説明

チルド保存用容器入り炊飯米とその製造方法

【課題】チルドで流通、保存する際に炊飯米と具材との間の水分移行等が生じず品質が安定で、喫食時に炊飯米と具材の食感、風味が優れたものとなる高品質のチルド保存用容器入り炊飯米を提供する。
【解決手段】炊飯米とその米粒よりも大きい具材がヘッドスペースを有して成形容器に充填密封された、加熱殺菌処理済みの0〜10℃で保存されたもので、前記加熱殺菌処理してから2日後〜20日後における前記炊飯米の水分含量が50〜70質量%でかつ老化度が20%以上であることを特徴とするチルド保存用容器入り炊飯米。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯米と比較的大きい具材とを含む、チルドで流通、保存する形態のチルド保存用容器入り炊飯米とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
常温流通可能なプラスチック成形容器(トレー、カップ等)詰め米飯の形態の1つとして無菌包装米飯が知られている。一般に無菌室において炊飯米を容器に無菌的に充填し、脱酸素剤を添付後密封して調製される。炊飯米を調製後容器に充填するため、容器内炊飯を行う場合の、釜飯のような一体化した食味品質を得難い。また、無菌室や充填機等の設備を要する点で設備が過剰となる問題がある。更に、肉片等の大きい具材を殺菌処理して無菌的に充填する設備が実用化されていないため、このような具材を含む形態としては提供されていない。
【0003】
一方、精白米と水とを、ヘッドスペースを有して成形容器に充填密封し、120℃程度のレトルト加熱殺菌処理して容器内炊飯を行うレトルト米飯の形態も公知である。大きい具材を含むこともでき、常温流通可能で、比較的簡便なレトルト設備を用いて製造できる。反面、高温でレトルト加熱殺菌処理され、特に大きい具材を含むと、これをターゲットにしてより厳しい加熱条件で殺菌処理を実施する必要があるため、炊飯米と具材の食感・食味等の品質が著しく損なわれるという問題がある。
【0004】
他の先行技術としては、精白米と、炊飯米のpHが5.0〜5.4になるように酸味料を添加した炊き水とを、ヘッドスペースを不活性ガス等で置換した後密封し、加熱殺菌することにより容器内炊飯を行うことを特徴とする常温流通可能な米飯の製造方法、が公知である(特許文献1)。一部具材を含む点も記載されている。
しかしながら、特許文献1記載の容器入り米飯では、加熱殺菌条件を緩和する意図で炊飯米のpHを下げており、本来の炊飯米の風味が損なわれやすい。また、加熱殺菌して調製した後、常温流通する形態のものであるため、流通保存時に炊飯米に含まれる澱粉の老化程度が低く、つまり澱粉が糊化してべたべたした状態であるため水分移行が激しい。このことにより、保存時に品質が安定せず、調製直後の食感・食味品質を喫食時まで十分に維持することができない問題がある。更に、具材を含むと、流通保存時に炊飯米と具材との間の水分移行が生じ、両者の品質が安定せず、喫食時に温めた際に具材の食感がべたついたものになる問題がある。
以上のように、高品質で保存ができる、炊飯米と比較的大きい具材が含まれた容器入り米飯は提案されていない。
【特許文献1】特開平7−147918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、炊飯米と比較的大きい具材とを含む、チルドで流通、保存する形態のチルド保存用容器入り炊飯米を提供することを目的とする。また、チルドで流通、保存する際に炊飯米と具材との間の水分移行等が生じず品質が安定で、喫食時に炊飯米と具材の食感、風味が優れたものとなる高品質のチルド保存用容器入り炊飯米を提供することを目的とする。更に、これらの容器入り炊飯米の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、炊飯米と具材とがヘッドスペースを有して成形容器に充填密封された、加熱殺菌処理して容器内炊飯された容器入り炊飯米を調製する場合に、0〜10℃で保存されるチルド保存用のものとし、前記加熱殺菌処理した後の一定期間における炊飯米の水分含量及び澱粉の老化度を特定範囲のものとする。