では、筐体部39Aにおいて、第1被支持部52b1における支持部材55の調整カム面55cに対して被支持箇所52fが当接する位置と、第2被支持部52b2における支持部材55の調整カム面55cに対して被支持箇所52fが当接する位置と、第3被支持部52b3における支持部材55の調整カム面55cに対して被支持箇所52fが当接する位置と、が相対的に設定されて、各支持点における調整カム面55cの傾斜方向が設定され、各押圧力P1、P2、P3の作用方向が設定されている。
【0073】
このように、本発明に係るチルト調整機構50では、撮像素子11を保持する保持板52を支持する各支持点が当該撮像素子11(その撮像面11a)を取り囲むように設定されているとともに、その各支持点における調整カム面55cの傾斜方向が基準面Bpに沿う方向(調整方向ADに直交する方向)で見て撮像素子11側へと向かうように設定されていることから、各押圧力P1、P2、P3を互いに打ち消すことができるので、保持板52を調整方向AD(撮影光軸OA)に直交する方向へと押圧するように作用する力を極めて小さなものとすることができる。このため、撮像素子11が撮影光軸OAに直交する方向へと変位することを防止することができる。
【0074】
また、チルト調整機構50では、各押圧力P1、P2、P3を互いに打ち消すことができることから、保持板52を撮影光軸OAに直交する方向へと押圧するように作用する力を極めて小さなものとすることができるので、2つの基準穴52cに係合された筐体部39Aの位置決め突起39Aaおよび位置決め突起39Abが、当該基準穴52cの内周面に押し当てられることに起因して大きな摩擦力が生じることを防止することができる。このため、保持板52を調整方向ADすなわち撮影光軸OA方向に容易に変位させることができ、撮像素子11のチルト調整を容易なものとすることができる。
【0075】
さらに、チルト調整機構50では、保持板52の各被支持部52b(その被支持箇所52f)を、基準面Bpに対して傾斜された調整カム面55cで支持するとともに、その調整カム面55cにおける当接位置を変化させることにより調整方向ADでの支持位置を変化させるものであることから、調整方向ADでの保持板52の支持位置を微小に変化させることができるので、撮像素子11のチルト調整を高精度に行うことができる。
【0076】
チルト調整機構50では、撮像素子11を保持する保持板52に対する各支持点を形成する調整カム面55cが、支持部材55の中心軸線MAを中心とする螺旋状とされているとともに、その支持部材55を中心軸線MA回りに回転操作することで調整方向ADでの支持位置を変化させるものであることから、より小さく簡易な構成としつつ、支持部材55の回転操作量に対する各支持点の調整方向ADでの変化量を微小なものとしつつ漸次的な変化を可能とすることができるので、より高精度に撮像素子11のチルト調整を行うことができる。
【0077】
チルト調整機構50では、撮像素子11を保持する保持板52に対する各支持点を形成する調整カム面55cが、支持部材55の中心軸線MAを中心とする螺旋状とされているとともに、その支持部材55を中心軸線MA回りに回転操作することで調整方向ADでの支持位置を変化させるものであることから、各支持点の調整方向ADでの位置をより適切に設定することができるので、より高精度に撮像素子11のチルト調整を行うことができる。これは、例えば、各支持点の調整方向ADでの位置を調整する部材が筐体に螺合される構成である場合、その調整のために螺合量を変化させることに伴って、当該調整部材が筐体に対してガタつきが生じてしまう虞があることによる。
【0078】
チルト調整機構50では、撮像素子11を保持する保持板52に対する各支持点を形成する調整カム面55cが、単一の傾斜面とされていることから、調整カム面55cにおける保持板52への当接位置の変化に対する各支持点の調整方向ADでの変化を連続的ものとすることができるので、より簡易にかつ高精度に撮像素子11のチルト調整を行うことができる。
【0079】
チルト調整機構50では、付勢板バネ56により、保持板52の各被支持部52b(その被支持箇所52f)が、支持部材55の調整カム面55cに押圧(圧接)されていることから、保持板52に対する調整方向ADでの各支持点の位置をより適切に調整することができ、より高精度に撮像素子11のチルト調整を行うことができる。
【0080】
