チルド飲料およびその製造方法
【課題】
殺菌のための加熱を軽減し、素材本来の味・香り・色合いを保持したチルド飲料を提供すること。
【解決手段】
野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、乳酸菌の生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内にあり且つ乳酸発酵しないことを特徴とするチルド飲料を提供する。
殺菌のための加熱を軽減し、素材本来の味・香り・色合いを保持したチルド飲料を提供すること。
【解決手段】
野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、乳酸菌の生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内にあり且つ乳酸発酵しないことを特徴とするチルド飲料を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料およびその製造方法に関する。より具体的には、野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、乳酸菌が生菌の状態で存在し、且つ乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜/果実飲料とは、野菜/果実(野菜汁、果実汁等)を主要原料とする飲料の総称で、原料野菜/果実の種類、野菜汁、果実汁等の含有量の違いなどにより、いろいろな種類の製品となり市場で見ることができる。上述したように野菜/果実飲料は野菜汁、果実汁を主成分とするので、ショ糖、ブドウ糖、果糖などの糖質、有機酸類に加えて、野菜汁、果実汁に由来するアミノ酸、無機質などの栄養成分が適度の濃度で含まれており、このために、ある種の微生物とって格好の培地としての性質を持っていることになる。これらの微生物の繁殖の結果、製品の風味を変えたり、外観にも変化を与えたり、時には沈でん物を発生させたりする。これら、微生物の増殖を防ぎ、風味等を維持した状態での保存を可能にするために、飲料の加工途上で加熱による殺菌を実施することになるのであるが、加熱殺菌により、野菜汁、果実汁の変色、並びに加熱臭の発生などの香りの劣化が生じ、製品の風味を変え、外観にも変化を与えることになる。
【0003】
これに対し、特開昭50−018653には、長期保存可能な野菜ジュースの製法を目的に、特開昭57−138370には野菜ジュース本来の風味を損なうことなくこの加熱臭を除去する目的で、野菜ジュースに乳酸菌を添加し乳酸発酵させた後に低温殺菌をする野菜ジュースの製造法が開示されている。また、特開昭59−098672には、果汁の乳酸発酵液からなる乳酸菌飲料が、特開昭60−251867には、広範囲の果実の果汁から高濃度に乳酸菌を含む乳酸菌飲料を製造するための果汁の処理に特徴を有する乳酸菌飲料の製造法が開示されている。一方、特開2001−252012には、長期間のチルド保管後も、所望の生菌数、pHおよび風味を保持する乳酸飲料およびその製造法が、特開2001−056231には、中性付近のpHで好ましい風味を与える素材(コーヒー、メロン等)により風味付けされた調味乳発酵食品が開示されている。しかしこれらはいずれも、その製造過程において乳酸発酵を実施しているか、若しくは野菜/果実(野菜汁、果実汁等)を極めて強い殺菌条件にて処理を行っているため、野菜/果実素材本来の味・香り・色合いを保持した飲料とはなっていない。
【特許文献1】特開昭50−018653
【特許文献2】特開昭57−138370
【特許文献3】特開昭59−098672
【特許文献4】特開昭60−251867
【特許文献5】特開2001−252012
【特許文献6】特開2001−056231
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、殺菌のための加熱を軽減し、素材本来の味・香り・色合いを保持したチルド飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、下記要旨の発明が提供される。
(1)野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、
乳酸菌の生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内にあり且つ乳酸発酵しないことを特徴とするチルド飲料。
(2)野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、該飲料組成物を下記の条件で殺菌処理した後、乳酸菌をその生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内となるよう加え、乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料。
条件:前記飲料組成物がpH4.0未満である場合は、65℃で0.17分〜65℃で10分に相当する殺菌処理、また、前記飲料組成物がpH4.0以上4.6未満の場合は、65℃で0.17分〜75℃で1分に相当する殺菌処理、更に、前記飲料組成物がpH4.6以上7.0以下の場合は、65℃で0.17分〜121.1℃で0.3分に相当する殺菌処理。
(3)上記乳酸菌がラクトバチルス属のものである、(1)または(2)に記載のチルド飲料。
(4)上記乳酸菌がラクトバチルス・カゼイである、(1)または(2)に記載のチルド飲料。
(5)上記乳酸菌の生菌数が1×107〜1×108個/mlの範囲にある、(1)〜(4)のいずれかに記載のチルド飲料。
(6)乳酸発酵による生成乳酸の濃度が0.1%(乳酸換算:W/V%)未満のものである、(1)〜(5)のいずれかに記載のチルド飲料。
(7)5〜10℃の温度で保存されるものである、(1)〜(6)のいずれかに記載のチルド飲料。
(8)野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料の製造方法であって、該飲料組成物を下記の条件で殺菌処理した後、乳酸菌をその生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内となるよう加え、乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料の製造方法。
条件:前記飲料組成物がpH4.0未満である場合は、65℃で0.17分〜65℃で10分に相当する殺菌処理、また、前記飲料組成物がpH4.0以上4.6未満の場合は、65℃で0.17分〜75℃で1分に相当する殺菌処理、更に、前記飲料組成物がpH4.6以上7.0以下の場合は、65℃で0.17分〜121.1℃で0.3分に相当する殺菌処理。
(9)上記乳酸菌はプロテアーゼ透明乳培地により培養されたものである、(8)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の効果は、殺菌のための加熱が軽減されたことにより、素材本来の味・香り・色合いを保持したチルド飲料が提供できることにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<1>本発明の野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料(以下、本発明チルド飲料ともいう)
【0008】
<1−1>本発明チルド飲料に使用する野菜汁及び/又は果実汁(以下、飲料原料ともいう)
本発明チルド飲料に使用する飲料原料としては、グレープフルーツ、オレンジ、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、キウイ、グアバ、マンゴー、アセロラ、ブルーベリー、ザクロ、桃、洋なし、パパイヤ、メロン、スイカ、バナナ、イチジク等の果実汁、及び/又はトマト、赤ピーマン、ニンジン、キャベツ、ほうれん草、ケール、プチヴェール(商標:ケールと芽キャベツの交配種)等の野菜汁が挙げられる。また、当該飲料原料は、その野菜汁及び/又は果実汁のpH範囲により、pH4.0未満のグループである、グレープフルーツ、オレンジ、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、キウイ、グアバ、マ
ンゴー、アセロラ、ブルーベリー、ザクロ等、pH4.0以上pH4.6未満のグループであるトマト、赤ピーマン、桃、洋なし、パパイヤ等、pH4.6以上pH7.0以下のグループであるニンジン、キャベツ、ほうれん草、ケール、プチヴェール(商標:ケールと芽キャベツの交配種)、メロン、スイカ、バナナ、イチジク等に分類することも可能である。
【0009】
