説明

チーズ様食品

【課題】 カット加工特性が良好で、ナチュラルチーズの食感を持ち、安価で低カロリーのチーズ様食品及びそれを含んでなる食品を提供すること。
【解決手段】 寒天、ゼラチンを含有するチーズ様食品であって、寒天の含有量はチーズ様食品全体中0.1〜4重量%であり、ゼラチンの含有量はチーズ様食品全体中4〜15重量%となるようにチーズ様食品を作製すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒天及びゼラチンを必須成分として用いたチーズ様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
チーズは、日本でのその消費量の増加から考えても人気のある食品であり、一方でチーズは高価な為、チーズ添加量を減らした安価なチーズ様食品のニーズが高まっている。チーズは通常、シュレッドやダイスやスライス状にカット加工し利用することが多い。しかしチーズ様食品の課題としては、ゴーダやチェダーチーズの様な硬質・超硬質ナチュラルチーズに比べてカットが出来なかったり、カット後に再結着や変形をしやすく、カット加工特性は大幅に低下する。これは、加熱溶融する際に添加する溶融塩によりカゼインの構造が変化することや、ナチュラルチーズに比べ高水分であることが原因と思われる。加工特性の改良としては、例えば、ローカストビーンガム、グアガム、キサンタンガム、加工澱粉、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が使用されてきた。しかし、これらの物質は、加工特性の改良は殆ど期待できないものであった。また、寒天を0.05〜1.5重量%添加することでカット加工特性の改良をする方法(特許文献1)があるが、チーズ分が少ないチーズ様食品では添加量が充分ではなく、カット出来なかったり、カット後に変形や再結着を起こす。また例え、寒天の量だけを増やしてもナチュラルチーズの口解けや食感とは異なるものとなる。また、チーズ様食品は、チーズ添加量が少ないものの、油脂を多く含むとカロリーが高くなり、カロリー摂取量を気にする人が増えた最近では、避けられる傾向にある。さらに最近では、乳製品や油脂の価格が高騰しており、油脂や蛋白質の使用量が少なく、ナチュラルチーズの食感を持ち、カット加工特性の良好なチーズ様食品が望まれている。
【特許文献1】特開平8−203166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、カット加工特性が良好で、ナチュラルチーズの食感を持ち、安価で低カロリーのチーズ様食品及びそれを含んでなる食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定量の油脂、蛋白質、寒天、ゼラチンを含有するチーズ様食品は、カット加工特性が良く、ナチュラルチーズの食感が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明の第一は、寒天及びゼラチンを含有するチーズ様食品であって、寒天の含有量はチーズ様食品全体中0.1〜4重量%であり、ゼラチンの含有量はチーズ様食品全体中4〜15重量%であることを特徴とするチーズ様食品に関する。好ましい実施態様は、チーズ様食品全体中、油脂を0.05〜50重量%含有し、蛋白質を0.1〜15重量%含有する上記記載のチーズ様食品に関する。より好ましくは、油脂、蛋白質、寒天、ゼラチン及び水を加熱混合し、乳化して得られる上記記載のチーズ様食品に関する。本発明の第二は、上記記載のチーズ様食品を含有する食品に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法に従えば、カット加工特性が良好で、ナチュラルチーズの食感を持ち、安価で低カロリーのチーズ様食品及びそれを含んでなる食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明のチーズ様食品とは、非熟成チーズ、熟成チーズ、プロセスチーズ、チーズフードなど、各種のチーズやその加工品に類似した食品のことであり、寒天及びゼラチンを必須成分として特定量含有し、これらを加熱溶解してから乳化したものである。なお、本発明の効果を損なわない限り、油脂や蛋白質、さらには他の原料として、チーズ、澱粉、溶融塩、他の増粘剤を組み合わせて加えてもよい。また、原材料中に水を含むものが無い場合は、水を添加することが好ましい。
【0008】
本発明においてチーズとは、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和26年12月27日、厚生省令第52号)及びナチュラルチーズ、プロセスチーズ及びチーズフードの表示に関する公正競争規約(チーズ規約)に定められるところのナチュラルチーズ及びプロセスチーズのことである。
【0009】
本発明のチーズ様食品に、前記ナチュラルチーズを用いる場合は、その種類は特に限定されず、フレッシュタイプ、白カビタイプ、青カビタイプ、シェーブルタイプ、ウォッシュタイプ、硬質・超硬質タイプを用いることが出来る。具体的にはクリームチーズ、マスカルポーネ、クアルク、カマンベール、ブリー、ゴルゴンゾーラ、スティルトン、ピラミッド、ピコドン、ポンレヴェック、ゴーダ、チェダー、コンテ、パルミジャーノレジャーノ等が例示でき、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いる事が出来る。特に、水分の高いフレッシュタイプのナチュラルチーズを用いた場合に本発明の効果が顕著に見られるので好ましい。そしてまた、該ナチュラルチーズを用いてなるプロセスチーズも用いることができる。それらチーズの含有量は、チーズ食品全体中90重量%以下が好ましい。チーズの含有量が90重量%より多いと乳化に必要な溶融塩や水が不足して乳化が出来ない場合がある。