チルト調整機構50では、板状を呈する付勢板バネ56が用いられていることから、調整方向ADすなわち撮影光軸OA方向での大きさ寸法の増大を招くことなく、保持板52の各被支持部52b(その被支持箇所52f)を、支持部材55の調整カム面55cへとより適切に押圧(圧接)させることができる。このため、より高精度に撮像素子11のチルト調整を行うことができる。
【0081】
チルト調整機構50では、各調整カム面55cが各支持部材55の中心軸線MAを中心とする螺旋状とされるとともに、各支持部材55が筐体部39Aにおける所定の位置で中心軸線MA回りに回転可能とされていることから、各支持部材55の中心軸線MA回り方向で見た当該調整カム面55cに対する、各被支持部52bの被支持箇所52fを当接させる位置を設定することにより、当該当接箇所(支持点)における調整カム面55cの傾斜方向を設定することができる。その各支持部材55の調整カム面55cに対する各被支持部52bの被支持箇所52fを当接させる位置は、保持板52の形状を変更したり、筐体部39Aにおける各支持部材55の配置位置を変更したりすることで、適宜設定することができる。このため、高い設計自由度が有しつつ、容易にかつ高精度に撮像素子11のチルト調整を行うことができる。
【0082】
チルト調整機構50では、保持板52に対する支持点を形成する調整カム面55cを有する各支持部材55が、焼結材料(焼成)により形成されていることから、高精度に調整カム面55cを形成することができるとともに、温度変化に対する変形を極めて小さなものとすることができるので、より高精度に撮像素子11のチルト調整を行うことができる。
【0083】
チルト調整機構50では、各支持部材55の回転姿勢の変化により、保持板52に対する各支持点の調整方向ADでの位置を調整することができるので、簡易な構成で撮像素子11のチルト調整を行うことができる。
【0084】
チルト調整機構50では、各支持部材55の調整カム面55cにより支持された状態を維持したまま当該支持位置を調整方向ADに調節することができる、すなわち保持板52の保持状態を調節することができるので、保持板52すなわち撮像素子11のチルト調整を高精度に行うことができる。
【0085】
チルト調整機構50では、各支持部材55の各操作突起55hが、中心軸線MAに直交する方向で見て、ボス部54の設置面54aよりも外方位置まで延出されていることから、回転操作のための治具(工具(図示せず))を中心軸線MA方向から接近させて係合させる際、当該治具がボス部54と干渉することを防止することができる。このため、各支持部材55の回転操作をより容易なものとすることができる。
【0086】
チルト調整機構50では、撮像素子11の裏面11bに宛がわれた各接着部52aの各接着凸部分52eが当該裏面11bに接着されることにより保持板52が撮像素子11を一体的に保持するとともに、その保持板52の基準面Bpに対する傾斜を調整するものであることから、より高精度に撮像素子11のチルト調整を行うことができる。これは、例えば、撮像素子11が実装された基板51の基準面Bpに対する傾斜を調整するものとすると、当該基板51は容易に変形してしまうことから、撮像素子11のチルト調整の精度の低下を招いてしまうことによる。
【0087】
チルト調整機構50では、保持板52の各被支持部52b(その被支持箇所52f)に対する支持点を基準面Bpに対して傾斜された調整カム面55cで形成する構成であることから、当該調整カム面55cの基準面Bpに対する傾斜角度を調整することにより、保持板52の各被支持点において調整方向ADに直交する方向に作用する押圧力の大きさを調節することができる。このため、各押圧力P1、P2、P3をより効果的に互いに打ち消すものとすることができる。
【0088】
チルト調整機構50では、付勢手段としての付勢板バネ56が保持板52の各被支持部52bを押圧することにより、その被支持箇所52fを支持部材55の調整カム面55cに押圧(圧接)させる構成であることから、当該付勢手段における付勢力を調整することにより、保持板52の各被支持点において調整方向ADに直交する方向に作用する押圧力の大きさを調節することができる。このため、各押圧力P1、P2、P3をより効果的に互いに打ち消すものとすることができる。
【0089】
したがって、本発明に係るチルト調整機構50では、容易にかつ高精度に撮像素子11のチルト調整を行うことができる。
【0090】