本発明に用いる飲料原料のチルド飲料全体に対する割合は特に制限はないが、飲料原料がストレート換算で50%以上100%以下で含まれることが好ましく、90%以上100%以下で含まれることが更に好ましい。なお、ストレート換算で飲料原料100%という値は、濃縮液を用いれば可能である。従って、本飲料原料はストレート液であっても濃縮液であってもかまわない。ここでいう、ストレート液とは、非濃縮液のことを意味し、濃縮液とは、特に濃縮の方法に限定されることはないが、原料(果物や野菜)から絞ったそのままの果汁、野菜汁(ストレート果汁、ストレート野菜汁)を、逆浸透濃縮や前進凍結濃縮のように低加熱濃縮したものであることが好ましい。また、飲料原料は1種単独でも使用でき、2種以上の併用も可能である。なお、本明細書で、特に指示がない限りにおいては、「%」は質量/体積(W/V)%を示す。
本発明の野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成からなるチルド飲料において、“野菜汁及び/又は果実汁をベースとする”とは、当該野菜汁及び/又は果実汁を主要原料としていることを意味する。
【0010】
<2>本発明に利用する乳酸菌
本発明のチルド飲料は、野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成からなるチルド飲料であって、該飲料組成物を殺菌後、乳酸菌を生菌の状態で添加し、且つ乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料である。本発明のチルド飲料に添加する乳酸菌としては、発酵食品などに広く利用されている乳酸菌を用いることが可能である。例えば、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エノコッカス属(Oenococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)が挙げられる。これら乳酸菌のうちラクトバチルス属が好ましく、摂取した場合、生きて腸に届くプロバイオティクス菌といわれるラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)が特に好ましい。さらに具体的には、平成4年1月10日に通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター)に微工研菌寄第12704号(FERM P−12704)として寄託されているラクトバチルス・カゼイ AST−8(FERM P−12704)が更に好ましい。
【0011】
<2−1>本発明に利用する乳酸菌の本発明チルド飲料への添加方法
本発明のチルド飲料は、添加された乳酸菌が生菌の状態で存在していることを特徴とする。本発明に利用する乳酸菌の本発明チルド飲料への添加形態であるが、例えば、(1):全粉乳、脱脂粉乳、生乳等の乳培地で培養して得られる乳酸菌培養液をそのまま本発明チルド飲料へ添加する方法。(2):上記培養液から乳酸菌を遠心分離や膜分離等で集菌した集菌物を本発明チルド飲料へ添加する方法。(3):上記培養液を乾燥させた培養液乾燥物または上記集菌物を乾燥させた乾燥菌体を本発明チルド飲料へ添加する方法。(4):全粉乳、脱脂粉乳、生乳等の乳をプロテアーゼ処理した透明乳培地(以下、プロテアーゼ透明乳培地ともいう)で培養して得られる乳酸菌培養液(以下、透明乳発酵液ともいう)をそのまま本発明チルド飲料へ添加する方法。(5):(4)で得られる培養液から乳酸菌を遠心分離や膜分離等で集菌した集菌物を本発明チルド飲料へ添加する方法。(6):(4)で得られる培養液を乾燥させた培養液乾燥物または(5)で得られる集菌物を乾燥させた乾燥菌体を本発明チルド飲料へ添加する方法。が挙げられる。味、香り、色調への影響も少ないこと及び集菌する工程を有しない簡便な調製が可能なことより、上記(
4)の方法で得られる乳酸菌培養液をそのまま本発明チルド飲料へ添加する方法が好ましい。ここで、上記乳酸菌の培地、培養方法等において、格別の制限はなく、公知の乳酸菌用培地、培養条件で培養することが可能であり、また乳酸菌の集菌方法、培養液または集菌物の乾燥法においても格別の制限はなく公知の方法を用いることが可能である。
【0012】
<2−2>本発明チルド飲料へ添加する乳酸菌の生菌数および添加直後の本発明チルド飲料に含まれる乳酸菌の生菌数
本発明チルド飲料へ添加する乳酸菌の生菌数は、1×107〜1×1011個/mlの範囲にあれば好ましく、1×109〜1×1011個/mlの範囲にあればさらに好ましい。
また、添加直後の本発明チルド飲料に含まれる乳酸菌の生菌数は、1×106〜1×109個/mlの範囲にあれば好ましく、1×107〜1×108個/mlの範囲であればさらに好ましい。尚、生菌数の測定は、例えば、乳及び乳製品の成分規格に関する省令の乳酸菌数の測定法により測定することが可能である。
【0013】
<3>本発明のチルド飲料の製造方法
本発明のチルド飲料の製造方法は、飲料原料をベースとする飲料組成物を殺菌後冷却し、乳酸菌を上記方法にて添加する。その後、完成した飲料を容器等に充填、密封し、乳酸発酵しない条件まで冷却して、保存するというものである。すなわち、本製造方法は、飲料原料をベースとする飲料組成物を、殺菌の強度を減じた条件で殺菌後冷却し、乳酸菌を添加、乳酸発酵しない条件下まで冷却し保存(冷蔵)することで、飲料中での汚染菌の増殖を防ぎ且つ素材本来の味、香り、色合いを保持したチルド飲料を製造するというものである。
【0014】
<3−1>殺菌
加熱殺菌は、野菜汁、果実汁の着色、並びに加熱臭を発生させ、製品の風味を変え、外観にも変化を与えることになる。本発明のチルド飲料は、素材本来の味、香り、色合いを保持した状態での提供を目的とすることより、本発明における飲料原料をベースとする飲料組成物の殺菌条件は、飲料原料をベースとする飲料組成物のpHによって変化させることが好ましく、例えば、飲料原料をベースとする飲料組成物が4.0未満の場合は、65℃で0.17分〜65℃で10分に相当する殺菌条件で殺菌処理する。また、飲料原料をベースとする飲料組成物がpH4.0以上4.6未満の場合は、65℃で0.17分〜75℃で1分に相当する殺菌条件で殺菌処理する。さらに、飲料原料をベースとする飲料組成物がpH4.6以上7.0以下の場合は、65℃で0.17分〜121.1℃で0.3分に相当する殺菌条件で殺菌処理する。ここで、「相当する殺菌条件」とは、殺菌温度がより低温であっても、また、より高温であってもよく、温度と時間で表される殺菌の強度が同等である殺菌条件をいう。殺菌方法は、格別の制限はなく、バッチ殺菌法、連続殺菌法等の公知の方法を用いることが可能である。
なお、相当する殺菌条件へは次式で変換可能である。
【数1】
【0015】
<3−2>殺菌後の冷却
殺菌後は、添加する乳酸菌が死滅しない程度、例えば5℃〜40℃程度まで冷却することが好ましい。また、冷却方法は、格別の制限はなく、プレート冷却器等の公知の冷却方法を用いることが可能である。
【0016】
<3−3>乳酸菌添加
<2−1>に記載の方法にて乳酸菌を殺菌冷却後の飲料原料をベースとする飲料組成物に添加する。また、添加する乳酸菌の生菌数は、1×107〜1×1011個/mlの範囲にあれば好ましく、1×109〜1×1011個/mlの範囲にあればさらに好ましい。さらに、添加直後の本発明チルド飲料に含まれる乳酸菌の生菌数は、1×106〜1×109個/mlの範囲にあれば好ましく、1×107〜1×108個/mlの範囲であればさらに好ましい。
【0017】
<3−4>充填、密封、保存
乳酸菌を上記方法にて添加後、容器等に充填、密封し、更に乳酸発酵をしない条件下まで冷却して保存する。飲料の充填、密封には格別の制限はなく、公知の方法を用いることが可能である。また、本発明チルド飲料を保存する期間は、汚染菌の増殖を防ぎ、風味を維持するために、乳酸発酵をしない条件下まで冷却しておくことが好ましい。ここで、「乳酸発酵をしない条件」とは、乳酸発酵を全くしないか、したとしても通常の保存期間、例えば2週間で、乳酸発酵による生成乳酸の濃度が0.1%(乳酸換算:W/V%)未満となる条件をいう。具体的には0℃〜15℃の温度が好ましい。雑菌汚染防止効果の観点を加味すると、5℃〜10℃の温度がより好ましい。また、保存期間としては、添加乳酸菌数が維持され、汚染菌の抑制が可能である期間は保存が可能である。具体的には、本発明のチルド飲料は2週間程度の保存が可能である。一方、保存方法は温度が上記の条件に維持される限りにおいては、格別の制限はなく、公知の方法を用いることが可能である。
【0018】
<4>各種添加剤の添加
本発明の野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料において、該飲料組成物は、その他の各種添加剤等を任意に添加することも可能である。ここで利用できる添加剤としては、飲料に添加配合できることが知られている各種のものが挙げられる。例えば、ハーブ、ショウガ、シナモン等の香辛料、オレンジフレーバー、リンゴフレーバー等の香料、シュークロース、グルコース、フラクトース等の糖類、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖等の各種オリゴ糖類、ステビア、甘茶抽出物、甘草抽出物等の甘味料、ポリデキストロース等の食物繊維類、ビタミンC等の各種ビタミン類、イソロイシン、バリン等のアミノ酸類、炭酸カルシウム、塩化第二鉄等の無機塩類、水、液糖等の水溶液を例示することができる。これらの配合量は特に限定されるものではないが、通常0.1%〜5%(W/V)程度の範囲から選ぶことが可能である。