このことによって、チルド保存用の比較的緩慢な加熱殺菌条件で容器内炊飯された炊飯米は食味、食感品質がよく、加えてチルド保存期間の当初から炊飯米の水分含量及び澱粉の老化度を特定範囲のものとすることで、保存期間中の炊飯米から具材への水分移行を抑えて両者の品質を保持し、保存後電子レンジ等で温めて喫食する場合に、極めて食味、食感が高品質の具材を含む炊飯米となることを見出した。
本発明は、炊飯米とその米粒よりも大きい具材がヘッドスペースを有して成形容器に充填密封された、加熱殺菌処理済みの0〜10℃で保存されたもので、前記加熱殺菌処理してから2日後〜20日後における前記炊飯米の水分含量が50〜70質量%でかつ老化度が20%以上であることを特徴とするチルド保存用容器入り炊飯米、を特徴とする。
本発明は、精白米と、水と、米よりも大きい具材とを、ヘッドスペースを有して成形容器に充填密封し、加熱殺菌処理して容器内炊飯を行うことを特徴とする前記のチルド保存用容器入り炊飯米の製造方法、を別の態様とする。
【発明の効果】
【0007】
以上の本発明の構成により、チルドで流通、保存する際に炊飯米と具材との間の水分移行等が生じず品質が安定で、喫食時に炊飯米と具材の食感、風味が優れたものとなる高品質のチルド保存用容器入り炊飯米を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、精白米としては、粳米、糯米等を常法により精白した生米を用い得る。粳米を単独で使用するのが望ましく、粳米と糯米を併用してもよく、糯米単独で使用することもできる。精白米は、常法により洗米したもの、あるいは無洗米を用い得る。精白米の使用量は、生米の使用量として、22〜40質量%(以下%の略称する)、好ましくは29〜37%が例示される。これらと、下記する具材、水の使用量と組合せて、容器内炊飯と保存時の品質保持が図れる。原料の使用量は、使用する全ての原料に対する当該原料の使用割合で表す。
【0009】
具材としては、大きさが米よりも大きいもの、望ましくは、加熱最遅点(加熱殺菌処理する場合の具材内部における最も加熱が遅れる点)から表面までの距離が2〜15mmのものを用いればよい。外径が8〜50mm程度のものを用い得る。このような具材は、量感のある大きさを有し、下記する加熱殺菌処理を行ってチルド保存する場合に、菌汚染がなく高品質を保持して保存可能である。
具材としては、畜肉類、魚介類、野菜類、畜肉類・魚介類等のねりもの類、卵加工品、等を単独あるいは適宜組合せて用い得、畜肉類、魚介類を好適に用い得る。具材は、生のもの、調理したもの、半調理したものの何れでもよい。焼成、蒸し、油揚げしたものが、風味、食感がよく、保存時に炊飯米と具材との間の水分移行等が生じ難く、品質が安定であるため好ましい。具材は調製された容器入り炊飯米において、極端に離水しないものが望ましい。具材の使用量は、5〜50%、好ましくは15〜30%が例示される。
【0010】
水、即ち炊き水としては、水又は調味液を用いることができる。水の使用量は、39〜45%、好ましくは40〜43%が例示される。以上の原料の他に、調味料や香辛料等の任意の原料を用い得ることは勿論である。
【0011】
成形容器としては、カップ状、トレイ状、円筒状、角筒状等のものが挙げられ、材料は合成樹脂、金属が挙げられる。成形容器は、原料を収容する容器本体とその開口部を密封する蓋材とからなる形態のものを用い得る。容器本体は蓋材をヒートシール、巻き締め等任意の手段で施して密封される。本発明の目的が達成される限りにおいて、成形容器は任意に構成し得るが、特に次のものを好適に採用することができる。