【0010】
本発明の寒天とは、食用に用いられる物であれば特に限定はなく、その含有量は、チーズ様食品全体中0.1〜4重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜2.0重量%である。0.1重量%より少ないと本発明の効果が得られない場合がある。また、4重量%よりも多いと、硬すぎて加工できず、食感もチーズの食感に程遠い場合がある。
【0011】
本発明のゼラチンとは、食用に用いられる物であれば特に限定はなく、その含有量は、チーズ様食品全体中4〜15重量%が好ましく、より好ましくは5〜10重量%である。4重量%より少ないと本発明の効果が得られない場合がある。また、15重量%よりも多いと、硬くて加工できない場合がある。
【0012】
本発明において油脂は必要に応じて用いられ、通常食用として使用される物であれば特に限定されないが、植物性油脂、動物性油脂、食用精製加工油脂などを例示することが出来、具体的にはコーン油、大豆油、パーム油、あまに油、桐油、サフラワー油、かや油、ひまわり油、綿実油、菜種油、辛子油、ごま油、落花生油、オリーブ油、ヤシ油等の植物油脂や、乳脂、ラード、魚油、鯨油、牛脂、豚脂、羊脂等の動物性油脂、及びそれらの硬化油、エステル交換油、分別油等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。チーズの風味を考えると大豆油、菜種油、パーム油、乳脂が好ましい。油脂の使用量としては、チーズ様食品全体中50重量%以下が好ましく、0.05〜50重量%がより好ましく、さらに好ましくは15〜40重量%である。使用量が50重量%よりも多いと、乳化が出来なく油分離する場合がある。
【0013】
本発明において蛋白質は必要に応じて用いられ、通常食用として使用される物であれば特に限定されないが、例えばカゼイン、ホエー等の乳蛋白質や大豆蛋白質、魚肉蛋白質が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。蛋白質の使用量としては、チーズ様食品全体中15重量%以下が好ましく、0.1〜15重量%がより好ましく、さらに好ましくは0.5〜9重量%である。使用量が15重量%よりも多いと、硬く生産出来ない場合がある。蛋白質は、油脂を使用する場合には特に必要で、油脂量が多い程、蛋白質の使用量も上記範囲で多い方が好ましい。
【0014】
本発明において水は、原材料中に水分を含むものが無い場合は、水分調整の目的で添加することが好ましく、その場合の使用量は、チーズ食品全体中の水分量が80重量%以下となるように調整することが好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。水分量が80重量%より多いと、乳化後離水する場合がある。
【0015】
本発明に用いられる澱粉とは、通常食用として使用される物であれば特に限定されないが、例として馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、サゴ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、豆澱粉等が挙げられる。またそれらに由来する各種化工澱粉を用いても良い。
【0016】
本発明において任意成分として用いられる溶融塩は、乳化の目的で添加しても良く、プロセスチーズやチーズフードの製造において通常使用されるものであれば特に限定はなく、各種リン酸塩、例えばモノ、ジ、トリ、ポリリン酸ナトリウム、モノリン酸カルシウム、モノリン酸カリウムの他、クエン酸ナトリウム等を例として挙げることができる。その使用量はチーズ食品全体中5重量%以下が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましい。5重量%を超えると乳化補助剤として過剰量であり、溶融塩の結晶物が出来て、風味も損ねる場合がある。
【0017】
本発明において任意成分として用いられる増粘剤は、離水防止や硬くする目的で添加しても良く、カラギナン、アルギン酸などの海草抽出物、ローカストビーンガム、タラガム、グアガム、タマリンド種子多糖類、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、大豆タンパク質、小麦タンパク質などの植物系天然高分子物質、キサンタンガム、カードラン、ジェランガムなどの微生物産生天然高分子物質、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウムなど海草抽出物加工品が挙げられる。
【0018】
本発明のチーズ様食品は、加工特性が改良されているが、該特性は、チーズカッターによってシュレッドやダイス状にカット出来、再結着や変形しない性質を言う。
【0019】