【0019】
以下、本発明を実施例により具体的に詳述するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0020】
<実施例1>本発明に利用する乳酸菌の調製
本発明に利用する乳酸菌は、以下のように調製した。
<1>透明乳発酵液の調整法
脱脂粉乳8%水溶液(W/V)を炭酸カリウムでpH8.0に調製した。この調製液に、プロテアーゼS「アマノ」G(天野エンザイム株式会社製)を0.05%(W/V)添加し、70℃で4時間反応させる。反応終了後、95℃で20分加熱して酵素失活及び殺菌を行った。このプロテアーゼ透明乳培地にラクトバチルス・カゼイ AST−8(FERM P−12704)を1x107個/mlとなるように接種し、30℃で48時間発酵させた。得られた透明乳酸発酵液の生菌数は1.5x109個/mlであった。尚、生菌数の測定は乳等省令の乳酸菌数測定法に準じ、B.C.P.加プレートカウント培地を用いて測定した。
<2>集菌物の調整法
上記の方法により得られた透明乳酸発酵液を、遠心分離機(株式会社コクサイ製 H−
103N)を用いて、3,000rpm 15分の条件で遠心分離し、沈殿した菌体を回収し、集菌物を得た。なお、得られた集菌物の生菌数は、2.0×1010個/gであった。
<3>乾燥菌体の調整法
上記の方法により得られた透明乳酸発酵液を液体窒素で急速凍結した。急速凍結した透明乳酸菌発酵液を凍結乾燥器(LABCONCO社製FD−10)を用いて凍結乾燥させ、乾燥菌体を得た。なお、得られた集菌物の生菌数は、1.0×1011個/gであった。
【0021】
<実施例2〜4および比較例1〜3>本発明のチルド飲料の製造およびその評価
実施例1で調製した乳酸菌および下記に示す条件で調製した飲料原料を用いて本発明のチルド飲料を製造した。
【0022】
<実施例2>
オレンジ濃縮果汁(カーギル社製 RI 65%)を蒸留水で希釈した、オレンジ果汁(RI 12%)(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH3.8(堀場製作所製 pHメーター F−12)を65℃で10分間殺菌した。この加熱殺菌したオレンジ果汁を10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、本発明チルド飲料製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。一方、比較例1は実施例2と同様に調製したオレンジ果汁(RI 12%)(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH3.8(堀場製作所製 pHメーター F−12)を105℃で1分間殺菌した。この加熱殺菌したオレンジ果汁を10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、比較例1製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。本実施例2の製品を14日間チルド保管(5℃、10℃)し、経時的に製品中の乳酸菌生菌数および酸分(乳酸換算(W/V%))を測定し、汚染菌の増殖確認を実施した。また、実施例2および比較例2の製品について、容器に充填直後の色調評価(L値、a値、b値,a/b値)および14日間チルド保管した製品についての官能評価を実施した。
【0023】
透明乳発酵液および製品中の乳酸菌生菌数は実施例1の方法に従って実施した。また、汚染菌の増殖確認は以下の方法に従って実施した。
リステリア菌:Oxford リステリア選択培地を用い、30℃ 3日間培養後、計測した。
Oxford リステリア選択培地:ペプトン23.0g、デンプン1.0g、塩化ナトリウム5.0g、 クエン酸鉄アンモニウム0.5g、エスクリン1.0g、塩化リチウム15.0g 寒天10.0g、シクロヘキシミド0.4g、硫酸コリスチン0.02g、 塩酸アクリフラビン0.005g、セフォテタン0.002g、フォスフォマイシン0.01g を蒸留水に溶解し(総量1L)、121.1℃ 15分で殺菌する。
バチルス・セレウス菌:NGKG培地を用い、35℃ 1日間培養後、計測した。
NGKG培地:ペプトン1.0g、酵母エキス0.5g、塩化ナトリウム4.0g、グリシン3.0g、 硫酸ポリミキシン5万単位、フェノールレッド0.025g、寒天18.0g を蒸留水に溶解し(総量1L)(pH6.8)を121.1℃ 15分で殺菌する。
【0024】
製品中の酸分(乳酸換算(W/V%)は0.1N水酸化ナトリウムを用いた中和滴定により測定した。
【0025】
色調評価(L値、a値、b値、a/b値)は以下の方法で実施した。すなわち、実施例
2および比較例1とも、容器に充填後0日目のサンプルのL値、a値、b値を分光測色型測色計(CM−3500d:ミノルタ社製)にて、本機器の取扱説明書の記載に従い計測した。
【0026】
官能評価は、上記実施例の飲料と比較例の飲料とを2点比較し、男性20名及び女性20名(合計40名)の官能評価員に、どちらが好ましいかを選択させ、各例の飲料を好ましいと選択した人数及びその有意検定結果としての危険率を求めた。なお、危険率は、統計的仮説検定で第一種の過誤をおかす確率をいう。
【0027】
実施例3: 洗浄した完熟トマトを破砕し、直ちに85℃達温まで加熱して酵素失活した後、開口径2mmΦのパルパーで搾汁したトマトジュース RI 6%(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH4.4(堀場製作所製 pHメーター F−12)を75℃で1分間殺菌した。この加熱殺菌したトマトジュースを10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、本発明チルド飲料製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。比較例2は実施例3と同様に搾汁したトマトジュース
RI 6%(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH4.4(堀場製作所製 pHメーター F−12)を121.1℃で45秒殺菌した。この加熱殺菌したトマトジュースを10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、比較例2製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。なお、各種評価は実施例2、比較例1と同様に実施した。
【0028】
実施例4: 洗浄したメロンを破砕し、直ちに90℃達温まで加熱して酵素失活した後、開口径1.5mmΦのパルパー及び開口径0.5mmのフィニッシャーで搾汁したメロン果汁、RI 12%(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH5.1(堀場製作所製 pHメーター F−12)を121.1℃で10秒間殺菌した。この加熱殺菌したメロン果汁を10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、本発明チルド飲料製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。比較例3は実施例4と同様に搾汁したメロン果汁、RI 12%(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH5.1(堀場製作所製 pHメーター F−12)を121.1℃で3.1分間殺菌した。この加熱殺菌したメロンジュースを10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、比較例3製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。なお、各種評価は実施例2、比較例1と同様に実施した。
【0029】
<実施例2〜4および比較例1〜3の結果>
実施例2〜4および比較例1〜3の結果を表1、表2、表3に纏めた。酸度上昇については、充填後0日目と充填後14日目の酸分(乳酸換算、W/V%)を比較し、酸分の上昇が0.1%(乳酸換算:W/V%)未満の場合を「酸度上昇なし」とした。乳酸菌の残存性は、充填後0日目と充填後14日目の乳酸菌の生菌数を比較し、充填後0日目に対し30%以上の生菌数を維持している場合を○とした。汚染菌の増殖については、14日目の汚染菌数が調整時の10倍未満の場合を「汚染菌の増殖なし」とし、調製時の10倍以上の場合を「汚染菌の増殖あり」とした。さらに、実施例2の乳酸菌の生菌数と保存日数の関係を図1に酸分と保存日数の関係を図2に、実施例3の乳酸菌の生菌数と保存日数の