1)合成樹脂製等のカップ状又はトレイ状の容器本体と合成樹脂製の蓋材とからなるもの。市販品を調製する場合に簡便であり、電子レンジで加熱できる等の利点がある。透明材の容器本体及び/又は蓋材では、中身が見えて見栄えがよく、炊飯米の上に大きい具材が載ったり、両者が混在した状態等が見える特徴的な容器入り炊飯米が調製できる。
2)成形容器のカップ状又はトレイ状の容器本体が、内部の底面の面積が1900〜40000mm、高さが15〜100mm、上方開放部の面積が1900〜40000mmのものである。
3)前記のカップ状又はトレイ状の容器本体が、横断面が円形あるいは多角形のものである。
2)3)の容器により、加熱殺菌処理及び容器内炊飯を好適に実施することが可能で、加熱殺菌・炊飯時乃至調製後に適当なヘッドスペースを有する、一食分に調製された容器入り炊飯米を供し得る。米、具材及びヘッドスペースを適当に配置して保存時の品質保持が図れる。
【0012】
次に、容器入り炊飯米の製造方法について説明する。
前記の精白米と、水と、具材とを、ヘッドスペースを有して成形容器に充填密封し、加熱殺菌処理して容器内炊飯を行う。
精白米と、水と、具材との充填順序は任意であり、例えば精白米と水と具材を一緒に充填した場合でも、容器内炊飯が可能であり、炊飯米の上に具材が載った状態等に炊飯調理することができる。
原料を成形容器に充填密封する場合の手段は任意である。この場合に、容器のヘッドスペースを7〜60%、好ましくは10〜50%残して容器を密封するのがよい。上記ヘッドスペースの範囲は例示に過ぎず、ヘッドスペースは容器内炊飯が可能であり、炊飯米の上部にヘッドスペースが残る大きさであればよい。また、ヘッドスペースにおいて炊飯米の上に具材が載った形態等の容器入り炊飯米を提供できる。なお、ヘッドスペースの割合は、容器の内容積に占める、原料が存在しない通常原料の上部に位置する空間部分の割合を指す。
【0013】
原料を成形容器に充填密封後、これを加熱殺菌処理して容器内炊飯を行う。加熱殺菌処理の条件は、調製される容器入り炊飯米が、チルド保存、例えば0〜10℃の保存環境で20〜60日程度の保存が可能となるものとする。前記の具材をターゲットにした場合の好適な条件としては、95〜110℃、好ましくは98〜105℃で、具材の加熱最遅点のF100値が5〜60、好ましくは10〜50が挙げられる。これらの条件により、米や具材に過度の加熱による品質劣化を及ぼすことなく、殺菌処理及び容器内炊飯を行うことが可能となる。成形容器を正立静置して加熱処理すればよいが、加熱処理中に容器を上下等に反転することもできる。前記の温度条件は雰囲気温度を示す。
上記の加熱殺菌処理を施した容器入り炊飯米は、好ましくは加熱殺菌処理後に急速にチルド環境にまで冷却し、チルド保存環境において、チルド保存用容器入り炊飯米に調製される。上記の急速冷却の条件としては、加熱殺菌処理後20〜300分間の間に0〜10℃にまで冷却するのが好ましい。
【0014】
以上のようにして調製された容器入り炊飯米は、次のような特定の形態を好適に達成し得るものとなる。
1)炊飯米と具材がヘッドスペースを有して成形容器に充填密封された、加熱殺菌処理済みの0〜10℃で保存されたもので、前記加熱殺菌処理してから2日後(48時間後)〜20日後(480時間後)における前記炊飯米の水分含量が50〜70%、好ましくは55〜67%でかつ老化度が20%以上、好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上である。
一般に、加熱殺菌処理してから1日後(24時間後)は炊飯米に含まれる澱粉の糊化度が高く、老化程度が低く、これ以降の保存中に上記老化度が高まる。この場合に、一般の常温保存では、2日後〜10日後でも老化度が20%未満で低い傾向となり、上記保存の間に炊飯米から具材への水分移行が起って、保存時の両者の食味・食感品質が安定しない。