なお、上記した実施例では、本発明に係るチルト調整機構の一例としてのチルト調整機構50について説明したが、撮影光学系により形成される被写体像を取得する撮像素子の撮像面を前記撮影光学系に対して筐体内で設定された基準面に一致させるべく、前記筐体に対する傾斜を変更可能に前記撮像素子を保持するチルト調整機構であって、前記撮像素子を保持する撮像素子保持板と、前記基準面に対して直交される調整方向へと変位可能に前記撮像素子保持板を支持する支持点を形成するカム面を有する少なくとも3つの支持部材と、を備え、前記カム面は、前記基準面に対して傾斜され、前記各支持部材は、前記基準面に沿う方向で見て前記撮像素子を取り囲むとともに、前記撮像素子保持板に対する支持点における前記カム面の傾斜方向を前記撮像素子側へ向けて設けられているチルト調整機構、あるいは、撮影光学系により形成される被写体像を取得する撮像素子の撮像面を前記撮影光学系に対して筐体内で設定された基準面に一致させるべく、前記筐体に対する傾斜を変更可能に前記撮像素子を保持するチルト調整機構であって、前記撮像素子を保持する撮像素子保持板と、前記基準面に対して直交される調整方向へと変位可能に前記撮像素子保持板を支持する支持点を形成するカム面を有する少なくとも3つの支持部材と、を備え、前記カム面は、前記基準面に対して傾斜され、前記各支持部材は、前記カム面に起因して該カム面の傾斜方向に作用する前記撮像素子保持板への押圧力における前記基準面に沿う方向の成分で見て、前記撮像素子保持板の各被支持点におけるいずれか1個の被支持点に作用する押圧力に対して、前記撮像素子保持板の各被支持点における残りの被支持点に作用する押圧力の合成成分が打ち消し合うように、互いの前記傾斜方向が設定されているチルト調整機構であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0091】
また、上記した実施例では、撮像素子11を保持する保持板52を支持する各支持点が当該撮像素子11(その撮像面11a)を取り囲むように設定されているとともに、その各支持点における調整カム面55cの傾斜方向が基準面Bpに沿う方向(調整方向ADに直交する方向)で見て撮像素子11側へと向かうように設定されていたが、保持板52の複数の被支持点に作用する押圧力の直交成分が互いに打ち消し合うものとなるように、撮像素子11を一体的に保持する保持板52と、各支持点を形成する調整カム面55cと、の相対的な位置関係が設定されていればよく、上記した実施例に限定されるものではない。このような構成の他の例を図10に示す。この図10は、上記した実施例と同様の保持板52を概略的に示すとともに、互いに打ち消す態様を示すべく、各支持点における傾斜方向に変えて3つの被支持点に作用する押圧力Pのうちの直交成分を各押圧力P1、P2、P3で表した説明図である。例えば、図10(a)に示すように、押圧力P1を内方(撮像素子11側)へと作用させるとともに、押圧力P2および押圧力P3を外方の第1被支持部52b1側へと作用させることができる。また、図10(b)に示すように、押圧力P1、押圧力P2および押圧力P3を、中心から外側へと作用させることができる。さらに、図10(c)に示すように、押圧力P1を外方へと作用させるとともに、押圧力P2および押圧力P3を外方の第1被支持部52b1とは反対側であって互いに接近する方向へと作用させることができる。ついで、図10(d)に示すように、押圧力P1を内方(撮像素子11側)へと作用させるとともに、押圧力P2を外方の第3被支持部52b3とは反対側へと作用させ、かつ押圧力P3を外方の第1被支持部52b1側へと作用させることができる。
【0092】
さらに、上記した実施例では、各調整カム面55cが各支持部材55の中心軸線MAを中心とする螺旋状とされていたが、保持板52の各被支持部52b(その被支持箇所52f)に対する、調整カム面55cにおける当接位置を変化させることにより調整方向ADでの支持位置を変化させることを可能とすべく、基準面Bpに対して傾斜されていればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0093】
上記した実施例では、保持板52を支持する各支持点を形成する調整カム面55cが、単一の傾斜面により形成されていたが、保持板52の各被支持部52b(その被支持箇所52f)に対する、調整カム面55cにおける当接位置を変化させることにより調整方向ADでの支持位置を変化させることを可能とすべく、基準面Bpに対して傾斜されていればよく、上記した実施例に限定されるものではない。ここで、単一の傾斜面とは、調整方向ADに対する傾斜が同一であるか変化するものであるかを問わず、傾斜方向への変位に対して調整方向ADで連続されていることをいう。その連続とは、傾斜方向で見た単一の座標点に対して、調整方向ADでの単一の座標点が対応されていることを言う。