本発明のチーズ様食品の製造方法は、特に限定はないが以下に例示する。まず、油脂、蛋白質、寒天、ゼラチン、水など全ての材料をそれぞれ所定量混合し、加熱しながらフードカッターなどを用いて1500〜3000rpmで撹拌し、75〜100℃に到達したら、その後5〜15℃まで冷却を行う事でチーズ様食品が得られる。上記における冷却の方法は、水冷または空冷で行う。得られたチーズ様食品は殺菌を施すことが好ましいが、一般に食品で用いられる方法であれば特に限定は無く、75〜90℃で1〜10分間の加熱を行うことが好ましい。
【0020】
本発明のチーズ様食品は、チーズと同様の使い方ができ、パンや菓子、ビザのトッピング等の用途に用いられる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0022】
<ゴム強度の評価方法>
実施例、比較例で得られたチーズ様食品を10℃に冷却し、ゴム硬度計(高分子計器株式会社社製「アスカーゴム硬度計C型」)にて測定を行なった。ゴム硬度計での値が50以上であれば、チーズ加工に適しているといえる。
【0023】
<再結着率の評価方法>
実施例、比較例で得られたチーズ様食品を8mmダイス状にカットし、セルロース濃度が0.5重量%になるようにセルロースを添加して、ビニール袋内で振り、10℃で120時間放置した後、目視で結着が全くないものを0%として、再結着の度合いを再結着率で表すことで評価した。
【0024】
<官能評価方法>
実施例、比較例で得られたチーズ様食品を熟練した10名のパネラーに食べてもらい、チーズの食感に近いかどうかを評価してもらい、結果を集約した。その際の評価基準は以下の通りである。○:チーズの食感、×:チーズの食感と異なる、△:どちらとも言えない。
【0025】
(実施例1)
表2に記載の原材料を用い、表1の配合表に従って、寒天0.9重量%、ゼラチン6.5重量%、パーム油35重量%、脱脂粉乳8重量%、タマリンド0.3重量%、ポリリン酸ナトリウム0.3重量%、水47.4重量%、食塩1.4重量%、香料0.2重量%を全て混合し、1500〜3000rpmで撹拌しながら、85℃まで10℃/分で加熱を行った後、10℃まで冷蔵庫にて冷却を行う事でチーズ様食品を得た。このチーズ様食品のゴム硬度は、65と基準値以上であった。また、官能検査では、チーズの食感であると評価できた。また、再結着率は15%であった。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
(実施例2)
表2に記載の原材料を用い、表1の配合表に従って、寒天0.1重量%、ゼラチン15重量%、脱脂粉乳10重量%、ローカストビーンガム0.3重量%、ポリリン酸ナトリウム0.2重量%、水72.8重量%、食塩1.4重量%、香料0.2重量%を全て混合し、1500〜3000rpmで撹拌しながら、85℃まで10℃/分で加熱を行った後、10℃まで冷蔵庫にて冷却を行う事でチーズ様食品を得た。このチーズ様食品のゴム硬度計は、50と基準値以上であった。また、官能検査では、チーズの食感であると評価できた。また、再結着率は10%であった。
【0029】
(比較例1)
表2に記載の原材料を用い、表1の配合表に従って、ゼラチンを添加せず、寒天6重量%、パーム油5重量%、脱脂粉乳5重量%、タマリンド0.3重量%、ポリリン酸ナトリウム0.1重量%、水82.4重量%、食塩1.4重量%、香料0.2重量%を全て混合し、1500〜3000rpmで撹拌しながら、85℃まで10℃/分で加熱を行った後、10℃まで冷蔵庫にて冷却を行う事でチーズ様食品を得た。このチーズ様食品のゴム硬度は、基準値以上の70であったが、ロウ状の食感となりチーズの食感とは異なるものとなった。また、再結着率は0%であった。
【0030】
(実施例3)
表2に記載の原材料を用い、表1の配合表に従って、寒天4重量%、ゼラチン4重量%、ゴーダチーズ40重量%、脱脂粉乳2重量%、パーム油10重量%、ローカストビーンガムを0.3重量%、ポリリン酸ナトリウムを0.5重量%、水37.8重量%、食塩1.2重量%、香料0.2重量%を全て混合し、1500〜3000rpmで撹拌しながら、85℃まで10℃/分で加熱を行った後、10℃まで冷蔵庫にて冷却を行う事でチーズ様食品を得た。このチーズ様食品のゴム硬度は、70と基準値以上であった。また、官能検査では、チーズの食感と評価できた。再結着率は10%であった。
【0031】
(比較例2)
表2に記載の原材料を用い、表1の配合表に従って、寒天を添加せず、ゼラチン3重量%、パーム油35重量%、脱脂粉乳10重量%、タマリンド0.3重量%、水50.1重量%、食塩1.4重量%、香料0.2重量%を全て混合し、1500〜3000rpmで撹拌しながら、85℃まで10℃/分で加熱を行った後、10℃まで冷蔵庫にて冷却を行う事でチーズ様食品を得た。このチーズ様食品のゴム硬度は、基準値以下の30で加工適正がなく、しかもチーズの食感と異なった。再結着率は75%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天及びゼラチンを含有するチーズ様食品であって、寒天の含有量はチーズ様食品全体中0.1〜4重量%であり、ゼラチンの含有量はチーズ様食品全体中4〜15重量%であることを特徴とするチーズ様食品。
【請求項2】
チーズ様食品全体中、油脂を0.05〜50重量%含有し、蛋白質を0.1〜15重量%含有する請求項1に記載のチーズ様食品。
【請求項3】
油脂、蛋白質、寒天、ゼラチン及び水を加熱混合し、乳化して得られる請求項2に記載のチーズ様食品。
【請求項4】
請求項1〜3何れかに記載のチーズ様食品を含有する食品。