したがって、本発明では、0〜10℃のチルド保存をすると共に、加熱殺菌処理してから2日後〜20日後における炊飯米の水分含量と老化度を前記範囲のものとすることによって、保存の間における炊飯米から具材への水分移行を低減して、両者の保存時の食味・食感品質を安定させることが可能となる。同時に、保存中炊飯米は適度に保形され(塊として適当な硬さを有する)、具材を含む場合は、炊飯米と具材とが分離した状態で形を保って保存されることでも、食感品質が保持される。以上のため喫食時に温めた際に、炊飯米や具材の食感がべたついたものになる問題が解消される。なお、本発明では、加熱殺菌処理してから2日後〜20日後の期間中全ての時点において、炊飯米の水分含量と老化度を前記数値範囲のものとする必要があり、これらの何れかが上記期間中のある時点において数値範囲を外れる場合には、所望の食感品質保持効果が達成されないことがある。
【0015】
なお、前記の水分含量と老化度とは、以下の方法により測定した炊飯米に含まれる水分含量及び炊飯米に含まれる澱粉の老化度を指す。
炊飯米に含まれる水分含量の測定方法
炊飯米の水分含量(%)とは、秤量缶(口の内径55mm、底の内径50mm、深さ35mmのもので、恒量を求めたもの)に、炊飯米を約10g秤量し、これを105℃で16時間乾燥し、これにより蒸発した水分量(g/100g)を測定したものをいう。
老化度の測定方法
本発明でいう老化度は、下記の式により求める。
老化度(%)=100−炊飯米の糊化度(%)※
※上記糊化度は、炊飯米に含まれる澱粉が老化するに従って、米の吸水量が小さくなることを利用して、次のように測定する。即ち、
(1)調製された容器入り炊飯米に含まれる炊飯米(サンプル米)の米飯粒の水分含量(W1)を前記の測定方法により求める。
(2)別に、上記サンプル米とアミロース含量が同等の炊飯米を準備し、炊飯直後に上記サンプル米の水分含量(W1)となるように炊飯して(炊飯直後の米)、その水分含量を(W2)とする。当該サンプル米の炊飯直後の水分含量が分れば、それをW2とする。
(3)上記サンプル米及び炊飯直後の米の米飯粒約25gを各々蒸留水200mlに浸漬する。各々上記浸漬を5℃の環境下で24時間続け、米飯粒に吸水させる。
(4)浸漬後、上記サンプル米及び炊飯直後の米の各々について、米飯粒と蒸留水との混合物を1mmメッシュの篩を通過させて、吸水した米飯粒と水相部とに分離する。
(5)分離されたサンプル米の米飯粒の水分含量(W3)及び炊飯直後の米の米飯粒の水分含量(W4)を前記の測定方法により求める。
(6)以上で求めた米飯粒の水分含量を次の式に算入して、サンプル米の糊化度を求める。
糊化度(%)=[(サンプル米の吸水率=W3−W1)÷(炊飯直後の米の吸水率=W4−W2)]×100

なお、調製された容器入り炊飯米に含まれるサンプル米のアミロース含量を求めることができ、これとアミロース含量が同等の米については、当該サンプル米と同等の吸水作用をもつ。同時に、密閉系で保持されたサンプル米の水分含量(W1)と、サンプル米の炊飯直後の水分含量とは等しい。したがって、サンプル米とアミロース含量が同等の米について、同等の水分含量に炊飯した直後の米の吸水率を求めれば、必ずしも当該サンプル米の炊飯直後の米の吸水率を求めなくても、前記の方法により、当該サンプル米の糊化度を求めることが可能である。
【0016】
2)炊飯米の上に具材が載った状態のものである。両者をセパレートすることで、保存の間における炊飯米から具材への水分移行を低減して、両者の保存時の食味・食感品質を安定させることが可能となる。なお、炊飯米と具材が混在したものも排除されない。具材の大きさは、外径が8〜50mm程度のものが量感があり望ましい。
3)炊飯米の露出した上部表面部における20%以上、好ましくは30%以上の米粒が立った状態である。望ましくは、上記の米粒の立った状態が、水平面に対する米粒の長径方向の傾きが45度以上である。