【0094】
上記した実施例では、付勢手段としての付勢板バネ56が保持板52の各被支持部52bに付勢力を付与することにより、その被支持箇所52fを支持部材55の調整カム面55cに押圧(圧接)させる構成とされていたが、当該付勢手段は、保持板52の各被支持部52b(その被支持箇所52f)を、支持部材55の調整カム面55cに押圧(圧接)させるものであれば、支持部材55に付勢力を付与するものであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0095】
上記した実施例では、付勢手段として板状を呈する付勢板バネ56が用いられていたが、当該付勢手段は、保持板52の各被支持部52b(その被支持箇所52f)を、支持部材55の調整カム面55cに押圧(圧接)させるものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0096】
上記した実施例では、付勢手段としての付勢板バネ56が各被支持部52bすなわち各支持部材55に対応して設けられていたが、保持板52の各被支持部52b(その被支持箇所52f)を、支持部材55の調整カム面55cに押圧(圧接)させるものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0097】
上記した実施例では、撮像素子11を保持する保持板52が、筐体部39Aに対して調整方向ADに変位可能な3つの支持点により支持されていたが、当該支持点は、筐体部39Aに対して調整方向ADに変位可能であって少なくとも3つ以上設けられていればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0098】
上記した実施例では、各支持部材55が、焼結材料(焼成)により形成されていたが、筐体部39Aに対して調整方向ADに変位可能な支持点を形成するカム面(調整カム面55c)を有するものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。なお、高精度にカム面(調整カム面55c)を形成することができるとともに、温度変化に対する変形を極めて小さなものとすることを可能とするものであることが望ましい。このような方法としては、上記した実施例のように焼結材料(焼成)により形成することや、ダイカスト法により形成することが考えられる。
【0099】
上記した実施例では、デジタルカメラ10にチルト調整機構50が搭載されていたが、撮影光学系の撮影光軸OAに対して筐体内で設定された基準面(基準面Bp)に対する撮像素子(撮像素子11)のチルト調整が要求されるものであれば、筐体と一体的に撮影光学系が設けられた撮像装置(デジタルカメラ)に搭載されていてもよく、撮影光学系と撮像素子とが筐体に収容され当該筐体が撮像装置本体に着脱自在とされた撮像ユニットに搭載されていてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0100】
上記した実施例では、デジタルカメラ10にチルト調整機構50が搭載されていたが、カメラ機能を組み込んだPDA(personal data assistant)や携帯電話機等の携帯型情報端末装置に搭載されていてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0101】
以上、本発明の撮影装置を実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0102】
10 デジタルカメラ
11 撮像素子
11a 撮像面
39A (筐体としての)筐体部
40 (撮影光学系を構成する)交換レンズ部
50 チルト調整機構
52 (撮像素子保持板としての)保持板
52b1 (被支持点となる)第1被支持部
52b2 (被支持点となる)第2被支持部
52b3 (被支持点となる)第3被支持部
55 支持部材
55c (支持点を形成するカム面としての)調整カム面
56 (付勢手段としての)付勢板バネ
AD 調整方向
Bp 基準面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開2002−247442号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系により形成される被写体像を取得する撮像素子の撮像面を前記撮影光学系に対して筐体内で設定された基準面に一致させるべく、前記筐体に対する傾斜を変更可能に前記撮像素子を保持するチルト調整機構であって、