関係を図3に酸分と保存日数の関係を図4に、実施例4の乳酸菌の生菌数と保存日数の関係を図5に酸分と保存日数の関係を図6に示す。図2,4,6に示されるように、実施例2,実施例3、実施例4のいずれの温度(5℃、10℃)での保存においても、酸分の上昇は0.05%(乳酸換算、W/V%)以下であり、乳酸発酵をしていないことが示された。また、表3の色調評価からは、実施例2に対し比較例1は暗く、赤褐色がかっていることが、実施例3に対し比較例2は暗く、茶褐色がかっていることが、実施例4に対し比較例3は暗く、黄褐色がかっていることが示された。これらの結果より、本発明チルド飲料は、殺菌強度を減じた条件で殺菌し、乳酸菌を添加後、乳酸発酵しない条件下まで冷却し保存(冷蔵)することで、飲料中での汚染菌の増殖を防ぎ且つ素材本来の味、香り、色合いを保持できることが示された。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
<試験例1〜12>乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
試験例1〜4:
実施例2と同様に搾汁したオレンジ果汁(RI 12%、pH3.8)を105℃で1分間殺菌した。この加熱殺菌したオレンジ果汁を10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を乳酸菌生菌数が1.0x106個/mlおよび表4に示す汚染菌の菌数が1.0x102個/mlとなるように添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、試験例1および2試料を調製した。その後、当該乳酸菌および汚染菌の菌数の変化を14日間観察した。試験例3および4試料は、試験例1および2において、表4に示す汚染菌のみを1.0x102個/mlとなるように添加したものである。なお、製品中の乳酸菌生菌数および汚染菌の菌数は実施例1、2の方法に従って計測した。
【0034】
試験例5〜8:
実施例3と同様に搾汁したトマトジュース(RI 6%、pH4.4)を121.1℃で45秒間殺菌した。この加熱殺菌したトマトジュースを10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を乳酸菌生菌数が1.0x106個/mlおよび表4に示す汚染菌数が1.0x102個/mlとなるように添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、試験例5および6試料を調製した。その後、当該乳酸菌および汚染菌の菌数の変化を14日間観察した。試験例7および8試料は、試験例5および6において、表4に示す汚染菌のみを1.0x102個/mlとなるように添加したものである。なお、製品中の乳酸菌生菌数および汚染菌の菌数は実施例1、2の方法に従って計測した。
【0035】
試験例9〜12:
通常の方法で搾汁したメロン果汁(RI 12%、pH5.1)を121.1℃で3.1分間殺菌した。この加熱殺菌したメロン果汁を10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を乳酸菌生菌数が1.0x106個/mlおよび表4に示す汚染菌数が1.0x102個/mlとなるように添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、試験例9および10試料を調製した。その後、当該乳酸菌および汚染菌の菌数の変化を14日間観察した。試験例11および12試料は、試験例9および10において、表4に示す汚染菌のみを1.0x102個/mlとなるように添加したものである。なお、製品中の乳酸菌生菌数および汚染菌の菌数は実施例1、2の方法に従って計測した。
【0036】
<添加する汚染菌およびのその調製>
試験例1〜12において使用する汚染菌を表4に示す。また、リステリア・モノサイトゲネス ATCC7644は普通寒天培地(日水製薬(株)製)を用い、30℃で3日間培養したものを生理食塩水に懸濁し調製した。一方、バチルス・セレウス 1501株(日本缶詰協会から分与)を土壌エキス(畑土200gを1000mlの蒸留水に懸濁し、121℃、4時間の加熱抽出後、上澄みを濾過したもの)を含む普通寒天培地(普通寒天培地(日水製薬(株)製)35g、上記土壌エキス250ml、蒸留水750mlを混合し121℃、15分の殺菌を施したもの)を用い、35℃で1週間培養したものを生理食塩水に懸濁し調製した。
【0037】
【表4】
【0038】
結果を図7〜図12に示す。試験例1、3、5,7,9,11においては、汚染菌が調製直後から14日目まで殆ど増殖しなかった。一方、汚染菌数のみを1.0x102個/mlとなるように添加した試験例2,4,6,8,10,12においては、試験例2、4は試験例1,3とほぼ同様に汚染菌数が減少したが,試験例6,8,10,12は、試験例5,7,9,11とは対照的に、汚染菌数が調製直後から増加し始め、調製後14日目には調製時の約10〜150倍にまで増加した。つまり、試料中の乳酸菌(ラクトバチルス・カゼイ AST−8(FERM P−12704))は、汚染菌の増殖を阻害する能力を有することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例2の製品中乳酸菌生菌数と保存日数の関係
【図2】実施例2の製品中酸分と保存日数の関係
【図3】実施例3の製品中乳酸菌生菌数と保存日数の関係
【図4】実施例3の製品中酸分と保存日数の関係
【図5】実施例4の製品中乳酸菌生菌数と保存日数の関係
【図6】実施例4の製品中酸分と保存日数の関係
【図7】試験例1および試験例2の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【図8】試験例3および試験例4の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【図9】試験例5および試験例6の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【図10】試験例7および試験例8の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【図11】試験例9および試験例10の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【図12】試験例11および試験例12の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【技術分野】
【0001】
本発明は野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料およびその製造方法に関する。より具体的には、野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、乳酸菌が生菌の状態で存在し、且つ乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜/果実飲料とは、野菜/果実(野菜汁、果実汁等)を主要原料とする飲料の総称で、原料野菜/果実の種類、野菜汁、果実汁等の含有量の違いなどにより、いろいろな種類の製品となり市場で見ることができる。上述したように野菜/果実飲料は野菜汁、果実汁を主成分とするので、ショ糖、ブドウ糖、果糖などの糖質、有機酸類に加えて、野菜汁、果実汁に由来するアミノ酸、無機質などの栄養成分が適度の濃度で含まれており、このために、ある種の微生物とって格好の培地としての性質を持っていることになる。これらの微生物の繁殖の結果、製品の風味を変えたり、外観にも変化を与えたり、時には沈でん物を発生させたりする。これら、微生物の増殖を防ぎ、風味等を維持した状態での保存を可能にするために、飲料の加工途上で加熱による殺菌を実施することになるのであるが、加熱殺菌により、野菜汁、果実汁の変色、並びに加熱臭の発生などの香りの劣化が生じ、製品の風味を変え、外観にも変化を与えることになる。
【0003】
これに対し、特開昭50−018653には、長期保存可能な野菜ジュースの製法を目的に、特開昭57−138370には野菜ジュース本来の風味を損なうことなくこの加熱臭を除去する目的で、野菜ジュースに乳酸菌を添加し乳酸発酵させた後に低温殺菌をする野菜ジュースの製造法が開示されている。また、特開昭59−098672には、果汁の乳酸発酵液からなる乳酸菌飲料が、特開昭60−251867には、広範囲の果実の果汁から高濃度に乳酸菌を含む乳酸菌飲料を製造するための果汁の処理に特徴を有する乳酸菌飲料の製造法が開示されている。一方、特開2001−252012には、長期間のチルド保管後も、所望の生菌数、pHおよび風味を保持する乳酸飲料およびその製造法が、特開2001−056231には、中性付近のpHで好ましい風味を与える素材(コーヒー、メロン等)により風味付けされた調味乳発酵食品が開示されている。しかしこれらはいずれも、その製造過程において乳酸発酵を実施しているか、若しくは野菜/果実(野菜汁、果実汁等)を極めて強い殺菌条件にて処理を行っているため、野菜/果実素材本来の味・香り・色合いを保持した飲料とはなっていない。
【特許文献1】特開昭50−018653
【特許文献2】特開昭57−138370
【特許文献3】特開昭59−098672
【特許文献4】特開昭60−251867
【特許文献5】特開2001−252012