これらの状態は、精白米を成形容器内でヘッドスペースを有して容器内炊飯した場合に達成できるもので、炊飯米の食味・食感品質が高品質であることを示すものである。同時に具材を含んで、炊飯米の上に具材が載った状態のものである場合は、炊飯米の上部表面部における立った状態の米粒が具材を持上げる作用をもつことになり、これによっても保存時の炊飯米から具材への水分移行が抑えられる効能が得られる。炊飯米の上に具材が載っている場合は、炊飯米の露出した上部表面部とは具材が載っていない部分を指す。
4)また、容器の容積中容積比率において、炊飯米が40〜90%、具材が7〜40%、容器のヘッドスペースが7〜60%とすることが挙げられる。これらにより、保存時における原料の水分移行が低減され品質が安定で、炊飯米の上に具材が載った形態を採る場合は見栄えがよいものとなり(容器乃至蓋材を透明材で形成するとよい)、容器入り炊飯米を電子レンジでそのまま加熱した場合に、炊飯米と具材が良好に加熱される。
5)炊飯米のpHが5.5〜8.0、好ましくは6.0〜7.5である。これにより食味の良好な炊飯米が得られる。
6)容器のヘッドスペースの酸素濃度が5%以下、好ましくは2%以下である。加熱殺菌処理することで、ヘッドスペースの酸素濃度が低濃度となり、チルド保存時の保存性が向上する。本発明により上記の酸素濃度が達成され、脱酸素剤の使用は不要となる。
【0017】
7)弁当や釜飯等として供し、量販店やコンビニエンスストアなどでチルド保存環境において比較的長期間の流通保存が可能で、顧客が喫食する際に電子レンジ等でそのまま加熱して供する、新規形態の保存食品が達成される。容器は、電子レンジ加熱する際に開口してもよく、電子レンジ加熱用に自動蒸気抜き機構を備えたものとしてもよい。本発明では、加熱殺菌処理してから0〜10℃で20〜60日程度保存可能な形態が望ましく、これにより炊飯米と具材の食味・食感品質が良好な前記形態の保存食品が達成される。
【実施例】
【0018】
実施例1
下記する成形容器のカップ状の容器本体に、無洗化処理した粳米の精白米(生米)75g、だし汁105g、塩焼きした鯛の切り身50g、ブランチングした人参10gを入れ、蓋材を容器本体のフランジ部にシールして密封した。これをレトルトで105℃で40分間(F100値40)の加熱殺菌処理して容器内炊飯を行い、加熱処理後180分間の間に5℃にまで冷却してチルド保存用容器入り炊飯米を調製して、5℃で保存した。
成形容器
(カップ状の本体)
形状:横断面が円形の逆円錐台状。上端縁にフランジ部を有する。
寸法:内部底面の直径85mm、上部開放部の直径105mm、高さ45mm
材質:ポリプロピレン
(蓋材)
材質:PET/ナイロン/CPPのラミネートフィルム材
前記のチルド保存用容器入り炊飯米は、次の形態を有するものであった。
1)加熱殺菌処理してから2日後〜20日後の保存中における炊飯米の水分含量は約62%で、老化度は約35〜62%であった。
2)塊状の炊飯米の上に具材が載った形態のものであった。
3)炊飯米の具材の載っていない露出した上部表面部における約30%以上の米粒が、水平面に対する米粒の長径方向の傾きが45度以上の立った状態であった。
4)容器の容積中容積比率において、炊飯米が約62%、具材が15%、容器のヘッドスペースが約23%であった。
5)炊飯米のpHは約6.8であった。
6)容器のヘッドスペースの酸素濃度が約0.9%であった。
7)加熱殺菌処理してから5℃で40日程度保存可能なものであった。
前記のチルド保存用容器入り炊飯米は、2週間保存後に容器の蓋材を一部開けて電子レンジで加熱し、蓋材を開けて食すると、炊飯米の食感がべたつかず、炊飯米本来のもので、具材も吸水しておらず良好な食感で、これらは風味においても良好であった。
【0019】
比較例1
加熱殺菌処理(容器内炊飯)の条件を123℃で40分間(F0値=7)とし、加熱処理後180分間の間に25℃(常温)にまで冷却して、25℃で保存した以外は、実施例1と同様にして常温保存用容器入り炊飯米を調製した。
上記の常温保存用容器入り炊飯米は、次の性能のものであった。
1)加熱殺菌処理してから2日後〜20日後の保存中における炊飯米の水分含量は約62%で、老化度は約2〜22%であった。