前記撮像素子を保持する撮像素子保持板と、
前記基準面に対して直交される調整方向へと変位可能に前記撮像素子保持板を支持する支持点を形成するカム面を有する少なくとも3つの支持部材と、を備え、
前記カム面は、前記基準面に対して傾斜され、
前記各支持部材は、前記基準面に沿う方向で見て前記撮像素子を取り囲むとともに、前記撮像素子保持板に対する支持点における前記カム面の傾斜方向を前記撮像素子側へ向けて設けられていることを特徴とするチルト調整機構。
【請求項2】
撮影光学系により形成される被写体像を取得する撮像素子の撮像面を前記撮影光学系に対して筐体内で設定された基準面に一致させるべく、前記筐体に対する傾斜を変更可能に前記撮像素子を保持するチルト調整機構であって、
前記撮像素子を保持する撮像素子保持板と、
前記基準面に対して直交される調整方向へと変位可能に前記撮像素子保持板を支持する支持点を形成するカム面を有する少なくとも3つの支持部材と、を備え、
前記カム面は、前記基準面に対して傾斜され、
前記各支持部材は、前記カム面に起因して該カム面の傾斜方向に作用する前記撮像素子保持板への押圧力における前記基準面に沿う方向の成分で見て、前記撮像素子保持板の各被支持点におけるいずれか1個の被支持点に作用する押圧力に対して、前記撮像素子保持板の各被支持点における残りの被支持点に作用する押圧力の合成成分が打ち消し合うように、互いの前記傾斜方向が設定されていることを特徴とするチルト調整機構。
【請求項3】
前記各カム面は、単一の傾斜面で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチルト調整機構。
【請求項4】
前記各支持部材は、前記筐体に前記調整方向に沿う軸線回りに回転可能に設けられ、
前記各カム面は、前記調整方向に対して傾斜する螺旋状の平面であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のチルト調整機構。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のチルト調整機構であって、
さらに、前記撮像素子保持板と前記各カム面とを前記調整方向で圧接させる付勢力を、前記撮像素子保持板または前記各カム面のいずれか一方に付与する付勢手段を備えることを特徴とするチルト調整機構。
【請求項6】
前記付勢手段は、板バネであることを特徴とする請求項5に記載のチルト調整機構。
【請求項7】
前記付勢手段は、前記各支持部材に個別に対応して設けられていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のチルト調整機構。
【請求項8】
前記各付勢手段は、前記撮像素子保持板の各被支持点において押圧力を調整すべく、付勢力が設定されていることを特徴とする請求項7に記載のチルト調整機構。
【請求項9】
前記各カム面は、前記撮像素子保持板の各被支持点において押圧力を調整すべく、傾斜角度が設定されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のチルト調整機構。
【請求項10】
前記各支持部材は、前記撮像素子保持板の各被支持点において押圧力を調整すべく、前記基準面に沿う方向で見た配置位置が設定されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のチルト調整機構。
【請求項11】
前記支持部材は、焼結材料で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のチルト調整機構。
【請求項12】
前記支持部材は、ダイカスト法で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のチルト調整機構。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のチルト調整機構を搭載したことを特徴とする撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−151595(P2012−151595A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7768(P2011−7768)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】