【特許文献6】特開2001−056231
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、殺菌のための加熱を軽減し、素材本来の味・香り・色合いを保持したチルド飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、下記要旨の発明が提供される。
(1)野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、
乳酸菌の生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内にあり且つ乳酸発酵しないことを特徴とするチルド飲料。
(2)野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、該飲料組成物を下記の条件で殺菌処理した後、乳酸菌をその生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内となるよう加え、乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料。
条件:前記飲料組成物がpH4.0未満である場合は、65℃で0.17分〜65℃で10分に相当する殺菌処理、また、前記飲料組成物がpH4.0以上4.6未満の場合は、65℃で0.17分〜75℃で1分に相当する殺菌処理、更に、前記飲料組成物がpH4.6以上7.0以下の場合は、65℃で0.17分〜121.1℃で0.3分に相当する殺菌処理。
(3)上記乳酸菌がラクトバチルス属のものである、(1)または(2)に記載のチルド飲料。
(4)上記乳酸菌がラクトバチルス・カゼイである、(1)または(2)に記載のチルド飲料。
(5)上記乳酸菌の生菌数が1×107〜1×108個/mlの範囲にある、(1)〜(4)のいずれかに記載のチルド飲料。
(6)乳酸発酵による生成乳酸の濃度が0.1%(乳酸換算:W/V%)未満のものである、(1)〜(5)のいずれかに記載のチルド飲料。
(7)5〜10℃の温度で保存されるものである、(1)〜(6)のいずれかに記載のチルド飲料。
(8)野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料の製造方法であって、該飲料組成物を下記の条件で殺菌処理した後、乳酸菌をその生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内となるよう加え、乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料の製造方法。
条件:前記飲料組成物がpH4.0未満である場合は、65℃で0.17分〜65℃で10分に相当する殺菌処理、また、前記飲料組成物がpH4.0以上4.6未満の場合は、65℃で0.17分〜75℃で1分に相当する殺菌処理、更に、前記飲料組成物がpH4.6以上7.0以下の場合は、65℃で0.17分〜121.1℃で0.3分に相当する殺菌処理。
(9)上記乳酸菌はプロテアーゼ透明乳培地により培養されたものである、(8)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の効果は、殺菌のための加熱が軽減されたことにより、素材本来の味・香り・色合いを保持したチルド飲料が提供できることにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<1>本発明の野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料(以下、本発明チルド飲料ともいう)
【0008】
<1−1>本発明チルド飲料に使用する野菜汁及び/又は果実汁(以下、飲料原料ともいう)
本発明チルド飲料に使用する飲料原料としては、グレープフルーツ、オレンジ、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、キウイ、グアバ、マンゴー、アセロラ、ブルーベリー、ザクロ、桃、洋なし、パパイヤ、メロン、スイカ、バナナ、イチジク等の果実汁、及び/又はトマト、赤ピーマン、ニンジン、キャベツ、ほうれん草、ケール、プチヴェール(商標:ケールと芽キャベツの交配種)等の野菜汁が挙げられる。また、当該飲料原料は、その野菜汁及び/又は果実汁のpH範囲により、pH4.0未満のグループである、グレープフルーツ、オレンジ、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、キウイ、グアバ、マ
ンゴー、アセロラ、ブルーベリー、ザクロ等、pH4.0以上pH4.6未満のグループであるトマト、赤ピーマン、桃、洋なし、パパイヤ等、pH4.6以上pH7.0以下のグループであるニンジン、キャベツ、ほうれん草、ケール、プチヴェール(商標:ケールと芽キャベツの交配種)、メロン、スイカ、バナナ、イチジク等に分類することも可能である。
【0009】
本発明に用いる飲料原料のチルド飲料全体に対する割合は特に制限はないが、飲料原料がストレート換算で50%以上100%以下で含まれることが好ましく、90%以上100%以下で含まれることが更に好ましい。なお、ストレート換算で飲料原料100%という値は、濃縮液を用いれば可能である。従って、本飲料原料はストレート液であっても濃縮液であってもかまわない。ここでいう、ストレート液とは、非濃縮液のことを意味し、濃縮液とは、特に濃縮の方法に限定されることはないが、原料(果物や野菜)から絞ったそのままの果汁、野菜汁(ストレート果汁、ストレート野菜汁)を、逆浸透濃縮や前進凍結濃縮のように低加熱濃縮したものであることが好ましい。また、飲料原料は1種単独でも使用でき、2種以上の併用も可能である。なお、本明細書で、特に指示がない限りにおいては、「%」は質量/体積(W/V)%を示す。
本発明の野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成からなるチルド飲料において、“野菜汁及び/又は果実汁をベースとする”とは、当該野菜汁及び/又は果実汁を主要原料としていることを意味する。
【0010】
<2>本発明に利用する乳酸菌
本発明のチルド飲料は、野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成からなるチルド飲料であって、該飲料組成物を殺菌後、乳酸菌を生菌の状態で添加し、且つ乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料である。本発明のチルド飲料に添加する乳酸菌としては、発酵食品などに広く利用されている乳酸菌を用いることが可能である。例えば、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エノコッカス属(Oenococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)が挙げられる。これら乳酸菌のうちラクトバチルス属が好ましく、摂取した場合、生きて腸に届くプロバイオティクス菌といわれるラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)が特に好ましい。さらに具体的には、平成4年1月10日に通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター)に微工研菌寄第12704号(FERM P−12704)として寄託されているラクトバチルス・カゼイ AST−8(FERM P−12704)が更に好ましい。
【0011】
<2−1>本発明に利用する乳酸菌の本発明チルド飲料への添加方法
本発明のチルド飲料は、添加された乳酸菌が生菌の状態で存在していることを特徴とする。本発明に利用する乳酸菌の本発明チルド飲料への添加形態であるが、例えば、(1):全粉乳、脱脂粉乳、生乳等の乳培地で培養して得られる乳酸菌培養液をそのまま本発明チルド飲料へ添加する方法。(2):上記培養液から乳酸菌を遠心分離や膜分離等で集菌した集菌物を本発明チルド飲料へ添加する方法。(3):上記培養液を乾燥させた培養液乾燥物または上記集菌物を乾燥させた乾燥菌体を本発明チルド飲料へ添加する方法。(4):全粉乳、脱脂粉乳、生乳等の乳をプロテアーゼ処理した透明乳培地(以下、プロテアーゼ透明乳培地ともいう)で培養して得られる乳酸菌培養液(以下、透明乳発酵液ともいう)をそのまま本発明チルド飲料へ添加する方法。(5):(4)で得られる培養液から乳酸菌を遠心分離や膜分離等で集菌した集菌物を本発明チルド飲料へ添加する方法。(6):(4)で得られる培養液を乾燥させた培養液乾燥物または(5)で得られる集菌物を乾燥させた乾燥菌体を本発明チルド飲料へ添加する方法。が挙げられる。味、香り、色調への影響も少ないこと及び集菌する工程を有しない簡便な調製が可能なことより、上記(
4)の方法で得られる乳酸菌培養液をそのまま本発明チルド飲料へ添加する方法が好ましい。ここで、上記乳酸菌の培地、培養方法等において、格別の制限はなく、公知の乳酸菌用培地、培養条件で培養することが可能であり、また乳酸菌の集菌方法、培養液または集菌物の乾燥法においても格別の制限はなく公知の方法を用いることが可能である。