2)塊状の炊飯米の上に具材が載った形態のものであった。
3)炊飯米の具材の載っていない露出した上部表面部における米粒が、約25%以上水平面に対する米粒の長径方向の傾きが45%以上の立った状態であった。
4)容積比率において、炊飯米が約62%、具材が15%、容器のヘッドスペースが約23%であった。
6)容器のヘッドスペースの酸素濃度が約0.3%であった。
7)加熱殺菌処理してから25℃で6ヶ月程度保存可能なものであった。
前記の常温保存用容器入り炊飯米は、2週間保存後に容器の蓋材を一部開けて電子レンジで加熱し、蓋材を開けて食すると、炊飯米の食感がべたつき、具材も吸水して食感がべたついたもので、これらは風味においても、レトルト加熱臭味がして実施例1のものと比べて非常に劣るものであった。3月保存後に同様に食すると、炊飯米の食感、具材のべたつきは更に増し、風味も劣るものであった。
より詳しく品質評価すると、2週間保存後と3月保存後の何れの場合も、醤油の褐変臭と米油の劣化臭があり、だしの香気が失われ、また、具材である鯛の食感がパサパサして不良なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯米とその米粒よりも大きい具材がヘッドスペースを有して成形容器に充填密封された、加熱殺菌処理済みの0〜10℃で保存されたもので、前記加熱殺菌処理してから2日後〜20日後における前記炊飯米の水分含量が50〜70質量%でかつ老化度が20%以上であることを特徴とするチルド保存用容器入り炊飯米。
【請求項2】
具材が畜肉類、魚介類の中から選ばれたものである請求項1記載のチルド保存用容器入り炊飯米。
【請求項3】
具材の大きさが、加熱最遅点から表面までの距離が2〜15mmのものである請求項1又は2記載のチルド保存用容器入り炊飯米。
【請求項4】
炊飯米の上に具材が載った状態のものである請求項1〜3の何れか1項に記載のチルド保存用容器入り炊飯米。
【請求項5】
炊飯米の露出した上部表面部における20%以上の米粒が立った状態である請求項1又は2記載のチルド保存用容器入り炊飯米。
【請求項6】
米粒の立った状態が、水平面に対する米粒の長径方向の傾きが45度以上である請求項5記載のチルド保存用容器入り炊飯米。
【請求項7】
加熱殺菌処理してから0〜10℃で20〜60日程度保存可能なものである請求項1に記載のチルド保存用容器入り炊飯米。
【請求項8】
成形容器が、カップ状又はトレイ状の容器本体と合成樹脂製の蓋材とからなるものである請求項1記載のチルド保存用容器入り炊飯米。
【請求項9】
該カップ状又はトレイ状の容器本体が、内部の底面の面積が1900〜40000mm、高さが15〜100mm、上方開放部の面積が1900〜40000mmのものである請求項8記載のチルド保存用容器入り炊飯米。
【請求項10】
前記の容器本体が、横断面が円形あるいは多角形のものである請求項8又は9に記載のチルド保存用容器入り炊飯米。
【請求項11】
精白米と、水と、米よりも大きい具材とを、ヘッドスペースを有して成形容器に充填密封し、加熱殺菌処理して容器内炊飯を行うことを特徴とする請求項1記載のチルド保存用容器入り炊飯米の製造方法。
【請求項12】
加熱殺菌処理が、95〜110℃で、具材の加熱最遅点のF100値が5〜60である請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
加熱殺菌処理の後容器入り炊飯米を急速冷却する請求項11又は12記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−212035(P2008−212035A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52335(P2007−52335)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】