【0012】
<2−2>本発明チルド飲料へ添加する乳酸菌の生菌数および添加直後の本発明チルド飲料に含まれる乳酸菌の生菌数
本発明チルド飲料へ添加する乳酸菌の生菌数は、1×107〜1×1011個/mlの範囲にあれば好ましく、1×109〜1×1011個/mlの範囲にあればさらに好ましい。
また、添加直後の本発明チルド飲料に含まれる乳酸菌の生菌数は、1×106〜1×109個/mlの範囲にあれば好ましく、1×107〜1×108個/mlの範囲であればさらに好ましい。尚、生菌数の測定は、例えば、乳及び乳製品の成分規格に関する省令の乳酸菌数の測定法により測定することが可能である。
【0013】
<3>本発明のチルド飲料の製造方法
本発明のチルド飲料の製造方法は、飲料原料をベースとする飲料組成物を殺菌後冷却し、乳酸菌を上記方法にて添加する。その後、完成した飲料を容器等に充填、密封し、乳酸発酵しない条件まで冷却して、保存するというものである。すなわち、本製造方法は、飲料原料をベースとする飲料組成物を、殺菌の強度を減じた条件で殺菌後冷却し、乳酸菌を添加、乳酸発酵しない条件下まで冷却し保存(冷蔵)することで、飲料中での汚染菌の増殖を防ぎ且つ素材本来の味、香り、色合いを保持したチルド飲料を製造するというものである。
【0014】
<3−1>殺菌
加熱殺菌は、野菜汁、果実汁の着色、並びに加熱臭を発生させ、製品の風味を変え、外観にも変化を与えることになる。本発明のチルド飲料は、素材本来の味、香り、色合いを保持した状態での提供を目的とすることより、本発明における飲料原料をベースとする飲料組成物の殺菌条件は、飲料原料をベースとする飲料組成物のpHによって変化させることが好ましく、例えば、飲料原料をベースとする飲料組成物が4.0未満の場合は、65℃で0.17分〜65℃で10分に相当する殺菌条件で殺菌処理する。また、飲料原料をベースとする飲料組成物がpH4.0以上4.6未満の場合は、65℃で0.17分〜75℃で1分に相当する殺菌条件で殺菌処理する。さらに、飲料原料をベースとする飲料組成物がpH4.6以上7.0以下の場合は、65℃で0.17分〜121.1℃で0.3分に相当する殺菌条件で殺菌処理する。ここで、「相当する殺菌条件」とは、殺菌温度がより低温であっても、また、より高温であってもよく、温度と時間で表される殺菌の強度が同等である殺菌条件をいう。殺菌方法は、格別の制限はなく、バッチ殺菌法、連続殺菌法等の公知の方法を用いることが可能である。
なお、相当する殺菌条件へは次式で変換可能である。
【数1】
【0015】
<3−2>殺菌後の冷却
殺菌後は、添加する乳酸菌が死滅しない程度、例えば5℃〜40℃程度まで冷却することが好ましい。また、冷却方法は、格別の制限はなく、プレート冷却器等の公知の冷却方法を用いることが可能である。
【0016】
<3−3>乳酸菌添加
<2−1>に記載の方法にて乳酸菌を殺菌冷却後の飲料原料をベースとする飲料組成物に添加する。また、添加する乳酸菌の生菌数は、1×107〜1×1011個/mlの範囲にあれば好ましく、1×109〜1×1011個/mlの範囲にあればさらに好ましい。さらに、添加直後の本発明チルド飲料に含まれる乳酸菌の生菌数は、1×106〜1×109個/mlの範囲にあれば好ましく、1×107〜1×108個/mlの範囲であればさらに好ましい。
【0017】
<3−4>充填、密封、保存
乳酸菌を上記方法にて添加後、容器等に充填、密封し、更に乳酸発酵をしない条件下まで冷却して保存する。飲料の充填、密封には格別の制限はなく、公知の方法を用いることが可能である。また、本発明チルド飲料を保存する期間は、汚染菌の増殖を防ぎ、風味を維持するために、乳酸発酵をしない条件下まで冷却しておくことが好ましい。ここで、「乳酸発酵をしない条件」とは、乳酸発酵を全くしないか、したとしても通常の保存期間、例えば2週間で、乳酸発酵による生成乳酸の濃度が0.1%(乳酸換算:W/V%)未満となる条件をいう。具体的には0℃〜15℃の温度が好ましい。雑菌汚染防止効果の観点を加味すると、5℃〜10℃の温度がより好ましい。また、保存期間としては、添加乳酸菌数が維持され、汚染菌の抑制が可能である期間は保存が可能である。具体的には、本発明のチルド飲料は2週間程度の保存が可能である。一方、保存方法は温度が上記の条件に維持される限りにおいては、格別の制限はなく、公知の方法を用いることが可能である。
【0018】
<4>各種添加剤の添加
本発明の野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料において、該飲料組成物は、その他の各種添加剤等を任意に添加することも可能である。ここで利用できる添加剤としては、飲料に添加配合できることが知られている各種のものが挙げられる。例えば、ハーブ、ショウガ、シナモン等の香辛料、オレンジフレーバー、リンゴフレーバー等の香料、シュークロース、グルコース、フラクトース等の糖類、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖等の各種オリゴ糖類、ステビア、甘茶抽出物、甘草抽出物等の甘味料、ポリデキストロース等の食物繊維類、ビタミンC等の各種ビタミン類、イソロイシン、バリン等のアミノ酸類、炭酸カルシウム、塩化第二鉄等の無機塩類、水、液糖等の水溶液を例示することができる。これらの配合量は特に限定されるものではないが、通常0.1%〜5%(W/V)程度の範囲から選ぶことが可能である。
【0019】
以下、本発明を実施例により具体的に詳述するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0020】
<実施例1>本発明に利用する乳酸菌の調製
本発明に利用する乳酸菌は、以下のように調製した。
<1>透明乳発酵液の調整法
脱脂粉乳8%水溶液(W/V)を炭酸カリウムでpH8.0に調製した。この調製液に、プロテアーゼS「アマノ」G(天野エンザイム株式会社製)を0.05%(W/V)添加し、70℃で4時間反応させる。反応終了後、95℃で20分加熱して酵素失活及び殺菌を行った。このプロテアーゼ透明乳培地にラクトバチルス・カゼイ AST−8(FERM P−12704)を1x107個/mlとなるように接種し、30℃で48時間発酵させた。得られた透明乳酸発酵液の生菌数は1.5x109個/mlであった。尚、生菌数の測定は乳等省令の乳酸菌数測定法に準じ、B.C.P.加プレートカウント培地を用いて測定した。
<2>集菌物の調整法
上記の方法により得られた透明乳酸発酵液を、遠心分離機(株式会社コクサイ製 H−
103N)を用いて、3,000rpm 15分の条件で遠心分離し、沈殿した菌体を回収し、集菌物を得た。なお、得られた集菌物の生菌数は、2.0×1010個/gであった。
<3>乾燥菌体の調整法
上記の方法により得られた透明乳酸発酵液を液体窒素で急速凍結した。急速凍結した透明乳酸菌発酵液を凍結乾燥器(LABCONCO社製FD−10)を用いて凍結乾燥させ、乾燥菌体を得た。なお、得られた集菌物の生菌数は、1.0×1011個/gであった。
【0021】
<実施例2〜4および比較例1〜3>本発明のチルド飲料の製造およびその評価
実施例1で調製した乳酸菌および下記に示す条件で調製した飲料原料を用いて本発明のチルド飲料を製造した。
【0022】
<実施例2>
オレンジ濃縮果汁(カーギル社製 RI 65%)を蒸留水で希釈した、オレンジ果汁(RI 12%)(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH3.8(堀場製作所製 pHメーター F−12)を65℃で10分間殺菌した。この加熱殺菌したオレンジ果汁を10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、本発明チルド飲料製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。一方、比較例1は実施例2と同様に調製したオレンジ果汁(RI 12%)(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH3.8(堀場製作所製 pHメーター F−12)を105℃で1分間殺菌した。この加熱殺菌したオレンジ果汁を10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、比較例1製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。本実施例2の製品を14日間チルド保管(5℃、10℃)し、経時的に製品中の乳酸菌生菌数および酸分(乳酸換算(W/V%))を測定し、汚染菌の増殖確認を実施した。また、実施例2および比較例2の製品について、容器に充填直後の色調評価(L値、a値、b値,a/b値)および14日間チルド保管した製品についての官能評価を実施した。
【0023】
透明乳発酵液および製品中の乳酸菌生菌数は実施例1の方法に従って実施した。また、汚染菌の増殖確認は以下の方法に従って実施した。
リステリア菌:Oxford リステリア選択培地を用い、30℃ 3日間培養後、計測した。
Oxford リステリア選択培地:ペプトン23.0g、デンプン1.0g、塩化ナトリウム5.0g、 クエン酸鉄アンモニウム0.5g、エスクリン1.0g、塩化リチウム15.0g 寒天10.0g、シクロヘキシミド0.4g、硫酸コリスチン0.02g、 塩酸アクリフラビン0.005g、セフォテタン0.002g、フォスフォマイシン0.01g を蒸留水に溶解し(総量1L)、121.1℃ 15分で殺菌する。
バチルス・セレウス菌:NGKG培地を用い、35℃ 1日間培養後、計測した。
NGKG培地:ペプトン1.0g、酵母エキス0.5g、塩化ナトリウム4.0g、グリシン3.0g、 硫酸ポリミキシン5万単位、フェノールレッド0.025g、寒天18.0g を蒸留水に溶解し(総量1L)(pH6.8)を121.1℃ 15分で殺菌する。
【0024】
製品中の酸分(乳酸換算(W/V%)は0.1N水酸化ナトリウムを用いた中和滴定により測定した。
【0025】
色調評価(L値、a値、b値、a/b値)は以下の方法で実施した。すなわち、実施例
2および比較例1とも、容器に充填後0日目のサンプルのL値、a値、b値を分光測色型測色計(CM−3500d:ミノルタ社製)にて、本機器の取扱説明書の記載に従い計測した。
【0026】
官能評価は、上記実施例の飲料と比較例の飲料とを2点比較し、男性20名及び女性20名(合計40名)の官能評価員に、どちらが好ましいかを選択させ、各例の飲料を好ましいと選択した人数及びその有意検定結果としての危険率を求めた。なお、危険率は、統計的仮説検定で第一種の過誤をおかす確率をいう。
【0027】
実施例3: 洗浄した完熟トマトを破砕し、直ちに85℃達温まで加熱して酵素失活した後、開口径2mmΦのパルパーで搾汁したトマトジュース RI 6%(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH4.4(堀場製作所製 pHメーター F−12)を75℃で1分間殺菌した。この加熱殺菌したトマトジュースを10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、本発明チルド飲料製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。比較例2は実施例3と同様に搾汁したトマトジュース
RI 6%(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH4.4(堀場製作所製 pHメーター F−12)を121.1℃で45秒殺菌した。この加熱殺菌したトマトジュースを10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、比較例2製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。なお、各種評価は実施例2、比較例1と同様に実施した。
【0028】
実施例4: 洗浄したメロンを破砕し、直ちに90℃達温まで加熱して酵素失活した後、開口径1.5mmΦのパルパー及び開口径0.5mmのフィニッシャーで搾汁したメロン果汁、RI 12%(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH5.1(堀場製作所製 pHメーター F−12)を121.1℃で10秒間殺菌した。この加熱殺菌したメロン果汁を10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、本発明チルド飲料製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。比較例3は実施例4と同様に搾汁したメロン果汁、RI 12%(株式会社アタゴ製 アッベ式屈折計 NAR−3T)、pH5.1(堀場製作所製 pHメーター F−12)を121.1℃で3.1分間殺菌した。この加熱殺菌したメロンジュースを10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を無菌的に1%(V/V)添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、比較例3製品を調製した。添加された透明乳発酵液中の乳酸菌生菌数は1.5x109個/mlであり、調製された製品中の乳酸菌生菌数は1.5x107個/mlであった。なお、各種評価は実施例2、比較例1と同様に実施した。
【0029】
<実施例2〜4および比較例1〜3の結果>
実施例2〜4および比較例1〜3の結果を表1、表2、表3に纏めた。酸度上昇については、充填後0日目と充填後14日目の酸分(乳酸換算、W/V%)を比較し、酸分の上昇が0.1%(乳酸換算:W/V%)未満の場合を「酸度上昇なし」とした。乳酸菌の残存性は、充填後0日目と充填後14日目の乳酸菌の生菌数を比較し、充填後0日目に対し30%以上の生菌数を維持している場合を○とした。汚染菌の増殖については、14日目の汚染菌数が調整時の10倍未満の場合を「汚染菌の増殖なし」とし、調製時の10倍以上の場合を「汚染菌の増殖あり」とした。さらに、実施例2の乳酸菌の生菌数と保存日数の関係を図1に酸分と保存日数の関係を図2に、実施例3の乳酸菌の生菌数と保存日数の
関係を図3に酸分と保存日数の関係を図4に、実施例4の乳酸菌の生菌数と保存日数の関係を図5に酸分と保存日数の関係を図6に示す。図2,4,6に示されるように、実施例2,実施例3、実施例4のいずれの温度(5℃、10℃)での保存においても、酸分の上昇は0.05%(乳酸換算、W/V%)以下であり、乳酸発酵をしていないことが示された。また、表3の色調評価からは、実施例2に対し比較例1は暗く、赤褐色がかっていることが、実施例3に対し比較例2は暗く、茶褐色がかっていることが、実施例4に対し比較例3は暗く、黄褐色がかっていることが示された。これらの結果より、本発明チルド飲料は、殺菌強度を減じた条件で殺菌し、乳酸菌を添加後、乳酸発酵しない条件下まで冷却し保存(冷蔵)することで、飲料中での汚染菌の増殖を防ぎ且つ素材本来の味、香り、色合いを保持できることが示された。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
<試験例1〜12>乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
試験例1〜4:
実施例2と同様に搾汁したオレンジ果汁(RI 12%、pH3.8)を105℃で1分間殺菌した。この加熱殺菌したオレンジ果汁を10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を乳酸菌生菌数が1.0x106個/mlおよび表4に示す汚染菌の菌数が1.0x102個/mlとなるように添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、試験例1および2試料を調製した。その後、当該乳酸菌および汚染菌の菌数の変化を14日間観察した。試験例3および4試料は、試験例1および2において、表4に示す汚染菌のみを1.0x102個/mlとなるように添加したものである。なお、製品中の乳酸菌生菌数および汚染菌の菌数は実施例1、2の方法に従って計測した。
【0034】
試験例5〜8:
実施例3と同様に搾汁したトマトジュース(RI 6%、pH4.4)を121.1℃で45秒間殺菌した。この加熱殺菌したトマトジュースを10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を乳酸菌生菌数が1.0x106個/mlおよび表4に示す汚染菌数が1.0x102個/mlとなるように添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、試験例5および6試料を調製した。その後、当該乳酸菌および汚染菌の菌数の変化を14日間観察した。試験例7および8試料は、試験例5および6において、表4に示す汚染菌のみを1.0x102個/mlとなるように添加したものである。なお、製品中の乳酸菌生菌数および汚染菌の菌数は実施例1、2の方法に従って計測した。
【0035】
試験例9〜12:
通常の方法で搾汁したメロン果汁(RI 12%、pH5.1)を121.1℃で3.1分間殺菌した。この加熱殺菌したメロン果汁を10℃まで冷却後、実施例1<1>で調製した透明乳発酵液を乳酸菌生菌数が1.0x106個/mlおよび表4に示す汚染菌数が1.0x102個/mlとなるように添加し、容器に充填後、5〜10℃に冷却して、試験例9および10試料を調製した。その後、当該乳酸菌および汚染菌の菌数の変化を14日間観察した。試験例11および12試料は、試験例9および10において、表4に示す汚染菌のみを1.0x102個/mlとなるように添加したものである。なお、製品中の乳酸菌生菌数および汚染菌の菌数は実施例1、2の方法に従って計測した。
【0036】
<添加する汚染菌およびのその調製>
試験例1〜12において使用する汚染菌を表4に示す。また、リステリア・モノサイトゲネス ATCC7644は普通寒天培地(日水製薬(株)製)を用い、30℃で3日間培養したものを生理食塩水に懸濁し調製した。一方、バチルス・セレウス 1501株(日本缶詰協会から分与)を土壌エキス(畑土200gを1000mlの蒸留水に懸濁し、121℃、4時間の加熱抽出後、上澄みを濾過したもの)を含む普通寒天培地(普通寒天培地(日水製薬(株)製)35g、上記土壌エキス250ml、蒸留水750mlを混合し121℃、15分の殺菌を施したもの)を用い、35℃で1週間培養したものを生理食塩水に懸濁し調製した。
【0037】
【表4】
【0038】
結果を図7〜図12に示す。試験例1、3、5,7,9,11においては、汚染菌が調製直後から14日目まで殆ど増殖しなかった。一方、汚染菌数のみを1.0x102個/mlとなるように添加した試験例2,4,6,8,10,12においては、試験例2、4は試験例1,3とほぼ同様に汚染菌数が減少したが,試験例6,8,10,12は、試験例5,7,9,11とは対照的に、汚染菌数が調製直後から増加し始め、調製後14日目には調製時の約10〜150倍にまで増加した。つまり、試料中の乳酸菌(ラクトバチルス・カゼイ AST−8(FERM P−12704))は、汚染菌の増殖を阻害する能力を有することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例2の製品中乳酸菌生菌数と保存日数の関係
【図2】実施例2の製品中酸分と保存日数の関係
【図3】実施例3の製品中乳酸菌生菌数と保存日数の関係
【図4】実施例3の製品中酸分と保存日数の関係
【図5】実施例4の製品中乳酸菌生菌数と保存日数の関係
【図6】実施例4の製品中酸分と保存日数の関係
【図7】試験例1および試験例2の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【図8】試験例3および試験例4の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【図9】試験例5および試験例6の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【図10】試験例7および試験例8の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【図11】試験例9および試験例10の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【図12】試験例11および試験例12の乳酸菌による添加した汚染菌の増殖抑制活性
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、乳酸菌の生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内にあり且つ乳酸発酵しないことを特徴とするチルド飲料。
【請求項2】
野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、該飲料組成物を下記の条件で殺菌処理した後、乳酸菌をその生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内となるよう加え、乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料。
条件:前記飲料組成物がpH4.0未満である場合は、65℃で0.17分〜65℃で10分に相当する殺菌処理、また、前記飲料組成物がpH4.0以上4.6未満の場合は、65℃で0.17分〜75℃で1分に相当する殺菌処理、更に、前記飲料組成物がpH4.6以上7.0以下の場合は、65℃で0.17分〜121.1℃で0.3分に相当する殺菌処理。
【請求項3】
前記乳酸菌がラクトバチルス属のものである、請求項1または2に記載のチルド飲料。
【請求項4】
前記乳酸菌がラクトバチルス・カゼイである、請求項1または2に記載のチルド飲料。
【請求項5】
前記乳酸菌の生菌数が1×107〜1×108個/mlの範囲にある、請求項1〜4のいずれか一項に記載のチルド飲料。
【請求項6】
乳酸発酵による生成乳酸の濃度が0.1%(乳酸換算:W/V%)未満のものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のチルド飲料。
【請求項7】
5〜10℃の温度で保存されるものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のチルド飲料。
【請求項8】
野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料の製造方法であって、該飲料組成物を下記の条件で殺菌処理した後、乳酸菌をその生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内となるよう加え、乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料の製造方法。
条件:前記飲料組成物がpH4.0未満である場合は、65℃で0.17分〜65℃で10分に相当する殺菌処理、また、前記飲料組成物がpH4.0以上4.6未満の場合は、65℃で0.17分〜75℃で1分に相当する殺菌処理、更に、前記飲料組成物がpH4.6以上7.0以下の場合は、65℃で0.17分〜121.1℃で0.3分に相当する殺菌処理。
【請求項9】
前記乳酸菌はプロテアーゼ透明乳培地により培養されたものである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項1】
野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、乳酸菌の生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内にあり且つ乳酸発酵しないことを特徴とするチルド飲料。
【請求項2】
野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料であって、該飲料組成物を下記の条件で殺菌処理した後、乳酸菌をその生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内となるよう加え、乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料。
条件:前記飲料組成物がpH4.0未満である場合は、65℃で0.17分〜65℃で10分に相当する殺菌処理、また、前記飲料組成物がpH4.0以上4.6未満の場合は、65℃で0.17分〜75℃で1分に相当する殺菌処理、更に、前記飲料組成物がpH4.6以上7.0以下の場合は、65℃で0.17分〜121.1℃で0.3分に相当する殺菌処理。
【請求項3】
前記乳酸菌がラクトバチルス属のものである、請求項1または2に記載のチルド飲料。
【請求項4】
前記乳酸菌がラクトバチルス・カゼイである、請求項1または2に記載のチルド飲料。
【請求項5】
前記乳酸菌の生菌数が1×107〜1×108個/mlの範囲にある、請求項1〜4のいずれか一項に記載のチルド飲料。
【請求項6】
乳酸発酵による生成乳酸の濃度が0.1%(乳酸換算:W/V%)未満のものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のチルド飲料。
【請求項7】
5〜10℃の温度で保存されるものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のチルド飲料。
【請求項8】
野菜汁及び/又は果実汁をベースとする飲料組成物からなるチルド飲料の製造方法であって、該飲料組成物を下記の条件で殺菌処理した後、乳酸菌をその生菌数が1×106〜1×109個/mlの範囲内となるよう加え、乳酸発酵しない条件まで冷却することを特徴とするチルド飲料の製造方法。
条件:前記飲料組成物がpH4.0未満である場合は、65℃で0.17分〜65℃で10分に相当する殺菌処理、また、前記飲料組成物がpH4.0以上4.6未満の場合は、65℃で0.17分〜75℃で1分に相当する殺菌処理、更に、前記飲料組成物がpH4.6以上7.0以下の場合は、65℃で0.17分〜121.1℃で0.3分に相当する殺菌処理。
【請求項9】
前記乳酸菌はプロテアーゼ透明乳培地により培養されたものである、請求項8に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−25620(P2006−25620A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205139(P2004−205139)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000104113)カゴメ株式会社 (50)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000104113)カゴメ株式会社 (50)
【Fターム(参考)】
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